説明

光干渉性繊維の製造方法及び製造装置

【課題】発色性繊維の実際の製造過程において、オンラインで監視確認すべき評価値として、実際に人間が肉眼で確認できる視認性を重視した値を採用することによって、人間の感性に適合した発色性能を有する品質に優れた発色性繊維をオンラインで評価して迅速かつ確実に製造できる方法と装置を提供する。
【解決手段】製糸中の前記光干渉性繊維の発色をオンラインにてL***値として測定し、前記各薄膜の厚みの変化に対応する前記各L***値の色相角と、管理基準とする光干渉性繊維の色相角である管理色相角とを求めて前記各薄膜の厚みの変化に対応する前記各L***値から求めた色相角とを互いに関連付けて記憶し、製糸中の光干渉性繊維を測色して得た色相角と前記管理色相角との間に生じた偏差が解消されるように前記ポリマーの供給量を調整して前記前記各薄膜の厚みを制御して光干渉性繊維を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の屈折率が異なる少なくとも2種のポリマーを交互に積層した交互積層体を扁平な光干渉性繊維の長軸方向に沿って平行に形成した発色に優れた光干渉性繊維の製造方法と製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、図4に示すように、繊維長軸方向に沿って少なくとも2種のポリマーA及びBが薄膜状に交互に積層された交互積層体Lを有する光干渉性繊維F(以下、「発色性繊維」と言うことにする)とその製造方法が、例えば特許文献1〜5などにおいて開示されている。なお、図4において、ポリマーCは、発色性繊維を構成する上で必須の構成ではないが、交互積層体Lを囲繞して、交互積層体Lに層間剥離などが生じないように設けられた保護層であって、透明なポリマーで構成されている。
【0003】
前記特許文献1〜5に開示されている方法で得られる発色性繊維は、南アメリカ産のモルフォ蝶が持つ深色と光沢の色彩が得られ、染料、顔料とは全く異なる色彩を呈しており、この発色メカニズムは光の反射、干渉によるものであることが知られている。このような光学干渉性を有する発色性繊維は、複雑な構造を有する複合紡糸口金内で2種のポリマーを交互積層したポリマーを紡糸孔から紡出することによって、繊維長軸に沿って、交互積層体を形成させることにより製造される。このとき、前記交互積層体の各層の厚みは、設計通りに正確に制御して形成されなければ狙った色彩を呈する発色性繊維を製造することができない。
【0004】
このため、設計通りの発色性繊維を紡糸する複合紡糸口金を製作するに当っては、高精度な製作寸法と組立精度が要求される。また、発色性繊維を紡糸する溶融紡糸工程における紡糸条件も厳密に一定に管理する必要がある。この管理方法に関して繰り返し製造を行うという長期的視野における問題、例えば複合紡糸口金の組み込み精度の悪化という問題、ポリマー流による磨耗が生じることにより正常な発色性繊維が得られないという問題が生じる。
【0005】
しかし、このような問題に関しては、発色性繊維の発色性をオンラインで検査できることが、問題を迅速に解決する上で好ましいことは言うまでもない。そこで、オンラインで得られた測色データによって、製造する発色性繊維の品質管理を迅速かつ確実に行うことができる発色性の検査方法とその装置が提案されている。
【0006】
しかしながら、発色性繊維中の前記交互積層体を構成する各ポリマーの重合度の変化等の要因は、短期間で随時変化していくため、このような要因への対策は従来提案されている方法では管理を行なうのに不十分である。このため、交互積層体を構成する各積層厚みの微妙な変化の原因となっている。
【0007】
ところが、発色性繊維では、この積層厚さが数nm違うだけで、人間が視認できるほどの色の違いを呈する。したがって、このような積層厚さの違いが生じてしまうと、発色性繊維を布帛や光輝材として大量生産し、これを使用する際に、色のバラツキとなる問題がある。この問題を解消するには、従来の測色技術をもとにして実際に発色性繊維を測色して得られたデータを製造工程へフィードバックし、発色波長の変化が生じないようにすることで、色のバラツキの少ない発色性繊維を溶融紡糸する技術が必要とされる。
【0008】
以上に説明した目的を達成するために、特許文献6において、紡糸中の発色性繊維が発
する発色波長をオンラインの測色装置を用いて検出して、目的の発色波長とのずれを修正することが提案されている。すなわち、検出した発色波長のずれに基づいて、発色性繊維中で交互積層体を構成する各ポリマーの複合紡糸口金への供給量を微調整することが行なわれている。
【0009】
より具体的には、発色性繊維として巻取中の糸条パッケージから発せられる光の発色波長をオンラインにて検出して、検出した発色波長が経時変化を起こさないように、発色波長を常に一定に維持しようとするものである。すなわち、巻取中の発色性繊維から検出された発色波長が目標波長よりも小さいときは、交互積層体を構成する各ポリマーの供給量を増やして積層部を厚くすることにより発色波長を大きくする。
【0010】
逆に、目標波長よりも検出された発色波長が大きいときは、交互積層体を構成する各ポリマーの供給量を減らして積層部を薄くする。そうすると、発色波長を小さくでき、目標波長に近づけることが可能となり、これによって、発色波長のバラツキを低減することができる。この制御方法は交互積層体を構成する各ポリマーの吐出量の変化値がフィラメント径(単糸径)に影響しないような小さい値の際には、発色性繊維の単糸径、交互積層体の積層数、積層部構成ポリマーの比率、積層部外周に非積層領域を設けた場合の非積層領域の厚みに関係がないことが分かっている。
【0011】
しかも、積層部を構成する各ポリマーの供給量と発色性繊維の発色波長との間の関係が、一次関数の形で表されることができる。したがって、発色波長を測定すれば、発色性繊維の発色波長を目標波長に修正するために、どのようなポリマー供給量に制御すれば良いかが、前記一次関数から容易に制御が可能であり、しかも、この制御方法は、全ての発色性繊維に共通の調整方法として使用することができる。
【0012】
しかし、実際に発色性繊維の製造過程において、オンラインで監視確認すべきパラメータは発色波長よりも人間の視認性に基づいた評価値であり、発色波長が目標の範囲内に収まっていたとしても、そのスペクトル波形によっては人間の目では違う色と認識されてしまう。したがって、オンライン管理で発色波長を管理基準とするのは最適な方法ではないことが分かった。
【0013】
【特許文献1】特開平11−1818号公報
【特許文献2】特開平11−1826号公報
【特許文献3】特開平11−1827号公報
【特許文献4】特開平11−1828号公報
【特許文献5】特開平11−1829号公報
【特許文献6】特開2007−2363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、以上に説明したような従来技術が有する諸問題を解決することにあって、発色性繊維の実際の製造過程において、オンラインで監視確認すべき評価値として、実際に人間が肉眼で確認できる視認性を重視した値を採用することによって、人間の感性に適合した発色性能を有する品質に優れた発色性繊維をオンラインで評価して迅速かつ確実に製造できる方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ここに、前記課題を達成するための光干渉性繊維の製造方法として、請求項1に記載の「 偏平断面を有する光干渉性繊維の長軸方向に沿って、屈折率の異なる少なくとも2種のポリマーで形成された各薄膜層を交互且つ並行して積層してなる交互積層体を繊維内部
に含む偏平状の光学干渉性マルチフィラメント糸条の製造方法において、
製糸中の前記光干渉性繊維の発色をオンラインにてL***値として測定し、前記交
互積層体を形成する各薄膜の厚みを変化させて測定した発色性繊維の各L***値を所
定の縮尺によって補正し、L***表色系色度図上に測定した前記各L***値が連続曲線を描くように配置し、前記各薄膜の厚みの変化に対応する前記各L***値の色相
角と、管理基準とする光干渉性繊維の色相角である管理色相角とを求めて前記各薄膜の厚みの変化に対応する前記各L***値から求めた色相角とを互いに関連付けて記憶し、
製糸中の光干渉性繊維を測色して得た色相角と前記管理色相角との間に生じた偏差が解消されるように前記ポリマーの供給量を調整して前記前記各薄膜の厚みを制御することを特徴とする光干渉性繊維の製造方法」に係る発明が提供される。
その際、請求項2に係る発明のように、「前記光学干渉性マルチフィラメント糸条を紡出する複合紡糸口金に連続的に計量供給する前記各ポリマー量を制御することによって前記各前記各薄膜の厚み調整を行なうことを特徴とする、請求項1に記載の光干渉性繊維の製造方法」とすることが好ましい。
また、請求項3に係る発明のように、「製糸中の前記発色性繊維のL***値を数ミ
リ秒〜数十ミリ秒毎に測定する、請求項1又は請求項2に記載の光干渉性繊維の製造方法。」とすることが好ましい。
更に、請求項4に記載の発明のように、「前記管理色相角を中心としてその上限と下限に上限管理色相角と下限管理色相角とをそれぞれ設け、製糸中の前記光干渉性繊維の色相角が前記上限管理色相角と前記下限管理色相角との間に入るように前記前記各薄膜の厚みを制御する、請求項1〜3の何れかに記載の光干渉性繊維の製造方法」とすることが好ましい。
そして、請求項5に記載の発明のように、「前記光干渉性繊維のL***値の測色を
巻取中の糸条パッケージからの反射光を検出することで行なう、請求項1〜4の何れかに記載の光干渉性繊維の製造方法」とすることが好ましい。
【0016】
次に、前記課題を達成するための光干渉性繊維の製造装置として、請求項6に記載の「屈折率の異なる少なくとも2種のポリマーをそれぞれ連続的に計量供給する連続計量供給装置と、前記連続計量供給装置から供給されたポリマーによって前記ポリマーで形成された各薄膜層を交互且つ並行して積層してなる交互積層体を繊維内部に含む偏平状の光学干渉性マルチフィラメント糸条を紡出する複合紡糸口金と、紡出された前記マルチフィラメント糸条を糸条パッケージとして巻き取る巻取機と、巻取中の前記糸条パッケージの反射光からL***値を測色するオンライン測色装置と、前記オンライン測色装置によって
測色されたL***値から色相角を算出して管理色相角との偏差を算出する発色性評価
装置と、前記偏差を解消するように前記連続計量供給装置から前記複合紡糸口金へのポリマー供給量を制御して前記交互積層体を構成する各薄膜層の厚みを調製するポリマー供給量制御手段とを備えたことを特徴とする光干渉性繊維の製造装置」に係る発明が提供される。
その際、請求項7に係る発明のように、「前記オンライン測色装置を巻取中の前記糸条パッケージとの間の距離を調節自在とするスライド手段と、前記オンライン測色装置と前記糸条パッケージとの間の距離を測定する距離センサと、前記距離センサによって測定された距離が予め設定された所定の距離値を維持するように前記スライド手段を制御する制御装置とを備えた、請求項6に記載の光干渉性繊維の製造装置」とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上に説明した本発明によれば、発色性繊維の発色品質の管理を迅速かつ確実にオンラインで行なうことができる。しかも、様々な要因で発生する発色性繊維の色バラツキを低減することができると共に、人間が実際に視認する発色を使用して発色性繊維の発色制御を行なうために、従来の発色波長基準の制御方法よりも色バラツキの抑制をより確実かつ正確にできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明では、発色性繊維の発色をL***表色系を使用して数値化する。そこで、先
ず、簡単にL***表色系について説明する。このL***表色系は、物体の色を表わすのに、現在あらゆる分野で最も普通に使用されている表色系であって、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化され、日本でもJIS(JIS Z8729)において
採用されているものである。このとき、L***表色系では、明度は表現するのにL*を使用し、色相と彩度を示す色度を表現するのにa*及びb*を使用する。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、必要に応じて図面を参照しながら説明する。
図1は、L***表色系色度図であって、この図1から分かるように、a*及びb*
、それぞれ色の方向を示しており、+a*は赤方向、−a*は緑方向、そして、+b*は黄
方向、−b*は青方向を示している。ここで図1は、本実験で用いたポリエチレンテレフ
タラート系ポリエステルとナイロン6の光の屈折率と層厚みをもとに計算した理想的なスペクトルより求めたグラフを示している。
【0020】
なお、図1中にプロットした各点(黒小丸点)は、交互積層体の各層厚みを1nmずつ変えて、実験によりそれぞれ求めたa*値とb*値をa**座標系にプロットしたものである。また、各点(黒小丸点)における交互積層体の各層厚みについては、その代表値だけではあるが、黒小丸点の近傍に参考までに記載しておいた。
【0021】
このとき、a*値あるいはb*値が大きくなるにしたがって、色鮮やかになる。また、この数値が小さくなって、L***表色系色度図の中心(a*軸とb*軸が交わる原点位置)部
にくるにしたがって、くすんだ色となる。つまり、図1に示したL***表色系色度図
中に発色性繊維を測色して求めたL*a*b値をプロットした点と、a*軸とb*軸が交わる原
点とを結ぶ直線距離の大きさが、色の「鮮やかさ」や「くすみ」を表現する彩度となる。
【0022】
本発明では、オンライン測色装置(分光測色計)を用いて、前掲の特許文献6(特開2007−2363号公報)と同様にして、発色性繊維のL***値を検出する。ただし
、実際のL***値の検出においては、反射光は、1よりも低くなるため全体の縮尺を
1以下の値で補正する必要がある。このとき、理想的な薄膜状ポリマー層の交互積層体を形成させて、前述のように各薄膜厚みを例えば1nmづつ変化させてそれぞれ検出した各発色性繊維のL***値が連続曲線となるように所定の縮尺で補正した後、L***表色系色度図のa**座標上に連続曲線となるようにプロットして配置し、前記図1のような連続的な曲線からなるグラフを作成する。
【0023】
その際、交互積層体を構成する各薄膜状ポリマー層の厚みは、交互に積層される各ポリマーの供給量によって決定されることは言うまでもない。なお、この各ポリマーの供給量は、各ポリマーを紡糸口金パックへ連続的に一定量のポリマーを計量しながら供給するギヤポンプのような連続計量供給装置によって極めて精密に制御できることは言うまでもない。
【0024】
つまり、前記交互積層体が2種類のポリマーによって形成されているとするならば、これらの各ポリマーに対して前記連続計量供給装置をそれぞれ一対一に対応させて設けることによって、各ポリマーが紡糸口金パックに装着された複合紡糸口金から吐出される各ポリマーの吐出量を厳密に制御することができる。したがって、本発明においては、一本のマルチフィラメント糸条を製造するのに使用する連続計量供給装置の設置台数は、複合繊維である発色性繊維を構成する複数種のポリマーの数に対応した数となる。
【0025】
そうすると、発色性繊維中にその繊維長軸方向に沿って形成される交互積層体の薄膜層
の厚みが変化した時に、得られた発色性繊維がどのような色相を呈するかを実際に人間が視認する色相感覚と同調させた状態で評価することができる。何故ならば、言うまでもなく、L表色系は、1976年に国際照明委員会(CIE)で人間の感覚に合うように規格化されているからである。
【0026】
しかも、図1に示したような図表があれば、目的とする発色を得るために、発色生鮮意中に形成する交互積層体の薄膜層の厚みを制御することが容易にできる。つまり、図1の図表を完成する際に行なった実験条件を再現するように、目的とする発色を得た薄膜層の厚みを制御できる各ポリマーの供給量を実験データから参照して抽出すれば良いだけである。そして、抽出した各ポリマーの供給量を厳密に制御するようにすれば、必ず目的とする発色を有する発色性繊維を製造することができるのである。
【0027】
したがって、得られる発色性繊維の発色が経時変化したとしても、この変化をオンラインで監視しておけば、発色が変化しても直ちに正常な製造条件へ修正することができる。本発明は、この点を最大の特徴とするものであって、以下、これについて、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図2は、本発明に係る発色性繊維の製造工程において、製造中の発色性繊維をオンライン測色装置(例えば、大塚電子製ファイバータイプ測色計:型式MCPD−3000)を用いて測定中の様子を示したオンライン測色システムに係る概略装置構成図であって、その測色方法は特許文献6(特開2007−2363号公報)に提案されているものとほぼ同じである。
【0029】
図2は、本発明に好適に使用するオンライン測色システム10であって、このオンライン測色システム10は、ディスプレイ11、糸条パッケージに投光する光源12、オンライン測色装置13、発色性評価装置14、測定ヘッド15、距離センサ16、固定部材17、光ファイバーからなるケーブル18、そして、スライド手段19を含んで構成されている。なお、参照符号30はポリマー供給量制御手段、そして、参照符号40は糸条パッケージをそれぞれ示す。
【0030】
なお、前記発色性評価装置14は、発色性繊維からなる糸条パッケージ40からオンライン測色装置13によって測定された反射波長のスペクトルデータを演算処理する機能を有しており、通常、マイクロコンピュータを好適に使用することができる。そこで、以下の説明においては、「発色性評価装置14」を単に「コンピュータ14」とも言う。
【0031】
ここで、図2において、21は連続計量供給装置の駆動手段、22は連続計量供給装置、23は複合紡糸口金(以下、単に“口金”ともいう)、24は横吹式の糸条冷却装置、25および26は延伸ローラ、そして、27は巻取機(ワインダー)をそれぞれ示し、これらは製糸装置20を構成する。
【0032】
以上に説明したように構成される製糸装置20において、口金23から紡出された未延伸糸は一旦巻き取られることなく、そのまま延伸ローラ25及び26によって延伸される。そして、このようにして延伸された発色性繊維は、最終的に巻取機27で巻き取られる。
【0033】
このとき、糸条パッケージ40は時間の経過と共に段々と巻き太ってきて、測定対象とする糸条パッケージ40の外周面が巻太りによって徐々に径が大きくなると、測定ヘッド15と糸条パッケージ40との間の距離がだんだんと接近する。そうすると、糸条パッケージ40からの反射光量が変化してしまうため、正確に糸条パッケージ40の反射スペクトルを得ることができない。
【0034】
そこで、このような問題を解消するために、測定ヘッド15と糸条パッケージ40の表面との間の距離を一定に保つための距離センサ16とスライド手段19とを設けて必要な距離を常に確保できるようにしている。この目的を達成するために、本例の発色性評価装置(コンピュータ)14では、図2に示したように、先ず測定ヘッド15と糸条パッケージ40間の距離を算出するために、距離センサ16を測定ヘッド15に併設している。
【0035】
なお、前述の距離センサ16としては、レーザー光を糸条パッケージ40に照射して、糸条パッケージ40から反射してきたレーザー光を受信することによって、測定ヘッド15と糸条パッケージ40の表面との間の距離を測定する投受光一体型のものを使用することが好ましい。
【0036】
以上に述べたようにして、一方で、測定ヘッド15と糸条パッケージ40間の距離が距離センサ16によって、例えばアナログ電圧値として測定される。ついで、必要に応じて増幅器によって増幅されたアナログ電圧信号がアナログ入力ポートからA/D変換器(アナログ/デジタル変換器)へ入力される。
【0037】
次に、A/D変換器を介してデジタル信号に変換された情報が距離を一定に制御する制御装置として機能するコンピュータ14(あるいは汎用シーケンサ)に距離情報として取り込まれる。なお、ここでは、コンピュータ14を制御装置として用いたが、汎用シーケンサなどの専用の制御装置をコンピュータ14とは別に用意してもよい。
【0038】
他方で、測定ヘッド15と距離センサ16は、固定部材17を介してスライド手段19に固定されており、ただし、スライド手段19には、これをスライド駆動するためのパルスモータ(図示省略)が付設されている。したがって、コンピュータ14に取り込まれた測定ヘッド15と糸条パッケージ40の表面間の距離はコンピュータ14で演算処理されて、その距離が常に一定に保たれるように、距離偏差に対応したパルス信号に換算され、前述のサーボモータ(図示省略)に換算されたパルス信号がフィードバックされる。
【0039】
このようにして、スライド手段19に併設されて固定された測定ヘッド15と距離センサ16は、糸条パッケージ40との間の距離を一定に保つように前記サーボモータ(図示省略)によって制御される。なお、スライド手段19による測定ヘッド15と距離センサ16の移動は、測色サンプリング周期毎に行えばよく、この測色サンプリングは、数秒〜数分間隔で周期的に行うようにすれば充分である。そして、最終的に測定ヘッド15の受光部(図示せず)で受光された反射光は、数秒〜数分間隔で周期的に数ミリ秒〜数十ミリ秒毎に、オンライン測色装置13によって測定されてコンピュータ14に取り込まれることにより、連続してサンプリングされる。
【0040】
以上に述べたようにしてサンプリングされた一連の発色データは、コンピュータ14に取り込まれ、このコンピュータ14に内蔵された記憶装置(図示せず)にデータベース化されて記憶される。また、コンピュータ14は、前記記憶装置に記憶された発色データを前記データベースから取り出し、発色性繊維からなる糸条パッケージ40の発色データ処理が行われる。そして、これによって、発色異常の発生が生じていないかどうかが常にチェックされることとなる。
【0041】
以上に説明したようにして、オンラインで発色性繊維の発色異常が監視されるのであるが、この発色異常の監視について詳細を説明する前に、本明細書中に使用する「色相角」について、先ず、図1を参照しながら定義しておく。
【0042】
すなわち、本明細書において使用する「色相角」とは、測色対象とする発色性繊維のa
*値とb*値を図1のL***表色系色度図中にプロットした場合に、この座標値と座標
原点とを結ぶ線分が+a*軸とがなす角度を指すものとし、+a*軸を基線として、この、+a*軸から反時計回りに測定した角度を指すものとする。
【0043】
以下、発色異常チェックについて、前記「色相角」を用いて説明する。本発明において、管理基準とする色相角(以下、「目標色相角」という)を設定して、製糸工程で巻取中の発色繊維からなる糸条パッケージ40がこの目標色相角に一致しているかどうかをチェックする。しかしながら、製糸中の糸条パッケージ40から得られる色相角は、測定誤差などの変動要因を含んでいるために厳密に一致することはない。
【0044】
そこで、人間が視認したときに発色異常とは認められず正常な発色と認められる範囲内で、前記目標色相角を中心にして、上限色相角及び下限色相角を設ける。そして、測定した糸条パッケージ40の色相角が、前記上限色相角と下限色相角との間に収まっている限りは、正常な発色性繊維が得られていると判断する。しかしながら、測定した発色性繊維の色相角が前記上限色相角と下限色相角とで管理される管理範囲から外れた場合には、発色異常が発生したものとみなす。
【0045】
このようにして、発色異常が認められると、そのまま発色性繊維の製造を続行しても品質の悪い発色性繊維しか得られないことは言うまでもない。それ故に、目的とする色相とのずれを直ちに修正する必要がある。この具体的な修正方法としては、先ず、発色性繊維を巻取中の糸条パッケージ40をオンライン測色装置13によって測色し、L***
を求める。次いで、求めたL***値をコンピュータ14に取り込み、取り込んだL***値から即色した発色性繊維の色相角をコンピュータ14によって算出する。
【0046】
以上に説明したようにして、色相角が算出されると、算出された色相角に対応する交互積層体を構成する各層の厚みが図1の図表を参照すれば明らかなように、一意的に求まり、これらのデータはデータベース化されて前記記憶装置に記憶される。ただし、図1において、色相角と層厚みが一対一に一意的に対応しない部分が存在するが、本発明では、色相角と層厚みが一対一に対応しない部分は利用しない。
【0047】
このようにして、発色異常が発生した発色性繊維中に形成された交互積層体Lの各薄膜層の厚みが求まると、管理色相角(目標色相角)に対応する各薄膜層の厚みと比較することによって、どの程度の厚み変化が生じたかを知ることができる。そうすると、この厚み差を解消するように、ポリマー供給量制御手段30からの制御信号によって、管理色相角と測色した色相角とを減算して求めた偏差を解消するように、連続計量供給装置22の駆動手段21を制御して、連続計量供給装置22から口金23への各ポリマーの供給量をポリマー供給量制御手段30によって調整する。
【0048】
その結果、連続計量供給装置22によって、各ポリマーの供給量を厳密に調製制御できるので、目標とする発色を呈するための所定の層厚みが形成された交互積層体Lを含む発色性繊維を極めて良好に得ることができる。ただし、このような制御においては、ポリマー温度、口金直下に設置したヒータ温度、溶融紡糸する際の冷却風の風量及び風温等の紡糸条件が変動すると、狙ったとおりの発色性繊維を得ることができなくなるので、これらの条件は一定にしておく必要がある。
【0049】
しかしながら、その詳細説明は省略するが、逆に言うとポリマーの供給量だけを変更する制御方法だけを採用するのではなく、前述のように、ポリマー温度、口金直下に設置したヒータ温度、溶融紡糸する際の冷却風の風量及び温度などの紡糸条件を調整によって色相角のバラツキを抑制することが可能ということである。
【0050】
以下、本発明の実施例について説明する。
本発明において、発色性繊維の発色のバラツキ測定は、以下に述べる方法によって行なった。
すなわち、紡糸錘、巻取日、巻取時刻の異なる繊維100本分を前述の製紙工程で巻き取った糸条パッケージから採取し、採取した糸をそれぞれ黒板に40ターン/cmのピッチで巻き付けたものを試験用サンプルとして用意した。そして、熟練者が目視判定をおこなって、100本の中で何本の糸を色差視認できたかを評価した。
【実施例】
【0051】
本発明に使用する発色性繊維は、例えば、前掲の特許文献1〜特許文献5などに記載の周知の方法によって製造することができる。以下、簡単に本発明に使用する口金23について説明するが、本発明は、その要旨を満足する限り以下に説明する例に限定されるものではない。
【0052】
図3は、本発明に係る口金23の実施形態例の概略を示す斜視図であって、その一部に断面を施してある。この図3において、2つのギャポンプ駆動系1によってそれぞれ駆動された2台のギャポンプ2によって、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が0.9モル%共重合された、固有粘度0.57のポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(Aポリマー)と、固有粘度1.20のナイロン6(Bポリマー)の2種類の溶融ポリマーを使用し、図3に例示したような口金23へ計量しながら、前記AポリマーとBポリマーを連続的に定量供給した。このとき、前記AポリマーとBポリマーの複合容積比を4:1に設定して2台のギアポンプを使用してそれぞれ独立に溶融紡糸装置に装着された口金23へ連続的に定量計量しながら供給した。
【0053】
次いで、280℃に加熱した口金23からAポリマーとBポリマーからなる交互積層体が発色性繊維中に形成された複合マルチフィラメント糸を紡出し、冷却風を噴出す方式が横吹式の冷却装置24により冷却しながら一旦巻き取ることなく、引取速度1000m/分で引き取った。
【0054】
更に、引き続いて、延伸倍率3.4倍、延伸温度(供給ローラ25の表面温度)90℃、セット温度180℃(延伸ローラ26の表面温度)で延伸し、120dtex、12フィラメントの発色性長繊維として、3000m/分でAW−908型ワインダーを使用して巻取機27によって巻き取った。なお、得られた各フィラメントの断面形態としては、その扁平率(図4に示した単繊維の横断面形状における長径と短径との比で定義する)が3.0であった。
【0055】
ここで、長期間の溶融紡糸を行なうと発色性繊維の発色が変化する一つの要因について、図3を参照しながら説明する。図3は、発色性繊維を溶融紡糸するための前述の口金23に係る実施形態例を例示した概略構成図である。なお、本例において、口金23に係る各部材の参照符号については、全て右肩にダッシュ記号を付して区別した。
【0056】
図3において、1’は第1口金板(ポリマー導入板)、2’は第2口金板(上部ポリマー分配板)、3’は第3口金板(下部ポリマー分配板)、4’は第4口金板(ポリマー吐出板)、5’はAポリマーの導入孔、6’はBポリマーの導入孔、7’は交互積層体LのAポリマー層形成孔群、8’はポリマーの合流流路、9’は漏斗状縮小流路、10’は保護ポリマーの分配流路、11’は保護ポリマー流と交互積層体ポリマー流との合流流路、そして、12’はポリマー吐出孔である。
【0057】
以上のように構成される、本実施例に使用する口金23では、基本的に4つの口金板1’、2’、3’及び4’から形成されており、2種類の光学的屈折率が互いに異なるAポ
リマー及びBポリマーが、第1口金板(ポリマー導入板)1’に穿設されたAポリマーの導入孔5’及びBポリマーの導入孔6’からそれぞれ導入される。
【0058】
ここで、先ず第1口金板1’に穿設されたAポリマーの導入孔5’から導入されたAポリマーが形成するAポリマー流の経路から説明する。このAポリマー流は、第2口金板(上部分配板)2’の上部に設けられた分岐流路(分岐溝)において、図3に便宜的に図示したように、「交互積層体LのAポリマー層を形成する部分のAポリマー流」と「保護ポリマー流」とに左右に分岐する。
【0059】
このとき、後者の「保護ポリマー流」は、図3に例示したように、その流れが分岐して保護ポリマーの分配流路を流下する。また、前者の「交互積層体LのAポリマー層を形成する部分のAポリマー流」も分岐して、図3に例示したように図の右側方向へと流れる。そして、第2口金板2’に一列に穿設された交互積層体LのAポリマー層を形成するAポリマー層形成孔群7’へ導かれて、第3口金板(下部ポリマー分配板)3’へ供給される。
【0060】
以上に説明したように、Aポリマーに関しては、口金23内を流れるが、Bポリマーに関しては、以下に説明するように流れる。すなわち、第1口金板1’に穿設されたBポリマーの導入孔6から導入されたBポリマーは、そのまま第2口金板2’を流下する。
【0061】
そして、第3口金板(下部分配板)3’の上部に形成されたポリマーの合流流路8’へ導入されと共に、Aポリマー層形成孔群7’からもこの合流流路8’へAポリマーが導入され、ここで、AポリマーとBポリマーからなる薄膜層が交互にサンドイッチされた交互積層体流が形成される。このように、合流流路8’において交互積層体Lが初めて形成されるため、この合流流路8’の形状変化(寸法変化)は、得られる発色性繊維の発色性(発色波長の変化)に大きな影響を及ぼす。
【0062】
その後、以上に述べたようにして形成された交互積層体流は、第3口金板3’に設けられ漏斗状縮小流路9’を流下するにしたがって、Aポリマー層群とBポリマー層群が交互に積層されることによって形成される各交互層の厚みが次第に薄くなって行く。そして、最終的に第4口金板(ポリマー吐出板)4’に穿設されたポリマー吐出孔12’の中心部へ流入する。
【0063】
その際、既に述べたように分配流路10’を流下してきた保護ポリマー(Aポリマー)は、第4口金板4’の上端部に形成された合流流路11から前述の交互積層体ポリマー流の周りを囲繞するように合流流路11’に流入する。そして、流入した保護ポリマーC(結局は、Aポリマーからなる)によって、交互積層体流の周囲に保護ポリマー層が形成される。このようにして、交互積層体流の周りに保護ポリマー流による保護層Cが形成されたポリマーは、ポリマー吐出孔12’より紡出されて繊維化される。ついで、このようにして溶融紡糸によって繊維化した発色性繊維は、その後、所定の延伸倍率で延伸され、糸条パッケージ40として巻き取られて発色性繊維製品とされる。
【0064】
以上で、図3の口金23に関する説明を終了するが、ここで、この説明で肝要なことは、合流流路8’において交互積層体Lが初めて形成されるため、この合流流路8’の形状変化(寸法変化)は、得られる発色性繊維の発色性(発色波長の変化)に大きな影響を及ぼすことである。このため、長期に亘る使用によって、この合流流路8’に磨耗などが生じると発色性繊維の発色が変わってしまう。また、口金23から紡出されたフィラメント群の冷却条件などが変化したりしても当然のことながら発色に変化が生じる。
【0065】
したがって、常に狙った通りの発色を有する発色繊維を製造するためには、発色異常を
監視しておいて、発色異常が生じると、迅速かつ適切にその事態に対応する必要があり、それを保証するという点で本発明は非常に顕著な作用効果を奏するものである。そこで、このような発色異常を監視するために、巻取中の糸条パッケージ40の表面から約20mm離れた位置に、分光測定計の測定ヘッド15が常にくるように、測定ヘッド15がセットされたオンライン測色装置9にて発色性繊維の反射波長の測定を実施した。
【0066】
先ず、発色性評価装置14によって得られた発色波長のデータから、基準とする発色性繊維のL***値を求める。そして、図1にて示される関係を使用して、この基準とし
たL***値から求めた色相角と評価を行う発色性繊維から求めた色相角との間に偏差
(ずれ)が認められた時に、ポリマー供給量制御手段30によって、Aポリマー(ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル)及び/又はBポリマー(ナイロン6)の供給量の補正を行い、交互積層体Lを構成する各ポリマーの薄膜の厚みを制御した。
【0067】
この点について、より具体的に説明するならば、前述のようにして、a*値が−24、
*値が−1.5(発色波長:約520nm)である基準とする発色性繊維を決める。そ
して、求めたa*値とb*値から管理基準となる管理色相角(基準色相角)として、183.8°という角度を得た。つまり、+a*軸を基線として、更に、a**座標において、
前記基線からa*値が−24、b*値が−1.5である点とa**座標の原点とを結ぶ線分とがなす角度を反時計回りに算出すると、前記色相角を求めることができる。
【0068】
なお、参考までに、a*値が7.7、b*値が8.5(発色波長:約650nm)というデータを有する発色性繊維に対して、測色したa*値とb*値から計算した色相角を上記と同様にして求め、求めた管理色相角(基準色相角)が47.8°の発色性繊維の評価も同様に行った。
【0069】
[実施例1]
図2及び図3に示した製糸装置及びオンライン測色システムを使用して、前記基準色相角(目標色相角)183.8°を中心として、上限色相角と下限色相角とを、例えば、それぞれ±0.8°の範囲に収まるように、製造中の発色性繊維の発色(色相角)を制御しながら3ヶ月間に亘って断続的に前述の製糸条件で製糸を行なった。この間に得られた糸条パッケージを適当にサンプリングして、既に説明した発色評価を実施したところ、発色異常と視認された色バラツキ本数は、全て1本以内に収まっていた。
【0070】
[比較例1]
オンライン測色装置で発色性異常を監視しながら、実施例1と全く同条件にて、発色性繊維を製造した。ただし、発色異常を正常な発色を有するように制御する方法に関しては、特開2007−2363号公報で提案されている方法にしたがった。なお、この方法では、製糸中の発色性繊維の発色波長を測定し、目標とする発色波長との間の波長のずれを算出して、波長のずれとポリマー供給量との間に成立する一次関数の関係を利用して、必要なポリマー供給量を修正する、特開2007−2363号公報に開示された方法で行なった。
その結果、a*値が−24、b*値が−1.5(発色波長:約520nm)の発色性繊維については、色バラツキ本数が3本のものが存在した。また、a*値が7.7、b*値が8.5(発色波長:約650nm)の発色性繊維については、色バラツキ本数が4本のものが存在した。
【0071】
以上説明したように、本発明の方法によると、実際に人間の目で認識したと同様の発色を有する発色性繊維を安定に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】L***表色系色度図である。
【図2】本発明に係る製糸装置とオンライン測色システムに係る概略装置構成図である。
【図3】本発明に係る発色性繊維を紡出する複合紡糸口金の概略構成を示した一部に断面を施した斜視図である。
【図4】発色性繊維を繊維の長手方向(長繊維軸方向)に沿って直角に切断した発色性繊維の横断面図である。
【符号の説明】
【0073】
10 オンライン測色システム
11 ディスプレイ
12 光源
13 オンライン測色装置
14 発色性評価装置(コンピュータ)
15 測定ヘッド
16 距離センサ
17 固定部材
18 ケーブル
19 スライド手段
20 製糸装置
21 ギヤポンプ駆動手段
22 ギヤポンプ(ポリマーの連続計量供給装置)
23 複合紡糸口金
24 冷却装置
25、26 延伸ローラ
27 巻取機(ワインダー)
30 ポリマー供給量制御手段
40 糸条パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平断面を有する光干渉性繊維の長軸方向に沿って、屈折率の異なる少なくとも2種のポリマーで形成された各薄膜層を交互且つ並行して積層してなる交互積層体を繊維内部に含む偏平状の光学干渉性マルチフィラメント糸条の製造方法において、
製糸中の前記光干渉性繊維の発色をオンラインにてL***値として測定し、前記交
互積層体を形成する各薄膜の厚みを変化させて測定した発色性繊維の各L***値を所
定の縮尺によって補正し、L***表色系色度図上に測定した前記各L***値が連続曲線を描くように配置し、前記各薄膜の厚みの変化に対応する前記各L***値の色相
角と、管理基準とする光干渉性繊維の色相角である管理色相角とを求めて前記各薄膜の厚みの変化に対応する前記各L***値から求めた色相角とを互いに関連付けて記憶し、
製糸中の光干渉性繊維を測色して得た色相角と前記管理色相角との間に生じた偏差が解消されるように前記ポリマーの供給量を調整して前記前記各薄膜の厚みを制御することを特徴とする光干渉性繊維の製造方法。
【請求項2】
前記光学干渉性マルチフィラメント糸条を紡出する複合紡糸口金に連続的に計量供給する前記各ポリマー量を制御することによって前記各前記各薄膜の厚み調整を行なうことを特徴とする、請求項1に記載の光干渉性繊維の製造方法。
【請求項3】
製糸中の前記発色性繊維のL***値を数ミリ秒〜数十ミリ秒毎に測定する、請求項
1又は請求項2に記載の光干渉性繊維の製造方法。
【請求項4】
前記管理色相角を中心としてその上限と下限に上限管理色相角と下限管理色相角とをそれぞれ設け、製糸中の前記光干渉性繊維の色相角が前記上限管理色相角と前記下限管理色相角との間に入るように前記前記各薄膜の厚みを制御する、請求項1〜3の何れかに記載の光干渉性繊維の製造方法。
【請求項5】
前記光干渉性繊維のL***値の測色を巻取中の糸条パッケージからの反射光を検出
することで行なう、請求項1〜4の何れかに記載の光干渉性繊維の製造方法。
【請求項6】
屈折率の異なる少なくとも2種のポリマーをそれぞれ連続的に計量供給する連続計量供給装置と、前記連続計量供給装置から供給されたポリマーによって前記ポリマーで形成された各薄膜層を交互且つ並行して積層してなる交互積層体を繊維内部に含む偏平状の光学干渉性マルチフィラメント糸条を紡出する複合紡糸口金と、紡出された前記マルチフィラメント糸条を糸条パッケージとして巻き取る巻取機と、巻取中の前記糸条パッケージの反射光からL***値を測色するオンライン測色装置と、前記オンライン測色装置によっ
て測色されたL***値から色相角を算出して管理色相角との偏差を算出する発色性評
価装置と、前記偏差を解消するように前記連続計量供給装置から前記複合紡糸口金へのポリマー供給量を制御して前記交互積層体を構成する各薄膜層の厚みを調製するポリマー供給量制御手段とを備えたことを特徴とする光干渉性繊維の製造装置。
【請求項7】
前記オンライン測色装置を巻取中の前記糸条パッケージとの間の距離を調節自在とするスライド手段と、前記オンライン測色装置と前記糸条パッケージとの間の距離を測定する距離センサと、前記距離センサによって測定された距離と予め設定された所定の距離値との間の偏差を解消して一定の距離値を維持するように前記スライド手段を制御する制御装置とを備えた、請求項6に記載の光干渉性繊維の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−231643(P2008−231643A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76499(P2007−76499)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】