説明

光干渉縞防止光透過型電磁波シールド材料

【課題】偏光板または位相差板を有するディスプレイ若しくは車載パネル用の光透過型電磁波シールド材料において、偏光特性を有するサングラス、ゴーグル、防眩用パネル若しくは防眩用窓材を介しても光干渉縞が発生せず、視認性が良好な光透過型電磁波シールド材料を提供する。
【解決手段】分子配向性や分子配向ムラの少ない無延伸光透過型有機高分子材料を電磁波シールド層のベース基材として用いることにより、光干渉縞防止性に優れた光透過型電磁波シールド材料を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉縞防止性に優れた光透過型電磁波シールド材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマに代表されるフラットパネルディスプレイ、タッチパネル、カーナビゲーション、携帯情報端末、携帯型ゲーム機などの電子機器から発生する電磁波により、機械や電子機器の誤動作や通信障害を引き起こし大きな問題となっている。さらに、電磁波は人体に対しても悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、いわゆる電磁波障害(以下、EMIという)を防止するため、各種電磁波シールド材による対策を講じている。
【0003】
光透過型電磁波シールド材料のベース基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの透明樹脂シートが用いられているが、これらの樹脂は機械的強度および耐熱性を向上させるために一軸延伸や二軸延伸した延伸処理を施しており(特許文献1〜4参照)、これらの電磁波シールド材料を偏光板または位相差板を含む電子機器ディスプレイに使用した場合、偏光特性を有するサングラス、ゴーグル、防眩用パネル若しくは防眩用窓材を介してディスプレイを見ると、ベース基材の分子配向性や分子配向ムラが影響して光干渉縞が発生し、視認性が著しく低下するという問題がある。
【特許文献1】特開2006−157040号公報
【特許文献2】特開2006−319251号公報
【特許文献3】特開平10−335884号公報
【特許文献4】特開平10−41682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題点を鑑み、偏光特性を有するサングラス、ゴーグル、防眩用パネル若しくは防眩用窓材を介しても光干渉縞が発生せず、視認性が良好な光透過型電磁波シールド材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、分子配向性や配向ムラの少ない無延伸光透過型有機高分子材料を電磁波シールド層のベース基材として用いることにより、光干渉縞防止性に優れた光透過型電磁波シールド材料を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、無延伸光透過型有機高分子材料を電磁波シールド層のベース基材に用いることを特徴とする光干渉縞防止性に優れた光透過型電磁波シールド材料に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光透過型電磁波シールド材料は、偏光特性を有するサングラス等を介しても光干渉縞が発生せず、良好な視認性を有するため、車中で利用可能なカーナビゲーション、携帯電話、携帯情報端末、携帯型ゲーム機、さらに屋外で利用される広告用液晶またはプラズマディスプレイ、自動販売機や券売機のディスプレイなど、優れた電磁波シールド性能、透明性および視認性を同時に必要とする広範囲の電磁波シールド分野に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の光透過型電磁波シールド材料は、電磁波シールド層を有しており、電磁波シールド層が無延伸光透過型高分子材料と導電性化合物または無延伸光透過型高分子材料と接着剤および導電性化合物から構成されている。
【0008】
本発明のベース基材として用いる光透過型有機高分子材料は、光干渉縞の発生を防止するため、分子配向性や分子配向ムラの少ない無延伸光透過型を使用する。また、光干渉縞発生と視認性低下を防止する観点から、無延伸光透過型有機高分子材料のリタデーション値は500nm以下であることが好ましい。より好ましくはリタデーション値が400nm以下であり、更に好ましくはリタデーション値が300nm以下であることが好ましい。
【0009】
無延伸光透過型有機高分子材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、光透過型ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂などが挙げられる。
【0010】
これらの無延伸光透過型有機高分子材料の中で、透明性や耐衝撃性および汎用性の観点から、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0011】
電磁波シールド層の電磁波シールド性能は、30デシベル以上の性能を有するものが好ましい。シールド性能が30デシベル以下では、電子機器から発生する電磁波の流出を完全に防ぐことが出来ず、他の機械や電子機器の誤動作や通信障害を生じる可能性があるばかりでなく、電子機器の外部から侵入する電磁波を防ぐことが出来ず、電子機器にダメージを与える可能性がある。
【0012】
前記の電磁波シールド性能を達成するためには、電磁波シールド層の表面抵抗率(シート抵抗値)は10[Ω/□]以下であることが好ましい。より好ましくは1[Ω/□]以下であり、更に好ましくは0.1[Ω/□]以下であることが好ましい。
【0013】
電磁波シールド層を構成する導電性化合物は、導電性があれば特に制限は無いが、鉄、金、銀、銅、アルミ、ニッケル、カーボン、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ZnO(酸化亜鉛)、錫、亜鉛、チタン、タングステン、ステンレスから選ばれた少なくとも1つを含有する化合物を用いることが出来る。経済的な観点から、銀、銅、アルミ、ニッケル、カーボン、ZnO(酸化亜鉛)、錫またはステンレスから選ばれた少なくとも1つを含有する導電性化合物を用いることが好ましい。
【0014】
電磁シールド層は、導電性化合物を用いた金属薄膜メッシュまたは導電性印刷メッシュである。金属薄膜メッシュの製法は特に制限はないが、例えば、光透過型有機高分子材料のフィルムまたはシート表面に銅、銀、アルミ、ITO(酸化インジウム/酸化錫) 、ZnO(酸化亜鉛)などの金属薄膜を蒸着やスパッタリングにより形成したもの、あるいはこれらの金属箔を接着剤により貼り合せた後、エッチングなどの手段でメッシュを形成する方法、メッキ触媒含有インキやペーストをグラビア印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷などにより塗布後、無電解メッキや電気メッキを施してメッシュを形成する方法、銅、銀、アルミなどの金属板を圧延加工して所定の厚さにした金属箔をパンチング加工してメッシュを形成する方法などが挙げられる。これらの金属薄膜メッシュは、耐水性、耐湿性、耐腐食性、防錆性、反射防止性の観点から、片面または両面に黒化処理を施しておくことが好ましい。金属薄膜メッシュは電磁波シールド性能および透明性の観点から、ライン幅5〜200μm、厚さ0.01〜100μm、ピッチ100〜1000μmの範囲が好ましい。
【0015】
金属薄膜メッシュを形成する金属箔用接着剤としては、特に制限は無く、透明性、耐水性、耐湿性、接着力の良好な公知の接着剤や粘着剤を使用することが出来る。
接着剤としては、公知の光硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤などが挙げられる。
【0016】
粘着剤としては、例えば、公知のアクリル系樹脂組成物、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、シリコーン系樹脂組成物、ゴム系樹脂組成物などの粘着剤を用いることが出来る。これらの中で、透明性、耐水性、耐湿性および接着力の良好なアクリル系樹脂組成物の粘着剤が最も好ましい。
【0017】
ホットメルト型接着剤としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂組成物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂組成物などのポリオレフィン系樹脂組成物、ポリスチレン系樹脂組成物、エチレン酢酸ビニル系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリアミド系樹脂組成物、ポリビニールエーテル系樹脂組成物、シリコーン系樹脂組成物、ゴム系樹脂組成物などが挙げられる。これらの中で、透明性、耐水性、耐湿性および接着力の良好なアクリル系樹脂組成物のホットメルト型接着剤が最も好ましい。
【0018】
熱硬化型接着剤としては、熱により重合するものであれば特に制限は無く、例えば、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基等の官能基を持つ化合物が挙げられ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせても、使用することができる。例えば、エポキシ系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、シリコーン系樹脂組成物、フェノール系樹脂組成物、熱硬化型ポリイミド系樹脂組成物、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、ユリア系樹脂組成物などが挙げられる。接着力および透明性の観点からエポキシアクリレート系樹脂組成物、ウレタンアクリレート系樹脂組成物、ポリエーテルアクリレート系樹脂組成物、ポリエステルアクリレート系樹脂組成物などのアクリル系樹脂組成物が好ましい。これらの熱硬化型接着剤は必要に応じて、2種以上併用することができる。また熱硬化型接着剤組成物には硬化剤を併用することが好ましい。硬化剤としては公知の硬化剤を使用することができ、イソシアネート系硬化剤、トリエチレンテトラミン、キシレンジアミン、N − アミノテトラミン、ジアミノジフェニルメタンなどのアミン類、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの酸無水物、ジアミノジフェニルスルホン、トリス( ジメチルアミノメチル) フェノール、ポリアミド樹脂、ジシアンジアミド、エチルメチルイミダゾールなどを使用することができる。これらの硬化剤は単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。
【0019】
光硬化型接着剤としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート系接着剤組成物、ポリエステル(メタ)アクリレート系接着剤組成物、エポキシ(メタ)アクリレート系接着剤組成物およびポリオール(メタ)アクリレート系接着剤組成物から選ばれた少なくともいずれか1種類以上の(メタ)アクリレート系接着剤組成であることが好ましく、この中でも耐水性、耐湿性、耐侯性、透明性および接着力の観点からウレタン(メタ)アクリレート系接着剤組成物が特に好ましい。
活性エネルギー線の照射による硬化性を有する光硬化型(メタ)アクリレート系接着剤組成物は、硬化時間、安全性の面から特に好ましく、活性エネルギー線としては可視光線または紫外線が好ましい。
【0020】
導電性印刷メッシュの製法に制限はないが、例えば、銅、銀、アルミ、ニッケルなどの金属粒子化合物やカーボンなどをエポキシ系、ウレタン系、アクリル系、EVA系などの樹脂バインダーに混合したインキまたはペーストを用いて、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの方法により光透過型有機高分子材料のフィルムまたはシート表面にメッシュを形成する方法が挙げられる。導電性印刷メッシュは電磁波シールド性能および透明性の観点から、ライン幅10〜200μm、厚さ1〜100μm、ピッチ100〜1000μmの範囲が好ましい。
【0021】
本発明の光透過型電磁波シールド材料は、耐衝撃性、耐擦傷性、耐侯性、耐水性、防湿性、防曇性、反射防止性、防汚染性などの観点から、電磁波シールド層の片側または両側に保護層を配置することが好ましい。保護層は、視認可能で光を通す材料であれば、光透過性ガラスまたは無延伸光透過型有機高分子材料からなるフィルムやシート材料でも構わないし、各種機能性を有する被膜でも構わない。
【0022】
前記の保護層に用いる無延伸光透過型有機高分子材料には、各種金属化合物、導電性化合物、有機性化合物、無機性化合物など接着、蒸着、塗布、印刷、加工した材料を包含する。無延伸光透過型有機高分子材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、光透過型ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
【0023】
これらの無延伸光透過型有機高分子材料の中で、透明性や耐衝撃性および汎用性の観点から、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0024】
前記の被膜としては、特に制限は無いが、長期間の耐久性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系化合物、または処理が比較的簡便でかつ良好な被膜が形成されるアクリル樹脂または多官能アクリル樹脂が好ましい。これら被膜の硬化方法は使用する樹脂化合物の性質によるが、生産性や簡便性を考慮した場合、熱硬化型または光硬化型樹脂を選択することが好ましい。光硬化型樹脂の一例としては、1官能あるいは多官能のアクリレートモノマーあるいはオリゴマーなどの単独あるいは複数からなる樹脂組成物に硬化触媒として光重合開始剤が加えられた樹脂組成物が挙げられる。熱硬化型樹脂としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、ハードコート剤として市販されており、被膜ラインとの適正を加味し、適宜選択すれば良い。
これらの被膜には紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤のほか、必要に応じて、有機溶剤、着色防止剤などの各種安定剤やレベリング剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤等を適宜添加してもよい。
【0025】
本発明の光透過型電磁波シールド材料は、そのシールド性能を十分に発揮させる目的や電磁波の漏洩を防止するために、適宜アースを設置することが好ましい。アースの設置方法としては、特に制限は無いが、例えば、銅、銀、アルミ、ニッケルなどの金属粒子化合物やカーボンなどをエポキシ系、ウレタン系、アクリル系、EVA系などの樹脂バインダーに混合した導電性ペーストを光透過型電磁波シールド材料の端面外周に塗布する方法や光透過型電磁波シールド材料の端面外周を導電性テープで被覆する方法、これらを併用する方法などが挙げられる。端面外周の70%以上に導電性ペーストまたはテープで被覆することが好ましい。
【0026】
本発明の光透過型電磁波シールド材料は、積層する光透過型有機高分子材料自体の加水分解や酸化による老化防止、紫外線による劣化防止、太陽光や風雨に曝される厳しい条件下での耐熱性、耐侯性などを向上する目的で、電磁波シールド層、保護層および接着剤層等に紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を含有させることが好ましい。コストの面から光透過型電磁波シールド積層体の片面または両面に紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤の内、少なくとも1種類以上を含有してなる皮膜を形成させことが好ましい。
【0027】
前記の被膜としては、長期間の耐久性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系化合物、または処理が比較的簡便でかつ良好な被膜が形成されるアクリル樹脂または多官能アクリル樹脂が好ましい。これら被膜の硬化方法は、使用する樹脂化合物の性質によるが、生産性や簡便性を考慮した場合、熱硬化型または光硬化型樹脂を選択することが好ましい。光硬化型樹脂の一例としては、1官能あるいは多官能のアクリレートモノマーあるいはオリゴマーなどの単独あるいは複数からなる樹脂組成物に硬化触媒として光重合開始剤が加えられた樹脂組成物が挙げられる。熱硬化型樹脂としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、ハードコート剤として市販されており、被膜ラインとの適正を加味し、適宜選択すれば良い。
これらの被膜には前述した紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤のほか、必要に応じて、有機溶剤、着色防止剤などの各種安定剤やレベリング剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤等を適宜添加してもよい。
【0028】
また前記の被膜は、光透過型電磁波シールド積層体の基材との密着性を向上させるために、基材とアクリル樹脂を共押出しにより積層したアクリル樹脂層上に被膜を形成することもできる。
【0029】
光硬化型アクリル系樹脂化合物からなる被膜の一例としては、1,9−ノナンジオールジアクリレートまたはトリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート20〜80重量%と共重合可能な他の化合物20〜80重量%とからなる光重合性化合物に対し、光重合開始剤を1〜10重量%を添加することを特徴とする紫外線硬化型樹脂被膜用組成物が挙げられる。
【0030】
本発明において、光透過型電磁波シールド材料に被膜を塗布する方法は、刷毛、ロール、ディッピング、流し塗り、スプレー、ロールコーター、フローコーターなどが適用できる。熱硬化あるいは光硬化によって硬化した被膜層の厚さは1〜20μm、好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは3〜12μmである。被膜層の厚さが1μm未満であると耐候性や表面硬度の改良効果が不十分になりやすく、逆に20μmを超えてもコスト的に不利で、耐衝撃性の低下を招くこともある。
【実施例】
【0031】
以下、本発明について実施例、比較例によりその実施形態と効果について具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。実施例および比較例中に記載の評価結果は下記の試験方法にて測定した。
【0032】
(リタデーション値[Re])
エリプソメーター(溝尻光学所製ELP−200ADT)を用いて、測定波長(λ)632.8nmのリタデーション値を測定した。
【0033】
(光干渉縞防止性能試験)
偏光板または位相差板を含む液晶ディスプレイの前面に光透過型電磁波シールド材料を配置し、偏光特性を有するサングラスを介して、光干渉縞の発生の有無を目視評価した。
[目視評価]
○:光干渉縞なし、変化なし
△:光干渉縞が僅かに発生、視認性あり
×:光干渉縞が発生し、視認性が著しく低下
【0034】
(電磁波シールド性能試験)
電磁波シールド性能測定装置(アドバンテスト社製)を用いて100MHz〜1GHzの周波数範囲の電磁波シールド性能を測定した。
[電磁波シールド性能評価]
周波数100MHzと1GHzの電磁波シールド性能が30dB以上を示すものを合格(○)とし、30dB未満のものを不合格(×)とした。
【0035】
実施例1
無延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(100μm厚)上にアクリル系接着フィルム(デュポン社製パイララックスLF−0200)を介して厚さ12μmの銅箔を接着させた。得られた銅箔付きPETフィルムにフォトリソ工程(レジストフィルム貼付け−露光−現像−ケミカルエッチング−レジストフィルム剥離)を経て、ライン幅20μm、ライン間隔500μmの銅薄膜メッシュをPETフィルム上に形成し、サンプルを得た。
各種評価を行った結果、リタデーション値(Re)は300nmであった。前記「電磁波シールド性能試験」によるサンプルの電磁波シールド性能は良好であった。前記「光干渉縞防止性能試験」において光干渉縞が発生せず、視認性は良好であった。
【0036】
実施例2
無延伸ポリカーボネート(PC)フィルム(MGCフィルシート社製100μm厚)上にアクリル系接着フィルム(デュポン社製パイララックスLF−0200)を介して厚さ12μmの銅箔を接着させた。得られた銅箔付きPCフィルムにフォトリソ工程(レジストフィルム貼付け−露光−現像−ケミカルエッチング−レジストフィルム剥離)を経て、ライン幅20μm、ライン間隔500μmの銅薄膜メッシュをPCフィルム上に形成し、サンプルを得た。
各種評価を行った結果、リタデーション値(Re)は20nmであった。前記「電磁波シールド性能試験」によるサンプルの電磁波シールド性能は良好であった。前記「光干渉縞防止性能試験」において光干渉縞が発生せず、視認性は良好であった。
【0037】
実施例3
無延伸ポリカーボネート(PC)フィルム(MGCフィルシート社製100μm厚)上にアクリル系接着フィルム(デュポン社製パイララックスLF−0200)を介して厚さ12μmの銅箔を接着させた。得られた銅箔付きPCフィルムにフォトリソ工程(レジストフィルム貼付け−露光−現像−ケミカルエッチング−レジストフィルム剥離)を経て、ライン幅20μm、ライン間隔500μmの銅薄膜メッシュをPCフィルム上に形成し、サンプルを得た。
各種評価を行った結果、リタデーション値(Re)は500nmであった。前記「電磁波シールド性能試験」によるサンプルの電磁波シールド性能は良好であった。前記「光干渉縞防止性能試験」において光干渉縞が僅かに発生したが、視認性はあった。
【0038】
実施例4
無延伸ポリカーボネート(PC)フィルム(MGCフィルシート社製100μm厚)上にアクリル系接着フィルム(デュポン社製パイララックスLF−0200)を介して厚さ3μmのアルミ箔を接着させた。得られたアルミ箔付きPCフィルムにフォトリソ工程(レジストフィルム貼付け−露光−現像−ケミカルエッチング−レジストフィルム剥離)を経て、ライン幅20μm、ライン間隔500μmのアルミ薄膜メッシュをPCフィルム上に形成し、サンプルを得た。
各種評価を行った結果、リタデーション値(Re)は20nmであった。前記「電磁波シールド性能試験」によるサンプルの電磁波シールド性能は良好であった。前記「光干渉縞防止性能試験」において光干渉縞が発生せず、視認性は良好であった。
【0039】
実施例5
無延伸ポリカーボネート(PC)フィルム(MGCフィルシート社製100μm厚)上にマスク層を用いて無電解ニッケルめっきを格子状に形成することによりライン幅10μm、ライン間隔500μm、ライン厚み3μmのニッケル薄膜メッシュをPCフィルム上に形成し、サンプルを得た。
各種評価を行った結果、リタデーション値(Re)は20nmであった。前記「電磁波シールド性能試験」によるサンプルの電磁波シールド性能は良好であった。前記「光干渉縞防止性能試験」において光干渉縞が発生せず、視認性は良好であった。
【0040】
実施例6
無延伸ポリカーボネート(PC)フィルム(MGCフィルシート社製100μm厚)上にAgC導電性ペースト用いてライン幅100μm、ライン間隔500μm、ライン厚み10μmの導電性印刷メッシュをスクリーン印刷で形成し、サンプルを得た。
各種評価を行った結果、リタデーション値(Re)は20nmであった。前記「電磁波シールド性能試験」によるサンプルの電磁波シールド性能は良好であった。前記「光干渉縞防止性能試験」において光干渉縞が発生せず、視認性は良好であった。
【0041】
比較例1
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製エステルE5100、38μm厚)上にアクリル系接着フィルム(デュポン社製パイララックスLF−0200)を介して厚さ12μmの銅箔を接着させた。得られた銅箔付きPETフィルムにフォトリソ工程(レジストフィルム貼付け−露光−現像−ケミカルエッチング−レジストフィルム剥離)を経て、ライン幅20μm、ライン間隔500μmの銅薄膜メッシュをPETフィルム上に形成し、サンプルを得た。
各種評価を行った結果、リタデーション値(Re)は6000nmであった。前記「電磁波シールド性能試験」によるサンプルの電磁波シールド性能は良好であった。前記「光干渉縞防止性能試験」において光干渉縞が発生し、視認性が著しく低下した。
【0042】
比較例2
一軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製エステルK1581、38μm厚)上にアクリル系接着フィルム(デュポン社製パイララックスLF−0200)を介して厚さ12μmの銅箔を接着させた。得られた銅箔付きPETフィルムにフォトリソ工程(レジストフィルム貼付け−露光−現像−ケミカルエッチング−レジストフィルム剥離)を経て、ライン幅20μm、ライン間隔500μmの銅薄膜メッシュをPETフィルム上に形成し、サンプルを得た。
各種評価を行った結果、リタデーション値(Re)は3000nmであった。前記「電磁波シールド性能試験」によるサンプルの電磁波シールド性能は良好であった。前記「光干渉縞防止性能試験」において光干渉縞が発生し、視認性が著しく低下した。
【0043】
比較例3
二軸延伸ポリカーボネート(PC)フィルム(100μm厚)上にアクリル系接着フィルム(デュポン社製パイララックスLF−0200)を介して厚さ12μmの銅箔を接着させた。得られた銅箔付きPETフィルムにフォトリソ工程(レジストフィルム貼付け−露光−現像−ケミカルエッチング−レジストフィルム剥離)を経て、ライン幅20μm、ライン間隔500μmの銅薄膜メッシュをPETフィルム上に形成し、サンプルを得た。
各種評価を行った結果、リタデーション値(Re)は7000nmであった。前記「電磁波シールド性能試験」によるサンプルの電磁波シールド性能は良好であった。前記「光干渉縞防止性能試験」において僅かに光干渉縞が発生し、視認性が低下した。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無延伸光透過型有機高分子材料を電磁波シールド層のベース基材に用いることを特徴とする光干渉縞防止性に優れた光透過型電磁波シールド材料。
【請求項2】
無延伸光透過型有機高分子材料がポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂またはポリエステル樹脂である請求項1記載の光透過型電磁波シールド材料。
【請求項3】
無延伸光透過型有機高分子材料のリタデーション値が400nm以下である請求項1記載の光透過型電磁波シールド材料。
【請求項4】
電磁波シールド層に、金属薄膜メッシュまたは導電性印刷メッシュを用いる請求項1記載の光透過型電磁波シールド材料。
【請求項5】
金属薄膜メッシュまたは導電性印刷メッシュが、銀、銅、アルミ、ニッケル、カーボン、ITO、ZnO、錫、亜鉛、チタン、タングステンおよびステンレスから選ばれた少なくとも1つを含有する化合物を用いる請求項4記載の光透過型電磁波シールド材料。
【請求項6】
電磁波シールド層の電磁波シールド性能が30デシベル以上である請求項1記載の光透過型電磁波シールド材料。
【請求項7】
偏光板若しくは位相差板を有するディスプレイに使用することを特徴とする請求項1記載の光透過型電磁波シールド材料。
【請求項8】
偏光板または位相差板を含むカーナビゲーション若しくは車載パネルに使用することを特徴とする請求項1記載の光透過型電磁波シールド材料。

【公開番号】特開2008−305829(P2008−305829A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148999(P2007−148999)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】