説明

光情報媒体用硬化性組成物および光情報媒体

【課題】組成物の粘度が低く、塗工作業性が良好であり、復元性が良好な光情報媒体の光透過層に使用する硬化性組成物、および復元性が良好な光情報媒体を提供する。
【解決手段】2以上のイソシアネート基を有する化合物(a1)、650<Mn≦1500のポリオール(a2)及び1分子中に1以上の水酸基と1以上(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(a4)[(a2)使用割合は、ポリオール合計100モル%中10〜100モル%]を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)45〜67質量%、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつリン元素を含まない化合物(B)30〜55質量%、2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつリン元素を含まない化合物(C)0〜10質量%[樹脂成分合計基準]並びに、光重合開始剤(D)を含有する光情報媒体用硬化性組成物およびこの硬化性組成物の硬化物を構成要素として含む光情報媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生専用光ディスク、記録型光ディスク等の光情報媒体に使用する硬化性組成物に関する。更に詳しくは、組成物の粘度が低く、塗工作業性が良好であり、復元性が良好な光情報媒体の光透過層に使用する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録媒体の分野では高密度化に関して様々な研究が進められている。光ディスクの分野においても、動画が記録できる0.6mm厚の基板を貼り合わせた構造のDVDが普及期を迎えている。また、デジタルハイビジョン放送が広まるにつれ、さらなる大容量の光ディスクが必要とされている。そこで記録・再生側の基板(光透過層)を0.1mm厚とした高密度光ディスクシステムが提案され、実用化されている。この0.1mm厚の光透過層の形成方法として、例えば、液状の紫外線硬化型樹脂をスピンコートし、活性エネルギー線照射により硬化させる方法が開発されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、光情報媒体に使用する為の各種の硬化性組成物が開発されている(例えば特許文献2、特許文献3)。
【0004】
しかしながら、特許文献2の実施例1に記載の単官能(メタ)アクリレートの少ない硬化性組成物の硬化物は、引張弾性率が大きく、また硬化物層上に異物が長時間押し込まれた場合、押し込み痕が残り、元の形状に復元せず、光情報媒体の記録・再生時にエラーが発生してしまう場合がある。また、特許文献2の比較例3に記載のウレタンアクリレートの含有量が多いものは高粘度であり、塗工作業性の点では必ずしも良好とは言えない。なお、本明細書においては、上述したような押し込み痕が残らずに元の形状に復元する性質を「復元性」と言う。
【0005】
特許文献3に記載の光記録媒体の保護層を形成する為の放射線硬化性組成物(A)も、復元性の点で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−85836号公報
【特許文献2】特開2003−96146号公報
【特許文献3】特開2009−48738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、組成物の粘度が低く、塗工作業性が良好であり、復元性が良好な光情報媒体の光透過層に使用する硬化性組成物、および復元性が良好な光情報媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも下記化合物(a1)、(a2)および(a4)を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)45〜67質量%、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の化合物であって、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつリン元素を含まない化合物(B)30〜55質量%、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の化合物であって、2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつリン元素を含まない化合物(C)0〜10質量%、
[樹脂成分合計基準]
並びに、
光重合開始剤(D)
を含有する光情報媒体用硬化性組成物である。
(a1)1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、
(a2)数平均分子量が650より大きく1500以下のポリオール、
(a4)1分子中に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物。
[(a2)成分の使用割合は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を構成するポリオール合計100モル%中10〜100モル%である。]
また、本発明は前記の硬化性組成物の硬化物を構成要素として含む光情報媒体である。
【0009】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基」または「メタクリロイル基」を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組成物の粘度が低く、塗工作業性が良好であり、復元性が良好な光情報媒体の光透過層に使用する硬化性組成物および復元性が良好な光情報媒体を提供できる。
【0011】
例えば、先に述べたように特許文献3に記載の保護層用放射線硬化性組成物の硬化物層は復元性が不十分であるが、本発明では(a2)成分等の特定成分を使用しているので復元性が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[(A)成分]
本発明の硬化性組成物に使用するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、少なくとも(a1)成分、(a2)成分および(a4)成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである。また、(a1)成分、(a2)成分および(a4)成分に加えて、(a3)成分も併せて反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。この(A)成分は、硬化性組成物に低収縮性を付与し、またその硬化物に強靭性や可撓性を付与する。
【0013】
<(a1)成分>
(a1)成分は、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物である。この(a1)成分は、硬化性組成物の硬化物に可撓性を付与する。
【0014】
(a1)成分の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。さらに、これらイソシアネート化合物と、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、水等の活性水素原子を少なくとも2つ以上有する化合物との反応によって得られるポリイソシアネート化合物や、イソシアネート化合物の3量体〜5量体を用いることもできる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0015】
これらの中でも、硬化物に優れた靭性と難黄変性を付与できることから、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族骨格のジイソシアネート化合物が好ましい。
【0016】
<(a2)成分>
(a2)成分は、数平均分子量が650より大きく1500以下のポリオールである。この(a2)成分は、復元性を向上させ、光透過層として使用した際の光情報媒体の寸法安定性を良好にする。(a2)成分の数平均分子量は、さらに650〜1200であることが好ましい。
【0017】
(a2)成分の数平均分子量は、JIS K−1557−1に従って測定した水酸基価から、下記式(1)を用いて算出できる。
数平均分子量=ポリオール1分子中の水酸基数/(水酸基価×10-3/56.11)・・・(1)
(a2)成分としては、例えば、市販されている各種の多価アルコール類を使用できる。
【0018】
その具体例としては、ポリエチレングリコール(繰り返し単位数15〜22)、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位数11〜16)、ポリテトラメチレングリコール(繰り返し単位数9〜13)等のポリエーテルポリオール類;ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類と、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸類またはこれら多塩基酸の酸無水物類との反応によって得られるポリエステルポリオール類;これら多価アルコール類と、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるポリカプロラクトンポリオール類;1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリメチルヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等のジオール類と、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の炭酸エステル類とのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール類;ポリブタジエングリコール類等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0019】
これらの中でも、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール類、ポリカーボネートポリオール類は、得られる光情報媒体の寸法安定性に優れるので特に好ましい。
【0020】
<(a3)成分>
(a3)成分は、数平均分子量が650以下のポリオールである。この(a3)成分は任意成分であり、(a2)成分と併用することにより硬化性組成物の硬化性を良好にする。
【0021】
(a3)成分としては、例えば、市販されている各種の多価アルコール類を使用できる。その具体例としては、ポリエチレングリコール(繰り返し単位数1〜14)、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位数1〜10)、ポリテトラメチレングリコール(繰り返し単位数1〜8)等のポリエーテルポリオール類;ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;これら多価アルコール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテル変性ポリオール類;環状ヒドロキシカルボン酸エステルとアンモニアまたは1個の第一級または第二級アミノ窒素を含む化合物との反応によって得られるアミドポリオール類が挙げられる。
【0022】
これらのなかでも、アミドポリオール類は、硬化物の強伸度バランスを向上させるので特に好ましい。
【0023】
<(a4)成分>
(a4)成分は、1分子中に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。この(a4)成分は、これらの基を有することにより(A)成分に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入出来るものであれば良く、それ以外の構造は特に限定されない。
【0024】
(a4)成分の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類や、これらのカプロラクトンの付加物が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して使用できる。これらの中でも、(A)成分の低粘度化の点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0025】
<(A)成分の合成法>
(A)成分の合成法は特に限定されず、従来から知られるウレタン(メタ)アクリレート合成法を適用できる。具体的には、例えば、フラスコ内に2モルのジイソシアネート[(a1)成分]を仕込み、ジブチル錫オクテート等の触媒を(a1)〜(a4)成分の総仕込量に対して50〜300ppm混合し、フラスコ内温度を40〜70℃に保ちながら、1モルのジオール化合物[(a2)成分および(a3)成分]を2〜4時間かけて滴下し反応させて、ウレタンプレポリマーを得る。次いで2モルの(a4)成分を滴下する。この(a4)成分の滴下量は、ウレタンプレポリマー末端に残存するイソシアネート基と(a4)成分に含まれる全水酸基が当量となる量にすればよい。フラスコ内温60〜80℃に保ちながら(a4)成分を滴下し付加反応させて、ウレタン(メタ)アクリレート[(A)成分]を得る。その反応終点は、イソシアネート量の定量により判定できる。反応率は、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。
【0026】
なお、本発明において、(a2)成分の使用割合は、硬化性組成物が硬化する際の硬化収縮率低減の観点から、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を構成する為のポリオール合計100モル%中10〜100モル%が好ましく、20〜100モル%がさらに好ましい。
【0027】
硬化性組成物中の(A)成分の配合割合は、樹脂成分合計基準で、45〜67質量%であり、好ましくは50〜62質量%である。ここで樹脂成分とは、樹脂自体および樹脂を構成する為の重合性成分を意味する。すなわち樹脂成分合計基準とは、具体的には(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計量を100質量%とし、これを基準に各成分の配合割合を算定することを意味する。(A)成分の配合割合の範囲の各下限値は、組成物の硬化収縮率の低減効果を十分に発現し、かつ硬化物の可撓性を良好とする点で意義が有る。また各上限値は、硬化性組成物の液粘度を低くし、基材への塗布作業性を良好とする点で意義が有る。
【0028】
[(B)成分]
本発明の硬化性組成物に使用する(B)成分は、前記(A)成分以外の化合物であって、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつリン元素を含まない化合物である。この(B)成分は硬化性組成物の粘度を調節し、硬化物に良好な表面硬度を付与する。
【0029】
(B)成分の具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−イソブチル−2−メチルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を併用して使用できる。
【0030】
これらの中でも、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートは、硬化性組成物を低粘度化し、塗工作業性を良好にするので特に好ましい。
【0031】
硬化性組成物中の(B)成分の配合割合は、樹脂成分合計基準で、30〜55質量%であり、好ましくは30〜45質量%である。これら各範囲は、硬化物の機械物性や組成物の硬化性の点で意義が有る。
【0032】
[(C)成分]
本発明の硬化性組成物に使用する(C)成分は、前記(A)成分以外の化合物であって、2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつリン元素を含まない化合物である。この(C)成分は、硬化物の機械物性を向上させる。
【0033】
(C)成分としては、例えば、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、およびエポキシポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
(C)成分として使用できる3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートおよびカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
(C)成分として使用できるジ(メタ)アクリレートの具体例としては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11−ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13−トリデカンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
(C)成分として使用できるポリエステルポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応で得られる化合物が挙げられる。
【0037】
(C)成分として使用できるエポキシポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノール型エポキシジ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
これら(C)成分は1種を単独で、または2種以上を併用して使用できる。
【0039】
これらの中でも、得られる硬化物の機械物性を向上できる点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが好ましい。
【0040】
硬化性組成物中の(C)成分の配合割合は、樹脂成分合計基準で、0〜10質量%であり、好ましくは0〜5質量%である。これら各範囲は、硬化時の反りを小さくできる点で意義が有る。
【0041】
[(D)成分]
本発明の硬化性組成物に使用する(D)成分は、光重合開始剤である。この(D)成分は、組成物を活性エネルギー照射により硬化させる成分である。
【0042】
(D)成分の具体例としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して使用できる。
【0043】
これらの中でも、組成物の硬化性および硬化物の難黄変性の点から、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オンが好ましい。
【0044】
硬化性組成物中の(D)成分の配合量は、樹脂成分合計100質量部に対して、組成物の空気雰囲気中での硬化性の点から0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、組成物の深部硬化性、硬化物の難黄変性および光透過層の膜厚安定性の点から、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
【0045】
[他の成分(添加剤)]
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分(添加剤)を適宜配合できる。その具体例としては、熱重合開始剤、酸化防止剤、光安定剤、光増感剤、熱可塑性樹脂、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等の添加剤が挙げられる。他の成分の配合量は特に限定されないが、樹脂成分合計100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。
【0046】
以上の各成分を配合した本発明の硬化性組成物は、光情報媒体の製造に使用するものである。具体的には、光情報媒体を構成する層の少なくとも一つを、この組成物を硬化して形成する。
【0047】
硬化性組成物中にダストやゲル物等の異物が存在すると、その硬化物からなる層を有する光情報媒体において読み取りまたは書き込みエラーが生じる場合がある。したがって、予め異物を除去する為に、ろ過フィルターを用いて硬化性組成物をろ過することが好ましい。例えば、好ましくは5μm以上、より好ましくは1μm以上の異物を除去できるろ過フィルターを使用すると良い。ろ過フィルターの素材としては、例えば、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロンが挙げられる。
【0048】
また、光情報媒体の光透過層等の層に気泡が存在すると、これが読み取りまたは書き込みエラーの原因となる場合がある。したがって、予め硬化性組成物を脱気することが好ましい。例えば、真空、超音波振動若しくは遠心回転条件下、またはその組み合わせの条件下において脱気を行えば良い。
【0049】
この硬化性組成物を、例えば、支持基体上に形成された情報記録層の上に塗布し、その塗膜を硬化させることにより、情報記録層上に本発明の硬化性組成物の硬化物からなる層(以下、「硬化物層」と称す)を形成できる。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ブラシコート法等の公知の方法を用いることができる。塗膜の厚さに関しては、その硬化物層が後述の厚さになるように塗布することが好ましい。この塗膜は、活性エネルギー線の照射により硬化できる。活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、X線、紫外線、可視光線が挙げられる。活性エネルギー線を照射する際の雰囲気は、空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中の何れでも良い。ただし、製造コストの点から空気中での照射が好ましい。
【0050】
硬化性組成物の硬化反応に関して、その反応率は90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましい。これらの範囲は、層中に残存する未反応の(メタ)アクリレート類や光重合開始剤等の成分が高温高湿条件下で経時的に揮発することを抑制し、硬化物層の層厚変化を防止する点で意義が有る。高い反応率にする為の活性エネルギー線の照射条件は、例えば、活性エネルギー線として紫外線を使用した場合、積算光量を500mJ/cm2以上、好ましくは1,000mJ/cm2以上、より好ましくは2,000mJ/cm2以上である。硬化性組成物の反応率を測定する方法としては、例えば、赤外分光法により(メタ)アクリロイル基の残存量を測定する方法、硬化物の弾性率、Tg等の物理特性の飽和度から測定する方法、ゲル分率により架橋度合いを測定する方法が挙げられる。
【0051】
この硬化物層は、例えば、光情報媒体の情報記録層上に形成される光透過層である。光透過層は光情報媒体の表面保護層であり、かつ情報記録層へ照射される光を透過する層である。硬化物層(光透過層等)の層厚は、好ましくは0.5〜300μm、より好ましくは1〜200μm、特に好ましくは1.5〜150μmである。これら範囲の各下限値は、光情報媒体の表面保護の点で意義が有る。また各上限値は、光情報媒体の反り抑制の点で意義が有る。また、硬化物層(光透過層等)は、波長400nm程度のレーザー光に対する光透過率が85%以上であることが好ましい。光透過率は、例えば層厚100μmの硬化物層について分光光度計を用いて測定することができる。
【0052】
また、この硬化物層は、2層以上の多層化した記録層を有する光情報媒体の中間層としても好適に使用できる。具体的には、例えば半透明記録層と他の記録層を所定間隔で隔てる為に、両層の間に所定厚の硬化物層(透明な中間層)を形成できる。中間層を形成する際の鋳型については、特に限定されないが、アモルファスポリオレフィン製鋳型が好ましい。
【0053】
これらの硬化物層を形成する場合は、硬化性組成物の粘度を適宜調整することが好ましい。粘度は、例えばE型粘度計を用いて測定することができる。例えば、100μm厚の光透過層を形成する場合は、硬化性組成物の25℃における粘度は500〜2500mPa・sが好ましく、500〜2000mPa・sがより好ましい。また、25μm厚の中間層を形成する場合は、その粘度は50〜1000mPa・sが好ましい。
【0054】
光情報媒体は、例えば、支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有する構造を具備する。この光透過層を通して記録光または再生光が入射し、情報記録層に情報が記録され、情報記録層の情報が読み出される。
【0055】
光情報媒体の情報記録層を構成する材料は特に限定されず、読み取り専用型媒体、相変化型記録媒体、ピット形成タイプ記録媒体、光磁気記録媒体等に適用可能な材料を必要に応じて使用すれば良い。例えば、Au、Ag、Ag・Pd・Cu合金、Ag・In・Te・Sb合金、Ag・In・Te・Sb・Ge合金、Sb・Te合金、Tb・Fe・Co合金、色素を使用できる。また、情報記録層の少なくとも一方の面に、情報記録層の保護やレーザー光の反射率を変化させる等の光学的効果を目的として、SiN、ZnS、SiO2等の誘電体層を設けても良い。
【0056】
光情報媒体の支持基体としては、例えば、金属、ガラス、セラミックス、紙、木材、プラスチック等の材料やこれらの複合材料を使用できる。特に、従来の光ディスク製造プロセスを利用できる点から、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が好適である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の記載中「部」は「質量部」を意味する。実施例の評価項目およびその評価方法を以下に示す。
【0058】
(1)粘度(単位:mPa・s):
硬化性組成物の粘度を、E型粘度計(商品名TVE−20、東機産業社製)を用いて25℃で測定した。判定においては、塗工作業性が良好となる2500mPa・s以下を良好な粘度の基準とした。
「○」:500mPa・s以上2500mPa・s以下。
「×」:2500mPa・sを上回る。
【0059】
(2)弾性率(単位:MPa):
まず、ポリカーボネート樹脂(飽和吸水率0.15%)を射出成型して光ディスク状の透明鏡面基板(直径12cm、板厚1.1mm)を得た。その基板の片面に、Ag98Pd1Cu1(原子比)合金を膜厚20nmとなるようにスパッタリング法にて製膜し、基板の鏡面上に銀合金反射膜を有する評価用光ディスク基材を得た。次いで、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下で、光ディスク基材の銀合金反射膜上に硬化性組成物をスピンコーターを用いて塗布した。次いで、塗布面の上方より、UVランプ(商品名Dバルブランプ、フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製)を用いて、積算光量1000mJ/cm2のエネルギー量で紫外線を照射し、塗膜を硬化させて、平均層厚がほぼ100μmの硬化物層を有する評価用光ディスクを得た。なお、紫外線の積算光量は、紫外線光量計(商品名UV−350、オーク(株)製にて測定)を用いて測定した。次いで、評価用光ディスク基材から硬化物層を剥離し、15mm×100mm×100μmの試験片を切り出した。精密万能試験機(商品名オートグラフAG−5kNIS、島津製作所社製)を用いて、表線間距離50mm、引張速度20mm/分で、23℃、相対湿度50%の環境下で、試験片の引張弾性率(MPa)を測定した。判定は、光透過層が充分な低弾性率で復元性を持つ200MPa以下を基準に行った。
「○」:200MPa以下。
「×」:200MPaを上回る。
【0060】
(3)復元性:
前記「(2)弾性率」の評価法に記載の方法に従って作製した評価用光ディスクについて、光透過層をサファイア針(直径1mm)にて10g荷重で1分間押し込み、押し込み後10分経過した際に押し込み痕を顕微鏡にて観察した。判定は、押し込み痕が復元しているか否かを基準に行った。
「○」:押し込み痕が復元している。
「×」:押し込み痕が復元していない。
【0061】
[合成例1](ウレタンアクリレートUA1(A成分)の製造)
5リットルの4つ口フラスコに、(a1)成分としてイソホロンジイソシアネート1111g(5モル)をジブチル錫ジオクテート0.455gと共に仕込み、ウォーターバスでフラスコ内温が60℃になるように加熱した。次いで、フラスコ内温を60℃に保ち、その混合物を撹拌しながら、(a2)成分として数平均分子量884のポリテトラメチレングリコール(商品名PTG850SN、保土谷化学工業社製)1127g(1.275モル)、(a3)成分として分子量161のN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド161g(1モル)を40℃に保温した状態で側管付きの滴下ロートを用いて2時間の等速滴下で加え、更に、同温度で2時間撹拌して反応させた。その後、フラスコ内温を75℃に保ちながら、(a4)成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート633g(5.455モル)とハイドロキノンモノメチルエーテル1.518gの均一混合溶液を滴下ロートを用いて2時間の等速滴下で加え、更に、フラスコ内温を75℃に保ちながら、4時間撹拌してウレタンアクリレートUA1を得た。(a2)成分の使用割合は、56モル%である。
【0062】
[合成例2](ウレタンアクリレートUA2(A成分)の製造)
(a2)成分として数平均分子量999のポリテトラメチレングリコール(商品名PTG1000SN、保土谷化学工業社製)1499g(1.5モル)を用いたこと以外は、合成例1と同様にしてウレタンアクリレートUA2を得た。(a2)成分の使用割合は、60モル%である。
【0063】
[合成例3](ウレタンアクリレートUA3(A成分)の製造)
(a1)成分として2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの質量比が60/40の混合物(商品名VESTANAT TMDI、エヴォニックデグサ社製)1050g(5モル)、(a2)成分として数平均分子量669のポリテトラメチレングリコール(商品名PTG650、保土谷化学工業社製)1338g(2モル)、(a3)成分として分子量161のN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド80.5g(0.5モル)を用いたこと以外は、合成例1と同様にしてウレタンアクリレートUA3を得た。(a2)成分の使用割合は、80モル%である。
【0064】
[合成例4](ウレタンアクリレートUA4(A成分)の製造)
(a2)成分として数平均分子量999のポリテトラメチレングリコール(商品名PTG1000SN、保土谷化学工業社製)500g(0.5モル)、(a3)成分として分子量161のN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド322g(2モル)を用いたこと以外は、合成例3と同様にしてウレタンアクリレートUA4を得た。(a2)成分の使用割合は、20モル%である。
【0065】
[合成例5](ウレタンアクリレートUA5(A成分)の製造)
(a2)成分として数平均分子量764の1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールのモル比が1:1のジオール混合物と、エチレンカーボネートとを反応させて合成された下記構造式(1)で表されるポリカーボネートジオール(商品名デュラノールT5650J、旭化成ケミカルズ社製)1910g(2.5モル)を用い、(a3)成分は使用しなかったこと以外は、合成例1と同様にしてウレタンアクリレートUA5を得た。(a2)成分の使用割合は、100モル%である。
【0066】
【化1】

【0067】
(式(1)中、nは5または6であり、mは付加数である。)
[合成例6](ウレタンアクリレートUA6(その他の成分)の製造)
(a2)成分は使用せず、(a3)成分として分子量150のトリエチレングリコール375g(2.5モル)を用いたこと以外は、合成例1と同様にしてウレタンアクリレートUA6を得た。(a2)成分の使用割合は、0モル%である。
【0068】
表1に、以上の合成例1〜6における原料の仕込み量(モル)および(a2)成分の使用割合(モル%)を示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1中の略号は、以下の化合物を示す。
・「IPDI」:イソホロンジイソシアネート
・「VESTANAT TMDI」:2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの質量比が60/40の混合物(商品名VESTANAT TMDI、エヴォニックデグサ社製)
・「PTG850SN」:数平均分子量884のポリテトラメチレングリコール(商品名PTG850SN、保土谷化学工業社製)
・「PTG1000SN」:数平均分子量999のポリテトラメチレングリコール(商品名PTG1000SN、保土谷化学工業社製)
・「PTG650」:数平均分子量669のポリテトラメチレングリコール(商品名PTG650、保土谷化学工業社製)
・「デュラノールT5650J」:数平均分子量764の1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールのモル比が1:1のジオール混合物と、エチレンカーボネートとを反応させて合成された前記構造式(1)で表されるポリカーボネートジオール(商品名デュラノールT5650J、旭化成ケミカルズ社製)
・「HEA」:2−ヒドロキシエチルアクリレート。
【0071】
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製:
(A)成分として上記合成例1で得たウレタンアクリレートUA1を61.6部、(B)成分としてテトラヒドロフルフリルアクリレートを33.4部、(C)成分としてトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート5部、(D)成分として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン4部、添加剤として2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール0.05部、カヤマーPM−21(商品名、日本化薬社製)0.05部を混合溶解し、ろ過精度1μmのフィルターでろ過し、1.3×104Paで脱気して、硬化性組成物を得た。
【0072】
(2)評価用光ディスクの作製:
上記(1)で調製した硬化性組成物を用い、前記評価法の(2)弾性率に記載の方法に従って、平均層厚がほぼ100μmの硬化物層を有する評価用光ディスクを作製した。得られた硬化性組成物および評価用光ディスクの評価結果を表2に示す。
【0073】
[実施例2〜10および比較例1〜3]
表2および表3に示す組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして評価用光ディスクを作製し、評価した。評価結果を表2および表3に示す。
【0074】
比較例1においては(A)成分の使用量が多過ぎたので、粘度が2500mPa・sを超えてしまった。比較例2においては(a2)成分を使用しなかったので、復元性が劣っていた。また、比較例3では(B)成分の使用量が少な過ぎたので、復元性が劣っていた。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
表2および表3中の略号は、以下の化合物を示す。
・「UA1」:合成例1で得たウレタンアクリレートUA1
・「UA2」:合成例2で得たウレタンアクリレートUA2
・「UA3」:合成例3で得たウレタンアクリレートUA3
・「UA4」:合成例4で得たウレタンアクリレートUA4
・「UA5」:合成例5で得たウレタンアクリレートUA5
・「THFA」:テトラヒドロフルフリルアクリレート
・「MEDA」:2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチルアクリレート
・「LA」:ラウリルアクリレート
・「TAIC」:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
・「HCPK」:1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン
・「Irg.127」:2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン
・「BHT」:2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール
・「PM−21」:カヤマーPM−21(商品名、日本化薬社製)
・「UA6」:合成例6で得たウレタンアクリレートUA6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記化合物(a1)、(a2)および(a4)を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)45〜67質量%、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の化合物であって、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつリン元素を含まない化合物(B)30〜55質量%、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の化合物であって、2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつリン元素を含まない化合物(C)0〜10質量%、
[樹脂成分合計基準]
並びに、
光重合開始剤(D)
を含有する光情報媒体用硬化性組成物。
(a1)1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、
(a2)数平均分子量が650より大きく1500以下のポリオール、
(a4)1分子中に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物。
[(a2)成分の使用割合は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を構成するポリオール合計100モル%中10〜100モル%である。]
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、下記化合物(a1)、(a2)、(a3)および(a4)を反応させて得られるものである請求項1に記載の光情報媒体用硬化性組成物。
(a1)分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、
(a2)数平均分子量が650より大きく1500以下のポリオール、
(a3)数平均分子量が650以下のポリオール、
(a4)1分子中に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物。
[(a2)成分の使用割合は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を構成するポリオール合計100モル%中10〜100モル%である。]
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化性組成物の硬化物を構成要素として含む光情報媒体。

【公開番号】特開2012−169003(P2012−169003A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28651(P2011−28651)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】