説明

光情報媒体

【課題】 光透過層の膜厚変化が小さく、また、外部の環境変化(温度および湿度)に対する寸法安定性に優れた光透過層を有する光情報媒体を提供する。
【解決手段】 支持基体上に情報記録面を有し、この情報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光および再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、前記光透過層が、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、一般式(I)で示されるジ(メタ)アクリレート(B)、一般式(II)で示されるジ(メタ)アクリレート(C)および光重合開始剤(D)を含有する硬化性組成物の硬化物であり、該硬化物の反応率が90%以上、かつ該硬化物の23℃における引張弾性率が100MPa以上600MPa以下である光情報媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生専用光ディスク、記録型光ディスク等の光情報媒体に関するものであり、更に詳しくは、光透過層の膜厚変化が小さく、また、外部の環境変化(温度および湿度)に対する寸法安定性に優れた光透過層を有する光情報媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録媒体の分野では高密度化に関して様々な研究がすすめられている。光ディスクの分野においても、動画が記録できる0.6mm厚の基板を貼り合わせた構造のDVDが普及期を迎えている。
【0003】
しかしながら今後、デジタルハイビジョン放送が広まるにつれ、さらなる大容量の光ディスクが必要とされており、記録・再生側の基板(光透過層)を0.1mm厚とし、NAを0.85程度、レーザー波長400nm程度とした高密度光ディスクシステムが提案され、実用化されつつある。
【0004】
この0.1mm厚の光透過層の形成方法としては、プラスチック製の透明シートを貼り合わせる手法や、液状の紫外線硬化型樹脂をスピンコート法により塗布した後、活性エネルギー線の照射により硬化させる方法により形成する手法が開発されている(例えば特許文献1〜3を参照)。高速記録用光ディスクを視野に入れる場合には、周方向の膜厚均一性に優れることから、スピンコート法により形成することが望ましい。このスピンコート法に用いる液状紫外線硬化型樹脂としては、例えば、特許文献4、5に記載の組成物が挙げられる。
【0005】
しかしながら、前記高密度光ディスクシステムに用いる光透過層について、透明シートを貼り合わせる方法、液状紫外線硬化型樹脂をスピンコートする方法で光透過層を形成するにしても、特許文献1〜3に記載されるとおり、外部環境(温度や湿度)の変化により光ディスクに生じる反りが課題である。
【0006】
さらに、特許文献4、5記載の液状紫外線硬化型樹脂を硬化して0.1mm厚の光透過層を持つ光ディスクを得た場合には、反りが大きい、あるいは、高温高湿条件において、光透過層の厚みが減少するという問題があった。前記高密度光ディスクシステムにおいてはその光透過層膜厚が0.1mm±3μm、即ち、100μm±3μmの範囲を越えると球面収差が大きくなり、情報の記録または再生に重大な問題を引き起こすため、特に、光透過層の厚みが減少する、あるいは増加するといった現象は避ける必要がある。
【特許文献1】特開2002−92945号公報
【特許文献2】特開2003−91883号公報
【特許文献3】特開2003−173571号公報
【特許文献4】特開平4−324135号公報
【特許文献5】特開平8−194968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、外部の環境変化(温度および湿度)に対する寸法安定性に優れ、なおかつ、高温高湿条件下においても、光透過層の膜厚変化が小さい光情報媒体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、支持基体上に情報記録面を有し、この情報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光および再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、前記光透過層が、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、下記一般式(I)で示されるジ(メタ)アクリレート(B)、下記一般式(II)で示されるジ(メタ)アクリレート(C)および光重合開始剤(D)を含有する組成物の硬化物であり、該硬化物の反応率が90%以上、かつ該硬化物の25℃における引張弾性率が100MPa以上600MPa以下である光情報媒体である。
【0009】
CH=CRCOO(Cα2α)OCOCR=CH・・・(I)
(式中、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。またαは2〜8の整数を示す。)
CH=CRCOO(Cβ2β)OCOCR=CH・・・(II)
(式中、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。またβは9〜16の整数を示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、外部の環境変化(温度および湿度)に対する寸法安定性に優れ、なおかつ、高温高湿条件下においても、光透過層の膜厚変化が小さい光情報媒体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0012】
本発明の光情報媒体は、支持基体上に情報記録面を有し、この情報記録面上に光透過層を有するという構造を具備し、この光透過層を通して記録光および再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体である。
【0013】
本発明に使用する支持基体としては、例えば、金属、ガラス、セラミックス、紙、木材、プラスチック等の材料が使用可能である。特に、従来の光ディスク製造プロセスを利用できることから、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が好適である。
【0014】
本発明の光情報媒体は、情報記録面として記録層を有する。この記録層の材料は特に限定されず、読み取り専用型媒体、相変化型記録媒体、ピット形成タイプ記録媒体、光磁気記録媒体等に適用可能な材料を必要に応じて使用すればよい。例えば、金、銀、銀・Pd・Cu合金、アルミ、アルミチタン合金、銀・In・Te・Sb合金、銀・In・Te・Sb・Ge合金、Ge・Sb・Te合金、Ge・Sn・Sb・Te合金、Sb・Te合金、Tb・Fe・Co合金、色素等が使用可能である。また、記録層の少なくとも一方の側に、記録層の保護や光学的効果を目的としてSiN、ZnS、SiO等の誘電体を設けることも可能である。
【0015】
本発明の光情報媒体は、情報記録面上に光透過層を有する。この光透過層は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)(以下「成分(A)」ともいう)、下記一般式(I)で示されるジ(メタ)アクリレート(B)(以下「成分(B)」ともいう)、下記一般式(II)で示されるジ(メタ)アクリレート(C)、(以下「成分(C)」ともいう)および光重合開始剤(D)(以下「成分(D)」ともいう)を含有する硬化性組成物の硬化物であり、該硬化物の反応率が90%以上、かつ該硬化物の25℃における引張弾性率が100MPa以上600MPa以下である。
【0016】
CH=CRCOO(Cα2α)OCOCR=CH・・・(I)
(式中、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。またαは2〜8の整数を示す。)
CH=CRCOO(Cβ2β)OCOCR=CH・・・(II)
(式中、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。またβは9〜16の整数を示す。)
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、硬化性組成物に低収縮性を付与する成分であり、またその硬化物に強靭性および可とう性を付与するための成分である。
【0017】
使用可能なウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソシアネート化合物、多価アルコールおよび水酸基含有(メタ)アクリレートから合成した化合物が挙げられる。
【0018】
成分(A)を合成するために使用するイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0019】
なかでも、硬化物に優れた靭性と難黄変性を付与できることから、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族骨格のジイソシアネート化合物が好ましい。
【0020】
成分(A)を合成するために使用する多価アルコールは、特に限定されず、例えば、従来より市販されている各種の多価アルコール類が使用可能である。その具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1−メチルブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類;ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール類;これらアルコール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテル変性ポリオール類;これら多価アルコール類と、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸類またはこれら多塩基酸の酸無水物類との反応によって得られるポリエステルポリオール類;これら多価アルコール類と、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるポリカプロラクトンポリオール類;これら多価アルコール類および多塩基酸類と、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるカプロラクトン変性ポリエステルポリオール類;1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリメチルヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等のジオール類と、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート及びジフェニルカーボネート等の炭酸エステル類とのエステル交換反応により得られるポリカーボネートジオール類;ポリブタジエングリコール類等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0021】
これらの中でも、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートジオール類は、耐湿性と強伸度バランスに優れることから、得られる光透過層の膜厚変化が小さく、得られる光情報媒体の寸法安定性に優れるため、特に好ましい。
【0022】
成分(A)を合成するために使用する水酸基含有(メタ)アクリレートは、具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基、および分子内に少なくとも1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであればよく、特に限定されない。その具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類や、これらのカプロラクトンの付加物等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。なかでも、低粘度であることから、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0023】
成分(A)の合成手法は、特に限定されず、従来から知られるウレタン(メタ)アクリレート合成手法を使用できる。具体的には、例えば、フラスコ内に、2モルのジイソシアネートを仕込み、更にジブチル錫ジラウレート等の公知の触媒を総仕込量に対して50〜300ppmを混合し、フラスコ内温度を40〜60℃に保ちながら、滴下ロートを用いて1モルのジオール化合物を2〜4時間かけて滴下して、ウレタンプレポリマーを得る。その後、得られたウレタンプレポリマー末端に残存するイソシアネート基に、当量のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを滴下し、フラスコ内温60〜75℃で付加反応させればよい。
【0024】
本発明において、成分(A)の使用割合は、硬化性組成物の低収縮性の観点から、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量%を基準として、または後述する成分(A)〜(C)以外のエチレン性不飽和化合物(E)(以下「成分(E)」ともいう)を含む場合は成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(E)の合計100質量%を基準として40質量%以上が好ましく、硬化性組成物を低粘度化して塗布作業性を良好にするためには90質量%以下が好ましい。さらに下限については50質量%以上が特に好ましく、上限については80質量%以下が特に好ましい。
【0025】
成分(A)の含有量の下限値が40質量%以上の場合には、組成物の硬化収縮率の低減効果が十分に発現し、かつ得られる硬化物の可撓性が良好となる傾向にある。また、その上限値が90質量%以下の場合には、得られる組成物の液粘度が低くなり、基材への塗工作業性が良好となる傾向にある。
【0026】
一般式(I)で示される成分(B)は、硬化性組成物に低粘度化と速硬化性を付与するとともに、得られる硬化物に表面硬度、耐湿性及び支持基体との密着性を付与する成分である。
【0027】
一般式(I)で表される成分(B)の具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
それらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0029】
それらの中でも、低粘度化、低揮発性、および硬化性のバランスが良好であることから、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
本発明において、成分(B)の含有量は特に限定されないが、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量%中、または成分(E)を含む場合は成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(E)の合計量100質量%中、下限値が1質量%以上であることが好ましく、上限値が30質量%以下であることが好ましい。
【0031】
成分(B)の含有量の下限値が1質量%以上の場合には、得られる硬化物の硬化性と密着性が良好となる傾向にある。また、その上限値が30質量%以下の場合には、得られる組成物の硬化収縮率が低減され、可とう性が良好になる傾向にある。
【0032】
この成分(B)の含有量は、下限値を5質量%以上とすることがより好ましい。またその上限値を16質量%以下とすることがより好ましい。
【0033】
一般式(II)で示される成分(C)は、得られる組成物の低粘度化を付与するとともに、得られる硬化物の硬化収縮率を低減し、耐湿性を向上する成分である。
【0034】
一般式(II)で表される成分(C)の具体例としては、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11−ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13−トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
それらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0036】
本発明において、成分(C)の含有量は特に限定されないが、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量%中、または後述する成分(E)を含む場合は成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(E)の合計100質量%中、下限値が1質量%以上であることが好ましく、上限値が30質量%以下であることが好ましい。
【0037】
成分(C)の含有量の下限値が1質量%以上の場合には、得られる組成物の硬化収縮率が低下する傾向にある。また、その上限値が30質量%以下の場合には、得られる組成物の硬化性が良好となる傾向にある。
【0038】
この成分(C)の含有量は、下限値を5質量%以上とすることがより好ましい。またその上限値を20質量%以下とすることがより好ましい。更に好ましくは、下限値7質量%以上であり、またその上限値は14質量%以下である。
【0039】
本発明に使用する硬化性組成物は、成分(D)を含有することにより、活性エネルギー照射により効率よく硬化物を得ることができる。
【0040】
成分(D)の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート等の光重合開始剤が挙げられる。
【0041】
なかでも硬化性及び硬化物の難黄変性の観点から2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンおよび1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンが好ましい。
【0042】
これらは、1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0043】
本発明において、成分(D)の含有量は特に限定されないが、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、または後述する成分(E)を含む場合は成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(E)の合計100質量部に対して、1〜5質量部の範囲で含有することが好ましい。
【0044】
この成分(D)の含有量は、空気雰囲気中での硬化性の観点から1質量部以上であることが好ましく、深部硬化性、難黄変性及び光透過層膜厚安定性の観点から5質量部以下であることが好ましい。
【0045】
更に、成分(D)の含有量は、下限値が1.5質量部であることがより好ましい。また、その上限値は4質量部であることがより好ましい。
【0046】
本発明に使用する硬化性組成物は、前述した成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を構成成分とするものであるが、本発明の特性を損なわない範囲であれば、必要に応じてそれら成分(A)〜(C)以外のエチレン性不飽和化合物(E)を含有させることができる。
【0047】
成分(E)としては、例えば多官能(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル、モノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ビニル化合物等が挙げられる。
【0048】
成分(E)のうち、多官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性トリメチロールプロパントリアクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
ジ(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えばジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカンジメタノール、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル酸シクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールA、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、水添ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0050】
モノ(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えばジ(メタ)(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2−エチル−ヘキシル、エチレンオキサイド変性2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロドデカニル、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
またポリエステルポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えばフタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールおよび(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
ビニル化合物の具体例としては、例えば酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0053】
それらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0054】
それらの中でも、成分(E)としては、得られる硬化物層の硬化収縮が小さく、かつ表面硬度に優れることから、分子内に環状構造を有する化合物が好ましく、更に硬化後の残モノマーが揮発して光透過層膜厚が減少しないように分子量170以上であることが好ましい。
【0055】
この分子内に環状構造を有し、且つ、分子量170以上である化合物の具体例としては、例えば、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロドデカニル、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
本発明において、成分(E)の含有量は特に限定されないが、低揮発性と寸法安定性のバランスを考慮すると、成分(A)、(B)、(C)および(E)の合計量100質量%中、20質量%以下の範囲が好ましい。
【0057】
その他、本発明の特性が損なわない範囲であれば、例えば熱重合開始剤、酸化防止剤や光安定剤、光増感剤、熱可塑性高分子、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等、公知の添加剤等を適宜配合して用いてもよい。
これら酸化防止剤や光安定剤の添加量は特に限定されないが、それぞれ成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して、または成分(A)、(B)、(C)および(E)の合計100質量部に対して、0.001〜5質量部の範囲で添加することが好ましく、0.01〜3質量部の範囲がより好ましい。
【0058】
本発明に使用する硬化性組成物は、活性エネルギー線を照射することにより、硬化させることができる。
【0059】
この活性エネルギー線の種類としては、例えばα、β及びγ線等、公知の活性エネルギー線が挙げられ、活性エネルギー線を照射する雰囲気下は、空気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよいが、製造コストの観点からは空気中で照射することが好ましい。
【0060】
本発明において、硬化物層の厚みの下限値が20μm以上の場合には、光情報媒体の表面を十分に保護できる傾向にある。またその上限値が500μm以下であれば、得られる光情報媒体の反りを抑制しやすい傾向にある。より好ましくは、30〜300μmの範囲であり、更に好ましくは70〜150μmの範囲である。
【0061】
本発明においては、高温高湿条件下においても、光透過層の膜厚変化が小さくなるために、前記硬化性組成物を90%以上の反応率となるよう硬化させて、硬化物とする必要がある。反応率が90%を下回ると、硬化物中に残存する未反応のジ(メタ)アクリレート類や光重合開始剤が経時的に揮発し、硬化物層の膜厚が大きく減少する傾向にある。反応率は93%以上であることが好ましく、高い方がより好ましい。
【0062】
反応率を90%以上とするためには、好ましくは紫外線の積算光量を500mJ/cm以上、より好ましくは1000mJ/cm以上、さらに好ましくは2000mJ/cm以上の条件で照射して、硬化性組成物を硬化させる。
【0063】
反応率を測定する方法としては、赤外分光法により(メタ)アクリロイル基の残存量を測定する手法や、硬化物の弾性率、Tg等の物理特性の飽和度から測定する手法、ゲル分率により架橋度合いを測定する手法等が挙げられる。
【0064】
なかでも、硬化物中に残存し、硬化物から揮発し、膜厚減少の原因となりえる残渣を定量しやすいことから、ゲル分率を測定する手法を利用することが好ましい。ゲル分率の測定方法としては、硬化物を粉砕し、溶剤中で未硬化成分を抽出後、乾燥させて、その重量変化によりゲル分率を測定する手法を利用できるが特に限定されるものではない。
【0065】
本発明に使用する前記硬化物の23℃における引張弾性率は100MPa以上600MPa以下である必要があり、好ましくは、200MPa以上550MPa以下である。
【0066】
引張弾性率が100MPaを下回ると、得られる光情報媒体の光透過層が傷つきやすくなる傾向にあり、また、600MPaを越えると、外部の環境変化(温度及び湿度)に対する寸法安定性に劣る傾向にある。23℃における引張弾性率を100MPa以上600MPa以下にするためには、好ましくは紫外線の積算光量を500mJ/cm以上、より好ましくは1000mJ/cm以上、さらに好ましくは2000mJ/cm以上の条件で照射して、硬化性組成物を硬化させる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。
【0068】
なお、明細書中の部は、質量部を意味する。
【0069】
《合成例1》[ウレタンアクリレート(UA1:成分A)の製造]
(1)5Lの4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートを1110g、およびジブチル錫ジオクテート0.5gを仕込んでウォーターバスで内温が40℃になるように加熱した。
【0070】
(2)1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールを構成ユニットとするポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオールT5650J、数平均分子量760)1729gを側管付きの滴下ロートに仕込み、この滴下ロート内の液を、上記(1)で調整したフラスコ中の内容物を攪拌しつつ、フラスコ内温を70℃に保ちながら、4時間等速滴下により滴下し、同温度で2時間攪拌して反応させた。
【0071】
(3)次いで、フラスコ内容物の温度を75℃に上げ、別の滴下ロートに仕込んだ2−ヒドロキシエチルアクリレート633gと、2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール0.5gおよび、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5gを均一に混合溶解させた液を、フラスコ内温を75℃に保ちながら、2時間等速滴下により滴下した。その後、フラスコ内容物の温度を75℃に保って、4時間反応させて、ウレタンアクリレートUA1を製造した。
【0072】
《合成例2》[ウレタンアクリレート(UA2:成分A)の製造]
イソホロンジイソシアネート1110gの代わりに、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン1324gを用い、ポリカーボネートジオール1729gの代わりに、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学(株)製、商品名PTG850SN、数平均分子量860)1526.5gおよび、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド80.5gを用いること以外は、合成例1と同様にしてウレタンアクリレートUA2を製造した。
【0073】
《合成例3》[ウレタンアクリレート(UA3:成分A)の製造]
ポリカーボネートジオール1729gの代わりに、ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名プラクセル205、数平均分子量500)1137.5gを用いること以外は、合成例1と同様にしてウレタンアクリレートUA3を製造した。
【0074】
このようにして合成例1〜3で得られたウレタンアクリレートを使用して、以下実施例を行った。
【0075】
なお、実施例中の反り角とは、光ディスク最外周における硬化物層側への半径方向の最大反り角を意味する。また、負(−)の値の場合は、硬化物層側とは反対側に反った場合の最大反り角を意味する。
【0076】
実施例および比較例において得られた組成物およびそれを用いて得た光ディスクについて、以下に示す評価項目および評価方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0077】
〔評価項目および評価方法〕
1.硬化物について
<反応率>
その他性能評価用光ディスク(各組成につき多数作製)から剥離させた硬化物層(合計10g)について、5mm角に裁断した後、1Lのメチルエチルケトン中に入れ、4時間還流した。還流終了後、東洋濾紙5Cのフィルターで濾過、室温にて減圧乾燥を4時間実施した。その後、該裁断試片を23℃、相対湿度50%環境下にて24時間放置後に同環境下にて測定した重量を還流後乾燥重量とし、(還流後乾燥重量/初期重量)×100(%)の計算式により算出した値をゲル分率とし、下記基準に基づいて評価を行った。
【0078】
◎:93%以上
○:91%以上93%未満
△:85%以上91%未満
×:85%未満
<密着性>
密着性評価用光ディスクの硬化物について、JIS K5600に準拠して、4ヶ所において付着性(クロスカット法)テストを実施し、25×4=100個の升目中、密着している升目の数を数えて、下記基準により評価を行った。
【0079】
○:100/100であり、剥離が全く発生しない
△:99/100〜50/100であり、若干密着性不足
×:49/100〜0/100であり、密着性が不良
<光線透過率>
その他性能評価用光ディスクから剥離させた硬化物層について、日立製作所(株)製分光光度計U−3400を用いて、初期の波長400nmにおける光線透過率を、空気をリファレンスとして測定し、下記基準に基づいて評価を行った。
【0080】
○:80%以上
×:80%未満
<引張弾性率>
その他性能評価用光ディスクから剥離させた硬化物層から、10mm×100mm×100μmの試験片を切り出し、標線間距離を50mm、引張速度20mm/分とすること以外は、JIS K7127−1989に準拠し、23℃、相対湿度50%の環境下において、引張弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0081】
<表面硬度>
その他性能評価用光ディスクの硬化物層についてJIS K−5600に準拠し、鉛筆硬度を測定し、下記基準に基づいて評価した。
【0082】
○:2B以上硬い
×:2Bより柔らかい
2.光ディスクについて
<残膜率>
その他性能評価用光ディスクについて、キーエンス製レーザーフォーカス変位計LT−8100を用いて初期及び、80℃、相対湿度85%、240時間の耐久試験後23℃、相対湿度50%の環境下にて24時間放置した後の同一箇所の膜厚を、同環境下にて測定した。なお、残膜率は、(試験後膜厚/初期膜厚)×100(%)とし、下記基準に基づき評価した。
【0083】
○:97%以上103%以下の範囲で良好
×:97%未満の範囲で不良
×:103%を越える範囲で不良
<寸法安定性>
その他性能評価用光ディスクについて、ジャパンイーエム(株)製DLD−3000光ディスク光学機械特性測定装置を用いて、23℃、相対湿度50%環境下にて、半径55mm位置における初期の反り角を測定した。
【0084】
次いで、得られた光ディスクを70℃の乾燥機内に50分間放置し、更に、23℃、相対湿度50%環境下へ取り出した直後より、初期反り角と同様に、反り角を1分間隔で10分間まで測定し、反り角の最小値と最大値の幅をP−Pとして表わす。
【0085】
なお、該環境変化試験における反り角については、下記基準に基づいて評価を行った。
【0086】
○:初期反りが0.4度以内かつ、P−Pが0.4度以内
×:初期反りが0.4度を超えるまたは、P−Pが0.4度を超える
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製
成分(A)として合成例1で得られたUA1を70部、成分(B)として1,6−ヘキサンジオールジアクリレート12部、成分(C)として1,10−デカンジオールジアクリレート13部、成分(E)としてトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート5部、および成分(D)として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン3部を混合溶解し、硬化性組成物を得た。
【0087】
(2)硬化物層を有する光ディスクの作製および評価
密着性評価用光ディスクの作製:
ポリカーボネート樹脂(飽和吸水率:0.15%)を射出成型して得た光ディスク形状を有する透明円盤状鏡面基板(直径12cm、板厚1.1mm、反り角0度)の片面に、上記(1)で得られた硬化性組成物を、スピンコーターを用いて塗工した。得られた塗膜の上方より空気雰囲気下にて、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製、Dバルブランプを用いて、積算光量3000mJ/cmのエネルギー量(オーク(株)製UV−350にて測定)で紫外線を照射、塗膜を硬化させて、平均膜厚が100μmの硬化物層を有する密着性評価用光ディスクを得た。
【0088】
その他性能評価用光ディスクの作製:
上記同様のポリカーボネート製透明円盤状鏡面基板(直径12cm、板厚1.1mm、反り角0度)の片面に、銀合金を膜厚20nmとなるようにスパッタリング法にて製膜し、鏡面に銀合金反射膜を有する評価用光ディスク基材を得た。
【0089】
得られた基材の銀合金反射膜上に、上記(1)で得られた硬化性組成物を、上記同様にスピンコート後、紫外線硬化させて、平均膜厚が100μmの硬化物層を有する光ディスクを得た。
【0090】
得られた光ディスクの各種評価結果は、表1に示す。なお、全ての評価は、作製した光ディスクを23℃、相対湿度50%の環境下にて24時間放置した後実施した。
【0091】
[実施例2〜4、比較例1〜4]
表1の実施例2〜4および比較例1〜4の欄に示す硬化性組成物を用いること以外は、実施例1と同様にして、基材に硬化物層を形成してなる光ディスクを得た。
【0092】
また、得られた光ディスクについて、実施例1と同様に評価した結果を表1の評価結果欄にそれぞれ示した。
【0093】
[比較例5]
実施例1で調製した硬化性組成物を用い、積算光量100mJ/cmとすること以外は実施例1と同様にして、基材に硬化物層を形成してなる光ディスクを得た。
【0094】
得られた光ディスクの評価結果は表1に示す。
【表1】

【0095】
また、表1中の略号は、以下の通りである。
【0096】
UA1:合成例1で得られたウレタンアクリレート
UA2:合成例2で得られたウレタンアクリレート
UA3:合成例3で得られたウレタンアクリレート
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
NPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート
MPDDA:3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート
DEPDDA:2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート
NDDA:1,9−ノナンジオールジアクリレート
MODDA:2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート
DDDA:1,10−デカンジオールジアクリレート
TAIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
TCDA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
NPGTMPDA:ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
MANDA:ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
POA:フェノキシエチルアクリレート
V540:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、ビスコート#540)
PM21:カプロラクトン変性メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(日本化薬(株)製カヤマーPM−21)
HCPK:1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン
HMPP:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
BNP:ベンゾフェノン
DMBI:p−ジメチル安息香酸イソアミル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基体上に情報記録面を有し、この情報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光および再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、前記光透過層が、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、下記一般式(I)で示されるジ(メタ)アクリレート(B)、下記一般式(II)で示されるジ(メタ)アクリレート(C)および光重合開始剤(D)を含有する硬化性組成物の硬化物であり、該硬化物の反応率が90%以上、かつ該硬化物の23℃における引張弾性率が100MPa以上600MPa以下である光情報媒体。
CH=CRCOO(Cα2α)OCOCR=CH・・・(I)
(式中、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。またαは2〜8の整数を示す。)
CH=CRCOO(Cβ2β)OCOCR=CH・・・(II)
(式中、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。またβは9〜16の整数を示す。)

【公開番号】特開2007−80448(P2007−80448A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269772(P2005−269772)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】