説明

光情報媒体

【課題】撥水性や撥油性に優れた光透過層を有する光情報媒体を提供する。
【解決手段】表面に情報記録面が形成された支持基体の情報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、前記光透過層が(メタ)アクリレート(A)、分子鎖末端に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を持つポリジメチルシロキサン(B)及び光重合開始剤(C)を含有する硬化性組成物の硬化物である光情報媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生専用光ディスク、記録型光ディスク等の光情報媒体に関し、更に詳しくは、撥水性や撥油性に優れた光透過層を有する光情報媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録媒体の分野では高密度化に関して様々な研究が進められている。光ディスクの分野においても、動画が記録できる0.6mm厚の基板を貼り合わせた構造のDVDが普及期を迎えている。
【0003】
しかしながら、今後、デジタルハイビジョン放送が広まるにつれ、更なる大容量の光ディスクが必要になると予想される。そこで、表面に情報記録面が形成された支持基体の情報記録面上の光透過層を0.1mm厚とし、レンズ開口数NAが0.85程度で、記録、再生のレーザー光の波長を400nm程度とした高密度光ディスクシステムが提案され、実用化されつつある。
【0004】
この0.1mm厚の光透過層の形成方法としては、液状の紫外線硬化型樹脂をスピンコート法により塗布した後、活性エネルギー線の照射により硬化させて光透過層を形成する方法が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、機械物性や情報記録面の保護性能に優れ、高密度光ディスクの0.1mm厚の光透過層に使用できる硬化性組成物が開発されている(例えば、特許文献2〜4)。
【0006】
更に、上記高密度光ディスクの光透過層の耐摩耗性を格段に向上させるために、光透過層のレーザー光入射側に設けるハードコート層としてシリカ微粒子を配合した組成物が開発されている(例えば、特許文献5)。
【0007】
しかしながら、特許文献1〜5に記載の組成物は、上記高密度光ディスクとして長期間クリーニングせずに使用する場合、指紋付着により微量の水分や油分が薄膜状に吸着し、傷同様に再生エラーを引き起こす可能性があるため、光透過層への撥水性と撥油性の付与が課題であった。
【0008】
一方、光透過層に撥水性と撥油性を付与するために、例えば、光透過層のレーザー光入射側にハードコート層を設け、更にハードコート層上に特定の表面処理を施した組成物が開発されている(例えば、特許文献6及び7)。
【0009】
しかしながら、特許文献6及び7に記載の膜形成組成物は、撥水性や撥油性に優れるものの、高密度光ディスクの製造工程が増え、また表面処理に時間が必要であり、その結果生産性が低下してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2003−85836号公報
【特許文献2】特開2007−131698号公報
【特許文献3】特開2005−243081号公報
【特許文献4】特開2003−96146号公報
【特許文献5】特開2002−234906号公報
【特許文献6】特開2002−190136号公報
【特許文献7】特開2002−367229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、撥水性や撥油性に優れた光透過層を有する光情報媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、表面に情報記録面が形成された支持基体の情報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、前記光透過層が(メタ)アクリレート(A)、分子鎖末端に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を持つポリジメチルシロキサン(B)及び光重合開始剤(C)を含有する硬化性組成物の硬化物である光情報媒体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光情報媒体は長期間クリーニングせずに使用しても再生エラーを生じることがなく、信頼性の高い光情報媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
情報記録面
本発明の光情報媒体は支持基体上に情報記録面を有し、この情報記録面上に光透過層を有する構造を具備している。また、この光透過層を通して記録光又は再生光が入射して、情報記録面に情報を記録したり、情報記録面の情報を読み出したりできる光情報媒体である。
【0014】
本発明に使用される情報記録面の材料としては特に限定されず、読み取り専用型媒体、相変化型記録媒体、ピット形成タイプ記録媒体、光磁気記録媒体等に適用可能な材料を必要に応じて使用することができる。例えば、金、銀、銀・Pd・Cu合金、銀・In・Te・Sb合金、銀・In・Te・Sb・Ge合金、アルミニウム、Al・Ti合金、Ge・Sb・Te合金、Ge・Sn・Sb・Te合金、Sb・Te合金、Tb・Fe・Co合金及び色素が使用可能である。
【0015】
本発明においては、情報記録面の少なくとも一方の側に、情報記録面の保護やレーザー光の反射率を変化させるといった光学的効果を目的として、SiN、ZnS、SiO等の誘電体層を設けることができる。
【0016】
支持基体
本発明に使用される支持基体としては、例えば、金属、ガラス、セラミックス、紙、木材、プラスチック及びこれらの複合材料が挙げられる。特に、従来の光ディスク製造プロセスを利用できる点で、メチルメタクリレート系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が好適である。
【0017】
光透過層
本発明に使用される光透過層の厚みは0.5〜300μmが好ましい。また、情報記録面上への記録及び再生のために400nm程度のレーザー光に対する透明性を有していることが好ましい。
【0018】
光透過層としては、(メタ)アクリレート(A)(以下、「成分A」という)、分子鎖末端に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を持つポリジメチルシロキサン(B)(以下、「成分B」という)及び光重合開始剤(C)(以下、「成分C」という)を含有する硬化性組成物(以下、「本硬化性組成物」という)の硬化物(以下、「本硬化物」という)が使用される。
【0019】
成分A
成分Aは、本硬化性組成物の粘度を調整し、本硬化物に強靭性、可とう性、低収縮性及び耐擦傷性を付与するための成分である。
【0020】
成分Aとしては、例えば、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、モノ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート及びエポキシポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
ジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルオキシポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルオキシ水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリロイルオキシポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールA、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(付加数;n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11−ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13−トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0023】
モノ(メタ)アクリレートの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレートシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート及びブトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は分子内に(メタ)アクリロイル基とウレタン基を有する化合物であり、例えば、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、ポリプロピレングリコール類、ポリテトラメチレングリコール、ポリラクトンポリオール類、ポリカーボネートジオール類、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体類、アミドジオール類等の多価アルコール、並びに2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートから合成される化合物が挙げられる。
【0025】
ポリエステルポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール及び(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応で得られる化合物が挙げられる。
【0026】
エポキシポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノール型エポキシジ(メタ)アクリレート及びノボラック型エポキシジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
成分Aは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。
【0028】
上記成分Aの中で、本硬化物の機械物性の向上の点で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、並びにイソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネート、多価アルコール成分としてポリカプロラクトンジオール類及びアミドジオール類から選ばれる少なくとも1種、水酸基含有(メタ)アクリレート成分として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの少なくとも3成分から合成されるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
本発明において、成分Aの使用割合は、本硬化物の機械物性の向上の点で、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量部中に70質量部以上が好ましく、85質量部以上がより好ましい。また、成分Aの使用割合は、本硬化性組成物の硬化性の点で、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量部中に98.99質量部以下が好ましく、97.9質量部以下がより好ましい。
【0030】
成分B
成分Bは、本硬化物に対して撥水性や撥油性を付与する成分である。
【0031】
成分Bは分子鎖末端に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を持つポリジメチルシロキサンであれば特に限定されるものではないが、例えば、ダイセルUCB(株)製のエベクリル1360(商品名:官能基数6)、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK−UV3500(商品名:官能基数2)及びBYK−UV3570(商品名:官能基数4)が好ましいものとして挙げられる。
【0032】
成分Bは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。
【0033】
本発明において、成分Bの使用割合は、本硬化物の撥水性や撥油性の点で、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量部中に0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。また、成分Bの使用割合は、本硬化性組成物の硬化性の点で、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましい。
【0034】
成分C
成分Cは本硬化性組成物を活性エネルギー照射により効率よく硬化させるための成分である。
【0035】
成分Cとしては、例えば、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン及びメチルベンゾイルホルメートが挙げられる。
【0036】
これらの中で、本硬化性組成物の硬化性及び本硬化物の難黄変性の点で、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンが好ましい。
【0037】
成分Cは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。
【0038】
本発明において、成分Cの使用割合は、本硬化性組成物の空気雰囲気中での硬化性の点で、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量部中に1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、成分Cの使用割合は、本硬化性組成物の深部硬化性、本硬化物の難黄変性及び光透過層の膜厚安定性の点で、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量部中に20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0039】
本硬化性組成物
本発明において、本硬化性組成物は前述の成分A、成分B及び成分Cを含有する。
【0040】
本発明においては、本発明の特性が損なわれない範囲で、本硬化性組成物中に、例えば、熱重合開始剤、酸化防止剤や光安定剤、光増感剤、熱可塑性樹脂、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、成分B以外のシランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー及び表面有機化処理した無機フィラー等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0041】
前記の酸化防止剤や光安定剤を配合する場合の配合量は特に限定されないが、それぞれ、成分A、成分B及び成分Cの合計100質量部に対して0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
【0042】
本硬化性組成物は、ダストやゲル物等の異物の存在による読み取り又は書き込みエラーを防止するために、5μm以上、好ましくは1μm以上の異物を除去できるろ過フィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0043】
ろ過フィルターの素材としては、例えば、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びナイロンが挙げられる。
【0044】
本発明においては、光透過層に気泡が存在しても読み取り又は書き込みエラーの原因となるため、本硬化性組成物は予め真空、超音波振動若しくは遠心回転条件下、又はその組み合わせの条件下において、脱気を行うことが好ましい。
【0045】
本硬化性組成物は活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。
【0046】
活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、X線、紫外線及び可視光線が挙げられる。
【0047】
本発明においては、本硬化性組成物は、支持基体上に形成された情報記録面の上に、スピンコート法、スプレーコート法、ブラシコート法等の公知の塗工方法で塗工され、情報記録面上に本硬化性組成物の塗膜が形成される。この塗膜の厚みとしては、硬化後に0.5〜300μmの厚みになるようにすることが好ましい。
【0048】
上記で得られた塗膜は、活性エネルギー線により硬化され、情報記録面上に本硬化物からなる光透過層が形成され、光記録媒体が得られる。
【0049】
上記の塗膜に活性エネルギー線を照射する雰囲気としては、空気中又は窒素、アルゴン等の不活性ガス中のいずれでもよいが、製造コストの点で空気中が好ましい。
【0050】
本発明において、光透過層の厚みは0.5μm以上で光情報媒体の表面を十分に保護できる傾向にあり、300μm以下で光情報媒体の反りを抑制しやすい傾向にある。光透過層の厚みは1〜200μmが好ましく、1.5〜150μmがより好ましい。
【0051】
本発明においては、高温高湿条件下においても光透過層の膜厚変化を小さくするために、本硬化性組成物を90%以上の反応率となるよう硬化させることが好ましい。反応率が90%以上であれば、光透過層中に残存する未反応のジ(メタ)アクリレート類や光重合開始剤が経時的に揮発することを抑制でき、膜厚が減少するのを小さくできる傾向にある。本硬化性組成物の反応率は93%以上であることがより好ましく、95%以上が更に好ましい。
【0052】
本硬化性組成物を硬化させる際の反応率を90%以上とするための活性エネルギー線の照射条件としては、例えば、活性エネルギー線として紫外線を使用した場合、積算光量を500mJ/cm以上、好ましくは1,000mJ/cm以上、より好ましくは2,000mJ/cm以上の条件が挙げられる。
【0053】
本硬化性組成物の反応率を測定する方法としては、例えば、赤外分光法により(メタ)アクリロイル基の残存量を測定する方法、硬化物の弾性率、Tg等の物理特性の飽和度から測定する方法及びゲル分率により架橋度合いを測定する方法が挙げられる。
【0054】
上記方法の中で、本硬化物中に残存する膜厚減少の原因となる残渣を定量しやすい点で、ゲル分率を測定する方法が好ましい。ゲル分率の測定方法としては、例えば、本硬化物を粉砕し、溶剤で未硬化成分を抽出後、乾燥させて、その重量変化によりゲル分率を測定する方法が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。尚、以下における「部」は「質量部」を意味する。
尚、実施例における評価項目及びその評価方法を以下に示す。
【0056】
(1)透明性
硬化性組成物の透明性を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:硬化性組成物は均一に溶解し、透明である。
×:硬化性組成物は白濁や分離が見られる。
【0057】
(2)粘度(単位:mPa・s)
硬化性組成物の粘度をE型粘度計「TVE−20」(商品名、東機産業(株)製)にて25℃で測定した。
【0058】
(3)撥水撥油性
(3−a)水の接触角
評価用光ディスク上の光透過層の表面に、23℃、相対湿度50%の環境下において、純水0.4μlを1滴で滴下し、協和界面科学(株)製の接触角測定器を用いて水と光透過層の表面との接触角を測定し、以下の基準で評価した。
○:接触角が75°以上のものを撥水撥油性良好とした。
×:接触角が75°未満のものを撥水撥油性不良とした。
【0059】
(3−b)トリオレインの接触角
純水の代わりにトリオレインを使用する以外は、水の接触角の測定の場合と同様にして、トリオレインと光透過層の表面との接触角を測定し、以下の基準で評価した。
○:接触角が50°以上のものを撥水撥油性良好とした。
×:接触角が50°未満のものを撥水撥油性不良とした。
【0060】
[合成例1](ウレタンアクリレートUA1(成分A)の製造)
5リットルの4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート555g及びジブチル錫ジオクテート0.2gを仕込んでウォーターバスでフラスコ内温が50℃になるように加熱した。次いで、フラスコ内温を50℃に保ち、得られた混合物を撹拌しながら、この混合物中に、多価アルコールとしてプラクセル205(商品名、ダイセル化学工業(株)製ポリカプロラクトンジオール、数平均分子量530)467g及びN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド41gの均一溶液を、40℃に保温した状態で側管付きの滴下ロートを用いて2時間の等速滴下で加え、更に、同温度で2時間攪拌して反応させた。その後、フラスコ内温を75℃に上げ、フラスコ内温を75℃に保ちながら、2−ヒドロキシエチルアクリレート317g及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.5gの均一混合溶液を、滴下ロートを用いて2時間の等速滴下で加え、更に、フラスコ内温を75℃に保ちながら、4時間攪拌してウレタンアクリレートUA1を得た。
【0061】
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製
成分Aとして上記合成例1で得たウレタンアクリレートUA1を62.3部、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート4.8部、ネオペンチルグリコールジアクリレート1.9部、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチルアクリレート26.8部、成分Bとして分子鎖末端にアクリロイル基を4個有するポリジメチルシロキサン(商品名:BYK−UV3570、ビックケミー・ジャパン(株)製)1.3部及び成分Cとして1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン2.9部を混合溶解し、ろ過精度1μmのフィルターでろ過した後、1.3×10Paで脱気をして、硬化性組成物を得た。
【0062】
(2)評価用光ディスクの作製
ポリカーボネート樹脂(飽和吸水率:0.15%)を射出成型して光ディスク形状を有する透明円盤状鏡面支持基体(直径12cm、板厚1.1mm及び反り角0度)を作製した。次いでその片面に、スパッタリング法にて、膜厚20nmの銀合金(Ag98PdCu(原子比))の情報記録面を有する支持基体を作製した。この情報記録面上に、上記(1)で調製した硬化性組成物を、硬化後の光透過層の膜厚が約100μmとなるように、雰囲気温度23℃及び相対湿度50%の環境下においてスピンコーターを用いて塗工し、硬化性組成物の塗膜を積層した。その後、この塗膜の上方より、Dバルブランプ(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製)を用いて、紫外線を積算光量2,000mJ/cm(紫外線光量計「UV−350」(商品名、(株)オーク製作所製)で測定)で照射して光透過層を形成させ、評価用光ディスクを作製した。
【0063】
得られた硬化性組成物及び評価用光ディスクについての評価結果を表1に示す。
【0064】
尚、表1中の略号は、以下の化合物を示す。
UA1:合成例1で得たウレタンアクリレートUA1
TAIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
DTMPTA:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
NPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート
TEGDA:テトラエチレングリコールジアクリレート
MEDA:2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチルアクリレート
DCPA:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
UV3570:ビックケミー・ジャパン(株)製BYK−UV3570(商品名、分子鎖末端アクリロイル基数4のポリジメチルシロキサン、有効成分70%、残り30%はPO変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレート)
UV3500:ビックケミー・ジャパン(株)製BYK−UV3500(商品名、分子鎖末端アクリロイル基数2のポリジメチルシロキサン)
EB1360:ダイセルUCB(株)製エベクリル1360(商品名、分子鎖末端アクリロイル基数6のポリジメチルシロキサン)
HCPK:1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン
UV3510:ビックケミー・ジャパン(株)製BYK−UV3510(商品名、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)
BYK−377:ビックケミー・ジャパン(株)製ポリエーテル変性ヒドロキシ基含有ポリジメチルシロキサン(商品名)
P−29:東レダウコーニング(株)製エチレンオキサイド変性ポリジメチルシロキサン(商品名)
【表1】

【0065】
[実施例2〜11及び比較例1〜4]
硬化性組成物の組成及び光透過層の膜厚を表1に示すものとし、それ以外は実施例1と同様にして、評価用光ディスクを作製した。得られた硬化性組成物及び評価用光ディスクについて実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1及び表2に示す。尚、比較例2及び3については、硬化性組成物が白濁したため、評価用光ディスクの作製と撥水撥油性の評価を中止した。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に情報記録面が形成された支持基体の情報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、前記光透過層が(メタ)アクリレート(A)、分子鎖末端に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を持つポリジメチルシロキサン(B)及び光重合開始剤(C)を含有する硬化性組成物の硬化物である光情報媒体。

【公開番号】特開2009−26432(P2009−26432A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191730(P2007−191730)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】