説明

光情報記録媒体、及び光情報記録方法

【課題】記録特性に優れ、高温高湿下で保存してもその記録特性の劣化を抑制しうる光情報記録媒体(及び該光情報記録媒体を用いた光情報記録方法)を提供する。
【解決手段】光情報記録媒体は、案内溝を表面に有する基板の該表面上に、光反射層と、有機色素を含有する記録層と、バリア層と、単官能(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなり、ガラス転移温度が−45℃〜−35℃の硬化膜を前記バリア層と接する位置に含むカバー層と、をこの順に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光照射により情報の記録及び再生が可能な光情報記録媒体、及びレーザー光照射により光情報記録媒体へ情報を記録する光情報記録方法に関する。より詳しくは、波長440nm以下のレーザー光照射による情報の記録及び再生に好適な、ヒートモード追記型の光情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザー光により1回限りの情報記録が可能な光情報記録媒体として、追記型CD(CD−R)及び追記型DVD(DVD−R)が知られている。CD−Rへの情報の記録は、近赤外域のレーザー光(通常、波長780nm程度)により行われるのに対し、DVD−Rへの情報の記録は可視レーザー光(約630〜680nm)によって行われる。DVD−Rは、記録用レーザー光としてCD−Rより短波長のレーザー光を使用するため、CD−Rと比べて高密度記録可能であるという利点を有する。そのため、近年、DVD−Rは、大容量の記録媒体としての地位をある程度まで確保している。
【0003】
近年、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映を間近にひかえて、画像情報を安価簡便に記録するための大容量の記録媒体の要求が高まっている。しかし、CD−R及びDVD−Rは、将来の要求に対応できる程の充分に大きな記録容量を有しているとはいえない。そこで、DVD−Rよりも更に短波長のレーザー光を用いることによって記録密度を向上させるため、短波長レーザー(例えば波長440nm以下)による記録が可能な大容量光ディスクの開発が進められている。そのような光ディスクとして、Blu−ray方式と称される光記録ディスク(Blu−ray Disc、以下、「BD」ともいう)が実用化されている。
【0004】
BDでは、大容量を実現するために、レーザー波長を405nm、レーザーの集束のための対物レンズの開口数(NA:Numerical Aperture)を0.85とし、従来の記録媒体用光ピックアップよりも短波長化、高NA化している。これに伴い焦点距離が短くなり、記録側入射面から記録面までの距離が約0.1mmとなる。これを実現するためには、CD、DVDのように基板を通して記録再生を行うのではなく、BDでは、基板上に記録層からなる記録面を形成し、その上におよそ0.1mm厚みのカバー層を形成し、カバー層側から記録再生を行う方法がとられている。
ここで、カバー層の形成方法は、粘着材付きカバーシートを基板の記録面に貼り合わせる方法、基板の記録面とカバーシートを紫外線硬化型接着剤で貼り合わせる方法、基板の記録面に紫外線硬化樹脂にて100μm厚みのカバー層を形成する、所謂オールスピン法などがあるが、生産性及びコストの観点から、貼り合わせ法やオールスピン法が多く採用されている。
【0005】
現在、上記のようなカバー層を有するBDとしては、複数回記録が可能な書き換え型の記録媒体と、一回記録可能な追記型の記録媒体が存在する。
書き換え型の記録媒体は、記録層に相変化方式を採用している。すなわち、照射するレーザー光の強度を変えることにより金属合金からなる記録層を、結晶−アモルファス状態間で相変化させ、両者の反射率差により信号の記録を行う方式である。
一方、追記型の記録媒体は、上述した相変化方式、複数の無機物層からなる記録層を溶解し両層を混合させることで反射率差を生じさせる方式、有機色素からなる記録層をレーザー照射により分解し、屈折率差を生じさせることで記録を行う色素方式等が、検討・実用化されている。
【0006】
上記に記載の方式のうち、相変化方式や、複数の無機物を用いる方式では、記録媒体を製造する際に無機物からなる層を複数層積層させる必要がある。
この無機物からなる層の形成には、一般的には、マルチチャンバー型のスパッタリング装置が用いられている。しかしながら、マルチチャンバー型スパッタリング装置は高価であること、ターゲット交換にともなう稼働率の低下があるため、記録媒体の製造コストが高くなってしまうという難点がある。
これに対し、記録層に有機色素を用いる方式では、有機溶媒に溶解した色素を、回転する基板上に滴下し塗り広げることにより記録層を形成するスピンコート方式が一般的に用いられており、マルチチャンバー型のスパッタ装置に比べ大幅に装置が安価であり、記録媒体の製造コストの点で有利である。
【0007】
従来、記録層に有機色素を用いた追記型のCDやDVDでは、記録層に照射したレーザー光を記録層の有機色素が吸収し分解することにより、分解前後での屈折率差を生じさせ記録マークを形成させていた。一方、BDでは、従来のCD、DVDと信号極性が異なることから、記録層の屈折率変化のみでは十分な信号強度が得られない。
そのため、例えば、特許文献1〜4に記載の技術では、記録層の分解と共にカバー層側に変形を生じることにより空隙を形成することで、屈折率差を大きくし、十分な信号強度を得ることを提案している。
特許文献1〜5に記載の技術では、記録層中の有機色素の分解により生成したガスの圧力によりカバー層を変形させるが、カバー層のガラス転移温度Tgが大きすぎると十分な変形をさせることができない。すなわち、有機色素の分解により発生したガスの圧力が低いとカバー層は弾性変形を生じるのみであり、変形が維持されないため、カバー層を変形させそれを維持するためには、カバー層の弾性変形領域を越え、塑性変形させることが可能な圧力を発生させる必要がある。
しかしながら、記録層は非常に薄く形成されており、そこに含まれる色素を分解したとしてもカバー層を塑性変形させるだけの十分な圧力を発生させることが困難である。そこで、カバー層自体の粘弾性を小さくすることにより、色素分解によって発生するガスによる圧力が小さい場合にも、塑性変形が可能となる。
【0008】
カバー層の粘弾性を小さくする手段として、具体的には、カバー層のガラス転移温度を0℃以下とする方法がある。この方法によれば、カバー層の粘弾性が小さく、十分な大きさの空隙の形成及び維持が可能である。
【特許文献1】特開2003−217177号公報
【特許文献2】特開2004−246959号公報
【特許文献3】特開2007−26541号公報
【特許文献4】特開2008−123631号公報
【特許文献5】特開2008−188867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のような従来の技術について、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、紫外線硬化樹脂を用いてなるカバー層は、粘着剤を使用したものに比べ面状に優れる、記録特性の向上の点からは好ましいことが分かった。
しかしながら、紫外線硬化樹脂を用いてなるカバー層のガラス転移温度Tgを0℃以下にすると、良好な記録特性を与える一方で、硬化物の架橋密度が低いため、流動性が高い状態となることも発見した。このような状態では、硬化後にも関わらず、紫外線硬化樹脂中の一部成分が溶出し、記録層や反射層にまで拡散し、これらの層を劣化させることがあった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、Blu−ray方式の光情報記録媒体であって、記録特性に優れ、高温高湿下で保存してもその記録特性の劣化を抑制しうる光情報記録媒体及び該光情報記録媒体を用いた光情報記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、カバー層を構成する硬化膜のガラス転移温度と、それを形成する紫外線硬化型組成物の組成を限定することにより、記録特性に優れ、高温高湿下で保存してもその記録特性の劣化が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、上記目的は、下記手段により達成される。
本発明の光情報記録媒体は、案内溝を表面に有する基板の該表面上に、光反射層と、有機色素を含有する記録層と、バリア層と、単官能(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなり、ガラス転移温度が−45℃〜−35℃の硬化膜を前記バリア層と接する位置に含むカバー層と、をこの順に有する光情報記録媒体である。
【0013】
本発明の光情報記録媒体において、紫外線硬化型組成物中の前記単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量(Wa)と、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量(Wb)と、の比は、質量基準で、Wa:Wb=8:2〜5:5であることが好ましい。
また、紫外線硬化型組成物中の前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量が、1000〜10000であることが好ましい。
本発明に用いる基板に設けられた案内溝のトラックピッチが50nm〜500nmの範囲であることが好ましい。
また、本発明の光情報記録媒体は、波長390nm〜440nmのレーザー光の照射により情報を記録するために使用されることが好ましい態様である。
【0014】
本発明の光情報記録方法は、本発明の光情報記録媒体へ、波長390nm〜440nmのレーザー光を照射することにより、光情報記録媒体の記録層へ情報を記録する光情報記録方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、Blu−ray方式の光情報記録媒体であって、記録特性に優れ、高温高湿下で保存してもその記録特性の劣化を抑制しうる、即ち、高温高湿下での保存安定性に優れる光情報記録媒体、及び該光情報記録媒体を用いた光情報記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<光情報記録媒体>
本発明の光情報記録媒体は、案内溝を表面に有する基板の該表面上に、光反射層と、有機色素を含有する記録層と、バリア層と、単官能(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなり、ガラス転移温度が−45℃〜−35℃の硬化膜を前記バリア層と接する位置に含むカバー層と、をこの順に有することを特徴とする。
以下、本発明の光情報記録媒体を構成する各要素毎に、詳細に説明する。
【0017】
[カバー層]
本発明の光情報記録媒体におけるカバー層は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなり、ガラス転移温度が−45℃〜−35℃の硬化膜をバリア層と接する位置に含むことを特徴としている。
この硬化膜は、記録層中の空隙形成に伴う変形を良好に行い、十分な記録特性を得るために、ガラス転移温度が℃以下であることが好ましい。より優れた記録特性を得るためには、硬化膜のガラス転移温度は−45℃〜−35℃であることを要する。
なお、本発明における硬化膜のガラス転移温度(Tg)とは、示差走査熱量分析(DSC)により求められるガラス転移温度である。
具体的には、本発明における硬化膜のガラス転移温度は、実施例で採用した方法で測定したものである。
【0018】
硬化膜のガラス転移温度は、硬化膜形成のために使用する紫外線硬化型組成物の処方、硬化条件等により制御することができる。
特に、後述する単官能(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの種類や、混合比を変更することで、硬化膜のガラス転移温度をより簡易に制御することができる。
【0019】
本発明におけるカバー層は、硬化膜形成に、単官能(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型組成物を用いることを要する。この組成物は、必須の3成分に加え、必要に応じて、後述する任意の成分を含む塗布液であり、これを用いることで、上記のような好ましい範囲のガラス転移温度を有する硬化膜を得ることができる。
本発明におけるカバー層は、上記紫外線硬化型組成物を硬化させてなる硬化膜のみからなる層であってもよいし、硬化膜とカバーシートとからなる層であってもよい。即ち、本発明におけるカバー層は、上記紫外線硬化型組成物を硬化させてなる硬化膜を有していれば、貼り合わせ法、及びオールスピン法のいずれによって形成されているものであってもよい。
以下、カバー層の形成に用いられる単官能(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び光重合開始剤と、それを含有する紫外線硬化型組成物について説明する。
【0020】
(単官能(メタ)アクリレートモノマー)
本発明で用いられる単官能(メタ)アクリレートモノマーは、下記一般式(1)で表されるアクリレートと下記一般式(2)で表されるメタアクリレートとの総称である。同様に、アクリル酸とメタアクリル酸とを併せて(メタ)アクリル酸と称する。
【0021】
【化1】

【0022】
上記一般式(1)及び(2)中、Rは1価の置換基を表す。
【0023】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、前記一般式(1)及び前記一般式(2)における1価の置換基のRが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、ノニルフェノキシエチル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル基、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、又はジシクロペンテニロキシエチル基等である(メタ)アクリレート等に加え、更に、(メタ)アクリル酸が好ましいものとして挙げられる。
上記の中でも、好ましい1価の置換基Rとしては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、又はドデシル基が挙げられる。
【0024】
単官能(メタ)アクリレートの更に好ましい例としては、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ドデシルメタクリレートが挙げられる。
【0025】
本発明で用いる紫外線硬化型組成物中、単官能(メタ)アクリレートの含有量は、ガラス転移温度を前記範囲に制御するため、また、高接着性を得る観点から、組成物の質量に対して、50質量%〜80質量%が好ましく、50質量%〜70質量%がより好ましく、50質量%〜60質量%が更に好ましい。
【0026】
(ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー)
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー中の「(メタ)アクリレート」とは、アクリル酸エステル(アクリレート)とメタクリル酸エステル(メタクリレート)を包含するものである。「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー」とは、質量平均分子量1000〜10000のウレタン(メタ)アクリレートであり、好ましくは質量平均分子量1000〜7000、より好ましくは質量平均分子量1000〜5000のウレタン(メタ)アクリレートである。
【0027】
本発明において用いられるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ジオール成分に起因する部分構造と、イソシアネート成分に起因する部分構造と、(メタ)アクリレートに起因する部分構造と、を分子内に含むものである。
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、2官能から5官能のものが好ましく、より好ましくは2官能から4官能のものであり、更に好ましくは2官能から3官能のものである。
更に、ウレタン(メタ)アクリレート自身のガラス転移温度は、−50℃〜50℃であることが好ましく、−30〜40℃であることがより好ましい。
このようなウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー下記のような市販品であってもよいし、後述する原料成分を用いて合成したものであっても構わない。
市販品としては、ダイセルサイテック株式会社製ウレタンアクリレートである、EBECRYL−270(2官能、分子量1500、Tg−27℃)、EBECRYL−8402(2官能、分子量1000、Tg14℃)、日本合成化学株式会社製ウレタンアクリレートであるUV−6100B(2官能、分子量6700、Tg0〜40℃)、などが挙げられるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0028】
以下に、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを合成する際に用いられる原料成分(ジオール成分、イソシアネート成分、ジオール成分)と合成例を挙げるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0029】
−ジオール成分−
ジオール成分としては、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200から9000、好ましくは200から8000、より好ましくは200から7000のもの)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール((分子量200から9000、好ましくは200から8000、より好ましくは200から7000のもの)、などが挙げられるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0030】
−イソシアネート成分−
イソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート(三井化学社製コスモネート(R)T65/T80/T100)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(三井化学社製コスモネート(R)PH)、ポリメリックMDI(三井化学社製コスモネート(R)M50/100/200/300)、ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学社製タケネート(R)700)、キシリレンジイソシアネート(三井化学社製タケネート(R)500)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(三井化学社製タケネート(R)600)、イソホロンジイソシアネート、4、4’−ジシクロヘキシルジイソシアネートが挙げられるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0031】
−(メタ)アクリレート成分−
(メタ)アクリレート成分としては、(メタ)アクリル酸に、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200から9000、好ましくは1000から9000、より好ましくは2000から8000のもの)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(分子量200から9000、好ましくは200から8000、より好ましくは200から7000のもの)などの二官能性アルコール(ジオール)を反応させて得られるモノヒドロキシ(メタ)アクリレートが挙げられるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0032】
−合成例−
本発明に用いるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリプロピレングリコール(分子量1000)1モルと、イソホロンジイソシアネート2モルとの反応後、ヒドロキシエチルアクリレート2モルを反応させて合成することができる。
【0033】
本発明で用いる紫外線硬化型組成物中、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、ガラス転移温度を前記範囲に制御するため、また、高接着性を得る観点から、組成物の質量に対して、20質量%〜50質量%が好ましく、25質量%〜50質量%がより好ましく、30質量%〜50質量%が更に好ましい。
上記の範囲を満たしていれば、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは1種を単独で用いてもよいし、種以上組み合わせて使用することもできる。
【0034】
本発明で用いる紫外線硬化型組成物において、ガラス転移温度を前記範囲に制御するため、また、高接着性を得る観点から、前記単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量(Wa)と、前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量(Wb)と、の比が、質量基準で、Wa:Wb=8:2〜5:5であることが好ましく、Wa:Wb=7:3〜5:5であることがより好ましく、Wa:Wb=6:4〜5:5であることが更に好ましい。
【0035】
(光重合開始剤)
本発明における紫外線硬化型組成物には、光重合開始剤が添加される。
光重合開始剤は、用いる重合性オリゴマーや重合性モノマーに代表される紫外線硬化性化合物が硬化できるものであればよく、特に限定されるものではない。光重合開始剤としては、分子開裂型又は水素引き抜き型のものが本発明に好適である。
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンジル、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が好適であり、更に、これら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン等をもちいてもよいし、更に、水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタロフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフイド等も用いることができる。
【0036】
光重合開始剤として、上記の中でも好ましくは、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、4−フェニルベンゾフェノンであり、より好ましくは2−イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、4−フェニルベンゾフェノンである。
【0037】
光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化型組成物の質量に対して、1質量%〜5質量%が好ましく、2質量%〜4質量%がより好ましい。
【0038】
(任意の成分)
本発明における紫外線硬化型組成物は、前述の各成分に加え、後述する任意の成分を含んでいてもよい。
本発明における紫外線硬化型組成物は、任意成分として、多官能(メタ)アクリレート等の重合性モノマーを含有することができる。
【0039】
−重合性モノマー−
本発明に使用可能な重合性モノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
即ち、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール1モルに6モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
中でも、好ましくは、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール1モルに6モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たポリ(メタ)アクリレートである。
より好ましくは、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ又はテトラ(メタ)アクリレートである。
【0041】
また、重合性モノマーとしては、前記単官能又は多官能(メタ)アクリレートに加え、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、又はN−ヒドロキシエチルアクリルアミド、及びそれらのアルキルエーテル化合物等も使用できる。
【0042】
−その他の重合性オリゴマー−
更に、紫外線硬化型組成物には、上述のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーに加え、発明の硬化を損なわない範囲において、その他の重合性オリゴマーを併用することができる。その他の重合性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記のように、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーとその他の重合性オリゴマーとを併用する場合、全重合性オリゴマー中にウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが50質量%以上含まれることが好ましく、70質量%以上含まれることがより好ましい。
【0043】
−増感剤−
また、本発明における紫外線硬化型組成物は、前記光重合開始剤に対応する増感剤を含有していてもよい。
増感剤として、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述紫外線硬化性化合物と付加重合反応を起こさないアミン類が挙げられる。
勿論、上記光重合開始剤や増感剤は、紫外線硬化性化合物との相溶性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0044】
−その他の添加剤−
紫外線硬化型組成物としては、常温〜40℃において、液状であるものを用いることが好ましい。溶媒は用いないことが好ましく、用いたとしても極力少量に留めることが好ましい。
また、紫外線硬化型組成物の塗布をスピンコーターで行う場合には、粘度は、好ましくは20mPa・s〜1000mPa・sであり、より好ましくは30mPa・s〜700mPa・sであり、更に好ましくは40〜500mPa・sである。
このような粘度調整のために、増粘剤として、質量平均分子量1万以上のポリマーを用いることができる。少量の添加で所望の粘度とするためには、より高分子量のポリマー、すなわち質量平均分子量10万以上のポリマーが好ましく、質量平均分子量100万以上のポリマーを用いると更に好ましい。
【0045】
また、紫外線硬化型組成物には、必要であれば、更にその他の添加剤として、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤、及びエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。
これらは、紫外線硬化性化合物との相溶性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0046】
(硬化膜の形成)
本発明における硬化膜形成のために使用される紫外線硬化型組成物の詳細は、先に説明した通りである。
この硬化膜の形成方法は特に限定されないが、カバー層の態様によって、適宜、選択されればよい。
即ち、本発明におけるカバー層が硬化膜のみからなる態様であれば、バリア層の表面(被貼り合わせ面)上に、紫外線硬化型組成物を所定量塗布し、スピンコートにより該組成物を、被貼り合わせ面上に均一になるように広げた後、その塗布面側から紫外線を照射して硬化処理を施すことが好ましい(オールスピン法)。
また、本発明におけるカバー層が硬化膜とカバーシートからなる態様であれば、バリア層の表面(被貼り合わせ面)上に、紫外線硬化型組成物を所定量塗布し、スピンコートにより接着剤を、被貼り合わせ面とカバーシートとの間に均一になるように広げた後、その上にカバーシートを載せて、その後、カバーシート側から紫外線を照射して硬化処理を施すことが好ましい(貼り合わせ法)。
なお、上記のようなカバー層の形成には、芝浦メカトロニクス株式会社や、オリジン電気株式会社から市販されている光ディスク貼り合わせ装置を用いてもよい
【0047】
紫外線硬化型組成物を硬化させるための紫外線の照射量は、200mJ/cm以上とすることが好ましい。より好ましくは200mJ/cm〜2000mJ/cmの範囲である。
硬化に使用するUVランプとしては、例えば、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製〔D〕bulbを用いることができる。
また、紫外線照射時のランプ面と被照射面との間の距離は、適宜、設定することが好ましい。
【0048】
通常、バリア層の表面(被貼り合わせ面)に紫外線硬化型組成物が塗布された後は、その積層体(基板上に、光反射層、記録層、バリア層、及び紫外線硬化型組成物の塗膜が設けられたもの)を紫外線照射位置へと移動させる(例えば、スピンテーブルから紫外線照射テーブルへの移動させる)。その移動の際には、積層体の外周部分又は内周部分で基板を保持して持ち上げて移動させることが望ましい。吸着などの方法で塗布面上から積層体を支持して持ち上げると、紫外線硬化型組成物が未硬化であるために積層体が変形したり、硬化膜に気泡が混入したりして、硬化膜の膜厚変動や欠陥の原因となる可能性がある。なお、積層体の外周部を保持して移動する場合においては、保持部材を定期的に清掃することが好ましい。外周部にはスピンコート時に振切られた未硬化の紫外線硬化型組成物が付着していることがあり、それが保持部材に付着することがあるためである。その結果、繰り返し同じ保持部材で積層体を移動すると、保持部材から積層体へと紫外線硬化型組成物が再付着して欠陥を生じる可能性がある。
【0049】
また、紫外線照射位置(例えば紫外線照射テーブル上)では、積層体を保持する部位として、積層体の内周部、外周部、又は中周部などの中から一つの部位、或いは複数の部位が選択される。また、プレート状の保持部材で積層体の全面を均一に支持してもよい。複数の部位を保持する場合には、各々の部位の保持高さを変更することができる。これは、例えば、内周のみを保持した場合に、保持されていない積層体外周部が自重で下に垂れ、その形状で硬化されることで、硬化後の積層体に反りが生じる場合に、積層体の外周部も保持して垂れを抑制することで硬化後の反りを抑制するような場合であり、各保持部材の高さを調整して硬化後の積層体の形状を調整する効果が期待できる。
【0050】
紫外線硬化型組成物の紫外線による硬化処理は、硬化塗膜のゲル分率が90%以上となるように行うことが好ましい。硬化塗膜のゲル分率は、より好ましくは92%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは100%である。
ゲル分率は、硬化の程度を示す指標であり、数値が高いほど硬化が進行していることを示し、90%以上であれば硬化が十分に進行したと判断することができる。ゲル分率は、以下の方法により求めることができる。
硬化処理済みの塗膜からテストピースを切り取り、ゲル分率測定用試料とする。試料の質量(以下、W1と記す)を測定し、W1の100倍の質量のメチルエチルケトン液中に浸漬した後、80℃の加熱炉で8時間加熱し、未硬化成分を溶出させる。加熱終了後、10分以内に溶液の上澄み液を除去し、25℃50%の環境で48時間以上自然乾燥させた後、100℃の加熱炉で3時間加熱乾燥して未硬化成分溶出後のサンプルを得て、未硬化成分溶出後の質量(以下、W2と記す)を測定する。上澄み液は、静置させた状態でスポイトなどを用いて吸取る形で除去することができる。上澄み液は8割〜9割を除去し、残りは自然乾燥、加熱乾燥で揮発させる。上記W1、W2から以下の式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=100−(W1−W2)/W1×100
【0051】
本発明において、紫外線硬化型組成物を硬化してなる硬化膜の膜厚は、カバー層の態様によって、適宜、選択されればよい。
即ち、本発明におけるカバー層が硬化膜のみからなる態様であれば、硬化膜の厚さ=カバー層との厚みとなるため、80μm〜120μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは90μm〜110μmの範囲、更に好ましくは95μm〜105μmの範囲である。
また、本発明におけるカバー層が硬化膜とカバーシートからなる態様であれば、硬化膜の膜厚は、0.1μm〜100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜50μmの範囲、更に好ましくは1μm〜30μmの範囲である。
【0052】
(カバーシート)
本発明におけるカバー層が硬化膜とカバーシートからなる態様の場合に用いられるカバーシートとしては、透明な材質のフィルムからなるものであれば、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;三酢酸セルロース等を使用することが好ましく、中でも、ポリカーボネート又は三酢酸セルロースを使用することがより好ましい。
なお、「透明」とは、記録及び再生に用いられる光に対して、透過率80%以上であることを意味する。
また、カバーシートを用いた態様のカバー層を形成する際には、該カバーシートを介して紫外線を照射することによって硬化処理が施されるため、カバーシートは紫外線透過性を有するものであることが好ましい。具体的には、紫外線硬化型組成物の硬化のために照射される紫外線に対して80%以上の透過率を有することが好ましい。
【0053】
また、カバーシートは、本発明の効果を妨げない範囲において、種々の添加剤が含有されていてもよい。
例えば、波長400nm以下の光をカットするためのUV吸収剤及び/又は500nm以上の光をカットするための色素が含有されていてもよい。
更に、カバーシートの表面物性としては、表面粗さが2次元粗さパラメータ及び3次元粗さパラメータのいずれも5nm以下であることが好ましい。
また、記録及び再生に用いられる光の集光度の観点から、カバーシートの複屈折は10nm以下であることが好ましい。
【0054】
カバーシートの厚さは、0.01mm〜0.5mmの範囲内であることが好ましく、0.05mm〜0.12mmの範囲であることがより好ましい。
なお、カバーシートと硬化膜との厚みの総和が、前述のカバー層の厚みの範囲にとなるように、適宜、決定されればよい。
【0055】
[基板]
本発明に用いられる基板としては、従来の光情報記録媒体の基板材料として用いられている各種の材料からなる基板を任意に選択して使用することができる。基板としては、透明な円盤状基板を用いることが好ましい。
基板材料として、具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
前記材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
これらの樹脂を用いた場合、射出成型を用いて基板を作製することができる。
また、基板の厚さは、1.1±0.3mmとすることがより好ましい。
【0056】
基板には、複数のグルーブ及び隣接するグルーブの間に位置するランドからなるプリグルーブ(案内溝)が形成されている。より高い記録密度を達成するためにCD−RやDVD−Rに比べて、より狭いトラックピッチのプレグルーブが形成された基板を用いることが好ましい。
プリグルーブのトラックピッチは、50nm〜500nmの範囲であることが好ましく、200nm〜400nmの範囲であることがより好ましく、250nm〜350nmの範囲であることが更に好ましい。
また、プレグルーブの深さ(溝深さ)は、20nm〜150nmの範囲であることが好ましく、30〜100nmの範囲であることがより好ましい。
更に、プレグルーブの溝幅(半値幅)は、20nm〜400nmの範囲であることが好ましく、50nm〜250nmの範囲であることがより好ましい。
このような態様のプリグルーブは、例えば、本発明の光情報記録媒体を、青紫色レーザーに対応する媒体(BD)とする場合に好適である。
【0057】
なお、後述する光反射層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することもできる。
該下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;シランカップリング剤等の表面改質剤;を挙げることができる。
下塗層は、上記材料を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。
下塗層の層厚は、一般に、0.005μm〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01μm〜10μmの範囲である。
【0058】
[光反射層]
光反射層には、レーザー光に対する反射率が高い光反射性物質が用いられる。当該反射率は、70%以上であることが好ましい。
反射率が高い光反射性物質としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属及び半金属或いはステンレス鋼を挙げることができる。これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、或いは2種以上の組合せで、又は合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。特に好ましくは、Au、Ag、Al或いはこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Ag或いはこれらの合金である。
【0059】
光反射層は、例えば、上記光反射性物質を、蒸着、スパッタリング、又はイオンプレーティングすることにより基板上に形成することができる。
光反射層の層厚は、一般的には10nm〜300nmの範囲とし、50nm〜200nmの範囲とすることが好ましい。
【0060】
[記録層]
本発明における記録層は、記録用の色素として、有機色素を含有する層である。
ここで、記録層に用いる有機色素としては、フタロシアニン系化合物、アゾ化合物、並びにアゾ金属錯体化合物、メチン色素(シアニン系化合物、オキソノール系化合物、スチリル色素、メロシアニン色素、)、トリアジン色素、ベンゾトリアゾール色素、ベンゾオキサゾール色素、アミノブタジエン、アゾメチン色素、ピリドポルフィラジン色素、ピラドポルフィラジン色素、ポルフィリン色素、ポルフィラジン色素が挙げられ、好ましくはフタロシアニン系化合物、アゾ化合物、並びにアゾ金属錯体化合物、メチン色素(シアニン系化合物、オキソノール系化合物、スチリル色素、メロシアニン色素、)、トリアジン色素、ベンゾトリアゾール色素が挙げられる。
中でも、前述のカバー層との組み合わせにおいて、特に、短波長レーザー光(好ましくは、波長390nm〜440nmのレーザー光)の照射により優れた記録特性を発揮し得るものとして、フタロシアニン系化合物、アゾ化合物、並びにアゾ金属錯体化合物、メチン色素(シアニン系化合物、オキソノール系化合物、スチリル色素、メロシアニン色素)が好ましいものとして挙げることができる。
【0061】
以下、本発明の光情報記録媒体において特に好適なアゾ色素化合物について説明する。
本発明におけるアゾ色素化合物は、(i)アゾ化合物、及び(ii)アゾ化合物と金属イオン又は金属酸化物イオンとを含み、かつ、波長405nmにおける消衰係数が0.15〜0.7の範囲であるアゾ金属錯体化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
このアゾ色素化合物は、短波長領域で大きな屈折率差を実現することができ、前述した紫外線硬化型組成物との組み合わせることにより、特に短波長レーザー光照射により優れた記録特性を発揮し得る。
【0062】
(ii)アゾ金属錯体化合物の波長405nmにおける消衰係数は0.10〜0.5の範囲であることが好ましい。以降、波長405nmにおける消衰係数を、適宜、消衰係数kという。
本発明の光情報記録媒体は、案内溝を表面に有する基板の該表面上に、光反射層、記録層、バリア層、及びカバー層をこの順に有する構成であり、より具体的構成としては、前記プリグルーブのトラックピッチは50nm〜500nmの範囲である。このような構成の光情報記録媒体では、消衰係数kが0.5を超えるアゾ金属錯体化合物では、反射率が低くなりすぎ実用的な記録再生特性を得ることが困難となる。一方、消衰係数kが0.10未満のアゾ金属錯体化合物では、記録感度が不十分であり実用に適した感度を得ることが困難となる。消衰係数kは、記録感度(具体的には5mW記録での2T C/N)及び再生耐久性の観点から、0.13≦k<0.3であることがより好ましく、0.15≦k≦0.29であることが更に好ましく、0.17≦k≦0.28であることがより一層好ましい。
【0063】
これに対し、(i)アゾ化合物であれば、前述と同様の理由から、より良好な記録再生特性を得るためには、波長405nmにおける消衰係数kが0.10〜0.5の範囲のものを使用することが好ましく、0.13≦k<0.3であることがより好ましく、0.15≦k≦0.29であることが更に好ましく、0.17≦k≦0.28であることがより一層好ましい。
【0064】
また、本発明におけるアゾ色素化合物は、波長405nmにおける屈折率が1.45〜1.75の範囲であることが好ましい。以降、波長405nmの光に対する屈折率を、適宜、屈折率nという。
屈折率nが1.45以上のアゾ色素化合物であれば、短波長レーザ光照射による記録において良好な2T CNRを得ることができる。屈折率nが1.75以下であれば、前記構成の光情報記録媒体では、良好なトラッキング適性を得ることが困難となる。
アゾ色素化合物の屈折率nは、記録信号のC/N比及びトラッキング適性の観点から、1.45≦n≦1.70であることがより好ましく、1.46≦n≦1.67であることが更に好ましく、1.47≦n≦1.65であることがより一層好ましい。
【0065】
屈折率n、消衰係数kは、アゾ色素化合物を適当な溶媒に溶解して調製した塗布液を用いて色素膜を形成し、この色素膜について、例えば分光エリプソメトリ装置(J.A.ウーラムジャパン社製、型式 M−2000)を用いて測定解析することにより求められる値をいうものとする。例えば、アゾ色素化合物20mgを2,2,2,3−テトラプロパノール1mlに溶解して得られた色素含有塗布液を、厚さ1.1mmのガラス板上に、スピンコート法により回転数500〜1000rpmまで変化させながら23℃、50%RHの条件で塗布して形成した色素膜に対して、上記測定装置を用いて測定される値を、屈折率n、消衰係数kとすることができる。
【0066】
更に、記録感度及び再生耐久性の観点から、前記アゾ色素化合物の熱分解温度は、200℃〜350℃の範囲であることが好ましく、210℃〜340℃の範囲であることが更に好ましく、220℃〜以上330℃の範囲であることがより一層好ましく、230℃〜320℃の範囲であることが特に好ましい。
【0067】
前記アゾ色素化合物の405nmにおける屈折率n、消衰係数k、及び熱分解温度は、記録信号のCNR、トラッキング適性、記録感度及び再生耐久性のすべてを満足させるという観点から、1.45≦n≦1.70、かつ、0.13≦k<0.3、かつ、熱分解温度210℃以上340℃以下であることが好ましく、1.46≦n≦1.67、かつ、0.15≦k≦0.29、かつ、熱分解温度220℃以上330℃以下であることがより好ましく、1.47≦n≦1.65、かつ、0.17≦k≦0.28、かつ、熱分解温度230℃以上320℃以下であることが更に好ましい。
【0068】
上述のようなアゾ色素化合物として具体的には、特開2008−105380号公報の段落〔0047〕〜〔0106〕に記載のものが挙げられる。
【0069】
有機色素の使用量は、記録層の全質量に対して、例えば、1質量%〜100質量%の範囲であり、好ましくは50質量%〜100質量%、より好ましくは75質量%〜100質量%の範囲である。
記録用の色素としては、前述の有機色素を1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0070】
次に記録層の形成について説明する。
記録層は、有機色素を、結合剤等と共に、又は結合剤を用いないで適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を、前述の光反射層上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成することができる。
ここで、記録層は、単層でも重層でもよい。塗布液を塗布する工程を複数回行うことにより、重層構造の記録層を形成することができる。
塗布液中の有機色素の濃度は、一般に0.01質量%〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1質量%〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5質量%〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5質量%〜3質量%の範囲である。
【0071】
塗布液の調製に用いる溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。
溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、塗布液中には、更に、結合剤、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0072】
結合剤を使用する場合に、該結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;を挙げることができる。
記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に記録物質(前記有機色素)に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量(質量比)の範囲にある。
このようにして調製される塗布液中の記録物質の濃度は、一般に0.01質量%〜10質量%の範囲にあり、好ましくは0.1質量%〜5質量%の範囲にある。
【0073】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。
塗布の際、塗布液の温度は23℃〜50℃の範囲であることが好ましく、24℃〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、23℃〜38℃の範囲であることが特に好ましい。
【0074】
記録層の厚さは、ランド(基板においての凸部)上で1nm〜100nmの範囲であることが好ましく、グルーブ上で5nm〜150nmの範囲であることが好ましい。ランド上での厚さの上限としては、70nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。また、下限は、5nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。
【0075】
また、記録層の厚さは、グルーブ上(基板においての凹部)で、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。下限は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。
【0076】
更に、ランド上の記録層の厚さとグルーブ上の記録層の厚さの比[(ランド上の記録層の厚さ)/(グルーブ上の記録層の厚さ)]は、0.1以上であることが好ましく、0.13以上であることがより好ましく、0.15以上であることが更に好ましく、0.17以上であることが特に好ましい。また、上限としては、1以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.85以下であることが更に好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。
【0077】
更に、記録層には、記録層の耐光性を向上させるために種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、及び同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。
【0078】
前記一重項酸素クエンチャーなどの褪色防止剤の使用量は、有機色素の量に対して、通常、0.1質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5質量%〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3質量%〜40質量%の範囲、特に好ましくは5質量%〜25質量%の範囲である。
【0079】
[バリア層]
バリア層は、前記記録層と前記カバー層との間に形成され、記録層の有機色素がカバー層側に溶出するのを防止する役割を果たす。
このバリア層の層厚は、1nm〜50nmの範囲が好ましく、1nm〜30nmの範囲がより好ましい。
【0080】
バリア層を構成する材料としては、レーザー光を透過する材料であれば、特に制限はないが、誘電体であることが好ましく、より具体的には、ZnS、TiO、SiO、ZnS−SiO、GeO、Si、Ge、MgF、Nb、Ta等の無機酸化物、窒化物、硫化物が挙げられ、ZnS−SiO、Nb、或いはSiOが好ましい。
本発明におけるバリア層は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法で形成することができるが、生産性において優位なため、スパッタリング法で形成されることが好ましい。
【0081】
[その他の層]
本発明の光情報記録媒体は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の必須の層に加え、他の任意の層を有していてもよい。
他の任意の層としては、例えば、基板の裏面(記録層が形成された側と逆側の非形成面側)に形成される、所望の画像を有するレーベル層や、光反射層と記録層との間に設けられる界面層、更に、カバー層上に設けられるハードコート層などが挙げられる。
ここで、前記レーベル層は、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、及び熱乾燥樹脂などを用いて形成することができる。
また、前記ハードコート層としては、例えば、カバー層上に、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、硬化させることで形成してもよい。
なお、上記した必須及び任意の層はいずれも、単層でも、多層構造でもよい。
【0082】
以上のようにして、案内溝を表面に有する基板上に、光反射層、記録層、バリア層、カバー層、及び必要に応じて、他の任意の層が設けられ、本発明の光情報記録媒体が得られる。
本発明の光情報記録媒体は、短波長レーザー光(特に、好ましくは波長390〜440nmのレーザー光)の照射により情報を記録するために使用されることが好ましい。
【0083】
<光情報記録方法>
光情報記録媒体に対する情報の記録は、記録層のレーザー光を照射された部分がその光学的特性を変えることによって行われる。光学的特性の変化は、記録層のレーザー光が照射された部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的又は化学的変化(例えば、ピットの生成)を生じることによってもたらされると考えられる。記録層に記録された情報の読み取り(再生)は、例えば、記録用のレーザー光と同様の波長のレーザー光を照射することにより、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部位)と変化しない部位(未記録部位)との反射率等の光学的特性の違いを検出することにより行うことができる。
本発明では、情報の記録は、好ましくは、レーザー光照射により記録に含まれる有機色素が熱分解し、それにより発生した気体によりピット内に空隙が形成されることによって行われる。より好ましくは、記録層中の有機色素がレーザー光を吸収することによって発熱し、それにより生じた熱によって該有機色素中の置換基又は色素骨格が分解して気体を発生する。これにより記録層中に空隙が形成され、また、その空隙が隣接するバリア層及び硬化膜を変形させることで、レーザー光照射により空隙が形成された部分とレーザー光未照射部との間に大きな屈折率差を生じさせることができ、記録特性を高めることができると考えられる。
本発明の光情報記録媒体に照射されるレーザー光の波長は、390nm〜440nmであることが好ましい。
本発明の光情報記録媒体への情報の記録及び再生方法の詳細は後述する。
【0084】
本発明の光情報記録方法は、本発明の光情報記録媒体へ、カバー層側から波長390〜440nmのレーザー光を照射することにより、記録層へ情報を記録する方法である。
情報の記録に、波長390nm〜440nmのレーザー光が用いられ、具体的には、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。好ましい光源としては、390nm〜440(更に好ましくは390nm〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。特に、記録密度の点で390nm〜415nmの範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光を用いることが好ましい。
また、記録密度を高めるために、ピックアップに使用される対物レンズのレンズ開口率(NA)は0.7以上であることが必須であり、0.85以上であることがより好ましい。
上記のように記録された情報の再生は、光情報記録媒体を上記と同一の定線速度で回転させながらレーザー光(好ましくは、情報の記録の際に用いたレーザー光と同様の波長のもの)をカバー層側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0085】
具体的には、光情報記録媒体に対する情報の記録は、例えば、次のように行われる。
まず、光情報記録媒体を一定の線速度(例えば0.5〜10m/秒)、又は一定の角速度にて回転させながら、カバー層側から半導体レーザー光等の記録用のレーザー光を、第一対物レンズ(例えば、開口数NAが0.85)を介して照射する。このレーザー光の照射により、記録層がレーザー光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的又は化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより、情報が記録されると考えられる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
[光情報記録媒体の作製]
射出成形にて、ポリカーボネート樹脂を、スパイラル状のプリグルーブ(深さ40nm、溝幅180nm、トラックピッチ0.32μm)を有する厚さ1.1mm、直径120mmの基板に成形した。
続いて、基板のプリグルーブが設けられている面に対し、銀合金ターゲットGD02(株式会社コベルコ科研製)を、スパッタリング装置Cube(OC Oerlikon Holdings AG製)にてスパッタリングし膜厚50nmの光反射層を形成した。
その後、下記式(a)で示されるアゾ金属錯体0.7gを2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(ダイキン工業株式会社製)100mlに溶解した塗布液を調整し、この塗布液をスピンコート法により上記基板の反射層上に塗布して、溝部(グルーブ上)の膜厚16nmの記録層を形成した。
【0088】
続いて、バリア層ターゲットNb(株式会社豊島製作所製)を用い、スパッタリング装置Cube(OC Oerlikon Holdings AG製)にて、スパッタリングし、記録層上に膜厚10nmのバリア層を形成した。
その後、得られたバリア層上に、単官能(メタ)アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(和光純薬工業株式会社製)56質量%、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートとして脂肪族ウレタンアクリレートEBECRYL8402(ダイセルサイテック株式会社製)40質量%、光重合開始剤としてIRG−907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物を用いて、光ディスク貼り合わせ装置(芝浦メカトロニクス株式会社製)にて、厚さ92μmのポリカーボネートシートであるパンライト(帝人化成株式会社製)と貼りあわせた後、このポリカーボネートシート側から紫外線を照射した。これにより、厚さ100μmのカバー層を形成した。
更に、カバー層上に、ハードコート樹脂(TDK株式会社製)をポリカーボネートシート上に、乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布し、その後、紫外線を照射し硬化させた。
以上のようにして、実施例1の光情報記録媒体を得た。
【0089】
【化2】

【0090】
(実施例2)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた「EBECRYL8402」を、「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートであるUV−6100B(日本合成化学株式会社製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0091】
(実施例3)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた「EBECRYL8402」を、「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートであるEBECRYL270(ダイセルサイテック株式会社製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0092】
(実施例4)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「単官能(メタ)アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート66質量%、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートとして脂肪族ウレタンアクリレートEBECRYL8402(ダイセルサイテック株式会社製)30質量%、光重合開始剤としてIRG−907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0093】
(比較例1)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた「EBECRYL8402」を、「EBECRYL230(ダイセルサイテック株式会社製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0094】
(比較例2)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた「EBECRYL8402」を、「UC−203(株式会社クラレ製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0095】
(比較例3)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた「EBECRYL8402」を、「BAC−45(大阪有機化学工業株式会社製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0096】
(比較例4)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「単官能(メタ)アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート46質量%、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートとして脂肪族ウレタンアクリレートEBECRYL8402(ダイセルサイテック株式会社製)50質量%、光重合開始剤としてIRG−907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0097】
(比較例5)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「単官能(メタ)アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート76質量%、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートとして脂肪族ウレタンアクリレートEBECRYL230(ダイセルサイテック株式会社製)20質量%、光重合開始剤としてIRG−907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0098】
(比較例6)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「単官能(メタ)アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート71質量%、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートとしてUC−203(株式会社クラレ製)25質量%、光重合開始剤としてIRG−907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0099】
(比較例7)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「単官能(メタ)アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート46質量%、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートとして脂肪族ウレタンアクリレートEBECRYL270(ダイセルサイテック株式会社製)50質量%、光重合開始剤としてIRG−907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0100】
(比較例8)
実施例1において、カバー層を形成する際に用いた紫外線硬化型組成物を、「単官能(メタ)アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート61質量%、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートとして脂肪族ウレタンアクリレートEBECRYL8402(ダイセルサイテック株式会社製)35質量%、光重合開始剤としてIRG−907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)4質量%を混合してなる紫外線硬化型組成物」に代えた以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
【0101】
<評価>
[ガラス転移温度の測定]
各実施例及び比較例で使用した紫外線硬化型組成物を硬化させてなる硬化膜のガラス転移温度(Tg)について、以下のようにして測定した。
即ち、各紫外線硬化型組成物を、それぞれガラス基板に塗布した後、メタルハライドランプM02−L31(アイグラフィックス社製、コールドミラー付き、ランプ出力120W/cm)を用いて窒素雰囲気中で1500mJ/cmの照射量で紫外線を照射し硬化させ、測定用サンプルを調製した。得られた硬化塗膜のガラス転移温度を、DSCにより測定した。DSC装置(Seiko Instruments Inc.製DSC6200R)を用い、SUS製密閉セルに試料を密閉し、−100℃〜100℃の範囲において10℃/分で昇温して2回目のガラス転移温度を求めた。これで求められた温度を、本発明における硬化膜のガラス転移温度(DSC)とした。
なお、ガラス転移温度測定のために、測定用サンプル中の硬化塗膜は、各実施例及び比較例の光情報記録媒体における硬化膜よりも厚く形成した。但し、ガラス転移温度は膜厚の影響を受けないため、本手法による測定結果は、それぞれ対応する各実施例及び比較例の評価結果としてみなすことができる。
【0102】
[光情報記録媒体の評価]
(記録特性、及び高温高湿下での保存安定性の評価)
光ディスク記録再生装置DDU−1000及びマルチシグナルジェネレータ(パルステック株式会社製、レーザー波長:405nm、対物レンズ開口数:0.85)を用いて、線速度を4.92m/sとして、0.16μmの信号(2T)を記録、再生し、スペクトルアナライザー(ローデ&シュウバルツ社製FSP−3型)にて出力を測定した。
記録後の16MHz付近に見られるピークの出力をCarrier出力、記録前の同周波数の出力をNoise出力として、記録後の出力−記録前の出力をC/N値とした。また、記録はグルーブ上に行い、記録パワーは1〜7mWの範囲で行い、再生パワー0.3mWであった。
ここで、記録パワーが6mW時のCarrier出力の値に応じた評価基準は以下の通りである。なお、◎及び○が実用上使用できるレベルである。
・◎:−32dB以上
・○:−35dB以上−32dB未満
・×:−35dB未満
【0103】
更に、得られた各実施例及び比較例の光情報記録媒体を、恒温槽PR−3K(エスペック株式会社製)に入れ、60℃90%RH環境下で168時間放置した後、RF信号のドロップアウト頻度と、Blu−Ray規格に準拠した1−7pp変調信号記録のR−SERと、を測定した。
ここで、R−SERについては、DDU−1000を用いて、再生線速度4.92m/s、再生レーザーパワー0.3mWにて、10000ロジカルブロックの範囲について測定した値を用いた。
また、記録、再生を行ったトラック近傍の未記録トラックにて、デジタルオシロスコープinfiniium54853A DSO(アジレント・テクノロジー株式会社製)にDDU−1000のRF信号を入力し、平均電圧レベルに対して70%以下の電圧値となる範囲をドロップアウトと定義し、その頻度を観察した。
【0104】
RF信号のドロップアウト頻度の評価基準は以下の通りである。なお、○及び△が実用上使用できるレベルである。
・○:ドロップアウトが全く無し
・△:ドロップアウトが少し有る
・×:ドロップアウトが多発している
また、R−SERの評価基準は以下の通りである。なお、○及び△が実用上使用できるレベルである。
・○:2.0×10−4未満
・△:2.0×10−4以上3.0×10−4未満
・×:3.0×10−4以上
【0105】
上述のようにして得られた測定結果及び評価結果を、下記表1にまとめて示す。
なお、前述の各実施例及び比較例において、カバー層の形成に用いたウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの種類についても、下記表1に併記した。
【0106】
【表1】

【0107】
上記表1に明らかなように、実施例1〜4の光情報記録媒体は、初期の記録特性に優れると共に、高温高湿下で保存した後であっても、ドロップアウト数、R−SERの数値が共に、実用上使用することが可能なレベルとなっている。
硬化膜のガラス転移温度が−45℃よりも低い場合、及び/又は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートを用いていない場合は、初期の記録特性は非常に優れるものの、高温高湿下での保存安定性は実用上問題のレベルで有ることが分かる。また、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマートを用いており、硬化膜のガラス転移温度が−35℃よりも高い場合には、高温高湿下での保存安定性は実用上問題のないレベルであるものの、実施例に比べ、若干、記録特性が劣ることが分かる。
これにより、本発明の光情報記録媒体は、記録特性に非常に優れると共に、高温高湿下で保存してもその記録特性の劣化が抑制されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の光情報記録媒体は、短波長レーザー光を照射することにより情報を記録するためのBlu−ray方式の光情報記録媒体として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内溝を表面に有する基板の該表面上に、光反射層と、有機色素を含有する記録層と、バリア層と、単官能(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型組成物を硬化させてなり、ガラス転移温度が−45℃〜−35℃の硬化膜を前記バリア層と接する位置に含むカバー層と、をこの順に有する光情報記録媒体。
【請求項2】
前記紫外線硬化型組成物中の前記単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量(Wa)と、前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量(Wb)と、の比が、質量基準で、Wa:Wb=8:2〜5:5である請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
前記紫外線硬化型組成物中の前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量が、1000〜10000である請求項1又は請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
前記案内溝のトラックピッチが50nm〜500nmの範囲である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
波長390nm〜440nmのレーザー光の照射により情報を記録するために使用される請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光情報記録媒体へ、波長390nm〜440nmのレーザー光を照射することにより、光情報記録媒体の記録層へ情報を記録する光情報記録方法。

【公開番号】特開2010−86577(P2010−86577A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252603(P2008−252603)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Blu−ray
2.Blu−ray Disc
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】