説明

光情報記録媒体

【課題】本発明は、再生特性を向上することができる
【解決手段】本発明は、液状でなる液状樹脂M1を硬化させることにより形成され、情報の記録時に集光される所定の記録光である記録光ビームL2cを吸収して焦点Fb近傍の温度を上昇させることにより記録マークRMを形成し、情報の再生時に所定の読出光である読出光ビームL2dが照射されることに応じた戻り光である戻り光ビームL3を基に当該情報を再生させる。そして本発明は、記録マークRMが記録されるべき目標位置に照射されると想定される記録光ビームL2dの照射エネルギーが大きい基板102近傍では硬化度を低く、照射エネルギーが小さい基板103近傍では硬化度を高くすることにより、当該照射エネルギーに応じて硬化度が相違しているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光情報記録媒体に関し、例えば光ビームを用いて情報が記録され、また当該光ビームを用いて当該情報が再生される光情報記録媒体に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光情報記録媒体としては、円盤状の光情報記録媒体が広く普及しており、一般にCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)及びBlu−ray Disc(登録商標、以下BDと呼ぶ)等が用いられている。
【0003】
一方、かかる光情報記録媒体に対応した光情報記録再生装置では、音楽コンテンツや映像コンテンツ等の各種コンテンツ、或いはコンピュータ用の各種データ等のような種々の情報を当該光情報記録媒体に記録するようになされている。特に近年では、映像の高精細化や音楽の高音質化等により情報量が増大し、また1枚の光情報記録媒体に記録するコンテンツ数の増加が要求されているため、当該光情報記録媒体のさらなる大容量化が求められている。
【0004】
BDやDVDなどの光情報記録媒体では、金属膜でなる反射層を形成する必要があるため、樹脂材料の積層工程の間にスパッタリングなどの金属膜形成工程を挟む必要が生じており、光情報記録媒体の製造工程が煩雑となって製造コストの増大を引き起こしている。
【0005】
そこで、光情報記録媒体を大容量化する手法の一つとして、2系統の光ビームを干渉させてなる微小なホログラムを記録マークとし、当該記録マークを光情報記録媒体の厚さ方向に複数重ねるように形成することにより、1層の記録層内に複数層に相当する情報を記録するようになされた光情報記録媒体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−78834公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光情報記録媒体の厚さ方向に記録マークを複数重ねるように形成する場合、当該記録マークが形成されるべき目標位置に到達するまでに光ビームが通過する光情報記録媒体の厚さが変化する。このため光情報記録媒体の内部では、目標位置の厚さ方向の位置に応じて当該目標位置に到達するまでに光情報記録媒体によって吸収される光ビームの吸収量が変化してしまうため、当該目標位置における光ビームの強度が変化し、当該光ビームの照射エネルギーが変化する。
【0007】
また光情報記録媒体を回転させながら同心円状に存在する仮想のトラック(以下、これを仮想トラックと呼ぶ)上に記録マークを形成するような場合、光情報記録媒体の半径方向に応じて仮想トラックの1周当りの距離が変化する。このため光情報記録媒体を一定の回転速度で回転させると、当該光情報記録媒体における目標位置の半径方向の位置に応じて変化する仮想トラックの線速度に応じて光ビームの照射時間が変化し、当該光ビームの照射エネルギーが変化する。
【0008】
このように光情報記録媒体は、目標位置に照射される光ビームの照射エネルギーが変化すると、当該目標位置に形成される記録マークの大きさや形状などの特性(以下、これを記録特性と呼ぶ)にばらつきが生じてしまう。記録特性にばらつきが生じると、再生処理の際、光ビームが記録マークRMによって反射されて生じる戻り光ビームや透過光ビームの光量にもばらつきが生じてしまい、再生特性が悪化するという問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、再生特性を向上し得る光情報記録媒体を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明においては、液状でなる液状樹脂を硬化させることにより形成され、情報の記録時に集光される所定の記録光を当該記録光の波長に応じて吸収して焦点近傍の温度を上昇させることにより記録マークを形成し、情報の再生時に所定の読出光が照射されることに応じた当該読出光の光変調を基に当該情報を再生させると共に、記録マークが記録されるべき目標位置に照射されると想定される記録光の照射エネルギーに応じて硬化度が相違している記録層を有するようにした。
【0011】
これにより、照射エネルギーとの関係において記録層内の記録特性を調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照射エネルギーとの関係において記録層内の記録特性を調整することができ、かくして再生特性を向上し得る光情報記録媒体を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0014】
(1)第1の実施の形態
(1−1)光情報記録媒体の構成
図1(A)〜(C)に示すように、光情報記録媒体100は、基板102及び103の間に記録層101を形成することにより、全体として情報を記録するメディアとして機能するようになされている。
【0015】
基板102及び103はガラス基板でなり、光を高い割合で透過させるようになされている。また基板102及び103は、X方向の長さdx及びY方向の長さdyがそれぞれ 約50[mm]程度、厚さt2及びt3が約0.6〜1.1[mm]でなる正方形板状又は長方形板状に構成されている。
【0016】
この基板102及び103の外側表面(記録層101と接触しない面)には、波長が405〜406[nm]でなる光ビームに対して無反射となるような4層無機層(Nb/SiO/Nb/SiO)のAR(AntiReflection coating)処理を施している。
【0017】
なお基板102及び103としては、ガラス板に限られず、例えばアクリル樹脂やポリカーボネイト樹脂など種々の光学材料を用いることができる。基板102及び103の厚さt2及びt3は、上記に限定されるものではなく、0.05[mm]〜1.2[mm]の範囲から適宜選択することができる。この厚さt2及びt3は、同一の厚さであっても異なっていても良い。また、基板102及び103の外側表面にAR処理を必ずしも施さなくても良い。
【0018】
そして基板103の上部に例えば重合によってフォトポリマーを形成する未硬化状態の液状材料M1(詳しくは後述する)が展開された後、当該液状材料M1上に基板102が載置され、図1における記録層101に相当する部分が未硬化状態の液状材料M1でなる光情報記録媒体100(以下、これを未硬化光情報記録媒体100aと呼ぶ)が形成される。
【0019】
このように未硬化光情報記録媒体100aは、硬化前のフォトポリマーである液状材料M1を透明な基板102及び103により挟んでおり、全体として薄い板状に構成されている。
【0020】
液状材料M1は、その内部にモノマー又はオリゴマー、もしくはその両方(以下、これをモノマー類と呼ぶ)が均一に分散している。この液状材料M1は、光が照射されると、照射箇所においてモノマー類が重合する(すなわち光重合する)ことによりフォトポリマーとなり、これに伴い屈折率及び反射率が変化するといった性質を有している。また液状材料M1は、光の照射によりフォトポリマー同士の間に「橋架け」を行い分子量が増加する、いわゆる光架橋が生じることにより、さらに屈折率及び反射率が変化する場合もある。
【0021】
実際上、液状材料M1の一部或いは大部分を構成する光重合型、光架橋型の樹脂材料(以下、こららを光硬化型樹脂と呼ぶ)は、例えばラジカル重合型のモノマー類とラジカル発生型の光重合開始剤より構成され、あるいはカチオン重合型のモノマー類とカチオン発生型の光重合開始剤より構成されている。
【0022】
なおモノマー類としては、公知のモノマー類を使用することができる。例えば、ラジカル重合型のモノマー類として、主にアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミドの誘導体やスチレンやビニルナフタレンの誘導体等、ラジカル重合反応に用いられるモノマーがある。また、ウレタン構造物にアクリルモノマーを持つ化合物についても適用することができる。また上述したモノマーとして、水素原子の代わりにハロゲン原子に置き換わった誘導体を用いるようにしても良い。
【0023】
具体的に、ラジカル重合型のモノマー類としては、例えば、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、1,9ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートなど公知の化合物を使用することができる。なおこれらの化合物は、単官能であっても多官能であっても良い。
【0024】
またカチオン重合型のモノマー類としてはカチオンを発生させるエポキシ基やビニル基などを含有していれば良く、例えば、エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルエーテル、オキセタンなど公知の化合物を使用することができる。
【0025】
ラジカル発生型の光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE(登録商標、以下、これをIrg−と呼ぶ )651、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−オンオン(Irg−2959、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドオン(Irg−819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)など公知の化合物を使用することができる。
【0026】
カチオン発生型の光重合開始剤としては、例えばジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリ−p−トリスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、クミルトリルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、クミルトリルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素など公知の化合物を使用することができる。
【0027】
因みにカチオン重合型のモノマー類及びカチオン発生型の光重合開始剤を使用することにより、液状材料M1の硬化収縮率をラジカル重合型のモノマー類及びラジカル発生型の光重合開始剤を使用した場合と比して低減することができる。また光重合型、光架橋型の樹脂材料としてアニオン型のモノマー類及びアニオン型の光重合開始剤を組み合わせて使用することも可能である。
【0028】
またこの光重合型モノマー類、光架橋型モノマー類及び光重合開始剤、このうち特に光重合開始剤は、その材料が適切に選定されることにより、光重合を生じやすい波長を所望の波長に調整することも可能である。なお液状材料M1は、意図しない光によって反応が開始するのを防止するための重合禁止剤や、重合反応を促進させる重合促進剤などの各種添加剤を適量含有しても良い。
【0029】
そして未硬化光情報記録媒体100aは図2に示す初期化装置1において、液状材料M1が初期化光源2から照射される初期化光L1により初期化され、記録マークを記録する記録層101として機能するようになされている。
【0030】
具体的に初期化装置1は、初期化光源2から例えば波長365[nm]の初期化光L1(例えば300[mW/cm]、DC(Direct Current)出力)を出射させ、当該初期化光L1をテーブル3上に載置された板状の光情報記録媒体100に対して照射させるようになされている。この初期化光L1の波長及び光パワーは、液状材料M1に使用される光重合開始剤の種類や記録層101の厚みt1などに応じて最適となるように適宜選択される。
【0031】
因みに初期化光源2としては、高圧水銀灯、高圧メタハラ灯、固体レーザや半導体レーザ等の高い光パワーを照射し得る光源が用いられる。
【0032】
また初期化光源2は、図示しない駆動部を有しており、X方向(図中の右方向)及びY方向(図の手前方向)に自在に移動し、未硬化光情報記録媒体100aに対して適切な位置から初期化光L1を一様に照射し得、未硬化光情報記録媒体100a全体に均一に初期化光L1を照射するようになされている。
【0033】
このとき液状材料M1は、当該液状材料M1内における光重合開始剤からラジカルやカチオンを発生させることによりモノマー類の光重合反応又は光架橋反応、もしくはその両方(以下、これらをまとめて光反応と呼ぶ)を開始させると共に、モノマー類の光重合架橋反応を連鎖的に進行させる。この結果モノマー類が重合してフォトポリマーとなることにより硬化し、記録層101となる。
【0034】
なおこの液状材料M1では、全体的にほぼ均一に光反応が生じるため、硬化後の記録層101における屈折率は一様となる。すなわち初期化後の光情報記録媒体100では、いずれの箇所に光を照射しても戻り光の光量が一様となるため、情報が一切記録されていない状態となる。
【0035】
また記録層101として、熱により重合する熱重合型又は熱により架橋する熱架橋型の樹脂材料(以下、これを熱硬化型樹脂と呼ぶ)を用いることができる。この場合硬化前の熱硬化型樹脂である液状材料M1としては、例えばその内部にモノマー類及び硬化剤が均一に分散している。この液状材料M1は、高温下又は常温下においてモノマー類が重合又は架橋(以下、これを熱硬化と呼ぶ)することによりポリマーとなり、これに伴い屈折率及び反射率が変化するといった性質を有している。
【0036】
実際上、液状材料M1は、例えばポリマーを生成する熱硬化型のモノマー類と硬化剤に対し、上述した光重合開始剤が所定量添加されることにより構成される。因みに熱硬化型のモノマー類及び硬化剤としては、光重合開始剤が気化しないよう、常温硬化若しくは比較的低温で硬化する材料を使用することが好ましい。また、光重合開始剤の添加前に熱硬化樹脂を加熱して予め硬化させておくことも可能である。
【0037】
なお、熱硬化型樹脂に使用されるモノマー類としては、公知のモノマー類を使用することができる。例えば、フェノール樹脂やメラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの材料として使用されるような種々のモノマー類を使用することができる。
【0038】
また熱硬化型樹脂に使用される硬化剤としては、公知の硬化剤を使用することができる。例えば、アミン類、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリスルフィド樹脂、イソシアネートなど、種々の硬化剤を使用することができ、反応温度やモノマー類の特性に応じて適宜選択される。なお硬化反応を促進する硬化補助剤など種々の添加物を添加するようにしても良い。
【0039】
さらに記録層101として、熱可塑性の樹脂材料を用いることができる。この場合、基板103上に展開される液状樹脂M1は、例えば所定の希釈溶剤で希釈されたポリマーに対し、上述した光重合開始剤が所定量添加されることにより構成される。
【0040】
なお、熱可塑性の樹脂材料としては、公知の樹脂を用いることができる。例えば、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene Copolymer)樹脂、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ノルボルネン樹脂など、種々の樹脂を使用することができる。
【0041】
また希釈溶剤は、水、アルコール類、ケトン類、芳香族系溶剤、ハロゲン系溶剤などの各種溶剤若しくはこれらの混合物を用いることができる。なお熱可塑性の樹脂の物理特性を変化させる可塑剤など種々の添加物を添加するようにしても良い。
【0042】
(1−2)本発明における記録マークの記録及び再生原理
液状材料M1として光硬化型の樹脂材料を用いた場合は、光重合開始剤がスタータとなり後は連鎖的に光反応が進行するため、理論上、非常に少量の光重合開始剤のみが消費される。しかしながら液状材料M1の光反応を迅速にかつ十分に進行させるため、一般的に、実際に消費される光重合開始剤と比して過剰な量の光重合開始剤が配合される。
【0043】
すなわち図3に示すように、初期化後の光情報記録媒体100における記録層101では、モノマー類が重合して生成したポリマーP内に形成された空間Aに、消費されなかった光重合開始剤(以下、これを光重合開始剤残渣と呼ぶ)Lが散在した状態にある。
【0044】
また熱硬化型樹脂及び熱可塑性樹脂に対して光重合開始剤を配合した場合には、当該光重合開始剤が何らかの反応によって消費されることはなく、そのまま記録層101内に残留するため、光硬化型樹脂と同様に光重合開始剤残渣が散在した状態にすることができる。さらに記録層101には、希釈溶剤として使用された溶剤が残留した残留溶剤や硬化処理において残留した未反応のモノマー類が散在することも考えられる。
【0045】
本発明における光情報記録媒体100では、液状材料M1において、140℃〜400℃(140℃以上、400℃以下を意味する、以下、同様の意味で「〜」を用いる)に沸騰又は分解などにより気化する気化温度を有する光重合開始剤、残留溶剤又はモノマー類などの気化材料を配合することにより、初期化後の記録層101に140℃〜400℃に気化温度を有する気化材料を散在させておく。
【0046】
図4に示すように記録層101に対物レンズOLを介して所定の記録用の光ビームL2(以下、これを記録光ビームL2cと呼ぶ)が照射されると、記録光ビームL2cの焦点Fb近傍の温度が局所的に上昇し、例えば150℃以上の高温になる。
【0047】
このとき記録光ビームL2cは、焦点Fb近傍の記録層101に含まれる気化材料を気化させ、その体積を増大させることにより、焦点Fbに気泡を形成する。このとき気化した光重合開始剤残渣は、そのまま記録層101の内部を透過し、又は記録光ビームL2cが照射されなくなることにより冷却され、体積の小さな液体に戻る。このため記録層101では、気泡により形成された空洞のみが焦点Fb近傍に残ることになる。なお記録層101のような樹脂は、通常一定の速度で空気を透過させることから、いずれ空洞内は空気によって満たされると考えられる。
【0048】
すなわち光情報記録媒体100では、記録光ビームL2cを照射して記録層101が含有する気化材料を気化させることにより、図4(A)に示すように、焦点Fbに気泡によって形成された空洞でなる記録マークRMを形成することができる。
【0049】
一般的に記録層101に使用されるフォトポリマーの屈折率n101が1.5程度であり、空気の屈折率nAIRが1.0であることから、記録層101は、当該記録マークRMに対して読出用の光ビームL2(以下、これを読出光ビームL2dと呼ぶ)が照射されると、図4(B)に示すように、当該記録マークRMの界面における屈折率の差異により、読出光ビームL2dを反射して比較的光量の大きい戻り光ビームL3を生成する。
【0050】
一方記録層101は、記録マークRMが記録されていない所定の目標位置に対して読出光ビームL2dが照射されると、図4(C)に示すように、目標位置近傍が一様の屈折率n101でなることにより、読出光ビームL2dを反射させることはない。
【0051】
すなわち光情報記録媒体100では、記録層101の目標位置に読出光ビームL2dを照射し、光情報記録媒体100によって反射される戻り光ビームL3の光量を検出することにより、記録層101における記録マークRMの有無を検出することができ、記録層101に記録された情報を再生し得るようになされている。
【0052】
(1−3)光情報記録再生装置の構成
図5において光情報記録再生装置1は、全体として光情報記録媒体100における記録層101に対して光を照射することにより、記録層101において想定される複数の記録マーク層(以下、これを仮想記録マーク層と呼ぶ)に情報を記録し、また当該情報を再生するようになされている。
【0053】
光情報記録再生装置5は、CPU(Central Processing Unit)構成でなる制御部6により全体を統括制御するようになされており、図示しないROM(Read Only Memory)から基本プログラムや情報記録プログラム、情報再生プログラム等の各種プログラムを読み出し、これらを図示しないRAM(Random Access Memory)に展開することにより、情報記録処理や情報再生処理等の各種処理を実行するようになされている。
【0054】
制御部6は、光ピックアップ7を制御することにより、当該光ピックアップ7から光情報記録媒体100に対して光を照射させ、また当該光情報記録媒体100から戻ってきた光を受光するようになされている。
【0055】
光ピックアップ7は、制御部6の制御に基づき、レーザダイオードでなる記録再生光源10から例えば波長405〜406[nm]の光ビームL2をDC出力で出射させ、当該光ビームL2をコリメータレンズ11により発散光から平行光に変換した上でビームスプリッタ12に入射させるようになされている。
【0056】
因みに記録再生光源10は、制御部6の制御に従い、光ビームL2の光量を調整し得るようになされている。
【0057】
ビームスプリッタ12は、反射透過面12Sにより光ビームL2の一部を透過させ、対物レンズ13へ入射させる。対物レンズ13は、光ビームL2を集光することにより、光情報記録媒体100内の任意の箇所に合焦させるようになされている。
【0058】
また対物レンズ13は、光情報記録媒体100から戻り光ビームL3が戻ってきた場合、当該戻り光ビームL3を平行光に変換し、ビームスプリッタ12へ入射させる。このときビームスプリッタ12は、戻り光ビームL3の一部を反射透過面12Sにより反射し、集光レンズ14へ入射させる。
【0059】
集光レンズ14は、戻り光ビームL3を集光してピンホール板15のピンホール15Aを通過させる。このときピンホール15Aは、所望の仮想記録マーク層において反射された戻り光ビームL3のみを選択的に通過させ、レンズ16を介して当該戻り光ビームL3受光素子17に照射する。
【0060】
これに応じて受光素子17は、戻り光ビームL3の光量を検出し、当該光量に応じた検出信号を生成して制御部6へ送出する。これにより制御部6は、検出信号を基に戻り光ビームL3の検出状態を認識し得るようになされている。
【0061】
ところで光ピックアップ7は、図示しない駆動部が設けられており、制御部6の制御により、X方向、Y方向及びZ方向の3軸方向に自在に移動し得るようになされている。実際上、制御部6は、当該光ピックアップ7の位置を制御することにより、光ビームL2の焦点位置を所望の位置に合わせ得るようになされている。
【0062】
このように光情報記録再生装置5は、光情報記録媒体100内の任意の箇所に対して光ビームL2を集光し、また当該光情報記録媒体100から戻ってくる戻り光ビームL3を検出し得るようになされている。
【0063】
(1−4)実施例
(1−4−1)実施例1
以下の条件により、光情報記録媒体100としてのサンプル1〜8を作製した。サンプル1〜8では、光重合開始剤の気化温度の差異による影響を確認するために、1種類のモノマー類に対して、気化温度の異なる8種類の光重合開始剤を同一重量配合した。
【0064】
モノマー類としてアクリル酸エステルモノマー(p−クミルフェノールエチレンオキシド付加アクリル酸エステル)とウレタン2官能アクリレートオリゴマーとの混合物(重量比40:60)100重量部に対し、1.0重量部の光重合開始剤を加え、暗室化において混合脱泡することにより液状材料M1を調整した。以下に、各サンプルにおいて使用した光重合開始剤を示す。
【0065】
サンプル1:DAROCUR(登録商標)1173 (2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
サンプル2:Irg−184 (1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
サンプル3:Irg−784 (ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製))
サンプル4:Irg−907 (2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−オン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
サンプル5:Irg−369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
サンプル6:SCTP(ソニーケミカルインフォメーションデバイス株式会社製)
サンプル7:X−32−24(ソニーケミカルインフォメーションデバイス株式会社製)
サンプル8:UVX4(ソニーケミカルインフォメーションデバイス株式会社製)
【0066】
そして液状材料M1を基板103上に展開し、基板102及び103の間に挟み込んで未硬化光情報記録媒体100aを作製した。この未硬化光情報記録媒体100aに対し、高圧水銀灯でなる第1初期化光源1により初期化光L1(波長365[nm]においてパワー密度250[mW/cm])を10[sec]照射することにより、光情報記録媒体100としてのサンプル1を作製した。なお、各サンプル1〜8における記録層101の厚さt1は0.5[mm]、基板102の厚さt2は0.7[mm]、基板103の厚さt3は0.7[mm]であった。
【0067】
以下に、サンプル1〜8に使用した液状材料M1におけるモノマー類及び光重合開始剤の配合量の一覧を示す。
【0068】
【表1】

【0069】
光情報記録再生装置5は、光情報記録媒体100に対して情報を記録する際、図6(A)に示すように、記録再生光源10(図5)からの記録光ビームL2cを記録層101内に集光する。この場合、光情報記録再生装置5は、光ピックアップ7(図5)のX方向、Y方向及びZ方向の位置を制御することにより、記録光ビームL2c(図6(A))を記録層101内の目標とする位置(すなわち目標位置)に合焦させる。
【0070】
このとき記録層101内の目標位置では、記録光ビームL2cが集光され、温度が局所的に上昇し、記録層101における光重合開始剤残渣の温度が光重合開始剤の気化温度以上になることにより、当該光重合開始剤残渣が気化し、目標位置に空洞でなる記録マークRMを形成する。
【0071】
具体的に光情報記録再生装置5は、記録層101の表面から深さ200[μm]となる位置を目標位置とし、記録再生光源10から波長405〜406[nm]、光パワー55[mW]のレーザ光でなる記録光ビームL2cを射出し、これをNA(Numerical Aperture)=0.3の対物レンズ13により集光し、目標位置に対して照射した。
【0072】
光情報記録再生装置5は、光情報記録媒体100から情報を読み出す際、図6(B)に示すように、記録再生光源10(図5)からの読出光ビームL2dを記録層101内に集光する。この場合、光情報記録再生装置5は、光ピックアップ7(図5)のX方向、Y方向及びZ方向の位置を制御することにより、読出光ビームL2d(図6(B))を記録層101内の目標位置に合焦させる。
【0073】
このとき光情報記録再生装置5は、記録再生光源10から記録光ビームL2cと同波長でなり光パワーが200[μW]又は1.0[mW]でなる読出光ビームL2dを出射し、対物レンズ13により記録層101内の記録マークRMが形成されているべき目標位置に集光させる。
【0074】
このとき読出光ビームL2dは、記録マークRMにより反射され、戻り光ビームL3となる。光情報記録再生装置5は、対物レンズ13及びビームスプリッタ12等を介して当該戻り光ビームL3をCCD(Charge Coupled Device)でなる受光素子17により検出した。
【0075】
また光情報記録再生装置5は、サンプル1における目標位置に対し、波長が405[nm]でなる光パワー55[mW]の記録光ビームL2cを開口数NAが0.3の対物レンズ13を介して0.6[sec]照射後、同一波長、同一の開口数NAでなる対物レンズ13を介して光パワー1.0[mW]の読出光ビームL2dを照射した。
【0076】
このとき受光素子17は、図7(A)に示すように、十分に検出可能な光量でなる戻り光ビームL3を検出することができた。以下、このときの光量を基準光量とし、サンプル2〜8に対する戻り光ビームL3の検出の有無を確認している。
【0077】
一方記録光ビームL2cを照射していない目標位置に対し、同様に読出光ビームL2dを照射した場合、受光素子17は、図7(B)に示すように、戻り光ビームL3を殆ど検出することができなかった。
【0078】
なお、サンプル1に使用した光重合開始剤は、紫外線から可視光(1[nm]〜550[nm])を吸収することによって励起され、光重合のスタータとなるラジカルを発生させることから、紫外線を吸収する特性を有する。またサンプル2〜8に使用した各重合開始剤についても同様である。
【0079】
記録光ビームL2cは、その波長が405〜406[nm]と紫外線に近い可視光である。従ってサンプル1において使用したDARCUR1173は記録層101内において記録光ビームL2cを吸収して自ら発熱し、気化温度以上となることにより気化し、気泡でなる記録マークRMを形成していると考えられる。
【0080】
フォトポリマーもその構造から多数の2重結合を有していることが多い。一般的に2重結合は、紫外線を吸収することが知られている。すなわちフォトポリマーは、記録光ビームL2cを吸収して発熱し、この熱を光重合開始剤に伝達することにより、光重合開始剤の温度を上昇させ、当該光重合開始剤を気化させているものと考えられる。
【0081】
さらに光情報記録再生装置5は、サンプル1〜8の目標位置に対し、波長が405〜406[nm]でなる光パワー20[mW]、DC出力の記録光ビームL2cを開口数NAが0.3の対物レンズ13を介して10.0[sec]照射後、同一波長、同一の開口数NAでなる対物レンズ13を介して光パワー1.0[mW]の読出光ビームL2dを照射した。
【0082】
このとき光情報記録再生装置5は、照射時間を0.05[sec]から10.0[sec]まで、0.05[sec]刻みで増大させながら複数の目標位置に記録光ビームL2cをそれぞれ照射した。
【0083】
そして光情報記録再生装置5は、目標位置に読出光ビームL2dを照射し、受光素子17によって戻り光ビームL3の光量を検出した。基準光量以上の光量が受光素子17によって検出できた記録光ビームL2cの照射時間のうち、最も短い照射時間を記録時間とした。
【0084】
表2に、サンプル1〜8の記録時間、各サンプルに使用された光重合開始剤の種類、気化温度及び配合割合の一覧を示す。なお、表中に「×」とあるのは、記録光ビームL2cを10[sec]照射した目標位置に対して読出光ビームL2dを照射した場合であっても受光素子17によって基準光量以上の戻り光ビームL3が検出されなかったことを示している。
【0085】
【表2】

【0086】
なおサンプル1〜サンプル8までに使用した光重合開始剤の気化温度は、以下の測定条件によるTG/DTA(示唆熱・熱重量同時測定)の測定結果を示しており、TG曲線において最も激しく重量減少が生じた温度を気化温度としている。
【0087】
雰囲気 :N(窒素雰囲気下)
昇温速度:20[℃/min]
測定温度:40℃〜600℃
使用装置:TG/DTA300(セイコーインスツルメンツ株式会社製)
【0088】
因みに例えば測定対象物が複数の気化温度を有する場合には、最も低温において激しく重量減少が生じた温度を測定対象物の気化温度としている。またUVX4は、測定範囲(40℃〜600℃)において急激な重量減少が確認できず、気化温度が存在しなかったため、気化温度を600℃超とした。
【0089】
この結果から、気化温度が147℃〜394℃でなる光重合開始剤を用いたサンプル1〜8のいずれにおいても1[sec]未満(0.2〜0.8[sec])の記録時間において基準光量以上の戻り光ビームL3が検出され、目標位置に記録マークRMが形成されていることが確認された。
【0090】
一方気化温度が532℃、600℃以上でなる光重合開始剤を用いたサンプル7および8では、記録光ビームL2cを10[sec]照射した目標位置に対して読出光ビームL2dを照射した場合であっても受光素子17によって基準光量以上の戻り光ビームL3が検出されず、目標位置に記録マークRMが形成されなかったことが確認された。
【0091】
すなわち気化温度が低い光重合開始剤を使用した場合には、記録光ビームL2cの照射によって焦点Fb付近に存在する光重合開始剤残渣が気化温度程度もしくはそれ以上上昇することにより、光重合開始剤残渣が気化して記録マークRMを形成することができたと考えられる。一方、気化温度が高い光重合開始剤を使用した場合には光重合開始剤残渣が気化温度程度にまで上昇して気化することができないため、記録マークRMを形成することができないと考えられる。
【0092】
因みに記録再生光源22の代わりに2光子吸収などの多光子吸収を引き起こすピコ秒レーザを用い、波長780[nm]、平均出射パワー43[mW]、5[psec]のパルス出力でなる記録光ビームL2cを各サンプル1〜8に照射した場合であっても、記録時間の変化に3次の非線形過程の傾向は見られなかった。このことから記録層101はいわゆる2光子吸収の材料を殆ど含んでいないと考えられる。
【0093】
ここで、394℃の気化温度でなる光重合開始剤を用いたサンプル6であっても0.8[sec]で記録マークRMが形成されていることから、記録光ビームL2cの照射時間を最大1[sec]まで許容すると仮定すると、気化温度が400℃程度以下の光重合開始剤を使用することにより記録マークRMを形成することができると考えられる。
【0094】
また記録光ビームL2cによって発生する熱により光重合開始剤残渣を気化させており、実際に気化温度の比較的低い重合開始剤の方が気化温度の高い重合開始剤よりも記録時間が短い傾向にあるため、光重合開始剤の気化温度が低ければ低いほど記録マークRMを容易に形成できるとも考えられる。
【0095】
しかしTG/DTA測定の結果、気化温度が147℃のDAROCUR1173であっても、気化温度よりも約60℃低い約90℃から徐々に吸熱反応が始まることが確認されている。このことはDAROCUR1173を含有するサンプルを約90℃の温度下で長時間放置した場合に、光重合開始剤残渣が徐々に揮発してしまい、記録マークRMを形成したいときに光重合開始剤残渣が残留しておらず、記録光ビームL2cを照射しても記録マークRMを形成できなくなる可能性を示唆している。
【0096】
一般的に、光情報記録再生装置5のような電子機器は、80℃程度の温度下で使用されることが想定されている。従って光情報記録媒体100としての温度安定性を確保するためには、気化温度が80℃+60℃=140℃以上の光重合開始剤を用いることが好ましい。また、140℃より5℃程度高い気化温度(すなわち145℃)を有する光重合開始剤を用いることにより、温度安定性をさらに向上させることができると考えられる。
【0097】
以上のことから、液状材料M1に配合される光重合開始剤の気化温度は、140℃〜400℃であることが好ましく、さらに145℃〜300℃であることが特に好ましい。
【0098】
なお光重合開始剤の配合量は、光重合反応を十分に進行させると共に、重合開始剤残渣が過剰に存在することによる記録層101の弾性率低下などの弊害を防止するため、モノマー類100重量部に対して0.8重量部〜20.0重量部であることが好ましく、さらに2.5重量部〜20.0重量部であることが特に好ましい。
【0099】
また、記録層100に気泡でなる記録マークRMが形成される直前に、記録光ビームL2cが照射された目標位置において屈折率変化が生じていることが光学顕微鏡によって観察されている。従って光情報記録再生装置5は、気泡による記録マークRMと比して戻り光ビームL3の強度が弱くなるものの、この屈折率変化を記録マークとすることも可能である。
【0100】
(1−5)動作及び効果
以上の構成において、光情報記録媒体100は、記録層101に140℃以上かつ400℃以下の気化温度を有する光重合開始剤を光重合開始剤残渣として含有するようにした。
【0101】
これにより、記録層101は、情報の記録時に所定の記録光である記録光ビームL2cが集光されると、記録光ビームL2cの焦点Fb近傍に存在する光重合開始剤残渣の温度を上昇させて当該光重合開始剤残渣を気化させることにより空洞でなる記録マークRMを形成することができる。
【0102】
この結果、情報の再生時に所定の読出光である読出光ビームL2dが照射されることに応じ、記録マークRMに反射されてなる戻り光としての戻り光ビームL3を受光して記録マークRMの有無を検出することにより、戻り光を基に当該情報を再生させることができる。
【0103】
すなわち従来の色素の2光子吸収特性を利用する光情報記録媒体では、多層化を行うために、再生の波長に対する透過率は低いがその倍程度以上の波長に対しては透過率が高い色素材料と、大型かつ高消費電力な高出力のフェムト秒レーザ又はピコ秒レーザを用いる必要がある。これに対し、光情報記録媒体100は、レーザダイオードから発射される通常のレーザ光が集光されるだけで、簡易に気泡でなる記録マークRMを形成することができ、光情報記録再生装置5を小型化及び省電力化することが可能となる。
【0104】
記録層101は、少なくともモノマー又はオリゴマーを含むモノマー類と、光重合開始剤とが混合されてなる液状材料M1を、初期化光L1の照射による光重合や光架橋などの光反応によって硬化させた光硬化型樹脂でなる。
【0105】
ここで光重合開始剤は、重合反応を開始するためのラジカルやカチオンを発生させて液状材料M1における重合反応を開始させるだけの役割を担っているため、例えばモノマー類100重量部に対して0.01重量部〜0.1重量部(すなわち記録層101の全重量に対して0.01%〜0.09%)程度配合されていれば、理論的に(反応速度などを考慮せず十分な照射時間(例えば10時間)に渡って初期光ビームL1を照射できる場合)モノマー類をフォトポリマーとして硬化させることが可能である。
【0106】
液状材料M1は、モノマー類に対して光重合開始剤を過剰量配合することにより、硬化後の上記記録層に上記光重合開始剤を残留させると共に、光反応の反応速度を上昇させることができる。
【0107】
(2)第2の実施の形態
図8〜11は第2の実施の形態を示すもので、図1〜7に示す第1の実施の形態に対応する部分を同一符号で示している。なお初期化光源2及び情報光情報記録再生装置5としての構成は第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0108】
上述したように光情報記録媒体100では、未硬化光情報記録媒体100aに対して初期化光L1が照射されることにより形成される。このとき基板102及び103間に挟まれた液状材料M1が光反応により硬化して記録層101となる。
【0109】
本願発明人は、この記録層101に対して照射される初期化光L1の照射条件を変化させて硬化度を変化させることにより、記録マークRMを形成するまでの記録時間を変化させ得ることを見出した。
【0110】
(2−1)実施例2
実施例2では、未硬化光情報記録媒体100aとしてのサンプル11を作製すると共に、当該サンプル11に対し照射条件を変化させて初期化光L1を照射し、光情報記録媒体100としてのサンプル11A〜11Cを作製すると共に、当該光情報記録媒体100に対する記録時間について測定を行った。
【0111】
実施例1と同様、モノマー類としてアクリル酸エステルモノマー(p−クミルフェノールエチレンオキシド付加アクリル酸エステル)とウレタン2官能アクリレートオリゴマーとの混合物(重量比40:60)100重量部に対し、光重合開始剤として10重量部のIrg−184を加え、暗室化において混合脱泡することにより液状材料M1を調整した。
【0112】
そして液状材料M1をスペーサ104における内部空間104Aに充填し、基板102及び103の間に挟み込んで未硬化光情報記録媒体100aとしてのサンプル11を計3つ作製した。この未硬化光情報記録媒体100aに対し、高圧水銀灯でなる第1初期化光源1により初期化光L1を照射した。なお、サンプル11におけ記録層101の厚さt1は0.3[mm]、基板102の厚さt2は0.7[mm]、基板103の厚さt3は0.7[mm]であった。
【0113】
このとき実施例2では、初期化光源2により、3つのサンプル11に対して365[nm]の波長でなる初期化光L1の出射強度を変化させて初期化光L1を各20[sec]照射し、光情報記録媒体100としてのサンプル11A、11B及び11Cを作製した。このときの初期化光L1の積算光量を以下に示す。
【0114】
【表3】

【0115】
そして光情報記録再生装置5により、このようにして作製した光情報記録媒体100としてのサンプル11A〜11Cの記録層101における目標位置に対し、実施例1と同様にして波長が405[nm]でなる記録光ビームL2cを照射した。
【0116】
さらに光情報記録再生装置5により、同一波長、同一の開口数NAでなる対物レンズ13を介して光パワー0.5[mW]の読出光ビームL2dを照射し、実施例1と同様にして記録マークRMが形成されるまでの記録時間を測定した。
【0117】
表4にサンプル11A〜11Cにおける記録層101に対して記録マークRMが形成されるまでの記録時間を、サンプル11Cにおける記録時間を基準とした記録時間比として示している。
【0118】
【表4】

【0119】
表4からわかるように、初期化光L1の積算光量の増大に伴って、記録層101に対する記録時間が増大した。
【0120】
これは、初期化光L1の積算光量の増大に伴って記録層101の硬化が一段と進み、フォトポリマーとしての分子量などが増大して硬化度が大きくなることにより、例えばガラス転移点Tgが高くなるなどして記録層101としての物性が変化し、記録マークRMを形成するまでに必要とされる照射エネルギー(以下、これを必要記録エネルギーと呼ぶ)が増大したことよるものと推測される。
【0121】
以上のことから、記録層101に対する初期化光L1の積算光量に応じて記録層101における硬化度が変化し、必要記録エネルギーを変化させ得ることがわかった。
【0122】
(2−2)光情報記録媒体の構成
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様にして未硬化光情報記録媒体100aを作製した後、初期化光源2より第1の実施の形態とは異なる照射条件で初期化光L1を照射することにより、光情報記録媒体100Xを作製する。
【0123】
ところで上述した光情報記録媒体100の記録層101は、記録光ビームL2cを吸収して当該記録光ビームL2cの焦点Fb付近の温度を上昇させることにより、光重合開始剤残渣を気化させ、記録マークRMとしての気泡を形成する。このため記録層101は、記録光ビームL2cを一定の割合で吸収する。
【0124】
ここで光情報記録媒体100は、記録層101の厚み方向(Z方向)に複数の記録マークRMを形成する(図6(A))ため、記録層101のZ方向に異なる位置に記録光ビームL2cを照射させる。
【0125】
このとき光情報記録媒体100は、記録マークRMが形成されるべき目標位置の上面(基板102との界面)からのZ方向の位置(以下、これを深さと呼ぶ)に応じて記録層101内で記録光ビームL2cを通過させる距離(以下、これを層内通過距離と呼ぶ)を変化させることになる。
【0126】
例えば光情報記録媒体100は、入射面102Aを有する基板102近傍に目標位置がある場合には、層内通過距離が短いため、記録光ビームL2cを殆ど吸収することなく目標位置に到達させることになり、比較的大きい照射エネルギーでなる記録光ビームL2cを目標位置に照射させることになる。そして光情報記録媒体100は、照射エネルギーに応じた比較的大きい記録マークRMを形成する。
【0127】
また光情報記録媒体100は、下面103Aを有する基板103近傍に目標位置がある場合には、層内通過距離が長いため、記録光ビームL2cをある程度吸収してから目標位置に到達させることになり、比較的小さい照射エネルギーでなる記録光ビームL2cを目標位置に照射させることになる。そして光情報記録媒体100は、照射エネルギーに応じた比較的小さい記録マークRMを形成したり、照射エネルギーが小さくなり過ぎると、記録マークRMを形成することができなくなる。
【0128】
すなわち光情報記録媒体100は、同一の光強度でなる記録光ビームL2cが同一時間照射された場合、目標位置のZ方向の位置に応じてその照射エネルギーを変化させてしまい、記録マークRMの形状や大きさなどの特性(以下、これを記録特性と呼ぶ)が変化してしまう。
【0129】
上述したように記録層101では、硬化度が大きいと記録時間が増大し、記録マークRMを形成するまでに必要とされる必要記録エネルギーが大きい一方、硬化度が小さいと必要記録エネルギーが小さくなる。
【0130】
そこで本実施の形態による光情報記録媒体100Xは、図8に示すように、目標位置の深さに応じて想定される記録光ビームL2cの照射エネルギーに応じて記録層101Xの硬化度を調整して必要記録エネルギーを変化させることにより、記録特性を均一化し得るようになされている。なお図9では硬化度を濃淡で表しており、濃い部分では硬化度が大きく、薄い部分では硬化度が小さいことを示している。
【0131】
(2−3)未硬化光情報記録媒体の初期化
次に未硬化光情報記録媒体100aの初期化方法について説明する。
【0132】
ここで未硬化光情報記録媒体100aにおける液状材料M1は、比較的高い吸収率で初期化光L1を吸収して光反応を生じさせる。また液状材料M1は、未硬化光情報記録媒体100aにおいて0.3[mm]と比較的厚く形成されている。
【0133】
このため図8に示すように、液状材料M1に対して弱い光強度でなる初期化光L1を例えば基板102側から照射した場合、照射開始直後、初期化光L1の光エネルギーは基板102近傍に存在する液状材料M1の光反応によって消費されるため、基板103側にまで殆ど到達しない。その後基板102近傍の液状材料M1の光反応が進行するにつれて、初期化光L1は徐々に基板103側にも到達するようになる。
【0134】
そこで初期化光源2は、365[nm]の波長でなる初期化光L1を第1の実施の形態よりも小さい積算光量になるように、すなわち基板103側における光反応が十分に完了しないような比較的小さい積算光量で照射する。なお初期化光L1の積算光量(出射光強度及び照射時間)は、液状材料M1の初期化光L1に対する光吸収率及び厚み、記録光ビームL2cに対する光吸収率などに応じて適宜選択される。記録層101Xでは、出射光強度及び照射時間を調整することにより、硬化度の勾配を自由に調整することが可能となる。
【0135】
これにより図9に示したように、初期化がなされた光情報記録媒体100Xは、基板102側では液状材料M1の光反応を十分に進行させ、硬化度を大きくでき、必要記録エネルギーを大きくすることができる。一方光情報記録媒体100Xは、基板103側では、液状材料M1の光反応を十分に進行させず、硬化度を小さくでき、必要記録エネルギーを小さくすることができる。
【0136】
この結果光情報記録媒体100Xは、記録光ビームL2cの照射エネルギーが大きいことが想定される基板102近傍の必要記録エネルギーを大きくする一方、記録光ビームL2cの照射エネルギーが小さいことが想定される基板103近傍の必要記録エネルギーを小さくすることができ、記録層101X内において深さに応じて異なる照射エネルギーで照射されることが想定される記録光ビームL2cに対してその記録特性のばらつきを低減することができる。
【0137】
このように光情報記録媒体100Xでは、記録光ビームL2cの照射エネルギーに応じて記録層101X内における硬化度を相違させておくことにより、光情報記録再生装置5に対して当該照射エネルギーのばらつきを補正させる必要がなく、光情報記録再生装置5に一定の出射光強度でなる記録光ビームL2cを出力させるだけで記録特性のばらつきの少ない記録マークRMを形成させ得るようになされている。
【0138】
なお例えば図10に示す光情報記録媒体100Xtのように、入射面102A及び下面103Aに対し、光重合開始剤残渣が反応する波長の光を透過させない硬化防止膜102B及び103Bを設けたり、光重合開始剤残渣が反応する波長の光を通過させない材料によってスペーサ104を形成しても良い。
【0139】
これにより光情報記録媒体100Xtは、運搬や使用中などにおいて紫外線に曝露されることにより記録層101Xが光反応を起こし、記録層101Xの硬化度が不慮に変化してしまうのを防止することができる。
【0140】
また図11に示す光情報記録媒体100Xsのように、基板102及び103の両面側から初期化光L1が照射されることにより、101Xsの中心付近で硬化度を小さく、基板102及び103近傍で硬化度を大きくするようにしても良い。この光情報記録媒体100Xsは、当該光情報記録媒体100Xsの両面側から記録光ビームL2cを照射する場合に有効であり、例えば2系統の光ビームを干渉させてホログラムを記録する光情報記録媒体として使用することも可能である。
【0141】
(2−4)動作及び効果
以上の構成において、光情報記録媒体100Xにおける記録層101Xは、液状でなる液状樹脂M1を硬化させることにより形成され、情報の記録時に集光される所定の記録光である記録光ビームL2cを吸収して焦点Fb近傍の温度を上昇させることにより記録マークRMを形成し、情報の再生時に所定の読出光である読出光ビームL2dが照射されることに応じた戻り光である戻り光ビームL3を基に当該情報を再生させる。
【0142】
そして記録層101Xは、記録マークRMが記録されるべき目標位置に照射されると想定される記録光ビームL2dの照射エネルギーが大きい基板102近傍では硬化度を低く、照射エネルギーが小さい基板103近傍では硬化度を高くすることにより、当該照射エネルギーに応じて硬化度が相違しているようにした。
【0143】
これにより記録層101Xは、記録光ビームL2cの照射エネルギーに応じて記録マークRMの記録特性を調整することができる。このため記録層101Xは、再生処理の際、当該記録マークRMによって反射されることにより生成される戻り光ビームL3の光強度を調整することができ、再生特性を向上させることができる。
【0144】
また記録層101Xは、初期化光L1における出射光強度及び積算光量との関係を調整することにより、記録マークRMを均等に形成するよう硬化度を相違させるようにした。
【0145】
これにより記録層101Xは、記録光ビームL2cの照射エネルギーが大きいことが想定される基板102近傍の必要記録エネルギーを大きくする一方、記録光ビームL2cの照射エネルギーが小さいことが想定される基板103近傍の必要記録エネルギーを小さくすることができる。このため記録層101Xは、照射エネルギーに必要記録エネルギーを合わせることができ、記録層101X内において不均一な照射エネルギーで照射されることが想定される記録光ビームL2cに対してその記録特性を均一にすることができる。
【0146】
記録層101Xは、記録光ビームL2cの光軸方向に複数の記録マークRMを形成することが想定されており、記録光ビームL2cが入射される一方向である基板102側から記録光ビームL2cが進行する他方向である基板103側に向けて硬化度が低下するようにした。
【0147】
これにより記録層101Xは、記録光ビームL2cを吸収することにより基板102側では大きく、基板103側では小さいと想定される照射エネルギーに対し、逆特性の必要記録エネルギーを付加しておくことができ、照射エネルギーの相違を補正して、記録特性のばらつきを低減することができる。
【0148】
また記録層101Xは、予め想定される照射エネルギーに対して記録層101X内の必要記録エネルギーを補正しておくため、記録光ビームL2cを一定の出射光強度で照射させることができ、光情報記録再生装置5としての構成を簡易にすることができる。
【0149】
記録層101Xは、当該記録層101X内において強度が変化するように初期化光L1が照射されて硬化度が調整されていることにより、連続的に変化する照射エネルギーに対して、連続的に硬化度を変化させることができ、高い精度で照射エネルギーの相違を補正することができる。また記録層101Xは、記録層101Xを単一層として形成すれば良いため、製造工程を簡易にすることができる。
【0150】
少なくとも一面に、記録層101Xに対して初期化光L1の近傍の波長でなる光が曝露されるのを防止する曝露防止部としての硬化防止膜102B又は103B、若しくはカートリッジ105を設けることにより、不慮の光によって硬化度が変化してしまうことを防止することができる。
【0151】
以上の構成によれば、光情報記録媒体100Xの記録層101Xは、硬化度を調整して必要記録エネルギーに勾配を設けることにより、当該記録層101X内において不均一となる記録光ビームL2cの照射エネルギーを補正することができ、かくして再生特性を向上し得る光情報記録媒体を実現することができる。
【0152】
(3)第3の実施の形態
(3−1)光情報記録媒体の構成
図12(A)〜(C)に示すように、光情報記録媒体120は、基板122及び123の間に円盤形状でなる記録層121が形成されている。また情報再生記録装置5(図5)に対応する情報再生記録装置5X(図示しない)は、テーブル8が図示しない駆動手段によって回転駆動することにより光情報記録媒体120を一定速度で回転させると共に、対物レンズ13を光情報記録媒体120の半径方向及びZ方向の2方向に駆動するようになされている。この場合、例えば基板102と記録層101との境界面などに溝状やピットによるトラックを形成してトラッキング制御やフォーカス制御等を行えば良い。なお初期化光源2としての構成は第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0153】
基板122及び123は第1の実施の形態と同様にガラス基板でなり、第1の実施の形態における基板102及び103と同一構成でなる。
【0154】
そして基板123の上部に光重合によってフォトポリマーを形成する未硬化の液状材料M1が円盤状に展開された後、当該液状材料M1上に基板122が載置され、記録層121が未硬化の液状材料M1でなる光情報記録媒体120(以下、これを未硬化光情報記録媒体120aと呼ぶ)が形成される。
【0155】
このように未硬化光情報記録媒体120aは、硬化前のフォトポリマーである液状材料M1を透明な基板122及び123により挟んでおり、全体として薄い板状に構成されている。
【0156】
ところで光情報記録媒体120は円盤状の記録層121を有しており、光情報記録再生装置5により一定の速度で回転された状態で記録光ビームL2cが照射されることによって、仮想マーク層におけるらせん状の仮想のトラック(以下、これを仮想トラックと呼ぶ)上に記録マークRMが形成されることが想定されている。
【0157】
このとき光情報記録媒体120は、内周側及び外周側における仮想トラックの1周当りの距離の相違に応じて当該内周側及び外周側で線速度が異なってしまう。このため光情報記録媒体120は、同一の出射光強度でなる記録光ビームL2cが目標位置に対して照射された場合には、目標位置の内外周の位置(すなわち半径方向の位置)に応じて照射時間が異なることにより目標位置に照射される記録光ビームL2cの照射エネルギーが相違してしまう。
【0158】
上述したように硬化度が大きいと記録時間が増大し、記録マークRMを形成するまでに必要とされる照射エネルギーが大きい一方、硬化度が小さいと、記録マークRMを形成するまでに必要とされる記録光ビームL2cの照射エネルギーが小さくなる。
【0159】
そこで本実施の形態による光情報記録媒体120は、図13に示すように、目標位置の半径方向の位置によって変動すると想定される記録光ビームL2cの照射エネルギーに応じて記録層120の硬化度を調整することにより、記録特性を均等にし得るようになされている。なお図14では硬化度を濃淡で表しており、濃い部分では硬化度が大きく、薄い部分では硬化度が小さいことを示している。
【0160】
(3−2)未硬化光情報記録媒体の初期化
次に、未硬化光情報記録媒体120aの初期化について説明する。
【0161】
図14に示すように未硬化光情報記録媒体120aは、初期化光源2により出射された初期化光L1のうちフィルタマスク20を通過した透過光L1aのみが照射されることにより、液状材料M1が光反応によって硬化し光情報記録媒体120となる。
【0162】
このフィルタマスク20は円盤状でなり、初期化光L1に対する透過率(以下、これを初期化光透過率と呼ぶ)が当該フィルタマスク20の半径方向に変化するようになされている。すなわちフィルタマスク20は、内周側において初期化光透過率が大きく、外周側に行くにつれて徐々に初期化光透過率が低下するようになされている。なお図14では、初期化光透過率を濃淡で示しており、濃い部分では初期化光透過率が低く、薄い部分では初期化光透過率が高いことを示している。
【0163】
そしてフィルタマスク20は、一様に照射される初期化光L1aをその半径方向に応じた初期化光透過率で透過させることにより、未硬化光情報記録媒体120aに対し、内周側において比較的大きい光強度でなる透過光L1aを照射する一方、外周側において比較的小さい光強度でなる透過光L1aを照射することができる。
【0164】
すなわちフィルタマスク20は、未硬化光情報記録媒体120aに対して、内周側において大きい照射エネルギーでなる透過光L1aを照射させてその硬化度を大きくさせる一方、外周側において小さい照射エネルギーでなる透過光L1aを照射させてその硬化度を小さくすることができる。なおフィルタマスク20は、想定される記録光ビームL2cの照射エネルギーに応じて、各目標位置において記録マークRMが均等に形成されるようにその初期化光透過率が選定されている。
【0165】
これにより図13に示したように、初期化がなされた光情報記録媒体120は、内周側では、液状材料M1の光反応を十分に進行させて、硬化度を大きくして必要記録エネルギーを大きくすることができるため、大きな照射エネルギーを得ないと記録マークRMを形成しないようにできる。このため光情報記録媒体120は、記録光ビームL2cの照射エネルギーが大きいことが想定される内周側において、適正な記録特性でなる記録マークRMを形成することができる。
【0166】
一方光情報記録媒体120は、記録光照射エネルギーの小さい外周側では液状材料M1の光反応を十分に進行させず硬化度を小さくして必要記録エネルギーを小さくすることができ、小さい照射エネルギーに反応して記録マークRMを形成することができる。このため光情報記録媒体120は、記録光ビームL2cの照射エネルギーが小さいことが想定される外周側において、適正な記録特性でなる記録マークを形成することができる。
【0167】
この結果、光情報記録媒体120は、記録層121内において不均一な照射エネルギーで照射されることが想定される記録光ビームL2cに対して、記録層121における記録特性を均一にすることができる。
【0168】
因みに例えば図15に示す光情報記録媒体120Xのように、光重合開始剤残渣が反応する波長の光を透過させない材料によって形成されたカートリッジ125内に光情報記録媒体120を収納するようにしても良い。この場合、スライド式の蓋125Bを有する光通過窓125Aを形成し、記録及び再生処理の際に記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dを通過させるようにする。また光情報記録媒体120Xは、光通過窓125Aに対向する入射面122Aに硬化防止膜を設け、光通過窓125Aを介して記録層121に対し不慮の光が曝露されることを確実に防止することができる。
【0169】
(3−3)動作及び効果
以上の構成において、光情報記録媒体120の記録層121は、円盤状に形成され、回転しながら記録光ビームL2cが照射されることが想定されており、外周側における硬化度が内周側における硬化度よりも低いことにより、外周側における必要記録エネルギーが内周側における必要記録エネルギーよりも小さい。
【0170】
これにより記録層121は、照射エネルギーと必要記録エネルギーとのバランスをとることができ、半径方向の位置に応じて不均一な照射エネルギーで照射される記録光ビームL2cに応じて、均等な記録特性でなる記録マークRMを形成することができる。
【0171】
また記録層121は、内周側及び外周側で照射エネルギーを相違させることが可能となるため、内周側及び外周側で線速度を相違させることができ、同一速度で光情報記録媒体120を回転させながら記録光ビームL2cを照射することができる。
【0172】
(4)第4の実施の形態
図15〜17は第4の実施の形態を示すもので、図12〜14に示す第3の実施の形態に対応する部分に同一符号を附して示している。なお初期化光源2としての構成は第1の実施の形態と同様であり、情報光情報記録再生装置5Xとしての構成は第3の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0173】
(4−1)光情報記録媒体の構成
図15に示すように、光情報記録媒体150において、記録層121は3つの記録領域(第1記録領域121a、第2記録領域121b及び第3記録領域121c)からなる3層構造を有している。記録層121では、各記録領域における光重合開始剤残渣の量が異なっており、第1記録領域121a、第2記録領域121b、第3記録領域121cの順で光重合開始剤残渣の量が多くなっている。なお図15では、斜線の濃淡が重合開始剤残渣の量を表しており、斜線の濃い部分では多く、斜線の薄い部分では少ないことを示している。
【0174】
光重合開始剤はその消費量が小さいため、液状材料M1における当該光重合開始剤の配合量が増大するにつれて光重合開始剤残渣の量も大きくなる。すなわち記録層121では、第1記録領域121a、第2記録領域121b、第3記録領域121cの順に液状材料M1における光重合開始剤の配合量が多くなっている。
【0175】
一般的に、光重合開始剤とモノマー類との反応によってラジカル、カチオン及びアニオン(以下、これをラジカル類と呼ぶ)がモノマー類に移動し、このモノマー類と別のモノマー類とが反応することによって重合反応を繰り返し、記録層121としてのフォトポリマーが形成される。
【0176】
このとき光重合開始剤の配合量が増大すると、ラジカル類を有するモノマー類と光重合開始剤とがカップリングし、モノマー類の重合反応を停止させるいわゆる阻害反応を引き起こし、記録層121における硬化度が低下することが知られている。
【0177】
すなわち記録層121では、光重合開始剤の配合量を変化させることにより、入射面122Aを有する基板122の近傍で硬化度が大きく、下面123Aを有する基板123近傍で硬化度が小さくなるように構成されている。
【0178】
これにより初期化がなされた光情報記録媒体150は、基板122側では重合反応を十分に進行させて硬化度を大きくでき、必要記録エネルギーを大きくすることができる。一方光情報記録媒体150は、基板123側では、液状材料M1の重合反応を十分に進行させることなく硬化度を小さくでき、必要記録エネルギーを小さくすることができる。
【0179】
この結果光情報記録媒体150は、記録光ビームL2cの照射エネルギーが大きいことが想定される基板122近傍の必要記録エネルギーを大きくする一方、記録光ビームL2cの照射エネルギーが小さいことが想定される基板123近傍の必要記録エネルギーを小さくすることができる。このため記録層121内において深さ方向に変動する照射エネルギーで照射されることが想定される記録光ビームL2cに対してその記録特性を調整することができる。
【0180】
なお記録領域の層数及び光重合開始剤残渣の量は、想定される記録光ビームL2cの照射エネルギーや、要求される記録特性に応じて適宜選定される。
【0181】
(4−2)光情報記録媒体の作製
次に光情報記録媒体150の作製方法について説明する。
【0182】
まず光重合開始剤の配合量の異なる3つの液状材料M1(光重合開始剤の配合量が大きい順に液状材料M1a、M1b及びM1c)を調整する。なお液状材料M1における重合開始剤の配合量及び配合量の異なる液状材料M1の数は、硬化後の記録層121における記録光ビームL2cに対する記録特性が当該記録層121の深さに拘らずほぼ均等になるように適宜選択される。
【0183】
図16(A)に示すように、基板123の上に例えばスピンコート法やスキージ法などにより液状材料M1aを0.1[mm]の厚みで展開した後、当該液状材料M1aの上に液状材料M1b及び液状材料M1cを順次展開する。そして液状材料M1cの上に基板122を載置することにより基板122及び基板123の間に液状材料M1を挟み込み、未硬化光情報記録媒体150aを作製する。
【0184】
そして図16(B)に示すように、初期化光源2により未硬化光情報記録媒体150aに対して初期化光L1を照射することにより、液状材料M1を光反応によって硬化させ、光情報記録媒体150を作製する。
【0185】
これにより図15に示したように、初期化がなされた光情報記録媒体150は、基板122側では液状材料M1の重合反応を十分に進行させて硬化度を大きくでき、必要記録エネルギーを大きくすることができる。一方光情報記録媒体150は、基板123側では、液状材料M1の重合反応を十分に進行させることなく硬化度を小さくでき、必要記録エネルギーを小さくすることができる。
【0186】
この結果光情報記録媒体150は、記録光ビームL2cの照射エネルギーが大きいことが想定される基板122近傍の必要記録エネルギーを大きくする一方、記録光ビームL2cの照射エネルギーが小さいことが想定される基板123近傍の必要記録エネルギーを小さくすることができる。このため光情報記録媒体150は、目標位置の深さに応じて照射エネルギーの変動が想定される記録光ビームL2cが照射されるにも拘らず、記録層121における記録特性を均等にすることができる。
【0187】
なお図17及び図18に示すように、各記録領域を順次形成して光情報記録媒体150を作製するようにしても良い。すなわち基板123上に液状材料M1aを展開(図17(A))し、初期化光L1を照射(図17(B))して第1記録領域121aを形成する。さらに当該第1記録領域121a上に液状材料M1bを展開(図17(C))し、初期化光L1を照射(図17(D))して第2記録領域121bを形成する。
【0188】
そして第2記録領域121b上に液状材料M1cを展開(図18(A))し、当該液状材料M1c上に基板122を載置し(図18(B))、初期化光L1を照射(図18(C))することにより、図18(D)に示すように、硬化度及び重合開始剤残渣の異なる3つの記録領域を有する光情報記録媒体150を作製することができる。
【0189】
この場合第1記録領域121a、第2記録領域121b及び第3記録領域121cにおいて照射される初期化光L1の積算光量が異なることを利用して、さらに硬化度を調整することも可能である。
【0190】
(4−3)実施例3
実施例1及び2と同様、モノマー類としてアクリル酸エステルモノマー(p−クミルフェノールエチレンオキシド付加アクリル酸エステル)とウレタン2官能アクリレートオリゴマーとの混合物(重量比40:60)100重量部に対し、光重合開始剤として所定量のIrg−184を加え、暗室化において混合脱泡することにより液状材料M1を調整した。
【0191】
表5に、各液状材料M1の配合量を示している。なお液状材料M1a〜M1c間では、光重合開始剤(Irg−184)の配合量のみが異なっており、液状材料M1aで20重量部、液状材料M1bで10重量部、及び液状材料M1cで5重量部である。
【0192】
【表5】

【0193】
そして液状材料M1aを基板123上に0.1mmの厚みで展開すると共に、当該液状材料M1a上に液状材料M1bを、当該液状材料M1b上に液状材料M1cを0.1mmの厚みで順次展開し、これを基板122及び123の間に挟み込んで未硬化光情報記録媒体150aを作製した。
【0194】
この未硬化光情報記録媒体150aに対し、高圧水銀灯でなる第1初期化光源1により365[nm]でなる初期化光L1を積算光量が360[mJ/cm]になるように20[sec]照射することにより、光情報記録媒体150としてのサンプル21を作製した。なお、サンプル21における記録層121の厚さt1は0.3[mm]、基板122の厚さt2は0.7[mm]、基板123の厚さt3は0.7[mm]であった。
【0195】
そして光情報記録再生装置5により、このようにして作製した光情報記録媒体150としてのサンプル21の記録層121における目標位置に対し、実施例1と同様にして波長が405〜406[nm]でなる記録光ビームL2cを照射した。なお各記録領域の界面から50[μm]の位置を目標位置とした。
【0196】
さらに光情報記録再生装置5により、同一波長、同一の開口数NAでなる対物レンズ13を介して光パワー0.5[mW]の読出光ビームL2dを照射し、実施例1と同様にして記録マークRMが形成されるまでの記録時間を測定した。
【0197】
またサンプル21における各記録領域から約5[mm]角のTg測定用サンプルを切り出し、以下の測定条件によって動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率E´と損失弾性率E´´の比であるtanδのピークをガラス転移点Tgとした。
【0198】
動的粘弾性装置:アイテイ製作制御株式会社製、DVA−220
モード :圧縮
応力 :なし
周波数 :1[Hz]
測定範囲 :120[℃]まで加温後冷却
下温速度 :10[℃/min]
【0199】
表6にサンプル21における各記録領域に対して記録マークRMが形成されるまでの記録時間を、第1記録領域121aにおける記録時間を基準とした記録時間比として示すと共に、各記録領域のガラス転移点Tgを示している。
【0200】
【表6】

【0201】
表6からわかるように、記録光ビームL2cが各記録領域によって吸収されることにより当該記録光ビームL2cの照射エネルギーが最も小さいにも拘らず、第1記録領域121aにおける記録時間が最も短く、一方で照射エネルギーが最も大きい第3記録領域122cにおける記録時間が最も長かった。
【0202】
すなわちサンプル21では、記録光ビームL2cの照射エネルギーの差異を補正するだけでなく、最も照射エネルギーの小さい第1記録領域121aにおける記録時間を最も小さくすることができた。
【0203】
このことは、光重合開始剤の配合量を変化させて各記録領域における硬化度を変化させることにより、必要記録エネルギーを大きく変化させ得たことを意味している。
【0204】
実際上、記録層121における第1記録領域121a及び第2記録領域121bでは、光重合開始剤の配合量が増大するにつれ、第3記録領域121cと比してガラス転移点Tgが低下している。記録層121では、各記録領域の液状材料M1において光重合開始剤の配合量を相違させているものの同一のモノマー類を使用していることから、かかるガラス転移点Tgの変化は第1記録領域121a及び第2記録領域121bのフォトポリマーとしての分子量が低下したこと、すなわち硬化度が低化していることを表している。
【0205】
因みに光重合開始剤はその消費量が小さいため、その配合量が増大するにつれて光重合開始剤残渣の量も大きくなる。一般的に光重合開始剤残渣が可塑剤として作用してガラス転移点Tgを低下させることが知られているが、この可塑剤作用によって生じるガラス転移点Tgの低下は例えば5[℃]以下の小さいものである。
【0206】
実施例3では第1記録領域121aのガラス転移点Tgが第3記録領域121cのガラス転移点Tgと比して20[℃]以上も低くなっている。このことから、第1記録領域121aにおけるガラス転移点Tgの低下は、主に硬化度が低下したことに起因するものといえる。
【0207】
このように光重合開始剤の配合量を変化させることにより、記録層121の各記録領域における硬化度を表すガラス転移点Tgを変化させることができ、記録時間を短縮、すなわち必要記録エネルギーを低下させ得ることが確認された。
【0208】
(4−4)動作及び効果
以上の構成によれば、光情報記録媒体150の記録層121は、光重合開始剤残渣の量が異なる3つの記録領域(第1記録領域121a、第2記録領域121b及び第3記録領域121c)を有することにより、記録マークRMが記録されるべき目標位置に照射されると想定される記録光ビームL2cの照射エネルギーに応じて硬化度が相違しているようにした。
【0209】
これにより記録層121は、照射エネルギーの小さくなる基板123側の必要記録エネルギーを小さく、照射エネルギーの大きくなる基板122側の必要記録エネルギーを大きくすることができ、照射エネルギーに対して必要記録エネルギーを均等化することができ、記録マークRMの大きさなどの記録特性を調整することができる。
【0210】
記録層121は、光重合開始剤の配合量を選択により記録マークRMを均等に形成するようにしたため、目標位置の深さに拘らず記録特性を均等にすることができる。
【0211】
記録層121は、硬化度の相違に応じてガラス転移点Tgが当該記録層121内において相違している。すなわちガラス転移点Tgは、同一のモノマー類及び光重合開始剤を使用したときに硬化度を表すことができるため、ガラス転移点Tgが記録層121内で相違していることは、硬化度が記録層121内で相違していると言える。従ってガラス転移点Tgをパラメータとして用いることにより、簡易な測定で硬化度を確認することができる。
【0212】
記録層121は、光重合開始剤のうち、未反応の光重合開始剤残渣の量が当該記録層121内で相違しており、このことは各液状材料M1a〜M1cにおける光重合開始剤の配合量が相違することを意味している。
【0213】
これにより記録層121は、光重合開始剤の配合量によって硬化度を劇的に変化させることができ、記録光ビームL2cの照射エネルギーが記録層121内で大きく異なるような場合であっても、必要記録エネルギーを照射エネルギーに合わせることができ、記録特性を均等にすることができる。
【0214】
また記録層121は、第2及び第3の実施の形態とは異なり、同一の初期化光L1を照射すればよいため、照射工程を簡素化することができる。さらに記録層121は、光重合開始剤の配合量によって重合反応を停止させる停止反応の頻度を調整することより硬化度を変化させるため、不慮の光が曝露された場合であっても、硬化度の相違関係を変化させずに済み、安定的に記録特性を調整することができる。
【0215】
さらに記録層121は、硬化度を相違させることによって必要記録エネルギーを調整することができるため、光情報記録再生装置5Xに記録光ビームL2cの出射光強度を調整させる必要が無く、当該光情報記録再生装置5Xに記録光ビームL2cを一定の出射光強度で出射させることができる。
【0216】
以上の構成によれば、光情報記録媒体150の記録層121は、光重合開始剤残渣の量を相違させるように、各液状材料M1a〜M1cにおける光重合開始剤の配合量を相違させることにより、重合反応と停止反応との割合を調整して硬化度を変化させることができ、かくして再生特性を向上し得る光情報記録媒体を実現できる。
【0217】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、記録特性のばらつきを抑制するように記録層101X内の硬化度を相違させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば記録光ビームL2cの照射エネルギーの小さい箇所には大きな記録マークRMを形成し、記録光ビームL2cの照射エネルギーの大きい箇所には小さな記録マークRMを形成するようにしても良い。
【0218】
これにより記録層101は、例えば再生光ビームL2dの照射エネルギーの小さい箇所では大きな記録マークRMによって当該再生光ビームL2dの一部分のみを反射させる。一方記録層101は、再生光ビームL2dの照射エネルギーの大きい箇所では小さい記録マークRMによって当該再生光ビームL2dの大部分を反射させることができ、戻り光ビームL3の光強度のばらつきを抑制して再生特性を向上させることができる。
【0219】
また上述の実施の形態においては、液状材料M1がモノマー類と光重合開始剤とから構成されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、液状材料M1の構成材料としては、熱硬化性のモノマーやこれを硬化させるための硬化剤、バインダポリマーやオリゴマー、光重合を行うための開始剤、さらには必要に応じて増感色素などを加える等しても良く、要は硬化後の記録層101に光重合開始剤が含有されていれば良い。
【0220】
なお、必要に応じて添加されるバインダ成分としては、エチレングリコール、グリセリンとその誘導体や多価のアルコール類、フタル酸エステルとその誘導体やナフタレンジカルボン酸エステルとその誘導体、リン酸エステルとその誘導体、脂肪酸ジエステルとその誘導体のような、可塑剤として用いることが可能な化合物が挙げられる。このとき用いられる光重合開始剤としては、情報の記録後に、後処理により適宜分解される化合物が望ましい。また増感色素としては、シアニン系、クマリン系、キノリン系色素などが挙げられる。
【0221】
さらに上述の実施の形態においては、光重合開始剤を過剰量添加することにより記録層101内に光重合開始剤残渣を含有させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば記録層101におけるモノマー類を硬化させるための光重合開始剤とは別の種類の光重合開始剤を添加することにより、記録層101に光重合開始剤を含有するようにしても良い。
【0222】
さらに上述の実施の形態においては、液状材料M1の全重量に対して0.79重量%以上、28.6重量%以下の割合で光重合開始剤が配合されているようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、光重合開始剤の種類、モノマー類の種類、及び添加剤などに応じて、光重合開始剤の配合量は適宜選択される。
【0223】
さらに上述の実施の形態においては、140℃以上かつ400℃以下の気化温度を有する光重合開始剤を記録層101に含有させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、140℃以上かつ400℃以下の気化温度を有するような化合物を記録層101に含有させるようにしても良い。
【0224】
さらに上述の実施の形態においては、記録層が含有する光重合開始剤及びフォトポリマーが記録光ビームL2cを吸収して発熱するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば光重合開始剤又はフォトポリマーのいずれかが記録光ビームL2cを吸収して発熱するようにしても良い。また、記録層が含有するフォトポリマーや必要に応じて添加される添加剤などの光重合開始剤以外の化合物が記録光ビームL2cに応じて化学反応(例えば光又は熱に応じた化合・分解反応など)を生じて発熱することにより、焦点Fb近傍の温度を上昇させるようにしても良い。
【0225】
さらに上述した実施の形態においては、記録層101が光硬化型樹脂が硬化してなるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば熱硬化型樹脂でなる記録層に対し、気化することにより気泡を形成する光重合開始剤残渣に相当する気化材料を含有している場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0226】
さらに上述した実施の形態においては、初期化処理(図2)において平行光でなる初期化光L1を光情報記録媒体100に照射するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば拡散光や収束光でなる初期化光L1を光情報記録媒体100に照射するようにしても良い。
【0227】
さらに上述した実施の形態においては、光情報記録媒体100の初期化処理を行うための初期化光L1、当該光情報記録媒体100に情報を記録するための記録光ビームL2c、及び当該光情報記録媒体100から情報を再生するための読出光ビームL2dの波長を統一するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dの波長を統一する一方で初期化光L1の波長を両者と異なるようにし、或いは初期化光L1、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dの波長を互いに異なるようにしても良い。
【0228】
この場合、初期化光L1としては、記録層101を構成する光重合フォトポリマーにおける光化学反応の感度に適した波長であり、記録光ビームL2cとしては、物質の熱伝導により温度を上昇させるような波長又は吸収されやすいような波長であり、読出光ビームL2dとしては、最も高い解像度が得られるような波長であることが望ましい。このとき、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dの波長等に応じて対物レンズ13(図5)のNA等についても適宜調整すれば良く、さらには情報の記録時と再生時とで記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dにそれぞれ最適化された2つの対物レンズを切り換えて用いるようにしても良い。
【0229】
また、記録層101を構成する光重合フォトポリマーに関しては、初期化光L1、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dのそれぞれの波長との組み合わせにおいて最も良好な特性が得られるよう、その成分等を適宜調整すれば良い。
【0230】
さらに上述の実施の形態においては、記録再生光源10から出射される記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dの波長を波長405〜406[nm]とする以外にも、他の波長とするようにしても良く、要は記録層101内における目標位置の近傍に気泡による記録マークRMを適切に形成できれば良い。
【0231】
さらに上述した実施の形態においては、光情報記録媒体100の基板102側の面から初期化光L1、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dをそれぞれ照射するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば初期化光L1を基板103側の面から照射するようにする等、各光又は光ビームをそれぞれいずれの面、もしくは両面から照射するようにしても良い。
【0232】
さらに上述した実施の形態においては、光情報記録媒体100の記録層101を一辺約50[mm]、厚さt1を約0.05〜1.0[mm]の円盤状に形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、他の任意の寸法とするようにし、或いは様々な寸法でなる正方形板状又は長方形板状、直方体状等、種々の形状としても良い。この場合、Z方向の厚さt1に関しては、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dの透過率等を考慮した上で定めることが望ましい。
【0233】
これに応じて基板102及び103の形状については、正方形板状又は長方形板状に限らず、記録層101に合わせた種々の形状であれば良い。また当該基板102及び103の材料については、ガラスに限らず、例えばポリカーボネイト等でも良く、要は初期化光L1、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2d並びに戻り光ビームL3をある程度高い透過率で透過させれば良い。また、戻り光ビームL3の代わりに、読出光ビームL2dの透過光を受光する受光素子を配置して記録マークRMの有無に応じた読出光ビームL2dの光変調を検出することにより、当該読出光ビームL2dの光変調を基に情報を再生するようにしても良い。さらには、記録層101単体で所望の強度が得られる場合等に、光情報記録媒体100から当該基板102及び103を省略しても良い。
【0234】
さらに上述した実施の形態においては、記録層としての記録層101によって光情報記録媒体としての光情報記録媒体100を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる記録層によって光情報記録媒体を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0235】
本発明は、例えば映像コンテンツや音声コンテンツ等のような大容量の情報を光情報記録媒体等の記録媒体に記録し又は再生する光情報記録再生装置等でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】第1の実施の形態による光情報記録媒体の構成を示す略線図である。
【図2】光情報記録媒体の初期化の説明に供する略線図である。
【図3】光重合開始剤残渣の様子を模式的に示す略線図である。
【図4】光ビームの照射の説明に供する略線図である。
【図5】光情報記録再生装置の構成を示す略線図である。
【図6】情報の記録及び再生の説明に供する略線図である。
【図7】戻り光ビームの検出の説明に供する略線図である。
【図8】第2の実施の形態による光情報記録媒体を示す略線図である。
【図9】第2の実施の形態による初期化光の照射の説明に供する略線図である。
【図10】第2の実施の形態による光情報記録媒体の変形例(1)を示す略線図である。
【図11】第2の実施の形態による光情報記録媒体の変形例(2)を示す略線図である。
【図12】第3の実施の形態による光情報記録媒体の構成(1)を示す略線図である。
【図13】第3の実施の形態による光情報記録媒体の構成(2)を示す略線図である。
【図14】第3の実施の形態による初期化光の照射の説明に供する略線図である。
【図15】第3の実施の形態による光情報記録媒体の変形例を示す略線図である。
【図16】第4の実施の形態による光情報記録媒体の構成を示す略線図である。
【図17】第4の実施の形態による光情報記録媒体の作製(1)の説明に供する略線図である。
【図18】第4の実施の形態による光情報記録媒体の作製(2)説明に供する略線図である。
【図19】第4の実施の形態による光情報記録媒体の作製(3)説明に供する略線図である。
【符号の説明】
【0237】
2……初期化光源、5……情報記録再生装置、6……制御部、7……光ピックアップ、13……対物レンズ、15……受光素子、100、100X、120、150……光情報記録媒体、100a、100Xa、120a、150a……未硬化光情報記録媒体、101、121……記録層、121a、121b、121c……記録領域、102、103……基板、104……スペーサ、t1、t2、t3……厚さ、L1……初期化光ビーム、L2c……記録光ビーム、L2d……読出光ビーム、L3……戻り光ビーム、M1、M1a、M1b、M1c……液状材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状でなる液状樹脂を硬化させることにより形成され、情報の記録時に集光される所定の記録光を当該記録光の波長に応じて吸収して焦点近傍の温度を上昇させることにより記録マークを形成し、上記情報の再生時に所定の読出光が照射されることに応じた当該読出光の光変調を基に当該情報を再生させると共に、上記記録マークが記録されるべき目標位置に照射されると想定される上記記録光の照射エネルギーに応じて硬化度が相違している記録層
を具えることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】
上記記録層は、
上記硬化度の相違に応じて、ガラス転移点が当該記録層内において相違する
ことを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記記録層は、
上記記録光に応じて均等な記録マークを形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
上記記録層は、
少なくともモノマー又はオリゴマーと、上記光重合開始剤とが混合されてなる液状材料を所定の初期化光を照射することによって硬化させた光硬化型樹脂でなる
ことを特徴とする請求項3に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
上記記録層は、
上記記録光の光軸方向に複数の記録マークを形成することが想定されており、上記記録光が入射される一方向から当該記録光が進行する他方向に向けて上記硬化度が低下する
ことを特徴とする請求項4に記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
上記記録層は、
上記光重合開始剤のうち、未反応の光重合開始剤残渣の量が当該記録層内で相違する
ことを特徴とする請求項5に記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
上記記録層は、
当該記録層内において強度が変化するように上記初期化光が照射されたことにより、上記硬化度が相違している
ことを特徴とする請求項5に記載の光情報記録媒体。
【請求項8】
上記記録層は、
円盤状に形成され、回転しながら上記記録光が照射されることが想定されており、外周側における硬化度が内周側における硬化度よりも低い
ことを特徴とする請求項7に記載の光情報記録媒体。
【請求項9】
上記記録層は、
140℃以上かつ400℃以下の気化温度を有する気化材料を含有し、上記情報の記録時に上記記録光が集光されると、上記記録光の焦点近傍の温度を上昇させて上記光重合開始剤を気化させることにより上記記録マークを形成する
を具えることを特徴とする請求項6に記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
上記液状樹脂は、
上記モノマー又はオリゴマーに対して、上記気化材料としての上記光重合開始剤を過剰量配合することにより、硬化後の上記記録層に上記光重合開始剤を残留させてなる
ことを特徴とする請求項9に記載の光情報記録媒体。
【請求項11】
少なくとも一面に、上記記録層に対して上記初期化光の近傍の波長でなる光が曝露されるのを防止する曝露防止部
を具えることを特徴とする請求項7に記載の光情報記録媒体。
【請求項12】
上記曝露防止部は、
上記記録層を収納するカートリッジ
であることを特徴とする請求項11に記載の光情報記録媒体。
【請求項13】
上記曝露防止部は、
上記記録層を覆う硬化防止膜
であることを特徴とする請求項11に記載の光情報記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図12】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−137043(P2009−137043A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312920(P2007−312920)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】