説明

光拡散フィルムの製造方法

【課題】良好な光の拡散を得ることができる光拡散フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】一方の面及び他方の面を有し、樹脂により構成される基材フィルムを準備する準備工程s1と、載置面を有するテーブルの載置面上に基材フィルムの他方の面を固定する固定工程s2と、外周面の少なくとも1部が版面である転写用シリンダの版面上に光拡散部となる樹脂を付着させる付着工程s3と、転写用シリンダと基材フィルムとを相対的に移動させると共に、転写用シリンダを基材フィルムの一方の面上で輪転させ、光拡散部となる樹脂を基材フィルムの一方の面上に転写する転写工程s4と、基材フィルムの一方の面上に転写された光拡散部となる樹脂を硬化させる硬化工程s5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ装置のバックライト部や携帯電話等の操作部には、液晶ディスプレイの表示面や携帯電話等の操作キーを均一に光らせるための光拡散フィルムが用いられている。この光拡散フィルムの一つとして、光を伝播する導光性の基材フィルムの少なくとも一方の面上にドット状やストライプ状の光拡散部が形成された光拡散フィルムが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、このような光拡散フィルムの製造方法が記載されている。図9は、下記特許文献1に記載の光拡散フィルムの製造方法を示す図である。図9に示すように、この光拡散フィルムの製造方法においては、ロール76により帯状の基材フィルム71を転写用シリンダであるロール凹版77に押しつけながら、ロール凹版77の表面に基材フィルム71を所定の長さ巻きつける。そして、ロール凹版77の表面における基材フィルム71が巻きついていない部分から、光拡散部73となる樹脂75をダイス74により充填する。このように光拡散部73となる樹脂75をロール凹版77の表面に充填しながら、基材フィルム71の進行速度に合わせてロール凹版77を回転させる。こうして、基材フィルム71の一方の面上に光拡散部となる樹脂を転写する。そして、ロール凹版77の表面に基材フィルム71が巻きついている状態で紫外線照射装置79により、光拡散部となる樹脂75を硬化させて、光拡散部73を形成する。そして、ロール78により基材フィルム71を引っ張るようにして、基材フィルム71をロール凹版77の表面から剥がす。こうして、基材フィルム71の一方の面上に光拡散部73が形成された光拡散フィルム72を製造する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−059109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の光拡散フィルムの製造方法により、基材フィルム71に光拡散部73を形成する場合、基材フィルム71の一方の面上に光拡散部となる樹脂75を転写した後に、基材フィルム71がロール凹版77から剥がれづらい。従って基材フィルム71をロール凹版77の表面から剥がすときに、基材フィルム71が伸びてしまう場合等がある。このようにロール凹版77から基材フィルム71が剥がれる際に基材フィルムが伸びてしまうと、光拡散部73同士の間隔が設計値と異なってしまい、良好な光の拡散を得ることができない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、良好な光の拡散を得ることができる光拡散フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光拡散フィルムの製造方法は、一方の面及び他方の面を有し、樹脂により構成される基材フィルムを準備する準備工程と、載置面を有するテーブルの前記載置面上に前記基材フィルムの前記他方の面を固定する固定工程と、外周面の少なくとも1部が版面である転写用シリンダの前記版面上に光拡散部となる樹脂を付着させる付着工程と、前記転写用シリンダと前記基材フィルムとを相対的に移動させると共に、前記転写用シリンダを前記基材フィルムの前記一方の面上で輪転させ、前記光拡散部となる樹脂を前記基材フィルムの前記一方の面上に転写する転写工程と、前記基材フィルムの前記一方の面上に転写された前記光拡散部となる樹脂を硬化させる硬化工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
このような光拡散フィルムの製造方法によれば、版面上に光拡散部となる樹脂が付着した転写用シリンダと基材フィルムとが相対的に移動し、転写用シリンダが基材フィルム上を輪転することで、基材フィルムの一方の面上に光拡散部となる樹脂が転写される。このとき、基材フィルムの他方の面は、テーブルの載置面上に固定されている。従って、転写用シリンダが輪転する際、基材フィルムが転写用シリンダに巻きつくようにしてテーブルから浮き上がることが防止できる。こうして、基材フィルムが伸びることを防止することができる。そして、基材フィルムに転写された光拡散部となる樹脂が硬化されて、光拡散フィルムが製造される。このように製造される光拡散フィルムは、基材フィルムの伸びを防止することができるため、良好な光の拡散を得ることができる。
【0009】
また、上記光拡散フィルムの製造方法において、前記載置面は平坦であることが好ましい。
【0010】
このような光拡散フィルムの製造方法によれば、転写されて硬化する前の光拡散部となる樹脂が重力から受ける影響は、基材フィルムのどの場所においても同様とされる。従って、基材フィルムの場所によって、光拡散部の形状が変わることを抑制することができる。
【0011】
また、上記光拡散フィルムの製造方法における固定工程において、前記基材フィルムは、前記載置面上にエア吸着されることで固定されることが好ましい。
【0012】
このような光拡散フィルムの製造方法によれば、エア吸着における空気の流れをコントロールすることで、基材フィルムの固定や固定の解除、及び、吸着力の強さを自由に変更できる。従って、作業中に吸着力を強くしたり、光拡散部の形成後に容易に基材フィルムを載置面から離したりすることができる。
【0013】
また、上記光拡散フィルムの製造方法おける前記転写工程において、前記テーブルの前記載置面の位置は固定されて前記転写用シリンダが移動することにより、前記転写用シリンダと前記基材フィルムとが相対的に移動することが好ましい。
【0014】
このような光拡散フィルムの製造方法によれば、載置面は固定されるため、光拡散部となる樹脂を正確なパターンで転写することができる。
【0015】
また、上記光拡散フィルムの製造方法において、前記転写用シリンダの前記版面は、弾性を有する樹脂により構成されるブランケットの外周面であることが好ましい。
【0016】
このような光拡散フィルムの製造方法によれば、版面が弾性を有するため、より精密な光拡散部となる樹脂の転写を行うことができる。一方、版面が弾性を有する樹脂により構成されるブランケットの外周面であると、転写用シリンダが基材フィルム上を輪転する際、基材フィルムを巻きつけようとする力が強くなる。しかし、基材フィルムの他方の面はテーブルの載置面上に固定されているため、基材フィルムがテーブルから浮き上がることを防止することができる。
【0017】
また、上記光拡散フィルムの製造方法における前記付着工程において、前記光拡散部となる前記樹脂は、刷版の表面上から前記転写用シリンダの前記版面上に転写されることで付着することとしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、良好な光の拡散を得ることができる光拡散フィルムの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光拡散フィルムを示す図である。
【図2】図1に示す光拡散フィルムの製造工程を示すフローチャートである。
【図3】図2に示す固定工程の様子を示す図である。
【図4】図2に示す付着工程の様子を示す図である。
【図5】図2に示す転写工程の様子を示す図である。
【図6】図2に示す硬化工程の様子を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態における付着工程の様子を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態における転写工程の様子を示す図である。
【図9】従来技術による光拡散フィルムの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る光拡散フィルムの製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光拡散フィルムを示す図であり、図1の(A)は、光拡散フィルムの平面図であり、図1の(B)は、図1の(A)に示す光拡散フィルムのB−B線に沿った断面における構造を示す図である。
【0022】
図1に示すように、光拡散フィルム10は、基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面12上にドット状に形成される複数の光拡散部15とを備える。
【0023】
基材フィルム11は、互いに対向する一方の面12と他方の面13とを有しており、可撓性、光透過性を有する樹脂から形成されている。
【0024】
図1の(A)に示すように、それぞれの光拡散部15は、基材フィルム11の一方の面12上に、三角格子状に配列されて形成されており、互いに隣り合う光拡散部15の中心間距離は等しくされている。また、それぞれの光拡散部15のおおよその形状は、図1の(B)に示すように球体の一部が平面により切り取られた形状であり、光拡散フィルム10は、この切り取られた球体の一部の平面部分が、基材フィルム11の一方の面12上に配置された構造をしている。従って、図1の(A)に示すように、それぞれの光拡散部15は、基材フィルム11に垂直な方向に沿って光拡散部15を見る場合に円形の形状をしている。このそれぞれの光拡散部の直径や高さは、その用途に応じて適切に設定されるもので特に制限されるものではないが、例えば、直径は30μm〜400μmとされ、高さが0.1μm〜20μmとされる。さらに光拡散部同士の中心間距離は、特に制限されるものではないが、例えば30μm〜1000μmとされる。
【0025】
このような光拡散フィルム10は、光拡散フィルム10の側面側に配置される図示しない光源から基材フィルム11に光が入射すると、入射した光が基材フィルム11を伝播して、一部の光がそれぞれの各光拡散部15から出射する。このようにして、光拡散フィルム10は、面光源のように光を出射することができる。
【0026】
基材フィルム11を構成する樹脂は、可撓性、光透過性を有していれば特に限定されることはないが、例えば、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、或いは、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、或いは、ポチエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、或いは、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート等のアクリル系樹脂、或いは、ポリイミド、ポリアミイミド等のイミド系樹脂、或いは、ポリカーボネート、ポリスチレン等のスチレン系樹脂等を挙げることができる。
【0027】
また、光拡散部15を構成する樹脂は、転写可能であり光透過性を有する樹脂であれば特に限定されることはないが、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、脂環式樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリシラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、セルロース樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。
【0028】
次に図1に示す光拡散フィルム10の製造方法について説明する。本実施形態における光拡散フィルム10の製造方法は、オフセット印刷技術を用いた製造方法である。図2は、図1に示す光拡散フィルム10の製造工程を示すフローチャートである。
【0029】
図2に示すように、光拡散フィルム10の製造方法は、一方の面及び他方の面を有し、樹脂により構成される基材フィルム11を準備する準備工程s1と、テーブルの載置面上に基材フィルム11の他方の面13を固定する固定工程s2と、外周面の少なくとも1部が版面である転写用シリンダの版面上に光拡散部15となる樹脂を付着させる付着工程s3と、転写用シリンダと基材フィルムとを相対的に移動させると共に、転写用シリンダを基材フィルム11の一方の面12上で輪転させ、光拡散部15となる樹脂を基材フィルム11の一方の面12上に転写する転写工程s4と、基材フィルム11の一方の面12上に転写された光拡散部15となる樹脂を硬化させる硬化工程s5と、を備える。
【0030】
(準備工程s1)
まず、基材フィルム11を準備する。基材フィルム11は、硬化工程s5において、基材フィルム11が大きく収縮しないように光拡散部15となる樹脂の硬化温度よりも10℃以上高い温度でエージングすることが、基材フィルム11の収縮により光拡散部15のパターン寸法変化を抑制する観点から好ましい。例えば、基材フィルム11が、ポリエステル系樹脂である場合には、70℃〜180℃で、10分〜3時間エージングを行うことが好ましい。また、その他の樹脂である場合にも、必要に応じて適正な時間エージング等の処理を行う。
【0031】
(固定工程s2)
図3は、図2に示す固定工程s2の様子を示す図である。固定工程s2においては、まず、テーブル20を準備する。テーブル20は、図3に示すように、表面が平坦な載置面21を有しており、この載置面21には多数の吸気孔23が設けられている。この吸気孔23は、図示しないエアポンプに接続されており、載置面21上の空気を吸気するように構成されている。
【0032】
そして、基材フィルム11の他方の面13がテーブル20の載置面21に接するように、基材フィルム11を載置面21上に配置する。このとき一部の吸気孔23は基材フィルム11により覆われる。次に、吸気孔23から吸気を行い、基材フィルム11を載置面上に吸着する。こうして、基材フィルムは、エア吸着され、他方の面13がテーブル20の載置面21に固定される。
【0033】
(付着工程s3)
図4は、図2に示す付着工程s3の様子を示す図である。付着工程s3においては、図4に示すように、まず、表面に凹部32が形成され平坦状の刷版31を準備する。この凹部の深さは製造される光拡散フィルム10における光拡散部15の大きさや高さによって、適切な大きさとされ、特に制限されるものではないが、例えば10μm〜20μmとされる。
【0034】
そして、このような刷版31上に光拡散部15となる樹脂16を塗布する。その後、ドクターブレード33により余分な樹脂16が除去されると共に、刷版31の凹部32に樹脂16が充填される。このときドクターブレード33と刷版31とが相対的に移動すればよく、ドクターブレード33が移動しても、刷版31が移動しても良い。
【0035】
また、光拡散部15となる樹脂16は、紫外線硬化性樹脂である場合には、上述の光拡散部15を構成する樹脂にアクリルレート等の重合可能なモノマーやオリゴマーが加えられた樹脂とされる。また、光拡散部15となる樹脂16は、溶剤に樹脂が溶解されている場合には、上述の光拡散部15を構成する樹脂が溶剤に溶解された溶液とされる。なお、樹脂16には、基材フィルム11と光拡散部15との密着性を向上させるため、ビニル基、エポキシ基、アミノ基等を有するカップリング剤が必要に応じて加えてられている。さらに、樹脂16の粘度は、樹脂の種類や光拡散部15の大きさ等により適切な粘度とされるため、特に制限されないが、1Pa・S〜100Pa・Sとされる。
【0036】
次に、ブランケット胴35の外周面上にブランケット36が巻回された転写用シリンダ38を準備する。このブランケット36は、シリコン等の弾性のある材料により構成されており、ブランケット36の外周面が刷面とされている。そして、刷版31の凹部32に樹脂16が充填された状態で、転写用シリンダ38を刷版31上で輪転させる。こうして、刷版31の凹部32に充填された樹脂16がブランケット36の刷面上に付着する。
【0037】
(転写工程s4)
図5は、図2に示す転写工程s4を示す図である。転写工程s4においては、テーブル20の載置面21上にエア吸着により固定された基材フィルム11の一方の面12上において、上述の付着工程s3でブランケット36の刷面上に樹脂16が付着した転写用シリンダ38を輪転させる。このとき、テーブル20の載置面21の位置を固定して、転写用シリンダ38を移動させることにより、転写用シリンダ38と基材フィルム11とを相対的に移動させる。なお、通常テーブルの載置面は、転写用シリンダ38よりも重量が大きいため、このようにテーブル20の載置面21の位置は固定されて、転写用シリンダ38が移動するようにして、転写用シリンダ38が基材フィルム11の一方の面12上を輪転することが、光拡散部15となる樹脂16を正確なパターンで転写する観点から好ましい。こうして転写用シリンダ38が基材フィルム11の一方の面12上を輪転することで、ブランケット36の刷面に付着された樹脂16が、基材フィルム11の一方の面上に転写される。
【0038】
(硬化工程s5)
硬化工程s5においては、まず、テーブル20または転写用シリンダ38を移動させて、テーブル20と転写用シリンダ38とを離す。次に、基材フィルム11に付着した光拡散部15となる樹脂16を硬化させる。図6は、樹脂16が光硬化性樹脂である場合の図2に示す硬化工程s5の様子を示す図である。樹脂16が光硬化性樹脂である場合は、図6に示すように、テーブル20の上部に設けられた図示しない紫外線照射装置から、紫外線が樹脂16が付着した基材フィルム11に照射される。紫外線が樹脂16に照射されると、樹脂16は重合して硬化する。一方、樹脂16が、光拡散部を構成する樹脂が溶剤に溶解されている溶液である場合には、自然乾燥かヒーターによる乾燥により溶媒を揮発させて、樹脂16を硬化させる。こうして硬化した樹脂16は光拡散部15とされる。
【0039】
こうして、光拡散フィルム10を得る。
【0040】
本実施形態による光拡散フィルム10の製造方法によれば、ブランケット36の版面上に光拡散部15となる樹脂16が付着した転写用シリンダ38と基材フィルム11とが相対的に移動し、転写用シリンダ38が基材フィルム11上を輪転することで、基材フィルム11の一方の面12上に光拡散部15となる樹脂16が転写される。このとき、基材フィルム11の他方の面13は、テーブル20の載置面21上に固定されている。従って、転写用シリンダ38が輪転する際、基材フィルム11が転写用シリンダ38に巻きつくようにしてテーブル20から浮き上がることが防止できる。こうして、基材フィルム11が伸びることを防止することができる。そして、基材フィルム11に転写された光拡散部15となる樹脂16が硬化されて、光拡散フィルム10が製造される。このように製造される光拡散フィルム10は、基材フィルム11の伸びを防止することができるため、良好な光の拡散を得ることができる。
【0041】
また、光拡散フィルム10の製造方法においては、テーブル20の載置面21は、平坦であるため転写されて硬化する前の光拡散部15となる樹脂16が重力から受ける影響は、基材フィルム11のどの場所においても同様とされる。従って、基材フィルム11の場所によって、光拡散部15の形状が変わることを抑制することができる。
【0042】
また、光拡散フィルム10の製造方法においては、基材フィルム11は、エア吸着によりテーブル20の載置面21により固定されるため、エア吸着における空気の流れをコントロールすることで、基材フィルム11の固定や固定の解除、及び、吸着力の強さを自由に変更できる。従って、作業中に吸着力を強くしたり、光拡散部15の形成後に容易に基材フィルム11を載置面から離したりすることができる。
【0043】
また、光拡散フィルム10の製造方法においては、ブランケット36が弾性を有するため、より精密な光拡散部15となる樹脂16の転写を行うことができる。一方、ブランケット36が弾性を有する樹脂により構成されると、転写用シリンダ38が基材フィルム11上を輪転する際、基材フィルム11を巻きつけようとする力が強くなる。しかし、基材フィルム11の他方の面13は、上述のようにテーブル20の載置面21上にエア吸着により固定されているため、基材フィルム11がテーブル20から浮き上がることを防止することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7、図8を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図7は、本発明の第2実施形態における付着工程の様子を示す図であり、図8は、転写工程の様子を示す図である。
【0045】
本実施形態における光拡散フィルムは、第1実施形態における光拡散フィルム10と同様とされる。以下、本実施形態における光拡散フィルム10の製造方法について説明する。なお、本実施形態における光拡散フィルム10の製造方法は、グラビア印刷技術を用いた製造方法である。
【0046】
まず、第1実施形態における準備工程s1と同様にして、基材フィルム11を準備し、固定工程s2と同様にして、図3に示すようにテーブル20の載置面21上に基材フィルム11を固定する。
【0047】
次に、付着工程s3において、図7に示すように光拡散部15となる樹脂16が充填されたタンク41と、樹脂16と接するインキローラー42と、インキローラー42と接する転写用シリンダとしての版胴43とを準備する。この版胴43には、基材フィルム11上に形成される光拡散部15の大きさや位置に合わせて凹部45が形成されている。この版胴43は、真鍮等の金属により構成されており、凹部45は、エッチングやレーザ加工により形成されている。
【0048】
そして、インキローラー42と版胴43とを回転させて、インキローラー42を介して版胴43上に樹脂16を付着させる。このとき、ドクターブレード46により余分な樹脂16が除去されると共に、版胴43の凹部45に樹脂16が充填される。
【0049】
次に、転写工程s4において、図8にしめすように、テーブル20の載置面21上に固定された基材フィルム11の一方の面12上で、凹部45に樹脂16が充填された版胴43を輪転させる。本実施形態においても、このときテーブル20の載置面21の位置を固定して、版胴43を移動させることで、基材フィルム11と版胴43とを相対的に移動させる。なお、通常テーブル20の載置面は、版胴43よりも重量が大きいため、このように版胴43が基材フィルム11の一方の面12上を輪転することが、光拡散部15となる樹脂16を正確なパターンで転写する観点から好ましい。このように版胴43が基材フィルム11の一方の面12上を輪転することで、版胴43の凹部45に付着した樹脂16が、基材フィルム11の一方の面上に転写される。
【0050】
次に第1実施形態における硬化工程s5と同様にして、基材フィルム11の一方の面12上に転写された樹脂16を硬化させて、光拡散部15とする。
【0051】
こうして光拡散フィルム10を得る。
【0052】
以上、本発明について、第1、第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
例えば、第1実施形態において、それぞれの光拡散部15は、基材フィルム11の一方の面12上に、三角格子状に配列されて形成されるものとした。しかし、本発明はこれに限らず、それぞれの光拡散部をライン状にして、ストライプ状に配置しても良い。また、それぞれの光拡散部15のおおよその形状は、球体の一部が平面により切り取られた形状とされたが、本発明はこれに限らず、各光拡散部を円柱状の形状としたり、他の形状としても良い。
【0054】
また、テーブル20の載置面21は、平坦とされたが、必ずしも平坦である必要はない。例えば、転写用シリンダが輪転する方向において、円弧状に湾曲していても良い。
【0055】
さらに、基材フィルム11は、テーブル20の載置面21へエア吸着により固定されたが、載置面21上に設けられた粘着剤により固定されても良い。このときの粘着剤は、粘着力が適切に調整され、基材フィルム11を剥離する際、粘着剤が基材フィルム11に付着しないように調整される。
【0056】
また、光拡散フィルム10は、第1実施形態においてオフセット技術を用いて製造され、第2実施形態においてグラビア印刷技術を用いて製造されたが、転写用シリンダが基材フィルム11上を輪転する印刷技術であれば他の印刷方法も適宜適用可能であり、例えば、フレキソ印刷技術を用いても良い。
【0057】
また、第1実施形態における付着工程s3において、平面状の刷版31を用いて、樹脂16をブランケット36の表面に付着させたが、この刷版を円柱状の刷胴により構成しても良い。
【0058】
さらに、第1、第2実施形態における転写工程s4において、テーブル20の載置面21の位置が固定されて、転写用シリンダ38が移動するようにして、転写用シリンダ38と基材フィルム11とが相対的に移動するものとした。しかし、転写用シリンダ38の位置が固定されて、テーブル20の載置面21が移動することで、転写用シリンダ38と基材フィルム11とが相対的に移動するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、良好な光の拡散を得ることができる光拡散フィルムの製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0060】
10・・・光拡散フィルム
15・・・光拡散部
16・・・樹脂
20・・・テーブル
21・・・載置面
23・・・吸気孔
31・・・刷版
35・・・ブランケット胴
36・・・ブランケット
38・・・転写用シリンダ
41・・・タンク
42・・・インキローラー
43・・・版胴(転写用シリンダー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面及び他方の面を有し、樹脂により構成される基材フィルムを準備する準備工程と、
載置面を有するテーブルの前記載置面上に前記基材フィルムの前記他方の面を固定する固定工程と、
外周面の少なくとも1部が版面である転写用シリンダの前記版面上に光拡散部となる樹脂を付着させる付着工程と、
前記転写用シリンダと前記基材フィルムとを相対的に移動させると共に、前記転写用シリンダを前記基材フィルムの前記一方の面上で輪転させ、前記光拡散部となる樹脂を前記基材フィルムの前記一方の面上に転写する転写工程と、
前記基材フィルムの前記一方の面上に転写された前記光拡散部となる樹脂を硬化させる硬化工程と、
を備えることを特徴とする光拡散フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記載置面は平坦である
ことを特徴とする請求項1に記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記固定工程において、前記基材フィルムは、前記載置面上にエア吸着されることで固定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記転写工程において、前記テーブルの前記載置面の位置は固定されて前記転写用シリンダが移動することにより、前記転写用シリンダと前記基材フィルムとが相対的に移動する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記転写用シリンダの前記版面は、弾性を有する樹脂により構成されるブランケットの外周面である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記付着工程において、前記光拡散部となる前記樹脂は、版胴の外周面上から前記転写用シリンダの前記版面上に転写されることで付着する
ことを特徴とする請求項5に記載の光拡散フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−137865(P2011−137865A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295920(P2009−295920)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】