説明

光散乱型液晶装置及びその製造方法

【課題】配線電極が見えたり、配線電極の一部が半点灯することが無く、簡素な製造方法により製造可能な光散乱型液晶表示装置を提供する。
【解決手段】表示電極5と配線電極6を形成し、その上に絶縁膜8を形成し、その上に背景電極9を形成している。背景電極9は、絶縁膜8を介して表示電極5の外周部を重なるように、更に、配線電極6も絶縁膜8を介して重なるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱型の液晶表示装置、詳しくは高分子分散型液晶を用いた液晶装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、明るい表示を実現させたいという要求から、偏光板を使用しない表示方式が検討されている。色素(ゲスト)と液晶(ホスト)とを混合して2色表示するゲストホスト型液晶表示、予め液晶を高分子樹脂の中にとじこめたマイクロカプセル型液晶表示、ポリマーネットワーク型液晶表示などがある。後の2者は高分子分散型液晶表示と言われている。ここでは、高分子分散型液晶表示の代表例としてより低電圧駆動が実現できるポリマーネットワーク液晶(以降、PN−LCという)を用いたポリマーネットワーク型液晶装置(以降、PN−LCDという)について説明する。PN−LCは、紫外線(UV)によって架橋反応を起こし重合する高分子樹脂と、通常用いられているネマチック液晶とを混合分散させた複合型の液晶材料である。UV重合性高分子樹脂とTN液晶を適度の配合で混合させ、UV照射すると高分子がネットワークを形成すると同時に、配合されているTN液晶がポリマーネットワーク中に均一に分散される。その結果、ポリマーとTN液晶のそれぞれの機能を併せ持った性質を有するようになる。
【0003】
PN−LCDは、ポリマーネットワークとTN液晶の屈折率の差を利用して入射光を散乱させる、光散乱型の液晶表示素子である。そのため、従来のTN液晶装置で使用されていた偏光板を不要とする。更に、液晶分子を配向させるための配向膜を形成する必要がない。よって、光の損失が極めて少なく、明るい表示が可能となる。PN−LCDは、PN−LCを硬化させる紫外線照射装置が必要になるだけで、高温処理を伴う配向膜や、高価な偏光板を不要とすることから、低価格で提供することができる。
【0004】
図7は、二枚の透明基板間にPN−LCを封入したPN−LCDの断面図である。下側の第1の基板51の液晶層側の表面には、第1の透明電極53が形成され、その上に絶縁膜層56が形成され、その上に第2の透明電極58と周囲の周囲電極60が分離して形成されている。第1の透明電極53と第2の透明電極58とは、絶縁膜層56に開口したコンタクトホール57を介して接続されている。対向する第2の基板52の液晶層側の表面には第3の透明電極59が全面に形成されている。第1の基板51と第2の基板52とはシール材55を介して間隙を設けて貼り合わされ、この間隙にPN−LC54が封入されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
PN−LCは、電界を印加しないときに光散乱状態であり、電界を印加することにより透過状態へ変化する。第1の透明電極53と第3の透明電極59との間に電圧を印加することにより、第2の透明電極58と第3の透明電極59の間のPN−LC54に電界が印加され、PN−LC54は入射した光を透過する。第2の透明電極58の周囲に形成した周囲電極60は、例えば、第3の透明電極59と同電位にする。これにより、周囲電極60と第3の透明電極59の間のPN−LC54は光散乱状態を維持する。第1の透明電極53と第3の透明電極59との間の電位を同電位にすれば、PN−LC54は光透過状態から光散乱状態に戻る。また、周囲電極60を第2の透明電極58と同電位にする。これにより、周囲電極60と第3の透明電極59の間のPN−LC54は光透過状態を維持する。第1の透明電極53は絶縁膜層56の下部に形成されている。従って、第1の透明電極53により配線電極を構成すれば、他の領域に形成された画像形成用の第2の透明電極と交差することができる。つまり、より複雑な画像形成用のパターンを構成することができる。
【0006】
図8は、上記の隙間が見える不具合を改善したPN−LCDの断面図である。二枚のガラス基板61、62の間隙にPN−LCが封入されている。ガラス基板61の液晶層側には、標識表示用電極パターン63aと、これに接続する配線用電極パターン63bが形成されている。標識表示用電極パターン63aの端部には、絶縁層64と周辺電極パターン65が積層して形成されている。配線用電極パターン63bの上にも、絶縁層64と周辺電極パターン65が積層して形成されている。ガラス基板62の液晶層側の表面にも、同様の電極パターンが形成され、ガラス基板61に対向して設置されている。標識用パターン63aと66aの間に電圧を印加して標識表示を行う(例えば、特許文献2を参照。)。配線用電極パターン63b、66bは、それぞれ周辺電極パターン65、68により電気的に遮蔽されるので、配線用電極パターン63b、66bの領域は表示されない。即ち、領域70Bにおいて標識表示が行われ、領域70Aは非表示領域として構成されている。また、周辺電極パターン65(68)と標識表示用電極パターン63a(66a)との間に隙間が形成されていないので、その境界が観察されることもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−125086号公報
【特許文献2】特開2007−133088号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7に示したPN−LCDでは、PN−LC54と接する第2の透明電極58と周囲電極60と間には隙間が形成されているため、光透過状態において、この隙間の領域に入射した光が散乱され、隙間が見えるようになる。更に、配線電極である第1の透明電極53は、第2の透明電極58と周囲電極60との間の隙間の領域と、絶縁膜層56を介して交差する。従って、第2の透明電極58の上のPN−LC54を点灯させるために、第1の透明電極53に電圧を印加すれば、この交差部の隙間の上のPN−LC54にも、絶縁膜層56により電圧が降下した電界が印加され、半点灯することになる。その結果、不均一な表示、或いは表示すべきでない領域の隙間が半点灯する不具合が発生する。これを防止するためには、絶縁膜層56を厚くすればよいが、そうすると、絶縁膜層56を形成するのに長時間かかること、厚い絶縁膜層56を形成するための工程を必要とすることや、コンタクトホール57を形成するための時間が長くなる等により、製造コスト高となる。
【0009】
図8のPN−LCDにおいては、周辺電極パターン65、68と標識表示用電極パターン63a、66aとは、基板表面の法線方向において隙間無く形成されている。しかしながら、現実に電極間の隙間を無くすように形成することは極めて難しい。標識表示用電極パターン63a、66aの先端部と、周辺電極パターン65、68の端部とを一致させるためには、高精度のマスクアライメント工程と、高精度のエッチング技術を必要とする。そのため、製造装置が高価となり、コスト高となることが避けられない。
【0010】
そこで、本発明は、比較的簡単な電極構成で、電極間の隙間が見えることによる表示品質の低下を防止した光散乱型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による光散乱型液晶表示装置は、少なくとも一方が透明である基板と対向基板の間隙に光散乱型液晶を挟持した液晶表示装置であって、基板の内表面で外部から視認可能な表示領域には、表示電極と、表示電極に接続する配線電極が形成され、表示電極と配線電極を覆うように基板の上には絶縁膜が形成され、絶縁膜の上には、表示電極の外周部と配線電極に重なるように背景電極が形成され、対向基板の内表面で表示領域には、対向電極が形成されていることとじた。
【0012】
さらに、絶縁膜として、透明無機酸化膜、あるいは、透明高分子樹脂を用いることとした。
【0013】
あるいは、背景電極として、導電膜の単独膜、または、透明絶縁性薄膜と導電膜の積層膜のいずれか一方を用いることとした。
【0014】
あるいは、表示電極を形成する導電膜と背景電極を形成する導電膜が同一の光学特性を持要に構成した。
【0015】
あるいは、基板の外周端部の内表面に、配線電極と電気的に接続する表示電極端子と、背景電極と電気的に接続する背景電極端子が形成されており、表示電極端子は、配線電極の延設部の上に、背景電極と同時に形成され電気的に絶縁された、導電膜あるいは二酸化シリコン薄膜の後に形成した導電膜との積層構造を有し、背景電極端子は、配線電極と電気的に絶縁された延設部の上に、背景電極と電気的に接続する導電膜、あるいは二酸化シリコン薄膜の後に形成した導電膜が積層された積層構造を有することとした。
【0016】
また、本発明の表示装置の製造方法は、基板と対向基板の間隙に光散乱型液晶を挟持する光散乱型液晶表示装置の製造方法であって、基板の表面に設けた第1導電膜を用いて、表示電極と、表示電極に接続する配線電極とを形成する第1の電極パターン形成工程と、基板の表面に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、絶縁膜が形成された基板の表面に第2導電膜を形成し、第2導電膜を、表示電極の外周部の上と配線電極の上に残し、外周部を除いて表示電極の上から除去する第2の電極パターン形成工程と、対向基板の表面に第3導電膜を形成する工程と、基板の電極が形成された表面と、対向基板の電極が形成された表面と対向して間隙を設けて貼り合わせ、間隙に光散乱型液晶を封入する液晶セル組立工程と、を含むこととした。
【0017】
あるいは、基板の表面に設けた第1透明導電膜を用いて、表示電極と、表示電極に接続する配線電極とを形成する第1の電極パターン形成工程と、基板の表面に透明高分子樹脂の絶縁膜を塗布し、パターンを形成する絶縁膜形成工程と、絶縁膜が形成された基板の表面に第2導電膜を形成し、第2導電膜を、表示電極の外周部の上と配線電極の上に残し、外周部を除いて表示電極の上から除去する第2の電極パターン形成工程と、対向基板の表面に第3導電膜を形成する工程と、基板の電極が形成された表面と、対向基板の電極が形成された表面と対向して間隙を設けて貼り合わせ、間隙に光散乱型液晶を封入する液晶セル組立工程と、を含むこととした。
【発明の効果】
【0018】
本発明による光散乱型液晶表示装置は、表示電極と配線電極を形成し、その上に絶縁膜を形成し、その上に背景電極を形成している。背景電極は、絶縁膜を介して表示電極の外周部を重なるように、更に、配線電極にも絶縁膜を介して重なるように形成した。これにより、表示電極の外周部及び配線電極は背景電極により覆われるので、配線電極が形成された領域の高分子分散型液晶に、配線電極からの電界が印加されず、光散乱濃度が異なる領域も生じない。また、表示電極と背景電極の導電膜を光学的に同等な導電膜にすることにより、表示電極と背景電極の透過率あるいは反射率に差がなくなり、表示外観が均一になる。更に、表示電極の端部に背景電極の端部と一致させる必要がないので、高度なマスク合わせや、高度なエッチング処理を必要としない。そのため、製造方法が簡素になり、製造コストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る液晶装置の断面模式図である。
【図2】本発明の実施例に係る液晶装置を表す模式図である。
【図3】本発明の実施例に係る液晶装置を表す模式図である。
【図4】本発明の実施例に係る液晶装置の製造方法を表す模式図である。
【図5】本発明の他の実施例に係る液晶装置を表す模式図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る液晶装置の製造方法を表す模式図である。
【図7】従来公知の液晶装置の断面模式図である。
【図8】他の従来公知の液晶装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明による光散乱型液晶表示装置を図面に基づいて説明する。なお、ここでは光散乱型の液晶として高分子分散型のポリマーネットワーク液晶を用いたPN−LCDについて説明する。図1は、PN−LCD1の表示領域DAの一部を模式的に示す縦断面図である。対向基板2と基板3の間にPN−LC4が挟持されている。対向基板2と基板3の少なくとも一方は透明基板である。基板3の液晶層側の表面には、表示電極5とこの表示電極5に接続する配線電極6が形成されている。表示電極5と配線電極6の上には絶縁膜8が形成されている。この絶縁膜8の上であって、表示電極5の外周部、配線電極6と重なるように背景電極9が形成されている。対向基板2の液晶層側の表面には、対向電極10が形成されている。絶縁膜8を介して、表示電極5と背景電極9とは重なり幅δで重なっている。
【0021】
このPN−LCD1は、次のように動作する。配線電極6を介して表示電極5と対向電極10との間に電圧を印加し、背景電極9は対向電極10と同電位にする。すると、表示電極5上の背景電極9の端部により仕切られるPN−LC4に電界が印加され、光散乱状態から光透過状態へ変化する。背景電極9の上部のPN−LC4には電界が印加されないので、光散乱状態を維持する。表示電極5を対向電極10と同電位にすることにより、PN−LC4を光透過状態から光散乱状態に戻すことができる。
【0022】
他の駆動方法として、背景電極9と対向電極10との間に電圧を印加し、配線電極6を介して表示電極5は対向電極10と同電位にする。これにより、背景電極9の上のPN−LC4は光透過状態に変化し、表示電極5の上のPN−LC4には電界が印加されず、光散乱状態を維持する。従って、光透過状態の背景に、光散乱状態の表示を行うことができる。なお、表示電極5の上に絶縁膜8が形成されているが、絶縁膜8を薄く形成することまたは、誘電率の小さな材料を用いることにより、絶縁膜8による電圧降下を低減することができる。
【0023】
このPN−LCD1の構成により、上部からPN−LCD1を見たときに、表示電極5と背景電極9との間に隙間が無く、表示領域DA内において配線電極6は背景電極9により覆われる。従って、配線電極6の上部のPN−LC4が半点灯することもない。また、表示電極5と背景電極9を同一の光学特性を有する導電膜とすれば、表示電極5と基板3との境界の光透過率または反射率と基板3との境界の透過率または光反射率とは同等となる。
【0024】
ここで、PN−LC4は、UV重合性高分子樹脂とネマチック液晶とを混合し、UV光を照射してポリマーネットワークを形成した。ポリマーネットワークの粒径は可視光波長よりも大きく、概ね1μmとした。また、PN−LC4による液晶層厚は、数μmから数十μmとした。また、表示電極5、配線電極6、背景電極9、対向電極10として、ITO(インジウムスズ酸化物)、酸化スズ、酸化亜鉛等の透明電極、または、一方の基板の導電膜は金属膜を使用することができる。好ましくは、表示電極5及び配線電極6を構成する導電膜と背景電極9を構成する導電膜とは同一の光学特性を有するように同一材料で同一膜厚とする。絶縁膜8には、二酸化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、その他の金属酸化物及びアクリル系の透明樹脂などの透明高分子樹脂を使用することができる。また、表示電極5と背景電極9の端部との重なり幅δは、表示電極5のパターンに対する背景電極9の位置合わせ精度より大きく設定すればよい。また、対向基板2の液晶層側に表示電極5、絶縁膜8、背景電極9を形成し、基板3の液晶層側に対向電極10を形成してもよい。
【実施例1】
【0025】
図2は、本実施例1に係るPN−LCD1を説明するための図であり、図3は、電極構成を説明するための図である。図2(a)は、表示電極5、配線電極6及び背景電極9が形成された基板3を模式的に示す上面図であり、図中のXX’部分の縦断面を図2(b)に示す。図2(c)は、この基板3を用いたPN−LCD1の模式的な縦断面である。図3(a)は、表示電極5及び配線電極6を模式的に表す平面図であり、図3(b)は、背景電極9の形状を模式的に表す平面図である。
【0026】
図2(a)及び(b)と、図3(a)及び(b)を参照して基板3の上の電極構成を説明する。図2(a)及び(b)に示すように、基板3の表面の表示領域DAには、表示電極5と配線電極6が形成され、その上に絶縁膜8が形成され、その上に背景電極9が形成されている。また、基板3の電極端子形成領域には、表示端子11と背景端子12および対向電極10と電気的接続をするための共通電極13が形成されている。背景電極端子は電気的に絶縁されるようにパターン形成する。
【0027】
図2(a)及び図3(a)に示すように、基板3の表面には、四角形の表示電極5a、5b、5c、5dと、円形の表示電極5eと、2つの円弧状の表示電極5f、5gが形成されている。配線電極6aは表示電極5aに接続し、基板3の右辺端部まで延設されて、その端部において表示端子11aを構成する。配線電極6bは表示電極5bに接続し、基板3の右辺端部まで延設されて、その端部において表示端子11aを構成している。その他の配線電極6c〜6gも同様に夫々表示電極5c〜5gに接続し、右辺端部まで延設されて表示端子11aを構成している。
【0028】
絶縁膜8は、表示電極5、配線電極6の表示領域DA、表示端子11a及び背景端子12aの全面に形成されている。基板3の端部には、対向電極10と接続するための対向電極端子13a、13bが形成されている。
【0029】
図2(b)と図3(b)を用いて背景電極9の構成を説明する。背景電極9の表示領域DAには、各表示電極5a〜5gに対応して開口部18a〜18gが形成されている。背景電極9の各開口部18a〜18gの端部は、各表示電極5a〜5gの外周部と、重なり幅δを持って重なるように形成されている。この構成により、表示部と非表示部の間に隙間が生じない。この重なり幅δは、表示電極5に対する背景電極9の位置合わせ精度よりも大きく設定すればよい。背景電極9は、基板3の右端部に形成した背景端子12aの上部に延設されて背景端子12bを構成する。背景端子12bは背景端子12aと絶縁膜8を介して積層しているが、絶縁膜8の二酸化シリコンの膜厚を500nm以下にすることで駆動電圧の降下を抑制できる。基板3の右辺端部には、複数の表示端子11bが互いに分離して形成されている。表示端子11bは、背景端子12bや背景電極9とは電気的に分離して形成されている。背景電極9と表示端子11bを同時に形成することができる。
【0030】
図2(c)に示すように、PN−LCD1は、上述した構成の基板3と、液晶側表面に透明導電膜からなる対向電極10が形成された対向基板2が、シール部14を介して貼り合わされている。その間隙にPN−LC4が充填されている。表示電極5f、5e及び5gと対向電極10の間に電圧を印加することにより、その間のPN−LC4に電界が印加され、光散乱状態から光透過状態に変わることとなる。このように、PN−LCD1は光の散乱状態と透過状態を切り替えて表示動作を行うので、偏光板を使用する必要がない。
【0031】
なお、絶縁膜8として二酸化シリコン膜を使用し、図2(b)に示すように表示電極5の上面の全面に渡って形成する場合、絶縁膜8の膜厚を、好ましくは30nm〜200nmとし、表示電極5や配線電極6と背景電極9との間で絶縁破壊やショートが発生しやすくなり、500nm以上にすると、表示電極5上の絶縁膜8による電圧降下が大きくなるためである。
【0032】
また、表示電極5のパターンは必要に応じて文字や記号、シンボルマーク等、自由な形状とすることができる。また、基板3の電極端子形成領域には、表示端子11や背景端子12の他に、対向基板2の対向電極10と電気的に接続した対向端子を形成し、端子部の電極を集約的に構成することができる。
【0033】
次に、図3及び図4を用いて本発明によるPN−LCD1の製造方法の基本的な構成について説明する。まず、一方の透明基板の表面に第1透明導電膜15を形成する。次に、この第1透明導電膜15をパターニングして、表示電極5、この表示電極5に電気的に接続する配線電極6を形成する。配線電極6の端部には表示端子11を構成し、表示端子11aの上にはパターンを分離させて電気的に絶縁した背景端子12及び共通電極端子13aを構成する。
【0034】
また、他方の透明基板の表面に第3透明導電膜を設けて、対向電極10とする。次に、一方の透明基板の電極が形成された表面と、他方の透明基板の電極が形成された表面と対向して間隙をもって貼り合わせ、この間隙にPN−LC4を挟持して完成する。
【0035】
このようにすれば、製造プロセスの位置合わせ精度に応じて、表示電極5の外周部と背景電極9との間の重なり幅δを設定することができる。製造プロセスの位置合わせ精度が低い場合は、表示電極5の外周部と背景電極9の間の重なり幅δを大きく設定すればよいし、位置合わせ精度が高い場合には、その重なり幅δを小さく設定することができる。従って、簡素な製造装置により表示品質の良好なPN−LCDを製造することができる。
【実施例2】
【0036】
次に、図4を用いて、本実施例のPN−LCD1の製造方法を具体的に説明する。図4(a)は、基板3の表面に第1透明導電膜15を形成した状態を表す基板断面の模式図である。第1透明導電膜15はITO、酸化スズ、酸化亜鉛等を使用することができる。第1透明導電膜15は、スパッタリング法や蒸着法により、10nmから400nm形成する。好ましくは、30nm〜200nmの厚さに形成する。
【0037】
図4(b)は、第1透明導電膜15をパターニングした状態を表す基板断面の模式図である。第1透明導電膜15の上にレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程を通して第1透明導電膜15をパターニングし、表示電極5、配線電極6及び表示端子11aに形成する。表示端子11aは配線電極6の延設部である。
【0038】
図5(c)は、絶縁膜8を形成した状態を表す基板断面の模式図である。絶縁膜8は、二酸化シリコンをスパッタリング法により数10nmから数100nm形成する。二酸化シリコン膜は、表示電極5、配線電極6の電極表面、及び基板3の表面に形成される。絶縁膜8として二酸化シリコン膜に代えて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、その他の金属酸化膜を使用することができる。
【0039】
図4(d)は、第2透明導電膜17を形成した状態を表す基板断面の模式図である。この表面に、ITOからなる第2透明導電膜17をスパッタリング法や蒸着法により形成する。第2透明導電膜の膜厚およびシート抵抗は、第1透明導電膜と同様に任意に選択できる。好ましくは、第1透明電極と第2透明電極の透過率や反射率等の光学特性が同等になるようにする。また、ITOに代えて、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明導電材料を使用することができる。
【0040】
図4(e)は、第2透明導電膜17をパターニングした状態を表す基板断面の模式図である。表示電極5の外周部を残し、その内側の第2透明導電膜17を除去して背景電極9とする。また、図中のFに示した背景電極9と分離するようにして、表示端子11aの上部に残して、導電性膜としての表示端子11bとする。
【0041】
表示電極5の外周部と背景電極9との間の重なり幅δは、製造プロセスの位置合わせ精度に応じて設定することができる。製造プロセスの位置合わせ精度が低い場合は、表示電極5の外周部と背景電極9の間の重なり幅δを大きく設定すればよいし、位置合わせ精度が高い場合には、その重なり幅δを小さく設定することができる。
【0042】
図4(f)は、液晶パネルに組み立てた状態を表す模式的な縦断面図である。透明電極からなる対向電極10を形成した上透明基板2と、下透明基板3とをシール部14を介して貼り合わせる。液晶層の厚さは、数μm〜数十μmとする。この基板の間隙に、UV重合性高分子樹脂とTN液晶を混合分散させた液晶を充填する。この液晶パネルにメタルハライドランプや水銀ランプを使用して紫外線を照射する。これにより、概ね1μmのポリマーネットワークを生成し、PN−LC4とする。
【実施例3】
【0043】
図5は、本実施例に係るPN−LCD1を説明するための図であり、電極構成は図3で説明した実施例1と同様である。図5(a)は基板3の模式的な上面図であり、図中XX’部分の縦断面図を図5(b)に示す。図5(c)は、この基板3を用いたPN−LCD1の模式的な縦断面である。図3(a)は、表示電極5及び配線電極6の模式的な平面図であり、図3(b)は、背景電極9の模式的な平面図である。
【0044】
図5(a)及び(b)と、図3(a)及び(b)を参照して基板3の上の電極構成を説明する。図5(a)及び(b)に示すように、基板3の表面の表示領域DAには、表示電極5、配線電極6が形成され、その上に絶縁膜8が形成され、その上に背景電極9が形成されている。また、基板3の電極端子形成領域には、表示端子11と背景端子12が形成されている。
【0045】
図5(a)及び図3(a)に示すように、基板3の表面には、四角形の表示電極5a、5b、5c、5dと、円形の表示電極5eと、2つの円弧状の表示電極5f、5gが形成されている。配線電極6aは表示電極5aに接続し、基板3の右辺端部まで延設されて、その端部において表示端子11aを構成する。配線電極6bは表示電極5bに接続し、基板3の右辺端部まで延設されて、その端部において表示端子11aを構成している。その他の配線電極6c〜6gも同様にそれぞれ表示電極5c〜5gに接続し、右辺端部まで延設されて表示端子11aを構成している。
【0046】
絶縁膜8は、感光性高分子樹脂を用いてパターンを作成する。表示電極5、配線電極6の表示領域DAの全面に絶縁膜8が形成されているが、表示端子11a及び背景端子12aが形成される領域は、絶縁膜8が除去されている。基板3の端部には、対向電極10と接続するための対向電極端子13a、13bが形成されている。対向電極端子13a、13bが形成される領域も同様に、絶縁膜8が除去されている。
【0047】
絶縁膜8は、感光性を有したアクリル系の透明高分子樹脂を膜厚0.1μm〜1.0μmとした。好ましくは、膜厚を0.2μm〜0.7μmとする。膜厚が厚すぎると液晶駆動電圧が降下して表示品位を低下させる。また、薄すぎると絶縁膜にピンホールが生じ易くなり、表示電極5eや配線電極6bと背景電極9が電気的にショートして表示異常を来たすことになる。
【0048】
図3(b)と図5(b)に示した背景電極9の構成は、実施例1と同様であるが、表示電極端子11、背景電極端子12及び共通電極端子13においては、表示電極端子11aと11b、背景電極端子12aと12b及び共通電極端子13a13bが直接電気的に接続する構成をする。
【0049】
しかし、図示していないが、高分子樹脂である絶縁膜8に対する密着性を考慮して、SiO2などの透明無機膜の後に連続して背景電極9の導電膜を形成することもある。この場合のSiO2などの透明無機膜は、膜厚を10nm〜20nmとするために、液晶駆動電圧の降下にはほとんど影響しない。
【0050】
また、図面には示していないが、電極端子の構成は、第1透明導電膜15による表示電極端子11a単独であり、第2透明導電膜17による背景電極端子12単独であっても構わない。
【0051】
図5(c)に示したPN−LCDも、以下は実施例1と同様であり説明を省略する。
【実施例4】
【0052】
次に、図6を用いて、本実施例のPN−LCD1の製造方法を具体的に説明する。図6(a)は、基板3の表面に第1透明導電膜15を形成した状態を表す基板断面の模式図である。第1透明導電膜15はITO、酸化スズ、酸化亜鉛等を使用することができる。第1透明導電膜15は、スパッタリング法や蒸着法により、10nmから400nm形成する。好ましくは、30nm〜200nmの厚さに形成する。
【0053】
図6(b)は、第1透明導電膜15をパターニングした状態を表す基板断面の模式図である。第1透明導電膜15の上にレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程を通して第1透明導電膜15をパターニングし、表示電極5、配線電極6及び表示端子11aに分離する。表示端子11aは配線電極6の延設部である。また、図示しないが、背景電極9の延設部である背景端子12が分離され電気的に絶縁されて、表示端子11aに近接して形成されている。
【0054】
図6(c)は、絶縁膜8を塗布した状態を表す基板断面の模式図である。絶縁膜8は、アクリル系の感光性透明高分子樹脂をスピナー法により数0.2μm〜0.7μm塗布し、フォトリソグラフィー法により所望のパターン形成を行い、表示電極5等の電極表面、及び基板3の表面に形成され、基板3の端部の電極端子群の表面からは除去される。
【0055】
図6(d)は、第2透明導電膜17を形成した状態を表す基板断面の模式図である。絶縁膜8を形成した基板表面に、ITOからなる第2透明導電膜17をスパッタリング法や蒸着法により形成する。第2透明導電膜の膜厚およびシート抵抗は、第1透明導電膜と同様に任意に選択できる。好ましくは第1の透明導電膜と同一膜厚同一抵抗とする。また、ITOに代えて、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明導電材料を使用することができる。また上述したように、図には示していないが、高分子樹脂である絶縁膜8に対する密着性を考慮して、二酸化シリコンなどの透明無機膜の後に背景電極9の導電膜を形成しても良い。
【0056】
図6(e)は、第2透明導電膜17をパターニングした状態を表す基板断面の模式図である。表示電極5の外周部を残し、その内側の第2透明導電膜17を除去して背景電極9とする。また、背景電極9と電気的に接続するようにして、表示端子11aの上部に残して表示端子11bとする。
【0057】
表示電極5の外周部と背景電極9との間の重なり幅は、製造プロセスの位置合わせ精度に応じて設定することができる。製造プロセスの位置合わせ精度が低い場合は、表示電極5の外周部と背景電極9の間の重なり幅δを大きく設定すればよいし、位置合わせ精度が高い場合には、その重なり幅δを小さく設定することができる。
【0058】
図6(f)は、液晶パネルに組み立てた状態を表す模式的な縦断面図である。透明電極からなる対向電極10を形成した対向基板2と、基板3とをシール部14を介して貼り合わせる。液晶層の厚さは、数μm〜数十μmとする。この基板の間隙に、UV重合性高分子樹脂とTN液晶を混合分散させた液晶を充填する。この液晶パネルにメタルハライドランプや水銀ランプを使用して紫外線を照射する。これにより、概ね1μmのポリマーネットワークを生成し、PN−LC4とする。
【実施例5】
【0059】
本実施例のPN−LCD1を、図5を用いて説明する。本実施例の電極構成は図3で説明した実施例1と同様である。図5(a)に基板3の上面図を模式的に、図5(b)に図中XX’部分の縦断面図を模式的に示す。図5(c)は、この基板を用いたPN−LCD1の模式的な縦断面である。図3(a)は、表示電極5及び配線電極6の模式的な平面図であり、図3(b)は、背景電極9の模式的な平面図である。
【0060】
基本的な構成は実施例3と同様なので、詳細な説明は省略する。本実施例では、基板3に形成する表示電極5、配線電極6および表示端子11を構成する導電膜として、金属クロム(以後Crと称する)を用いた。CrはITOに比べて低抵抗であるので低抵抗配線とし、かつ反射膜として使用した。また同様に、背景電極9と背景端子12を構成する導電膜もCrとした。Crの膜厚は、50nm〜500nmとした。好ましくは100nm〜200nmとする。Crの場合にも50nm以下の薄膜ではピンホールなどが生じ電気的なショートが起こりやすくなる。また、500nm以上の厚膜では、形成のための時間が長時間になるなどコスト高になる。なお、使用する導電膜としての金属はCrに限定されるものではなく、アルミニウム系合金や銀系合金等も使用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 PN−LCD
2 対向基板
3 基板
4 PN−LC
5 表示電極
6 配線電極
8 絶縁膜
9 背景電極
10 対向電極
11 表示端子
12 背景端子
13 共通電極端子
14 シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と対向基板の間隙に光散乱型液晶を挟持した光散乱型液晶表示装置において、
前記基板の内表面であって外部から視認可能な表示領域には、表示電極と、前記表示電極に接続する配線電極が形成され、
前記表示電極と前記配線電極を覆うように前記基板の上には絶縁膜が形成され、
前記絶縁膜の上には、前記表示電極の外周部と前記配線電極に重なるように背景電極が形成され、
前記対向基板の内表面であって前記表示領域には、対向電極が形成されていることを特徴とする光散乱型液晶表示装置。
【請求項2】
前記絶縁膜が、透明無機酸化膜、あるいは、透明高分子樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光散乱型液晶表示装置。
【請求項3】
前記背景電極は、導電膜の単独膜、または、透明絶縁性薄膜と導電膜の積層膜のいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の光散乱型液晶表示装置。
【請求項4】
前記表示電極を形成する導電膜と前記背景電極を形成する導電膜が同一の光学特性を有することを特徴とする請求項1に記載の光散乱型液晶表示装置。
【請求項5】
前記基板の外周端部の内表面には、前記配線電極と電気的に接続する表示電極端子と、前記背景電極と電気的に接続する背景電極端子が形成され、
前記表示電極端子は、前記配線電極の延設部の上に、前記背景電極と同時に形成され電気的に絶縁された、導電膜あるいは二酸化シリコン薄膜の後に形成した導電膜との積層構造を有し、
前記背景電極端子は、前記配線電極と電気的に絶縁された延設部の上に、前記背景電極と電気的に接続する導電膜、あるいは二酸化シリコン薄膜の後に形成した導電膜が積層された積層構造を有することを特徴とする請求項1に記載の光散乱型液晶表示装置。
【請求項6】
基板と対向基板の間隙に光散乱型液晶を挟持する光散乱型液晶表示装置の製造方法において、
基板の表面に設けた第1導電膜を用いて、表示電極と、前記表示電極に接続する配線電極とを、形成する第1の電極パターン形成工程と、
前記基板の表面に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜が形成された基板の表面に第2導電膜を形成し、前記第2導電膜を、前記表示電極の外周部の上と前記配線電極の上に残し、前記外周部を除いて前記表示電極の上から除去する第2の電極パターン形成工程と、
前記対向基板の表面に第3導電膜を形成する工程と、
前記基板の電極が形成された表面と、前記対向基板の電極が形成された表面と対向して間隙を設けて貼り合わせ、前記間隙に光散乱型液晶を封入する液晶セル組立工程と、を含むことを特徴とする光散乱型液晶表示装置の製造方法。
【請求項7】
基板と対向基板の間隙に光散乱型液晶を挟持する光散乱型液晶表示装置の製造方法において、
基板の表面に設けた第1透明導電膜を用いて、表示電極と、前記表示電極に接続する配線電極とを、形成する第1の電極パターン形成工程と、
前記基板の表面に透明高分子樹脂の絶縁膜を塗布し、パターンを形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜が形成された基板の表面に第2導電膜を形成し、前記第2導電膜を、前記表示電極の外周部の上と前記配線電極の上に残し、前記外周部を除いて前記表示電極の上から除去する第2の電極パターン形成工程と、
前記対向基板の表面に第3導電膜を形成する工程と、
前記基板の電極が形成された表面と、前記対向基板の電極が形成された表面と対向して間隙を設けて貼り合わせ、前記間隙に光散乱型液晶を封入する液晶セル組立工程と、を含むことを特徴とする光散乱型液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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