説明

光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物、その製造方法及びそれが含まれた吸着剤

【課題】取り扱いが容易で連続カラム運転に耐える工業的に使用可能な球状シクロデキストリン化合物並びにその製造方法を提供することである。
【解決手段】光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物により解決される。好ましくは、(1)ジイソシアネート化合物並びに光架橋基を有する化合物とから得られる生成物と、(2)シクロデキストリンを反応させることを特徴とする、光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物の製造方法により解決される。さらには、(a)上記記載の光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物を、(b)アルギン酸塩水溶液、アスパラギン酸塩水溶液からなる水溶液群の少なくとも1水溶液と混合し、(c)該混合液をハロゲン化アルカリ土類金属塩水溶液に滴下させること、を特徴とする球状の光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物の製造方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物およびその製造方法並びにこれより得られる光架橋基を有するシクロデキストリン化合物の用途に関する。
特に、フェノール化合物含有溶液から環境に悪影響を与えるフェノール化合物を効率よく除去することができるようにした光架橋基を含有した球状のシクロデキストリン化合物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工程から排出される環境汚染物質を河川、海ならびに大気中に放出することは、国により厳しく規制されており、無害化の処理を排出前に施すことが義務付けられている。例えば、フェノール類とホルムアルデヒド類を反応して得られるフェノール樹脂は、付加縮合反応により製造され、縮合水が生成する。この縮合水等を高温真空下で除去する場合、未反応フェノール類が共沸し、フェノール類を含む廃液が発生する。これらの廃液中には、フェノール類が数〜数十パーセント含まれており、このまま廃棄することは、環境への影響から極めて問題であり、また、フェノール樹脂の製造コストを押し上げる要因ともなっている。
そのため、これらの廃液からフェノール化合物を回収処理することは、フェノール樹脂の製造において、極めて重要な課題となっている。
このような問題点を解決する方法として、シクロデキストリンポリマーを利用する方法が提案されている(例えば非特許文献1参照)。
具体的には、β−シクロデキストリンとエピクルヒドリンで架橋したシクロデキストリンポリマーが開示されている(例えば非特許文献2参照)。そして、このシクロデキストリンポリマーを用い、フェノール水溶液からフェノールの吸着効果を測定している。しかし、β−シクロデキストリンをエピクルヒドリンで架橋したシクロデキストリンポリマーでは、吸着量が少なく、除去効率が不十分である。
また、シクロデキストリンとイソシアネートからなるシクロデキストリンポリマーが開示されている(例えば特許文献1参照)。そして、このポリマーを使用してニトロフェノールの吸着効果が検討されている。
しかし、これらの文献で得られるシクロデキストリンポリマーを吸着担体として固定相カラム方式でフェノール化合物の吸着を行うと、シクロデキストリンポリマーが不定形のためと思われるが、担体がいびつに膨張し、カラム内が閉塞してしまうという問題点が指摘されていた。
この解決策としては、シクロデキストリンポリマーを粉砕して、粒子径および形状をそろえる方法も想定されるが、シクロデキストリンポリマーを製造過程で球形にすることにより、カラムの充填性の向上および効率的な連続固定相カラム運転が可能となることが予想される。
ところが、製造過程で球状のシクロデキストリンポリマーにする方法はこれまで知られていない。
【0003】
【非特許文献1】PETROTEC,26,21(2003)
【非特許文献2】Angew.Makromol.Chem.,119,207(1992)
【特許文献1】特表2001−504879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、取り扱いが容易で連続カラム運転に耐える工業的に使用可能な光架橋基を含有する球状のシクロデキストリン化合物並びにその製造方法、及びその製造の原料となるシクロデキストリンモノマー化合物と該モノマー化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物により解決される。好ましくは、
(1)ジイソシアネート化合物とアクリル酸誘導体とから得られる生成物と、
(2)シクロデキストリン
を反応する工程を含むことを特徴とする光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物の製造方法により解決される。
さらには、
(a)光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物を、
(b)アルギン酸塩水溶液及びアスパラギン酸塩水溶液からなる水溶液群の少なくとも1水溶液と混合する工程と、
(c)該工程による混合液をハロゲン化アルカリ土類金属塩水溶液に滴下する工程と、
を含むことを特徴とする光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンモノマー化合物の製造方法により解決される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の原料および製造方法を実施すれば、容易に、球状のシクロデキストリンポリマー化合物が得られ、取り扱いが簡便で、スピーディなカラム分離が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物とは、シクロデキストリンの水酸基のうち少なくとも1個を光にて重合できる官能基にて置換されたシクロデキストリン誘導体であり、該シクロデキストリンのモノマーおよび光官能基を重合させたポリマーを挙げることができる。
ここで光官能基とは、光を照射することにより重合可能な官能基をさし、光架橋基とは、前記光官能基ならびに該官能基を光にて重合したものをも含む。
より具体的な光官能基としては、エチレン性不飽和結合基が挙げられる。
【0008】
本発明で使用するシクロデキストリン(以下CDと略記することもある)は、巨大空洞構造を示し、通常、デンプンからシクロデキストリン合成酵素(Cyclomaltodextrin Glucanotransferase、略してCDTase)の作用により得られるグルコースが6個以上からなる環状オリゴ糖である。具体的には、図1に示したようなグルコースユニット数が6個のα−シクロデキストリン(以下α−CDと略記することもある)、7個のβ−シクロデキストリン(以下β−CDと略記することもある)、8個のγ−シクロデキストリン(以下γ−CDと略記することもある)が挙げられ、好ましくは、β−シクロデキストリンである。
これらのシクロデキストリンは、単独でも混合して使用しても良い。
【0009】
さらに、シクロデキストリンは、他の官能基の付加により修飾されたものでも良い。たとえば、C1〜C4基などの低級アルキル、C8〜C20の炭素を含有する長鎖脂肪族のいずれか、ヒドロキシアルキル基、スルホン基またはアルキルスルホン基などによって置換されているシクロデキストリンが挙げられる。
【0010】
本発明で使用する光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物は、光にて重合できる官能基で置換されたシクロデキストリン誘導体であるが、光にて重合できる官能基を有する化合物と反応させることにより得られる。
光にて重合できる官能基を有する化合物としては、光レジスト剤等の化合物と反応させることも可能であるが、光重合開始剤と併用できるエチレン性不飽和結合を有する疎水性光硬化性化合物と反応させて得ることができる。
(a)上記疎水性光硬化性樹脂としては以下の化合物群を挙げることができる。
(i)無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和多価カルボン酸の少なくとも一種とまたはこれらとトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸などの飽和多価カルボン酸の少なくとも1種とから成る多価カルボン酸成分と、多価アルコールとのエステル化によって得られる酸価が約40未満の不飽和ポリエステル(数平均分子量は約1000以上、好ましくは約3000以上)。
(ii)無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和多価カルボン酸の少なくとも1種と1分子中に3個より多いヒドロキシル基を有する多価アルコールを少なくとも5重量%含む多価アルコールとのエステル化物またはこのエステル化物中のヒドロキシル基に酸無水物を反応させた酸価40未満の不飽和ポリエステル類(数平均分子量約1000以上、好ましくは約3000以上)。
(iii)不飽和エポキシド類;nモルのグリシジル基を有するエピコート828,1001,1004(シェルケミカル社製、商品名)などの多価グリシジル化合物と(n−2)モルのカルボキシル基を有するマレイン酸、アジピン酸、トリメリット酸などの多価カルボン酸と2モルの(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボキシル化合物との付加反応物またはこれらに残存するヒドロキシル基に酸無水物を付加した酸価40未満の不飽和エポキシド類;nモルのグリシジル基を有する該多価グリシジル化合物と(n+2)モルのカルボキシル基を有する該多価カルボン酸との付加反応物に残存するヒドロキシル基に酸無水物を付加させた化合物に(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル化合物を反応させた酸価40未満の不飽和エポキシド類など。
(iv)アニオン性不飽和アクリル樹脂類;ここでいうアニオン性不飽和アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの共重合体であり、C+5P+10S=A
(1)[ここでCは樹脂中のカルボキシル基の濃度(mol/kg)、Pは樹脂中のリン酸基濃度(mol/kg)、Sは樹脂中のスルホン酸基濃度(mol/kg)である。]前記(1)式のAが0.8未満(mol/kg)であり、樹脂中の光重合可能なエチレン性不飽和基の濃度が0.1〜5(mol/kg)である樹脂である。該(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は公知の方法で合成される。樹脂中にカルボキシル基を導入するには、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボキシル化合物を、リン酸基を導入するにはホスマーM、ホスマーC1(両者とも油脂製品社製、商品名)などの不飽和リン酸エステルを、スルホン酸基を導入するためには(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−3−スルホプロピルなどの不飽和スルホン酸エステルを、共重合可能なエチレン性不飽和基を導入するためには共重合体中に存在するカルボキシル基、リン酸基、あるいはスルホン酸基に(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル化合物を反応させることにより可能となる。
(v)カチオン性不飽和アクリル樹脂類;(メタ)アクリル酸−2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチルアミノエチル、ビニルピリジンなどの不飽和アミノ化合物を5重量%より少ない量を含む(メタ)アクリル酸エステルの共重合体に(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル化合物を反応させた不飽和アクリル樹脂、ポリスチレンをクロロメチル化後、不飽和アミノ化合物で4級化した不飽和アクリル樹脂、ポリエチレンイミンと不飽和グリシジル化合物との付加物などがあげられる。 (vi)ポリプロピレングリコールと(メタ)アクリル酸とのポリエステル類;分子量400〜10000で30重量%未満のエチレンオキサイド基を含むポリプロピレングリコールの(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸とのジエステル。
(vii)(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとのウレタン化付加物;nモルのトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート、n−1モルのポリプロピレングリコールおよび2モルの(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの不飽和モノヒドロキシ化合物とのウレタン化物;1モルのトリメチロールプロパンなどの3官ヒドロキシ化合物と4モルのジイソシアネート、2モルのポリプロピレングリコールおよび2モルの(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの不飽和モノヒドロキシ化合物とのウレタン化物に無水マレイン酸、無水コハク酸などの酸無水物を反応させたカルボキシル化ウレタン化物などがあげられる。以上に例示した如き疎水性光硬化性樹脂はそれぞれ単独で使用することができ、或いは2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの光硬化性樹脂のうち、本発明において特に有利に使用しうるものとしては、前記(vii)のポリプロピレングリコールと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとのウレタン化付加物をあげることができる。
【0011】
上記疎水性光硬化性樹脂と、シクロデキストリンと反応させることにより光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物を得ることができる。
【0012】
より簡便で再現性のある光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物を得る方法は、アクリル酸誘導体を用いる場合である。
アクリル酸誘導体は、一般式(A)で示される構造を有する光重合性のある化合物群である。
【0013】
【化1】




(ここでRは、水素、炭素数1〜6の炭化水素基である。)
具体的にはアクリル酸、メタアクリル酸やこれらのアルコールエステルあるいはジオールやポリエーテルポリオールのモノエステルが誘導体として挙げられる。
具体的な誘導体としては、アクリル酸、メタアクリル酸とエチレングリコール、プロピレングリコールやブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオールなどのジオールもしくは該ジオール類からなるポリエーテルポリオールとのモノエステルが挙げられる。
簡便に使用できるのは、アクリル酸、メタアクリル酸とエチレングリコール、プロピレングリコールとのモノエステルである。
【0014】
上記アクリル酸誘導体とシクロデキストリンとを直接反応させてエーテルタイプの光架橋基を有するシクロデキストリン化合物を得ることも可能ではあるが、前もってジイソシアネート化合物と反応させて得られた化合物とシクロデキストリンとを反応させた場合が再現性よく、また、容易に光架橋させることができるシクロデキストリン化合物が得られる。
【0015】
本発明で使用するジイソシアネート化合物は、通常よく知られている芳香族、脂肪族および環式脂肪族ジイソシアネートや高官能性もしくは高分子ジイソシアネートであり、好ましくは芳香族ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートであり、より好ましくは脂肪族ジイソシアネートである。具体的には、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネートおよびその誘導体が挙げられる。好ましくは、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記することもある。)2,4−トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略記することもある。)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記することもある。)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記することもある。)が挙げられる。より好ましくは、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートである。イソホロンジイソシアネートを使用した場合では、光照射による重合が容易に進行するので特に好ましい。
【0016】
本発明で反応させる(1)ジイソシアネート化合物並びに光架橋基を有する化合物との反応条件は、以下の通りである。
ジイソシアネート化合物と光架橋基を有する化合物の使用量は、該化合物のそれぞれの反応性を考慮すれば、等モルであることが好ましい。
使用する溶媒は反応に影響を与えない有機溶媒であれば、何ら問題はない。好ましい溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドなどのジアルキルホルムアミド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのジアルキルスルホキシド類、アセトニトリルやベンゾニトリルなどの脂肪族ニトリル類や芳香族ニトリル類、ジメチルエーテルやジエチルエーテルなどの脂肪族エーテル類やジオキサンなどの環状エーテル類が挙げられる。好ましくは、安定性と溶解性を考慮してジアルキルホルムアルデヒド類とジアルキルスルホキシド類が挙げられる。
反応温度は、使用する量にもよるが、通常、室温から200℃、好ましくは、50℃〜使用する溶媒の沸点までである。
さらに、この反応を円滑に進めるために、ヒドロキノン等の重合禁止剤や、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫等の触媒を添加してもよい。
また、反応は通常、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、乾燥空気雰囲気下や密閉条件下など水分が混入しない条件下であれば何ら問題はない。
【0017】
(1)ジイソシアネート化合物並びに光架橋基を有する化合物から得られる生成物と(2)シクロデキストリンの使用量範囲は、特に制限はないが、(2)CD1モルに対し、(1)の生成物1〜24モルが好ましい。さらに好ましくは、(2)CD1モルに対し、(1)が1〜21モル、より好ましくは、1〜18モル、もっとも好ましくは、1〜6モルである。ジイソシアネートの使用量があまりに少ないと、シクロデキストリンポリマー化合物の収率が低くなる。
【0018】
本発明の(1)ジイソシアネート化合物並びに光架橋基を有する化合物との生成物と(2)シクロデキストリンとの反応条件は、特に制限はなく、通常の範囲内で実施される。具体的には、30〜150℃、好ましくは50〜100℃の温度範囲で、0.5〜24時間程度である。なお、反応は、通常、上記記載の溶媒中で行う。さらに、必要に応じて、遷移金属化合物触媒、たとえばチタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、ジラウリン酸ジブチルスズ、2−エチルカプロン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルカプロン酸亜鉛、グリコール酸モリブデン、塩化鉄、塩化亜鉛などや、アミン触媒、たとえばトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジブチルアミンなどの触媒を添加してもよい。反応は通常、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、乾燥空気雰囲気下や密閉条件下など水分が混入しない条件下であれば何ら問題はない。
【0019】
得られた光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物は、液状あるいは、固体として得られるが、固体で得られる場合では、細かく粉砕して使用するのが好ましい。粉砕して得られる粒子径の大きさは、0.1mm以下が好ましく、0.08mm以下がさらに好ましい。
液状の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物では、通常、そのまま使用する。
【0020】
得られた光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物を球状とするための方法については、特に制限はないが、アルギン酸塩水溶液,アスパラギン酸塩水溶液からなる水溶液群の少なくとも1水溶液を使用する方法が好ましい。ここで使用できる塩としては、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩(ただし、カルシウムは除く)、遷移金属の塩が挙げられるが、好ましくは、アルカリ金属の塩である。具体的にはナトリウム、カリウムである。あるいは、光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー含有溶液を雫状態で不溶性の溶媒に滴下して球状を形成することも可能である。具体的には、クロロホルム溶液やパラフィンや油等の溶媒に滴下する方法も挙げられる。
更に、寒天を混合した溶液をダイズ油等に滴下して球状化させる方法も挙げられる。
【0021】
以下、アルギン酸塩水溶液及び/またはアスパラギン酸塩水溶液を用いた球状のシクロデキストリン化合物の合成方法について説明する。アルギン酸塩水溶液及び/またはアスパラギン酸塩水溶液との混合方法については、特に制限はない。光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物をアルギン酸塩水溶液及び/またはアスパラギン酸塩水溶液に加えても良いし、アルギン酸塩水溶液及び/またはアスパラギン酸塩水溶液を該シクロデキストリン化合物に注いでも、また、両者同時に混合しても何ら問題はない。
使用するアルギン酸塩水溶液及び/またはアスパラギン酸塩水溶液の濃度についても特に制限はないが、混合状態での粘性を考慮すれば、好ましくは0.1〜10wt%水溶液、さらに好ましくは0.5〜5wt%水溶液、より好ましくは0.8〜2wt%水溶液である。
光架橋基を有するシクロデキストリン化合物とアルギン酸塩水溶液及び/またはアスパラギン酸塩水溶液の混合割合についても、特に問題はないが、混合液の粘性と得られる光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物の形状から、その割合は重量%で、1:99〜99:1(wt/wt%)が好ましい。さらに好ましくは40:60〜90:10(wt/wt%)であり、より好ましくは75:25〜85:15(wt/wt%)である。より好ましい条件になるにつれ、得られるシクロデキストリン化合物の形状は、均一な球形に近くなり、球形の機械的強度も強くなる。
また、光架橋基を有するシクロデキストリン化合物を構成するシクロデキストリンと光架橋基を有する化合物とジイソシアネートの使用割合(使用モル比)と球状形態および物性値(強度)との関係については特に制限はないが、好ましくは1:1.1:1.1〜1:3.9:3.9(モル比)、さらに好ましくは1:1.6:1.6〜1:3.8:3.8(モル比)である。好ましい領域ではきれいな球形で十分な強度も認められ、繰り返し使用に充分耐えられるシクロデキストリンポリマーが得られる。

混合条件は、特に制限はなく、通常、常温・常圧下にて行われる。
【0022】
得られた混合液を、ハロゲン化アルカリ土類金属塩水溶液に滴下することにより光架橋基を含有する球状のシクロデキストリン化合物を得ることができる。好ましいハロゲン化アルカリ土類金属塩は、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムが挙げられる。ハロゲン化アルカリ土類金属塩水溶液の濃度については特に制限はないが、滴下した混合液が球状に成形される時間などを考慮すると、1〜10wt%濃度が好ましい。更に好ましくは2〜5wt%である。
滴下方法についても特に制限はなく、例えば、混合液をチューブに通して、一滴ずつ滴下すればよい。なお、チューブの内径により、得られる球状シクロデキストリン化合物の球径が異なることは明らかである。球形を作る治具については、種々の装置或いは道具が考えられるが、要は混合液を一滴ずつ滴下できる少なくとも1つの孔があいているものであれば何ら問題はない。
滴下条件についても、何ら問題はなく、通常、常温・常圧下にて実施すればよい。
【0023】
上記の方法で得られた光架橋基を有する球状のシクロデキストリン化合物に光を照射することにより重合させて光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマー化合物とすることができる。用いる光源は、本発明に使用する光架橋基を有する化合物が重合を開始するに適した光源となる。特に制限はないが、通常、約1〜約600nmの範囲内の波長の光を発する光源を照射するのが好ましい。さらに好ましくは、約25〜約400の波長である。
このような光源の具体例としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、太陽光等が挙げられる。
光源の照射は、特に制限はないが、上記方法においてハロゲン化アルカリ土類金属塩溶液に滴下して球状を保った状態に照射することが好ましい。照射時間は特に制限はないが、通常、1時間以内で充分である。好ましくは、1〜30分である。
【0024】
さらに、光架橋を促進させる目的で光重合開始剤(光増感剤)を添加するのが好ましい。使用しうる光重合開始剤は光照射により分解してラジカルを生成し、このものが重合開始種となって重合性不飽和基を有する樹脂間に橋かけ反応を起こさせるもので、例えばベンゾイン、アセトイン、α−ヒドロキシイソブチルフェノンなどのα−カルボニルアルコール類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、アニソインエチルエーテル、ピパロインエチルエーテル等のアシロインエーテル類;ナフトール、ヒドロキシアントラセンなどの多環芳香族化合物類;メチルベンゾイン、α−メトキシベンゾインなどのα−置換アシロイン類;2−シアノ−2−ブチルアゾホルムアミドなどのアゾアミド化合物類;硝酸ラウニル、塩化第2鉄などの金属塩類;メルカプタン類;ジスルフィド類;ハロゲン化合物類;染料類等をあげることができる。これらの光重合開始剤は単独又は2種以上組合せて通常0.01〜10PHR(重量部/樹脂100重量部)の割合で使用できる。
【0025】
本発明で得られる光架橋基を含有するシクロデキストリンポリマー化合物を用いて吸着・分離除去の対象となる化合物は、有機汚染物質またはこれらの混入物である。
具体的な有機汚染物質または混入物としては、芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの約2〜10個の環を含有する縮合環構造の化合物含む多環芳香族化合物やフェノール化合物が挙げられる。好ましくはフェノール化合物である。
【0026】
好ましく吸着・分離除去の対象となるフェノール化合物は、一般式(1)で示される化合物である。
【0027】
【化2】




具体的には、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、tert−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、アリルフェノール、キシレノールが挙げられる。これらのフェノール化合物は単独又は混合して用いることもできる。
好ましくは、フェノール、クレゾール、キシレノールが挙げられ、より好ましくは、クレゾールおよびフェノールである。
【0028】
これらのフェノール化合物を含有する溶液は、通常、水溶液の形態であり、フェノール化合物を含有する溶液(一般的には水溶液)の濃度は、特に制限はないが、フェノール化合物の含有量は0.01重量%〜50重量%が好ましい。より好ましくは、0.1〜30重量%、さらに好ましくは、1〜20重量%である。
フェノール濃度が余りに低すぎると、除去効率が低下する場合がある。
また、あまりに濃度が高すぎると、除去操作性に支障をきたす場合がある。
具体的なフェノール化合物含有溶液としては、フェノール樹脂の製造過程から排出されるフェノール含有廃液が挙げられる。
【0029】
フェノール化合物含有溶液を本発明の光架橋基を含有するシクロデキストリンポリマー化合物に接触させる方法は、特に制限はないが、通常、カラムクロマトタイプが簡便で好ましい。具体的には、カラムに光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマー化合物を充填し、フェノール化合物含有溶液を連続的に通過させる方法が挙げられる。あるいは、反応容器に光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマー化合物及び/または光架橋基を含有するシクロデキストリンポリマー化合物を一定量仕込み、さらにフェノール化合物含有溶液を加えて、一定時間攪拌して、フェノール化合物を取り込み除去させる方法も挙げられる。
【0030】
接触させる条件は、特に制限はなく、通常、常温・常圧下で実施される。
【0031】
フェノール化合物の除去に使用した光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマー化合物及び/または光架橋基を含有するシクロデキストリンポリマー化合物は、包接効果によりフェノール化合物を除去しているため、適切な抽出剤または溶媒によって包接したフェノール化合物を遊離し、分離することができる。適切な抽出剤または溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコールを挙げることができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を、実施例および比較例を示して詳細に説明する。
なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
(物性の測定方法)
得られた光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物の物性については、以下の測定装置を使用した。
・水素核磁気共鳴スペクロル(H−NMR測定):日本電子製EX−400B型
・FT−赤外吸収スペクトル(FT−IR測定):JEOL Diamond−20
(日本電子株式会社製)
・X線回折:リガク製X線回折装置RINT2200
・圧縮強度:オリエンテック社製 卓上型材料試験機RTC−1150A
・気孔率:ユアサアイオニクス社製 全自動細孔分布測定装置NOVA−1200
・比表面積:Quanta Crome Co.製
高速比表面積・細孔径分布測定装置PoreMaster60−GT
・直径:ミツトモ社製 デジマチックマイクロメータ
・液状プレポリマー分子量測定:PerSeptive Biosystems社製
飛行型質量分析計YoyagerTMDEPRO Y
・表面観察:キーエンス社製 デジタルHFマイクロスコープVH−8000
・表面観察:日立製作所製 走査型電子顕微鏡(SEM)S−4300
【0033】
実施例1
(光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマーの合成)
還流冷却器と滴下ロートの備わった200mlのフラスコに2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEAと略記する)3.7g(3.2×10−2mol)、重合禁止剤としてヒドロキノン(HQと略記する)0.2g、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(BLTと略記することもある)2滴を加えて、窒素置換を十分行った後、イソホロンジイソシアナート(IPDIと略記する)7.0g(3.2×10−2mol)を含んだジメチルホルムアミド(DMFと略記する)10mlを滴下し、70℃に保ちながら攪拌を行った。2時間後、この反応液中にβ−シクロデキストリン(β−CyDと略記する)18g(1.6×10−2mol)を溶解したDMF80mlを滴下し、更に24時間、70℃で反応させた。得られた反応液を水中に投じて固体を析出させた。ヘキサン洗浄を経た固体をアセトン中に投じてアセトン可溶部を単離し、β−CyDに光官能基を導入した微粉末状の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマーを合成した(以下IPCyDと略記する)。収量6.5g、収率22.6%
得られたIPCyDのH−NMRスペクトルを図2に示した。
得られたIPCyDのIRスペクトルを図3に示した。
得られたIPCyDのX−線回折スペクトルを図4に示した。
【0034】
実施例2
(光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマーの合成)
還流冷却器と滴下ロートの備わった200mlのフラスコにHEA3.7g(3.2×10−2mol)、HQ0.2g、BLT1滴、14mlのジメチルスルホキシド(DMSOと略記する)を加えて、窒素置換を十分行った後、IPDI7.0g(3.2×10−2mol)を含んだDMSO10mlを滴下し、70℃に保ちながら攪拌を行った。2時間後、この反応液中に微粉末状のβ−CyD18g(1.6×10−2mol)を添加して、更に48時間、70℃で反応させて、β−CyDに光官能基を導入した溶液状の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマ−を合成した(以下LS−IPCyDと略記する)。該反応液中の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマーの濃度は、483g/DMSO(l)である。
【0035】
実施例3
(光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの合成)
実施例1で得られた光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー(IPCyD)0.5gをDMSO0.5gに溶解させた。該溶液に、1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液0.5および光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(HMPと略記する)1滴を加え、これらの混合物を3wt%CaCl水溶液中にシリンジから滴下した。この際、IPCyDを含む混合物はCaCl水溶液中で球状化する。該混合物を滴下し終えて、直ちに10分間紫外線照射(サンハヤト株式会社製ライトボックスMODEL BOX−W10を使用)により光架橋反応を行い、光架橋基を含有した球状のシクロデキストリンポリマーを合成した。得られた光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーは、CaCl水溶液から単離し、凍結乾燥後、水洗浄、アセトン洗浄、真空乾燥を行って、光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーを精製した。
【0036】
実施例4
(光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの合成)
実施例2で得られた溶液状の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー(LS−IPCyD)を含む反応溶液0.2gに対し、1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液1.8およびHMP2滴を加え、これらの混合物を3wt%CaCl水溶液中にシリンジから滴下した。この際、LS−IPCyDを含む混合物はCaCl水溶液中で球状化する。該混合物を滴下し終えて、直ちに10分間紫外線照射(サンハヤト株式会社製ライトボックスMODEL BOX−W10を使用)により光架橋反応を行い、光架橋基を含有した球状のシクロデキストリンポリマーを合成した。得られた光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーは、CaCl水溶液から単離し、凍結乾燥後、水洗浄、アセトン洗浄、真空乾燥を行って、光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーを精製した。このポリマーをLS−IPCyD[10]/UVとする。
【0037】
実施例5〜12
LS−IPCyDを含む反応溶液と1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液の使用量を表1に示した割合に変え、実施例4に準じて、光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーを合成した。得られたこれらのポリマーの物性を表1にまとめて示した。
【0038】
参考例1
(光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの合成)
実施例2で得られた溶液状の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー(LS−IPCyD)を含む反応溶液1.0gに対しHMP2滴を加えて攪拌した後、これらの混合物をジクロルメタン(CHCl)中にシリンジより滴下した。この際、LS−IPCyDを含む混合物はCHCl中で球状化する。該混合物を滴下し終えて、直ちに10分間紫外線照射により光架橋反応を行い、光架橋基を含有した球状のシクロデキストリンポリマーを合成した。得られた球状のシクロデキストリンポリマーは、CHCl溶媒から単離し、凍結乾燥後、水洗浄、アセトン洗浄、真空乾燥を行って、球状のシクロデキストリンポリマーを精製した。得られたポリマーは球状を形成はしていたが、機械的強度が極めて小さかった。
【0039】
実施例13
(フェノール化合物の除去試験)
実施例3で得られた光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマー1.0gを50mlの三角フラスコに加え、60℃に加温して均一溶液となったフェノール水溶液(フェノール8.9重量%、クレゾール0.33重量%およびキシレノール0.044重量%含む)5mlを加えて、室温下に2時間攪拌した。その後、シクロデキストリンポリマーを吸引ろ過し、ろ液をガスクロマトグラフィー測定し、ろ液中のフェノール化合物を測定した。その結果、仕込みのフェノールに対し、42.8%が除去されていた。
【0040】
実施例14〜22
(フェノール化合物の除去試験)
実施例4〜12で得られた光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマー1.0gを50mlの三角フラスコに加え、60℃に加温して均一溶液となったフェノール水溶液(フェノール8.9重量%、クレゾール0.33重量%およびキシレノール0.044重量%含む水溶液)5mlを加えて、室温下に2時間攪拌した。その後、シクロデキストリンポリマーを吸引ろ過し、ろ液をガスクロマトグラフィー測定し、ろ液中のフェノール化合物を測定した。その結果をそれぞれ表2に示した。
【0041】
【表1】



【0042】
【表2】



【0043】
実施例23
(光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの合成)
実施例2に準じてβ−CyD:HEA:IPDAの使用モル比=1:1:1の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマーを得た。該シクロデキストリンモノマー(LS−IPCyD)と1wt%アルギン酸Naの使用割合を80:20(重量%比)にて実施例4に準じて光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーを得た。
得られた球状のシクロデキストリンポリマーの物性値等を表3に示した。
【0044】
実施例24−28
(光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの合成)
実施例23に準じて、β−CyD:HEA:IPDAの使用モル比を表3に記載通り
に代えて、それぞれの光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの合成した。得られた光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの外観および物性値を表3に併記した。
なお、本発明で球状がよく、最大の平均圧縮強度が得られた実施例27の光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの比表面積および気孔率を測定したところ、2.89m/gならびに41.4%あった。
【0045】
実施例29−34
(フェノール化合物の除去試験)
実施例23−28で得られた光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマー1.0gを50mlの三角フラスコに加え、60℃に加温して均一溶液となったフェノール水溶液(フェノール8.9重量%、クレゾール0.33重量%およびキシレノール0.044重量%、およびメタノール9.950重量%含む水溶液)5mlを加えて、室温下に24時間攪拌した。その後、シクロデキストリンポリマーを吸引ろ過し、ろ液をガスクロマトグラフィー測定し、ろ液中のフェノール化合物を測定した。その結果をそれぞれ表4に示した。
【0046】
【表3】



【0047】
【表4】



【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のシクロデキストリン(α−CD、β−CDおよびγ−CD)の模式図である。
【図2】実施例1で得られた光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマーの水素核磁気共鳴スペクトル。
【図3】β−シクロデキストリン、光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマーおよびポリマーのFT−赤外吸収スペクトル。
【図4】β−シクロデキストリン、光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマーおよびポリマーのX線回折スペクトル。
【図5】光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの一例を示した光学顕微鏡写真。
【図6】一例として光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの表面SEM写真(倍率200倍)。
【図7】一例として光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンポリマーの表面SEM写真(倍率10000倍)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物。
【請求項2】
光架橋基が、一般式(A)の光官能基である請求項1に記載のシクロデキストリン化合物。
【化1】




(ここでRは、水素、炭素数1〜6の炭化水素基である。)
【請求項3】
(1)ジイソシアネート化合物とアクリル酸誘導体とから得られる生成物と、
(2)シクロデキストリン
を反応する工程を含むことを特徴とする光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物の製造方法。
【請求項4】
(1)ジイソシアネート化合物がイソホロンジイソシアネートであり、アクリル酸誘導体が2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタアクリレートである請求項3に記載の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物の製造方法。
【請求項5】
(a)請求項1若しくは2記載の光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物、又は請求項3若しくは4記載の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物の製造方法によって製造された光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物を、
(b)アルギン酸塩水溶液及びアスパラギン酸塩水溶液からなる水溶液群の少なくとも1水溶液と混合する工程と、
(c)該工程による混合液をハロゲン化アルカリ土類金属塩水溶液に滴下する工程と、
を含むことを特徴とする光架橋基を含有する球状のシクロデキストリン化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の光架橋基を含有するシクロデキストリン化合物のシクロデキストリンモノマー化合物、請求項3又は4記載の光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物の製造方法によって製造された光架橋基を含有するシクロデキストリンモノマー化合物、及び請求項5記載の光架橋基を含有する球状のシクロデキストリン化合物の製造方法によって製造された光架橋基を含有する球状のシクロデキストリンモノマー化合物のいずれかに、光を照射して重合することを特徴とするシクロデキストリンポリマー化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により得られた光架橋基を含有するシクロデキストリンポリマー化合物。
【請求項8】
請求項7記載の光架橋基を含有するシクロデキストリンポリマー化合物が含まれていることを特徴とする有機汚染物質の吸着剤。
【請求項9】
請求項7記載の光架橋基を含有するシクロデキストリンポリマー化合物が含まれていることを特徴とするフェノール化合物の吸着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−46041(P2007−46041A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191006(P2006−191006)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(591018707)明和化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】