説明

光沢処理装置及び画像形成装置

【課題】シート材の画像形成面に光沢処理を施す光沢処理装置及び画像形成装置において、光沢ムラや光沢欠陥が生じることのない光沢処理装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】所定の画素数でライン上に配列されている複数の発熱体105を有するサーマルヘッド73、発熱体105の配列方向と直交する方向に移動する転写フィルム74、転写フィルム74に圧接してニップ部を形成した状態で回転するプラテンローラ72、を有する光沢処理ユニットbを備える光沢処理装置2において、転写フィルム74の厚さが4μm以上20μm以下であると共に、一の光沢処理の後に二の光沢処理を実行する際に、サーマルヘッド73が転写フィルム74に対して発熱体105の間隔分、配列方向にずれた状態の光沢処理ユニットbによって、二の光沢処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢処理装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の多くは、シート材と色材の光沢度が異なるために、印字率により光沢が異なる。これに対して、全体の光沢を均一にするために、オーバーコートなどの後処理を行うことが提案されている。例えば、転写位置においてサーマルヘッドによる加熱によってフィルム部材の表面形状をシート材の画像形成面に転写することで、画像形成面の光沢性を向上させる技術が知られている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−086747号公報
【特許文献2】特開平10−315515号公報
【特許文献3】特開2000−301749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術には、次の課題がある。画像形成面の光沢性を向上させるためには、フィルム部材の表面形状を画像形成面に対して忠実に転写する必要があり、そのためには、シート材とフィルム部材との密着性を確保する必要がある。しかし、シート材の表面には繊維等の段差によって凹凸形状が形成されており、この凹凸形状にフィルム部材表面を追従させることは難しい。よって、シート材とフィルム部材との密着性を確保できないので、微小な光沢ムラが生じてしまう。
【0005】
また、加熱部材としてサーマルヘッドを用いてフィルム部材の表面形状を転写する場合、サーマルヘッドに設けられている発熱体の画素数に応じて、ライン状の光沢欠陥が生じてしまう。即ち、発熱体と発熱体との間は非加熱領域となるので、フィルム部材においてこの非加熱領域に接触する部分では、その表面形状をシート材に転写することが出来ない。よって、シート材上の画像形成面には、ライン状の光沢欠陥が生じることになる。
【0006】
そこで本発明は、シート材の画像形成面に光沢処理を施す光沢処理装置及び画像形成装置において、光沢ムラや光沢欠陥が生じることのない光沢処理装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
所定の画素数でライン上に配列されている複数の発熱体を有する加熱部材と、前記複数の発熱体に接触した状態で前記複数の発熱体の配列方向と直交する方向に移動するフィルム部材と、前記複数の発熱体の反対側から前記フィルム部材に圧接してニップ部を形成した状態で回転する加圧回転体と、を有する光沢処理ユニットを備え、シート材の画像形成面を前記フィルム部材に接触させた状態で前記フィルム部材の移動に伴ってシート材を前記ニップ部に通し、前記ニップ部において前記フィルム部材の表面形状を前記画像形成面に転写する光沢処理を同一の画像形成面に対して複数回実行することが可能な光沢処理装置において、前記フィルム部材の厚さが4μm以上20μm以下であると共に、一の光沢処理の後に二の光沢処理を実行する際に、前記一の光沢処理と比較して、前記加熱部材が前記フィルム部材に対して前記複数の発熱体の間隔分、前記配列方向にずれた状態の前記
光沢処理ユニットによって、前記二の光沢処理を実行することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る画像形成装置は、
画像をシート材上に転写する転写部と、シート材上に転写された画像を加熱、加圧することでシート材上に画像を定着させる定着部と、シート材において画像が定着した画像形成面に対して前記光沢処理を行う、上記光沢処理装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シート材の画像形成面に光沢処理を施す光沢処理装置及び画像形成装置において、光沢ムラや光沢欠陥が生じることのない光沢処理装置及び画像形成装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】第1実施形態における画像形成部の概略構成図。
【図3】第1実施形態に係る光沢処理装置の概略構成図。
【図4】第1実施形態におけるサーマルヘッドの発熱部分の概略構成図。
【図5】第1実施形態におけるサーマルヘッドの駆動回路の概略図。
【図6】第2実施形態に係る光沢処理装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1実施形態]
<1−1:画像形成装置の概略構成>
図1、図2を参照して、画像形成装置の概略構成について説明する。図1に図示するように、画像形成装置は、画像形成部を有する装置本体1の排出口側に、光沢処理装置2がオプショナルな装置として連接されたものである。これにより、装置本体1から排出されたシート材の画像形成面に対して光沢処理を施すことができる。
【0013】
装置本体1は、フルカラー電子写真画像形成装置(タンデム型のカラー記録装置)であり、トナー色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つの画像形成部Pa〜Pd(色ステーション)が設けられている。さらに、これら4色の画像形成部に加え、透明トナーに対応する画像形成部Peが設けられている。透明トナーとは、着色剤を含有しない、可視光に対して透明なトナーのことを指す。これにより、4色のトナーを重ね合わせることで形成されたトナー像上の所望の部分に、透明トナーを重ねることができる。例えば、印字率の低い部分に透明トナーを付着させ、後述する光沢処理装置で光沢処理を行うことで、透明トナーが付着している部分の光沢度を上げることができる。
【0014】
また、装置本体1に対して、カラー画像読取り装置やパーソナルコンピュータ等の外部ホスト装置200が接続されている。画像形成を行う際は、このようにして接続されたホスト装置200から、装置本体1の制御部(CPU)100に対して画像データ等の各種情報信号が入力される。制御部100は、ホスト装置200から入力される各種情報信号に基づいて画像形成を行う。
【0015】
図2に、装置本体1の画像形成部を拡大した概略構成図を示す。シート材Pに画像を形成する際は、不図示の駆動手段によって図中反時計方向に所定の速度で回転駆動される感
光ドラム11(11a〜11e)の表面を、一次帯電器12(12a〜12e)が所定の電位に均一に帯電する。その後、感光ドラム11の表面に対し、各々のスキャナ部13(13a〜13e)から露光光としてのレーザ光が照射され、感光ドラム11表面が走査露光される。これにより、感光ドラム11に静電潜像が形成される。
【0016】
その後、静電潜像に対して現像器14(14a〜14e)からトナーが供給され、静電潜像がトナー像として現像される。感光ドラム11表面で現像されたトナー像は、各々の感光ドラム11とそれらに対向配置される一次転写ローラ15(15a〜15e)とのニップ部において、感光ドラム11から中間転写ベルト17に順次転写される。トナー像が順次重ねて転写されることで、中間転写ベルト17上にはフルカラー画像が形成される。
【0017】
一次転写されずに感光ドラム11表面に残留したトナーは、不図示のクリーナーによって除去されるか、現像同時クリーニングされる。なお、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、透明トナーの各画像形成ユニットの配列は、設計に応じて適宜変更することができる。
【0018】
中間転写ベルト17は、ローラ部材18、19、20に移動可能に張架されており、これにより、中間転写ベルト17上に形成されたトナー像は二次転写ローラ21とそれに対向する対向ローラ19とのニップ部まで移動する。そしてこのニップ部(二次転写部)において、中間転写ベルト17上からシート材P上にトナー像が二次転写される。二次転写されずに中間転写ベルト17に残留したトナーは、不図示のクリーニング手段によってクリーニングされる。
【0019】
シートPは、装置本体1の下部に配置されている給送部22に収容されており、本実施形態ではシート材Pとして、坪量が170g/mのコート紙が収容されている。給送部22には給送カセット24が設けられており、画像形成開始の信号が入力されると、給送カセット24から給送ローラ23によってシート材Pが1枚ずつ給送される。給送されたシート材Pは、搬送路25、26を搬送され、搬送ローラ対27によって二次転写部まで搬送される。なお、装置本体1には、両面画像形成用の搬送路が設けられている。即ち、定着器aでトナー像が定着されたシート材Pをスイッチバック(反転)させるための反転経路35と、反転した状態のシート材Pを再度二次転写部に搬送するための搬送路31とが設けられている。
【0020】
トナー像が転写されたシート材Pは、中間転写ベルト17から曲率分離して定着器a(定着部)に搬送され、定着器aにおいて加熱・加圧されることにより、シート材P上にトナー像が定着する。定着器aは、定着後の画像が60度グロスで10%程度になるよう、トナーの定着状態を調整しており、また、プロセススピードが110mm/s、定着温度が175℃に設定されている。なお、本実施形態では、熱ローラ方式の定着器を用いているが、定着器aの形態は特に限定されるものではなく、可撓性を有する加熱フィルムを用いるフィルム方式の定着器であってもよい。
【0021】
トナー像が定着したシート材Pは、光沢処理モードが選択されていない場合は、装置本体1から第1排出ローラ対33によって第1排出トレイ34上に排出される。一方、光沢処理モードが選択されている場合は、第2排出ローラ対36から直進搬送路37を通って搬送ローラ対38から光沢処理ユニットbへ送り込まれる。この際のシート材Pの搬送方向の切り換えは、制御部100によって駆動制御されるフラッパ30で行うことができる。
【0022】
<1−2:トナーの種類について>
本実施形態におけるトナーの種類について説明する。トナーは、結着樹脂、着色剤、ワ
ックスを少なくとも含有するトナー粒子である。結着樹脂には、従来よりトナーに用いられている一般的なものが用いられている。結着樹脂としては、特に限定されないが、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系重合体、及びこれらの樹脂の混合物のいずれかであること好ましい。
【0023】
結着樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、ピーク分子量(Mp)が4000〜10000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が300以上であるとよい。より好ましくは、Mw/Mnが500以上であるとよい。分子量分布は、結着樹脂の重合条件や、適当な平均分子量の結着樹脂の混合等によって調整することが可能である。
【0024】
トナー粒子に含有される着色剤としては、公知の顔料及び染料を用いることができる。例えば、黒色着色剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック等が挙げられる。
【0025】
マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。
【0026】
マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料;C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28等の塩基性染料が挙げられる。
【0027】
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15:1、15:2、15:3、16、17;C.I.アシッドブルー6;C.I.アシッドブルー45又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0028】
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、155、180、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。
【0029】
着色剤の使用量は、中間色の再現性と着色力とのバランスから、結着樹脂100重量部に対して、3〜20重量部、さらに好ましくは6〜10重量部であることが好ましい。トナー粒子に含有されるワックスとしては、公知のワックスを用いることができる。このようなワックスとしては、例えばポリオレフィンワックス低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;それらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの等が挙げられる。
【0030】
さらにワックスとしては、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の飽和直鎖脂肪酸類;ブランジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸等の不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の飽和アルコール類;ソルビトール等の多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加等によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。
【0031】
ワックスは、結着樹脂100重量部当たり0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部使用することが好ましい。ワックスは、通常、結着樹脂を溶剤に溶解させ、結着樹脂溶液温度を上げ、撹拌しながら結着樹脂溶液に添加混合する方法や、トナー粒子の材料の混練時に混合する方法でトナー粒子に含有させる。
【0032】
また、トナーには、流動性や現像性を制御するために公知の外添剤を添加することができる。外添剤としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム等の各種無機酸化微粒子、必要に応じて疎水化処理した微粒子、ビニル系重合体、ステアリン酸亜鉛、樹脂微粒子等を使用できる。外添剤の添加量は、トナー粒子に対して0.02〜5重量%の範囲であるとよい。
【0033】
また、本実施形態における透明トナーは、上述したトナー作成方法において、着色顔料を含まず作成した、可視光に透明な無色のトナーである。本実施形態では、透明トナーは有色トナーの上に重ねられるため、十分な透明性を有する必要がある。透明トナーの単位厚さあたりの最大濃度、すなわちAmaxを測定したところ0.015であった。透明トナ
ーとしては、Amaxが0.001〜0.1のものを使用するとよい。
【0034】
<1−3:光沢処理装置の概略構成>
図3を参照して、光沢処理装置2の概略構成について説明する。なお、光沢処理装置2は光沢処理ユニットbを2つ備えているが、2つの光沢処理ユニットbの構成は同じであるので、ここでは1つの光沢処理ユニットのみ図示して説明する。
【0035】
光沢処理装置2は、シート材Pに対して部分的に加熱−冷却−分離による光沢処理を可能とする光沢処理装置であって、本実施形態では、同一の画像形成面に対して複数回の光沢処理を実行可能である。具体的には、光沢処理装置内において、シート材Pの移動方向に沿って光沢処理ユニットを2つ設けることで、同一の画像形成面に対して光沢処理を複数回実行できるように構成されている。なお、光沢処理ユニットの数はこれに限られるものではなく、複数個備えられていれば同等の効果を得ることができる。
【0036】
図中38は、画像形成ユニット1から搬送経路37を通じて搬送されてきたシート材Pを光沢処理ユニットbへ給送する搬送ローラ対であり、搬送速度は50mm/sに設定されている。70は、搬送ローラ対38と共にシート材Pを挟持搬送し、シート材Pを光沢処理ユニットbへ搬送可能とするローラ対である。また、71は、シート材Pを光沢処理
ユニットbへ搬送する際、シート材Pの先端を検知するセンサである。
【0037】
また、72はシート材搬送経路を挟んで配置されるプラテンローラ(加圧回転体)であり、73はシート材Pの記録情報に応じて部分的に発熱可能なサーマルヘッド(加熱部材)である。なお、サーマルヘッド73の発熱面には、ライン上に所定の画素数で複数の発熱体が配列されている。
【0038】
74は、サーマルヘッド73が当接する転写フィルム(フィルム部材)であって、サーマルヘッド73に設けられている複数の発熱体に接触した状態で、複数の発熱体の配列方向と直交する方向に移動可能に構成されている。また、プラテンローラ72が発熱体の反対側から転写フィルム74に圧接することで、転写フィルム74とプラテンローラ72によってニップ部が形成されている。プラテンローラ72が回転駆動し、それに対して転写フィルム74が従動することにより、ニップ部においてシート材Pを挟持搬送し、光沢処理を施すことができる。
【0039】
また、75と76は、それぞれ転写フィルム74のフィルム巻き取り軸とフィルム供給軸であり、77は、転写フィルム74が収納されている転写フィルムカセットである。78は、サーマルヘッド73によって加熱押圧された転写フィルム74とシート材Pとを分離する分離部材である。また、79はシート材Pを光沢処理装置2外へ排出する排出ローラ対であり、80は排出トレイである。以下、ここで説明した光沢処理ユニットbを構成する主な部材についてさらに詳しく説明する。
【0040】
(サーマルヘッド)
サーマルヘッド73は、転写フィルム74を介してシート材Pの画像形成面を加熱するものである。なお、シート材Pは、画像形成面が転写フィルム74と接触するようにしてニップ部に通される。図4に、サーマルヘッド73の特に発熱面の概略構成を示す。サーマルヘッド73は、アルミナなどを用いた基板101に印刷されたグレーズ102(保温層)上にコモン(共通)電極103a、リード(個別)電極103bが形成され、さらにこれらの各電極に発熱体105が形成されたものである。また、各電極、発熱体105の上面は保護膜104(オーバーコート層)によって覆われている。
【0041】
また、サーマルヘッド73には、ライン上に配列されている複数の発熱体105に選択的に電力を供給して発熱させるための駆動回路、さらにはシート材Pに熱を与えた後に余分な熱を放熱させる放熱板などの構成部材が設けられている。
【0042】
サーマルヘッド73への通電方式は、入力信号階調に対して、パルス数を一定にして通電パルス幅を制御する方式と、一定パルス幅列を用意してパルス数を制御する方式とに分けられる。前者は緻密な階調−濃度特性を設計できるが、反面、中間調制御部が複雑となる。後者は一定パルス列を用意して入力階調を割り振り直しており、中間調制御部の負担は軽いが、緻密な濃度特性を実現するには、実際の階調数よりかなり多くのパルス数を用意する必要がある。本実施形態では前者の方式を使用し、中間的な発熱量を制御している。
【0043】
また、サーマルヘッド73の発熱体105の密度、即ちライン上に配列している各発熱体105の画素数は、150dpiである。また、記録密度は150dpi、駆動電圧は30V、発熱体平均抵抗値は5000Ωである。なお、発熱体105の画素数、記録密度等は特に限定されるものではない。
【0044】
図5に、サーマルヘッド73の駆動回路の概略を示す。上述した基板上には、1ライン分の発熱体105とその両サイドに電極VHとVLが配線されている。また、1ライン分
のデータを転送保持するレジスタ群を含めたドライバICを、同一アルミナ基板上あるいは別個の配線基板上に備えている。
【0045】
(プラテンローラ)
プラテンローラ72は、硬質ゴム等の摩擦係数の高い部材をローラ状に形成したもの、例えばシリコンゴム等を用いたゴムローラからなり、軸72aにより光沢処理装置2に回転可能に取り付けられたものである。これを不図示の駆動源により駆動することで、光沢処理時に転写フィルム74がシート材Pと同方向に移動するように構成されている。
【0046】
(転写フィルム)
転写フィルム74は、フィルム供給軸76に所定の長さ巻き取り蓄えられ、光沢処理時に必要に応じてフィルム巻き取り軸75により巻き取られることにより、サーマルヘッド73を含む光沢処理位置に供給される。転写フィルム74は、シート材Pを部分的にかつ効率良く加熱するために、薄い可撓性材料によって構成される。なお、本発明者らの鋭意検討によれば、転写フィルム74の厚さは、4μm以上20μm以下であるとよい。この厚さであれば、耐久性を維持しつつ転写フィルム74の可撓性を維持でき、シート材P表面の凹凸に対して転写フィルム74を十分に追従させることができる。本実施形態では、厚さが12μmで200℃以上の耐熱性を有するポリイミドの転写フィルムを用いている。なお、転写フィルム74の材料は、特にポリイミドに限定されるものではなく、PETなどの一般的な樹脂フィルムを用いてもよい。
【0047】
転写フィルム74は、その表面形状を転写するため、高光沢の平滑フィルムであれば、シート材Pの画像形成面に高光沢な写真調の光沢処理を施すことが出来る。また、逆に、サンドブラストによるマットフィルムを使用する、あるいは、特定の形状を施したフィルムであれば、その形状の反転形状を画像形成面に転写することが可能である。たとえば、転写フィルムの種類を適宜選択することで、絹目や和紙や、エンボス紙に有るような様々な風合いの形状を画像形成面上に転写することが可能である。また、幾何学模様を施すことも可能であり、格子など様々な風合いを転写することが可能である。また、さらに1μmからサブμmオーダーの幾何学構造を作ることにより、ホログラム色を呈する表面を転写することが可能である。このように、これらの転写フィルムを複数備えることで、必要に応じて様々な形状やホログラム色を転写することが可能である。
【0048】
(分離部材)
分離部材78は、フィルム冷却機能と曲率によるフィルム分離機能の2つの役目を担っている。分離部材78は、SUSなどの金属により構成されており、転写フィルム74との接触面には曲率半径1mmの曲面(分離曲率)が形成されている。分離曲率を十分小さい値に設定することにより、シート材Pと転写フィルム74とが確実に離型出来るようにしている。
【0049】
<1−4:光沢処理装置の動作説明>
光沢処理を実行する際は、シート材Pの移動方向に沿って2つ設けられている光沢処理ユニットbのうち、移動方向上流側にある光沢処理ユニットbによって1回目の光沢処理(一の光沢処理)が行われる(図1)。
【0050】
光沢処理を行う際は、シート材Pの先端を検知する先端検知センサ71(図3)によってシート材P先端の通過が検知され、所定のタイミングで、サーマルヘッド73の反対側からプラテンローラ72が転写フィルム74に圧接する。その後、入力された画像情報に応じてタイミングを計って各発熱体105が選択的に発熱し、プラテンローラ72と転写フィルム74のニップ部においてシート材Pを挟持搬送することで、シート材Pの画像形成面に光沢処理を施すことができる。より具体的には、光沢処理の信号レベルに応じて、
それぞれの発熱体105に供給する電力の通電パルス幅、あるいは数を制御している。転写順序は1ラインごとのラインプリントを基本とし、1ラインの転写が終了すると、プラテンローラ72が1ライン分回転し、シート材Pと転写フィルム74を移動させている。光沢処理後、プラテンローラ72は転写フィルム74から離間する。
【0051】
光沢処理が施されたシート材Pは、分離部材78によって転写フィルム74から曲率分離した後、2回目の光沢処理を実行可能な下流側の光沢処理ユニットbに搬送され、2回目の光沢処理(二の光沢処理)が実行される。2回目の光沢処理を行う下流側の光沢処理ユニットbの基本構成は、1回目の光沢処理を行う上流側の光沢処理ユニットbと同一であるが、転写フィルム74に対する発熱体105の位置が異なっている。即ち、上流側の光沢処理ユニットbと比較すると、下流側の光沢処理ユニットbの発熱体105の配列は、発熱体105の間隔分、発熱体105の配列方向にずれている。
【0052】
発熱体105の「ずれ量」は、本実施形態では150dpiの画素数で発熱体105が配列しているので、発熱体同士の間隔である85μmのずれ量で発熱体105が配列方向にずれている。発熱体105をずらす為の手段は、サーマルヘッド73の配置をずらしてもよいし、予め発熱体105を配列方向にずらして発熱面に設けてもよい。このような構成を有する下流側の光沢処理ユニットbによって2回目の光沢処理が行われると、シート材Pは光沢処理装置2から排出トレイ80上に排出される。
【0053】
このように、互いの発熱体が、その配列方向に発熱体の間隔分ずれている2つの光沢処理ユニットbによって、同一の画像形成面に対して光沢処理を2回行うことで、光沢欠陥が生じることを防止することができる。即ち、上述したように光沢欠陥は、発熱体と発熱体との間の非加熱領域において生じる現象であるが、本実施形態の構成によれば、1回目の光沢処理時の非加熱領域に対して、2回目の光沢処理時で光沢を付与することができるので、光沢欠陥が生じることがない。
【0054】
<1−5:比較実験>
本実施形態の効果を検証すべく、実施例1、2と比較例1、2とを用いて比較実験を行った際の実験条件・結果を以下に示す。
【0055】
(実施例1)
シート材の搬送方向に沿って光沢処理ユニットを2つ設け、シート材の同一の画像形成面に対して光沢処理を2回行った。また、2回目の光沢処理を行う搬送方向下流側の光沢処理ユニットのサーマルヘッドの位置を、搬送方向上流側の光沢処理ユニットのサーマルヘッドの位置よりも、発熱体の配列方向に85μmずらした。なお、発熱体の密度は150dpiとする。
【0056】
(実施例2)
1つの光沢処理ユニットと、シート材の搬送をスイッチバックさせるスイッチバック機構とを備える光沢処理装置によって、2回の光沢処理を行った。即ち、1回目の光沢処理終了後、シート材をスイッチバックさせ、同一の光沢処理ユニットを用いて2回目の光沢処理を行った。また、光沢処理ユニットにおいて、サーマルヘッドが発熱体の配列方向に移動できるようにし、1回目の光沢処理後、2回目の光沢処理を行う前に、サーマルヘッドが発熱体の配列方向に85μmずれるように設定した。なお、発熱体の密度は150dpiとする。
【0057】
(比較例1)
1つの光沢処理ユニットによって、シート材の画像形成面に対して光沢処理を1回行った。
【0058】
(比較例2)
光沢処理ユニットを2つ設け、シート材の同一の画像形成面に対して光沢処理を2回行った。なお、1回目、2回目ともに、サーマルヘッドの位置は同じであって、即ち、発熱体による加熱領域は、1回目、2回目ともに同じである。
【0059】
これらの実施例、比較例を用いて、同一の入力画像に対して次の項目について評価した。なお、1回目の光沢処理は、印字濃度を50(%)から100(%)まで10(%)ずつ変化させた各パッチ画像に対して光沢処理を施した。さらに、2回目の光沢処理は、1回目の光沢処理に対して、90度回転した方向に、同一の画像パッチに対して光沢処理を施した。
【0060】
(光沢ムラの目立ちやすさ)
画像上の微小な光沢ムラを目視にて主観評価によって行った。およそ250mmの明視距離において、隣接する画像パッチとの段階的な光沢差があるかを目視で評価した。サンプルと光源との距離は約2〜3m、光源、サンプル、視点の成す角度は20〜40度を目安に調整した。評価には、以下の基準を用いた。
○:微小な光沢ムラが認められない。
△:微小な光沢ムラが1〜7割の画像パッチで認められる。
×:微小な光沢ムラが7割以上の画像パッチで認められる。
【0061】
(光沢可変範囲について)
光沢可変範囲とは、光沢処理によってシート材上に表現された光沢度の範囲のことをいう。つまり、光沢可変範囲が広いとは、より多段階の光沢を表現できることを意味する。光沢可変範囲の評価は、目視による主観評価によって行った。およそ250mmmの明視
距離において、隣接する画像パッチとの段階的な光沢差があるかを目視で評価した。サンプルと光源との距離は約2〜3m、光源、サンプル、視点の成す角度は20〜40度を目安に調整した。評価には、以下の基準を用いた。
○:不良が認められない(隣接する画像パッチにおいて、入力データに基づく光沢差を認識できる)。
×:不良が認められる(隣接する画像パッチの光沢差を認識できない)。
【0062】
下表に実験結果を示す。
【表1】

【0063】
表に示すように、実施例1、2では光沢ムラが認められなかった。また、画像パッチ毎に光沢差を認識でき、即ち、広い光沢可変範囲を実現できていることがわかる。一方、比較例1では、ほとんどの画像パッチで光沢ムラを確認でき、また、隣接する画像パッチの光沢差を認識することができない。これは、実施例1では光沢処理を1回しか行っていないので、転写フィルムの表面形状をシート材の画像形成面に十分に転写しきれないためと考えられる。また、表面形状を転写しきれないので光沢可能範囲もせまくなっている。また、比較例2では、光沢ムラを確認できるものの、広い光沢可変範囲を実現できている。比較例2では、光沢処理を2回行っているので、広い光沢可変範囲を実現できるが、発熱
体間に生じる非加熱領域が存在するので、光沢ムラが生じてしまう。
【0064】
<1−5:本実施形態の効果>
本実施形態では、厚さの薄い転写フィルム(厚さ:4μm以上20μm以下)を用いて光沢処理を行っているため、転写フィルムをシート材表面形状に対して追従させることができる。よって、転写フィルムの表面形状を確実にシート材に転写できるので、光沢ムラの発生を抑えることができる。さらに、光沢可変範囲が広がり、多種多様な光沢表現が可能になる。また、厚さの薄い転写フィルムを用いると、発熱体からの熱を効率良く画像形成面に伝達することができ、画像形成面に対して局所的に光沢を付与することが可能になる。また、本実施形態では、光沢処理を複数回実行している。シート材をプラテンローラと転写フィルムとのニップ部に複数回通すと、通す回数が多くなるにつれシート材表面の凹凸に対して転写フィルムが追従していくので、より効果的に光沢ムラの発生を防止できる。
【0065】
また、従来ではシート材の画像形成面において発熱体から加熱を受けない部分、即ち非加熱領域が生じ、これによりライン状の光沢欠陥が生じていた。これに対し本実施形態では、一の光沢処理と比較して、サーマルヘッドがフィルム部材に対して発熱体の間隔分、発熱体の配列方向にずれた状態の光沢処理ユニットによって、二の光沢処理を実行している。よって、一の光沢処理で生じた非加熱領域(非光沢処理領域)を、二の光沢処理で加熱することができるので、ライン状の光沢欠陥が生じることを防止できる。
【0066】
以上より、本実施形態に係る光沢処理装置及び画像形成装置によれば、シート材の画像形成面に光沢処理を施す光沢処理装置及び画像形成装置において、光沢ムラや光沢欠陥が生じることのない光沢処理装置及び画像形成装置を提供することが可能になる。
【0067】
[第2実施形態]
<2−1:光沢処理装置の概略構成>
図6を参照して、本実施形態に係る光沢処理装置について説明する。なお、画像形成装置の構成は第1実施形態と同一であるので、ここでは説明を省略する。また、光沢処理装置を構成する各部材に関しても、第1実施形態と同一の機能を有する部材には、第1実施形態と同一符号を付してその説明を省略する。
【0068】
第1実施形態では、シート材Pの移動方向に沿って光沢処理ユニットを複数設けることで、同一の画像形成面に対して光沢処理を複数回実行しているが、本実施形態では、1つの光沢処理ユニットによって複数回の光沢処理を実行している点が特徴である。図示するように、光沢処理装置2は、光沢処理ユニットcと、シート材Pの搬送をスイッチバックさせるスイッチバック機構とを備えている。これにより、光沢処理ユニットcで1回目の光沢処理を行った後に、シート材Pをスイッチバックさせ、同一画像形成面に対して2回目の光沢処理を行うようにしている。
【0069】
光沢処理装置2には、シート材Pを収容するシート材収容部82、シート材収容部82からシート材Pを1枚ずつ給送する給送ローラ81、給送されたシート材Pの先端を検知する先端検知センサ83が設けられている。さらに、スイッチバック機構として、搬送ローラ対84が設けられている。
【0070】
この構成により、まず、シート材Pが給送される際に、先端検知センサ83の検知結果に基づいて不図示の制御部がシート材Pの長さを算出する。そして、搬送ローラ対84によってシート材Pがプラテンローラ72と転写フィルム74とのニップ部に搬送される。その後、シート材Pをニップ部に通しつつ、サーマルヘッド73の発熱面に設けられている複数の発熱体が画像情報、シート材Pの長さ等に基づいて発熱することで、1回目の光
沢処理が実行される。なお、搬送ローラ対84とプラテンローラ72は、左右両方向に回転できるように構成されている。
【0071】
1回目の光沢処理が実行されると、2回目の光沢処理が実行される前に、サーマルヘッド73が発熱体の配列方向(転写フィルム74の移動方向に直交する方向)に移動する。この際の移動量は、ライン上に配列されている複数の発熱体の間隔分であって、例えば発熱体の画素数が150dpiの場合は、サーマルヘッド73が85μm移動する。
【0072】
サーマルヘッド73の移動が完了すると、2回目の光沢処理が実行される。即ち、搬送ローラ対84、プラテンローラ72が1回目の光沢処理の際とは逆の方向に回転し、シート材Pが1回目の光沢処理時の移動方向と逆方向に移動される。そして、同一の画像形成面に対して2回目の光沢処理が実行される。2回目の光沢処理が実行されると、シート材Pは排出ローラ対79によって排出トレイ80上に排出される。
【0073】
なお、ここでは光沢処理装置2下方に設けられているシート材収容部82から、光沢処理を施すシート材Pを供給しているが、本実施形態のシート材供給手段はこれに限られるものではない。光沢処理装置2内にシート材収容部82を設けず、画像形成装置から出力されたシート材Pに対して光沢処理を施すような構成であってもよい。また、ここでは光沢処理を2回行う構成について説明したが、スイッチバックの回数を増やし、光沢処理毎にサーマルヘッドを移動させ、光沢処理の回数を増やす構成であってもよい。
【0074】
<2−2:本実施形態の効果>
本実施形態によれば、第1実施形態で説明した効果に加え、1つの光沢処理ユニットによって光沢処理を複数回行うことが可能なので、光沢処理ユニットを複数設ける構成と比較すると光沢処理装置を小型化することができる。
【0075】
以上より、本実施形態に係る光沢処理装置及び画像形成装置によれば、シート材の画像形成面に光沢処理を施す光沢処理装置及び画像形成装置において、光沢ムラや光沢欠陥が生じることのない光沢処理装置及び画像形成装置を提供することが可能になる。
【0076】
[その他の実施形態]
第1実施形態では、シート材の搬送方向下流側の光沢処理ユニットのサーマルヘッドを、上流側の光沢処理ユニットのサーマルヘッドと比較して、発熱体の間隔分、発熱体の配列方向にずらしている。また、第2実施形態では、1回目の光沢処理の後に、サーマルヘッドを発熱体の間隔分、発熱体の配列方向に移動させて2回目の光沢処理を実行している。これらの構成により、画像形成面にライン状の光沢欠陥が生じることを防止している。
【0077】
しかしながら、本発明に係る光沢処理装置の構成はこれに限られるものではない。例えば第1実施形態では、サーマルヘッドの位置をずらす代わりに、2回目の光沢処理を実行する際にシート材を移動方向と直交する方向にずらしてもよい。同様に、第2実施形態でも、2回目の光沢処理を実行する際にサーマルヘッドが移動する代わりに、シート材を移動方向と直交する方向にずらしてもよい。即ち、2回目の光沢処理時に、サーマルヘッドがシート材に対して相対的に移動していれば、光沢欠陥の発生を防ぐことが可能である。
【0078】
また、第1、第2実施形態では、透明トナーに対応した画像形成部Peを有する画像形成装置からの出力画像に対して光沢処理を行っているが、光沢処理を施すことが可能な出力画像はこれに限られるものではない。例えば、熱可塑性樹脂によって全面が樹脂コーティングされたシート材に対しても、上述の光沢処理装置によって任意の部分に光沢処理を実行することができる。また、溶解熱転写記録、昇華熱転写記録、インクジェット記録等によって画像形成されたシート材に対しても、光沢処理を実行することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…画像形成装置 2…光沢処理装置 72…プラテンローラ 73…サーマルヘッド 74…転写フィルム b…光沢処理ユニット c…光沢処理ユニット P…シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画素数でライン上に配列されている複数の発熱体を有する加熱部材と、
前記複数の発熱体に接触した状態で前記複数の発熱体の配列方向と直交する方向に移動するフィルム部材と、
前記複数の発熱体の反対側から前記フィルム部材に圧接してニップ部を形成した状態で回転する加圧回転体と、を有する光沢処理ユニットを備え、
シート材の画像形成面を前記フィルム部材に接触させた状態で、前記フィルム部材の移動に伴ってシート材を前記ニップ部に通し、前記ニップ部において前記フィルム部材の表面形状を前記画像形成面に転写する光沢処理を同一の画像形成面に対して複数回実行することが可能な光沢処理装置において、
前記フィルム部材の厚さが4μm以上20μm以下であると共に、
一の光沢処理の後に二の光沢処理を実行する際に、
前記一の光沢処理と比較して、前記加熱部材が前記フィルム部材に対して前記複数の発熱体の間隔分、前記配列方向にずれた状態の前記光沢処理ユニットによって、前記二の光沢処理を実行することを特徴とする光沢処理装置。
【請求項2】
シート材の移動方向に沿って前記光沢処理ユニットが複数設けられていることで、同一の画像形成面に対して前記光沢処理を複数回実行するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光沢処理装置。
【請求項3】
前記光沢処理毎に前記加熱部材が前記フィルム部材に対して前記複数の発熱体の間隔分、前記配列方向に相対的に移動する光沢処理ユニットを備えており、該光沢処理ユニットにシート材を複数回通すことで、前記光沢処理を複数回実行するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光沢処理装置。
【請求項4】
画像をシート材上に転写する転写部と、
シート材上に転写された画像を加熱、加圧することでシート材上に画像を定着させる定着部と、
シート材において画像が定着した画像形成面に対して前記光沢処理を行う、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光沢処理装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−128267(P2012−128267A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280769(P2010−280769)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】