説明

光活性組成物、および、この組成物で形成された電子素子

(a)フェナントロリン誘導体を含む第1のホスト材料;(b)芳香族アミンを含む第2のホスト材料;および、(c)エレクトロルミネセントドーパント材料を含む光活性組成物が提供されている。第1のホスト材料対第2のホスト材料の重量比は99:1〜50:50の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年12月22日出願の、その全体が参照により援用される米国仮特許出願第61/139,820号明細書に基づく米国特許法第119条(e)による優先権を主張する。
【0002】
本開示は、全体として、有機電子素子に有用である光活性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
OLEDディスプレイを形成する有機発光ダイオード(「OLED」)などの有機光活性電子素子において、有機活性層は、OLEDディスプレイにおける2つの電気コンタクト層の間に挟まれている。OLEDにおいて、有機光活性層は、電気コンタクト層に電圧が印加されると、光透過性電気コンタクト層を介して光を放射する。
【0004】
有機エレクトロルミネセント化合物を発光ダイオードにおける活性成分として用いることは周知である。単純な有機分子、共役ポリマーおよび有機金属錯体が用いられている。
【0005】
光活性材料を用いる素子は、多くの場合、1つまたは複数の電荷輸送層を備えており、これは、光活性(例えば発光)層と、コンタクト層(正孔注入コンタクト層)との間に配置されている。素子は、2つ以上のコンタクト層を含有していることが可能である。正孔輸送層は、光活性層と正孔注入コンタクト層との間に配置されることが可能である。正孔注入コンタクト層は陽極とも呼ばれ得る。電子輸送層は、光活性層と電子注入コンタクト層との間に配置されることが可能である。電子注入コンタクト層はまた陰極とも呼ばれ得る。電荷輸送材料はまた、光活性材料との組み合わせにおいてホストとして用いられることが可能である。
【0006】
電子素子のための新規の材料に対する要求が継続的に存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(a)フェナントロリン誘導体を含む第1のホスト材料;(b)芳香族アミンを含む第2のホスト材料;および、(c)エレクトロルミネセントドーパント材料を含み;第1のホスト材料対第2のホスト材料の重量比が99:1〜50:50の範囲内である光活性組成物が提供されている。
【0008】
陽極、正孔輸送層、光活性層、電子輸送層および陰極を備える有機電子素子もまた提供されており、ここで、光活性層は上記の光活性組成物を含む。
【0009】
前述の概要および以下の詳細な説明は例示および説明のみを目的としており、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明を限定はしない。
【0010】
本明細書に提示されているコンセプトの理解を向上させるために、実施形態が添付の図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、例示的な有機素子の図示を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
当業者は、図中の対象物は簡潔性および明確性のために図示されており、必ずしも縮尺どおりに描画されていないことを理解している。例えば、図中の対象物の寸法は、実施形態の理解の向上を助けるために他の対象に比して強調されている場合がある。
【0013】
多くの態様および実施形態が上記に記載されているが、これらは単に例示的であり、限定的ではない。この明細書を読了した後には、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく他の態様および実施形態も可能であることを理解している。
【0014】
1つまたは複数の実施形態のいずれかの他の特性および有益性は、以下の詳細な説明、および、特許請求の範囲から明らかになるであろう。詳細な説明は、先ず、用語の定義および明確化、続いて、光活性組成物、電子素子、および、最後に実施例に言及している。
【0015】
1.用語の定義および明確化
以下に記載されている実施形態の詳細に言及する前に、いくつかの用語が定義または明確化されている。
【0016】
「アルキル」という用語は、脂肪族炭化水素に由来する基を意味することが意図されている。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有する。
【0017】
「アリール」という用語は、芳香族炭化水素に由来する基を意味することが意図されている。「芳香族化合物」という用語は、非局在化π電子を有する少なくとも1個の不飽和環式基を含む有機化合物を意味することが意図されている。この用語は、炭素および水素原子のみを有する芳香族化合物(「芳香族炭化水素」と称される)、ならびに、環式基の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄等などの他の原子によって置き換えられている芳香族複素環式化合物の両方を含むことが意図されている。いくつかの実施形態において、アリール基は4〜60個の炭素原子を有する。
【0018】
層、材料、構成要素または構造を参照している場合、「電荷輸送」という用語は、このような層、材料、構成要素または構造の厚さ方向へのこのような電荷の移動を、比較的高い効率および小さい電荷の損失で促進するような層、材料、構成要素または構造を意味することが意図されている。正孔輸送材料は正電荷を促進させ;電子輸送材料は陰電荷促進させる。発光材料もまたいくらかの電荷輸送特性を有し得るが、「電荷輸送層、材料、構成要素または構造」という用語が、主たる機能が発光である層、材料、構成要素または構造を包含することは意図されていない。
【0019】
「ドーパント」という用語は、このような物質が存在していない層の電子的特徴、または、放射線の放射、受光あるいはフィルタリング波長に比して、層の電子的特徴、または、放射線の放射、受光あるいはフィルタリングの目標波長を変える、ホスト材料を含む層中の材料を意味することが意図されている。
【0020】
「縮合アリール」という用語は、2つ以上の縮合芳香族環を有するアリール基を指す。
【0021】
「HOMO」という用語は最高被占軌道を指す。HOMOエネルギーレベルは真空準位と相対的に計測される。慣例により、HOMOは負の値が与えられており、すなわち、真空準位がゼロに設定されており、束縛電子エネルギーレベルはこれよりも深く、これよりもさらに負の値である。HOMOエネルギーレベルを測定するための方法は周知であると共に、理解されている。いくつかの実施形態において、レベルは、紫外光電子分光(「UPS」)によって測定される。
【0022】
「ホスト材料」という用語は、ドーパントが添加されてもされなくてもよい通常は層の形態の材料を意味することが意図されている。ホスト材料は、電子的特徴または放射線を放射し、受光しあるいはフィルタリングする能力を有していてもいなくてもよい。
【0023】
「層」という用語は、用語「フィルム」と同義に用いられており、所望の領域を覆うコーティングを指す。この用語はサイズによっては限定されない。この領域は、素子全体と同程度の大きさであっても、または、実際のビジュアルディスプレイなどの特定の機能領域と同程度の小ささ、または、単一のサブピクセルと同程度の小ささであることが可能である。層およびフィルムは、蒸着、液相堆積(連続および非連続技術)、および、熱転写を含む従来の堆積技術のいずれかによって形成されることが可能である。連続堆積技術としては、これらに限定されないが、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロット−ダイコーティング、スプレーコーティング、および、連続ノズルコーティングが挙げられる。非連続堆積技術としては、これらに限定されないが、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0024】
「有機電子素子」、または、時々、単に「電子素子」という用語は、1つまたは複数の有機半導体層または材料を含む素子を意味することが意図されている。
【0025】
「光活性」という用語は、印加電圧(発光ダイオードまたは化学セルなどにおいて)により活性化された場合に発光して、または、放射エネルギーに応答して発光して、印加バイアス電圧(光検出器などにおいて)を伴って、または、伴わずにシグナルを生成する材料もしくは層を意味することが意図されている。
【0026】
「シリル」という用語は基−SiR3を指し、ここで、Rは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、アルキル基およびアリール基からなる群から選択される。
【0027】
他に示されていない限りにおいて、すべての基は未置換であることも置換されていることも可能である。他に示されていない限りにおいて、すべての基は、可能である場合には、直鎖、分岐または環式であることが可能である。いくつかの実施形態において、置換基は、アルキル、アルコキシ、アリールおよびシリルからなる群から選択される。
【0028】
本明細書において用いられるところ、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、または、これらのいずれかの他の変形は、非排他的な包含をカバーしていることが意図されている。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品、または、装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されることはなく、明示的に列挙されていないか、または、このようなプロセス、方法、物品、または、装置に固有である他の要素が包含されていてもよい。さらに、そうでないと明記されていない限りにおいて、「または」は、包括的なまたはを指し、排他的なまたはを指さない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれか一つにより満たされる:Aが真であり(または存在し)およびBが偽である(または不在である)、Aが偽であり(または不在であり)およびBが真である(または存在する)、ならびに、AおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0029】
また、「a」または「an」の使用は、本明細書に記載の要素および構成成分の記載に採用されている。これは、単なる簡便性のために、および、本発明の範囲の一般的な意味を付与するために行われる。この記載は、そうでないことを意味することが明らかでなければ、1つまたは少なくとも1つを含み、および、単数形はまた複数形をも含むと読解されるべきである。
【0030】
元素周期律表中の列に関連する族数は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,第81版,(2000〜2001年)に見られる「新表記」技法を用いている。
【0031】
そうでないと定義されていない限りにおいて、本明細書において用いられている技術用語および科学用語のすべては、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の実施形態の実施または試験において本明細書に記載のものと類似のまたは同等の方法および材料を用いることが可能であるが、好適な方法および材料は以下に記載されている。特定の経路が言及されていない限りにおいては、本明細書に記載されているあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、参照によりそれらの全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。加えて、材料、方法および例は、単なる例示であり、限定的であることは意図されていない。
【0032】
本明細書に記載されていない範囲で、特定の材料、加工行為および回路に関する多くの詳細は従来のものであり、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光起電力および半導電部材の技術分野における教科書および他の資料に見出され得る。
【0033】
2.光活性組成物
アルミニウムのキノレート錯体が光活性層におけるホスト材料として用いられている。ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(「BAlq」)などの錯体が用いられて高効率を有する素子がもたらされている。しかしながら、Balq化合物は、空気および水分に感応性である。Ga−キノレート錯体などの可能性のある代替物はより良好な空気および水分安定性を有している。しかしながら、これらによりもたらされる素子は性能が低い。
【0034】
本明細書に記載の光活性組成物は:(a)フェナントロリン誘導体を含む第1のホスト材料;(b)芳香族アミンを含む第2のホスト材料;および、(c)エレクトロルミネセントドーパント材料を含み;第1のホスト材料対第2のホスト材料の重量比は99:1〜50:50の範囲内である。
【0035】
いくつかの実施形態において、第1のホスト材料対第2のホスト材料の比は、95:5〜60:40の範囲内である。いくつかの実施形態において、比は90:10〜70:30の範囲内である。
【0036】
いくつかの実施形態において、ホスト材料の合計(第1のホスト+第2のホスト)対ドーパントの重量比は5:1〜25:1であり;いくつかの実施形態においては、10:1〜20:1の範囲である。
【0037】
いくつかの実施形態において、光活性組成物は、2種以上のエレクトロルミネセントドーパント材料を含む。いくつかの実施形態において、この組成物は、3種のドーパントを含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、光活性組成物は、上記に定義されているとおり、および、上記に記載の比で、基本的に、第1のホスト材料、第2のホスト材料および1種または複数のエレクトロルミネセントドーパント材料から構成される。
【0039】
a.第1のホスト材料
第1のホスト材料は、フェナントロリン誘導体である。バソフェナントロリンおよびバソクプロインを含む多くのこのような材料は公知である。
【0040】
いくつかの実施形態において、フェナントロリンは2位および9位にアリール置換基を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、第2のホスト材料は、式I:
【0042】
【化1】

【0043】
(式中:
1〜R4は、同一であるかまたは異なっていると共に、Hおよびアリールからなる群から選択され;
ならびに、R1〜R4の少なくとも2つはアリールである)
を有するフェナントロリン化合物である。
【0044】
式Iのいくつかの実施形態において、R1〜R4は、ナフチル、ナフチルフェニル、フェニルナフチル、カルバゾリル、カルボゾリルフェニル、トリフェニルアミノ、アリールアントラセニル、および、式IIを有する基:
【0045】
【化2】

【0046】
(式中:
5は、各出現で同一であるかまたは異なると共に、D、アルキル、アルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
aは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、0〜4の整数であり;
bは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、0〜5の整数であり;ならびに
mは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、0〜6の整数である)
からなる群から独立して選択される。
【0047】
いくつかの実施形態において、R1〜R4は、式IIa:
【0048】
【化3】

【0049】
(式中、R5、a、b、およびmは上記に定義されているとおりである)
を有する。
【0050】
式Iのいくつかの実施形態において、R1〜R4は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、フェナントリル、ナフチルフェニル、フェナントリルフェニル、カルバゾリル、およびカルバゾリルフェニルからなる群から独立して選択される。5〜10個のフェニル環を有する、クアテルフェニルより高級の類似体もまた用いられることが可能である。
【0051】
上記で参照されている基は以下のとおり定義され、ここで、破線は可能性のある結合点を表す。
【0052】
【化4】

【0053】
【化5】

【0054】
【化6】

【0055】
式Iのいくつかの実施形態において、R1〜R4は、フェニルおよび置換フェニルからなる群から選択される。
【0056】
式Iのいくつかの実施形態において、R1およびR2は共にフェニルであり、R3およびR4は、2−ナフチル、ナフチルフェニル、フェナントリル、トリフェニルアミノ、およびm−カルバゾリルフェニルからなる群から選択される。
【0057】
いくつかの実施形態において、R1〜R4の少なくとも1つは少なくとも1個の置換基を有する。置換基は、存在することでホスト材料の物理特性または電子特性を変化させることが可能である。いくつかの実施形態において、置換基は、ホスト材料の加工性を向上させる。いくつかの実施形態において、置換基は、溶解度を高め、および/または、ホスト材料のTgを高める。いくつかの実施形態において、これらの置換基は、アルキル基、アルコキシ基、シリル基およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0058】
いくつかの実施形態において、フェナントロリン化合物は対称であり、ここでは、R1=R2およびR3=R4である。いくつかの実施形態において、R1=R2=R3=R4である。いくつかの実施形態において、フェナントロリン化合物は非対称であり、ここでは、R1=R2であるが、R3≠R4であるか;R1≠R2およびR3=R4であるか;または、R1≠R2およびR2≠R3である。
【0059】
いくつかの実施形態において、R1=R2であると共に、フェニル、トリフェニルアミノ、およびカルバゾリルフェニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、R1およびR2は、p−トリフェニルアミノ(ここで、結合点は窒素に対してパラである)およびm−カルバゾリルフェニル(ここで、結合点は窒素に対してメタである)から選択される。
【0060】
いくつかの実施形態において、R3=R4であると共に、トリフェニルアミノ、ナフチルフェニル、トリフェニルアミノ、およびm−カルバゾリルフェニルからなる群から選択される。
【0061】
第1のホストフェナントロリン誘導体の例としては、これらに限定されないが、以下の化合物A1〜A5が挙げられる。
【0062】
【化7】

【0063】
【化8】

【0064】
【化9】

【0065】
第1のホスト化合物は、公知の合成技術によって形成されることが可能である。いくつかのフェナントロリン誘導体は市販されている。これは、実施例においてさらに例示されている。いくつかの実施形態において、フェナントロリンホスト化合物は、所望の置換基のボロン酸類似体でのジクロロフェナントロリンのスズキカップリングにより形成される。
【0066】
b.第2のホスト化合物
第2のホスト化合物は芳香族アミンである。いくつかの実施形態において、芳香族アミンは−5.4eV±0.2eVのHOMOレベルを有する。芳香族アミンは1個または複数個のアミノ窒素を有し得、その各々は3個の芳香族基に結合している。このようなタイプの化合物は周知である。芳香族アミン化合物の例としては、これらに限定されないが、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチル−フェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(NPB);4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA);4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル(CBP)、1,3−ジ−(9−カルバゾリル)ベンゼン(mCP);ならびに4,4’,4”−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−TDATA)が挙げられる。
【0067】
c.ドーパント材料
エレクトロルミネセント材料としては、小分子有機蛍光化合物、蛍光材料およびリン光材料金属錯体、共役ポリマー、ならびに、これらの混合物が挙げられる。蛍光化合物の例としては、これらに限定されないが、クリセン、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、アントラセン、チアジアゾール、これらの誘導体、およびこれらの混合物が挙げられる。金属錯体の例としては、これらに限定されないが、トリス(8−ヒドロキシキノレート)アルミニウム(AlQ)などの金属キレート化オキシノイド化合物;Petrovら、米国特許第6,670,645号明細書および国際公開第03/063555号パンフレットおよび国際公開第2004/016710号パンフレットに開示のフェニルピリジン、フェニルキノリンまたはフェニルピリミジンリガンドとのイリジウムの錯体などのシクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネセント化合物、ならびに、例えば、国際公開第03/008424号パンフレット、国際公開第03/091688号パンフレット、および、国際公開第03/040257号パンフレットに記載の有機金属錯体、ならびに、これらの混合物が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施形態において、光活性ドーパントは、イリジウムのシクロメタレート化錯体である。いくつかの実施形態において、錯体は、フェニルピリジン、フェニルキノリンおよびフェニリソキノリンから選択される2個のリガンド、ならびに、β−ジエノレートである第3のリガンドを有する。リガンドは、未置換であるか、または、F、D、アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシル、アルキルアミノ、アリールアミノ、CN、シリル、フルオロアルコキシルまたはアリール基で置換されていてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、異なるドーパントを有する別々の光活性組成物が異なる色を提供するために用いられる。いくつかの実施形態において、ドーパントは、赤色、緑色、および青色の発光を有するために選択される。本明細書において用いられるところ、赤色は、600〜700nmの範囲内に最大波長を有する光を指し;緑色は、500〜600nmの範囲内に最大波長を有する光を指し;ならびに青色は、400〜500nmの範囲内に最大波長を有する光を指す。
【0070】
青色発光材料の例としては、これらに限定されないが、ジアリールアントラセン、ジアミノクリセン、ジアミノピレン、フェニルピリジンリガンドを有するIrのシクロメタレート化錯体、および、ポリフルオレンポリマーが挙げられる。青色発光材料は、例えば、米国特許第6,875,524号明細書および米国特許出願公開第2007−0292713号明細書および米国特許出願公開第2007−0063638号明細書に開示されている。
【0071】
赤色発光材料の例としては、これらに限定されないが、フェニルキノリンまたはフェニリソキノリンリガンドを有するIrのシクロメタレート化錯体、ペリフランテン、フルオランテンおよびペリレンが挙げられる。赤色発光材料は、例えば、米国特許第6,875,524号明細書および米国特許出願公開第2005−0158577号明細書に開示されている。
【0072】
緑色発光材料の例としては、これらに限定されないが、フェニルピリジンリガンドを有するIrのシクロメタレート化錯体、ジアミノアントラセンおよびポリフェニレンビニレンポリマーが挙げられる。緑色発光材料は、例えば、国際公開第2007/021117号パンフレットに開示されている。
【0073】
ドーパント材料の例としては、これらに限定されないが、以下の化合物C1〜C10が挙げられる。
【0074】
【化10】

【0075】
【化11】

【0076】
【化12】

【0077】
【化13】

【0078】
【化14】

【0079】
3.電子素子
本明細書に記載の光活性組成物を有することにより利点がもたらされ得る有機電子素子としては、これらに限定されないが、(1)電気エネルギーを放射線に変換する素子(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイまたはダイオードレーザ)、(2)エレクトロニクスプロセス中のシグナルを検出する素子(例えば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、IR検出器、バイオセンサ)、(3)放射線を電気エネルギーに変換する(例えば、光起電力素子または太陽電池)素子、ならびに、(4)1つまたは複数の有機半導体層を有する1個または複数の容量型電子部品を備える素子(例えば、トランジスタまたはダイオード)が挙げられる。
【0080】
いくつかの実施形態において、有機発光素子は:
陽極;
正孔輸送層;
光活性層;
電子輸送層、および
陰極;
を備え、ここで、光活性層は上記の組成物を含む。
【0081】
有機電子素子構造の一例が図1に示されている。素子100は、第1の電気コンタクト層、陽極層110および第2の電気コンタクト層、陰極層160を有すると共に、これらの間に光活性層140を有する。陽極にはバッファ層120が隣接している。バッファ層には正孔輸送材料を含む正孔輸送層130が隣接している。陰極には、電子輸送材料を含む電子輸送層150が隣接していてもよい。任意で、素子は、1つまたは複数の追加の正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)を陽極110に隣接して、および/または、1つまたは複数の追加の電子注入層または電子輸送層(図示せず)を陰極160に隣接して用いていてもよい。
【0082】
層120〜150は、独立して、および、全体として、活性層と称される。
【0083】
一実施形態においては、異なる層は、以下の範囲の厚さを有する:陽極110、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;バッファ層120、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;正孔輸送層130、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;光活性層140、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;層150、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;陰極160、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。素子における電子−正孔再結合ゾーンの位置、それ故、素子の発光スペクトルは、各層の相対的な厚さによって影響されることが可能である。層厚の所望の比は、用いられる材料の正確な性質に依存することとなる。
【0084】
素子100の用途に応じて、光活性層140は、印加電圧により活性化される発光層(発光ダイオードまたは発光電気化学電池などにおいて)であることが可能であり、または、放射エネルギーに応答すると共に、印加バイアス電圧を伴って、または、伴わずにシグナルを生成する材料の層(光検出器などにおいて)であることが可能である。光検出器の例としては、光伝導セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタおよび光電管、ならびに、光起電力電池が挙げられ、これらの用語は、Markus,John,Electronics and Nucleonics Dictionary,第470ページおよび第476ページ(McGraw−Hill,Inc.1966年)に記載されているとおりである。
【0085】
a.光活性層
光活性層は上記の光活性組成物を含む。
【0086】
光活性層は、以下に記載のとおり、液体組成物からの液相堆積により形成されることが可能である。いくつかの実施形態において、光活性層は蒸着によって形成される。
【0087】
いくつかの実施形態において、3種の異なる光活性組成物が適用されて、赤色、緑色および青色サブピクセルが形成される。いくつかの実施形態において、有色サブピクセルの各々は、本明細書に記載の新規の光活性組成物を用いて形成される。いくつかの実施形態において、第1および第2のホスト材料は、すべての色について同一である。
【0088】
b.他の素子層
素子中の他の層は、このような層において有用であると公知である任意の材料で形成されることが可能である。
【0089】
陽極110は、陽電荷キャリアを注入するために特に効率的である電極である。これは、例えば、金属、混合金属、合金、金属酸化物あるいは混合金属酸化物を含有する材料で形成されることが可能であり、または、導電性ポリマー、または、これらの混合物であることが可能である。好適な金属としては、第11族金属、第4〜6族の金属、および、第8〜10族遷移金属が挙げられる。陽極が光透過性である場合には、インジウム−錫−酸化物などの第12、13および14族金属の混合金属酸化物が一般に用いられる。陽極110はまた、「Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer」,Nature,第357巻、第477〜479ページ(1992年6月11日)に記載されているポリアニリンなどの有機材料を含んでいることが可能である。陽極および陰極の少なくとも一方は、生成された光が観察可能であるように少なくとも部分的に透明であることが望ましい。
【0090】
バッファ層120は、バッファ材料を含み、特にこれらに限定されないが、下位層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の掃去、ならびに、有機電子素子の性能を促進させるか向上させる他の態様を含む、有機電子素子における1つまたは複数の機能を有し得る。バッファ材料は、ポリマー、オリゴマーまたは小分子であり得る。これらは、蒸着されるか、または、溶液、分散体、懸濁液、エマルジョン、コロイド状混合物、あるいは、他の組成物の形態であり得る液体から堆積され得る。
【0091】
バッファ層は、ポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの、度々プロトン酸でドープされる高分子材料で形成されることが可能である。プロトン酸は、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)等であることが可能である。
【0092】
バッファ層は、銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物等を含んでいることが可能である。
【0093】
いくつかの実施形態において、バッファ層は、少なくとも1種の導電性ポリマーおよび少なくとも1種のフッ素化酸ポリマーを含む。このような材料は、例えば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、米国特許出願公開第2004−0127637号明細書、および、米国特許出願公開第2005/205860号明細書に記載されている。
【0094】
層130用の正孔輸送材料の例は、例えば、Y.Wangによる、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版,第18巻,第837〜860ページ,1996年にまとめられている。正孔輸送分子およびポリマーの両方が用いられることが可能である。通例用いられる正孔輸送分子は:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチル−フェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB)、および、銅フタロシアニンなどのポリフィリン化合物である。通例用いられる正孔輸送ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)−ポリシランおよびポリアニリンである。ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマーに上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることにより正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。いくつかの場合において、トリアリールアミンポリマーが用いられ、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマーが用いられる。いくつかの場合において、ポリマーおよびコポリマーは架橋性である。いくつかの実施形態において、正孔輸送層は、p−ドーパントをさらに含む。いくつかの実施形態において、正孔輸送層はp−ドーパントでドープされる。p−ドーパントの例としては、これらに限定されないが、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)およびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物(PTCDA)が挙げられる。
【0095】
層150に用いられることが可能である電子輸送材料の例としては、これらに限定されないが、トリス(8−ヒドロキシキノレート)アルミニウム(AlQ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)、テトラキス−(8−ヒドロキシキノレート)ハフニウム(HfQ)およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノレート)ジルコニウム(ZrQ)などの金属キノレート誘導体を含む金属キレート化オキシノイド化合物;ならびに、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン;ならびにこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、電子輸送層は、n−ドーパントをさらに含む。n−ドーパントの例としては、これらに限定されないが、Csおよび他のアルカリ金属が挙げられる。
【0096】
陰極160は、電子または陰電荷キャリアを注入するために特に効率的である電極である。陰極は、陽極より低い仕事関数を有する任意の金属または非金属であることが可能である。陰極用の材料は、第1族のアルカリ金属(例えば、Li、Cs)、第2族(アルカリ土類)金属、希土類元素およびランタノイドを含む第12族金属、ならびに、アクチニドから選択されることが可能である。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウムなどの材料、ならびに、組み合わせが用いられることが可能である。Li含有有機金属化合物、LiF、Cs含有有機金属化合物、CsF、Cs2OおよびLi2Oもまた、動作電圧を下げるために有機層と陰極層との間に配置されることが可能である。
【0097】
他の層を備える有機電子素子が公知である。例えば、注入される正電荷の量を制御するために、および/または、層のバンドギャップマッチングをもたらすために、または、保護層として機能するために、陽極110とバッファ層120との間に層(図示せず)が存在していることが可能である。銅フタロシアニン、ケイ素酸化−窒化物、フルオロカーボン、シラン、または、Ptなどの金属の超薄層などの、技術分野において公知である層を用いることが可能である。あるいは、陽極層110、活性層120、130、140、および150、または陰極層160のいくつかまたはすべてが、電荷キャリア輸送効率を高めるために表面処理されることが可能である。構成層の各々についての材料の選択は、素子のエレクトロルミネセンス効率を高めるための放射層における陽電荷および陰電荷のバランスにより決定されることが好ましい。
【0098】
各機能層は、2つ以上の層から形成されることが可能であることが理解される。
【0099】
c.素子作製
素子層は、任意の堆積技術、または、蒸着、液相堆積および熱転写を含む技術の組み合わせにより形成されることが可能である。ガラス、プラスチックおよび金属などの基板が用いられることが可能である。熱蒸発、化学蒸着等などの従来の蒸着技術が用いられることが可能である。有機層は、好適な溶剤中の溶液または分散体から、特にこれらに限定されないが、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールツーロール技術、インクジェット印刷、連続ノズル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等を含む従来のコーティングまたは印刷技術を用いて適用されることが可能である。
【0100】
いくつかの実施形態において、素子は、バッファ層、正孔輸送層および光活性層の液相堆積、ならびに、陽極、電子輸送層、電子注入層および陰極の蒸着により製作される。
【実施例】
【0101】
本明細書に記載のコンセプトを、以下の実施例においてさらに説明するが、これは、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定しない。
【0102】
実施例1
この実施例は、2,9−ジクロロ−4,7−ジフェニル1,10−フェナントロリンのスズキカップリングを用いるフェナントロリン誘導体A2の調製を示す。以下の実施例2Aは、以下に示すホウ酸エステルでのこの中間体の調製の詳細を示す。
【0103】
【化15】

【0104】
2.0gのジクロロ−フェン(5mM)をグローブボックスに取り、4.0g(11mM)ホウ酸エステルを添加する。0.15g Pd2DBA3(0.15mM)、0.1gトリシクロヘキシルホスフィン(0.35mM)および3.75gリン酸カリウム(17mM)を添加し、すべてを30mLジオキサンおよび15mL水中に溶解させる。マントル中のグローブボックス中で、110℃で、1時間混合すると共に加熱し、次いで、一晩、窒素下で穏やかに温める(最低レオスタット設定)。直後の溶液は濃い紫色であるが、約80℃に達すると、これは、黄褐色の茶色のスラリーであるが、徐々に、高密度の沈殿物を伴った清透な茶色になる。溶液が還流(空気式コンデンサ)に供されると、綿状の沈殿物が形成される。グローブボックスから取り出し、さらなる水を添加した後に白色の繊維をジオキサンからろ過することにより冷却およびワークアップする。クロロホルムに溶解させ、次いで、蒸発させ、および、メタノールを添加することにより、オフホワイトの微小な針状にトルエン中に沈殿させる。ろ過により回収すると共に、メタノールでよく洗浄して約3.55gの材料を単離した。構造は、NMR分析により化合物A2と確認された:
【0105】
【化16】

【0106】
化合物A2の特性は以下のとおりであった:
Tg=172℃
光ルミネセンスピーク(トルエン中に2%)=406nm
UV/Visピーク=341,293nm
エレクトロルミネセント発光ピーク=405nm
【0107】
実施例2
この実施例は、2,9−ジクロロ−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンの4−トリフェニルアミノボロン酸でのスズキカップリングを用いた第1のホスト材料A3の調製を示す。
【0108】
パートA:中間体ジクロロバソフェナントロリン化合物、2,9−ジクロロ−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンの調製。
a)Yamadaら、Bull Chem Soc Jpn,63,2710,1990年からの手法を用いて、トリメチレン橋架けバソフェナントロリンを以下のとおり調製し:2gのバソフェナントロリンを20g 1,3−ジブロモプロパン中に取り、空気中で還流させた。約30分後、濃密なオレンジ色のスラリーを冷却した。メタノールを添加して固形分を溶解させ、次いで、アセトンを添加して明るいオレンジ色の固体を沈殿させた。これをろ過し、トルエンおよびジクロロメタンで洗浄し、オレンジ色の粉末を2.8g収率で得た。
【0109】
【化17】

【0110】
b)上記からの2.8gの生成物を12mLの水中に溶解させ、氷冷した21gカリウムフェリシアニドおよび10g水酸化ナトリウムの30mLの水中の溶液に、約30分間かけて滴下し、次いで、90分間攪拌した。これを再度氷冷し、60mLの4M HClで約8のpHに中和した。薄い黄褐色/黄色の固体をろ過し、減圧乾燥させた。ろ過した固体をソックスレーに入れ、クロロホルムで抽出して、茶色の溶液を抽出した。これを蒸発させて茶色がかった油状の固体とし、次いで、少量のメタノールで洗浄して薄い茶色の固体(約1.0g、47%)を得た。材料は、混合物からクロロホルムを蒸発させることにより、金色の板状結晶としてクロロホルム/メタノールから再結晶させることが可能である。構造を以下のジケトンとしてNMRにより識別した。
【0111】
【化18】

【0112】
c)上記ステップ(b)からのジケトンの分量を組み合わせて合計で5.5g(13.6mM)を39mL POCl3中に懸濁させると共に、5.4g PCl5を添加した。これを脱気し、窒素下で8時間還流した。過剰量のPOCl3を蒸発により除去した。氷を添加して残留する塩化物を分解すると共に、混合物をアンモニアで中和した。茶色の沈殿物を回収し、減圧下で乾燥し、一方で、母液は塩化メチレンで抽出した。すべての茶色の材料を組み合わせ、茶色のガムに蒸発させると共に、メタノールを添加した。振盪および攪拌した後、薄い黄色の固体を単離し、これをオフホワイトの針状結晶としてCHCl3およびメタノール(1:10)から再結晶させた。NMRによる分析は、以下のジクロロバソフェナントロリン構造を示した。
【0113】
【化19】

【0114】
パートB:第2のホスト材料A3の調製
パートAからの2.0gのジクロロバソフェナントロリン(5mM)に、3.0g(11mM)p−ジフェニルアミノフェニルボロン酸を添加した。これに、0.15g Pd2DBA3(0.15mM)、0.1gトリシクロヘキシルホスフィン(0.35mM)および3.75gリン酸カリウム(17mM)を添加し、すべてを30mLジオキサンおよび15mL水に溶解させた。これを、100℃のグローブボックス内で1時間混合すると共に加熱し、次いで、一晩、窒素下で穏やかに温めた(最低レオスタット設定)。約80℃に達すると、混合物は黄褐色の茶色のスラリーであり、これは、徐々に、高密度の沈殿物を伴って清透な茶色になった。溶液を還流(空気式コンデンサ)したところ、白色の粉末状の沈殿物が形成された。混合物を冷却すると共に、グローブボックスから取り出した。ジオキサンを蒸発により除去すると共に、追加の水を添加した。明るい茶色のゴム状の固体をろ過により単離すると共に、水で洗浄した。固体は、トルエンおよびジクロロメタン中に良好に溶解した。この生成物は化合物A3であった。
【0115】
【化20】

【0116】
実施例3
第2のホスト化合物A1を、実施例2と同様の手法を用いて、2,9−ジクロロ−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンのフェニルボロン酸とのスズキカップリングを用いて調製した。
【0117】
実施例4
ドーパント材料C10を、米国特許第6,670,645号明細書に記載のものと同様の手法を用いて調製した。
【0118】
実施例5
この実施例は、OLED素子の製作および性能を示す。以下の材料を用いた。
陽極=インジウム錫酸化物(ITO):180nm
バッファ層=バッファ1(70nm)(これは、導電性ポリマーおよび高分子フッ素化スルホン酸の水性分散体である)。このような材料は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書および米国特許出願公開第2005/0205860号明細書に記載されている。
【0119】
正孔輸送層=NPB(30nm)
光活性層=12.5:1ホスト:ドーパントC10、表1に表記(43nm)
電子輸送層=金属キノレート誘導体(30nm)
電子注入層(EIL)=表1に表記
陰極=Al(0.5/100nm)
【0120】
バッファ材料は、スピンコーティングにより適用した。他の層は蒸着により適用した。
【0121】
素子構造が表1にまとめられている。結果が以下の表2にまとめられている。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
上記データに見ることが可能であるとおり、本明細書に記載の光活性組成物を有する素子はかなり高い効率を有する。
【0125】
概要または実施例において上記されている作業のすべてが必要とされているわけではなく、特定の作業の一部分が必要でない場合があり、および、1つまたは複数のさらなる作業が記載されたものに追加して実施されてもよいことに注目すべきである。さらに、作業が列挙されている順番は、これらが実施される順番では必ずしもない。
【0126】
前述の明細書において、特定の実施形態を参照してコンセプトを記載してきた。しかしながら、技術分野における当業者は、以下の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および変形をなすことが可能であることを理解している。従って、明細書および図面は、限定的ではなく、例示的であるとみなされるべきであり、すべてのこのような変更は発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0127】
有益性、他の利点および問題に対する解法が、特定の実施形態に関して上述されている。しかしながら、有益性、利点、問題に対する解法、および、利益、利点あるいは解法のいずれかを生じさせ得るか、もしくは、より顕著とさせ得るいずれかの特性は、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての決定的な、必要な、または、必須の特性としては解釈されるべきではない。
【0128】
明確さのために本明細書において個別の実施形態の文脈に記載されている一定の特性はまた、単一の実施形態において組み合わせで提供され得ることが認められるべきである。反対に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈に記載されている種々の特性はまた、個別にまたは任意のサブコンビネーションで提供され得る。さらに、範囲で記載されている値の参照は、その範囲内の値の各々およびすべてを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェナントロリン誘導体を含む第1のホスト材料;(b)芳香族アミンを含む第2のホスト材料;および、(c)エレクトロルミネセントドーパント材料を含み;第1のホスト材料対第2のホスト材料の重量比が99:1〜50:50の範囲内であることを特徴とする光活性組成物。
【請求項2】
前記第1のホストが、式I:
【化1】

(式中:
1〜R4は、同一でまたは異なり、および、Hおよびアリールからなる群から選択され;
ならびに、R1〜R4の少なくとも2つがアリールである)
を有することを特徴とする請求項1に記載の光活性組成物。
【請求項3】
1〜R4が、ナフチル、ナフチルフェニル、フェニルナフチル、カルバゾリル、カルボゾリルフェニル、トリフェニルアミノ、アリールアントラセニル、および、式IIを有する基:
【化2】

(式中:
5は、各出現毎で同一または異なり、およびD、アルキル、アルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
aは、各出現毎で同一または異なり、および0〜4の整数であり;
bは、各出現毎で同一または異なり、および0〜5の整数であり;ならびに
mは、各出現毎で同一または異なり、および0〜6の整数である)
からなる群から独立して選択されることを特徴とする請求項2に記載の光活性組成物。
【請求項4】
前記芳香族アミンが、−5.4eV±0.2eVのHOMOレベルを有することを特徴とする請求項1に記載の光活性組成物。
【請求項5】
前記芳香族アミンが、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA);4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル(CBP)、1,3−ジ−(9−カルバゾリル)ベンゼン(mCP);ならびに4,4’,4”−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−TDATA)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の光活性組成物。
【請求項6】
前記ドーパントがリン光材料であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ドーパント材料がIrのシクロメタレート化錯体であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
陽極;
正孔輸送層;
光活性層;
電子輸送層;ならびに
陰極;
を含む有機発光素子であって、前記発光層が:(a)フェナントロリン誘導体を含む第1のホスト材料;(b)芳香族アミンを含む第2のホスト材料;および、(c)エレクトロルミネセントドーパント材料を含み;第1のホスト材料対第2のホスト材料の重量比が99:1〜50:50の範囲内である有機発光素子。
【請求項9】
前記第1のホストが
式I:
【化3】

(式中:
1〜R4は、同一または異なり、および、Hおよびアリールからなる群から選択され;
ならびに、R1〜R4の少なくとも2つがアリールである)
を有することを特徴とする請求項8に記載の素子。
【請求項10】
1〜R4が、ナフチル、ナフチルフェニル、フェニルナフチル、カルバゾリル、カルボゾリルフェニル、トリフェニルアミノ、アリールアントラセニル、および、式IIを有する基:
【化4】

(式中:
5は、各出現毎で同一または異なり、およびD、アルキル、アルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
aは、各出現毎で同一または異なり、および0〜4の整数であり;
bは、各出現毎で同一または異なり、および0〜5の整数であり;ならびに
mは、各出現毎で同一または異なり、および0〜6の整数である)
からなる群から独立して選択されることを特徴とする請求項9に記載の素子。
【請求項11】
1〜R4が、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、フェナントリル、ナフチルフェニル、フェナントリルフェニル、カルバゾリル、およびカルバゾリルフェニルからなる群から独立して選択されることを特徴とする請求項9に記載の素子。
【請求項12】
前記芳香族アミンが、−5.4eV±0.2eVのHOMOレベルを有することを特徴とする請求項8に記載の素子。
【請求項13】
前記芳香族アミンが、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチル−フェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(NPB)、および4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA);4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル(CBP)、1,3−ジ−(9−カルバゾリル)ベンゼン(mCP);ならびに4,4’,4”−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−TDATA)からなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の素子。
【請求項14】
前記ドーパントがリン光材料であることを特徴とする請求項8に記載の素子。
【請求項15】
前記ドーパント材料がIrのシクロメタレート化錯体であることを特徴とする請求項14に記載の素子。

【図1】
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【公表番号】特表2012−513680(P2012−513680A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542577(P2011−542577)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/069240
【国際公開番号】WO2010/075411
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】