説明

光源の配光特性測定装置

【課題】 簡素且つ省スペースな装置構成でありながら、十分な角度分解能が得られる、光源の配光特性測定装置を提供する。
【解決手段】 光源11の配光特性測定装置1であって、所望の角度分解能に応じて、可変アパチャー15の開口径を変化させるか、又は移動機構19により光源11及び積分球13の少なくとも一方を移動させるかする毎に、光強度検出器21により積分球13の射出側開口13bからの射出光の強度を検出させる動作を、扇形回転アパチャー17を中心角ずつ回転させる毎に繰り返し、得られた検出結果を用いて、光源11の3次元配光特性を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源の基本特性である配光特性を測定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光源の配光特性の測定においては、光源から射出する光の強度を広い立体角範囲、例えば半球面座標系の立体角範囲の配光特性を測定する必要があった。具体的には、3次元ゴニオフォトメータや変角光度計を用いて、光源の周りを測定用受光器(受光素子)で以てスキャンすることにより行われており、その場合、光源が点光源として見なし得る程度に、光源と受光器との間の距離を大きく取る必要があった。
【0003】
しかしながら、このような従来の技術では、受光器でスキャンするための機構が大きくなる。特に、光源のサイズが大きい場合や、配光の角度分解能を上げる場合には、光源と受光器との距離をより離す必要がある。このため、受光器を駆動させる装置のサイズを大きくしなければならない。このような測定空間の拡大に伴う装置の大型化は、コストの増大につながる。また、従来の技術では、3次元配光特性を測定するために、受光器を2方向に移動させなければならなかった。なお、ここで言う2方向とは、例えば、発光面の正面方向をZ軸としたとき、このZ軸を中心として受光器を回転させる円周方向と、Z軸の方向に受光器を移動させる軸方向である。
【0004】
このような問題を解決するものとして、発光面の正面方向のZ軸に対して、予め異なる放射方向角度に対向する位置に複数の受光器を配設した測定装置が、特許文献1に開示されている。この装置では、受光器の移動は円周方向の一方向360度回転のみであるが、やはり3次元配光特性測定装置として大きなスペースを必要としていた。
【0005】
そこで、測定空間を小さくした測光装置が、特許文献2に開示されている。この装置では、複数個の輝度計の各光軸が1点(点P)で交わるように、放射状に配置されている。また、個々の輝度計に対応した鏡面が、光源と点Pとを焦点とする楕円上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−172665号公報
【特許文献2】特開平7−294328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記文献2に記載の測光装置では、上述のように鏡面が楕円上に配置されているため、鏡面の位置によって光の反射角が異なる。したがって、反射率の入射角度依存性が配光測定の誤差となる。また、複数個の輝度計を配列させているので、測定装置の小型化に関しては自ら制限がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、簡素且つ省スペースな装置構成でありながら、十分な角度分解能が得られる、光源の配光特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するため、本発明は、発光面が円形である光源の3次元配光特性を測定する装置であって、前記光源からの光を内部に導入するための入射側開口と、前記入射側開口から導入した光が内部で拡散反射を繰り返した結果、入射開口角に関わらず常に射出方位が等しい光として射出する射出側開口とが形成された積分球と、前記積分球の前記射出側開口から射出された光の強度を検出する光強度検出器と、前記積分球の前記入射側開口に設けられ、開口径が可変な可変アパチャーと、前記積分球の前記入射側開口の前記可変アパチャーの直前あるいは直後に設けられ、所望の角度分解能と等しい大きさの中心角を持つ扇形の開口部の頂点を中心に回転可能な扇形回転アパチャーと、前記光源及び前記積分球の少なくとも一方を移動して、前記光源から前記積分球の前記入射側開口までの距離を変化させることが可能な移動機構と、前記可変アパチャーの開口径の可変制御、前記扇形回転アパチャーの回転制御、前記移動機構による前記光源及び前記積分球の少なくとも一方の移動制御及び前記光強度検出器による光の強度を検出させるタイミングの制御を行うコントローラと、前記コントローラにより、所望の角度分解能に応じて、前記可変アパチャーの開口径を変化させるか、又は前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方を移動させるかする毎に、前記光強度検出器により前記積分球の前記射出側開口からの射出光の強度を検出させる動作を、前記扇形回転アパチャーを前記中心角ずつ回転させる毎に繰り返し、得られた検出結果を用いて、前記光源の3次元配光特性を求める。
【0010】
なお、本発明に係る光源の配光特性測定装置においては、前記可変アパチャーの開口径の大きさを、最小径から所望の角度分解能に基づくピッチで徐々に拡大し、配光特性測定範囲内で最大径に達すると、この動作を前記可変アパチャーに繰り返させる可変アパチャー制御手段と、前記可変アパチャーの開口径の大きさが前記最大径に達する毎に、前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方を互いが近づく方向に前記所望の角度分解能に基づくピッチで移動させ、この動作を前記光源と前記積分球の前記入射側開口とが接するまで繰り返す移動機構制御手段と、前記光源と前記積分球の前記入射側開口とが接する毎に、前記扇形回転アパチャーを前記中心角の大きさずつ回転させ、この動作を配光特性測定範囲内で端部に達するまで繰り返す扇形回転アパチャー制御手段と、前記可変アパチャーの開口径の大きさが変化する毎に、前記開口径の大きさを検出する第1の検出器と、前記扇形回転アパチャーが回転する毎に、前記扇形の開口部の位置を検出する第2の検出器と、前記光源及び前記積分球の少なくとも一方が移動する毎に、前記光源から前記積分球の前記入射側開口までの距離を検出する第3の検出器と、前記第1〜第3の検出器のいずれかが検出作動する毎に、前記積分球の前記射出側開口から射出した光の強度を検出する前記光強度検出器と、前記第1の検出器により検出された前記可変アパチャーの開口径の大きさ、前記第2の検出器により検出された前記扇形回転アパチャーの扇型開口部の位置、前記第3の検出器により検出された前記光源から前記積分球の前記入射側開口までの距離及びこれらが検出されたときに前記光強度検出器により検出された光強度から、前記光源の3次元配光特性を求めるデータ処理装置とを有する。
【0011】
さらに、本発明に係る光源の配光特性測定装置において、前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方が移動する方向は、前記光源から射出される光の光軸方向と平行である。なお、本発明における光軸を、光源の発光面中心を通り、且つ光源の発光面に対して垂直な直線と定義する。
【0012】
また、本発明に係る光源の配光特性測定装置において、前記可変アパチャー及び前記扇形回転アパチャーは、前記積分球の前記入射側開口に、前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方が移動する方向に対して垂直になるように設けられている。
【0013】
また、本発明に係る光源の配光特性測定装置において、前記光源に形成されている光を射出するための発光面の中心、前記可変アパチャーの開口中心及び前記扇形回転アパチャーの回転中心は、前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方が移動する方向と平行な直線上にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡素且つ省スペースな装置構成でありながら、十分な角度分解能が得られる、光源の配光特性測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る光源の配光特性測定装置の断面構成図である。
【図2】配光特性を表す座標系の説明図である。
【図3】本実施形態に係る光源の配光特性測定装置により検出された、ある方位角における配光特性を表す図である。
【図4】光源から可変アパチャーに至るまでの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。本実施形態に係る光源の3次元配光特性測定装置1は、図1に示すように、測定対象である光源11と、入射側開口13aと射出側開口13bとが形成された積分球13と、可変アパチャー15と、扇形回転アパチャー17と、移動機構19と、光強度検出器21と、第1の検出器23と、第2の検出器25と、第3の検出器27と、コントローラ29と、データ処理装置31とを有する。
【0017】
光源11は、円形の発光面11aが積分球13の入射側開口13aに向けて設置されている。また、可変アパチャー15の開口部の最大径及び積分球13の入射側開口13aの開口径のうちの小さい方の径よりも、円形の発光面11aの径の大きさは小さい。
【0018】
積分球13は、光源11からの光を内部に導入するための入射側開口13aと、入射側開口13aから導入した光が内部で拡散反射を繰り返し、その結果(積分球13内に導入される光の)入射開口角θに関わらず常に射出方位が等しい光として射出する射出側開口13bとを有する。
【0019】
可変アパチャー15は、積分球13の入射側開口13aに設けられ、開口径の大きさを変化させることが可能である。
【0020】
扇形回転アパチャー17は、積分球13の入射側開口13aに可変アパチャー15と重なるように設けられ、所望の(後述する方位角方向の)角度分解能と等しい大きさの中心角ωを有する扇形の開口部の頂点を中心に回転させることが可能である。なお、扇形回転アパチャー17の扇形開口部の半径は、可変アパチャー15の開口部の最大径よりも大きい。また、扇形中心角ωは、小さく設定するほど、(後述する方位角方向における)角度分解能が高い測定を行うことが可能である。
【0021】
なお、可変アパチャー15及び扇形回転アパチャー17は、いずれも積分球13の入射側開口13aに、移動機構19により光源11及び積分球13の少なくとも一方が移動する方向(すなわち光軸方向)に対して垂直になるように設けられている。
【0022】
移動機構19は、光源11及び積分球13の少なくとも一方を移動させ、光源11から積分球13の入射側開口13aまでの距離を変化させることが可能である。
【0023】
光強度検出器21は、第1の検出器23,第2の検出器25及び第3の検出器29のいずれかが検出作動する毎に、積分球13の射出側開口13bから射出した光の強度を検出する。
【0024】
第1の検出器23は、可変アパチャー15の開口径の大きさが変化する毎に、開口径の大きさを検出する。
【0025】
第2の検出器25は、扇形回転アパチャー17が回転する毎に、扇形の開口部の位置を検出する。
【0026】
第3の検出器27は、光源11及び積分球13の少なくとも一方が移動する毎に、光源11から積分球13の入射側開口13aまでの距離を検出する。
【0027】
コントローラ29は、可変アパチャー制御部29aと、移動機構制御部29bと、扇形回転アパチャー制御部29cとを有する。
【0028】
可変アパチャー制御部29aは、可変アパチャー15の開口径の大きさを、最小径から後述の方法で算出した所望の(後述する配光角方向の)角度分解能に基づくピッチΔApで徐々に拡大し、配光特性測定範囲内で最大径に達すると、この動作を可変アパチャー15に繰り返させる制御を行う。
【0029】
移動機構制御部29bは、可変アパチャー15の開口径の大きさが最大径に達する毎に、移動機構19により光源11及び積分球13の少なくとも一方を、互いが近づく方向に後述の方法で算出した所望の(後述する配光角方向の)角度分解能に基づくピッチΔDで移動させ、この動作を光源11と積分球13の入射側開口13aとが接するまで繰り返させる制御を行う。
【0030】
扇形回転アパチャー制御部29cは、光源11と積分球13の入射側開口13aとが接する毎に、扇形回転アパチャー17を(所望の角度分解能と等しい大きさの)中心角ωずつ回転させ、この動作を扇形回転アパチャー17に配光特性測定範囲内で端部に達するまで繰り返させる制御を行う。
【0031】
データ処理装置31は、第1の検出器23により検出された可変アパチャー15の開口径の大きさ、第2の検出器25により検出された扇形回転アパチャー17の扇型開口部の位置、第3の検出器27により検出された光源11から積分球13の入射側開口までの距離、及びこれらが検出されたときに光強度検出器21により検出された光強度から、後述の方法により光源11の3次元配光特性を求める。
【0032】
画面表示装置33は、データ処理装置31により導出された光源11の配光特性の測定結果等を表示する。
【0033】
なお、本実施形態において配光特性を求めるにあたり、図2に示すように、積分球13及び光源11の移動方向(光源11の光軸方向)を基準軸として、この基準軸に交差するある面(検出面)における角度θ(以下、配光角θとも称する)と、その平面の傾きα(以下、方位角αとも称する)で、各輝度を測定する。また、測定可能な角度範囲として、光源11の正面から真横まで(θ=0〜90°)、周方向は全周(α=0〜360°)が設定されている。なお、以下において、積分球13及び光源11の移動方向に対して垂直な面上における検出方位αには、扇形回転アパチャー17の回転方位角αが対応するとともに、前記検出面内における配光角θには、積分球13内に導入される光11の入射開口角θが対応する。
【0034】
続いて、上記構成の配光特性測定装置1による光源11の配光特性の測定方法について説明する。なお、測定にあたって、光源11の発光面11aの中心、可変アパチャー15の開口中心及び扇形回転アパチャー17の回転中心は、移動機構19により光源11及び積分球13の少なくとも一方が移動する方向(すなわち光軸方向)と平行な直線上にあるように調整しておく。また、移動機構19において、光源11及び積分球13の移動方向が、光源11の発光面11aから射出される光の光軸方向に対して平行になるように、常に調整しておく。
【0035】
配光特性測定装置1では、光源11の発光面11aを通って射出した光の一部は、積分球13の入射側開口13aに設けられた扇形回転アパチャー17及び可変アパチャー15を順に通過し、積分球13内に導入される(図1参照)。
【0036】
コントローラ29により、可変アパチャー15の開口部の径の大きさを、所望の配光角分解能に基づき算出された後述のピッチΔApで無限小から徐々に広げてゆくことで、積分球13内に導入される光源11からの光の入射開口角θは所望の配光角分解能ずつ大きくなり、その都度(各角度において)光強度検出器21に積分球13の射出側開口13bから射出する光の強度を検出させる。そして、検出した結果を用いて、データ処理装置31は、後述の方法により相対配光強度を求める。以上の作業を、可変アパチャー15の開口部の径の大きさが、積分球13の入射側開口13aの径と等しくなるか、あるいは積分球13の入射側開口13aの径以下であり且つ可変アパチャー15の最大径になるまで繰り返す。
【0037】
次に、コントローラ29により、移動機構19により光源11及び積分球13の少なくともどちらか一方を、互いが近づく方向に所望の配光角分解能に基づき算出された後述のピッチΔDで徐々に移動させてゆくことで、積分球13内に導入される光源11からの光の入射開口角θは所望の配光角分解能ずつ大きくなり、その都度(各角度において)光強度検出器21に積分球13の射出側開口13bから射出する光の強度を検出させる。そして、検出した結果を用いて、データ処理装置31は、後述の方法により相対配光強度を求める。以上の動作を、積分球13の入射側開口13a(の扇形回転アパチャー17)と光源11とが接するまで、すなわち積分球13への入射開口角θが90°になるまで繰り返す。
【0038】
このように求めた配光強度を、そのときの配光角毎にプロットすれば、図3に示すような、ある方位角αにおける配光特性のグラフを得ることができる。
【0039】
以上一連の動作を、扇形回転アパチャー17を中心角ω(方位角分解能)ずつ回転させる毎に、配光特性測定範囲内で端部(例えばα=360°)に達するまで行わせることで、光源11の全周に亘り隈なく配光特性を導出することが可能である。
【0040】
ここで、図4を用いて、可変アパチャー制御部29aで用いる、上述した可変アパチャー15の開口径の変化ピッチΔApを導出する方法について説明する。光源11の発光面11aの径の大きさをAsとし、積分球13内に導入される光源11からの光の入射開口角をθとし、(積分球13の入射側開口13aに設けられた)可変アパチャー15の開口径の大きさをApとし、光源11から積分球13の入射側開口13aまでの距離をDとしたとき、以下の(1)式のように、幾何学的関係から可変アパチャー15の径Apをθの関数として表すことができる。
【0041】
Ap=2Dtanθ+As …(1)
【0042】
ここで知りたいのは、積分球13内に導入される光源11からの光の入射開口角θが、所望の配光角分解能θrだけ変化したときの、可変アパチャー15の径Apの変化量ΔApであり、これは以下のように(2)式で表すことができる。
【0043】

【0044】
この(2)式に、配光角分解能θr、入射開口角θ及びこれらに対応する光源11から積分球13の入射側開口13aまでの距離Dの値を代入すれば、可変アパチャー15の径の変化ピッチΔApの具体的な値を求めることができる。
【0045】
次に、図4を用いて、移動機構制御部29bで用いる、上述した光源11から積分球13の入射側開口13aまでの距離の変化ピッチΔDを導出する方法について説明する。光源11から積分球13の入射側開口13aまでの距離をDとしたとき、以下の(3)式のように、幾何学的関係からこの距離Dをθの関数として表すことができる。
【0046】

【0047】
ここで知りたいのは、積分球13内に導入される光の入射開口角θが、所望の配光角分解能θrだけ変化したときの、光源11から積分球13の入射側開口13aまでの距離Dの変化量ΔDであり、これは以下のように(4)式で表すことができる。
【0048】

【0049】
この(4)式に、配光角分解能θr、入射開口角θ、これらに対応する可変アパチャー15の径Ap及び光源11の発光面11aの径Asの値を代入すれば、光源11から積分球13の入射側開口13aまでの距離の変化ピッチΔDの具体的な値を求めることができる。
【0050】
続いて、データ処理装置31において、光強度検出器21により検出された積分球13の射出光強度から、相対的な配光強度を導出する方法について説明する。光源11からの光の積分球13への入射開口角がθであった場合において光強度検出器21で検出された光の強度Iθと、前記入射開口角θから配光角分解能θr分だけ増加した角度において検出された光の強度Iθ+θrとの差が、扇形回転アパチャー17で指定された方位αの配光角θにおける放射束に相当する。但し、配光特性は配光角毎の輝度、すなわち単位面積当たりの放射束で定義される。よって、光強度の差(Iθ+θr−Iθ)を、入射開口角θが配光角分解能θrだけ変化したときの受光立体角(受光面積)の変化量で除する必要がある。
【0051】
なお、受光立体角Ωは、積分球13内に導入される光源11からの光の入射開口角をθとし、扇形回転アパチャー17の扇形中心角をωとしたとき、以下の(5)式のように表すことができる。
【0052】

【0053】
ゆえに、入射開口角θが、所望の配光角分解能θrだけ変化したときの、受光立体角の変化量ΔΩは、以下の(6)式で表すことができる。
【0054】

【0055】
よって、配光強度を得るためには、上記したように光強度の差(Iθ+θr−Iθ)を受光立体角の変化量ΔΩで除すればいいのだが、ここで知りたいのは「相対的な」配光強度であるため、上記(6)式からθに依存しない部分を定数として省いたものをとしたとき、以下の(7)式により、配光角θにおける相対配光強度を求めることができる。
【0056】

【0057】
この(7)式に、配光角分解能θrと、入射開口角θと、これらに対応する検出強度Iθ(Iθ+θr)の値をそれぞれ代入すれば、配光角θにおける相対配光強度Iθrを具体的に求めることができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る配光特性測定装置によれば、光源と検出器との間に積分球を配置することにより、光源の配光方位に検出器(の検出面)の位置や向きが依存しなくなるため、従来のように測定角度や測定位置に応じて、検出器(の検出面)を移動させたり、複数設置したりする必要がない。よって、測定装置を簡素化・小型化できる。また、扇形回転アパチャー径の変化及び積分球と光源のうちどちらか一方を直線移動させるのみで、配光特性をスキャンすることができる。よって、駆動機構が単純になる。さらに、配光角分解能は、光強度を検出する検出器の受光面積に制限されず、積分球から光源までの距離の計測精度及び扇形回転アパチャー径の計測精度に依存するだけであるため、高分解能な測定が可能となる。
【0059】
すなわち、本実施形態によれば、簡素且つ省スペースな装置構成でありながら、十分な角度分解能が得られる、光源の配光特性測定装置を達成できる。
【0060】
ここまで本発明を分かりやすくするために、実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0061】
例えば、本実施形態に係る光源の配光特性測定装置においては、配光角θが0°の状態から所望の角度分解能ずつ大きくなるように操作しているが、配光角θが90°の状態から所望の角度分解能ずつ小さくなるように逆の操作を行ってもよい。
【0062】
また、本実施形態に係る光源の配光特性測定装置においては、可変アパチャー15の開口部の径の大きさをピッチΔApで変化させた後に、光源11から積分球13までの距離がピッチΔDで変化するように操作しているが、これに限定されず逆の操作、すなわち光源11から積分球13までの距離をピッチΔDで変化させた後に、可変アパチャー15の開口部の径の大きさをピッチΔApで変化させてもよい。
【0063】
また、本実施形態に係る光源の配光特性測定装置においては、可変アパチャー15及び扇形回転アパチャー17を積分球13の入射側開口13aに設置する際に、どちらが光源11a側に設置されても構わない。
【0064】
また、本実施形態に係る光源の配光特性測定装置においては、光強度検出器21を積分球13に対して固定して取り付けるのではなく、バンドルファイバーなどを介して積分球13の射出側開口13bから射出される光を光強度検出器に導入するように構成してもよい。この構成により、例えば光強度検出器が大きく、取り付けや移動が困難な場合に、積分球13のみを移動させることが可能となり、利便性が向上する。
【符号の説明】
【0065】
1 配光特性測定装置
11 光源
11a 発光面
13 積分球
13a 入射側開口
13b 射出側開口
15 可変アパチャー
17 扇形回転アパチャー
19 移動機構
21 光強度検出器
23 第1の検出器
25 第2の検出器
27 第3の検出器
29 コントローラ
29a 可変アパチャー制御部
29b 移動機構制御部
29c 扇形回転アパチャー制御部
31 データ処理装置
33 画面表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光面が円形である光源の3次元配光特性を測定する装置であって、
前記光源からの光を内部に導入するための入射側開口と、前記入射側開口から導入した光が内部で拡散反射を繰り返した結果、入射開口角に関わらず常に射出方位が等しい光として射出する射出側開口とが形成された積分球と、
前記積分球の前記射出側開口から射出された光の強度を検出する光強度検出器と、
前記積分球の前記入射側開口に設けられ、開口径が可変な可変アパチャーと、
前記積分球の前記入射側開口の前記可変アパチャーの直前あるいは直後に設けられ、所望の角度分解能と等しい大きさの中心角を持つ扇形の開口部の頂点を中心に回転可能な扇形回転アパチャーと、
前記光源及び前記積分球の少なくとも一方を移動して、前記光源から前記積分球の前記入射側開口までの距離を変化させることが可能な移動機構と、
前記可変アパチャーの開口径の可変制御、前記扇形回転アパチャーの回転制御、前記移動機構による前記光源及び前記積分球の少なくとも一方の移動制御及び前記光強度検出器による光の強度を検出させるタイミングの制御を行うコントローラと、
前記コントローラにより、所望の角度分解能に応じて、前記可変アパチャーの開口径を変化させるか、又は前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方を移動させるかする毎に、前記光強度検出器により前記積分球の前記射出側開口からの射出光の強度を検出させる動作を、前記扇形回転アパチャーを前記中心角ずつ回転させる毎に繰り返し、得られた検出結果を用いて、前記光源の3次元配光特性を求めることを特徴とする配光特性測定装置。
【請求項2】
前記可変アパチャーの開口径の大きさを、最小径から所望の角度分解能に基づくピッチで徐々に拡大し、配光特性測定範囲内で最大径に達すると、この動作を前記可変アパチャーに繰り返させる可変アパチャー制御手段と、
前記可変アパチャーの開口径の大きさが前記最大径に達する毎に、前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方を互いが近づく方向に所望の角度分解能に基づくピッチで移動させ、この動作を前記光源と前記積分球の前記入射側開口とが接するまで繰り返す移動機構制御手段と、
前記光源と前記積分球の前記入射側開口とが接する毎に、前記扇形回転アパチャーを前記中心角の大きさずつ回転させ、この動作を配光特性測定範囲内で端部に達するまで繰り返す扇形回転アパチャー制御手段と、
前記可変アパチャーの開口径の大きさが変化する毎に、前記開口径の大きさを検出する第1の検出器と、
前記扇形回転アパチャーが回転する毎に、前記扇形の開口部の位置を検出する第2の検出器と、
前記光源及び前記積分球の少なくとも一方が移動する毎に、前記光源から前記積分球の前記入射側開口までの距離を検出する第3の検出器と、
前記第1〜第3の検出器のいずれかが検出作動する毎に、前記積分球の前記射出側開口から射出した光の強度を検出する前記光強度検出器と、
前記第1の検出器により検出された前記可変アパチャーの開口径の大きさ、前記第2の検出器により検出された前記扇形回転アパチャーの扇型開口部の位置、前記第3の検出器により検出された前記光源から前記積分球の前記入射側開口までの距離及びこれらが検出されたときに前記光強度検出器により検出された光強度から、前記光源の3次元配光特性を求めるデータ処理装置とを有することを特徴とする請求項1に記載の光源の配光特性測定装置。
【請求項3】
前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方が移動する方向は、前記光源から射出される光の光軸方向と平行であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源の配光特性測定装置。
【請求項4】
前記可変アパチャー及び前記扇形回転アパチャーは、前記積分球の前記入射側開口に、前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方が移動する方向に対して垂直になるように設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光源の配光特性測定装置。
【請求項5】
前記光源に形成されている光を射出するための発光面の中心、前記可変アパチャーの開口中心及び前記扇形回転アパチャーの回転中心は、前記移動機構により前記光源及び前記積分球の少なくとも一方が移動する方向と平行な直線上にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光源の配光特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−7951(P2012−7951A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143028(P2010−143028)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】