説明

光源装置およびそれを備えた内視鏡装置

【課題】射出光の色を切り替え可能な小型の光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置10は、第1の半導体レーザー22Aと、第2の半導体レーザー22Bと、蛍光体ユニット62とを有している。第1の半導体レーザー22Aは、波長460nmの青色光を発し、第2半導体レーザー22Bは、波長415nmの青紫色光を発する。蛍光体ユニット62は、第1の半導体レーザー22Aの発する青色光を吸収して波長530nm程度の光を発するが、第2半導体レーザー22Bの発する青紫色光はほとんど透過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、内視鏡装置では、白色光による通常観察に加えて、特定の波長の光を用いて病変部などの視認性を向上させた観察手法いわゆる特殊光観察が行われている。このような機能を有する内視鏡装置は、具体的には通常観察のための白色光と特殊光観察のための特殊光とを切り替えて内視鏡先端部から射出するように構成されている。
【0003】
特開2006−026128号公報は、このような内視鏡装置用の光源装置のひとつを開示している。この光源装置では、光偏向素子を含むユニットをスライドさせて、光偏向素子を光路上に適宜配置することによって、観察光と特殊光との切り替え、言い換えれば射出光の色の切り替えを実施している。
【特許文献1】特開2006−026128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の光源装置では、観察光と特殊光との切り替えをユニットのスライドによって実施するため、ユニットをスライドさせる機械的な機構が必要であり、これが装置の大型化・複雑化を招いている。
【0005】
本発明は、このような実状を考慮してなされたものであり、その目的は、射出光の色を切り替え可能な小型の光源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による光源装置は、第1の波長領域の光を発する第1の半導体光源と、前記第1の波長領域と異なる前記第2の波長領域の光を発する第2の半導体光源と、前記第1の波長領域の光を吸収して前記第1および第2の波長領域のいずれとも異なる第3の波長領域の光を発し、かつ、前記第2の波長領域の光をほとんど透過する波長変換部とを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、射出光の色を切り替え可能な小型の光源装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態による光源装置を示している。図1に示すように、光源装置10は、第1の光源部20Aと、第2の光源部20Bと、第1の光源部20Aから射出される光を導波する光ファイバー30Aと、第2の光源部20Bから射出される光を導波する光ファイバー30Bと、光ファイバー30Aおよび光ファイバー30Bと接続された光カプラー40と、光カプラー40から出力される光を導波する光ファイバー50と、光ファイバー50により導波された光に応じた照明光を発する波長変換部60とを有している。
【0010】
第1の光源部20Aは、第1の半導体レーザー22Aと、第1の半導体レーザー22Aから発せられる発散性の光を収束させるレンズ24と、レンズ24により収束された光を光ファイバー30Aに光学的に結合する結合素子26とを有している。同様に、第2の光源部20Bは、第2の半導体レーザー22Bと、第2の半導体レーザー22Bから発せられる発散性の光を収束させるレンズ24と、レンズ24により収束された光を光ファイバー30Aに光学的に結合する結合素子26とを有している。
【0011】
光源装置10は、第1の半導体レーザー22Aの発光・消灯すなわちオン・オフを独立に切り替える駆動回路82Aと、第2の半導体レーザー22Bの発光・消灯すなわちオン・オフを独立に切り替える駆動回路82Bとをさらに有している。
【0012】
光カプラー40は、2つの入射端と1つの射出端とを有する2入力1出力タイプの光ファイバーカプラー42で構成されている。光ファイバーカプラー42の一方の入射端は光ファイバー30Aを介して第1の光源部20Aと光学的に結合されている。光ファイバーカプラー42のもう一方の入射端は光ファイバー30Bを介して第2の光源部20Bと光学的に結合されている。光ファイバーカプラー42の射出端は光ファイバー50を介して波長変換部60と光学的に結合されている。
【0013】
なお、ここで言う光カプラーとは、複数の入射端からの光を、少なくとも一つの出射端へ光学的に接続するものであり、機械的な接続形態について何ら限定するものではない。例えば、2本以上の光ファイバーの被覆の一部を各々除去し、これらを接触させた状態で加熱、押圧することにより、光ファイバーのコア部を結合したものでもよいし、平行に配置した複数の光ファイバーの端部に、対向して配置した別の光ファイバーの端部を接触させ、加熱により結合したものでもよい。これら二つの例では、結合部を光カプラーの一部と言うこともできるし、結合部そのものを光カプラーと言うこともできる。いずれの場合も、入射光を結合部に導光する入射側の光ファイバーを、光カプラーの入射端に接続された入射側光ファイバーと呼び、また、結合部から出射する光を出射端に導光する出射側の光ファイバーを、光カプラーの出射端に接続する射出側光ファイバーと呼ぶことができる。
【0014】
第1の半導体レーザー22Aは、波長460nmの青色のレーザー光を発し、第2半導体レーザー22Bは、波長415nmの青紫色のレーザー光を発する。波長変換部60は、Ce(セリウム)賦活のYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)(以下、YAG:Ceと記す)の蛍光体を含む蛍光体ユニット62で構成されている。YAG:Ceのスペクトル特性を図2に示す。図2において、破線はYAG:Ceの吸収スペクトルを示し、実線は発光スペクトルを示している。図2に示す通り、YAG:Ceの吸収スペクトルは、460nm付近にピークを有している。ここで、吸収スペクトルの吸収領域は、蛍光体の吸収スペクトルの吸収強度が、ピーク値の半分以上である波長領域であると定義する。YAG:Ceの吸収スペクトルの吸収領域は、おおよそ430nm〜480nmである。蛍光体ユニット62は、第1の半導体レーザー22Aの発する波長460nmの青色光を吸収して波長530nm程度の光を発するが、第2半導体レーザー22Bの発する波長415nmの青紫色光はほとんど透過する。
【0015】
次に、本実施形態による光源装置の動作について説明する。
【0016】
始めに第1の半導体レーザー22Aをオンにしたときの動作について説明する。第1の半導体レーザー22Aをオンにすると、第1の半導体レーザー22Aは波長460nmの青色のレーザー光を発する。第1の半導体レーザー22Aから発せられたレーザー光はレンズ24によって収束されて光ファイバー30Aに入射する。光ファイバー30Aに入射したレーザー光は、光ファイバー30Aを導波し、光ファイバーカプラー42を経由し、光ファイバー50を導波して蛍光体ユニット62に入射する。図2から分かるように、波長460nmの青色レーザー光はYAG:Ceの吸収領域の光であるので、蛍光体ユニット62に入射した青色レーザー光の一部は、蛍光体ユニット62内のYAG:Ceによって、波長530nm付近にピークを有するブロードなスペクトルの黄色光に波長変換され、波長変換された黄色光が蛍光体ユニット62の射出端から射出される。また蛍光体ユニット62に入射した青色レーザー光の残りの一部は、波長変換されることなく蛍光体ユニット62を通過し、蛍光体ユニット62の射出端から射出される。この結果、蛍光体ユニット62の射出端からは、蛍光体ユニット62によって波長変換された黄色光と、半導体レーザー22Aから発せられた青色光とが射出される。本実施形態では、これら黄色光と青色光とが混合されたときに白色光となるように調整されている。その結果、蛍光体ユニット62の射出端からは白色光が射出される。すなわち、第1の半導体レーザー22Aをオンにしたとき、蛍光体ユニット62の射出端からは、通常観察用の観察光である白色光が射出される。
【0017】
次に、第2の半導体レーザー22Bをオンにしたときの動作について説明する。第2の半導体レーザー22Bをオンにすると、第2の半導体レーザー22Bは波長415nmの青紫色のレーザー光を発する。第2の半導体レーザー22Bから発せられたレーザー光はレンズ24によって収束されて光ファイバー30Bに入射する。光ファイバー30Bに入射したレーザー光は、光ファイバー30Bを導波し、光ファイバーカプラー42を経由し、光ファイバー50を導波して蛍光体ユニット62に入射する。図2から分かるように、波長415nmの青紫色レーザー光はYAG:Ceの吸収領域に含まれないため、蛍光体ユニット62のYAG:Ceにはほとんど吸収されないので、蛍光体ユニット62に入射した青紫色レーザー光は、ほとんどが蛍光体ユニット62を通過し、蛍光体ユニット62の射出端から射出される。すなわち、第2の半導体レーザー22Bをオンにしたとき、蛍光体ユニット62の射出端からは、特殊光観察用の特殊光である波長415nmの青紫光が射出される。
【0018】
このように、第1の半導体レーザー22Aだけがオンにされているときに蛍光体ユニット62から射出される光と、第2の半導体レーザー22Bだけがオンにされているときに蛍光体ユニット62から射出される光は、色が互いに異なる。
【0019】
本実施形態の光源装置10では、第1の半導体レーザー22Aと第2の半導体レーザー22Bとの一方を選択的にオンにすることによって、観察光である白色光と特殊光である波長415nmの青紫光とがスライドユニットなどの機械的な可動機構を使用することなく切り替えられて蛍光体ユニット62の同一の射出端から射出される。
【0020】
このような2つの半導体レーザー22A,22Bと光カプラー40と波長変換部60との組み合わせにより、白色光と青紫光を容易に切替可能な光源装置が得られる。また、この光源装置は、機械的な可動機構を持たないシンプルな構造のため、小型化にも適している。
【0021】
なお、波長415nmの青紫光は、血液中のヘモグロビンによる吸収が大きく、血管を観察しやすくする効果があるため、本実施形態ではこの波長の光を選択したが、この波長の光に限らず、観察目的に応じた波長の光を選択してよい。すなわち、YAG:Ceに対しては、430nm以下の波長の光や480nm以上の波長の光を使用してよい。
【0022】
また、蛍光体はYAG:Ceに限定されるものではなく、ほかの適当な蛍光体、例えばCe賦活のCaScSi12などの蛍光体を使用してもよい。図3にCe賦活のCaScSi12のスペクトル特性を示す。図中、破線が吸収スペクトルで示し、実線が発光スペクトルを示している。図3に示す通り、このCe賦活のCaScSi12の吸収領域はおおよそ460nm〜530nmとなっている。従って、この蛍光体を用いるときは、これに応じて、第1の半導体レーザー22Aの励起光の波長を例えば500nm程度にすることによって、より効率的に励起光が波長変換されて明るい照明光が得られる。
【0023】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態による光源装置について図4ないし図9を参照して説明する。第2実施形態では、第1実施形態と共通の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0024】
図4は、第2実施形態による光源装置を示している。図4に示すように、本実施形態による光源装置10Aは、第1実施形態による光源装置10との比較において、第1の光源部20Aの代わりに第3の光源部20Cを有し、光ファイバー30Aの代わりに光ファイバー30Cを有し、蛍光体ユニット62の代わりに蛍光体ユニット62Aを有している。第3の光源部20Cは、第3の半導体レーザー22Cと、第3の半導体レーザー22Cから発せられる発散性の光を収束させるレンズ24と、レンズ24により収束された光を光ファイバー30Cに光学的に結合する結合素子26とを有している。光源装置10Aはまた、駆動回路82Aの代わりに、第3の半導体レーザー22Cの発光・消灯すなわちオン・オフを独立に切り替える駆動回路82Cを有している。それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0025】
第3の半導体レーザー22Cは、波長375nmの近紫外光を発する。蛍光体ユニット62Aは、組成の異なる複数種類の蛍光体を含むマルチ蛍光体ユニットで構成されている。図5は、図4に示した蛍光体ユニット62Aを示している。図5に示すように、蛍光体ユニット62Aは、赤色光を発するR蛍光体64Aを含む領域66Aと、緑色光を発するG蛍光体64Bを含む領域66Bと、青色光を発するB蛍光体64Cを含む領域66Cとを入射端側から射出端側に順に積層して構成されたマルチ蛍光体ユニットで構成されている。これらの蛍光体64A,64B,64Cは、いずれも近紫外光である375nmの光により励起されて、それぞれ赤色光と緑色光と青色光を発するものが選択されている。このような蛍光体64A,64B,64Cは、たとえば、それぞれ、Eu賦活のLaS(赤色)、Eu,Mn共賦活のBaMgAl1017(緑色)、Eu賦活のBaMgAl1017(青色)であってよい。Eu賦活のLaS(赤色)の発光スペクトルを図7に、Eu,Mn共賦活のBaMgAl1017(緑色)の発光スペクトルを図8に、Eu賦活のBaMgAl1017(青色)の発光スペクトルを図9に示す。図7ないし図9に示す通り、これらの蛍光体の吸収領域は、それぞれ、270nm〜400nm、230nm〜400nm、270nm〜410nmである。これらの蛍光体を含むマルチ蛍光体ユニットの吸収領域は、すべての蛍光体の吸収領域の重なり領域とみなせ、270nm〜400nmである。
【0026】
次に、第2実施形態による光源装置の動作について説明する。
【0027】
第3の半導体レーザー22Cをオンにすると、第3の半導体レーザー22Cは波長375nmの近紫外のレーザー光を発する。第3の半導体レーザー22Cから発せられた近紫外レーザー光はレンズ24によって収束されて光ファイバー30Cに入射する。光ファイバー30Cに入射したレーザー光は光ファイバー30Cを導波し、光ファイバーカプラー42を経由し、光ファイバー50を導波して蛍光体ユニット62Aに入射する。蛍光体ユニット62Aは、図5に示すように、光ファイバー50と接続されている入射端側から順に、赤色光を発するR蛍光体64Aを含む領域66Aと、緑色光を発するG蛍光体64Bを含む領域66Bと、青色光を発するB蛍光体64Cを含む領域66Cとが配列されている。また、第3の半導体レーザー22Cの発する波長375nmの光は、蛍光体ユニット62Aを構成するマルチ蛍光体ユニットの吸収領域の光である。このため、領域66Aに入射した近紫外光の一部はR蛍光体64Aによって赤色光に波長変換されて領域66Bに入射し、領域66Aに入射した近紫外光の残りの一部はそのまま領域66Aを通過して領域66Bに入射する。領域66Bに入射した近紫外光の一部はG蛍光体64Bによって緑色光に波長変換されて領域66Cに入射する。また、G蛍光体64Bは赤色光を吸収しないので、領域66Bに入射した赤色光はそのまま領域66Bを通過する。従って、赤色光と緑色光と近紫外光とがB蛍光体64Cを含む領域66Cに入射する。領域66Cに入射した近紫外光のほとんどはB蛍光体64Cによって青色光に波長変換される。また、B蛍光体64Cは赤色光と緑色光を吸収しないので、領域66Cに入射した赤色光と緑色光はそのまま領域66Cを通過する。その結果、蛍光体ユニット62Aの射出端からは赤色光と緑色光と青色光とが混合された白色光が射出される。
【0028】
また、第2の半導体レーザー22Bをオンにすると、半導体レーザー22Bは波長415nmの青紫色のレーザー光を発する。第2の半導体レーザー22Bから発せられたレーザー光は、第1実施形態で説明したように、レンズ24によって収束されて光ファイバー30Bに入射し、光ファイバー30Bを導波し、光ファイバーカプラー42を経由し、光ファイバー50を導波して蛍光体ユニット62に入射する。波長415nmの青紫色光はマルチ蛍光体ユニットの吸収領域の光ではないので、蛍光体ユニット62Aに入射した青紫色光は、R蛍光体64AとG蛍光体64BとB蛍光体64Cのいずれにもほとんど吸収されず、蛍光体ユニット62Aをそのまま通過して射出端から射出される。
【0029】
この結果、光源装置10Aは、第3の半導体レーザー22Cが選択的にオンにされたときは白色光を射出し、第2の半導体レーザー22Bがオンにされたときは波長415nmの青紫光を射出する。光源装置10Aから射出される白色光は、赤色光と緑色光と青色光の成分を有するため、第1実施形態と比較して演色性の高い照明光となる。すなわち、本実施形態によれば、第1実施形態と同じ利点を有し、さらに演色性が向上した光源装置が得られる。
【0030】
なお、本実施形態では、蛍光体ユニット62Aは、図5に示すように、R蛍光体64Aを含む領域66AとG蛍光体64Bを含む領域66BとB蛍光体64Cを含む領域66Cとが積層されたマルチ蛍光体ユニットで構成されているが、図6に示すように、それらの蛍光体64A,64B,64Cのすべてが混合された別のタイプのマルチ蛍光体ユニットで構成されてもよい。これにより、蛍光体ユニット62Aがシンプルに構成される。
【0031】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態による光源装置について図10を参照して説明する。第3実施形態では、第1実施形態と共通の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0032】
図10は、第3実施形態による光源装置を示している。図10に示すように、本実施形態による光源装置10Bは、光カプラー40が2つの入射端と2つの射出端を有する2入力2出力タイプの光ファイバーカプラー42Aで構成されており、光ファイバーカプラー42Aの2つの射出端にそれぞれ2本の光ファイバー50と2つの蛍光体ユニット62とが接続されている点が第1実施形態と異なっている。
【0033】
光ファイバーカプラー42Aは、2つの入射端と、2つの射出端とを有し、一方の入射端に入射した光を2つの射出端にほぼ等しい光強度割合で分配し、もう一方の入射端に入射した光を2つの射出端にほぼ等しい光強度割合で分配する。波長変換部60は、2つの蛍光体ユニット62を有している。2つの蛍光体ユニット62は、それぞれ、2本の光ファイバー50を介して光ファイバーカプラー42Aの2つの射出端と光学的に接続されている。2つの蛍光体ユニット62はほぼ等しい波長変換特性を有している。
【0034】
第1の半導体レーザー22Aが発する波長460nmの青色光は光ファイバー30Aを導波して光ファイバーカプラー42Aに入射する。光ファイバーカプラー42Aに入射した青色光は、光ファイバーカプラー42Aによってほぼ等しい強度で2本の光ファイバー50に分配される。2本の光ファイバー50に分配された青色光は、それぞれ、2本の光ファイバー50を導波して2つの蛍光体ユニットに入射する。各蛍光体ユニットに入射した青色光は、第1実施形態で説明したように、青色光と波長変換された黄色光とが混合された白色光となり、各蛍光体ユニットから射出される。
【0035】
また、第2の半導体レーザー22Bが発する波長415nmの青紫色光は光ファイバー30Bを導波して光ファイバーカプラー42Aに入射する。光ファイバーカプラー42Aに入射した青紫色光は、光ファイバーカプラー42Aによってほぼ等しい強度で2本の光ファイバー50に分配される。2本の光ファイバー50に分配された青紫色光は、それぞれ、2本の光ファイバー50を導波して2つの蛍光体ユニットに入射する。各蛍光体ユニットに入射した青紫色光は、第1実施形態で説明したように、そのまま各蛍光体ユニットから射出される。
【0036】
本実施形態によれば、第1実施形態の利点を有し、さらに観察対象を2方向から照明可能な光源装置が得られる。たとえば、内視鏡装置のように、観察対象から光源までが非常に近接しているとき、一方向だけからの照明は、影を生じさせるなど、観察対象物を見づらくすることがあるが、観察対象を2方向から照明するように2つの蛍光体ユニットの射出端を配置することによって、影を生じさせ難くすることが可能となる。この結果、大型化を伴うことなく、観察により適した光源装置が得られる。
【0037】
本実施形態では、波長変換部60の各蛍光体ユニットが、第1実施形態で説明した蛍光体ユニット62で構成されているが、第2実施形態で説明したマルチ蛍光体ユニット62Aで構成されてもよい。さらに、光カプラー40を、3以上の出力端を有する光ファイバーカプラーに変更するとともに、光ファイバーカプラーの3以上の出力端に、それぞれ、光ファイバーカプラーの出力端と同数の光ファイバーと複数の蛍光体ユニットとを接続した構成としてもよい。
【0038】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態による光源装置について説明する。本実施形態による光源装置は、基本的に第1実施形態と同様の構成を有しているが、波長変換部60が、励起波長特性の異なる2種類の蛍光体を含む蛍光体ユニットで構成されている点が第1実施形態と異なっている。
【0039】
本実施形態における蛍光体ユニット62は、第1の半導体レーザー22Aから発せられる青色レーザー光は波長変換するが、第2の半導体レーザー22Bから発せられる青紫色レーザー光はほとんど波長変換しない第1の蛍光体と、第1の半導体レーザーから発せられる青色レーザー光は波長変換しないが、第2の半導体レーザー22Bから発せられる青紫色レーザー光は波長変換する第2の蛍光体とを含む蛍光体ユニットで構成されている。
【0040】
本実施形態においては、たとえば、第1の蛍光体はYAG:Ceで構成され、第2の蛍光体は、Eu賦活のSrAl(以下、SrAlO:Euと記す)で構成されている。図2はYAG:Ceのスペクトル特性を示し、図11はSrAlO:Euのスペクトル特性を示している。第1の蛍光体であるYAG:Ceの吸収領域は430nm〜480nmであり、第2の蛍光体であるSrAlO:Euの吸収領域は270nm〜430nmである。
【0041】
この第4実施形態の動作について説明する。
【0042】
始めに第1の半導体レーザー22Aをオンにしたときの動作について説明する。第1の半導体レーザー22Aは、第1実施形態で説明したように、460nmの波長の青色レーザー光を発する。第1の半導体レーザー22Aから発せられたレーザー光は、光ファイバー30Aを導波し、光ファイバーカプラー42を経由し、光ファイバー50を導波して蛍光体ユニット62に入射する。蛍光体ユニット62は、図2に示した特性を有するYAG:Ceと、図11に示した特性を有するSrAlO:Euとを含んでおり、また、波長460nmの青色光は、YAG:Ceの吸収領域内にあり、かつ、SrAlO:Euの吸収領域外にある光であるため、蛍光体ユニット62に入射した青色光は、YAG:Ceによって効率的に波長530nm程度の黄色光に波長変換されるが、SrAlO:Euによってはほとんど波長変換されない。その結果、蛍光体ユニット62の射出端からは、青色光とYAG:Ceにより波長変換された黄色光とが混合された白色光が射出される。
【0043】
次に、第2の半導体レーザー22Bをオンにしたときの動作について説明する。第2の半導体レーザー22Bは、第1実施形態で説明したように、波長415nmの青紫色レーザー光を発する。第2の半導体レーザー22Bから発せられたレーザー光は、光ファイバー30Bを導波し、光ファイバーカプラー42を経由し、光ファイバー50を導波して蛍光体ユニット62に入射する。波長415nmの青紫色光は、SrAlO:Euの吸収領域内にあり、かつ、YAG:Ceの吸収領域外にある光であるため、蛍光体ユニット62に入射した青紫色光は、YAG:Ceによってはほとんど波長変換されないが、SrAlO:Euによって波長540nm程度の緑色光に効率的に波長変換される。その結果、蛍光体ユニット62の射出端からは、図12に示すように、波長415nmの青紫色光と波長540nmの緑色光とが混合された光が射出される。この2つの波長の光は、ヘモグロビンの吸収波長とほぼ一致しており、血管をよりコントラスト良く観察することに好適である。
【0044】
本実施形態によれば、第1実施形態の利点を有し、さらに血管などをよりコントラスト良く観察することに適した光源装置が得られる。この光源装置は、蛍光体ユニット62に含まれる蛍光体の種類が増えるだけであり、他に大きな変更を必要としないため、装置の大型化を伴わない。
【0045】
<付記>
上述したすべての実施形態では、光源が半導体レーザーで構成されているが、光源は、これに限定されるものではなく、発光ダイオードなどの他の半導体光源で構成されてもよい。発光ダイオードを使用すると、半導体レーザーを使用したときと比較して、より安価な光源装置が得られる。
【0046】
また、上述した実施形態の光源装置は特に内視鏡装置への搭載に適している。
【0047】
一般的な内視鏡装置を図13に概略的に示す。図13に示すように、内視鏡装置100は、操作部110と、操作部110から延びている挿入部120と、挿入部120の先端に位置する内視鏡先端部130とを有している。このような内視鏡装置100を用いた観察では、観察対象が内視鏡先端部130に近接するため、通常観察光と特殊光の射出位置がずれていると、色分離を起こすなどの不具合が生じる。これに対して上述した実施形態の光源装置では、通常観察光と特殊光の射出位置が一致しているので、色分離を起こすことがなく、特に内視鏡装置への搭載に適している。
【0048】
また、一般的な内視鏡先端部130の構成を図14に示す。図14に示すように、内視鏡先端部130は、3つの先端金属部材132A,132B,132Cと、それらを覆うカバー144とを有している。2つの先端金属部材132A,132Cは断熱材134Aを介して結合され、2つの先端金属部材132B,132Cは断熱材134Bを介して結合されている。先端金属部材132Cには個体撮像装置136と送気送水ノズル138と吸引チャンネル140とが設けられている。また先端金属部材132A,132Bには照明用のライトガイドユニット142が1つずつ設けられている。
【0049】
このように内視鏡装置は一般に2つのライトガイドユニット142を有している。このため、上述した実施形態の光源装置を内視鏡装置に搭載する際は、図1や図4に示したように1つの光射出部を有する光源装置を2つ内視鏡装置に組み込んでもよく、また図10に示したように2つの光射出部を有する光源装置を1つだけ内視鏡装置に組み込んでもよい。
【0050】
さらに、上述した実施形態の光源装置を内視鏡装置に搭載する際、内視鏡先端部130の近傍に波長変換部60を配置してもよく、また、波長変換部60から射出される光を再び別の光ファイバーを介して内視鏡先端部130まで導いてもよい。前者の構成は、高い輝度の照明光を得るのに都合が良い。また後者の構成は、発熱する蛍光体ユニットが内視鏡先端部から離して配置されるため、内視鏡先端部の近傍の発熱を抑制するのに都合が良い。
【0051】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態による光源装置を示している。
【図2】YAG:Ceのスペクトル特性を示している。
【図3】Ce賦活のCaScSi12のスペクトル特性を示している。
【図4】本発明の第2実施形態による光源装置を示している。
【図5】図4に示したマルチ蛍光体ユニットを示している。
【図6】図5に示したマルチ蛍光体ユニットに代替可能な別のタイプのマルチ蛍光体ユニット
【図7】Eu賦活のLaSの発光スペクトルを
【図8】Eu,Mn共賦活のBaMgAl1017の発光スペクトルを
【図9】Eu賦活のBaMgAl1017の発光スペクトルを示している。
【図10】本発明の第3実施形態による光源装置を示している。
【図11】SrAlO:Euのスペクトル特性を示している。
【図12】本発明の第4実施形態による光源装置の蛍光体ユニットから射出される光のスペクトルを示している。
【図13】一般的な内視鏡装置を概略的に示している。
【図14】図13に示した内視鏡先端部の構成を示している。
【符号の説明】
【0053】
10,10A,10B…光源装置、20A,20B,20C…光源部、22A,22B,22C…半導体レーザー、24…レンズ、26…結合素子、30A,30B,30C…光ファイバー、40…光ファイバーカプラー、42,42A…光ファイバーカプラー、50…光ファイバー、60…波長変換部、62,62A…蛍光体ユニット、64A…R蛍光体、64B…G蛍光体、64C…B蛍光体、66A,66B,66C…領域、82A,82B,82C…駆動回路、100…内視鏡装置、110…操作部、120…挿入部、130…内視鏡先端部、132A,132B,132C…先端金属部材、134A,134B…断熱材、136…個体撮像装置、138…送気送水ノズル、140…吸引チャンネル、142…ライトガイドユニット、144…カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長領域の光を発する第1の半導体光源と、
前記第1の波長領域と異なる前記第2の波長領域の光を発する第2の半導体光源と、
前記第1の波長領域の光を吸収して前記第1および第2の波長領域のいずれとも異なる第3の波長領域の光を発し、かつ、前記第2の波長領域の光をほとんど透過する波長変換部とを有している光源装置。
【請求項2】
前記第3の波長領域の光は前記第1の波長領域の光よりも長い波長を有し、前記光源装置は、前記第1の半導体光源の発光・消灯を独立に切り替える第1の光源駆動回路と、前記第2の半導体光源の発光・消灯を独立に切り替える第2の光源駆動回路とをさらに有し、前記第1の半導体光源だけが点灯されているときに前記波長変換部から射出される第1の照明光と前記第2の半導体光源だけが点灯されているときに前記波長変換部から射出される第2の照明光とは色が互いに異なる、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記光源装置は、前記第1および第2の半導体光源とそれぞれ光学的に接続される第1および第2の入射端と、前記波長変換部と光学的に接続される少なくとも1つの射出端とを有する光カプラーをさらに有している、請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第1の照明光は白色光であり、前記第2の照明光は前記第2の波長領域の光とほぼ同じ色の光である、請求項2または3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記波長変換部は第1の蛍光体を含んでおり、前記第1の波長領域は前記第1の蛍光体の吸収スペクトルの吸収領域である、請求項1ないし4のいずれかひとつに記載の光源装置。
【請求項6】
前記第1の蛍光体はセリウム賦活のイットリウム・アルミニウム・ガーネットであり、前記第1の波長領域は430〜480nmの領域であり、前記第2の波長領域は430nm以下および/または480nm以上の領域である、請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記波長変換部は、組成の異なる複数種類の蛍光体を含んでおり、前記複数種類の蛍光体は、いずれも前記第1の波長領域の光を吸収し、それよりも長波長の互いに異なる波長の光をそれぞれ射出するように選択されており、前記第1の波長領域は、前記複数種類の蛍光材料のそれぞれの吸収スペクトルの吸収領域の重なり領域である、請求項1ないし4のいずれかひとつに記載の光源装置
【請求項8】
前記第1の波長領域は410nm以下であり、前記複数種類の蛍光体は、いずれもこの領域の光により励起され、それぞれ赤色光と緑色光と青色光を発し、前記波長変換部は、赤色光と緑色光と青色光とが混合された白色光を射出する、請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記第1の半導体光源と前記光カプラーの前記第1の入射端とを光学的に接続する第1の入射側光ファイバーと、前記第2の半導体光源と前記光カプラーの前記第2の入射端とを光学的に接続する第2の入射側光ファイバーと、前記波長変換部と前記光カプラーの前記少なくとも1つの射出端とを光学的に接続する少なくとも1本の射出側光ファイバーとをさらに有している、請求項3に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光カプラーの前記少なくとも1つの射出端は第1の射出端と第2の射出端とを有し、前記光カプラーは、前記第1の入射端に入射した光を前記第1および第2の射出端にほぼ等しい光強度割合で分配し、また前記第2の入射端に入射した光を前記第1および第2の射出端にほぼ等しい光強度割合で分配し、前記少なくとも1本の射出側光ファイバーは第1の射出側光ファイバーと第2の射出側光ファイバーとを有し、前記波長変換部は、前記第1の射出側光ファイバーを介して前記第1の射出端と光学的に接続された第1の蛍光体ユニットと、前記第2の射出側光ファイバーを介して前記第2の射出端と光学的に接続された第2の蛍光体ユニットとを有し、前記第1および第2の蛍光体ユニットはほぼ等しい波長変換特性を有している、請求項9に記載の光源装置。
【請求項11】
前記波長変換部は第2の蛍光体をさらに含んでおり、前記第2の蛍光体は、前記第2波長領域の光を吸収してそれよりも長波長の前記第1の波長領域の光とは異なる波長の光を発するように選択されている、請求項5に記載の光源装置。
【請求項12】
前記光源装置は、前記第1の半導体光源が選択的に点灯されているときには白色光を射出し、前記第2の半導体光源が選択的に点灯されているときには前記第2の半導体光源から発せられた光と前記第2の蛍光体から発せられた光とが混合された光を射出する、請求項11に記載の光源装置。
【請求項13】
前記1ないし12のいずれかひとつに記載の光源装置を備えた内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−153712(P2009−153712A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335321(P2007−335321)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】