説明

光異性化可能な基を有する光活性モノマーを含むブロックコポリマーと、3D光メモリでのその使用

【課題】光異性化が可能な基を有する光活性モノマーを含むブロックコポリマーと、3D光メモリでのその使用。
【解決手段】(1)Tgが−55℃〜0℃である少なくとも一種のソフトブロックAと、(2)光異性化が可能な発色団を含む少なくとも一種の光活性モノマーを含む少なくとも一種のブロックBとから成るブロックコポリマー。光活性モノマーは式(I)を有する:


〔ここで、XはHまたはCH3-、Gは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、置換または非置換フェニル基または−NR−C(=O)−を表し、NRはLと結合し、RはHまたはC1〜C10アルキル基であり、Lはスペーサ基を表し、CRは光異性化が可能な発色団を表す〕。このブロックコポリマーから3D光メモリが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータを3Dで光学的に記録することができるポリマーに関するものである。
本発明はさらに、上記ポリマーから得られる材料、3D光メモリー、特にディスクの形をした3D光メモリーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル情報システムの飛躍的な発展によって、50年以上の長期間にわたってデータを確実に保存する小型の大容量データ記録装置に対するニーズが高まっている。光学的な記録はデータ記録に使用可能な技術の一つである。これに関しては非特許文献1を参照されたい。
【0003】
特許文献1(国際特許第WO 01/73779号公報)にはC=C二重結合を有する分子(発色団)のシス−トランス遷移によって情報を記録する光学式記録装置が開示されている。分子はポリマーに結合可能な式Ar11C=CR2Ar2のジアリールアルキレンにすることができる。
【0004】
特許文献2(国際特許第WO 03/070 689号公報)にはジアリールアルキレン型発色団を含むポリマーが開示されている。ポリマーはポリ(アルキルアクリレート)またはポリ(アルキルアクリレート)コポリマー、特にスチレンとのコポリマーにすることができる。このポリマーはポリメチルメタクリレートにすることもできるが、それがブロックコポリマーか否か、ブロックの一つ中に発色団が存在するか否かは記載がない。
【0005】
特許文献3(国際出願第WO2006/075 327号公報)には、ジアリールアルキレン型発色団を有するポリマーが開示されている。発色団濃度を上げたときの「共同効果」が説明されている。
特許文献4(米国特許第5,023,859号明細書)にはスチルベン、スピロピラン、アゾベンゼン、ビスアゾベンゼン、トリアゾベンゼンまたはアゾキシベンゼン型の感光性基を含むポリマーを使用した光メモリが開示されている。ポリマーはブロックポリマーにすることができるが、このブロックポリマーの正確な特性は詳細に記載されていない。
【0006】
特許文献5(国際出願第WO2006/075 328号公報)には、光学式記録で使用可能なジアリールアルキレン型化合物が開示されている。
特許文献6(国際出願第WO2006/075 329号公報)には、ディスク形の3Dメモリが開示されている。
【0007】
本発明は、特許文献1、特許文献2および非特許文献2(日本応用物理雑誌、第45巻、第28号、2006年、1229〜1234頁)に記載のような3次元(3D)光学式記録方法に関するものである。この3D光学式記録方法では適当な波長の光を放射した時に相互に変換可能な2つの熱力学的に安定な異性体の形となる光異性化可能な発色団を使用するもので、データが記録されていないときは一方の形の異性体が支配的であり、データを書込む時には適当な波長の光を放射してその異性体から他方の異性体へ変換させる。この変換は直接的または間接的な光学的相互作用(例えば多光子相互作用)に起因する。
【0008】
特許文献2(国際特許WO 03/070 689号公報)では発色団を含むモノマーを(共)重合して発色団をポリマーに結合させている。特許文献3(国際特許第WO2006/075 327号公報)では発色団の濃度を上げて光メモリの記録感度を高めている。しかし、発色団含有モノマーの濃度を上げるとポリマーの機械特性が損なわれ、得られた材料が過度に脆くなるか、過度に軟くなり、取り扱いが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際出願第WO 01/73779号公報
【特許文献2】国際出願第WO 03/070 689号公報
【特許文献3】国際出願第WO2006/075 327号公報
【特許文献4】米国特許第5,023,859号明細書
【特許文献5】国際出願第WO2006/075 328号公報
【特許文献6】国際出願第WO2006/075 329号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】SPIE, "Conference on nano-and micro-optics for information systems" August 4, 2003, paper 5224-16
【非特許文献2】日本応用物理雑誌、第45巻、第28号、2006年、1229〜1234頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、3D光学的記録の分野で使用可能な優れたデータの書込み/読取り機能を有するリジッドな材料を開発するというニーズがある。
本発明者は請求項1に記載のブロックコポリマーまたは請求項25〜27に記載の混合物によって上記の課題が解決できるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は下記の(1)と(2)とから成るブロックコポリマーに関するものである:
(1)Tgが−55℃〜0℃、好ましくは−40℃〜−1℃である少なくとも一種のソフトブロックA、
(2)光異性化が可能な発色団を含む少なくとも一種の光活性モノマーを含む少なくとも一種のブロックB。
本発明の「少なくとも一種のソフトブロックA」または「少なくとも一種のブロックB」とは一種以上のブロックAおよび一種以上のブロックBを含むことができるブロックコポリマーを意味する。
さらに、ブロックBは他のモノマーと組み合わされた一種以上の光活性モノマーを含むことができる。特に、ブロックBは光活性モノマーの他に共同効果 (effect cooperatif) を有するモノマーを含むことができるのが有利である。
【0013】
光活性モノマーは式(I)を有する:
【化1】

【0014】
(ここで、
XはHまたはCH3-を表し、
Gは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、一種以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基または−NR−C(=O)−(ここで、NRはLと連結し、RはHまたはC1−C10アルキル基)を表し、
Lはスペーサ基を表し、
CRは光異性化可能発色団を表す)
【0015】
本発明のブロックコポリマーを用いて3D光記録装置が得られる。
本発明はさらに、上記ブロックコポリマーと、熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマーまたは熱硬化性ポリマーとを含む混合物および上記ブロックコポリマーまたはポリマーブレンド物を含む3D光メモリにも関するものである。本発明の別の対象は、本発明のブロックコポリマーまたはブレンド物の、光学的データの記録(貯蔵)での使用にある。
【0016】
gはASTM E1356に従ってDSCによって測定されるポリマーのガラス転移温度を表す。モノマーのTgも問題にする場合には、そのモノマーをラジカル重合して得られる数平均分子量Mnが少なくとも10,000g/molであるホモポリマーのTgを表すことにする。従って、ホモポリエチルアクリレートのTgが−24℃であるので、エチルアクリレートのTgは−24℃である。特に記載のない限り%は重量%である。
【0017】
「光活性モノマー」とは光異性化が可能な発色団CRを含むモノマーを意味する。発色団は2つの異性体、例えばシス−トランスで存在する。一方から他方への変換は適切な波長の光を放射することで行う。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光活性モノマーは式(I)を有する:
【化2】

【0019】
〔ここで、
XはHまたはCH3-を表し、
Gは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、一種以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基または−NR−C(=O)−(ここで、NRはLと連結し、RはHまたはC1−C10アルキル基である)を表し、
Lはスペーサ基を表し、
CRは光異性化可能発色団を表す〕
【0020】
スペーサ基Lは発色団の相互変換を促進するために、発色団をコポリマー鎖から離す役目をする。これによって読取り容量および速度が改善される。GおよびCRが共有結合によって互いに連結された2つ以上の原子の鎖によって互いに連結されるようにスペーサ基Lを選択するのが好ましい。Lは例えば(CR12m、O(CR12m、(OCR12mまたは(SCR12m基(ここで、mは2より大きい整数、好ましくは2〜10で、R1およびR2は独立してH、ハロゲンまたはアルキルまたはアリール基を表す)の中から選択することができる。R1およびR2はHを表すのが好ましい。
【0021】
発色団CRはシスおよびトランス異性体で存在するジアリールアルキレン型の発色団であるのが好ましい。この発色団CRは特許文献1(国際出願第WO 01/73779号公報)、特許文献2(国際出願第WO 03/070 689号公報)、特許文献3(国際出願第WO2006/075 327号公報)、特許文献6(国際出願第WO2006/075 329号公報)に開示の発色団の一つにすることができる。発色団CRは異性化に対するエネルギー障壁が80kJ/mol以上になるように選択するのが好ましい。すなわち、記録データのロスを防ぐために異性化は室温で極めてゆっくり進むプロセスにするのが望ましい。
【0022】
光活性モノマーは下記式(II)を有するのが好ましい:
【化3】

【0023】
〔ここで、
Ar1およびAr2は一種以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、
1およびW2はH、−CN、−COOH、−COOR'、−OH、−SO2R'および−NO2基(R'はC1〜C10アルキル基またはアリール基である)の中から選択される〕
【0024】
発色団は基Ar11C=CW2Ar2に対応する。Lは共有結合を介してAr2とGに連結する。Ar1およびAr2は置換または非置換アリール基を表す。これらは例えば互いに独立してフェニル、ビフェニル、アントラセンおよびフェナントレン基の中から選択される。可能性のある置換基(一種以上)は下記の中から選択される:H、C1−C10アルキル、NO2、C1−C10アルコキシまたはハロゲン、NR''R'''(ここで、R''およびR'''はHまたはC1−C10アルキル)。Ar1は発色団のC=C二重結合に結合する。Ar2は発色団のC=C二重結合、さらに基Lに結合する。
【0025】
Gは−O−C(=O)−またはC64フェニル基である、すなわち光活性モノマーが下記式を有するのが好ましい:
【化4】

【0026】
Ar1がフェニル基またはビフェニル基で、Ar2はフェニルまたはビフェニル基で、フェニルおよび/またはビフェニル基はそれぞれ一種以上の置換基で置換されていてもよい、すなわち発色団が下記式(V)または(VI)を有するのが好ましい:
【化5】

【0027】
置換基は例えばH、アリール、C1−C10アルキル、NO2、C1−C10アルコキシまたはハロゲンにすることができる。
【0028】
好ましい形態では、W1およびW2はCNを表し、Ar2はフェニル基またはビフェニル基で、Ar1がR5O−またはR5S−によってパラ配位で置換されたフェニル基またはビフェニル基である。R5は置換または非置換のアルキルまたはアリール基を表す。R5はC1−C4アルキル基であるのが好ましい。R5は例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチル基にすることができる。例えば、式(VII)の発色団にすることができる:
【0029】
【化6】

【0030】
別の好ましい形はW1およびW2がHまたはCNを表し、Ar2がフェニル基またはビフェニル基で、Ar1がR5O−またはR5S−によってパラ配位が置換されたビフェニル基の場合である。例えば式(VIII)の発色団にすることができる:
【0031】
【化7】

【0032】
下記の2つのモノマー(MeAAおよびMeMMA)が特に好ましい:
【化8】

【0033】
これらは下記のような優れた書込みおよび読取りの光学特性を有する(これに関しては非特許文献2(日本応用物理雑誌、第45巻、第28号、2006年、1229〜1234頁)を参照):
(1)トランス異性体はシスより高い蛍光性を有し、
(2)トランス異性体は大きな有効二光子吸収断面積を有し、
(3)ストークスシフトは100nm以上(吸収スペクトルおよび発光スペクトルは375nmと485nmに各ピークを有し、ほとんどオーバーラップしない)。
さらに、これらは広範囲のモノマーを用いて制御されたラジカル重合法で容易に共重合でき、異性化に対するエネルギー障壁が80kJ/mol以上で、優れた安定性を有する。
【0034】
吸収スペクトルと発光スペクトルとのオーバーラップが小さく、<35%、さらには<20%であるのが好ましい(特許文献3(国際出願第WO2006/075 327号公報)の第22頁を参照)。これによって発色団濃度を上げることができ、従って読取り中の信号品質を損なわずに共同効果(cooperative effect)を促進できる。このオーバーラップはストークスシフトとピークの幅の両方に依存する。オーバーラップは1cm光路長キュベット中の0.01Mの発色団溶液が吸収する発光の百分率で定義される。ストークスシフトは>100nmであるのが好ましい。ストークスシフトの測定は当業者に周知である。特に下記文献のいずれかを参照されたい。
【非特許文献3】ナノ科学およびナノテクノロジーのDekker百科事典(James A. Schwartz達編): 図解入り、CRCプレス,2004,出版、4014頁以下
【非特許文献4】光工学百科事典:Las-Pho,1025頁以下、Ronald G. Driggers編、図解入り、CRCプレス,2003,出版、
【0035】
このシフトは市販の蛍光分光計で発色団の発光スペクトルと吸収スペクトルとを比較して測定する。このシフトは発色団の物理特性を示し、用いる蛍光分光計の型に無関係である。
本発明はジアリールアルキレン型発色団に限定されるものではなく、その他の光異性化可能発色団、例えばスチルベン、スピロピラン、アゾベンゼン、ビスアゾベンゼン、トリアゾベンゼンまたはアゾキシベンゼン基から成る発色団にも適用できる。これらの発色団のリストは特許文献4(米国特許第5,023,859号明細書)、特許文献7(米国特許第6,875,833号明細書)および特許文献8(米国特許第6,641,889号明細書)を参照されたい。
【特許文献7】米国特許第6,875,833号明細書
【特許文献8】米国特許第6,641,889号明細書
【0036】
「共同効果(cooperative effect)を有するモノマー」とは式(VIII)の化合物を意味する:
【化9】

【0037】
(ここで、
X、GおよびLは光活性モノマーと同じ意味を有し、
Ar3は一種以上の置換基で置換されていてもよい芳香族基を表す)
このモノマーは共同的効果を介して発色団と相互作用するおよび/または発色団間の共同的効果を高める。それによって書込み速度が上がる。共同的効果の一つの解釈は、モノマーが発色団のミクロ環境を変えて、光異性化を促進することである。
【0038】
式(VIII)の置換基は下記の中から選択される:
(i)ハロゲン、
(ii)−COOY、−CONYY'、−OY、−SYまたは−C(=O)Y(YおよびY'はHまたはC1−C10アルキル基を表す)
Ar3はフェニル基であるのが有利である。ハロゲン基は塩素であるのが有利である。Ar3は下記の基の中から選択されるのがさらに有利である:
【0039】
【化10】

【0040】
例としては下記のヒンダードモノマーを用いることができる:
【化11】

【0041】
ブロックAはリジッドでもソフトでもよい。ガラス転移温度が室温(25℃)より高い場合にはブロックAは「リジッド」とみなされる。ガラス転移温度が25℃より低い場合にはブロックAは「ソフト」とみなされる。本発明のブロックAのTgは−55℃〜0℃、好ましくは−40℃〜−1℃であるため、ソフトである。ブロックAの数平均分子量はMn>1000g/mol、有利には>5000g/mol、好ましくは>10,000g/molである。
ソフトブロックAの役目の一つは十分な機械強度のある記憶(貯蔵)材料を得ることにある。
【0042】
ソフトブロックAは少なくとも一種のビニル、ビニリデン、ジエン、オレフィン、アリルまたは(メタ)アクリルモノマーを、ブロックAのTgが<20℃、特に0度以下、例えば−30℃〜−3℃になるようなモノマーの組合せで重合して得られる。このモノマーは下記の中から選択できる:芳香族ビニルモノマー、例えばスチレンまたは置換スチレン、特に痾−メチルスチレン、アクリルモノマー、例えばアクリル酸またはその塩、アルキル、シクロアルキルまたはアリールアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレートまたはフェニルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、アルキルエーテルアクリレート、例えば2−メトキシエチルアクリレート、アルコキシまたはアリールオキシ−ポリアルキレングリコールアクリレート、例えばメトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアクリレートまたはこれらの混合物、アミノアルキルアクリレート、例えば2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(DAMEA)、フルオロアクリレート、シリルアクリレート、燐アクリレート、例えばアルキレングリコールホスフェートアクリレート、メタクリルモノマー、例えばメタクリル酸またはその塩、アルキルメタクリレート、シクロアルキルメタクリレート、アルケニルメタクリレートまたはアリールメタクリレート、例えばメチルメタクリレート(MMA)、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、または、ナフチルメタクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたは2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アルキルエーテルメタクリレート、例えば2−エトキシエチルメタクリレート、アルコキシまたはアリールオキシポリアルキレングリコールメタクリレート、例えばメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールメタクリレートまたはその混合物、アミノアルキルメタクリレート、例えば2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DAMEMA)、フルオロメタクリレート、例えば2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、シリルメタクリレート、例えば3−メタクリロイルプロピルトリメチルシラン、燐メタクリレート、例えばアルキレングリコールホスフェートメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリドンメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリジノンメタクリレート、2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミドまたは置換アクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミド、または、置換メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリルアミドプロピルトリメチル塩化アンモニウム(MAPTAC)、イタコン酸、マレイン酸またはその塩、無水マレイン酸、アルキルまたはアルコキシまたはアリールオキシ−ポリアルキレングリコールマレエートまたはヘミマレエート、ビニルピリジン、ビニルピロリジノン、(アルコキシ)ポリ(アルキレングリコール)ビニルエーテルまたはジビニルエーテル、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)ビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、オレフィンモノマー(特にエチレン、ブテン、ヘキセンおよび1−オクテンが挙げられる)、さらにフルオロオレフィンモノマー、および、ビニリデンモノマー(特にフッ化ビニリデンが挙げられる)。これらのモノマーは単独でまたは2種類以上の混合物で使用できる。
【0043】
ソフトブロックAはスチレンおよび/または(メタ)アクリルモノマーおよび/またはアルキルアクリレートモノマーから得るのが好ましい。ブロックAは主モノマーとしてスチレンおよび/またはMMAおよび/またはブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートを含むのが有利である。ブロックAは少なくとも50%のブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートを含むのが好ましい。
ブロックAは最終材料に機械強度および/または剛性を与えるためのものである。
【0044】
本発明のブロックコポリマーの製造方法では、ソフトブロックAは上記モノマーの他に、ブロックB(複数でもよい)を構成する一種以上のモノマー(特に光活性モノマーまたは共同効果を有するモノマー)を含むことができる。特に、ブロックBが第1段階で調製されるときは、ブロックAはブロックBの残りの構成モノマー(複数でもよい)を含むことができる。すなわち、完全には重合化されていないこの残りのモノマー(複数でもよい)が、ブロックA(複数でもよい)を作るための重合の開始時に反応混合物中に存在する場合は、ブロックBを作るために初期導入されたモノマーをブロックAが含むことができる。
【0045】
すなわち、例えば、ソフトブロックAは40〜100重量%のスチレンおよび/またはブチルまたは2−エチルヘキシルアクリレートと、0〜30重量%の上記リストの中から選択される少なくとも一種のコモノマーと、1〜30重量%の少なくとも一種の光活性モノマーとを含むことができる(合計100重量%)。
【0046】
ブロックBは少なくとも一種の光活性モノマーを含み、必要に応じて光活性モノマーと共重合可能な少なくとも一種の他のモノマーをさらに含むことができる。この他のモノマーはブロックAのための上記モノマーリストの中から選択できる。このモノマーは共同効果を有するモノマーにすることもできる。ブロックB中の光活性モノマーの含有率は5〜100重量%にすることができる。
【0047】
好ましい形態での光活性モノマーと共重合可能なモノマーは共同効果を有するモノマーである。このモノマーはTCLP、PEMA、TCLPaまたはPEAであるのが好ましい。従って、ブロックBは10〜80重量%の少なくとも一種の光活性モノマーと、10〜80重量%の共同効果を有する少なくとも一種のモノマーと、必要に応じて含む上記リストの中から選択される一種以上の他のモノマーとを含む(合計100重量%)。
本発明のブロックコポリマーの製造方法では、ブロックBはブロックA(複数でもよい)を構成する一種以上のモノマーを含むことができる。特に、ブロックAを第1段階で調製するときは、ブロックBはブロックAを構成する残りのモノマーを含むことができる。すなわち、完全には重合化されていないこの残りのモノマーが、ブロックB(複数でもよい)を作るための重合の開始時に反応混合物中に存在する場合は、ブロックAを作るために初期導入されたモノマーをブロックBが含むことができる。すなわち、例えば、ブロックBは40〜100重量%の活性モノマーおよび/または共同効果を有するモノマーと、0〜60重量%の、ブロックAの合成で挙げた上記リストの中から選択される少なくとも一種のモノマーとを含むことができる(合計100重量%)。
【0048】
本発明のブロックコポリマーは少なくとも一種のソフトブロックAと、少なくとも一種の光活性モノマーを含む少なくとも一種のブロックBとから成る。
1996年のIUPACのポリマー命名法の勧告に従った定義では、ブロックコポリマーは構造的に異なる隣接ブロック群からなる。すなわち、各隣接ブロックは互いに異なるモノマーか、同じモノマーで単位の組成または連続分布が異なるモノマーから得られる構造的に異なる単位を有するブロックである。ブロックコポリマーは例えばジブロック、トリブロックまたは星形コポリマーにすることができる。
【0049】
本発明のブロックコポリマーはブロックAとブロックBとが互いに非相溶性である、すなわち、両者が室温でχAB>0のフローリ−ハギンス相互作用(Flory-Huggins interaction)パラメータを有するのが好ましい(このパラメータは当業者には周知であり、特に非特許文献5(Chimie et physico-chimie des polymeres , M.Fontanille およびY.Gnanou,Dunod,2002)に記載されている)。
【非特許文献5】Chimie et physico-chimie des polymeres , M.Fontanille およびY.Gnanou,Dunod,2002
【0050】
そうすることによって相のミクロ分離が生じ、巨視的レベルで二相構造が形成される。次にブロックコポリマーがナノ構造化する、すなわちブロックコポリマーが寸法が100nm以下、好ましくは5〜50nmの領域を形成する。このナノ構造化には透明材料になるという利点がある。さらに、ブロックAによる「希釈」がないので、ナノ構造化によって高濃度の発色団領域を得ることができ、それによって発色団間の共同効果を促進することができる(書込み速度が上がる)。
本発明のブロックコポリマーは中心ブロックAが共有結合によって2つの側部ブロックB、B'に連結されたB−A−B'トリブロックコポリマーである(すなわち中心ブロックAの両側に側部ブロックB、B'が位置する)のが好ましい。BとB'は同一でも異なっていてもよい(この型のコポリマーはB−b−A−b−B'とよばれる)。ブロックコポリマーは中心ブロックBが発色団単位を有する2つの側部ブロックA、A'に共有結合で連結されているA−B−A'トリブロックコポリマーにする(すなわち中心ブロックBの両側にブロックA、A'が位置する)こともできる。AとA'は同一でも異なっていてもよい。
しかし、ブロックコポリマーの合成に用いる方法では、より複雑な構造物、例えばブロックの数が2以上、例えば5のブロック、B’’−A’−B’−A−B、6のブロック等を得ることができる。すなわち、単一構造物または、多少複雑な種々の構造物の混合物から、合成されたブロックコポリマーを生成できる。得られた機械特性および光学特性を次いで、3Dメモリ記録材料中で用いるブロックコポリマーに従って広範囲に変えることができる。しかし、ブロックAとBとの非相溶性によって得られるナノ構造化は、本発明の対象を成す種々のブロックコポリマーの共通の特徴を維持している。
【0051】
本発明で使用可能なABA'またはBAB'トリブロックコポリマーの中では下記のものが特に挙げられる:
(1)ブロックA、A'が主モノマーとしてスチレンおよび/またはMMAおよび/またはアルキルアクリレートを含む;
(2)ブロックB、B'が10〜60重量%の少なくとも一種の光活性モノマーと、10〜60重量%の少なくとも一種の共同効果を有するモノマーとを含み、必要に応じてブロックAの上記リストの中から選択される一種のモノマー、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート、特にメチルメタクリレートをさらに含む(合計100重量%)。
【0052】
本発明ブロックコポリマーは単独でそのままで用いるか、読み書きに用いる波長域で十分な透明性を有し、複屈折が低い別のポリマーとブレンドして用いることができる。本発明のブロックコポリマーは熱可塑性物質、熱可塑性エラストマーまたは熱硬化性ポリマーにすることができ、光線が邪魔されずに各記録層に達する必要のある3D光メモリ技術では十分な透明性と低複屈折の特徴は重要である。スチレンまたはポリカーボネートの熱可塑性物質、例えばメチルメタクリレートのホモまたはコポリマーを用いるのが好ましい。ブレンド物は0〜50重量%、有利には0〜25重量%、好ましくは5〜10重量%の熱可塑性物質に対して、50〜100重量%、有利には75〜100重量%、好ましくは90〜100重量%のブロックコポリマーを含む。ブレンド物は熱可塑性物質をブレンドする当業者に周知の任意の技術を用いて製造することができる。押出成形法を用いるのが好ましい。ブロックコポリマーおよび/またはブロックコポリマーのブレンド物は必要に応じてさらに各種の添加剤(帯電防止剤、潤滑剤、染料、可塑剤、酸化防止剤、紫外線安定剤等)を含むことができる。
【0053】
ブロックコポリマーの製造法
本発明のブロックコポリマーは当業者に周知の重合方法を用いて製造する。この重合法の一つとしては例えば下記文献に記載のアニオン重合が挙げられる:
【特許文献9】フランス国特許第2,762,604号公報
【特許文献10】フランス国特許第2,761,997号公報
【特許文献11】フランス国特許第2,761,995号公報
【0054】
制御されたラジカル重合法を用いることもできる。制御剤の種類によって複数の変形例がある。制御剤としてニトロオキシドを用い、アルコキシアミンで開始するSFRP(安定なフリーラジカル重合)、制御剤として金属錯体を用い、ハロゲン剤で開始するATRP(原子移動ラジカル重合)、ジチオエステル、トリチオカーボネート、キサンテートまたはジチオカルバメートのような硫黄生成物を必要とするRAFT(可逆的付加フラグメント化移動)等が挙げられる。その一般的な解説書としては下記文献を参照できる。
【非特許文献6】Matyjaszewski,K.(Ed.),ACS シンポジウムシリーズ(2003年)、854(制御された/リビングラジカル重合の進歩)
【0055】
また、使用可能な制御されたラジカル重合法の詳細については下記文献を参照できる:
【特許文献12】フランス国特許第2,825,365号公報
【特許文献13】フランス国特許第2,863,618号公報
【特許文献14】フランス国特許第2,802,208号
【特許文献15】フランス国特許第2,812,293号公報
【特許文献16】フランス国特許第2,752,238号公報
【特許文献17】フランス国特許第2,752,845号公報
【特許文献18】米国特許第5,763,548号明細書
【特許文献19】米国特許第5,789,487号明細書
【0056】
本発明のブロックコポリマーの製造に好ましい方法はニトロオキシドT制御を用いた制御されたラジカル重合である。この技術はアニオン重合のような厳密な条件下(すなわち、水分の非存在下および<100℃の温度)での作業を必要としない。さらに、この技術では広範囲のモノマーを重合できる。種々の条件下で重合でき、例えば塊重合、溶液重合または分散媒体中での重合、例えば水性懸濁重合または乳化重合ができる。
【0057】
ニトロオキシドTは=N−O・基を有する安定なフリーラジカル、すなわち不対電子が存在する基である。「安定なフリーラジカル」とは持続時間が長く、空気および大気中の湿分と反応せず、大部分のフリーラジカルよりはるかに長期間制御且つ維持することができるラジカルを意味する(この点に関しては下記文献を参照されたい)
【非特許文献7】Accounts of Research、1976、9,p13-19
【0058】
従って、安定なフリーラジカルは寿命が瞬間的(数ミリ秒〜数秒)なフリーラジカル、例えばペルオキシド、ヒドロペルオキシドまたはアゾ型の開始剤のような通常の重合開始剤から生じるフリーラジカルとは区別される。重合を開始させるこれらのフリーラジカルは重合を加速させるのに対し、安定なフリーラジカルは一般に重合を減速する。フリーラジカルが重合開始剤でなく、且つ本発明の使用条件下で平均寿命が少なくとも1分である場合に、本発明の意味においてフリーラジカルは安定であるということができる。
【0059】
ニトロオキシドTは下記の構造(IX)によって表される:
【化12】

【0060】
(ここで、R6、R7、R8、R9、R10およびR11はC1〜C20、好ましくはC1〜C10のアルキル基、例えば置換または非置換のメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチルまたはネオペンチル基、一種以上の置換基で置換されていてもよいC6〜C30アリール基、例えばベンジルおよびアリール(フェニル)基およびC1〜C30不飽和環式基を表し、R6およびR9基は置換されていてもよい下記の中から選択することができる環状構造R6−CNC−R9の一部を成すことができる:
【0061】
【化13】

【0062】
(xは1〜12の整数を表す)
例として、下記のニトロオキシドを用いることができる;
【化14】

【0063】
本発明で特に好ましいのは式(X)のニトロオキシドである:
【化15】

【0064】
(ここで、
aおよびRbは1〜40個の炭素原子を有するアルキル基で、同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成することができ、ヒドロキシ、アルコキシまたはアミノ基で置換することができ、
Lはモル質量が16g/mol以上、好ましくは30g/mol以上の一価の基を表す)
基RLは例えばモル質量を40〜450g/molにすることができ、この基は一般式(XI)のリン基であるのが好ましい。
【0065】
【化16】

【0066】
(ここで、Z1およびZ2はアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、アラルキシルオキシ、ペルフルオロアルキルおよびアラルキル基の中から選択することができ、同一でも異なっていてもよく、1〜20個の炭素原子を有することができ、
1および/またはZ2はハロゲン原子、例えば塩素、臭素またはフッ素原子にすることもできる)
Lは下記式のホスホン酸基であるのが有利である:
【0067】
【化17】

【0068】
(ここで、RcおよびRdは1〜40個の炭素原子を有する2つのアルキル基で、同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成することができ、既に述べたように一種以上の置換基で置換されていてもよい)。
特に、安定なニトロオキシド基は2つの基に分裂可能な分子から得られる。この2つの基の一方は、重合を制御するニトロオキシドで、他方は重合開始剤である。温度上昇の影響下で安定なニトロオキシド基をインシチュー(in situ)で形成できる分子としては、本出願人によって製造および市販されているブロックブイルダー(BLOCBUILDER、登録商標)が挙げられる。
L基は、例えば1〜10個の炭素原子を有する一種以上のアルキル基で置換された少なくとも一種の芳香族環、例えばフェニル基またはナフチル基をさらに含むことができる。
式(X)のニトロオキシドは(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合で優れた制御を行うことができるので好ましい。式(XIII)のアルコキシアミンが好ましい:
【0069】
【化18】

【0070】
(ここで、Zは多価の基を表し、oは1〜10の整数を表す)
ZはZ−T共有結合の熱活性化および破断の後に複数のラジカル部位を遊離できる基である。Z基の例は特許文献20(国際出願第WO 2006/061 523号公報)の第15〜18頁に記載されている。Zは二価の基である、すなわち整数oが2の基であるのが好ましい。
【特許文献20】国際出願第WO 2006/061 523号公報
【0071】
制御されたラジカル重合法を用いてトリブロックコポリマーを製造する場合には式T−Z−Tの二官能性アルコキシアミン(すなわち、式(XIII)、o=2のアルコキシアミン)を用いるのが有利である。最初にこのアルコキシアミンを用いて中心ブロックを作るためのモノマーのブレンド物を重合して中心ブロックを調製する。重合は溶媒の存在下または非存在下または分散媒体中で行う。この混合物をアルコキシアミンの活性化温度よりも高い温度に加熱する。中心ブロックが得られたら側部ブロックを作るためのモノマーを添加する。中心ブロックの調製の最後に、完全に消費されなかったある程度のモノマーが残ることがある。これらのモノマーを側部ブロックの調製前に除去する選択をしてもよい。この除去は例えば中心ブロックを非溶媒中で沈殿させ、回収し、乾燥させて行うことができる。完全に消費されなかったモノマーを除去しない選択をした場合は、導入したモノマーと重合させて側部ブロックを作ることができる。
【0072】
データの書込み/読取り
本発明で使用する光学原理は特許文献1(国際出願第WO 01/73779号公報)や特許文献2(国際出願第WO 03/070 689号公報)に記載の原理と同じである。書込みは光の放射作用によって一方の異性体から他方の異性体へ変換させて行う。この変換には励起状態の発色団を有する必要があり、そのためにはエネルギーレベルEでの吸収が必要である。2つの光子の吸収はEと異なるエネルギーレベルE1およびE2を有する一種以上の光線の少なくとも2つの光子のエネルギーを組み合わせることで容易になる。この2つの光線は紫外線領域、可視光領域または近赤外領域内にある。一つの光線のみを用い、変換が二光子吸収プロセスの結果であるのが好ましい。
【0073】
読取りは線形または非線形な電子励起プロセスを利用することができる。発光スペクトルが互いに異なる2つの異性体の発光を適当な読み取り装置を用いて集める(回収する)。非線形プロセス、例えばラマン分散または四波混合プロセスを用いることができる。
一方の異性体または他方の異性体中で主成分である発色団を含むのは3Dメモリの容積のわずかな容積である。従って、メモリのこの小さな容積部分に正しく、且つ局所的に記録された情報が含まれる。この小さな容積部はその直ぐ近くの光信号とは異なる光信号によって特徴付けられる。
【0074】
3D光メモリ
本発明はさらに、本発明のブロックコポリマーまたはブレンド物を含むデータの記録(貯蔵)に用いられる3D光メモリ(または3D光学式記録装置)に関するものである。3Dメモリはメモリの任意の容積点(3つの座標x、y、zで定義される)にデータを記録することができるメモリである。3Dメモリはデータを複数のバーチャル(仮想)層(または仮想レベル)に記録することができる。3Dメモリの容量はこの装置が占める物理的容積に関係する。
【0075】
このメモリは発明のブロックコポリマーまたは上記ブレンド物から成る例えば正方形または長方形のプレート、立方体またはディスクの形にすることができる。3Dメモリはブロックコポリマーまたはブレンド物を射出して製造できる。この成形方法はポリマー化学者に周知であり、加圧下で溶融材料を金型中に射出する。この点に関しては下記文献を参照されたい:
【非特許文献8】「Precis de matieres plastiques 」、Nathan、第4版、ISBN 2−12−355352−2、141〜156頁
【0076】
材料を溶融し、押出機を用いて圧縮することもできる。特許文献6(国際出願第WO2006/075 329号公報)に記載のように、本発明のブロックコポリマーまたはブレンド物を含む複数の層を重ね合わせることもできる。
【0077】
3D光メモリを回転可能なディスクにし、書込みまたは読取りヘッドを基本的に固定するのが好ましい。ブロックコポリマーまたはブレンド物が適切な機械特性を有する場合には射出成形によってディスクを製造することができる。また、書込みおよび/または読取りに用いる波長域でリジッドなおよび透明な支持体へのブロックコポリマーまたはブレンド物を塗布してディスクを製造することもできる。
【実施例】
【0078】
ブロックブイルダー(BLOCBUILDER、登録商標)は下記式の製品に対応する:
【化19】

【0079】
実施例0
二官能性ジアルコキシアミンの調製
窒素で不活性化した250cm3のガラス反応器中に、125mlのエタノールと、38gのブロックブイルダー(BLOCBUILDER、登録商標)と、10gの1,4−ブタンジオールジアクリレートとを導入した。反応混合物を4時間攪拌(250回転/分)下で80℃に加熱した。得られた混合物を冷却し、エタノールを真空蒸発して固体のジアルコキシアミンを得た。このジアルコキシアミンをそれ以上処理せずに用いた。
【0080】
実施例1
P(MeMMA co PEMA)−b−P(ブチルアクリレート co スチレン)−b−P(MeMMA co PEMA)トリブロックコポリマーの製造
第1段階:ソフトブロックAの合成
3リットルのステンレス鋼反応器中に不活性雰囲気下で、98.6gの実施例0のジアルコキシアミンと、660gのスチレンと、1540gのブチルアクリレートとを攪拌下で導入し、反応を118℃で190分間行う。
得られた反応生成物から未反応モノマーを除去するように処理する。
次いで、得られたポリブチルアクリレートcoスチレンを反応器から取り出す。
測定したブロックAのTgは−5℃である。
第2段階:ブロックBの合成
45gのブロックAと、105gのMeMMAと、105gのPEMAと、1200gのトルエンとを3lの反応器に入れる。
反応を撹拌下に116℃で3時間行う。
次いで、反応生成物を取り出す。この反応生成物は予期されたトリブロックポリマーに対応する。
【0081】
実施例2
第1段階:ソフトブロックAの合成
不活性雰囲気下で、98.6gの実施例0のジアルコキシアミンと、660gのスチレンと、1540gのブチルアクリレートとを3lのステンレス鋼反応器中に攪拌下で導入する。
反応を118℃で190分間行う。
得られた反応生成物から未反応モノマーを除去するように処理する。
次いで、得られたポリブチルアクリレートcoスチレンを反応器から取り出す。
測定したブロックAのTgは−5℃である。
第2段階:ブロックBの合成
60gのブロックAと、240gのMeMMAと、240gのPEMAと、880gのトルエンとを3lの反応器に入れる。
反応を撹拌下に116℃で3時間行う。
次いで、反応生成物を取り出す。この反応生成物は予期されたトリブロックコポリマーに対応する。
【0082】
実施例3
P(MeMMA co PEMA)−b−P(ブチルアクリレート co スチレン)ジブロックコポリマーの調製
第1段階:ソフトブロックAの合成
3リットルのステンレス鋼反応器中に不活性雰囲気下で70gのブロックブイルダー(BLOCBUILDER、登録商標)と、630gのスチレンと、1470gのブチルアクリレートとを攪拌下で導入する。
反応を117℃で180分間行う。
得られた反応生成物から未反応モノマーを除去するように処理する。
次いで、得られたポリブチルアクリレートcoスチレンを反応器から取り出す。
測定したブロックAのTgは−5℃である。
第2段階:
20gのブロックAと、80gのMeMMAと、80gのPEMAと、1100gのトルエンとを3lの反応器に入れる。
反応を撹拌下に116℃で3時間行う。
次いで、反応生成物を取り出す。この反応生成物は予期されたジブロックコポリマーに対応する。
【0083】
実施例4:ディスク製造
実施例1〜3で得られたポリマー溶液を室温で多量のメタノール中に沈殿させ、濾過、洗浄、乾燥させた。得られた生成物を次いで150℃で10分間圧縮成形して直径2cm、厚さ2mmのディスクを成形した。光透過率は全可視領域で80%以上であった。
次に、適切なレーザーデバイスを用いてこのディスクに対して静的にデータの読取り−書込みテストを行って、ディスク上へのデータの記録ができることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)と(2)とから成るブロックコポリマー:
(1)Tgが−55℃〜0℃、好ましくは−40℃〜−1℃である少なくとも一種のソフトブロックA、
(2)下記の式(I)の光異性化が可能な発色団を含む少なくとも一種の光活性モノマーを含む少なくとも一種のブロックB:
【化1】

(ここで、
XはHまたはCH3-を表し、
Gは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、置換または非置換のフェニル基または−NR−C(=O)−(ここで、NRはLと連結し、RはHまたはC1−C10アルキル基)を表し、
Lはスペーサ基を表し、
CRは光異性化可能な発色団を表す)
【請求項2】
GおよびCRが共有結合によって互いに結合された2原子以上の鎖によって連結するようにスペーサ基Lを選択する請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項3】
Lが(CR12m、O(CR12m、(OCR12mおよび(SCR12m(ここで、mは2より大きい整数、好ましくは2〜10で、R1とR2は独立してH、ハロゲンまたはアルキルまたはアリール基を表す)の中から選択される請求項1または2に記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
発色団CRがジアリールアルキレン型である請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
1cm光路長キュベット中で0.01Mの発色団溶液で記録したスペクトルでの発色団CRのオーバーラップ(overlap)が<35%である請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項6】
発色団CRのストークスシフト(Stokes shift)が100nm>である請求項1〜5のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項7】
上記光活性モノマーが式(II)を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のブロックコポリマー:
【化2】

〔ここで、
Ar1およびAr2は置換されていてもよいアリール基、
1およびW2はH、−CN、−COOH、−COOR'、−OH、−SO2R'および−NO2基(R'はC1〜C10アルキルまたはアリール基である)の中から選択される〕
【請求項8】
Ar1およびAr2が互いに独立して、置換されていてもよいフェニル、ビフェニル、アントラセンおよびフェナントレン基の中から選択される請求項7に記載のブロックコポリマー。
【請求項9】
光活性モノマーが式(III)または(IV)を有する請求項7に記載のブロックコポリマー:
【化3】

〔ここで、
Ar1およびAr2は置換されていてもよいアリール基、
1およびW2はH、−CN、−COOH、−COOR'、−OH、−SO2R'および−NO2基(R'はC1−C10アルキルまたはアリール基である)の中から選択される〕
【請求項10】
上記発色団が下記の中から選択される請求項1〜9のいずれか一項に記載のブロックコポリマー:
【化4】

〔ここで、
1およびW2はH、−CN、−COOH、−COOR'、−OH、−SO2R'および−NO2基(R'はC1−C10アルキルまたはアリール基であり、2つのフェニル基はそれぞれ置換されていてもよい)の中から選択される〕
【請求項11】
Ar1がフェニル基またはビフェニル基で、Ar2がフェニルまたはビフェニル基で、フェニルおよび/またはビフェニル基で、それぞれ置換されていてもよい請求項10に記載のブロックコポリマー。
【請求項12】
1およびW2がCNを表し、Ar2がフェニルまたはビフェニル基で、Ar1がフェニルまたはビフェニル基またはR5O−、R5S−、(R5は置換または非置換のアルキルまたはアリール基を表す)によってパラ配位で置換されたビフェニル基である請求項11に記載のブロックコポリマー。
【請求項13】
光活性モノマーが下記式のMeAAまたはMeMMAである請求項7に記載のブロックコポリマー:
【化5】

【請求項14】
発色団CRがスチルベン、スピロピラン、アゾベンゼン、ビスアゾベンゼン、トリアゾベンゼンまたはアゾキシベンゼン基を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項15】
ソフトブロックAの数平均分子量がMn>2000g/mol、有利には>5000g/mol、好ましくは>10,000g/mol、さらに好ましくは50,000g/molである請求項1〜14のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項16】
ブロックAのTgが−30℃〜−3℃である請求項14または15に記載のブロックコポリマー。
【請求項17】
ブロックAが少なくとも一種のビニル、ビニリデン、ジエン、オレフィン、アリルまたは(メタ)アクリルモノマーの重合で得られる請求項1〜16のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項18】
ブロックAが主モノマーとしてブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートを含む請求項16に記載のブロックコポリマー。
【請求項19】
ブロックBが少なくとも一種の光活性モノマーを含み、必要に応じてさらに光活性モノマーと共重合可能な少なくとも一種の他のモノマーを含む請求項1〜18のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項20】
ブロックBが式(IX)の共同効果(cooperatif)を有するモノマーをさらに含む請求項17〜19のいずれか一項に記載のブロックコポリマー:
【化6】

(ここで、
X、GおよびLは請求項2〜4のいずれか一項に定義のもの、
Ar3は一種以上の置換基で置換されていてもよい芳香族基を表す)
【請求項21】
上記置換基が下記(i)〜(iii)の中から選択される請求項20に記載のブロックコポリマー:
(i)ハロゲン、好ましくは塩素、
(ii)−COOY、−CONYY'、−OY、−SYまたは−C(=O)Y(YおよびY'はHまたはC1−C10アルキル基を表す)、
(iii)−CYY’Y’’(Y、Y’およびY’’はHまたはC1−C10アルキル基を表す)
【請求項22】
Ar3がフェニル基である請求項20または21に記載のブロックコポリマー。
【請求項23】
共同効果を有するモノマーが下記の中から選択される請求項20に記載のブロックコポリマー:
【化7】

【請求項24】
ブロックBが10〜80重量%の少なくとも一種の光活性モノマーと、10〜80重量%の共同効果を有する少なくとも一種のモノマーとを含み、必要に応じてさらに一種以上の第3のモノマーを含む請求項20〜25のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載のブロックコポリマーと、熱可塑性ポリマー質、熱可塑性エラストマーまたは熱硬化性ポリマーとのブレンド物。
【請求項26】
0〜50重量%、有利には0〜25重量%、好ましくは5〜10重量%の熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマーまたは熱硬化性ポリマーに対して、50〜100重量%、有利には75〜100重量%、好ましくは90〜100重量%の上記ブロックコポリマーを含む請求項25に記載のブレンド物。
【請求項27】
熱可塑性ポリマーがメチルメタクリレートまたはポリカーボネートのホモポリマーまたはコポリマーである請求項25または26に記載のブレンド物。
【請求項28】
請求項1〜24のいずれか一項に記載のブロックコポリマーまたは請求項25〜27のいずれか一項に記載のブレンド物を含む3D光メモリ。
【請求項29】
正方形または長方形のプレート、立方体またはディスクの形をした請求項28に記載の3D光メモリ。
【請求項30】
請求項1〜24のいずれか一項に記載のブロックコポリマーまたは請求項25〜27のいずれか一項に記載のブレンド物の、データの光学式記録での使用。
【請求項31】
請求項1〜24のいずれか一項に記載のブロックコポリマーまたは請求項25〜27のいずれか一項に記載のブレンド物の3D光メモリとしての使用。

【公表番号】特表2011−522917(P2011−522917A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511058(P2011−511058)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050913
【国際公開番号】WO2009/153473
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】