光発振装置及び記録装置
【課題】簡易な構成で所望のパルス光周波数が容易に得られる光発振装置、記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部2と、ゲイン電流を注入するゲイン部3を含む自励発振半導体レーザ1において、負のバイアス電圧を制御することにより発振光の周波数をパルス毎に制御する。負のバイアス電圧の制御は、位相比較部37で得られた位相差に基づいて、自励発振半導体レーザ1から発振光が発振される発振期間における負のバイアス電圧を制御することにより行う。
【解決手段】二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部2と、ゲイン電流を注入するゲイン部3を含む自励発振半導体レーザ1において、負のバイアス電圧を制御することにより発振光の周波数をパルス毎に制御する。負のバイアス電圧の制御は、位相比較部37で得られた位相差に基づいて、自励発振半導体レーザ1から発振光が発振される発振期間における負のバイアス電圧を制御することにより行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、レーザ光を出射する光発振装置、及びこの光発振装置を用いた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会のIT(Information technology)化が進むにつれ、通信の大容量化、通信の高速化がより要求されるようになっている。このため、情報を伝播する媒体には、無線通信のような例えば周波数が2.4GHz帯、5GHz帯の電磁波だけでなく、例えば波長が1.5μm帯の光から、周波数が数百THz領域の光が用いられるようになり、光通信技術が急速に普及している。
【0003】
また、光による情報の伝送は、例えば光ファイバ通信のような光通信だけでなく、記録媒体への情報の記録、再生手段としても用いられるなど、光情報技術は、今後の情報化社会の発展を支える重要な基盤となっている。
【0004】
このような光による情報の伝送、記録には、特定のパルスを発振する光源が必要とされる。特に通信、記録・再生情報の大容量化、高速化には、高出力かつ短パルスの光源が不可欠であり、これらを満たす光源として様々な半導体レーザが研究・開発されている。
【0005】
例えば、シングルモードレーザを用いて光ディスクに記録された情報の再生を行う場合には、光学系の干渉によるノイズが生じるだけでなく、温度変化によっても発振波長が変化し、出力変動やノイズが発生する。
このため、外部から高周波重畳回路による変調を行うことで、レーザをマルチモード化し、温度変化や光ディスクからの戻り光による出力変動を抑制することが行われている。ところが、この方法では、高周波重畳回路を付加する分だけ装置が大きくなり、またコストも増大する。
【0006】
これに対して、自励発振半導体レーザでは、高周波で点滅しながら直接マルチモード発振するため、高周波重畳回路が無くても、出力変動を抑えることができる。
【0007】
例えば、自励発振のGaN青紫色半導体レーザによって、1GHzの周波数においてパルス幅15psec、10Wの発振出力が可能な光源を実現している(非特許文献1を参照)。
この半導体レーザは、過飽和吸収体部(Saturable absorber section)と、過飽和吸収体部を挟むように設けられる二つのゲイン部(Gain Section)と、によって構成されるTriple-Sectional型の自励発振半導体レーザである。
【0008】
この半導体レーザでは、過飽和吸収体部に逆バイアスの電圧を加える。そしてこの時、二つのゲイン部に対して電流を注入することにより、例えば波長407nmのレーザ光が出射される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】[Hideki Watanabe, Takao Miyajima, Masaru Kuramoto, Masao Ikeda, and Hiroyuki Yokoyama]、Applied Physics Express 3,(2010)052701
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
こうした高出力かつパルス幅の短い光源は、例えば二光子吸収記録媒体への記録光源や、非線形光学生体イメージング、マイクロマシニング等、様々な分野への応用が期待される。
【0011】
他にも近年においては、信号転送の高速化のために、シリコン電子デバイス間を光配線で接続し、光で信号転送を行う光回路も提案されている。将来、光回路による演算処理を可能とするためには、電子回路のマスタークロックを発生させる光発振子が必要となる。
こうした光発振子として自励発振型のレーザを用いる場合には、用途に応じて特定の周波数のものを用意しなければならない。
また、記録再生装置においては、光記録媒体から読み取ったウォルブ信号や、光記録媒体を回転させるスピンドルモータからの回転同期信号に同期させた記録信号を光源から出射させる必要がある。
【0012】
しかし、自励発振型のレーザの周波数は、一般的にその構造によって特有のパルス光周波数に決まってしまう。このため、用途毎にそれぞれ自励発振型のレーザを製造する必要がある上に、非常に高い製造精度も必要とする。したがって、コストは高くなる。
【0013】
上述の点を鑑みて、本技術は、簡易な構成で所望のパルス光周波数が容易に得られる光発振装置、記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本技術による光発振装置は、二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザを有する。また、自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、分離された一方の発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子を有する。
【0015】
さらに、本技術による光発振装置は、受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、マスタークロック信号とパルスとの位相差を算出する位相比較部を有する。また、マスタークロック信号のタイミングに合わせて記録信号を生成して、記録信号をゲイン電流として自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する記録信号生成部を有する。また、位相差に基づいて、自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間における負のバイアス電圧を制御することにより、発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部を有する。
【0016】
また、本技術による記録装置は、上述の光発振装置において、信号生成部の代わりに記録信号を生成する記録信号生成部を設け、さらに、上述の光分離部によって分離されたもう一方の発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズを配置したものである。
【0017】
本技術の光発振装置、及び記録装置によれば、発振期間において負のバイアス電圧を制御することにより、発振光の周波数をパルス毎に制御することができ、パルス間の間隔を調整することができる。
このため、任意の発振周波数で、容易に自励発振半導体レーザを発光させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本技術の光発振装置及び記録装置によれば、任意の発振周波数の発振光を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自励発振半導体レーザを示す概略構成図である。
【図2】自励発振半導体レーザに注入したゲイン電流と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光の発振周波数との関係を示す図である。
【図3】自励発振半導体レーザに印加した逆バイアス電圧と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光の発振周波数との関係を示す図である。
【図4】自励発振半導体レーザに印加したゲイン電流と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光のピークパワーとの関係を示す図である。
【図5】自励発振半導体レーザに印加したゲイン電流と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光のピークパワーとの関係を示す図である。
【図6】自励発振半導体レーザに注入した逆バイアス電圧と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光のピークパワーとの関係を示す図である。
【図7】図7Aは、自励発振半導体レーザに注入したゲイン電流、電荷密度及び発光閾値の関係を示す図であり、図7Bは、このときに自励発振半導体レーザ1から出射するパルス光の波形を示す図である。
【図8】図8Aは、二値信号を示す図であり、図8Bは、このときに自励発振半導体レーザに注入したゲイン電流、電荷密度及び発光閾値の関係を示す図であり、図8Cは、このときに自励発振半導体レーザ1から出射するパルス光の波形を示す図である。
【図9】図9Aは、自励発振半導体レーザから出射した発振光の波形を示す図であり、図9Bは、自励発振半導体レーザに印加した逆バイアス電圧を示す図である。
【図10】図10Aは、自励発振半導体レーザから出射した発振光の波形を示す図であり、図10Bは、自励発振半導体レーザに印加した逆バイアス電圧を示す図である。
【図11】本技術の一実施形態に係る記録装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本技術の実施形態に係る記録装置、及びその記録装置に用いる自励発振半導体レーザの一例を、図を参照しながら説明する。本技術の実施形態は以下の順で説明する。なお、本技術は以下の例に限定されるものではない。
1.自励発振半導体レーザの構成
2.記録装置の構成
【0021】
〈1.自励発振半導体レーザの構成〉
まず、本技術の記録装置に用いる自励発振半導体レーザの構成について説明する。
図1は、本技術における自励発振半導体レーザ1を示す概略構成図である。この自励発振半導体レーザ1は、上述の非特許文献1において示されている自励発振半導体レーザである。
【0022】
自励発振半導体レーザ1は、過飽和吸収体部2と、第1のゲイン部3と、第2のゲイン部4とによって構成されるTriple-Sectional型の自励発振半導体レーザである。
図1に示すように、過飽和吸収体部2は、第1のゲイン部3と、第2のゲイン部4とに挟まれるように位置する。
過飽和吸収体部2を設けると、吸収体に入射する光の強度が大きくなるにつれて吸収体の吸収率が低下し、強度の大きいパルスしか吸収体を透過できないため、より狭いパルスが得られる。
また、第1のゲイン部3及び第2のゲイン部4にはゲイン電流が注入される。
【0023】
n型GaN基板6の(0001)面上には、GaInN/GaN/AlGaN材料による二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造が形成されている。
すなわち、n型GaN基板6の一方の表面上に、n型GaN層7、n型AlGaNクラッド層8、n型GaNガイド層9、二重量子井戸活性層10がこの順で積層して形成される。さらに、二重量子井戸活性層10の他方の表面上に、GaInNガイド層11、p型AlGaN層12、p型AlGaN障壁層13、p型AlGaN/GaN超格子第一クラッド層14がこの順で積層して形成される。
【0024】
このヘテロ構造は、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって形成することができる。
【0025】
このp型AlGaN/GaN超格子第一クラッド層14の中央部には、図1に示すようにリッジ構造が形成され、リッジ上面には、p型GaNコンタクト層16が形成される。また、リッジ側面や、p型AlGaN/GaN超格子第一クラッド層14のリッジが形成されていない部分の上には、SiO2/Si絶縁層15が形成される。
【0026】
p型GaNコンタクト層16及びSiO2/Si絶縁層15上には、p型電極である第1の主電極17、第2の主電極18並びに副電極19がオーミックコンタクトにより形成される。
具体的には、第1のゲイン部3上には第1の主電極17が形成され、過飽和吸収体部2上には副電極19が形成される。また、第2のゲイン部4上には、第2の主電極18が形成される。これらの電極は、溝状の分離部20によって分離されており、互いに電気的に分離される。
また、n型GaN基板6のn型GaN層7とは反対側の面には、n型の下部電極5がオーミックコンタクトにより形成される。
【0027】
図1に示すように、この自励発振半導体レーザ1では、副電極19によって、過飽和吸収体部2に逆バイアス電圧(負の値のバイアス電圧)を加える。そしてこの時、第1のゲイン部3及び第2のゲイン部4に対してそれぞれ第1の主電極17及び第2の主電極18から電流(ゲイン電流)を注入することにより、レーザ光が出射される。
【0028】
本提案者らは、この自励発振半導体レーザ1に対し、上述のゲイン電流の変化よって発振光を変調し、かつ、上述の逆バイアス電圧を変化させることにより発振周波数を制御できることを見出した。
また、本提案者らは、ゲイン電流の変化によって発振光を変調し、かつ、自励発振半導体レーザ1の発振期間におけるゲイン電流の値を変化させることにより、発振周波数を制御できることを見出した。
さらに、本提案者らは、発振期間において逆バイアス電圧を変動させることにより、発振期間内に、発振光のパルス毎の周期を微調整できることを見出した。
【0029】
すなわち、本技術において、発振光の変調は、ゲイン電流を制御することで行い、発振周波数の制御は、発振期間における逆バイアス電圧またはゲイン電流による直流信号の値の制御によって行われる。また、発振期間内における発振光のパルス毎の周期の微調整は、発振期間における逆バイアス電圧を変動させることで行う。
【0030】
以下に、本技術の自励発振半導体レーザ1の特性を調べた実験結果を示す。
図2は、本技術の自励発振半導体レーザ1において、発振時の逆バイアス電圧(直流電圧)を一定にし、ゲイン電流を変化させたときの発振光の発振周波数を測定した結果である。図2の横軸はゲイン電流(Igain)であり、縦軸は、発振周波数である。ここでは、逆バイアス電圧(Vsa)を、0Vから−6.0Vまで1.0V刻みで変化させ、それぞれの電圧値における発振周波数の変化を調べた。
【0031】
図2に示すように、逆バイアス電圧(Vsa)が一定であるとき、ゲイン電流(Igain)を大きくすると、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の発振周波数は大きくなることがわかる。したがって、自励発振半導体レーザ1の発振時において、ゲイン電流(直流電流)の値を変化させることで、発振周波数を制御することが可能である。
【0032】
図3は、ゲイン電流(Igain)を一定にし、自励発振半導体レーザ1の発振時における逆バイアス電圧(Vsa)の変化に対する発振周波数の変化を測定した結果である。図3の横軸は逆バイアス電圧(Vsa)であり、縦軸は、発振周波数である。ここでは、ゲイン電流(Igain)を、80mAから200mAまで20mA刻みで変化させ、それぞれの電流値における発振周波数の変化を調べた。
【0033】
図3に示すように、ゲイン電流(Igain)が一定であるとき、逆バイアス電圧(Vsa)を負の方向に大きくすると、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の発振周波数は小さくなることがわかる。すなわち、自励発振半導体レーザ1の発振時(発振期間)において、逆バイアス電圧の値を変化させることで、発振周波数を制御することが可能である。
【0034】
図4は、逆バイアス電圧(Vsa)を一定にしたときの自励発振半導体レーザ1に印加したゲイン電流(Igain)と、自励発振半導体レーザ1からの発振光のピークパワーとの関係を示す図である。図4の横軸はゲイン電流(Igain)であり、縦軸は、ピークパワーである。ここでは、逆バイアス電圧(Vsa)は、0Vから−7.0Vまで1.0V刻みで変化させ、それぞれの電圧値におけるピークパワーを調べた。
【0035】
図4からわかるように、ゲイン電流(Igain)が小さいときには、自励発振半導体レーザ1は発振しない。また、ゲイン電流(Igain)が所定の値よりも大きくなると自励発振半導体レーザ1は発振を始め、それ以降は、ゲイン電流(Igain)が大きくなるほど発振光のピークパワーも大きくなる。
このように、ゲイン電流の値によって、ピークパワーの値が変化するので、ゲイン電流によりピークパワーを制御することが可能である。
【0036】
また、図5は、自励発振半導体レーザ1に注入したゲイン電流(Igain)と、自励発振半導体レーザ1からの発振光のピークパワーとの関係を示す図である。図5では、逆バイアス電圧(Vsa)が−5.0Vから−6.5Vまで0.5V刻みの値の場合について、ゲイン電流(Igain)に対するピークパワーを調べた。
【0037】
図5に示すように、逆バイアス電圧(Vsa)が例えば−5.0Vから−6.5Vまでの範囲において、ゲイン電流(Igain)が約100mAよりも小さいときには、自励発振半導体レーザ1の発振が停止する。一方で、例えばゲイン電流(Igain)が250mAの場合には、自励発振半導体レーザ1からの発振光に対して、3000mW以上のピークパワーが得られる。
【0038】
したがって、例えば、図5の線L1に示すゲイン電流(Igain)が250mAの時を自励発振半導体レーザ1のオン(発振)状態とし、線L2に示すゲイン電流(Igain)が0mAの時を自励発振半導体レーザ1のオフ(非発振)状態とすることができる。
すなわち、例えばゲイン電流(Igain)を、250mAと0mAとで切り替えを行うことにより、自励発振半導体レーザ1のオン(発振)とオフ(非発振)を制御することができる。
このように、ゲイン電流の制御を行うことで、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の変調を行うことが可能である。
【0039】
また、図6は、自励発振半導体レーザ1に印加した逆バイアス電圧(Vsa)と、自励発振半導体レーザ1から出射した発振光のピークパワーとの関係を示す図である。図6の横軸は逆バイアス電圧(Vsa)であり、縦軸は、ピークパワーである。ここでは、ゲイン電流(Igain)を60mAから200mAまで20mA刻みの値とし、それぞれのゲイン電流値におけるピークパワーを調べた。
【0040】
図6からわかるように、逆バイアス電圧(Vsa)が約−7.0Vよりも負の方に大きいときには、自励発振半導体レーザ1は発振しない。逆バイアス電圧(Vsa)が約−7.0Vよりも正の方向に大きくなると自励発振半導体レーザは発振を始め、逆バイアス電圧(Vsa)が正の方向に大きくなるほど発振光のピークパワーは大きくなる。そして、逆バイアス電圧(Vsa)が所定の値を超えると、逆バイアス電圧(Vsa)が正の方向に大きくなるほど発振光のピークパワーが小さくなる。
このように、逆バイアス電圧(Vsa)の値によっても発振光のピークパワーが変化するので、逆バイアス電圧(Vsa)によって自励発振半導体レーザ1の発振光のピークパワーを制御することが可能である。
なお、この図4,5,6で示すピークパワー値は光出力の平均パワーモニター値と高速フォトディテクタ(40GHz)で測定したパルス幅から換算している。ディテクタの帯域不足で光ストリークカメラで測定した実際のパルス幅15ps(最小)に対して40ps程度までしか検出できていないため、ピーク値が低めに表示されている。
【0041】
自励発振半導体レーザ1の上述した特性は、図7A、図7Bを用いて以下のように説明できる。
図7Aは、自励発振半導体レーザ1に注入したゲイン電流と、電流の注入により自励発振半導体レーザ1内に蓄積された電荷の密度の関係を示す図であり、図7Bは、このときに自励発振半導体レーザ1から出射される光の波形を示す図である。なお、このときの逆バイアス電圧は一定の値としている。
【0042】
図7Aにおいて、特性L3は、自励発振半導体レーザ1に注入した電流値であり、特性L4は、そのときに自励発振半導体レーザ1内に蓄積された電荷の密度である。また、特性L5は、逆バイアス電圧Vsaで決まる発光閾値である。
【0043】
矢印A1に示すように、ゲイン電流を大きくしていくと、自励発振半導体レーザ1内に蓄積された電荷の密度が高くなる。そして、この電荷密度が特性L5に示す発光閾値に到達すると、図7Bに示すパルス光Pu1が放出される。このとき、パルス光の放出により電荷が消費され、矢印A2に示すように、自励発振半導体レーザ1内の電荷密度は低下する。
そして再びゲイン電流によって自励発振半導体レーザ1内に電荷が蓄積され、電荷密度が特性L5の発光閾値に到達するとパルス光を放出する。こうした過程を繰り返すことによって、自励発振半導体レーザ1はパルス光の連続発振を行う。
【0044】
ところで、自励発振半導体レーザ1に蓄積される電荷は、パルス光の放出によって消費される以外に、自励発振半導体レーザ1から自然に流出する(消費される)ことでも失われる。したがって、ゲイン電流が小さいときには、電荷を自励発振半導体レーザ1に蓄積させることができず、電荷密度が発光閾値に到達しない。このため、図5に示したように、ゲイン電流をある所定の値よりも小さくすると、自励発振半導体レーザ1は発振しなくなる。このことによって自励発振半導体レーザ1のオン(発振)とオフ(非発振)とを切り替えることができる。
【0045】
また、特性L5に示す発光閾値は、自励発振半導体レーザ1に印加する逆バイアス電圧の値によって変化する。
例えば、逆バイアス電圧を負の方向に大きくすると、特性L5に示す電荷密度に対する発光閾値は、矢印A3に示すように大きくなる。そうすると、電荷密度が発光閾値に到達するまでの時間が長くなるので、パルス光が放出される間隔は長くなり、自励発振半導体レーザ1の発振周波数は小さくなる。
すなわち、この原理により、自励発振半導体レーザ1の発振周波数を逆バイアス電圧によって制御することができる。
【0046】
また、逆バイアス電圧を負の方向に大きくすることにより発光閾値が大きくなると、レーザ光の発振に必要とされる電荷密度が大きくなり、発振時に消費される電荷量も大きくなるので、放出されるパルス光のエネルギーも大きくなる。このため、バイアス電圧によって、自励発振半導体レーザ1の発振光の出力パワーを制御することができる。
【0047】
また、ゲイン電流の値が大きくなると、電荷密度が特性L5に示す発光閾値に到達するまでの時間が短くなる。このため、パルス光が放出される間隔は短くなり、自励発振半導体レーザ1の発振周波数は大きくなる。
すなわち、この原理により、自励発振半導体レーザ1の発振周波数をゲイン電流によって制御することができる。
【0048】
ゲイン電流の制御によって、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の変調が可能となる原理について、図8A〜図8Cをもとに以下に説明する。
図8Aに示すように、例えば自励発振半導体レーザ1の発振光に対して、0、1、1、0、0の順に二値信号を載せる場合を考える。図8Bは、自励発振半導体レーザ1に印加した逆バイアス電圧の波形(特性L6)、このときの発光閾値(特性L7)、自励発振半導体レーザに注入したゲイン電流の波形(特性L8)、自励発振半導体レーザ1に蓄えられる電荷密度(特性L9)を示す図である。また、図8Cは、このときに自励発振半導体レーザ1から出射する発振光のパルス波形(特性L10)を示す図である。
なお、図8Cに示すように、自励発振半導体レーザ1から出射するパルス光2個分が、二値信号の‘1’に対応するものとする。また、二値信号の‘0’及び‘1’は、互いに等しい周期で表現されるものとする。
【0049】
まず、二値信号の‘0’を自励発振半導体レーザ1によって表現するときには、図8Bに示す期間T1(非発振期間)において特性L9に示す電荷密度が、特性L7に示す発光閾値を超えないように、特性L8に示すゲイン電流の値を低く設定する。これにより、電荷密度は発光閾値を超えないため、期間T1において、自励発振半導体レーザ1は発振しない。
【0050】
一方、二値信号の‘1’を自励発振半導体レーザ1によって表現するときには、図8Bに示す期間T2(発振期間)において、特性L8に示すゲイン電流を大きくする。これにより、矢印A5に示すように電荷密度は上昇し、発光閾値に到達する。その結果、図8Cに示すパルス光Pu2が放出される。
【0051】
パルス光Pu2の放出により電荷が消費されることで、図8Bの矢印A6に示すように、電荷密度は低下する。一方、特性L8に示すゲイン電流は、期間T2(発振期間)において、所定の値まで上昇するとその後は一定に維持される。すなわち、ゲイン電流は、発振期間において一定の値を維持した直流電流とされる。このため、再び自励発振半導体レーザ1には電荷が蓄えられ、矢印A5に示すように電荷密度が上昇する。一方、特性L6に示す逆バイアス電圧は、期間T2内において値が期間T1と等しい直流電圧であるので、特性L7に示す発光閾値は変化しない。したがって、電荷密度は再び発光閾値に到達する。これにより、図8Cに示すパルス光Pu3が放出され、二値信号の‘1’が表現される。
【0052】
また、二値信号の‘1’から‘0’へ切り替わるときには、図8Bの期間T3(非発振期間)に示すように、特性L8のゲイン電流を低下させる。これにより、期間T3においては、特性L9に示す電荷密度が発光閾値に到達しなくなる。このため、自励発振半導体レーザ1は発振せずに停止状態となり、二値信号の‘0’が表現される。
【0053】
このように、ゲイン電流を、非発振期間(期間T1、及びT3)では電荷密度が発光閾値に到達しないような電流値とし、発振期間(期間T2)では、電荷密度が発光閾値に到達するような電流値に設定することで、発振光の変調を行うことができる。
【0054】
また、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の発振周波数やピークパワーは、矢印A8、A9に示すように、発振期間T2におけるゲイン電流、又は逆バイアス電圧を変化させることにより制御することができる。
なお、図8Bに示す矢印A8、A9の変動で行う発光周波数の調整は、所望の信号に応じた発振周波数を得るための調整であり、発振期間内に発振される複数のパルス光の平均的な発振周波数の値を決定するための調整である。
【0055】
ところで、自励発振半導体レーザ1に蓄積された電荷はパルス光の放出によって消費される以外に、自励発振半導体レーザ1から自然に流出する(消費される)ことでも失われる。このため、自励発振半導体レーザ1に蓄積させることのできる電荷量(電荷密度)には限界がある。このため、バイアス電圧の値を負の方向に大きくし過ぎると、蓄積可能な電荷密度に対して発光閾値が大きくなり過ぎ、発光閾値にまで、電荷密度を高めることができなくなる。このため、図4に示したように、バイアス電圧を負の方向に所定の値にまで大きくすると、自励発振半導体レーザ1は発振しなくなる。
【0056】
このように、バイアス電圧には、負の値の領域において自励発振半導体レーザ1が発振しなくなる閾値が存在する。したがって、矢印A9の変動で発振周波数やピークパワーを制御する場合には、自励発振半導体レーザが発振可能な範囲内で逆バイアス電圧を変動させる。
【0057】
また、前述したように、ゲイン電流が低すぎると電荷密度が発光閾値に到達せず、自励発振半導体レーザは発振しなくなる。このため、矢印A8の変動で発振周波数やピークパワーを制御する場合においても、自励発振半導体レーザが発振可能な範囲内でゲイン電流を変動させる。
【0058】
なお、期間T2において、ゲイン電流を上昇させ始めてから自励発振半導体レーザ1がパルス光Pu2を放出するまでの期間T4は、期間T2におけるその他のパルス光の発振周期よりも長くなる。したがって、非発振期間から発振期間に切り替わる際には、ゲイン電流の立ち上げ時点t1を、非発振期間T1内にずらし前倒ししたほうがよい。
【0059】
また、非発振期間T3における期間T5に示すように、発振期間から非発振期間に切り替わるときにおいて、実際にゲイン電流を十分に低下させるには時間差が生じることがある。この場合、非発振期間においてもゲイン電流が自励発振半導体レーザ1に注入されることになるが、すくなくとも、発振期間の終了直後から、自励発振半導体レーザ1の発振周期よりも短い期間のうちにゲイン電流を例えば0mAにまで低下させることが好ましい。これにより、例えば期間T5における特性L9に示すように、電荷密度が発光閾値に到達しないので非発振期間において、不要なパルス光の発振が生じるのを抑制できる。
【0060】
この自励発振半導体レーザ1の変調動作の確認実験を行った結果を図9A、図9Bに示す。図9Aは、自励発振半導体レーザ1に注入したゲイン電流の波形を示す図である。また、図9Bは、自励発振半導体レーザ1から出射した発振光の波形を示す図である。
なお、ゲイン電流は、期間T6に示す発振期間(2μsec)において250mAとし、期間T7に示す非発振期間(10μsec)において0mAとした。また、逆バイアス電圧は、発振期間及び非発振期間の両方において一定の−6Vとした。
【0061】
図9A及び図9Bからわかるように、ゲイン電流が0mAである期間T7において自励発振半導体レーザ1は発振しなかった。一方で、ゲイン電流が250mAである期間T6では、自励発振半導体レーザ1は複数のパルス光を連続発振し、12Wの発振出力が得られた。
このことから、ゲイン電流を250mAと0mAとで切り替えることにより、自励発振半導体レーザ1のオン状態(発振期間)とオフ状態(非発振期間)との切り替えが可能であることがわかる。すなわち、ゲイン電流を制御することで、自励発振半導体レーザ1が出射する発振光の変調を行うことができる。
【0062】
ところで、図8A〜図8Cに示した発振周波数の制御では、発振期間中におけるゲイン電流及び逆バイアス電圧はほぼ一定の直流信号とされる。このため、発振期間中は、一定の直流信号で決まる発振周波数のパルス光が発振されるが、ゲイン電流の立ち上がりは図8Bの期間T4に示すように矩形とはならない。また、一回目のパルス光が発振された後も、期間T8に示すように、ゲイン電流が一定値になるまでにゲイン電流が変動するため、電荷密度が閾値電圧まで達する時間が発振期間内で異なることがある。
【0063】
そうすると、図8Cに示すように、1回目のパルス光と2回目のパルス光との間隔a1が、2回目のパルス光と3回目のパルス光との間隔a2と異なってしまうという問題がある。このため、発振期間内に発生する複数のパルス光において、発振期間内におけるパルス光毎の周期を微調整することで、発振期間内に発振されるパルス光の間隔を調整したいという要請がある。
【0064】
以下に、図10A〜図10Cを用いて、ゲイン電流を制御することにより自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の変調をする場合において、発振期間内に発振されるパルス光の間隔を微調整することができる原理について説明する。図10A〜図10Cにおいて、図8A〜図8Cに対応する部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0065】
発光期間内に発振されるパルス光の間隔を調整するため、図10Bに示すように、特性L11に示す逆バイアス電圧の発光期間T2内の所望の期間T6において、逆バイアス電圧を矢印A10で示すように変動させる。そうすると、図10Bの特性L12に示すように、閾値電圧が発光期間T2の所望の期間T8において変動する。発光期間内においてゲイン電流は一定値であるから、閾値電圧が変動するとその閾値電圧に電荷密度が到達するまでの時間が変化し、発振されるパルス光の周期が変動する。尚、逆バイアス電圧は、期間T8以外では、一定の値を維持する直流電圧とされている。
【0066】
図10A〜図10Cに示す例では、期間T8において逆バイアス電圧を大きくすることで閾値電圧を下げ、閾値電圧に電荷密度が到達するまでの時間を短くしている。これにより、図10Cに示すように、1回目のパルス光と2回目のパルス光の間隔a2を、図8Cに示すパルス光の間隔a1よりも短くすることができる。このように、発振期間内における発振される全てのパルス光の周期を一定にすることができ、パルス光の間隔を一定にすることができる。
【0067】
以上のように、本技術では、発振期間内において逆バイアス電圧のプロファイルを制御して閾値電圧を変動させることで、発振される各パルス光の周期をパルス光毎に微調整し、発振期間内のパルス光の周期を一定にすることができる。これにより、発振期間内に発振されるパルス光の間隔が一定となる。したがって、ゲイン電流の変動によってオン状態(発振期間)とオフ状態(非発振期間)との切り替えを行う自励発振半導体レーザにおいて、発振期間内のゲイン電流の変動に伴うパルス間隔の変動を、逆バイアス電圧を制御することにより補正することができる。
【0068】
ところで、図10A〜図10Cに示したように、発振期間中に逆バイアス電圧を変動させることでパルス光の間隔を調整した場合、逆バイアス電圧の値が変わるため、発振期間中において発生する各パルス光の出力パワーが変わってしまう。一方、図5から明らかなように、ゲイン電流が200mA以上で、逆バイアス電圧が−5.5V〜−6.5V程度のところでは、ピークパワーにあまり変動がない。すなわち、ゲイン電流が200mA以上であり、逆バイアス電圧が−5.5V〜−6.5Vの範囲内である場合には、逆バイアス電圧を変動させてパルス光の間隔を調整したとしても、出力パワーの変動を抑えることができる。
【0069】
このことから、発振期間中におけるパルス光間隔の調整は、ゲイン電流が200mA以上で、逆バイアス電圧が−5.5V〜−6.5Vの範囲内にあるときに、出力パワーの変化を伴うことなく、行うことができる。
【0070】
〈2.記録装置の構成〉
上述の特性を有する自励発振半導体レーザ1を用いて構成した記録装置について、以下に説明する。
図11は、本技術の一実施形態に係る記録装置100を示す概略構成図である。本実施形態の記録装置100は、光発振装置である光発振部110と、光発振部110から出射した発振光を光記録媒体43上に集光する対物レンズ41と、を有する。
【0071】
光発振部110は、光源として上述の自励発振半導体レーザ1と、自励発振半導体レーザ1からの光をコリメートするコリメータレンズ31と、コリメータレンズ31を透過した光を分離する光分離部32を備える。
また、光発振部110は、光分離部32によって分離された一方の光を集光する集光レンズ33と、集光レンズ33によって集光された光を受光する受光素子34を備える。
【0072】
さらに、光発振部110は、受光素子34によって受光された光を検出するパルス検出部35と、マスタークロック信号を生成する基準信号生成部36と、パルス検出部35によって検出された光の位相とマスタークロック信号の位相とを比較する位相比較部37を備える。
また、本実施形態の光発振部110は、マスタークロック信号にタイミングを合わせて、記録信号を生成する記録信号生成部39を備える。
また、本実施形態の光発振部110は、位相比較部37が求めた位相差や、記録信号生成部39が生成した記録信号に基づいてゲイン電流及び逆バイアス電圧を制御する制御部45を備える。
【0073】
まず、記録信号生成部39は、基準信号生成部36によって生成されるマスタークロックのタイミングに合わせて、例えば光ディスク等の光記録媒体に記録する記録信号(二値信号)を生成する。
【0074】
このとき、既述のように、自励発振半導体レーザ1の非発振期間(二値信号の‘0’)におけるゲイン電流はパルス光が発振しない大きさに制御される。また、発振期間(二値信号の‘1’)におけるゲイン電流は、所望の期間において閾値電圧まで電荷密度が蓄積される大きさに制御される。すなわち、図10Bに示すように、非発振期間と発振期間とで異なる値の直流電流をゲイン電流として自励発振半導体レーザ1に与えることにより、出射する発振光を記録信号に応じて変調することができる。そして、記録信号に応じて制御されたゲイン電流が自励発振半導体レーザ1に入力され、自励発振半導体レーザ1の発振光が変調される。
【0075】
記録信号に応じて変調された自励発振半導体レーザ1からの発振光は、コリメータレンズ31によってコリメートされた後、光分離部32に入射する。
光分離部32は、例えばビームスプリッタ等によって構成され、自励発振半導体レーザ1から出射した光を二つの光束に分離する。二つに分離された光束のうち、例えば、光分離部32によって反射された光束は、集光レンズ33によって受光素子34上に集光される。この受光素子34には、例えばフォトダイオード等が用いられる。
また、パルス検出部35は、コンデンサ44を介して受光素子34に接続され、受光素子34によって受光された光のパルスを検出する。
【0076】
位相比較部37は、基準信号生成部36において生成されたマスタークロックと、パルス検出部35において検出されたパルスの位相とを比較し、両者の位相差を算出する。この位相差に基づき、制御部45においてゲイン電流、又は逆バイアス電圧の値を制御することで、発振周波数を制御する。ここでの発振周波数の制御は、発振期間内における複数のパルス光の平均的な発振周波数の値の調整をする制御であり、図10Bの矢印A8、A9に示すゲイン電流、又は逆バイアス電圧の変動で行う。
なお、発振周波数の調整を逆バイアス電圧の値で制御する場合には、記録信号生成部39を、制御部45を介さずに自励発振半導体レーザ1に接続することができる。
【0077】
さらに、制御部45では、発振期間において逆バイアス電圧のプロファイルを制御することにより、発振期間内のパルス光の周期をパルス光毎に調整し、パルス光の間隔を調整する。このパルス光の間隔の制御は、図10Bの矢印A10に示す逆バイアス電圧の変動で行う。本実施形態例では、発振期間内に発振されるパルス光の周期をパルス光毎に調整することができるので、発振期間内で発振されるパルス光の間隔を任意に設定することができ、ゲイン電流の立ち上がり時間に起因するパルス光のずれを補正することができる。そして、発振期間内における複数のパルス光の間隔を一定とすることができる。
【0078】
また、制御部45は、受光素子34において受光された光の強度に基づいて、自励発振半導体レーザ1に印加する逆バイアス電圧の制御も行う。すなわち、本実施形態では、逆バイアス電圧の値を制御することにより、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の周波数及びパワーの両方を制御することができる。
【0079】
一方で、光分離部32を透過した自励発振半導体レーザ1からの発振光は、ミラー40に入射する。そして、この発振光はミラー40によって反射されて光路を変え、対物レンズ41に入射する。
対物レンズ41に入射した発振光は、光記録媒体43上に集光される。光記録媒体43は、スピンドルモータ42によって光記録面の面内方向に回転する。また、レーザ光の集光スポットは、図示しないスレッドモータ等によって光記録媒体43の径方向に随時移動する。これにより、自励発振半導体レーザ1からの発振光は、光記録媒体43の光記録面に対して渦巻き状、もしくは同心円状に照射され、発振光に載せられた記録情報が、光記録媒体43に順次記録される。
【0080】
このように、本実施形態の記録装置100では、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光を、自励発振半導体レーザ1に注入するゲイン電流によって変調する。このゲイン電流は、記録信号に対応して生成されるので、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光に対して、記録情報を載せることができる。
【0081】
なお、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光のパワーは、自励発振半導体レーザ1に注入するゲイン電流の値を変化させることによって制御することも可能である(図4参照)。したがって、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の変調が可能な範囲内であれば、発振期間におけるゲイン電流の値を変化させることにより発振光のパワー制御を行ってもよい。
この場合には、制御部45は、受光素子34での受光強度に基づいて、発振期間におけるゲイン電流の値を制御するとともに、位相比較部37によって算出された位相差に基づいて、逆バイアス電圧の制御も行う。
【0082】
なお、本実施形態例では、ゲイン電流の立ち上がり時間に起因してパルス光の周期のずれる場合において、逆バイアス電圧を制御することでパルス光間隔を補正する構成としたが、これに限られるものではない。発振期間内において、パルス光毎に周期を変化させたい場合等、種々の用途に適応可能な構成である。
【0083】
また、自励発振半導体レーザ1からの発振光に載せる信号は、記録信号に限らず任意の信号であってよい。すなわち、記録信号生成部39の代わりに、任意の信号を生成する信号生成部を設けることにより、任意の信号が載った発振光を出射する光発振装置として光発振部110を構成することも可能である。
また、ここでは自励発振半導体レーザ1には、二つのゲイン部を有するTriple-Sectional型の自励発振半導体レーザを用いたが、ゲイン部が一つであるbi-Sectional型の自励発振半導体レーザを用いても、同様の作用、効果を得ることができる。
【0084】
以上、本技術による光発振装置及び記録装置について説明した。本技術は上記実施の形態にとらわれることなく、特許請求の範囲に記載した本技術の要旨を逸脱しない限りにおいて、なお考えられる種々の形態を含むものであることは言うまでもない。
【0085】
また、本技術は、以下のような構成を取ることもできる。
(1)
GaInN/GaN/AlGaN材料による二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザと、
前記自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、
前記分離された一方の前記発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、
前記光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、
マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、
前記マスタークロック信号と前記パルスとの位相差を算出する位相比較部と、
前記マスタークロック信号のタイミングに合わせて記録信号を生成して、前記記録信号を前記ゲイン電流として前記自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する記録信号生成部と、
前記位相差に基づいて、前記自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部と、
を含む記録装置。
(2)
前記発振期間における前記ゲイン電流は、一定の直流電流である
(1)に記載の記録装置。
(3)
前記制御部は、前記発振期間における前記ゲイン電流を制御することにより、前記発振光のパワーを制御する
(2)に記載の記録装置。
(4)
前記制御部は、前記発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振光のパワーを制御する
(2)に記載の記録装置。
(5)
前記自励発振半導体レーザは、活性層、GaInNガイド層、p型AlGaN障壁層、p型GaN/AlGaN超格子第一クラッド層及びp型GaN/AlGaN超格子第二クラッド層を備え、
前記活性層の一方の表面上に、前記GaInNガイド層、前記p型AlGaN障壁層、前記p型GaN/AlGaN超格子第一クラッド層及び前記p型GaN/AlGaN超格子第二クラッド層がこの順に積層された
(1)〜(4)のいずれかに記載の記録装置。
(6)
前記自励発振半導体レーザは、活性層の他方の表面上に順に積層されたn型GaNガイド層、n型AlGaNクラッド層、n型GaN層を備える
(1)〜(4)のいずれかに記載の記録装置。
(7)
GaInN/GaN/AlGaN材料による二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザと、
前記自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、
前記分離された一方の前記発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、
前記光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、
マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、
前記マスタークロック信号と前記パルスとの位相差を算出する位相比較部と、
前記マスタークロック信号のタイミングに合わせて所定の信号を生成して、前記記録信号を前記ゲイン電流として前記自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する信号生成部と、
前記位相差に基づいて、前記自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間において前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部と、
を含む光発振装置。
【符号の説明】
【0086】
1・・・自励発振半導体レーザ、2・・・過飽和吸収体部、3・・・第1のゲイン部、4・・・第2のゲイン部、5・・・下部電極、6・・・n型GaN基板、7・・・n型GaN層、8・・・n型AlGaNクラッド層、9・・・n型GaNガイド層、10・・・二重量子井戸活性層、11・・・GaInNガイド層、12・・・p型AlGaN層、13・・・p型AlGaN障壁層、14・・・p型AlGaN/GaN超格子第一クラッド層、15・・・SiO2/Si絶縁層、15psec・・・パルス幅、16・・・p型GaNコンタクト層、17・・・第1の主電極、18・・・第2の主電極、19・・・副電極、20・・・分離部、31・・・コリメータレンズ、32・・・光分離部、33・・・集光レンズ、34・・・受光素子、35・・・パルス検出部、36・・・基準信号生成部、37・・・位相比較部、39・・・記録信号生成部、40・・・ミラー、41・・・対物レンズ、42・・・スピンドルモータ、43・・・光記録媒体、44・・・コンデンサ、45・・・制御部、100・・・記録装置、110・・・光発振部
【技術分野】
【0001】
本技術は、レーザ光を出射する光発振装置、及びこの光発振装置を用いた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会のIT(Information technology)化が進むにつれ、通信の大容量化、通信の高速化がより要求されるようになっている。このため、情報を伝播する媒体には、無線通信のような例えば周波数が2.4GHz帯、5GHz帯の電磁波だけでなく、例えば波長が1.5μm帯の光から、周波数が数百THz領域の光が用いられるようになり、光通信技術が急速に普及している。
【0003】
また、光による情報の伝送は、例えば光ファイバ通信のような光通信だけでなく、記録媒体への情報の記録、再生手段としても用いられるなど、光情報技術は、今後の情報化社会の発展を支える重要な基盤となっている。
【0004】
このような光による情報の伝送、記録には、特定のパルスを発振する光源が必要とされる。特に通信、記録・再生情報の大容量化、高速化には、高出力かつ短パルスの光源が不可欠であり、これらを満たす光源として様々な半導体レーザが研究・開発されている。
【0005】
例えば、シングルモードレーザを用いて光ディスクに記録された情報の再生を行う場合には、光学系の干渉によるノイズが生じるだけでなく、温度変化によっても発振波長が変化し、出力変動やノイズが発生する。
このため、外部から高周波重畳回路による変調を行うことで、レーザをマルチモード化し、温度変化や光ディスクからの戻り光による出力変動を抑制することが行われている。ところが、この方法では、高周波重畳回路を付加する分だけ装置が大きくなり、またコストも増大する。
【0006】
これに対して、自励発振半導体レーザでは、高周波で点滅しながら直接マルチモード発振するため、高周波重畳回路が無くても、出力変動を抑えることができる。
【0007】
例えば、自励発振のGaN青紫色半導体レーザによって、1GHzの周波数においてパルス幅15psec、10Wの発振出力が可能な光源を実現している(非特許文献1を参照)。
この半導体レーザは、過飽和吸収体部(Saturable absorber section)と、過飽和吸収体部を挟むように設けられる二つのゲイン部(Gain Section)と、によって構成されるTriple-Sectional型の自励発振半導体レーザである。
【0008】
この半導体レーザでは、過飽和吸収体部に逆バイアスの電圧を加える。そしてこの時、二つのゲイン部に対して電流を注入することにより、例えば波長407nmのレーザ光が出射される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】[Hideki Watanabe, Takao Miyajima, Masaru Kuramoto, Masao Ikeda, and Hiroyuki Yokoyama]、Applied Physics Express 3,(2010)052701
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
こうした高出力かつパルス幅の短い光源は、例えば二光子吸収記録媒体への記録光源や、非線形光学生体イメージング、マイクロマシニング等、様々な分野への応用が期待される。
【0011】
他にも近年においては、信号転送の高速化のために、シリコン電子デバイス間を光配線で接続し、光で信号転送を行う光回路も提案されている。将来、光回路による演算処理を可能とするためには、電子回路のマスタークロックを発生させる光発振子が必要となる。
こうした光発振子として自励発振型のレーザを用いる場合には、用途に応じて特定の周波数のものを用意しなければならない。
また、記録再生装置においては、光記録媒体から読み取ったウォルブ信号や、光記録媒体を回転させるスピンドルモータからの回転同期信号に同期させた記録信号を光源から出射させる必要がある。
【0012】
しかし、自励発振型のレーザの周波数は、一般的にその構造によって特有のパルス光周波数に決まってしまう。このため、用途毎にそれぞれ自励発振型のレーザを製造する必要がある上に、非常に高い製造精度も必要とする。したがって、コストは高くなる。
【0013】
上述の点を鑑みて、本技術は、簡易な構成で所望のパルス光周波数が容易に得られる光発振装置、記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本技術による光発振装置は、二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザを有する。また、自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、分離された一方の発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子を有する。
【0015】
さらに、本技術による光発振装置は、受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、マスタークロック信号とパルスとの位相差を算出する位相比較部を有する。また、マスタークロック信号のタイミングに合わせて記録信号を生成して、記録信号をゲイン電流として自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する記録信号生成部を有する。また、位相差に基づいて、自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間における負のバイアス電圧を制御することにより、発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部を有する。
【0016】
また、本技術による記録装置は、上述の光発振装置において、信号生成部の代わりに記録信号を生成する記録信号生成部を設け、さらに、上述の光分離部によって分離されたもう一方の発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズを配置したものである。
【0017】
本技術の光発振装置、及び記録装置によれば、発振期間において負のバイアス電圧を制御することにより、発振光の周波数をパルス毎に制御することができ、パルス間の間隔を調整することができる。
このため、任意の発振周波数で、容易に自励発振半導体レーザを発光させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本技術の光発振装置及び記録装置によれば、任意の発振周波数の発振光を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自励発振半導体レーザを示す概略構成図である。
【図2】自励発振半導体レーザに注入したゲイン電流と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光の発振周波数との関係を示す図である。
【図3】自励発振半導体レーザに印加した逆バイアス電圧と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光の発振周波数との関係を示す図である。
【図4】自励発振半導体レーザに印加したゲイン電流と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光のピークパワーとの関係を示す図である。
【図5】自励発振半導体レーザに印加したゲイン電流と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光のピークパワーとの関係を示す図である。
【図6】自励発振半導体レーザに注入した逆バイアス電圧と、この自励発振半導体レーザから出射した発振光のピークパワーとの関係を示す図である。
【図7】図7Aは、自励発振半導体レーザに注入したゲイン電流、電荷密度及び発光閾値の関係を示す図であり、図7Bは、このときに自励発振半導体レーザ1から出射するパルス光の波形を示す図である。
【図8】図8Aは、二値信号を示す図であり、図8Bは、このときに自励発振半導体レーザに注入したゲイン電流、電荷密度及び発光閾値の関係を示す図であり、図8Cは、このときに自励発振半導体レーザ1から出射するパルス光の波形を示す図である。
【図9】図9Aは、自励発振半導体レーザから出射した発振光の波形を示す図であり、図9Bは、自励発振半導体レーザに印加した逆バイアス電圧を示す図である。
【図10】図10Aは、自励発振半導体レーザから出射した発振光の波形を示す図であり、図10Bは、自励発振半導体レーザに印加した逆バイアス電圧を示す図である。
【図11】本技術の一実施形態に係る記録装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本技術の実施形態に係る記録装置、及びその記録装置に用いる自励発振半導体レーザの一例を、図を参照しながら説明する。本技術の実施形態は以下の順で説明する。なお、本技術は以下の例に限定されるものではない。
1.自励発振半導体レーザの構成
2.記録装置の構成
【0021】
〈1.自励発振半導体レーザの構成〉
まず、本技術の記録装置に用いる自励発振半導体レーザの構成について説明する。
図1は、本技術における自励発振半導体レーザ1を示す概略構成図である。この自励発振半導体レーザ1は、上述の非特許文献1において示されている自励発振半導体レーザである。
【0022】
自励発振半導体レーザ1は、過飽和吸収体部2と、第1のゲイン部3と、第2のゲイン部4とによって構成されるTriple-Sectional型の自励発振半導体レーザである。
図1に示すように、過飽和吸収体部2は、第1のゲイン部3と、第2のゲイン部4とに挟まれるように位置する。
過飽和吸収体部2を設けると、吸収体に入射する光の強度が大きくなるにつれて吸収体の吸収率が低下し、強度の大きいパルスしか吸収体を透過できないため、より狭いパルスが得られる。
また、第1のゲイン部3及び第2のゲイン部4にはゲイン電流が注入される。
【0023】
n型GaN基板6の(0001)面上には、GaInN/GaN/AlGaN材料による二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造が形成されている。
すなわち、n型GaN基板6の一方の表面上に、n型GaN層7、n型AlGaNクラッド層8、n型GaNガイド層9、二重量子井戸活性層10がこの順で積層して形成される。さらに、二重量子井戸活性層10の他方の表面上に、GaInNガイド層11、p型AlGaN層12、p型AlGaN障壁層13、p型AlGaN/GaN超格子第一クラッド層14がこの順で積層して形成される。
【0024】
このヘテロ構造は、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって形成することができる。
【0025】
このp型AlGaN/GaN超格子第一クラッド層14の中央部には、図1に示すようにリッジ構造が形成され、リッジ上面には、p型GaNコンタクト層16が形成される。また、リッジ側面や、p型AlGaN/GaN超格子第一クラッド層14のリッジが形成されていない部分の上には、SiO2/Si絶縁層15が形成される。
【0026】
p型GaNコンタクト層16及びSiO2/Si絶縁層15上には、p型電極である第1の主電極17、第2の主電極18並びに副電極19がオーミックコンタクトにより形成される。
具体的には、第1のゲイン部3上には第1の主電極17が形成され、過飽和吸収体部2上には副電極19が形成される。また、第2のゲイン部4上には、第2の主電極18が形成される。これらの電極は、溝状の分離部20によって分離されており、互いに電気的に分離される。
また、n型GaN基板6のn型GaN層7とは反対側の面には、n型の下部電極5がオーミックコンタクトにより形成される。
【0027】
図1に示すように、この自励発振半導体レーザ1では、副電極19によって、過飽和吸収体部2に逆バイアス電圧(負の値のバイアス電圧)を加える。そしてこの時、第1のゲイン部3及び第2のゲイン部4に対してそれぞれ第1の主電極17及び第2の主電極18から電流(ゲイン電流)を注入することにより、レーザ光が出射される。
【0028】
本提案者らは、この自励発振半導体レーザ1に対し、上述のゲイン電流の変化よって発振光を変調し、かつ、上述の逆バイアス電圧を変化させることにより発振周波数を制御できることを見出した。
また、本提案者らは、ゲイン電流の変化によって発振光を変調し、かつ、自励発振半導体レーザ1の発振期間におけるゲイン電流の値を変化させることにより、発振周波数を制御できることを見出した。
さらに、本提案者らは、発振期間において逆バイアス電圧を変動させることにより、発振期間内に、発振光のパルス毎の周期を微調整できることを見出した。
【0029】
すなわち、本技術において、発振光の変調は、ゲイン電流を制御することで行い、発振周波数の制御は、発振期間における逆バイアス電圧またはゲイン電流による直流信号の値の制御によって行われる。また、発振期間内における発振光のパルス毎の周期の微調整は、発振期間における逆バイアス電圧を変動させることで行う。
【0030】
以下に、本技術の自励発振半導体レーザ1の特性を調べた実験結果を示す。
図2は、本技術の自励発振半導体レーザ1において、発振時の逆バイアス電圧(直流電圧)を一定にし、ゲイン電流を変化させたときの発振光の発振周波数を測定した結果である。図2の横軸はゲイン電流(Igain)であり、縦軸は、発振周波数である。ここでは、逆バイアス電圧(Vsa)を、0Vから−6.0Vまで1.0V刻みで変化させ、それぞれの電圧値における発振周波数の変化を調べた。
【0031】
図2に示すように、逆バイアス電圧(Vsa)が一定であるとき、ゲイン電流(Igain)を大きくすると、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の発振周波数は大きくなることがわかる。したがって、自励発振半導体レーザ1の発振時において、ゲイン電流(直流電流)の値を変化させることで、発振周波数を制御することが可能である。
【0032】
図3は、ゲイン電流(Igain)を一定にし、自励発振半導体レーザ1の発振時における逆バイアス電圧(Vsa)の変化に対する発振周波数の変化を測定した結果である。図3の横軸は逆バイアス電圧(Vsa)であり、縦軸は、発振周波数である。ここでは、ゲイン電流(Igain)を、80mAから200mAまで20mA刻みで変化させ、それぞれの電流値における発振周波数の変化を調べた。
【0033】
図3に示すように、ゲイン電流(Igain)が一定であるとき、逆バイアス電圧(Vsa)を負の方向に大きくすると、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の発振周波数は小さくなることがわかる。すなわち、自励発振半導体レーザ1の発振時(発振期間)において、逆バイアス電圧の値を変化させることで、発振周波数を制御することが可能である。
【0034】
図4は、逆バイアス電圧(Vsa)を一定にしたときの自励発振半導体レーザ1に印加したゲイン電流(Igain)と、自励発振半導体レーザ1からの発振光のピークパワーとの関係を示す図である。図4の横軸はゲイン電流(Igain)であり、縦軸は、ピークパワーである。ここでは、逆バイアス電圧(Vsa)は、0Vから−7.0Vまで1.0V刻みで変化させ、それぞれの電圧値におけるピークパワーを調べた。
【0035】
図4からわかるように、ゲイン電流(Igain)が小さいときには、自励発振半導体レーザ1は発振しない。また、ゲイン電流(Igain)が所定の値よりも大きくなると自励発振半導体レーザ1は発振を始め、それ以降は、ゲイン電流(Igain)が大きくなるほど発振光のピークパワーも大きくなる。
このように、ゲイン電流の値によって、ピークパワーの値が変化するので、ゲイン電流によりピークパワーを制御することが可能である。
【0036】
また、図5は、自励発振半導体レーザ1に注入したゲイン電流(Igain)と、自励発振半導体レーザ1からの発振光のピークパワーとの関係を示す図である。図5では、逆バイアス電圧(Vsa)が−5.0Vから−6.5Vまで0.5V刻みの値の場合について、ゲイン電流(Igain)に対するピークパワーを調べた。
【0037】
図5に示すように、逆バイアス電圧(Vsa)が例えば−5.0Vから−6.5Vまでの範囲において、ゲイン電流(Igain)が約100mAよりも小さいときには、自励発振半導体レーザ1の発振が停止する。一方で、例えばゲイン電流(Igain)が250mAの場合には、自励発振半導体レーザ1からの発振光に対して、3000mW以上のピークパワーが得られる。
【0038】
したがって、例えば、図5の線L1に示すゲイン電流(Igain)が250mAの時を自励発振半導体レーザ1のオン(発振)状態とし、線L2に示すゲイン電流(Igain)が0mAの時を自励発振半導体レーザ1のオフ(非発振)状態とすることができる。
すなわち、例えばゲイン電流(Igain)を、250mAと0mAとで切り替えを行うことにより、自励発振半導体レーザ1のオン(発振)とオフ(非発振)を制御することができる。
このように、ゲイン電流の制御を行うことで、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の変調を行うことが可能である。
【0039】
また、図6は、自励発振半導体レーザ1に印加した逆バイアス電圧(Vsa)と、自励発振半導体レーザ1から出射した発振光のピークパワーとの関係を示す図である。図6の横軸は逆バイアス電圧(Vsa)であり、縦軸は、ピークパワーである。ここでは、ゲイン電流(Igain)を60mAから200mAまで20mA刻みの値とし、それぞれのゲイン電流値におけるピークパワーを調べた。
【0040】
図6からわかるように、逆バイアス電圧(Vsa)が約−7.0Vよりも負の方に大きいときには、自励発振半導体レーザ1は発振しない。逆バイアス電圧(Vsa)が約−7.0Vよりも正の方向に大きくなると自励発振半導体レーザは発振を始め、逆バイアス電圧(Vsa)が正の方向に大きくなるほど発振光のピークパワーは大きくなる。そして、逆バイアス電圧(Vsa)が所定の値を超えると、逆バイアス電圧(Vsa)が正の方向に大きくなるほど発振光のピークパワーが小さくなる。
このように、逆バイアス電圧(Vsa)の値によっても発振光のピークパワーが変化するので、逆バイアス電圧(Vsa)によって自励発振半導体レーザ1の発振光のピークパワーを制御することが可能である。
なお、この図4,5,6で示すピークパワー値は光出力の平均パワーモニター値と高速フォトディテクタ(40GHz)で測定したパルス幅から換算している。ディテクタの帯域不足で光ストリークカメラで測定した実際のパルス幅15ps(最小)に対して40ps程度までしか検出できていないため、ピーク値が低めに表示されている。
【0041】
自励発振半導体レーザ1の上述した特性は、図7A、図7Bを用いて以下のように説明できる。
図7Aは、自励発振半導体レーザ1に注入したゲイン電流と、電流の注入により自励発振半導体レーザ1内に蓄積された電荷の密度の関係を示す図であり、図7Bは、このときに自励発振半導体レーザ1から出射される光の波形を示す図である。なお、このときの逆バイアス電圧は一定の値としている。
【0042】
図7Aにおいて、特性L3は、自励発振半導体レーザ1に注入した電流値であり、特性L4は、そのときに自励発振半導体レーザ1内に蓄積された電荷の密度である。また、特性L5は、逆バイアス電圧Vsaで決まる発光閾値である。
【0043】
矢印A1に示すように、ゲイン電流を大きくしていくと、自励発振半導体レーザ1内に蓄積された電荷の密度が高くなる。そして、この電荷密度が特性L5に示す発光閾値に到達すると、図7Bに示すパルス光Pu1が放出される。このとき、パルス光の放出により電荷が消費され、矢印A2に示すように、自励発振半導体レーザ1内の電荷密度は低下する。
そして再びゲイン電流によって自励発振半導体レーザ1内に電荷が蓄積され、電荷密度が特性L5の発光閾値に到達するとパルス光を放出する。こうした過程を繰り返すことによって、自励発振半導体レーザ1はパルス光の連続発振を行う。
【0044】
ところで、自励発振半導体レーザ1に蓄積される電荷は、パルス光の放出によって消費される以外に、自励発振半導体レーザ1から自然に流出する(消費される)ことでも失われる。したがって、ゲイン電流が小さいときには、電荷を自励発振半導体レーザ1に蓄積させることができず、電荷密度が発光閾値に到達しない。このため、図5に示したように、ゲイン電流をある所定の値よりも小さくすると、自励発振半導体レーザ1は発振しなくなる。このことによって自励発振半導体レーザ1のオン(発振)とオフ(非発振)とを切り替えることができる。
【0045】
また、特性L5に示す発光閾値は、自励発振半導体レーザ1に印加する逆バイアス電圧の値によって変化する。
例えば、逆バイアス電圧を負の方向に大きくすると、特性L5に示す電荷密度に対する発光閾値は、矢印A3に示すように大きくなる。そうすると、電荷密度が発光閾値に到達するまでの時間が長くなるので、パルス光が放出される間隔は長くなり、自励発振半導体レーザ1の発振周波数は小さくなる。
すなわち、この原理により、自励発振半導体レーザ1の発振周波数を逆バイアス電圧によって制御することができる。
【0046】
また、逆バイアス電圧を負の方向に大きくすることにより発光閾値が大きくなると、レーザ光の発振に必要とされる電荷密度が大きくなり、発振時に消費される電荷量も大きくなるので、放出されるパルス光のエネルギーも大きくなる。このため、バイアス電圧によって、自励発振半導体レーザ1の発振光の出力パワーを制御することができる。
【0047】
また、ゲイン電流の値が大きくなると、電荷密度が特性L5に示す発光閾値に到達するまでの時間が短くなる。このため、パルス光が放出される間隔は短くなり、自励発振半導体レーザ1の発振周波数は大きくなる。
すなわち、この原理により、自励発振半導体レーザ1の発振周波数をゲイン電流によって制御することができる。
【0048】
ゲイン電流の制御によって、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の変調が可能となる原理について、図8A〜図8Cをもとに以下に説明する。
図8Aに示すように、例えば自励発振半導体レーザ1の発振光に対して、0、1、1、0、0の順に二値信号を載せる場合を考える。図8Bは、自励発振半導体レーザ1に印加した逆バイアス電圧の波形(特性L6)、このときの発光閾値(特性L7)、自励発振半導体レーザに注入したゲイン電流の波形(特性L8)、自励発振半導体レーザ1に蓄えられる電荷密度(特性L9)を示す図である。また、図8Cは、このときに自励発振半導体レーザ1から出射する発振光のパルス波形(特性L10)を示す図である。
なお、図8Cに示すように、自励発振半導体レーザ1から出射するパルス光2個分が、二値信号の‘1’に対応するものとする。また、二値信号の‘0’及び‘1’は、互いに等しい周期で表現されるものとする。
【0049】
まず、二値信号の‘0’を自励発振半導体レーザ1によって表現するときには、図8Bに示す期間T1(非発振期間)において特性L9に示す電荷密度が、特性L7に示す発光閾値を超えないように、特性L8に示すゲイン電流の値を低く設定する。これにより、電荷密度は発光閾値を超えないため、期間T1において、自励発振半導体レーザ1は発振しない。
【0050】
一方、二値信号の‘1’を自励発振半導体レーザ1によって表現するときには、図8Bに示す期間T2(発振期間)において、特性L8に示すゲイン電流を大きくする。これにより、矢印A5に示すように電荷密度は上昇し、発光閾値に到達する。その結果、図8Cに示すパルス光Pu2が放出される。
【0051】
パルス光Pu2の放出により電荷が消費されることで、図8Bの矢印A6に示すように、電荷密度は低下する。一方、特性L8に示すゲイン電流は、期間T2(発振期間)において、所定の値まで上昇するとその後は一定に維持される。すなわち、ゲイン電流は、発振期間において一定の値を維持した直流電流とされる。このため、再び自励発振半導体レーザ1には電荷が蓄えられ、矢印A5に示すように電荷密度が上昇する。一方、特性L6に示す逆バイアス電圧は、期間T2内において値が期間T1と等しい直流電圧であるので、特性L7に示す発光閾値は変化しない。したがって、電荷密度は再び発光閾値に到達する。これにより、図8Cに示すパルス光Pu3が放出され、二値信号の‘1’が表現される。
【0052】
また、二値信号の‘1’から‘0’へ切り替わるときには、図8Bの期間T3(非発振期間)に示すように、特性L8のゲイン電流を低下させる。これにより、期間T3においては、特性L9に示す電荷密度が発光閾値に到達しなくなる。このため、自励発振半導体レーザ1は発振せずに停止状態となり、二値信号の‘0’が表現される。
【0053】
このように、ゲイン電流を、非発振期間(期間T1、及びT3)では電荷密度が発光閾値に到達しないような電流値とし、発振期間(期間T2)では、電荷密度が発光閾値に到達するような電流値に設定することで、発振光の変調を行うことができる。
【0054】
また、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の発振周波数やピークパワーは、矢印A8、A9に示すように、発振期間T2におけるゲイン電流、又は逆バイアス電圧を変化させることにより制御することができる。
なお、図8Bに示す矢印A8、A9の変動で行う発光周波数の調整は、所望の信号に応じた発振周波数を得るための調整であり、発振期間内に発振される複数のパルス光の平均的な発振周波数の値を決定するための調整である。
【0055】
ところで、自励発振半導体レーザ1に蓄積された電荷はパルス光の放出によって消費される以外に、自励発振半導体レーザ1から自然に流出する(消費される)ことでも失われる。このため、自励発振半導体レーザ1に蓄積させることのできる電荷量(電荷密度)には限界がある。このため、バイアス電圧の値を負の方向に大きくし過ぎると、蓄積可能な電荷密度に対して発光閾値が大きくなり過ぎ、発光閾値にまで、電荷密度を高めることができなくなる。このため、図4に示したように、バイアス電圧を負の方向に所定の値にまで大きくすると、自励発振半導体レーザ1は発振しなくなる。
【0056】
このように、バイアス電圧には、負の値の領域において自励発振半導体レーザ1が発振しなくなる閾値が存在する。したがって、矢印A9の変動で発振周波数やピークパワーを制御する場合には、自励発振半導体レーザが発振可能な範囲内で逆バイアス電圧を変動させる。
【0057】
また、前述したように、ゲイン電流が低すぎると電荷密度が発光閾値に到達せず、自励発振半導体レーザは発振しなくなる。このため、矢印A8の変動で発振周波数やピークパワーを制御する場合においても、自励発振半導体レーザが発振可能な範囲内でゲイン電流を変動させる。
【0058】
なお、期間T2において、ゲイン電流を上昇させ始めてから自励発振半導体レーザ1がパルス光Pu2を放出するまでの期間T4は、期間T2におけるその他のパルス光の発振周期よりも長くなる。したがって、非発振期間から発振期間に切り替わる際には、ゲイン電流の立ち上げ時点t1を、非発振期間T1内にずらし前倒ししたほうがよい。
【0059】
また、非発振期間T3における期間T5に示すように、発振期間から非発振期間に切り替わるときにおいて、実際にゲイン電流を十分に低下させるには時間差が生じることがある。この場合、非発振期間においてもゲイン電流が自励発振半導体レーザ1に注入されることになるが、すくなくとも、発振期間の終了直後から、自励発振半導体レーザ1の発振周期よりも短い期間のうちにゲイン電流を例えば0mAにまで低下させることが好ましい。これにより、例えば期間T5における特性L9に示すように、電荷密度が発光閾値に到達しないので非発振期間において、不要なパルス光の発振が生じるのを抑制できる。
【0060】
この自励発振半導体レーザ1の変調動作の確認実験を行った結果を図9A、図9Bに示す。図9Aは、自励発振半導体レーザ1に注入したゲイン電流の波形を示す図である。また、図9Bは、自励発振半導体レーザ1から出射した発振光の波形を示す図である。
なお、ゲイン電流は、期間T6に示す発振期間(2μsec)において250mAとし、期間T7に示す非発振期間(10μsec)において0mAとした。また、逆バイアス電圧は、発振期間及び非発振期間の両方において一定の−6Vとした。
【0061】
図9A及び図9Bからわかるように、ゲイン電流が0mAである期間T7において自励発振半導体レーザ1は発振しなかった。一方で、ゲイン電流が250mAである期間T6では、自励発振半導体レーザ1は複数のパルス光を連続発振し、12Wの発振出力が得られた。
このことから、ゲイン電流を250mAと0mAとで切り替えることにより、自励発振半導体レーザ1のオン状態(発振期間)とオフ状態(非発振期間)との切り替えが可能であることがわかる。すなわち、ゲイン電流を制御することで、自励発振半導体レーザ1が出射する発振光の変調を行うことができる。
【0062】
ところで、図8A〜図8Cに示した発振周波数の制御では、発振期間中におけるゲイン電流及び逆バイアス電圧はほぼ一定の直流信号とされる。このため、発振期間中は、一定の直流信号で決まる発振周波数のパルス光が発振されるが、ゲイン電流の立ち上がりは図8Bの期間T4に示すように矩形とはならない。また、一回目のパルス光が発振された後も、期間T8に示すように、ゲイン電流が一定値になるまでにゲイン電流が変動するため、電荷密度が閾値電圧まで達する時間が発振期間内で異なることがある。
【0063】
そうすると、図8Cに示すように、1回目のパルス光と2回目のパルス光との間隔a1が、2回目のパルス光と3回目のパルス光との間隔a2と異なってしまうという問題がある。このため、発振期間内に発生する複数のパルス光において、発振期間内におけるパルス光毎の周期を微調整することで、発振期間内に発振されるパルス光の間隔を調整したいという要請がある。
【0064】
以下に、図10A〜図10Cを用いて、ゲイン電流を制御することにより自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の変調をする場合において、発振期間内に発振されるパルス光の間隔を微調整することができる原理について説明する。図10A〜図10Cにおいて、図8A〜図8Cに対応する部分には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0065】
発光期間内に発振されるパルス光の間隔を調整するため、図10Bに示すように、特性L11に示す逆バイアス電圧の発光期間T2内の所望の期間T6において、逆バイアス電圧を矢印A10で示すように変動させる。そうすると、図10Bの特性L12に示すように、閾値電圧が発光期間T2の所望の期間T8において変動する。発光期間内においてゲイン電流は一定値であるから、閾値電圧が変動するとその閾値電圧に電荷密度が到達するまでの時間が変化し、発振されるパルス光の周期が変動する。尚、逆バイアス電圧は、期間T8以外では、一定の値を維持する直流電圧とされている。
【0066】
図10A〜図10Cに示す例では、期間T8において逆バイアス電圧を大きくすることで閾値電圧を下げ、閾値電圧に電荷密度が到達するまでの時間を短くしている。これにより、図10Cに示すように、1回目のパルス光と2回目のパルス光の間隔a2を、図8Cに示すパルス光の間隔a1よりも短くすることができる。このように、発振期間内における発振される全てのパルス光の周期を一定にすることができ、パルス光の間隔を一定にすることができる。
【0067】
以上のように、本技術では、発振期間内において逆バイアス電圧のプロファイルを制御して閾値電圧を変動させることで、発振される各パルス光の周期をパルス光毎に微調整し、発振期間内のパルス光の周期を一定にすることができる。これにより、発振期間内に発振されるパルス光の間隔が一定となる。したがって、ゲイン電流の変動によってオン状態(発振期間)とオフ状態(非発振期間)との切り替えを行う自励発振半導体レーザにおいて、発振期間内のゲイン電流の変動に伴うパルス間隔の変動を、逆バイアス電圧を制御することにより補正することができる。
【0068】
ところで、図10A〜図10Cに示したように、発振期間中に逆バイアス電圧を変動させることでパルス光の間隔を調整した場合、逆バイアス電圧の値が変わるため、発振期間中において発生する各パルス光の出力パワーが変わってしまう。一方、図5から明らかなように、ゲイン電流が200mA以上で、逆バイアス電圧が−5.5V〜−6.5V程度のところでは、ピークパワーにあまり変動がない。すなわち、ゲイン電流が200mA以上であり、逆バイアス電圧が−5.5V〜−6.5Vの範囲内である場合には、逆バイアス電圧を変動させてパルス光の間隔を調整したとしても、出力パワーの変動を抑えることができる。
【0069】
このことから、発振期間中におけるパルス光間隔の調整は、ゲイン電流が200mA以上で、逆バイアス電圧が−5.5V〜−6.5Vの範囲内にあるときに、出力パワーの変化を伴うことなく、行うことができる。
【0070】
〈2.記録装置の構成〉
上述の特性を有する自励発振半導体レーザ1を用いて構成した記録装置について、以下に説明する。
図11は、本技術の一実施形態に係る記録装置100を示す概略構成図である。本実施形態の記録装置100は、光発振装置である光発振部110と、光発振部110から出射した発振光を光記録媒体43上に集光する対物レンズ41と、を有する。
【0071】
光発振部110は、光源として上述の自励発振半導体レーザ1と、自励発振半導体レーザ1からの光をコリメートするコリメータレンズ31と、コリメータレンズ31を透過した光を分離する光分離部32を備える。
また、光発振部110は、光分離部32によって分離された一方の光を集光する集光レンズ33と、集光レンズ33によって集光された光を受光する受光素子34を備える。
【0072】
さらに、光発振部110は、受光素子34によって受光された光を検出するパルス検出部35と、マスタークロック信号を生成する基準信号生成部36と、パルス検出部35によって検出された光の位相とマスタークロック信号の位相とを比較する位相比較部37を備える。
また、本実施形態の光発振部110は、マスタークロック信号にタイミングを合わせて、記録信号を生成する記録信号生成部39を備える。
また、本実施形態の光発振部110は、位相比較部37が求めた位相差や、記録信号生成部39が生成した記録信号に基づいてゲイン電流及び逆バイアス電圧を制御する制御部45を備える。
【0073】
まず、記録信号生成部39は、基準信号生成部36によって生成されるマスタークロックのタイミングに合わせて、例えば光ディスク等の光記録媒体に記録する記録信号(二値信号)を生成する。
【0074】
このとき、既述のように、自励発振半導体レーザ1の非発振期間(二値信号の‘0’)におけるゲイン電流はパルス光が発振しない大きさに制御される。また、発振期間(二値信号の‘1’)におけるゲイン電流は、所望の期間において閾値電圧まで電荷密度が蓄積される大きさに制御される。すなわち、図10Bに示すように、非発振期間と発振期間とで異なる値の直流電流をゲイン電流として自励発振半導体レーザ1に与えることにより、出射する発振光を記録信号に応じて変調することができる。そして、記録信号に応じて制御されたゲイン電流が自励発振半導体レーザ1に入力され、自励発振半導体レーザ1の発振光が変調される。
【0075】
記録信号に応じて変調された自励発振半導体レーザ1からの発振光は、コリメータレンズ31によってコリメートされた後、光分離部32に入射する。
光分離部32は、例えばビームスプリッタ等によって構成され、自励発振半導体レーザ1から出射した光を二つの光束に分離する。二つに分離された光束のうち、例えば、光分離部32によって反射された光束は、集光レンズ33によって受光素子34上に集光される。この受光素子34には、例えばフォトダイオード等が用いられる。
また、パルス検出部35は、コンデンサ44を介して受光素子34に接続され、受光素子34によって受光された光のパルスを検出する。
【0076】
位相比較部37は、基準信号生成部36において生成されたマスタークロックと、パルス検出部35において検出されたパルスの位相とを比較し、両者の位相差を算出する。この位相差に基づき、制御部45においてゲイン電流、又は逆バイアス電圧の値を制御することで、発振周波数を制御する。ここでの発振周波数の制御は、発振期間内における複数のパルス光の平均的な発振周波数の値の調整をする制御であり、図10Bの矢印A8、A9に示すゲイン電流、又は逆バイアス電圧の変動で行う。
なお、発振周波数の調整を逆バイアス電圧の値で制御する場合には、記録信号生成部39を、制御部45を介さずに自励発振半導体レーザ1に接続することができる。
【0077】
さらに、制御部45では、発振期間において逆バイアス電圧のプロファイルを制御することにより、発振期間内のパルス光の周期をパルス光毎に調整し、パルス光の間隔を調整する。このパルス光の間隔の制御は、図10Bの矢印A10に示す逆バイアス電圧の変動で行う。本実施形態例では、発振期間内に発振されるパルス光の周期をパルス光毎に調整することができるので、発振期間内で発振されるパルス光の間隔を任意に設定することができ、ゲイン電流の立ち上がり時間に起因するパルス光のずれを補正することができる。そして、発振期間内における複数のパルス光の間隔を一定とすることができる。
【0078】
また、制御部45は、受光素子34において受光された光の強度に基づいて、自励発振半導体レーザ1に印加する逆バイアス電圧の制御も行う。すなわち、本実施形態では、逆バイアス電圧の値を制御することにより、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の周波数及びパワーの両方を制御することができる。
【0079】
一方で、光分離部32を透過した自励発振半導体レーザ1からの発振光は、ミラー40に入射する。そして、この発振光はミラー40によって反射されて光路を変え、対物レンズ41に入射する。
対物レンズ41に入射した発振光は、光記録媒体43上に集光される。光記録媒体43は、スピンドルモータ42によって光記録面の面内方向に回転する。また、レーザ光の集光スポットは、図示しないスレッドモータ等によって光記録媒体43の径方向に随時移動する。これにより、自励発振半導体レーザ1からの発振光は、光記録媒体43の光記録面に対して渦巻き状、もしくは同心円状に照射され、発振光に載せられた記録情報が、光記録媒体43に順次記録される。
【0080】
このように、本実施形態の記録装置100では、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光を、自励発振半導体レーザ1に注入するゲイン電流によって変調する。このゲイン電流は、記録信号に対応して生成されるので、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光に対して、記録情報を載せることができる。
【0081】
なお、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光のパワーは、自励発振半導体レーザ1に注入するゲイン電流の値を変化させることによって制御することも可能である(図4参照)。したがって、自励発振半導体レーザ1から出射する発振光の変調が可能な範囲内であれば、発振期間におけるゲイン電流の値を変化させることにより発振光のパワー制御を行ってもよい。
この場合には、制御部45は、受光素子34での受光強度に基づいて、発振期間におけるゲイン電流の値を制御するとともに、位相比較部37によって算出された位相差に基づいて、逆バイアス電圧の制御も行う。
【0082】
なお、本実施形態例では、ゲイン電流の立ち上がり時間に起因してパルス光の周期のずれる場合において、逆バイアス電圧を制御することでパルス光間隔を補正する構成としたが、これに限られるものではない。発振期間内において、パルス光毎に周期を変化させたい場合等、種々の用途に適応可能な構成である。
【0083】
また、自励発振半導体レーザ1からの発振光に載せる信号は、記録信号に限らず任意の信号であってよい。すなわち、記録信号生成部39の代わりに、任意の信号を生成する信号生成部を設けることにより、任意の信号が載った発振光を出射する光発振装置として光発振部110を構成することも可能である。
また、ここでは自励発振半導体レーザ1には、二つのゲイン部を有するTriple-Sectional型の自励発振半導体レーザを用いたが、ゲイン部が一つであるbi-Sectional型の自励発振半導体レーザを用いても、同様の作用、効果を得ることができる。
【0084】
以上、本技術による光発振装置及び記録装置について説明した。本技術は上記実施の形態にとらわれることなく、特許請求の範囲に記載した本技術の要旨を逸脱しない限りにおいて、なお考えられる種々の形態を含むものであることは言うまでもない。
【0085】
また、本技術は、以下のような構成を取ることもできる。
(1)
GaInN/GaN/AlGaN材料による二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザと、
前記自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、
前記分離された一方の前記発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、
前記光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、
マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、
前記マスタークロック信号と前記パルスとの位相差を算出する位相比較部と、
前記マスタークロック信号のタイミングに合わせて記録信号を生成して、前記記録信号を前記ゲイン電流として前記自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する記録信号生成部と、
前記位相差に基づいて、前記自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部と、
を含む記録装置。
(2)
前記発振期間における前記ゲイン電流は、一定の直流電流である
(1)に記載の記録装置。
(3)
前記制御部は、前記発振期間における前記ゲイン電流を制御することにより、前記発振光のパワーを制御する
(2)に記載の記録装置。
(4)
前記制御部は、前記発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振光のパワーを制御する
(2)に記載の記録装置。
(5)
前記自励発振半導体レーザは、活性層、GaInNガイド層、p型AlGaN障壁層、p型GaN/AlGaN超格子第一クラッド層及びp型GaN/AlGaN超格子第二クラッド層を備え、
前記活性層の一方の表面上に、前記GaInNガイド層、前記p型AlGaN障壁層、前記p型GaN/AlGaN超格子第一クラッド層及び前記p型GaN/AlGaN超格子第二クラッド層がこの順に積層された
(1)〜(4)のいずれかに記載の記録装置。
(6)
前記自励発振半導体レーザは、活性層の他方の表面上に順に積層されたn型GaNガイド層、n型AlGaNクラッド層、n型GaN層を備える
(1)〜(4)のいずれかに記載の記録装置。
(7)
GaInN/GaN/AlGaN材料による二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザと、
前記自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、
前記分離された一方の前記発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、
前記光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、
マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、
前記マスタークロック信号と前記パルスとの位相差を算出する位相比較部と、
前記マスタークロック信号のタイミングに合わせて所定の信号を生成して、前記記録信号を前記ゲイン電流として前記自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する信号生成部と、
前記位相差に基づいて、前記自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間において前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部と、
を含む光発振装置。
【符号の説明】
【0086】
1・・・自励発振半導体レーザ、2・・・過飽和吸収体部、3・・・第1のゲイン部、4・・・第2のゲイン部、5・・・下部電極、6・・・n型GaN基板、7・・・n型GaN層、8・・・n型AlGaNクラッド層、9・・・n型GaNガイド層、10・・・二重量子井戸活性層、11・・・GaInNガイド層、12・・・p型AlGaN層、13・・・p型AlGaN障壁層、14・・・p型AlGaN/GaN超格子第一クラッド層、15・・・SiO2/Si絶縁層、15psec・・・パルス幅、16・・・p型GaNコンタクト層、17・・・第1の主電極、18・・・第2の主電極、19・・・副電極、20・・・分離部、31・・・コリメータレンズ、32・・・光分離部、33・・・集光レンズ、34・・・受光素子、35・・・パルス検出部、36・・・基準信号生成部、37・・・位相比較部、39・・・記録信号生成部、40・・・ミラー、41・・・対物レンズ、42・・・スピンドルモータ、43・・・光記録媒体、44・・・コンデンサ、45・・・制御部、100・・・記録装置、110・・・光発振部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザと、
前記自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、
前記分離された一方の前記発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、
前記光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、
マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、
前記マスタークロック信号と前記パルスとの位相差を算出する位相比較部と、
前記マスタークロック信号のタイミングに合わせて記録信号を生成して、前記記録信号を前記ゲイン電流として前記自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する記録信号生成部と、
前記位相差に基づいて、前記自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部と、
を含む記録装置。
【請求項2】
前記発振期間における前記ゲイン電流は、一定の直流電流である
請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記発振期間における前記ゲイン電流を制御することにより、前記発振光のパワーを制御する
請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振光のパワーを制御する
請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記自励発振半導体レーザは、活性層、GaInNガイド層、p型AlGaN障壁層、p型GaN/AlGaN超格子第一クラッド層及びp型GaN/AlGaN超格子第二クラッド層を備え、
前記活性層の一方の表面上に、前記GaInNガイド層、前記p型AlGaN障壁層、前記p型GaN/AlGaN超格子第一クラッド層及び前記p型GaN/AlGaN超格子第二クラッド層がこの順に積層された
請求項3または4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記自励発振半導体レーザは、活性層の他方の表面上に順に積層されたn型GaNガイド層、n型AlGaNクラッド層、n型GaN層を備える
請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザと、
前記自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、
前記分離された一方の前記発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、
前記光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、
マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、
前記マスタークロック信号と前記パルスとの位相差を算出する位相比較部と、
前記マスタークロック信号のタイミングに合わせて所定の信号を生成して、前記記録信号を前記ゲイン電流として前記自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する信号生成部と、
前記位相差に基づいて、前記自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部と、
を含む光発振装置。
【請求項1】
二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザと、
前記自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、
前記分離された一方の前記発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、
前記光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、
マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、
前記マスタークロック信号と前記パルスとの位相差を算出する位相比較部と、
前記マスタークロック信号のタイミングに合わせて記録信号を生成して、前記記録信号を前記ゲイン電流として前記自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する記録信号生成部と、
前記位相差に基づいて、前記自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部と、
を含む記録装置。
【請求項2】
前記発振期間における前記ゲイン電流は、一定の直流電流である
請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記発振期間における前記ゲイン電流を制御することにより、前記発振光のパワーを制御する
請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振光のパワーを制御する
請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記自励発振半導体レーザは、活性層、GaInNガイド層、p型AlGaN障壁層、p型GaN/AlGaN超格子第一クラッド層及びp型GaN/AlGaN超格子第二クラッド層を備え、
前記活性層の一方の表面上に、前記GaInNガイド層、前記p型AlGaN障壁層、前記p型GaN/AlGaN超格子第一クラッド層及び前記p型GaN/AlGaN超格子第二クラッド層がこの順に積層された
請求項3または4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記自励発振半導体レーザは、活性層の他方の表面上に順に積層されたn型GaNガイド層、n型AlGaNクラッド層、n型GaN層を備える
請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
二重量子井戸分離閉じ込めヘテロ構造を有し、負のバイアス電圧を印加する過飽和吸収体部と、ゲイン電流を注入するゲイン部を含む自励発振半導体レーザと、
前記自励発振半導体レーザからの発振光を二つに分離する光分離部と、
前記分離された一方の前記発振光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、
前記光分離部によって分離されたもう一方の発振光を受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した発振光のパルスを検出するパルス検出部と、
マスタークロック信号を生成する基準信号生成部と、
前記マスタークロック信号と前記パルスとの位相差を算出する位相比較部と、
前記マスタークロック信号のタイミングに合わせて所定の信号を生成して、前記記録信号を前記ゲイン電流として前記自励発振半導体レーザのゲイン部に注入する信号生成部と、
前記位相差に基づいて、前記自励発振半導体レーザから発振光が発振される発振期間における前記負のバイアス電圧を制御することにより、前記発振期間内に発振されるパルスの間隔を制御する制御部と、
を含む光発振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−25837(P2013−25837A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158325(P2011−158325)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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