説明

光直接点弧型半導体装置

【目的】微弱な光信号によっても安全に光直接点弧型半導体装置を駆動させることができる、信頼性の高い光直接点弧型半導体装置を提供すること。
【構成】L字形状ライトガイド1のテーパ比率を減少させ、L字形状ライトガイド1での光信号伝送効率を向上させることにより、光直接点弧型半導体装置全体としての光信号伝送効率を向上させることが可能となる光直接点弧型半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光直接点弧型半導体装置に関し、光直接点弧型半導体装置外部からの半導体装置制御用光信号をいかに効率良く伝達するかということに関する。特に半導体装置制御用の光信号を伝達するライトガイドを半導体装置内に保持する光直接点弧型半導体装置において、光直接点弧型半導体装置の総合の光伝送効率を向上するのに好適なライトガイドの形状に関する。
【0002】光直接点弧型半導体装置の一種である光直接点弧型サイリスタは従来の電気点弧型サイリスタと比較し、主回路と制御回路との電気的絶縁性が優れており、制御回路を簡略化することができ、電磁誘導によるノイズに対して強く、誤動作が少ないなどの利点を有する。このため、近年、光直接点弧型サイリスタはこれらの利点を発揮することができる高電圧直流送電変換装置用として使用、実用化されている。
【0003】
【従来の技術】ここで、従来の光直接点弧型サイリスタの一例を図2及び図3を用いて詳細に説明する。図2は光直接点弧型半導体素子の断面図である。光直接点弧型半導体素子9は、熱膨張係数がシリコンの値と近似しているタングステン等の金属板10を介してアノード外部電極11に固定されている。アノード外部電極11はセラミック等の絶縁円筒8を介してカソード外部電極12と光直接点弧型半導体素子9を気密封止して固定できるようになっている。光直接点弧型半導体装置外部の発光体からの光信号を伝送する光ファイバ束3は、光ファイバ束支持体14により保護,支持され、絶縁円筒8の一部を貫通して気密に固着されている金属筒6により光透過窓2に光学的に結合される。光透過窓2は、例えば銀−ろう材などを用いて金属筒6に気密封着される。以上の様な構成にて外部発光体から伝送された光信号は、光透過窓を透過した後、L字形状のライトガイド1により光直接点弧型半導体素子9の光感応部13に導かれる。このような構成になる光直接点弧型半導体装置は、例えば特公昭63−59549 号公報により公知となっている。ここで解決しなければならない課題は、光直接点弧型半導体装置外部からの半導体装置制御用光信号をいかに効率良く伝達するかということにある。
【0004】図3は光直接点弧型半導体装置光導入部の詳細寸法図及びL字形状ライトガイドの光信号入力端での光強度分布のモデル図である。光直接点弧型半導体装置外部からの光信号を伝達するファイバ束3は単芯光ファイバの束として構成され、その径はφD1 である。ライトガイド3からでた光束の径は、光ファイバ束出口から距離LだけはなれたL字形状のライトガイド1の入り口端の位置で、φD2になる。このため、従来構造ではファイバ束3からの出射光を全てライトガイド1へ入射させるため、L字形状のライトガイド1の入り口径φD3 をφD2 よりも大きくする構造としていた。L字形状のライトガイド1は所定の最小光入力を得るために出力端の径を光直接点弧型半導体素子9の構造から決定される値φD4(図示せず)にする必要があり、一般にφD3≧φD4のテーパ形状としている。しかしながらこのテーパ形状の比率が大きいとL字形状のライトガイド1の光伝送効率が低下してしまい、結果として光直接点弧型半導体装置全体としての光伝送効率が低下してしまうため、光直接点弧半導体装置としての光点弧感度が低下する欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光直接点弧型半導体装置に関し、特に、半導体装置制御用の光信号を伝達するライトガイドを半導体装置内に保持し、外部からの光信号を高効率で伝送することにより、最小光点弧入力を低減できる構造を有する光直接点弧型半導体装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、本発明においては、前記L字形状のライトガイドの光信号入力端の径φD3を光ファイバの束の径φD1よりも小さくすることにより、L字形状ライトガイドのテーパ比率を小さくし、L字形状ライトガイドでの光信号伝送効率を向上させ、光直接点弧型半導体装置全体として、光信号を高効率で伝送可能な構造としている。
【0007】
【作用】前記L字形状のライトガイドの光信号入力端の径φD3 を光ファイバの束の径φD1 よりも小さくすることにより、光直接点弧型半導体装置外部からの光信号は光ファイバ束を介して伝達され、光透過窓を通過した後、L字形状ライトガイドに伝達時、その伝送光量が減少してしまう。
【0008】しかしながら、L字形状ライトガイドの光信号入力端での光強度分布は、図3のようであり、光束が全体としてφD2まで広がったとしても、半値幅径φD5は光ファイバ束の径φD1 程度である。したがってL字形状のライトガイドの入力端の径φD3 をφD2 からφD1 に小さくしても、L字形状のライトガイドに伝達される光信号の減少はわずかである。
【0009】一方、L字形状のライトガイドの光信号入力端の径φD3 を光ファイバ束の径φD1 よりも小さくすることは、L字形状ライトガイドのテーパ比率を減少させ、L字形状ライトガイドでの光信号伝送効率を向上させることになる。その結果、光直接点弧型半導体装置全体としての光信号伝送効率を向上させることができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1,図2及び図3R>3を用いて説明する。
【0011】図1は、本発明にしたがって、光信号導入用の光透過窓2及び半導体素子の光感応部に光信号を伝達するL字形状のライトガイド1を半導体装置内部に具備した光直接点弧型半導体装置の光信号導入部の断面図である。
【0012】光透過窓2は光直接点弧型半導体装置の絶縁円筒8の一部を貫通して、予め、これと熱膨張係数が近似している例えばFeNiCr合金からなる金属筒6の内部に、例えば銀−ロウ材を用いて、固着される。金属筒6もまた、例えば銀−ロウ材を用いて絶縁円筒8に気密に封着されている。
【0013】L字形状のライトガイド1は、光透過窓2と光学的に結合させるため、固定具4及び固定具5により固定され、光透過窓2が固着されている金属筒6に接続される。固定具4は、光直接点弧型半導体装置の駆動時に発生する熱応力によりL字形状のライトガイド1が破損しないようにこれと熱膨張係数の近似した例えばFe−Ni合金等の材料からなり、一方、固定具5は成形が容易で、弾力性があり比較的強度の高い熱可塑性樹脂よりなる物質で構成される。
【0014】ここで、前記作用の項で説明した例を図4R>4,図5,図6を用いて示す。P1 は、光ファイバ3からの光信号の出力値であり、P2 はL字形状のライトガイド1への入力値,P3 はL字形状のライトガイド1からの出力値である。光ファイバ3から出力された光信号は光透過窓2を介し半導体装置内部に伝達されるが、光透過窓2の径は光ファイバ3の光ファイバ束の径φD1 より十分大きく全光信号を半導体装置内部に伝達することが出来る。一方、光透過窓2を透過した光信号は半導体装置内部の光ファイバ1の入力端に到達したときにはその径はφD2 までに広がることになる。したがって光ファイバ1の入力端の径φD3 を十分に大きくすることによりP2/P1を、即ち光ファイバ3からL字形状のライトガイド1への光信号伝送効率を向上させることが出来る。
【0015】一方、光ファイバ3に入力された光信号は、光ファイバ3内部を伝搬し半導体素子9の受光部13に到達するが、光ファイバ3の出力端の径φD4 は半導体素子9の構造から決定される値に制限されてしまう。一般に光ファイバ3の出力端の径φD4 は光ファイバ束の径φD1 より小さく、ライトガイド1の入力端径φD3と出力端の径φD4の関係はφD3>φD4とライトガイド1をテーパ形状にする必要がある。
【0016】ここでは、光ファイバ束3の出口径φD1 と光ファイバ1の出口端の径φD4の比率が1.33:1 の場合につき例示する。光ファイバ束の径φD1 と光ファイバ1の入力端の径φD3 が等しく、光ファイバ1の入力端φD3 と出力端の径φD4 の比率が1:0.75 の場合、光ファイバ束3の出口から光ファイバ1の入口への光伝送効率をP2/P1=1,光ファイバ1の入力端から出力端への光伝送効率をP3/P2=1とし、全体の伝送効率を(P2/P1)×(P3/P2)=1×1=1とする。
【0017】先ず、光ファイバ1の入力端φD3 の径を光ファイバ束3の径φD1 より大きくした従来構造は、光ファイバ束3の出口径φD1 と光ファイバ1の入力端の径φD3 の比が0.91:1の場合、光ファイバ1の入力端の径φD3と出力端の径φD4 の比が1:0.68 となり、光ファイバ束3の出口端から光ファイバ1の入力端への光伝送効率は、P2/P1=1.1 ,光ファイバ1の入力端から出力端への光伝送効率はP3/P2=0.58,総合の伝送効率はP3/P1=(P2/P1)×(P3/P2)=1.1×0.58=0.64 となる。
【0018】次に、光ファイバ1の入力端の径φD3 を光ファイバ束3の径φD1 より小さくした本構造は、光ファイバ束3の出口径φD1 と光ファイバ1の入力端の径φD3 の比が1.1:1 ,光ファイバ1の入力端φD3 と出力端の径φD4 の比が1:0.83 となり、前記の構造に対して光ファイバ1のテーパ比率を小さくしている。本構造による光ファイバ束3の出口端から光ファイバ1の入力端への光伝送効率は、P2/P1=0.91 と光ファイバ1の入力端の径を光ファイバ束3の径φD1 より大きくした前記の構造に比べて83%に減少する(図5)。
【0019】一方、光ファイバ1の入力端から出力端への光伝送効率はP3/P2=1.45と前記構造の0.58 に対し大幅に増加する(図6)ので、総合の伝送効率ではP3/P1=(P2/P1)×(P3/P2)=0.91×1.45=1.3 と2倍に向上する。
【0020】以上、L字形状のライトガイド1の光信号入力端の径φD3 を光ファイバ束3の外径φD1 よりも小さくし、L字形状ライトガイド1のテーパ比率を減少させることにより、L字形状ライトガイド1での光信号伝送効率を大幅に向上させ、半導体装置全体としての光信号伝送効率の向上を図ることができる。
【0021】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、L字形状ライトガイドのテーパ比率を減少させ、L字形状ライトガイド1での光信号伝送効率を向上させることにより、光直接点弧型半導体装置全体としての光信号伝送効率を向上させることが可能となる。その結果、微弱な光信号によっても安全に光直接点弧型半導体装置を駆動させることができる、信頼性の高い光直接点弧型半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光直接点弧型半導体装置の光信号導入部の断面図である。
【図2】光直接点弧型半導体装置の拡大断面図である。
【図3】本発明による光信号伝送効率向上の原理図である。
【図4】光信号の伝送効率を示す原理図である。
【図5】光ファイバ束3の外径φD1 とL字形状のライトガイド1の光信号入力端の径φD3 の径比による伝送効率を示す図である。
【図6】L字形状のライトガイド1の光信号入力端の径φD3 と出力端の径φD4 の径比による伝送効率を示す図である。
【符号の説明】
1…L字形状ライトガイド、2…光透過窓、3…光ファイバ束。

【特許請求の範囲】
【請求項1】光直接点弧型半導体素子と、半導体素子の陽極及び陰極と電気的に接続される一対の外部電極と、前記外部電極と共に気密容器を形成し半導体素子を収納すると共に両外部電極間を電気的に絶縁する絶縁円筒と、上記気密容器に気密封止固定された光信号導入用の光透過窓及び一方の端部が前記光透過窓に光学的に接続され他方の端部が半導体素子の光感応部に光学的に接続されるライトガイドを具備する光直接点弧型半導体装置で、光信号が半導体素子外部のライトガイドから光透過窓を通して前記半導体素子内部の光感応部に光信号を導く伝送路となる前記ライトガイドが、光信号入力側の径より光信号出力側の径が小さいテーパ構造を有する構造において、前記ライトガイドの光信号入力側の径を、上記光直接点弧型半導体装置外部の発光体からの光信号を伝送する光ファイバの出力端の径より小さくすることを特徴とする光直接点弧型半導体装置。
【請求項2】前記ライトガイドは、光信号の伝送効率が優れた物質で構成されることを特徴とする請求項1記載の光直接点弧型半導体装置。
【請求項3】前記光透過窓の外径が前記光直接点弧型半導体装置外部の発光体からの光信号を伝送する光ファイバの出力端の光ファイバ束の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の光直接点弧型半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開平6−148458
【公開日】平成6年(1994)5月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−298391
【出願日】平成4年(1992)11月9日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233273)日立原町電子工業株式会社 (15)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)