説明

光硬化性マイケル付加ポリマー

マイケルドナー成分、ポリアクリル成分、およびモノアクリル成分を含む硬化可能な組成物が記載されており、ここで、そのマイケルドナーまたはモノアクリル成分の内の少なくとも一方には、ペンダントされた光重合開始基が含まれる。それらの成分のマイケル付加反応生成物であるマイケル付加ポリマーについても、記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンダントまたは末端光重合開始基を有するマイケル付加ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアセテート化合物の化学、およびアクリレートへのマイケル付加反応は文献から公知である。たとえば、モズナー(Mozner)およびラインバーガー(Rheinberger)は、β−ジカルボニル基を有するアセトアセテートがトリアクリレートおよびテトラアクリレートとマイケル付加反応をしてゲル生成物を形成することを報告した。マクロモレキュラー・ラピッド・コミュニケーションズ(Macromolecular Rapid Communications)、16、135〜138(1995)を参照されたい。
【0003】
米国特許第6,025,410号明細書には、マイケルドナーのマイケルアクセプターに対する化学量論が、分子量を調節するのに極めて重要であると記載されている。この引用文献は、アセトアセテートをマルチアクリレートに1段マイケル付加させることによって作られた、ある種の可溶性液状非架橋オリゴマーは、光重合開始剤を使用しなくても紫外光線を用いてさらに架橋させることが可能である、ということを教示している。特許請求された範囲を下回る保護を用いた場合、架橋されたゲルまたは固形の反応生成物が得られ、それは有用とは言えないが、その理由は、非ゲル化、非架橋の液状オリゴマーだけが、光重合開始剤を添加することなくさらに架橋するためであろう。記載されている液状オリゴマー組成物は、それらが液状物であるために、慣用されるコーティング方法たとえばロール法やスプレー法を用いて、各種の基材に容易に適用することが可能である。
【0004】
米国特許第5,132,367号明細書には、NCO非含有樹脂およびその硬化反応生成物が記載されている。その硬化反応生成物は、アセトアセチル化(メタまたはア)クリル樹脂またはアセトアセチル化ポリエステルと、少なくとも2個の(メタまたはア)クリル末端基を有するNCO非含有ポリウレタンとのマイケル反応によって得られる。
【0005】
欧州特許第227454号明細書には、アセトアセチル化ポリオールとポリα,β−不飽和エステルとのマイケル反応を含む、硬化ポリマーの調製プロセスが開示されている。得られた硬化反応生成物は、優れた接着性、優れた耐溶媒性、優れた光沢保持、良好な可撓性および硬度を示す、と言われている。
【0006】
米国特許第5,459,178号明細書には、アセトアセテートエステル、α,β−エチレン性不飽和モノマーおよび液状第三級アミン触媒を含む混合物が記載されている。硬化された系は、それらの成分を反応させることにより得られる。使用されるアセトアセテートエステルは、平均して少なくとも2個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシル化合物を、アルキルアセトアセテートとエステル交換反応させることにより、調製される。
【0007】
米国特許第4,871,822号明細書には、2成分ラッカーのために、オレフィン性不飽和化合物を少なくとも2個の活性水素原子を含む化合物とマイケル反応させることが開示されている。オレフィン性不飽和化合物としては、少なくとも2個のα,β−不飽和カルボニル基を有する化合物が想定されている。アセトアセチル化ポリオールまたはポリアミン、およびたとえば、アセチルアセトンまたはベンゾイルアセトンのような化合物を含む、多くのマイケルドナーが存在する。
【0008】
デイビッド・L・トランボー(David L.Trumbo)は、ポリマー・ブリテン(Polymer Bulletin),26、p.265〜270(1991)において、1,4−および1,3−ベンゼンジメタノールジアセトアセテートとトリプロピレングリコールジアクリレートとから得られるマイケル付加ポリマーを開示している。この引用文献には、それらの反応剤を、反応性基の化学量論量で使用した場合に、系のゲル化が観察されるとの記載がある。同じ著者が、他の論文(ポリマー・ブリテン(Polymer Bulletin),26、p.481〜485(1991))においても、ビス(アセトアセチル)アミドまたは脂肪族アセトアセテートと、ジアクリレートコモノマーとの反応により得られるマイケル付加ポリマーを記述している。
【0009】
国際公開第95/16749号パンフレットには、水溶液、分散体またはエマルションの形態のアセトアセチル化ポリマーと、少なくとも2個の(メタまたはア)クリレート末端基を有するポリアクリレートとを含む、水性の硬化可能な組成物の記載がある。この公開特許によれば、そのような組成物は、水がその系から蒸発してしまうまでは、触媒の存在下においてさえも安定である。
【0010】
熱硬化性の系における、アセトアセチル化合物の使用、特にアセトアセチル化樹脂の使用については、以下の文献にさらなる記載がある:ジャーナル・オブ・コーティング・テクノロジー(Journal of Coating Technology)第61卷、第771号、p.31〜37;ジャーナル・オブ・コーティング・テクノロジー(Journal of Coating Technology)第65卷、第821号、p.63〜69;サーフェス・コーティングズ・オーストラリア(Surface Coatings Australia)1989年9月号、p.6〜15;ジャーナル・オブ・コーティング・テクノロジー(Journal of Coating Technology)第61卷、第770号、p.83〜91。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、マイケルドナー成分、ポリアクリル成分、および場合によってはモノアクリル成分を含む硬化可能な組成物を提供する。マイケルドナーまたはモノアクリル成分の内の少なくとも一方には、ペンダントした光重合開始基を含む。また別な態様においては、本発明は、ペンダントおよび/または末端光重合開始基を有するマイケル付加ポリマー、すなわちこれらの成分の反応生成物(すなわち、「マイケル付加物」)を提供する。また別な態様においては、そのマイケル付加ポリマーには、光重合開始基に加えて、ペンダントした重合性基が含まれていてもよい。
【0012】
また別な態様においては、本発明は、上述の成分を反応させることにより、調節された分子量を有するマイケル付加ポリマーを調製する方法を提供する。得られたマイケル付加ポリマーを、ペンダント不飽和重合性基(もし、存在すれば)を光重合させることにより、さらに架橋させることができる。また別な実施態様においては、マイケル付加ポリマーを、追加の架橋剤を光重合させることにより、架橋させてもよい。
【0013】
本発明は、得られるポリマーの分子量を制御および調節し、それに光硬化性を付与するペンダントおよび/または末端光重合開始基を有するマイケル付加ポリマーを提供する、モノアクリルモノマーを使用することにより、当業技術における難問を克服するものである。これまでは、マイケル付加物ポリマーの分子量は、ドナー成分とポリアクリル成分の化学量論によって調節されていた。そのために、その生成ポリマーは、さらなる架橋に使用することが可能な少なくとも1個の光重合開始基を有している。
【0014】
それらの組成物は、たとえば耐摩耗性コーティング、インキレセプター、バリヤーフィルム、ポリマーブレンドのための相溶化剤、屈折率の調整が可能な物質、オプティカルコーティング、医薬品および電子部品のコーティング、ならびに親水性ゲルなどにおいて、有用である。
【0015】
いくつかの実施態様においては、本発明による硬化可能な組成物は、基材の上に塗布され、少なくとも部分的に重合してコーティングを形成する。したがってまた別な態様においては、本発明は、その硬化可能な組成物を少なくとも部分的に重合させることにより調製することが可能なコーティングをその上に有数、基材を含む、複合材料物品を提供する。
【0016】
本明細書で使用するとき:
「アクリル」という用語は一般的な意味合いで使用され、アクリル酸の誘導体だけではなく、アクリル酸のそれぞれ、アミン、チオールおよびアルコール誘導体も含み;
「(メタまたはア)クリル」という用語は一般的な意味合いで使用され、アクリル酸およびメタクリル酸の誘導体だけではなく、アクリル酸のそれぞれ、アミン、チオールおよびアルコール誘導体も含み;
「アルキル」および「アルキレン」という用語は、1〜20個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の炭化水素から、それぞれ1個および2個の水素原子を除去した後に残る1価および2価の残基を意味しており;
「低級アルキル」という用語は、C1〜C4アルキルを意味しており;
「アリール」および「アリーレン」という用語は、5〜12個の環原子を有する芳香族化合物(単環、多環、および縮合環)から、それぞれ1個および2個の水素原子を除去した後に残る1価および2価の残基を意味しており、たとえば低級アルクアリールおよびアラルキル、低級アルコキシ、N,N−ジ(低級アルキル)アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、および低級アルキルカルボン酸エステルなどで置換された芳香族化合物が含まれるが、ここで「低級」は、C1〜C4を意味している。
「硬化可能な」という用語は、コーティング可能な物質が、化学反応(たとえば、マイケル付加)架橋、放射線架橋などの手段によって、固体状で、実質的に流動性のない物質に転換させられることが可能であるということを意味している。
「ポリアクリル」という用語は、マイケルアクセプターとして機能することが可能な2個以上のアクリル基を有する化合物を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、マイケルドナー成分、ポリアクリル成分、および場合によってはモノアクリル成分を含む硬化可能な組成物を提供するが、ここで、そのマイケルドナーまたはモノアクリル成分の内の少なくとも一方には、ペンダントされた光重合開始基が含まれる。
【0018】
マイケルドナーは、式(I)〜(III)のいずれかに相当しているのが好ましい:
(W1−CHR1−C(O))x−P (I)
(W1−NH−C(O))x−P (II)
1−CH2−W2 (III)
ここで、
1は、水素、アルキル基またはアリール基を表し;
1およびW2はそれぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミド基、およびスルホニル基から選択され;
Pは、1価または多価の有機残基、またはアセトアセチル化反応におけるポリオールもしくはポリアミンの反応残基を表すか、または、いくつかの実施態様においては、有機残基Pが光重合開始基(たとえば、放射線感応性α−開裂または水素引き抜き基)によって置換されている場合のように、PがP*であってもよく;そして
xは、R1が水素の場合には1以上の整数を表すが、R1がアルキル基またはアリール基を表す場合には、xは2以上である。したがって、式I、IIおよびIIIの化合物それぞれに等価なドナー基の数は2以上である。
【0019】
式(I)に従う一つの有用なタイプのマイケルドナーは、アセトアセチル化ポリオールであって、それは、Pがポリオール残基である、式Iによって表すことができる。アセトアセチル化ポリオールは、アセト酢酸アルキルとのエステル交換反応によって調製することができる。この目的のために好適なエステル交換反応剤は、アセト酢酸tert−ブチルであるが、これについては、J.S.ウィツェマン(J.S.Witzeman)およびW.D.ノッチンガム(W.D.Nottingham)、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)1991、(56)、p.1713〜1718に記載がある。本発明においてアセトアセチル化されるポリオールは、2個以上のヒドロキシ基を有しているのが好ましい。ヒドロキシ基のアセトアセテート基への転化率は、80モル%〜100モル%の間、より好ましくは85モル%〜100%の間とするべきである。
【0020】
好適なアセトアセチル化ポリオールは、たとえば以下のポリオールの一つから得られるものである:ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、K55(登録商標)(バイエル・AG(Bayer AG)から入手可能であって、トリメチロールプロパンとプロピレンオキシドとの縮合反応生成物である)、ジペンタエリスリトール、ヒマシ油、グリセリン、ジプロピレングリコール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ネオペンチルグリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコールなど。そのようなポリオールのヒドロキシル末端基の1個または複数をアセトアセチル化することができる。いくつかの実施態様においては、一つの末端基をアセトアセチル化させ、他の基を、エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基、たとえばアリル基、ビニル基またはメタクリル基を用いて官能化させるのが、好都合なこともある。
【0021】
親水性マイケル付加ポリマーが望ましい場合には、アセトアセチル化ポリ(アルキレンオキシド)を使用してもよい。ポリ(アルキレンオキシド)の末端となる官能基としては、ヒドロキシ基およびアミン基が挙げられるが、それらは上述のようにしてアセトアセチル化されてもよい。ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)、およびそれらの組合せは、その片側または両側の終末端でアセトアセチル化されてもよい。
【0022】
低官能化アセトアセチル化ポリオールの方が、より高官能化のアセトアセチル化ポリオールよりも、選択性が高く、架橋の調節がしやすい。本発明関連のアセトアセチル化ポリオールが300g/mol未満の当量を有しているのが好ましい。本発明関連のアセトアセチル化ポリオールの好適な当量の範囲は、30g/mol〜5000g/molの間である。
【0023】
式(II)に従うマイケルドナーの例は、たとえばp−CH364−SO2NHCO2−P’のタイプの化合物であるが、ここで、P’は、ポリオール、たとえば、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、ジトリメチロールプロパン、プロパンジオール、ジエチレングリコールなどの残基を表す。
【0024】
式(III)に従う化合物の例は、NC−CH2−CN、CH3SO2CH2CN、CF3−C(O)−CH2−C(O)−CF3、CF3−C(O)−CH2−C(O)−OC25、p−CH364SO2CH2SO2CH3、C65−C(O)−CH2−SO2CH3、(CH32CCH22SO2、p−O2NC64CH2CN、などである。さらなる例は、米国特許第5,256,473号明細書に見出すことができる。
【0025】
式I、II、およびIIIに関しては、P、W1またはW2のいずれも、エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基、たとえばメタクリル基、ビニル基またはアリル基を用いてさらに置換されていてもよい。そのような基はマイケル付加においては非反応性であるので、それらは、そのペンダントまたは末端光重合開始基を介して、その後にフリーラジカル重合させてもよい。たとえば、W1(またはW2)は、−C(O)−O−Cn2n−O−C(O)−C(CH3)=CH2、−C(O)−O−Cn2n−O−CH2−CH=CH2、または−C(O)−O−Cn2n−O−CH=CH2などであってよい(ここでn=1〜10である)。同様にして、Pは、−C(O)−O−Cn2n−O−C(O)−C(CH3)=CH2、−C(O)−O−Cn2n−O−CH2−CH=CH2、−C(O)−O−Cn2n−O−CH=CH2、−O−Cn2n−O−C(O)−C(CH3)=CH2、−O−Cn2n−O−CH2−CH=CH2、または−O−Cn2n−O−CH=CH2を用いて置換されていてもよい(ここでn=1〜10である)。
【0026】
エチレン性不飽和重合性基を用いてさらに置換された有用なマイケルドナーとしては、メタクリル酸2−アセトアセトキシエチル、およびアセト酢酸アリルが挙げられる。
【0027】
式IおよびIIに関連して、Pは、光重合開始基を含むP*であってもよい。したがって、そのマイケルドナーはアセトアセチル化光重合開始剤であってもよく、それはアセト酢酸アルキルとのエステル交換反応により調製することができる。この目的のために好適なエステル交換反応剤は、先にも挙げたように、アセト酢酸tert−ブチルである。アセトアセチル化することができる有用な光重合開始剤については、以下に述べる。
【0028】
本発明において使用するための式(III)に相当するマイケルドナーの好適なタイプは、以下の式(IV)で表される:
2−C(O)−CH2−C(O)−R3 (IV)
ここで、R2およびR3はそれぞれ独立して、アリールオキシ基、アルコキシ基、アルキル基またはアリール基を表す。
【0029】
式(III)、特に式(IV)に従うマイケルドナーが好ましいが、その理由は、それらは一般に、たとえば上述のようにポリオールをアセトアセチル化することが必要なアセトアセチル化ポリオールよりも安価だからである。さらに、このアセトアセチル化にはエステル交換反応が含まれ、その間に副生物としてアルコールが生成する。式(IV)に従う好適なマイケルドナーは、R2およびR3がそれぞれ独立して、たとえば、メチル、エチル、プロピルのようなアルキル、たとえばフェニルのようなアリール、たとえば、メトキシ、エトキシ、t−ブトキシのようなアルコキシ基、またはたとえばフェノキシ基のようなアリールオキシ基から選択されたものである。式(IV)に従う化合物の例は、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸メチル、マロン酸エチル、アセト酢酸t−ブチルなどである。
【0030】
有用なポリアクリル化合物としては次の一般式のものが挙げられる:
4−(Z−C(O)−CH=CH2z (V)
ここで、それぞれのZは独立して、−S−、−O−、または−NR5−であるが、ここでそれぞれのR5は独立して、H、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;
それぞれのR4は独立して、原子価zの多価有機基を表し、それらは、環状、分岐状、または直鎖状の、脂肪族、芳香族、または炭素、水素、窒素、非過酸化系の酸素、硫黄、もしくはリン原子を含む複素環式であってもよく、R4は、1個または複数のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基、たとえばメタクリル基、ビニル基またはアリル基によってさらに置換されていてもよく;
それぞれのzは独立して、2以上の整数を表す。
【0031】
一つの実施態様においては、R4は少なくとも2の原子価を有する多価有機基であってもよい。多価基であるR4の例としては、メチレン(すなわち、−CH2−);エチレン;プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレンなどシクロヘキシレン、ならびにフェニレンおよびそれらのすべての異性体が挙げられる。R4基については、以下の有用なポリアクリル化合物に関連してさらに詳しく説明する。
【0032】
有用なポリアクリル化合物としては、たとえば以下のものからなる群より選択されるアクリレートモノマーが挙げられる:(a)ジアクリル含有化合物、たとえば1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート;(b)トリアクリル含有化合物、たとえばグリセロールトリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(たとえば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート(たとえば、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;(c)高官能性アクリル含有化合物、たとえばジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;(d)オリゴマー性アクリル化合物、たとえばウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート;上述のもののポリアクリルアミド同族体;ならびにそれらの組合せ。
【0033】
そのような化合物は、ペンシルバニア州エクストン(Exton,Pennsylvania)のサートマー・カンパニー(Sartomer Company);ジョージア州スマーナ(Smyrna,Georgia)のユー・シー・ビー・ケミカルズ・コーポレーション(UCB Chemicals Corporation);およびウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)などの供給業者から入手することが可能である。ヒダントイン残基含有ポリアクリレートなど、さらなる有用なアクリレート物質については、たとえば、米国特許第4,262,072号明細書(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載がある。
【0034】
その他の有用なポリアクリル化合物としてはさらに、たとえばペンダントした(メタまたはア)クリル基を有し、その(メタまたはア)クリル基の内の少なくとも2個がアクリル基である、フリーラジカル重合性アクリレートオリゴマーおよびポリマーが挙げられる。
【0035】
有用なアクリレートオリゴマーとしては、アクリル化ポリエーテルおよびポリエステルオリゴマーが挙げられる。親水性マイケル付加ポリマーが望ましい場合には、ポリアクリルポリ(アルキレンオキシド)を使用してもよい。ポリ(アルキレンオキシド)の末端となる官能基としては、ヒドロキシ基およびアミン基が挙げられるが、それらはアクリル化されてもよい。ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)、およびそれらの組合せは、その片側または両側の終末端でアクリル化されてもよい。
【0036】
有用なアクリル化ポリエーテルオリゴマーとしては、ポリエチレングリコールジアクリレートが挙げられ、このものはたとえば、サートマー・カンパニー(Sartomer Company)から、商品名「SR259」および「SR344」として入手可能である。アクリル化ポリエステルオリゴマーはたとえば、ユー・シー・ビー・ケミカルズ・コーポレーション(UCB Chemicals Corporation)から、商品名「エベクリル(EBECRYL)657」および「エベクリル(EBECRYL)830」として入手可能である。
【0037】
その他の有用なアクリレートオリゴマーとしては、アクリル化エポキシ、たとえば、エポキシ官能性物質のジアクリル化エステル(たとえば、ビスフェノールAエポキシ官能性物質のジアクリル化エステル)およびアクリル化ウレタンが挙げられる。有用なアクリル化エポキシとしては、たとえば、ユー・シー・ビー・ケミカルズ・コーポレーション(UCB Chemicals Corporation)から商品名「エベクリル(EBECRYL)3500」、「エベクリル(EBECRYL)3600」、「エベクリル(EBECRYL)3700」、および「エベクリル(EBECRYL)3720」として入手可能なアクリル化エポキシが挙げられる。有用なアクリル化ウレタンとしては、たとえば、ユー・シー・ビー・ケミカルズ・コーポレーション(UCB Chemicals Corporation)から商品名「エベクリル(EBECRYL)270」、「エベクリル(EBECRYL)1290」、「エベクリル(EBECRYL)8301」、および「エベクリル(EBECRYL)8804」として入手可能なアクリル化ウレタンが挙げられる。
【0038】
上述の有用なポリアクリル化合物に関しては、それらに対応するアミドまたはチオエステルもまた有用であることは理解されたい。多官能エチレン性不飽和のアクリル酸エステルは、非ポリエーテル性多官能エチレン性不飽和のアクリル酸エステルであるのが好ましい。
【0039】
多官能エチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸のエステルであるのが好ましい。アクリル化合物の2官能エチレン性不飽和エステル、アクリル化合物の3官能エチレン性不飽和エステル、アクリル化合物の4官能エチレン性不飽和エステル、およびそれらの組合せからなる群より選択されるのがより好ましい。これらの内では、2官能および3官能エチレン性不飽和のアクリル酸のエステルがより好ましい。
【0040】
好適なポリアクリル化合物は、多官能エチレン性不飽和のアクリル酸のエステルであって、次式で表すことができる:
【化1】

ここで、R4は多価有機基であって、それらは環状、分岐状、または直鎖状の、脂肪族、芳香族、または炭素、水素、窒素、非過酸化系の酸素、硫黄、もしくはリン原子を含む複素環式であってもよい。R4は、14より大、1000までの分子量を有していてもよく、そして、1個または複数のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基、たとえばメタクリル基、ビニル基またはアリル基によってさらに置換されていてもよく;
zは、そのエステルの中のアクリル性の基の数を示す整数であって、zは2〜6の値である(より好ましくは、zは2〜5の値、最も好ましくは2であるか、あるいはポリアクリレートの混合物を使用する場合には、zは約2の平均値を有する)。
【0041】
好適な多官能エチレン性不飽和のアクリル酸のエステルの例は、多価アルコールのポリアクリル酸またはポリメタクリル酸エステルであって、たとえば以下のようなものが挙げられる:脂肪族ジオールたとえばエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1−エトキシ−2,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノールなどのジアクリル酸およびジメチルアクリル酸エステル;脂肪族トリオールたとえばグリセリン、1,2,3−プロパントリメタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,3,6−ヘキサントリオール、および1,5,10−デカントリオールのトリアクリル酸エステル;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリル酸エステル;脂肪族トリオール、たとえば1,2,3,4−ブタンテトロール、1,1,2,2−テトラメチロールエタン、1,1,3,3−テトラメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールテトラアクリレートのテトラアクリル酸エステル;脂肪族ペントールたとえばアドニトールのペンタアクリル酸およびペンタメタクリル酸エステル;ヘキサノールたとえばソルビトールおよびジペンタエリスリトールのヘキサアクリル酸エステル;芳香族ジオール、たとえばレソルシノール、ピロカテコール、ビスフェノールA、およびビス(2−ヒドロキシエチル)フタレートのジアクリル酸エステル;芳香族トリオール、たとえばピロガロール、フロログルシノール、および2−フェニル−2,2−メチロールエタノールのトリアクリル酸エステル;ならびにジヒドロキシエチルヒダントインのヘキサアクリル酸エステル;およびそれらの混合物。
【0042】
マイケル型の付加反応に関しては、アクリルとその他のエチレン性不飽和重合性基(たとえばメタクリル、ビニルまたはアリル基)との間には、反応性に差が存在する。マイケル型の付加反応は典型的には、アクリル基との間で容易に起きる(たとえば、反応性マイケルドナー化合物とアクリル基を有する化合物との組合せは、場合によっては穏やかな加熱と塩基性触媒の存在下では典型的には、自発的なマイケル型の付加反応が起きる)が、メタクリル、アリルまたはビニル基の場合には、起きるとしても極めて困難である。
【0043】
この理由から、ポリアクリル成分には典型的には、(たとえば、アクリロキシまたはアクリルアミド官能性の一部として)少なくとも2個のアクリル基を含むが、そのポリアクリル化合物に、追加のエチレン性不飽和基、たとえばメタクリル基(たとえば、メタクリレートまたはメタクリルアミド官能性の一部として)、ビニル基、またはアリル基がさらに含まれていてもよい。マイケル付加においては非反応性のそのような基も、ペンダントまたは末端にある光重合開始基の手段によってそのマイケル付加ポリマーを架橋させるのには、幸便に使用することができる。好都合なことには、マイケル付加がアクリル基によって起きてマイケル付加物を形成するが、光重合性基は未反応のまま残るような、組成物を調製することもできる。そのような未反応のメタクリル基を、その後で光重合させてもよい。
【0044】
モノアクリル成分は、その硬化可能な組成物から調製されるポリマーに、分子量の調節、およびそのポリマーの末端への官能基(たとえば、その後での架橋のための光重合開始基)の組入れという、二つのメリットを与える。従来は、アセトアセテートおよびジアクリレートから誘導されるポリマーの分子量は、それらの成分の一つの化学量論によって調節されていた。光重合開始基を有するモノアクリル成分は、「二重硬化」組成物を提供し、そこでは、マイケルドナー成分、ポリアクリル成分およびモノアクリル成分がまずマイケル付加により重合し、次いで光重合によって架橋される。
【0045】
組成物には、光重合開始基を有するモノアクリル化合物が含まれていてもよい。そのようなモノアクリル化合物は、マイケル反応においても反応性があって、鎖の末端にモノアクリル成分の残基を有するマイケル付加物が生成する。好適な光重合開始剤モノマーとしては、次式で表される官能基を有するマイケル付加反応性、エチレン性不飽和化合物が挙げられる:
【化2】

ここでR6は次式のものであるが、
【化3】

ここでR7は、HまたはC1〜C6アルキル基であり、
それぞれのR8は独立して、ヒドロキシル基、フェニル基、C1〜C6アルキル基、またはC1〜C6アルコキシ基である。
【0046】
光重合開始基を有するモノアクリル化合物は、次の一般式のものであってよく:
【化4】

Xは、−O−または−NR9−であり;
9は、HまたはC1〜C4アルキル基、好ましくはHまたはメチル基であり;
mは、0または1〜5の整数であり;
a、b、およびcは独立して、0または1であり;
1は、C(R92またはSi(R92であるが、ここでそれぞれのR9は独立して、HまたはC1〜C4アルキル基であり;
2は、O、NR9、C(O)、C(O)O、C(O)NR9、またはOC(O)NR9であるが、ここでそれぞれのR9は独立して、HまたはC1〜C4アルキル基であり;
Gは、共有結合、(CH2d、または(CH2dOであるが、ここでdは、1〜4、好ましくは1〜2の整数であり;
*は光重合開始基、たとえば式VI(上述)放射線感応性α−開裂基である。
【0047】
また別な実施態様においては、それからP*を誘導することが可能な各種の化合物は、芳香族ケトンである。そのようなケトンは、「水素引き抜き剤」として知られている。紫外光線を吸収して活性化されると、それらのP*基が、マイケル付加物を架橋させるように働くことができる。したがって、P*は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、9−フルオレン、アントロン、キサントン、チオキサントン、アクリドン、ジベンゾスベロン、ベンジル、またはクロモンから誘導される残基である。それらの芳香族ケトンは、求核剤ではない各種の官能基によって置換されていてもよい。有用な官能基としては、アルキル、アルコキシ、アリール、ジアルキルアミノ、ハロ、ニトロ、およびシアノ基が挙げられる。したがって、光重合開始基を有するモノアクリル化合物には、水素引き抜き基が含まれていてもよい。
【0048】
好適なP*基としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、チオキサントン、クロモン、およびベンジルから誘導された基が挙げられる。特に好適であるのはベンゾフェノンおよびアントラキノンである。
【0049】
水素引き抜き剤は、求電子性の2−アルケニルアズラクトン化合物の開環反応、および求核剤−置換された芳香族ケトンとの同様の反応によって調製することができる。好適な求核剤としては、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、およびチオール基が挙げられる。そのようなモノアクリル光重合開始剤については、米国特許第6,245,922号明細書(ハイルマン(Heilmann)ら)に教示がある。
【0050】
光重合開始基を有する特に有用なモノアクリル化合物には、以下の化合物が含まれる:
【0051】
【化5】

【0052】
光重合開始基(たとえば式VIIのもの)を有する各種のモノアクリル化合物は、1)第一の反応性官能基を含むエチレン性不飽和モノマー(「官能性アクリル化合物」)と、2)光重合開始基および第二の反応性官能基(これら2種の官能基は、互いに共反応性である)を含む化合物とを、反応させることにより作ることができる。好適な共反応性化合物は、最高36個までの炭素原子と場合によっては1個または複数の酸素および/または窒素原子および少なくとも1個の反応性官能基とを有する、マイケル反応性のエチレン性不飽和の脂肪族、脂環式、および芳香族化合物である。その第一の官能基と第二の官能基が反応すると、それらが共有結合を形成して、共反応性化合物を結合して、光重合開始基を有するモノアクリル化合物を形成させる。
【0053】
光重合開始剤共反応性化合物の代表的な例としては官能基置換された化合物、たとえば、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−ジメトキシエタノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノン、(4−イソシアナトフェニル)−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタノン、1−{4−[2−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]}−2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエタノン、1−[4−(2−アミノエトキシ)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノン、および1−[4−(カルボメトキシ)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノンなどが挙げられる。そのような光重合開始剤モノマー(およびそれらから誘導される高分子量光重合開始剤)は、たとえば米国特許第5,902,836号明細書(バブ(Babu)ら)および米国特許第5,506,279号明細書(バブ(Babu)ら)に記載されている。
【0054】
上の記述に関して、光重合開始基は少なくとも二つの方法でマイケル付加物に組み入れることができることが理解できるであろうが、それらの二つの方法とは、光重合開始基を有するモノアクリル化合物を(マイケル付加により)、他の成分と重合させてマイケル付加ポリマーを製造する「直接法」、または、1)反応性官能基を有するモノアクリル化合物(「官能性アクリル化合物」)を用いてマイケル付加ポリマーを得て、次いで、2)共反応性官能基を有する光重合開始剤化合物を用いて官能化させて、光重合開始基を有するモノアクリル化合物を製造する「間接法」である。
【0055】
有用な反応性官能基の例を挙げれば、ヒドロキシル、アミノ、オキサゾリニル、オキサゾロニル、アセチル、アセトニル、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ、アジリジニル、アシルハライド、および環状無水物基などである。そのペンダント反応性官能基がイソシアナト官能基である場合には、共反応性官能基にアミノ、カルボキシル、またはヒドロキシル基が含まれているのが好ましい。ペンダント反応性官能基がヒドロキシル基を含んでいる場合には、その共反応性官能基には、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ、無水物、アシルハライド、またはオキサゾリニル基が含まれているのが好ましい。ペンダント反応性官能基がカルボキシル基を含んでいる場合には、その共反応性官能基には、ヒドロキシル、アミノ、エポキシ、ビニルオキシ、またはオキサゾリニル基が含まれているのが好ましい。
【0056】
そのモノアクリル成分が、たとえば表1に示されたような光重合開始基を含む場合には、その組成物には、マイケルドナー成分、ポリアクリル成分、および光重合開始基を含むモノアクリル成分が含まれていてもよい。
【0057】
そのマイケルドナー成分が、光重合開始基、たとえばアセトアセチル化光重合開始剤を含む場合には、その組成物には、ペンダント光重合開始基を有するモノアクリル化合物に代えて、「官能性モノアクリル化合物」が含まれていてもよい。モノアクリル成分のそれらの官能基は、マイケル付加物を停止させて、そのマイケル付加物のさらなる反応または変性をするために使用することができる。したがって、硬化可能な組成物には、ペンダント光重合開始基を含むマイケルドナー成分、ポリアクリル成分、および官能性アクリル成分が含まれていてよい。
【0058】
有用な官能性アクリル化合物としては、マイケル付加に与るそれらのアクリル化合物が含まれ、さらに、さらなる反応をすることが可能な官能基、たとえば、ヒドロキシル、アミノ、アズラクトン、オキサゾリニル、3−オキソブタノイル(すなわち、アセトアセチル)、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ、アジリジニル、アシルハライド、ビニルオキシ、または環状無水物基が含まれる。
【0059】
代表的なヒドロキシル基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:ヒドロキシアルキルのアクリレートおよびヒドロキシアルキルアクリルアミドたとえば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメチル、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリル酸4−ヒドロキシシクロヘキシル、3−アクリロイルオキシフェノール、2−(4−アクリロイルオキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAモノアクリレートとも呼ばれる)、2−プロピン−1−オール、および3−ブチン−1−オール。
【0060】
代表的なアミノ基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:アクリル酸2−メチルアミノエチル、アクリル酸3−アミノプロピル、アクリル酸4−アミノシクロヘキシル、N−(3−アミノフェニル)アクリルアミド、N−アクリロイルエチレンジアミン、および4−アミノフェニル−4−アクリルアミドフェニルスルホン。
【0061】
代表的なアズラクトン基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−エテニル−4−メチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−イソプロペニル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−イソプロペニル−4−メチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−エテニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−エテニル−4−メチル−4−エチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−イソプロペニル−3−オキサ−1−アザ[4.5]スピロデカ−1−エン−4−オン;2−エテニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン−6−オン;2−エテニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−オキサゼピン−7−オン;2−イソプロペニル−5,6−ジヒドロ−5,5−ジ(2−メチルフェニル)−4H−1,3−オキサジン−6−オン;2−アクリロイルオキシ−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−(2−アクリロイルオキシ)エチル−4,4−ジメチル−1、3−オキサゾリン−5−オン;2−エテニル−4,5−ジヒドロ−6H−1,3−オキサジン−6−オン;および2−エテニル−4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチル−6H−1,3−オキサジン−6−オン。
【0062】
代表的なオキサゾリニル基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−(5−ヘキセニル)−2−オキサゾリン、2−アクリロキシ−2−オキサゾリン、2−(4−アクリロキシフェニル)−2−オキサゾリン、および2−メタクリロキシ−2−オキサゾリン。
【0063】
代表的なアセトアセチル基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:2−(アセトアセトキシ)エチルアクリレート。
【0064】
代表的なカルボキシル基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:アクリル酸、3−アクリロイルオキシ−プロピオン酸、4−アクリロイルオキシ−酪酸、2−アクリロイルオキシ−安息香酸、3−アクリロイルオキシ−5−メチル安息香酸、4−アクリロイルオキシメチル−安息香酸、フタル酸モノ−[2−アクリロイルオキシ−エチル]エステル、2−ブチン酸、および4−ペンチン酸。
【0065】
代表的なイソシアネート基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:アクリル酸2−イソシアナトエチル、アクリル酸3−イソシアナトプロピル、アクリル酸4−イソシアナトシクロヘキシル、4−イソシアナトスチレン、2−メチル−2−プロペノイルイソシアネート、4−(2−アクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ)フェニルイソシアネート、アリル2−イソシアナトエチルエーテル、および3−イソシアナト−1−プロペン。
【0066】
代表的なエポキシ基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:アクリル酸グリシジル、アクリル酸チオグリシジル、アクリル酸3−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−(4−アクリロイルオキシ−フェニル)プロパン、アクリル酸4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル、アクリル酸2,3−エポキシシクロヘキシル、およびアクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル。
【0067】
代表的なアジリジニル基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:N−アクリロイルアジリジン、アクリル酸2−(1−アジリジニル)エチル、アクリル酸4−(1−アジリジニル)ブチル、アクリル酸2−[2−(1−アジリジニル)エトキシ]エチル、アクリル酸2−[2−(1−アジリジニル)エトキシカルボニルアミノ]エチル、アクリル酸12−[2−(2,2,3,3−テトラメチル−1−アジリジニル)エトキシカルボニルアミノ]ドデシル、および1−(2−プロペニル)アジリジン。
【0068】
代表的なアシルハライド基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:塩化アクリロイル、塩化α−クロロアクリロイル、塩化アクリロイルオキシアセチル、塩化5−ヘキセノイル、塩化2−(アクリロイルオキシ)プロピオニル、塩化3−(アクリロイルチオキシ)プロピオニル、および塩化3−(N−アクリロイル−N−メチルアミノ)プロピオニル。
【0069】
代表的なビニルオキシ基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:アクリル酸2−(エテニルオキシ)エチル、3−(エチニルオキシ)−1−プロペン、4−(エチニルオキシ)−1−ブテン、および4−(エテニルオキシ)ブチル−2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテート。
【0070】
代表的な無水物基置換された官能性モノマーの例としては以下のものが挙げられる:無水マレイン酸、無水アクリル酸、無水イタコン酸、3−アクリロイルオキシフタル酸無水物、および2−アクリロキシシクロヘキサンジカルボン酸無水物。
【0071】
好適な、反応性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(「官能性アクリル化合物」)としては以下のものが挙げられる:アクリル酸ヒドロキシアルキルたとえばアクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびアクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル;アクリル酸アミノアルキルたとえばアクリル酸3−アミノプロピルおよび4−アミノスチレン;オキサゾリニル化合物たとえば2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−オンおよび2−プロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;カルボキシ置換された化合物たとえば(メタまたはア)クリル酸および(メタまたはア)クリル酸4−カルボキシベンジル;イソシアナト置換された化合物たとえば(メタまたはア)クリル酸イソシアナトエチルおよび(メタまたはア)クリル酸4−イソシアナトシクロヘキシル;エポキシ置換された化合物たとえば(メタまたはア)クリル酸グリシジル;アジリジニル置換された化合物たとえばN−アクリロイルアジリジンおよび1−(2−プロペニル)−アジリジン;ならびにアクリロイルハライドたとえば塩化(メタ)アクリロイル。
【0072】
マイケル反応のための好適な触媒は、その共役酸が好ましくは12〜14の間のpKaを有する塩基である。そのような塩基の例としては以下のものが挙げられる:1,4−ジヒドロピリジン、メチルジフェニルホスファン、テトラメチルグアニジン、メチルジ−p−トリルホスファン、2−アリル−N−アルキルイミダゾリン、テトラ−t−ブチルアンモニウムヒドロキシド、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)およびDBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン)、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウムなど。使用するのに最も好ましい塩基は、有機塩基である。特に好ましい触媒は、DBUおよびテトラメチルグアニジンである。本発明に従って硬化可能な組成物の中で使用される触媒の量は、好ましくは0.05重量%〜2重量%の間、より好ましくは0.1重量%〜1.0重量%の間である。
【0073】
好ましくは、本発明関連の硬化可能な組成物は、二成分を共に混合することにより調製される。一方の成分には触媒を含み、他方の成分には反応剤、すなわち、ポリアクリル成分、マイケルドナー成分、およびモノアクリル成分を含む。一方の中に触媒を反応剤の一つと共存させ、もう一方の中に他の成分を存在させておくことも可能ではあるが、そのような実施態様は一般に好ましくない結果を招く。この反応の程度は一般に、使用される触媒と反応剤の種類とに依存する。
【0074】
反応剤の化学量論は、成分のモル量を基準にするのではなく、官能基のモル当量を基準にする。たとえば、アセト酢酸メチルのような式Iの化合物は、両方のカルボニル基に対してアルファ位の2個のプロトンを有しているので、2個のアクリル基と反応することができる。したがって、アセト酢酸メチルは2官能基当量である。マイケルドナー官能基当量(「ドナー当量」)のマイケルアクセプター官能基当量(「アクセプター当量」)に対する比率は一般に、2:1未満、より好ましくは1.5:1未満、最も好ましくは1.1:1未満である。
【0075】
モノアクリル成分の量は一般に、マイケルドナー官能基当量とマイケルアクセプター官能基当量との差に等しいか、それより少なくする。最も好ましいのは、ドナー当量≧アクセプター当量+モノアクリル成分である。たとえば、ドナー当量のアクセプター当量に対する比率が2:1未満である場合には、モノアクリル成分の量は、1当量以下とする。ドナー当量のアクセプター当量に対する比率が1.5:1未満である場合には、モノアクリル成分の量は、0.5当量以下とする。ドナー当量のアクセプター当量に対する比率が1.1:1未満である場合には、モノアクリル成分の量は、0.1当量以下とする。
【0076】
製造されるマイケル付加ポリマーは次式で表すことができる:
【化6】

ここで、Mは、光重合開始基を有するモノアクリル化合物の残基(たとえば式VIIで表される)であり;
Dは、マイケルドナー成分の残基(たとえば式I、IIまたはIIIで表される)であるが、それらは、1個または複数のエチレン性不飽和重合性基、たとえばアリル基、ビニル基もしくはメタクリレート基(それぞれ通常はマイケル付加には非反応性)によりさらに置換されていてもよいし、または別な方法として、光重合開始基によってさらに置換されていてもよく;
Aは、ポリアクリル成分の残基(式Vで表される)であり、そして
yは少なくとも1である。
【0077】
上述の式は、ドナー成分とアクセプター成分のそれぞれが2官能基当量を有している、最も単純なケースを表しているということを理解されたい。さらに、Mおよび/またはDが光重合開始基を含んでいることも理解されたい。ドナー成分またはアクセプター成分が3以上の官能基当量を有する、より複雑な構造もまた製造することが可能であり、それらも本発明の範囲に含まれる。たとえば、ポリアクリル成分Aが3価である場合には、マイケル付加ポリマーは次式のものを含む:
【化7】

ここで、D、A、y、およびMは先に述べたものと同じである。
【0078】
Dが3価である(すなわち、3個のアクリル基を有する)場合、そのマイケル付加ポリマーには次式のものを含む:
【化8】

【0079】
いくつかの実施態様においては、ドナー成分、ポリアクリル成分およびモノアクリル成分のマイケル反応で製造されるポリマー(マイケル付加物)は、次の一般構造を有していることができる:
【化9】

ここで、
1およびW2はそれぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミド基、およびスルホニル基から選択され;
それぞれのZは独立して、−S−、−O−、−NH−、または−NR5−であるが、ここでそれぞれのR5は独立して、H、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;
4は、多価有機基であり;
Xは、−O−または−NR9−であり;
Gは、共有結合、(CH2d、または(CH2dOであるが、ここでdは、1〜4、好ましくは1〜2の整数であり;
*は、たとえば式VIのような光重合開始基の残基であり;
そしてxは少なくとも1である。
【0080】
マイケルドナー成分が、1個または複数のエチレン性不飽和の、フリーラジカル重合性基たとえばアリル基、ビニル基またはメタクリレート基(それぞれ通常はマイケル付加においては非反応性)によってさらに置換されている場合には、そのマイケル反応で形成されたマイケル付加ポリマーは、ペンダントした未反応の重合性基を光重合させることにより、架橋させてもよい。有用なまた別の、特にそのドナー成分がそのように置換されていない実施態様においては、そのマイケル付加ポリマーは、架橋剤を添加することによって架橋させてもよい。
【0081】
本発明は、コーティングを調製する方法を提供するが、それには、マイケルドナー成分、ポリアクリル成分(そのポリアクリル成分は、1個または複数のエチレン性不飽和の、フリーラジカル重合性基でさらに置換されている)、およびモノアクリル成分を塩基性触媒と混合して、未反応で、ペンダントしたエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有するマイケル付加反応生成物を製造することが含まれる。そのマイケルドナー成分とモノアクリル成分の内の少なくとも一方には光重合開始基が含まれる。次いで、その未反応で、ペンダントしたフリーラジカル重合性基を光重合させて、その組成物を架橋させることができる。
【0082】
別な方法として、本発明はコーティング調製する方法を提供するが、それには、マイケルドナー成分、ポリアクリル成分、およびモノアクリル成分を塩基性触媒と混合して、マイケル付加をさせることが含まれる。次いで、そのマイケル付加物を架橋剤と組み合わせて、光重合させることにより、架橋させることができる。
【0083】
そのような架橋剤には、先に述べたようなポリアクリル成分が含まれていてもよいし、あるいは、ポリエチレン性不飽和モノマー成分が含まれていてもよい。使用することが可能なポリエチレン性不飽和モノマーの例としては以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):ポリ(メタまたはア)クリル官能性モノマーたとえばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ−、トリ−、テトラ−(メタ)アクリレート、ならびに1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート;オレフィン性−アクリル官能性モノマーたとえば(メタまたはア)クリル酸アリル、(メタまたはア)クリル酸2−アリルオキシカルボニルアミドエチル、および(メタまたはア)クリル酸2−アリルアミノエチル;アリル2−(メタまたはア)クリルアミド−2,2−ジメチルアセテート;ジビニルベンゼン;など。その他の有用な架橋剤が、米国特許第5,180,756号明細書に記載されている。
【0084】
マイケル反応が所望の転化率のレベルに達したら、そのマイケル反応生成物を、たとえばUV照射のような化学線エネルギーに暴露させることによって、さらに(光重合開始基により開始された)架橋をさせて、改良された最終的な機械的性質を得ることができる。UV光源としては以下の二つのタイプが可能である:1)比較的低強度の光源、たとえば、一般に波長範囲280〜400ナノメートルの範囲で10mW/cm2以下の強度(たとえばユビマップ(UVIMAP)(登録商標)UM365L−Sラジオメーター(バージニア州スターリング(Sterling,VA)のエレクトロニック・インストラメンテーション・アンド・テクノロジー・インコーポレーテッド(Electronic Instrumentation & Technology,Inc)製)を用い、米国連邦標準技術研究所(United States National Institute of Standards and Technology)により承認された手順に従って測定したもの)を与えるブラックライト;ならびに、2)比較的高強度の光源、たとえば、一般に10mW/cm2より大、好ましくは15〜450mW/cm2の間の強度を与える中圧水銀ランプ。化学線照射を使用して、オリゴマー組成物を完全に、または部分的に架橋させる場合には、高強度で、短露光時間を用いるのが好ましい。たとえば、強度600mW/cm2で露光時間約1秒とすれば、満足のいくレベルが得られる。強度範囲は、約0.1〜約150mW/cm2、好ましくは約0.5〜約100mW/cm2、より好ましくは約0.5〜約50mW/cm2である。
【0085】
光重合法のメリットは、1)組成物を加熱する必要がないこと;および2)活性化光源を切れば光重合開始が完全に停止し、光重合開始剤を追加する必要がないこと、である。所望により、特にバルク状態における組成物質の屈折率の測定を、重合の程度をモニターするために使用することができる。屈折率は転化率に対して直線的に変化する。このモニター方法は、重合動力学の検討では一般的に応用されている。その方法についての考察は、たとえば、G.P.グラジシェフ(G.P.Gladyshev)およびK.M.ギボフ(K.M.Gibov)『ポリメリゼーション・アト・アドバンスト・デグリーズ・オブ・コンバージョン(Polymerization at Advanced Degrees of Conversion)』(ケーター・プレス(Keter Press)、エルサレム(Jerusalem)、1970)を参照されたい。
【0086】
本発明による硬化可能な組成物を、基材の上にコーティングし、少なくとも部分的に硬化させて、マイケル付加ポリマーを担持する複合材料物品を得ることができる。そのマイケル付加ポリマーは、上述のように、光重合によりさらに架橋させてもよい。好適な基材としては、たとえば以下のものが挙げられる:ガラス(たとえば、窓ガラスならびに光学的要素たとえばレンズもしくはミラー)、セラミック(たとえば、セラミックタイル)、セメント、石材、ペイントした表面(たとえば、自動車ボディパネル、ボートの表面)、金属(たとえば、建築用の柱)、紙(たとえば、接着剤剥離ライナー)、板紙(たとえば、食品容器)、熱硬化性樹脂、熱可塑性プラスチック(たとえば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、およびスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、ならびにそれらの組合せ。それらの基材はフィルムやシートであってもよいし、あるいはなにか他の形態であってもよい。
【0087】
硬化可能な組成物は、慣用される方法、たとえば、スプレー法、ナイフコーティング法、ノッチコーティング法、リバースロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、フラッドコーティング法、またはスピンコーティングにより、基材に適用することができる。典型的には、硬化可能な組成物を基材に、乾燥・硬化させた層がおおよそ少なくとも約60nmからの範囲の厚みを有するように、比較的薄い層として適用するが、より薄い、および、より厚い(たとえば、厚みが100マイクロメートルまで、またはそれ以上)の層もまた使用することができる。次いで、各種の任意成分の溶媒を、典型的には少なくとも部分的に(たとえば、強制空気循環炉を使用して)除去し、次いでその重合性組成物を、少なくとも部分的に重合させて(すなわち硬化させて)、たとえば先に記載したような、耐久性コーティングを形成させる。
【実施例】
【0088】
これらの実施例は、あくまで説明のためのものであり、添付された特許請求の範囲を限定することを意味しない。実施例および明細書のその他の部分における、部、パーセント、比などは、特に記載がない限り、すべて重量基準である。使用した溶媒およびその他の反応剤は、特に記載がない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin)のシグマ−アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Sigma−Aldrich Chemical Company)から入手した。
【0089】
それぞれの組成物の数平均分子量(Mn)はゲル浸透クロマトグラフィーを用いて求めた。
【0090】
【表1】

【0091】
調製例1
Irg2959AcAcの調製
イルガキュア(IRGACURE)2959(20.00g、96mmol)、t−ブチルAcAc(15.95g、101mmol)、およびトルエン(100mL)の混合物を加熱、環流させた。蒸気温度が111℃になるまで、留出物を捕集した。次いでその混合物を冷却し、残存している溶媒を真空下で除去すると、反応生成物が粘稠で黄色の油状物として得られた(トルエン中93重量%)。
【0092】
実施例1〜6
オリゴマーの合成
メタクリレートAcAc、メチルAcAc、Irg2959AcAc、SR238、ダロキュア(DAROCURE)ZLI−3331、およびDBUの混合物を、表1に示した量でガラス反応容器の中に準備した。その容器を密閉し、シェーカー水浴中に、60℃で16時間置いた。合成されたオリゴマーの、ゲル浸透クロマトグラフィーによって求めた分子量を表1に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
実施例7〜10
実施例5または6のいずれかで調製されたオリゴマーのサンプルをガラス反応容器中でSR295と混合した。それらの混合物を完全に混合させて、均質な溶液を得た。その組成を表2に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
実施例11〜18
オリゴマーのフリーラジカル架橋
実施例1〜4および7〜10で生成した物質のサンプル(0.5グラム)を、個別に剥離ライナーの上に置いた。同一の剥離ライナーのカバーシートを、サンプルの上に置いた。UV照射(シルバニア(Sylvania)F40/350BL)を15秒間照射した(照射線量、約1200mJ/cm2)。硬化させたサンプルは硬いフィルムとしてライナーから除去されたが、それらは有機溶媒には不溶性であることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化可能な組成物であって:
a)マイケルドナー成分、
b)ポリアクリルマイケルアクセプター成分、および
c)場合によってはモノアクリル成分、を含み
ここで、前記a)またはc)成分の少なくとも一方にペンダント光重合開始基を含む、組成物。
【請求項2】
前記モノアクリル成分が光重合開始基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記モノアクリル化合物が水素引き抜き基を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記水素引き抜き基が、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、9−フルオレン、アントロン、キサントン、チオキサントン、アクリドン、ジベンゾスベロン、ベンジル、またはクロモンから誘導される部分である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記光重合開始基が次式:
【化1】

[式中、R6は以下のものから選択され:
【化2】

ここでR7は、HまたはC1〜C6アルキル基であり、
それぞれのR8は独立して、ヒドロキシル基、フェニル基、C1〜C6アルキル基、またはC1〜C6アルコキシ基である]
の構造で表される、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記モノアクリル成分が次式:
【化3】

[式中、
Xは、−O−または−NR9−であり;
9は、HまたはC1〜C4アルキル基であり;
a、b、およびcは独立して、0または1であり;
1は、−C(R92−またはSi(R92であるが、ここでそれぞれのR9は独立して、HまたはC1〜C4アルキル基であり;
2は、O、NR9、C(O)、C(O)O、C(O)NR9、またはOC(O)NR9であるが、ここでそれぞれのR9は独立して、HまたはC1〜C4アルキル基であり;
Gは、共有結合、(CH2d、または(CH2dOであるが、ここでdは1〜4の整数であり;そして
*は光重合開始基である]
で表される、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記マイケルドナー成分が式(I)〜(III):
(W1−CHR1−C(O))x−P (I)
(W1−NH−C(O))x−P (II)
1−CH2−W2 (III)
[式中、
1は、水素、アルキル基またはアリール基を表し;
1およびW2はそれぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミド基、およびスルホニル基から選択され;
Pは、1価または多価の有機残基、またはアセトアセチル化反応におけるポリオールもしくはポリアミンの反応残基であり、そして
xは、1以上の整数であるが、ただしドナー当量の数が2以上である]
の一つに相当する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記マイケルドナー成分がアセトアセチル化ポリ(アルキレンオキシド)である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記マイケルドナーが次式:
2−CO−CH2−CO−R3
[式中、R2およびR3は独立して、置換もしくは非置換のアルキル、非置換もしくは置換のアリール、置換もしくは非置換のアルコキシ基、または置換もしくは非置換のアリールオキシ基から選択される]
で表される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記マイケルドナーが、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸メチル、マロン酸エチル、およびアセト酢酸t−ブチルから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
2およびR3の内の一つが、エチレン性不飽和重合性基によってさらに置換されている、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリアクリル成分が次式:
4−(Z−C(=O)−CH=CH2z
[式中、それぞれのZは独立して、−S−、−O−、−NH−、または−NR5−であるが、ここでR5は、Hまたは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;
4は独立して、原子価zを有する多価有機基を表し、ここでzは2以上である]
で表される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
4がポリオールの残基である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ドナー当量のアクセプター当量に対する比率が、2:1未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
モル量のドナー当量≧アクセプター当量+モノアクリル成分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
次式:
【化4】

[式中、
Mは、光重合開始基を有するモノアクリル化合物の残基であり;
Dは、マイケルドナー成分の残基であるが、1個または複数のエチレン性不飽和重合性基によってさらに置換されていてもよく;
Aは、ポリアクリル成分の残基であり、そしてyは少なくとも1である]
で表されるポリマー。
【請求項17】
次式:
【化5】

[式中、
1およびW2はそれぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミド基、およびスルホニル基から選択され;
それぞれのZは独立して、−S−、−O−、−NH−、または−NR5−であるが、ここでそれぞれのR5は独立して、H、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;
4は、多価有機基であり;
Xは、−O−または−NR9−であり;
Gは、共有結合、(CH2d、または(CH2dOであるが、ここでdは、1〜4、好ましくは1〜2の整数であり;
*は光重合開始基であり;
そしてxは少なくとも1である]
で表されるマイケル付加ポリマー。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の硬化可能な組成物を塩基性触媒と混合して、マイケル付加反応生成物を製造することが含む、マイケル付加ポリマーを調製するための方法。
【請求項19】
前記触媒が、0.05%〜2重量%の量で使用される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マイケル付加反応生成物が、1個または複数の光重合開始基と、複数の未反応の、エチレン性不飽和重合性基とを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記エチレン性不飽和重合性基を光重合させて、前記マイケル付加反応生成物を架橋させる工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記マイケル付加反応生成物と架橋剤とを混合する工程、および前記マイケル付加反応生成物と前記架橋剤とを光重合させて、前記マイケル付加反応生成物を架橋させる工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記架橋剤がポリ(メタまたはア)クリル化合物である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の組成物を少なくとも部分的に硬化させることにより調製されたコーティングをその上に有する基材を含む、複合材料物品。

【公表番号】特表2008−523205(P2008−523205A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545465(P2007−545465)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/039099
【国際公開番号】WO2006/065369
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】