説明

光空間伝送装置

【課題】情報を伝送する光信号の発光と光軸調整のための光信号の発光を同一の発光素子で行う。
【解決手段】。ビーコン生成回路23は、伝送信号とは異なる周波数帯のビーコン信号を生成する。重畳回路24は、入力信号とビーコン信号を重畳し重畳信号電圧とする。発光部26は、発光素子27の点滅により、重畳光信号を送信する。受光部42は、重畳光信号を受光する4つの受光素子43を有する。ローパスフィルタ46は、4つの重畳信号電圧から4つのビーコン信号を分離する。レベル検出回路47は、この4つのビーコン信号のレベルを検出する。方向検出回路48は、これらのレベルから発光軸方向と受光軸方向の差を検出する。方向調整部49は、レンズ41と受光部42を移動し受光軸方向を調整する。ハイパスフィルタ50は、変換された重畳信号電圧から入力信号を分離する。出力部55は伝送信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線通信や可視光通信などの光通信を用いて、情報を空間伝送する光空間伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光通信を用いて情報を空間伝送する光空間伝送装置や光空間伝送システムにおいて、送信側の伝送装置からガイド用のパイロット光などを照射し、受信側の伝送装置がその受光量に基づいて自動的に受光方向を制御する技術がある。この技術によれば、受光感度を上げるために大口径レンズを用いたとしても、レンズを用いることにより指向性が狭くなる受光部を送信側の方向へ自動的に対向させることができるようになるため、方向合わせの手間が不要で高感度な受信が可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1の光空間伝送装置は、発光部が、情報を伝送する光信号を発光する発光素子とは別に、方向調整用の発光素子を有し、受光部が4つの受光素子を有している。この装置は、方向調整用の発光素子からの赤外光を4つの受光素子で受光し、各受光素子における受光量が一致するように受光部の向きを制御することで、受光部を送信側の方向へ自動的に対向させている。
【0004】
また、従来から、送信側の伝送装置から受信側の伝送装置に対して、波長の異なる複数の光を用いて、複数の信号を同時に伝送する技術がある。この技術は、波長の異なる光信号が干渉し合わず、分離が可能という特性を利用している。
【0005】
例えば、特許文献2の装置は、送信装置が相異なる波長の光信号を出射する複数の光源を有し、それらの光源からの光を一つのビームに合波(多重化)させて送信する。受信側ではこの多重化されたビームを複数の受光素子によって受光し、各受光素子においてそれぞれ異なった波長の光信号を抽出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−183515号公報
【特許文献2】再表2006/082893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の光空間伝送装置は、情報を伝送する光信号用の発光素子と受光素子、及び光軸調整用のビーコン信号の発光素子と受光素子を有している。このように2種類の発光素子と受光素子とを設けることは、回路や制御の複雑化を招く問題がある。また、特許文献2に記載の波長多重光空間送信装置は、情報を伝送する複数の光信号を波長多重化し、多重化された光信号を同一の光軸上に合波できるようにしている。しかし、この装置は、送信側と受信側の光軸を調整することは考慮されていない。
【0008】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、情報を伝送する波長多重光信号の送受信と、発光素子と受光素子の光軸を調整するためのビーコン信号の送受信とを、同一の発光素子と受光素子とで行うことができる光空間伝送システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光空間伝送装置は、次のような特徴を有する。
(1)光空間伝送装置は、少なくとも光信号の送信部を有する第1の装置と少なくとも受信部を有する第2の装置からなる。
(2)前記送信部は、入力部より入力される伝送信号とは異なる周波数帯のビーコン信号を生成するビーコン生成回路と、前記伝送信号と前記ビーコン信号を重畳して重畳信号電圧とする重畳回路と、前記重畳信号電圧に基づいて光信号を発光する発光素子を有する発光部とを有する。
(3)前記受信部は、前記光信号を受光する3以上の受光素子を有する受光部と、前記3以上の各受光素子が受光した各光信号をそれぞれ重畳信号電圧に変換する受光回路と、前記各重畳信号電圧を各ビーコン信号に分離するフィルタとを有する。
(4)前記受信部は、前記分離された各ビーコン信号から各受光素子の受信レベルを検出するレベル検出回路と、前記検出された各受信レベルから前記光信号の入力方向を検出する方向検出回路と、前記受光部が送信部に対向する方向に向くよう光軸方向を調整する方向調整部とを有する。
(5)前記受信部は、前記重畳信号電圧から伝送信号を選択分離するフィルタと、前記選択分離された伝送信号を2値信号に変換するリミッティング増幅回路とを有する。
【0010】
また、本発明において、下記の構成を適宜採用することができる。
(6)前記受信部は、前記フィルタが、前記各受光素子からの重畳信号電圧をそれぞれ伝送信号に分離し、前記分離されたそれぞれの伝送信号を加算する加算回路を有し、前記加算された伝送信号を前記リミッティング増幅回路が2値の出力信号に変換する。
(7)前記送信部は、入力された伝送信号を3以上のパラレル信号に変換するパラレル変換回路及び前記3つ以上のパラレル信号をそれぞれ低域周波数スペクトルの低下した符号に変換する符号変換回路を有し、前記発光部は、前記3以上のパラレル信号に対応した重畳信号電圧を異なる波長を用いて波長多重した光信号として発光する。
(8)前記受信部は、前記受光部の前面に配置された光学フィルタ部と、シリアル信号に変換し伝送信号を出力するシリアル変換回路とを有し、前記光学フィルタ部は、前記波長多重された光信号をその波長に応じて前記各受光素子に受光させ、前記シリアル変換回路は、前記各受光素子が受光した各光信号に対応したパラレル信号を伝送信号に変換する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、情報を伝送する光信号の発光素子と光軸を調整するための光信号の発光素子を同一のものとし、これらの光信号を重畳し伝送することにより、情報伝送のための受光素子とビーコン信号受信用の受光素子を共用することが可能になり、構成が簡単で信頼性に優れた光空間伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の光空間伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の送信部と受信部の構成を示すブロック図である。
【図3】伝送信号とビーコン信号の周波数帯域を示すグラフである。
【図4】レンズ及び受光部を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態の送信部と受信部の構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態の発光部の一例を示す斜視図である
【図7】第2実施形態のレンズ、光学フィルタ部及び受光部を示す斜視図である。
【図8】他の実施形態の送信部と受信部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、各実施形態において、同一の内容については、説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1〜図4を用いて、第1実施形態の光空間伝送システムについて説明する。
【0015】
(構成)
図1に示すとおり、第1実施形態の光空間伝送システムは、2台の光空間伝送装置10を有し、これらの光空間伝送装置10が相互に、LED(Light Emitting Diode)などによる光通信を用いて情報の送受信を行う。光空間伝送装置10は、ネットワークなどから光ファイバーで送信するための規格である100BASE−FX信号の伝送信号が入力され、その伝送信号を光信号に変換し光通信で送信する送信部20と、光通信で送信された光信号を受信し、その光信号を伝送信号に変換しネットワークなどに出力する受信部40とを有している。
【0016】
図2は、相互に送受信する2台の光空間伝送装置10において、1台目の送信部20と2台目の受信部40の構成を示している。なお、2台の光空間伝送装置10は、1台目の送信部20から送信する光信号を2台目の受信部40が受信する場合と、2台目の送信部20から送信する光信号を1台目の受信部40が受信する場合がある。この2つの場合は、機能的に同一であることより、便宜上、図2を用いて説明する。
【0017】
送信部20の構成について以下説明する。伝送信号を受信する入力部21の出力及び入力伝送信号と異なる帯域幅のビーコン信号を生成するビーコン生成回路23の出力は、重畳回路24に接続されている。
【0018】
前記重畳回路24には、入力部21からの入力伝送信号とビーコン生成回路23で生成されたビーコン信号とが入力され、重畳回路24はそれらを重畳し、重畳信号電圧として駆動回路25に出力する。前記駆動回路25は、発光素子27に接続され、この発光素子27を重畳光信号として点滅させる。発光部26は、光信号を発光するLEDなどの発光素子27を有している。
【0019】
受信部40の構成について以下説明する。レンズ41は、他の光空間伝送装置10の発光部26から受光した重畳光信号を集束する。この集束されたスポット光は、受光部42に照射される。受光部42は、フォトダイオードなどの4つの受光素子43を有している。受光回路44は、4つの受光素子43からの出力である電流値を重畳信号電圧に変換し、分配器45に出力する。分配器45は、受光回路44からの4つの重畳信号電圧をローパスフィルタ46とハイパスフィルタ50に分配する。
【0020】
ローパスフィルタ46は、分配された4つの重畳信号電圧から、低周波信号、すなわち4つのビーコン信号を分離し、レベル検出回路47に出力する。レベル検出回路47は、これら4つのビーコン信号から受光部42で受光した光量に応じたそれぞれのレベルを検出し、その結果を方向検出回路48に出力する。
【0021】
方向検出回路48は、レベル検出回路47で検出された4つの受光素子の受光レベルに基づいて、レンズ41及び受光部42の受光方向(以下、受光軸方向という)と、対向する装置の発光部26の方向(以下、発光軸方向という)との角度の差を検出し、その結果を方向調整部49に出力する。
【0022】
方向調整部49は、方向検出回路48の検出結果に基づいて、モータなどを用いたアクチュエータで受光軸方向を調節する。この調整で、受光軸方向と発光軸方向を一致させる。例えば、方向調整部49は、方向検出回路48で検出された4つの受光素子の受光レベルが等しくなるように、受光部42全体をアクチュエータで傾斜させる。
【0023】
分配器45で分配された4つの重畳信号電圧から、高周波信号、すなわち4つの伝送信号を分離するハイパスフィルタ50は、加算回路52に接続されている。前記4つの伝送信号を加算する加算回路52は、リミッティング増幅回路51に接続されている。このリミッティング増幅回路51は、加算されて1つになった伝送信号を2値のデジタル信号に変換して出力部55に出力し、この出力部55は、この伝送信号を送信する。
【0024】
(作用)
第1実施形態の光空間伝送システムの作用について説明する。100BASE−FX規格の伝送信号は、入力部21で受信される。
【0025】
次に、ビーコン生成回路23で生成されたビーコン信号と入力部21で受信された伝送信号とが、重畳回路24で重畳され、重畳信号電圧となる。ビーコン信号は、例えば、10kHz正弦波であり、受信部40の受信軸方向の調整に用いられる信号である。図3に示すように、伝送信号とビーコン信号とは、周波数帯域が異なっている。このように周波数帯域が異なっていることにより、これらの信号は、ローパスフィルタ46及びハイパスフィルタ50で分離することができる。
【0026】
駆動回路25は、重畳回路24で重畳された重畳信号電圧が入力され、この入力された重畳信号電圧に基づいて発光素子27に流れる電流を制御し、この発光素子27を点滅させる。発光部26は、この点滅に応じた重畳光信号を光通信として送信する。発光部26から送信された重畳光信号は、他方の光空間伝送装置10のレンズ41に照射され集束され、スポット光として、受光部42、すなわち4つの受光素子43のそれぞれに照射される。
【0027】
図4は、発光素子27、レンズ41、受光部42の関係を示す斜視図である。図4(a)に示すように、受光部42は4つの受光素子43で4分割されている。4つの受光素子43に光信号が照射されるとその光のエネルギーから変換された電流が発生し、受光回路44に入力される。受光回路44はこれらをデジタル信号である4つの重畳信号電圧に変換する。次に、これら4つの重畳信号電圧が、ローパスフィルタ46とハイパスフィルタ50とに入力されるように分配器45で分配される。分配器45で分配された4つの重畳信号電圧は、ローパスフィルタ46において、低周波信号である4つのビーコン信号に分離され通過する。そして、これら4つのビーコン信号がレベル検出回路47に入力され、受光部42で受光した光量に応じたそれぞれのレベルが検出される。
【0028】
図4(a)は、発光素子27からの光信号がレンズ41を介して4つの受光素子43にスポット光として照射されていることを示している。このスポット光は、4つの受光素子に対して均等な光量が照射されている。これは、発光素子27からの光信号の光軸と、レンズ41の光軸が一致しているからである。
【0029】
図4(b)は、発光素子27が、受光部42よりも上方に位置している場合を示している。この場合、図に示すように、スポット光は、4つの受光素子43に均等に照射されていない。例えば、上方の2つの受光素子43に照射される光量は小さく、一方、下方の2つの受光素子43に照射される光量は大きい。
【0030】
レベル検出回路47は、これら4つの受光素子43のそれぞれが受光した光量のレベルを検出し、方向検出回路48に供給する。方向検出回路48は検出されたそれぞれのレベルに基づいて、受光軸方向と発光軸方向のずれ量を検出する。
【0031】
次に、方向検出回路48の検出結果に基づいて、方向調整部49により、レンズ軸方向を調節する。すなわち、レンズ軸方向が発光部26の方向と一致するように調整する。この調整は、同一平面上に対称形に配置された4つの受光素子43に均等に光が当たるように、受光面を傾斜させることにより、発光軸と受光軸の方向を一致させる。具体的には、前記レベル検出回路47からの4つの受光レベルが等しくなるように、アクチュエータによって受光面全体を傾斜させる。
【0032】
図4(c)は、方向調整部49が受光軸方向を移動しレンズ41と受光部42の方向を調整した状態を示している。すなわち、図4(b)に示すような受光軸方向が、方向調整部49の調整により、図4(c)に示すような受光軸方向、すなわち発光軸方向と一致している方向に移動した状態になっている。
【0033】
一方、分配器45で分配されハイパスフィルタ50に入力された4つの重畳信号電圧は、このハイパスフィルタ50で高周波信号である伝送信号に分離される。ハイパスフィルタ50は、この分離された4つの伝送信号を、加算回路52に出力する。加算回路52はこの4つの伝送信号を加算する。すなわち、受光部42の4つの受光素子43で4分割された光信号に基づいたこの4つの伝送信号を加算し、4分割されたものを加算する。加算回路52で加算された伝送信号は、リミッティング増幅回路に出力される。リミッティング増幅回路51は、この伝送信号を2値デジタル信号に変換する。この2値デジタル信号は出力部55に入力され、この出力部55は、この2値デジタル信号をPC等のイーサネットポートを有する機器に送信する。
【0034】
(効果)
第1実施形態の光空間伝送システムは、次のような効果を奏する。
(1)発光部26は、情報を伝送する伝送信号と光軸を調整するためのビーコン信号を重畳し、両者を1つの光信号で送信することができる。従って、複数の発光素子を必要とせず、1つの発光素子27で伝送信号とビーコン信号を重畳して送信することができ、発光部の構成を単純化できる。
(2)第1実施形態の光空間伝送装置10は、受光部42が重畳された光信号を受光することができ、ビーコン信号専用の受光部を必要としないので、受光部42の構成を単純化できる。
【0035】
(3)伝送信号とビーコン信号の周波数帯を大きく異なるものとしたので、両者を重畳させた信号を受信する受信部40は、ローパスフィルタ46とハイパスフィルタ50により、重畳されている2つの異なる信号を簡単に分離することができる。
(4)4つの受光素子で受信した重畳信号電圧を加算回路により加算しているので、受信した信号の強度が高く、伝送信号の劣化が少ない。
【0036】
[第2実施形態]
図5〜図7を用いて、第2実施形態の光空間伝送システムについて説明する。なお、第2実施形態の光空間伝送装置10の基本的な構成は、第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0037】
(構成)
図5に示すとおり、第2実施形態の送信部20と受信部40は、第1実施形態の送信部20と受信部40に、パラレル変換回路28、シリアル変換回路53、光学フィルタ部54を追加した構成である。以下にこれらの構成について説明する。
【0038】
入力部21にはPC等のイーサネット機器からの100BASE−T信号が入力され、入力部21の出力はパラレル変換回路28に入力され、パラレル変換回路28は、シリアル信号である伝送信号を4つからなるパラレル信号に変換する。パラレル信号はMIIインタフェース仕様に基づく信号であっても良い。このパラレル変換回路28の出力側は符号変換回路29に接続されている。この符号変換回路29は、パラレル変換回路28から入力された4つからなるパラレル信号のそれぞれを符号変換する。すなわち、符号変換回路29は、入力された25Mbps×4のパラレル信号に、スクランブル及び4B5B処理を施し、31.25Mbps×4のパラレル信号とする。
【0039】
前記符号変換回路29の出力側に重畳回路24が接続されている。すなわち、この重畳回路24には、符号変換回路29の出力側とビーコン生成回路23の出力側が接続されている。この重畳回路24は、前記4つのパラレル信号と前記周波数が10kHzであるビーコン信号とを重畳して4つの重畳信号電圧を生成する。重畳される31.25Mbpsのパラレル信号は、スクランブル及び4B5B処理により低域周波数スペクトルを含まない信号であることから受信の際ビーコン信号と分離可能な状態で重畳が行われる。この重畳回路24の出力側は駆動回路25を介して発光部26が接続されている。発光部26は、光信号を発光するLEDなどである発光素子27R,27G,27B,27Yを有している。例えば、27Rは赤色、27Gは緑、27Bは青、27Yは黄色の光を発する。発光素子27R〜27Yは、それぞれの波長が異なる光信号を発光する。本実施形態において、駆動回路25は、発光素子27R〜27Yのそれぞれを、4つの重畳信号電圧に基づいて独立に点滅させ、異なる4つの波長で波長多重された重畳光信号として発光させる。
【0040】
図6は、本実施形態の発光部26の一例を示す斜視図である。この図が示すように、発光部26はステム状に形成され、各発光素子27R〜27Yは、このステムの先端の平面に均等間隔で取り付けられている。発光部26がこのように形成されていることより、発光素子27R〜27Yからの信号は、平行状態で発光されることになる。
【0041】
一方、受信部40は、前記第1の実施形態と同様にレンズ41を有する。このレンズ41の出力側には、光学フィルタ部54が設けられている。この光学フィルタ部54は、4種類の光学フィルタ54R,54G,54B,54Yを有している。光学フィルタ54R〜54Yは、入射光に対して、特定の波長範囲の光だけを透過し、それ以外の光を透過しない光学素子である。発光素子27R、27G、27B、27Yからの光信号は、それぞれ光学フィルタ54R、54G、54B、54Yからのみ透過することにより、4波長の分離が行われる。
【0042】
本実施形態においても、受光部42は、前記レンズ41の出力側に4つの受光素子43R,43G,43B,43Yを有している。前記光学フィルタ54Rはこの受光素子43Rのレンズ41側の表面に貼り付けられている。同様に、光学フィルタ54Gは受光素子43Gに、光学フィルタ54Bは受光素子43Bに、光学フィルタ54Yは受光素子43Yに、それぞれ貼り付けられている。
【0043】
図7は、レンズ41、光学フィルタ部54及び受光部42を示す斜視図である。図に示すように、受光部42は受光素子43R〜43Yで4分割されている。これら4分割の領域に対応して光学フィルタ54R〜54Yのそれぞれが貼り付けられる。
【0044】
受光回路44は、受光素子43R〜43Yの出力である電流値を4つの重畳信号電圧に変換する。分配器45は、受光回路44からの4つの重畳信号電圧が、ローパスフィルタ46とハイパスフィルタ50とに入力されるように分配する。ローパスフィルタ46は、4つの重畳信号電圧において、低周波信号、すなわち4つのビーコン信号のみを通過させる。この後の処理は、第1実施形態と同様である。
【0045】
一方、ハイパスフィルタ50は、4つの重畳信号電圧において、高周波信号、すなわち4つの31.25Mbpsパラレル信号のみを通過させる。そして、リミッティング増幅回路51は、これらの4つのパラレル信号を2値信号に変換した後、5B4B変換、デスクランブルし、25Mbpsの4つのパラレル信号に変換し、シリアル変換回路53は、これらの4つのパラレル信号を100BASE−T信号に再構築したシリアル信号に変換し、出力部55に入力して、この出力部55から伝送信号として出力する。
【0046】
(作用)
第2実施形態の光空間伝送システムの作用について説明する。入力部21に入力された100BASE−T規格の伝送信号は、この入力部21からパラレル変換回路28に入力され、このパラレル変換回路28は伝送信号をシリアル信号からパラレル信号に変換する。この変換は、例えば、入力された100Mbpsのシリアル信号を25Mbps×4のパラレル信号に変換する。この変換により、伝送速度100Mbpsが、4つの伝送速度25Mbpsで伝送されることになる。25Mbps×4に変換されたパラレル信号は、符号変換回路29に入力されて低域周波数スペクトルを低下させるためのスクランブル処理や4B5B処理などの符号化処理が施され、31.25Mbps×4のパラレル信号となる。
【0047】
次に、ビーコン生成回路23で生成されたビーコン信号とスクランブル処理などが施された4つのパラレル信号とが、重畳回路24で重畳され、4つの重畳信号電圧となる。次に、駆動回路25が、4つの重畳信号電圧に基づいて、発光素子27R,27G,27B,27Yのそれぞれを、点滅させ、4つに波長多重した重畳光信号として発光させる。光信号は波長の異なる他の光信号と干渉しないという特性があり、これらの光信号は、波長多重通信として情報を伝送することができる。発光素子27Rは,赤色であり波長620〜750nm,発光素子27Gは,緑色であり波長495〜570nm,発光素子27Bは,青色であり波長450〜495nm及び発光素子27Yは,黄色であり波長570〜590nmである。
【0048】
送信部20の発光部26から送信された4つに波長多重された重畳光信号は、受信部40の受光部42に設けられたレンズ41に照射され集束され、スポット光として、光学フィルタ54R〜54Yを通過して、各受光素子43R〜43Yに照射される。受光素子43R〜43Yに光信号が照射されると、その光のエネルギーから変換された電流が発生し、受光回路44に入力される。受光回路44はこれらを4つの重畳信号電圧に変換する。次に、これらの4つの重畳信号電圧のそれぞれが、ローパスフィルタ46とハイパスフィルタ50とに入力されるように分配器45で分配される。
【0049】
分配器45で分配された4つの重畳信号電圧の一方は、ローパスフィルタ46において、低周波信号である4つのビーコン信号に分離され通過する。そして、これらの4つのビーコン信号がレベル検出回路47に入力され、受光部42で受光した光量に応じたそれぞれのレベルが検出される。方向検出回路48及び方向調整部49における作用は、前述の第1実施形態の作用と同様であり、発光軸方向と受光部42の受光面のX軸とY軸との傾斜の差に基づいて、レンズ軸方向が調整される。
【0050】
分配器45で分配された4つの重畳信号電圧の他方は、ハイパスフィルタ50において、高周波信号である4つのパラレル信号に分離される。このとき、前記ビーコン信号に基づいて、方向調整部49によりレンズ軸方向が調整され、発光部26の方向と一致しており、これらの4つのパラレル信号においてそれぞれのレベルはほぼ同一のものとなっている。
【0051】
この通過した4つのパラレル信号は、リミッティング増幅回路51により2値信号に変換した後4デスクランブル処理や5B4B処理が行われ、伝送信号として25Mbps×4の信号になる。この4つからなるパラレル信号は、シリアル変換回路53において、100BASE−T信号に再構築したシリアル信号に変換される。
【0052】
(効果)
第2実施形態の光空間伝送システムは、前記第1実施形態と共通の効果に加え、特に、次のような効果を奏する。
(1)シリアル−パラレル変換により、送信部20から受信部40への光通信は、伝送速度が4分の1になるため、高速な伝送信号に対しても対応できる。すなわち、光空間伝送装置10に対して高速な伝送信号が送信され、その伝送信号を光通信で他の光空間伝送装置に送信する場合、この光通信の伝送速度を落とすことにより、確実な光通信ができる。
(2)多重化された光信号を光学フィルタ部で分離するだけの簡単な構成で、一つの光信号に4種類の伝送信号と1つのビーコン信号が重畳された光信号の送受が可能になるので、簡単な構成で、多量の伝送信号を送受信できる。
【0053】
[他の実施形態]
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような他の実施形態も含有する。
【0054】
(1)第1実施形態は、加算回路52を有しているが、加算回路52を有しない構成であっても良い。加算回路52を有しないことにより光空間伝送装置10の構成をより簡易にできる。以下、この構成の光空間伝送装置10に使用される受光回路44、分配器45、ローパスフィルタ46、及びハイパスフィルタ50について図8を用いて説明する。
【0055】
受光回路44は、4つの受光素子43の出力である電流値を4つの重畳信号電圧に変換し分配器及びローパスフィルタ46に出力する。分配器45は、受光回路44からの4つの重畳信号電圧の1つを入力し、それをローパスフィルタ46とハイパスフィルタ50に分配する。分配器45からの1つの重畳信号電圧と受光回路44からの3つの重畳信号電圧が入力されたローパスフィルタ46は、低周波信号、すなわち4つのビーコン信号を分離する。一方、ハイパスフィルタ50は、分配器45で分配された1つの重畳信号電圧から、高周波信号、すなわち伝送信号を分離し、リミッティング増幅回路51に出力する。
【0056】
(2)第1、第2実施形態の伝送信号は、100BASE−FX及び100BASE−Tであるがこれに限定されない。例えば、伝送信号は、LAN以外のアナログ信号やデジタル信号などであっても良い。
(3)第1、第2実施形態の方向調整部49は、受光軸方向の移動手段としてアクチュエータを用いているが、これに限定されず、例えば、受光軸方向を手動で移動しても良い。この場合、方向検出回路48の検出結果から傾ける方向を、液晶ディスプレイなどの表示手段を用いて矢印などで示しても良い。
(4)第1、第2実施形態の受光部42は、4つの受光素子から構成されているが、これに限定されず、3つ又は5以上の受光素子から構成されても良い。方向調整部49による調整は、最低3つの受光素子で光軸が定まる。この場合、第2実施形態においては、パラレル変換回路28で変換されるパラレル数と発光部26の発光素子数とは、受光部42の受光素子数と合わせたものとなる。
【符号の説明】
【0057】
10…光空間伝送装置
20…送信部
21…入力部
23…ビーコン生成回路
24…重畳回路
25…駆動回路
26…発光部
27,27R,27G,27B,27Y…発光素子
28…パラレル変換回路
29…符号変換回路
40…受信部
41…レンズ
42…受光部
43、43R,43G,43B,43Y…受光素子
44…受光回路
45…分配部
46…ローパスフィルタ
47…レベル検出回路
48…方向検出回路
49…方向調整部
50…ハイパスフィルタ
51…リミッティング増幅回路
52…加算回路
53…シリアル変換回路
54…光学フィルタ部
54R,54G,54B,54Y…光学フィルタ
55…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の装置に少なくとも光信号の送信部を有し、他方の装置に少なくとも受信部を有する装置間で通信を行う光空間伝送装置であって、
前記送信部は、
入力された伝送信号とは異なる周波数帯のビーコン信号を生成するビーコン生成回路と、前記伝送信号と前記ビーコン信号を重畳して重畳信号電圧とする重畳回路と、前記重畳信号電圧に基づいて光信号を発光する発光素子を有する発光部と、を有し、
前記受信部は、
前記光信号を受光する3以上の受光素子を有する受光部と、前記3以上の各受光素子が受光した各光信号を各重畳信号電圧に変換する受光回路と、前記各重畳信号電圧を各ビーコン信号に分離するフィルタと、前記分離された各ビーコン信号から各受光素子の受信レベルを検出するレベル検出回路と、前記検出された各受信レベルから前記光信号の入力方向を検出する方向検出回路と、前記受光部が送信部に対向するように受光部の光軸方向を調整する方向調整部と、前記各重畳信号電圧の1つを伝送信号に分離するフィルタと、前記分離された伝送信号を出力する出力部と、を有する、
ことを特徴とする光空間伝送装置。
【請求項2】
前記受信部は、
前記フィルタが、前記各受光素子からの重畳信号電圧をそれぞれ伝送信号に分離し、前記分離されたそれぞれの伝送信号を加算する加算回路を有し、
前記加算された伝送信号を前記出力部が出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の光空間伝送装置。
【請求項3】
前記送信部は、
入力された伝送信号を3以上のパラレル信号に変換するパラレル変換回路と、
前記3以上のパラレル信号を符号化する符号変換回路を有し、
前記発光部は、前記3以上のパラレル信号に対応した重畳信号電圧を、異なる波長を用いて波長多重した光信号として発光し、
前記受信部は、
前記受光部の前面に配置された光学フィルタ部と、パラレル信号をシリアル信号に変換して伝送信号を出力するシリアル変換回路と、を有し、
前記光学フィルタ部は、前記波長多重された光信号をその波長に応じて前記各受光素子に受光させ、
前記シリアル変換回路は、前記各受光素子が受光した各光信号に対応したパラレル信号を伝送信号に変換する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光空間伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−134724(P2012−134724A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284568(P2010−284568)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】