説明

光端末ユニットおよび光伝送システム

【課題】外部からの給電を不要としながら良好な歪性能を得ることが可能な光端末ユニットおよびその光端末ユニットを備える光端末装置を提供する。
【解決手段】光分岐器21は、コネクタ20を介して入力された光信号Sを光信号SおよびSに分岐する。電力生成部22(フォトダイオード)は、光分岐器21からの光信号Sから電力を生成するとともに、その電力をRF変換部23(フォトダイオード)に供給する。RF変換部23は、光分岐器21からの光信号Sを電気信号Se(高周波信号)に変換する。光分岐器21に光信号Sが入力することによりRF変換部23としてのフォトダイオードに逆バイアスが印加されるので、RF変換部23に電力を供給するための電源が不要となる。フォトダイオードに逆バイアスが印加された状態で光信号が電気信号に変換されるので、良好な歪性能を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバにより伝送された光信号を受信するための光端末ユニットおよび、その光端末ユニットを備える光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2007−158669号公報(特許文献1)は、構成が簡略化されるとともに低コスト化を図ることが可能な光端末ユニットを開示する。この光端末ユニットは、フォトダイオードと高周波トランスとを備える。無バイアス状態のフォトダイオードは、光ファイバにより伝送された光信号を受信するとともに、その光信号に応じた電圧を発生する。高周波トランスは、フォトダイオードの両端間に接続されるとともにフォトダイオードの発生電圧に応じた出力を発生する。この構成によればフォトダイオードを逆バイアス状態にしなくてもよいので、光端末ユニットの構成を簡素化できるとともに、光端末ユニットの低コスト化を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−158669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の光端末ユニットのような無給電の光受信器は、たとえば、アナログチャネル数が少なくかつデジタルチャネル数が多いようなFTTH(Fiber To The Home)端末に適用される。
【0005】
今後は、広帯域かつ多チャネル数の光伝送の利用がより多くなると考えられる。広帯域かつ多チャネル数の光伝送を実現するには、光受信器の歪性能が良好であることが好ましい。しかしながら上記の光受信器の構成によれば、フォトダイオードが無バイアス状態で動作するので、歪性能を高めることは容易ではない。
【0006】
歪性能を改善する方法としては、フォトダイオードに逆バイアス電圧を印加する方法が考えられる。しかしながら上記の構成によれば、フォトダイオードに逆バイアス電圧を印加するための電源が必要となる。
【0007】
図9は、従来の光端末装置101を備えた光伝送システムの構成を説明するための図である。図9を参照して、光端末装置101は、たとえば共同受信施設において使用される。ヘッドエンド装置は、各種の放送信号をアンテナ等で受信して適切なレベルで送出するもしくは変調変換を行ない適切なレベルで送信する複数の機器で構成された送出装置を備える。たとえばヘッドエンド装置は、FM放送送出装置51と、アナログ放送送出装置52と、地上デジタル放送送出装置53と、CATVデジタル放送送出装置54と、BSデジタル放送送出装置55と、110度CSデジタル放送送出装置56とを備える。ヘッドエンド装置は、さらに、混合器57と、光送信器58と、光増幅器59と、光分岐器60とを備える。
【0008】
各送出装置は、受信された放送信号を増幅するためのアンプを含む。混合器57は、各送出装置のアンプから出力された信号を混合して出力する。光送信器58は、混合器57から出力された信号(電気信号)に基づいて光信号を生成するとともに、その光信号を出力する。光増幅器59は、光送信器58からの光信号を増幅する。光分岐器60は光増幅器59からの光信号を分配する。光増幅器59からの光信号は、光分岐器60を介して光ファイバ61に送出される。
【0009】
光ファイバ61の途中には、光分配器、具体的にはクロージャ62が設けられる。クロージャ62は、光ファイバ61を介して伝送された光信号を分配する。クロージャ62によって分配された光信号は、光ファイバ61によって、光端末装置101が設けられた加入者宅に伝送される。
【0010】
光端末装置101は2系統の出力が可能に構成される。一方の系統では、給電時および無給電時に光信号を電気信号に光電変換する光電変換部および光電変換部によって光信号から光電変換された電気信号を処理する信号処理回路が内蔵され、この系統からの出力は同軸ケーブルを介してFM告知放送端末機3に供給される。もう一方の系統では、広帯域伝送において歪性能を良好とするために、上記光電変換部の後段に、給電により動作する信号処理回路を設け、この系統から出力される電気信号は分配器5に供給され、分配器5は供給された信号をテレビ受信機6に分配供給する。
【0011】
本発明の目的は、外部からの給電を不要としながら良好な歪性能を得ることが可能な光端末ユニットおよびその光端末ユニットを備える光伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は要約すれば、光端末ユニットであって、光ファイバによって伝送された光信号から第1および第2の光信号を生成するための信号生成部と、第1のアノードおよび接地された第1のカソードを有する第1のフォトダイオードと、接地された第2のアノード、および第2のカソードを有する第2のフォトダイオードとを備える。第1のフォトダイオードは、第1の光信号を光電変換することにより光電流を生成するとともに、光電流を第1のアノードから出力する。第2のフォトダイオードは、第1のフォトダイオードの第1のアノードから第2のカソードに光電流が供給される状態で、第2のフォトダイオードは逆バイアスが印加された状態になる。このように逆バイアスが印加された状態で第2のフォトダイオードは第2の光信号を電気信号に変換するとともに、電気信号を第2のカソードまたは第2のアノードから出力する。
【0013】
好ましくは、光端末ユニットは、第1のカソードと接地ノードとの間に設けられ、高周波成分の伝達を阻止する第1のフィルタと、第1のアノードと第2のカソードとの間に設けられ、高周波成分の伝達を阻止する第2のフィルタと、第2のアノードと接地ノードとの間に設けられ、高周波成分の伝達を阻止する第3のフィルタと、出力端子とをさらに備える。出力端子は、第2のカソードと第2のフィルタとの間、および第2のアノードと第3のフィルタとの間のいずれか一方の間に設けられ、第2のアノードまたは第2のカソードから出力された電気信号を光端末ユニットの外部に出力させる。
【0014】
好ましくは、信号生成部は、入力された光信号を第1および第2の光信号に分岐する光分岐器を含む。
【0015】
好ましくは、信号生成部に入力された光信号は、互いに波長が異なる複数の光信号が多重化された信号である。信号生成部は、入力された光信号を波長の違いに応じて分離することにより第1および第2の光信号を生成する光分波器を含む。
【0016】
本発明は、他の局面では、光伝送システムであって、光放送信号を送出する信号送出装置と、信号送出装置から送出された光放送信号を伝送するための光ファイバと、光ファイバを介して光放送信号が供給される、上記の光端末ユニットと、光端末ユニットから出力された電気信号を受信する端末機器とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外部からの給電を不要としながら良好な歪性能を有する光端末ユニットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る光端末ユニットを備える光伝送システムの構成を説明した図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2の構成を示す概念図である。
【図3】図2に示した光端末ユニット2の構成をより詳細に説明するためのブロック図である。
【図4】図3に示した光端末ユニット2の具体的構成例を説明するための回路図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る光端末ユニットの比較例を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る図4(A)の光端末ユニットと図5(B)に示した光端末ユニットの第2の比較例との歪性能を具体的に示した図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2の外観の例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る光端末ユニットの他の構成を説明した図である。
【図9】従来の光端末装置101を備えた光伝送システムの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る光端末ユニットを備える光伝送システムの構成を説明した図である。
【0021】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2は、たとえば共同受信施設において使用される。この共同受信施設では、ヘッドエンド装置は、各種の放送信号をアンテナ等で受信して適切なレベルで送出するもしくは変調変換を行ない適切なレベルで送信する複数の機器で構成された送出装置を備える。具体的には、ヘッドエンド装置は、FM放送送出装置51と、アナログ放送送出装置52と、地上デジタル放送送出装置53と、CATVデジタル放送送出装置54と、BSデジタル放送送出装置55と、110度CSデジタル放送送出装置56とを備える。
【0022】
ヘッドエンド装置は、さらに、混合器57と、光送信器58と、光増幅器59と、光分岐器60とを備える。
【0023】
各送出装置は、受信された放送信号を増幅するためのアンプを含む。混合器57は、各送出装置のアンプから出力された信号を混合して出力する。光送信器58は、混合器57から出力された信号(電気信号)に基づいて光信号を生成するとともに、その光信号を出力する。光増幅器59は、光送信器58からの光信号を増幅する。光分岐器60は光増幅器59からの光信号を分配する。光増幅器59からの光信号は、光分岐器60を介して光ファイバ61に送出される。たとえば光信号の波長帯は1.55μm帯である。
【0024】
光ファイバ61の途中には、光分配器、具体的にはクロージャ62が設けられる。クロージャ62は、光ファイバ61を介して伝送された光信号を分配する。クロージャ62によって分配された光信号は、光ファイバ61によって、光端末装置が設けられた加入者宅に伝送される。なお図1に示す光伝送システムでは、光ファイバ61は、ヘッドエンド装置に設けた上記の送出装置から送出された放送系の信号が光信号として伝送されるだけでなく、ヘッドエンド装置に設けた通信系の光送信装置(図示せず)から送出された通信系の信号が光信号として伝送される。
【0025】
加入者宅の光端末装置1の内部には、放送系のV−ONUである光端末ユニット2に加えて、通信系のD−ONU(図示せず)が設けられる。光端末ユニット2は光ファイバ61を介して光信号を受信する。光端末ユニット2は、光電変換部により光信号を電気信号(RF信号)に変換し、RF信号を端末機器に供給する。D−ONUは、ヘッドエンド装置に設けた通信系の光送信装置(図示せず)により光ファイバ61を介して光信号を受信し、光電変換部により、その光信号を電気信号(通信信号)に変換し、加入者宅内のパーソナルコンピュータ等にLANケーブル(図示せず)を介して伝送する。
【0026】
光端末ユニット2は、2系統の出力を有する。光端末ユニットの出力2aは、FM告知放送端末機3に接続される。光端末ユニットの出力2bは、デジタル受信機4に接続される。FM告知放送端末機3は、生活情報等を知らせる一般告知放送や災害時の緊急放送を受信するとともに、その受信内容を音声信号として出力する。
【0027】
デジタル受信機4は、地上デジタル放送、CATVデジタル放送、BSデジタル放送、110度CSデジタル放送を受信する。デジタル受信機4は、たとえばセットトップボックスおよびテレビにより構成される。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2の構成を示す概念図である。図2を参照して光端末ユニット2は、コネクタ20と、信号生成部である光分岐器21と、電力生成部22と、光電変換部であるRF(Radio Frequency)変換部23と、出力端子であるコネクタ24とを備える。
【0029】
コネクタ20は、図示しない光ファイバに接続されるとともに、その光ファイバから光信号Sを受信する。光分岐器21は、コネクタ20を介して入力された光信号Sを光信号SおよびSに分岐する。すなわち、元の光信号Sは、光分岐器21により2つの光信号SおよびSに分割される。上記の方法により、信号生成部である光分岐器21は、光信号Sから光信号SおよびSを生成する。
【0030】
電力生成部22は、光分岐器21からの光信号Sから電力(光電流)を生成するとともに、その電力を光電変換部であるRF変換部23に供給する。RF変換部23は、光分岐器21からの光信号Sを電気信号Se(高周波信号)に変換する。
【0031】
コネクタ24は、たとえばF型接栓がその先端に取り付けられた同軸ケーブルに接続される。RF変換部23によって光信号Sから変換された電気信号Seはコネクタ24に送られ、コネクタ24を介して同軸ケーブルへと送られる。同軸ケーブルに伝送された電気信号Seは、図1に示した各種の端末機器に送られる。すなわちコネクタ24は、RF変換部23によって光信号Sから変換された電気信号Seを光端末ユニット2の外部に出力させるためのものである。
【0032】
なお、本発明の実施の形態に係る端末ユニット2を図1に示した光伝送システムに適用する場合においては、2系統出力に対応するために、コネクタ24の後段に1分岐器または2分配器を介して2出力とする。
【0033】
図3は、図2に示した光端末ユニット2の構成をより詳細に説明するためのブロック図である。図3および図2を参照して、電力生成部22およびRF変換部23はフォトダイオード(PD)により構成される。光端末ユニット2は、さらにフィルタ25,26,27を備える。フィルタ25,26,27の各々は、高周波ノイズの伝達(流入および流出)を広帯域で阻止するためのフィルタである。
【0034】
電力生成部22は、接地ノード35とRF変換部23との間に設けられる。電力生成部22の一方端31はフィルタ25を介して接地ノード35に電気的に接続される。これにより電力生成部22の一方端31の電位を安定させることができる。電力生成部22の他方端32は、フィルタ26を介してRF変換部23に電気的に接続される。フィルタ26は、電力P(光電流)を安定化させるために電力生成部22(フォトダイオード)からの電力P(光電流)に含まれる変動成分(高周波成分)を除去する。これによりRF変換部23にほぼ一定の電力、すなわち光電流が供給される。この光電流がRF変換部23に供給された状態で、RF変換部23は光信号Sを電気信号Seに光電変換する。上記の「一方端31」および「他方端32」は、フォトダイオードのカソードおよびアノードにそれぞれ対応する。
【0035】
RF変換部23の一方端33は、電力生成部22からの電力(光電流)を受けるためにフィルタ26に電気的に接続される。一方でRF変換部23の他方端34は、コネクタ24に電気的に接続されるとともに、フィルタ27を介して接地ノード35に電気的に接続される。これによりRF変換部23の他方端34の電位を安定させることができる。上記の「一方端33」および「他方端34」は、フォトダイオードのカソードおよびアノードにそれぞれ対応する。
【0036】
図3に示した構成では、RF変換部23は光信号Sを電気信号Seに変換して、RF変換部23の他方端34とフィルタ27との間より電気信号Seをコネクタ24に供給する。図3には示していないものの、コネクタ24が、RF変換部23の一方端33とフィルタ26との間に接続され、RF変換部23の一方端33から電気信号Seがコネクタ24に供給されるようにしてもよい。
【0037】
図4は、図3に示した光端末ユニット2の具体的構成例を説明するための回路図である。図4(A)および図3を参照して、フィルタ25は、コイル25aとコンデンサ25bとにより構成される。コイル25aの一方端は電力生成部22の一方端31であるフォトダイオードのカソードとコンデンサ25bの一方端とに接続される。コイル25aの他方端は接地ノード35に接続される。フィルタ26は、コイル26aとコンデンサ26b,26cとにより構成される。コイル26aの一方端は、電力生成部22の他方端32であるフォトダイオードのアノードとコンデンサ26bの一方端とに接続される。コイル26aの他方端はRF変換部23の一方端33であるフォトダイオードのカソードとコンデンサ26cの一方端とに接続される。
【0038】
フィルタ27は、コイル27a、抵抗27bおよびコンデンサ27cを備える。コイル27aおよび抵抗27bは、RF変換部23の他方端34であるフォトダイオードのアノードと、接地ノード35との間に直列に接続される。コンデンサ27cは抵抗27bに並列に接続される。
【0039】
電力生成部22としてのフォトダイオードは、RF変換部23に供給するための電力P(光電流)を生成するとともに、その電力P(光電流)をアノードから出力する。RF変換部23としてのフォトダイオードは、電力P(光電流)をカソードに受けることにより逆バイアスが印加された状態と同じ状態となり、光信号Sを電気信号Seに変換するとともに、その電気信号Seをアノードからコンデンサ28を介して出力する。
【0040】
また、図4(B)に示すように、電気信号Seをフォトダイオードのカソードから出力することもできる。この場合、コンデンサ26cの一方端がフォトダイオードのアノードに接続され、コンデンサ26cの他方端が接地される。さらに、コンデンサ28および出力端子24がフォトダイオードのカソード側に接続される。
【0041】
光端末ユニット2は、上記の構成を有するので、その歪性能を良好とすることが可能となる。この点について、本発明の実施の形態およびその比較例の対比により説明する。
【0042】
図5は、本発明の実施の形態に係る光端末ユニットの比較例を示した図である。図5(A)は、第1の比較例を示した図であり、図5(B)は第2の比較例を示した図である。
【0043】
図5(A)を参照して、RF変換部23の一方端33は電源ノード36に接続されるとともに、電源ノード36から電圧VCCを受ける。RF変換部23の他方端34はフィルタ27を介して接地ノード35に接続される。RF変換部23は光信号Sを電気信号Seに変換し、RF変換部23の他方端24とフィルタ27との間から電気信号Seをコネクタ24に供給している。
【0044】
RF変換部23であるフォトダイオードは光電流が供給されることにより逆バイアス状態となるように構成される。フォトダイオードが逆バイアス状態となることにより、フォトダイオードの歪性能が良好となる。しかしながら、RF変換部23に電圧VCCを常時供給しなければならないため、電源が別途必要となる。さらに、停電が発生した場合には光端末ユニットが動作不能となる。
【0045】
図5(B)を参照して、RF変換部23の一方端33は接地ノード35に接続される。同様に、RF変換部23の他方端34はフィルタ27を介して接地ノード35に接続され、RF変換部23の他方端34とフィルタ27との間より電気信号Seをコネクタ24に供給している。この場合、RF変換部23であるフォトダイオードへの給電は不要である。しかしながら、無バイアス状態でフォトダイオードを動作させるため、その歪性能は図5(A)に示した構成の場合の歪性能に比べて劣化した状態である。
【0046】
一方、本発明の実施の形態によれば、光分岐器21によって、1つの光信号Sから2つの光信号S,Sが生成される。光信号Sは電力生成部22により電力(光電流)に変換される。その光電流はRF変換部23に供給される。RF変換部23は、電力生成部22から光電流を受けた状態で、光信号Sを電気信号Seに変換する。光分岐器21に光信号Sを入力することによりRF変換部23に光電流が供給されるので、RF変換部23に光電流を供給する(RF変換部23であるフォトダイオードを逆バイアス状態にする)ための電源を別途設ける必要がない。さらに、光電流が供給されたRF変換部23(逆バイアス状態のフォトダイオード)によって光信号が電気信号に変換される。フォトダイオードに逆バイアスを印加することによって、その応答速度を上げることができるので、RF信号の広帯域にわたり良好な歪性能を得ることができる。
【0047】
よって本発明の実施の形態によれば、外部からの給電を不要としながら良好な歪性能を得ることが可能な光端末ユニットを実現できる。さらに本発明の実施の形態によれば、光伝送システムは、上記の光端末ユニットを備えるので、端末側で良好な歪性能が得られる光伝送システムを実現できる。
【0048】
図6は、本発明の実施の形態に係る図4(A)の光端末ユニットと図5(B)に示した光端末ユニットの第2の比較例との歪性能を具体的に示した図である。図6を参照して、グラフの横軸は周波数(単位;MHz)を示し、グラフの縦軸は、複合2次歪(CSO;単位dB)を示す。なお図6のCSOの絶対値が大きくなるほど、歪性能としては優れている。
【0049】
折れ線Aは、図4(A)に示す本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2において、光信号の光端末ユニット2への入力レベルが−2(dBm)であり、かつRF変換部23に電力生成部22から光電流が給電された状態における、CSOの周波数特性を示す。
【0050】
折れ線Bは、図5(B)に示す光端末ユニットの第2の比較例において、光信号の光端末ユニット2への入力レベルが−2(dBm)であり、かつRF変換部23には光電流が無給電である状態における、CSOの周波数特性を示す。
【0051】
折れ線Cは、図4(A)に示す本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2において、光信号の光端末ユニット2への入力レベルが−5(dBm)であり、かつRF変換部23に電力生成部22から光電流が給電された状態における、CSOの周波数特性を示す。
【0052】
折れ線Dは、図5(B)に示す光端末ユニットの第2の比較例において、光信号の光端末ユニット2への入力レベルが−5(dBm)であり、かつRF変換部23には光電流が無給電である状態における、CSOの周波数特性を示す。RF変換部23に電力生成部22から光電流が給電された状態とは、フォトダイオードの逆バイアス状態に対応し、RF変換部23には光電流が無給電である状態とは、フォトダイオードの無バイアス状態に対応する。
【0053】
折れ線A〜Dによって示されるように、光入力レベルが−2(dBm),−5(dBm)の両方の場合において、フォトダイオードの給電時のCSO歪性能は、無給電時の歪性能より10dB以上改善される。なお、図5(A)の第1比較例において、入力レベルが−2(dBm),−5(dBm)の場合のCSOの周波数特性は、図6の折れ線A,Cとほぼ同じ特性となる。つまり、本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2が第1比較例とほぼ同様のCSO特性であることから、本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2によれば、RF信号の広帯域に対応し、かつ外部からの電源供給を不要として、別途電源を設ける必要はない。
【0054】
無給電のフォトダイオードを光端末ユニットでの光信号の受信に用いた場合には、その歪性能のために、給電されたフォトダイオードを光端末ユニットに用いた場合に比べて加入者宅側で受信可能な信号の種類とRF信号の帯域とが制限される可能性がある。図1および図8のシステムに図5(B)の無給電のフォトダイオードで構成された光端末ユニットを用いた場合には、高い歪性能を得ることが容易ではない。
【0055】
このため、加入者宅では、歪信号とのレベル差が比較的少ない状態で運用できるFM変調方式であればFM告知放送をFM告知放送端末機で受信可能であっても、FM変調方式よりも高い所要の歪性能が要求されるデジタル受信機においては各種のデジタル放送の視聴が困難であることが起こりうる。
【0056】
一方、本発明の実施の形態によれば、給電された一方のフォトダイオードにより他方のフォトダイオードに電力(光電流)を供給する構成とした光端末ユニットを用いることによって、その歪性能を良好とすることができるので、上述の問題を解決することができる。
【0057】
さらに本発明の実施の形態によれば、光端末ユニットに外部から電力を供給しなくてもよいので、光端末ユニットの構成を簡素化できる。これにより光端末ユニットを小型化できる。さらに、本発明の実施の形態によれば、光端末ユニットの省電力化が可能となる。さらに、本発明の実施の形態によれば、光端末ユニット用の電源を設置する必要がない。
【0058】
図7は、本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2の外観の例を示した図である。図7を参照して、光端末ユニット2のコネクタ20は、たとえばSC/SPCタイプのコネクタに接続可能に構成される。一方、コネクタ24は、たとえば同軸ケーブルに設けられたコネクタ(たとえばF型接栓)に接続可能に構成される。
【0059】
本発明の実施の形態によれば、光端末ユニットを小型化できるので光端末ユニットの設置の自由度を高めることができる。たとえば本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2を、家屋の壁面に取り付けられた光コンセントユニットの一部として、そのコンセントボックス内に設置することができる。また、光端末ユニットを家屋の外部(たとえば家屋の外壁)に設定してもよい。また、宅内の端末機器へ直接接続することもできる。
【0060】
なお、本発明の実施の形態に係る光端末ユニットは、元の1つの光信号から生成された2つの光信号の一方を電力に変換するとともに、他方を電気信号に変換するように構成されていればよい。図2および図3に示した構成では、信号生成部として光分岐器21が採用される。光分岐器21は1つの光信号を2つに分割する。ただし、図8に示すように、光端末ユニット2は光分岐器21に代えて光分波器41を備えてもよい。
【0061】
光信号Sは、互いに波長が異なる複数の信号が多重化された信号である。具体的には、光信号Sは波長λの光信号Sと波長λの光信号Sとが多重化された信号である。光分波器41は波長の違いに基づいて、光信号Sと光信号Sとを分離する。上記の方法により、信号生成部である光分波器41は、光信号Sから光信号SおよびSを生成する。
【0062】
互いに波長が異なっていれば、3つ以上の数の光信号が多重化されていてもよい。複数の光信号のうち少なくとも1つが電力生成部22によって電力(光電流)に変換されるとともに、複数の光信号のうち少なくとも1つが、RF変換部23によって電気信号に変換されるのであれば、本発明の実施の形態に係る光端末ユニットを適用できる。RF変換部の個数は1以上であれば特に限定されない。
【0063】
また、本発明の実施の形態では光端末ユニットの出力が2系統に分けられているが、光端末ユニットの出力を1系統とし、伝送の途中で分配器によって2系統に分けてもよい。
【0064】
また、図1に示した構成では、光端末装置1内にV−ONUとD−ONUとが収容されるが、放送系のV−ONUである本発明の実施の形態に係る光端末ユニット2のみでの運用にも適用が可能である。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1,101 光端末装置、2, 光端末ユニット、2a,2b 出力(光端末ユニット)、3 FM告知放送端末機、4 デジタル受信機、5 分配器、6 テレビ受信機、20 コネクタ(光信号受信用)、21 光分岐器、22 電力生成部、23 RF変換部、24 コネクタ(電気信号受信用)、25,26,27 フィルタ、25a,26a,27a コイル、25b,26b,26c,27c,28 コンデンサ、27b 抵抗、31 一方端(電力生成部)、32 他方端(電力生成部)、33 一方端(RF変換部)、34 他方端(RF変換部)、35 接地ノード、36 電源ノード、41 光分波器、51 FM放送送出装置、52 アナログ放送送出装置、53 地上デジタル放送送出装置、54 CATVデジタル放送送出装置、55 BSデジタル放送送出装置、56 110度CSデジタル放送送出装置、57 混合器、58 光送信器、59 光増幅器、60 光分岐器、61 光ファイバ、62 クロージャ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバによって伝送された光信号から第1および第2の光信号を生成するための信号生成部と、
第1のアノードおよび接地された第1のカソードを有する第1のフォトダイオードと、
接地された第2のアノード、および第2のカソードを有する第2のフォトダイオードとを備え、
前記第1のフォトダイオードは、前記第1の光信号を光電変換することにより光電流を生成するとともに、前記光電流を前記第1のアノードから出力し、
前記第2のフォトダイオードは、前記第1のフォトダイオードの前記第1のアノードから前記第2のカソードに前記光電流が供給される状態で、前記第2の光信号を電気信号に変換するとともに、前記電気信号を前記第2のアノードまたは前記第2のカソードから出力する、光端末ユニット。
【請求項2】
前記第1のカソードと接地ノードとの間に設けられ、高周波成分の伝達を阻止する第1のフィルタと、
前記第1のアノードと前記第2のカソードとの間に設けられ、高周波成分の伝達を阻止する第2のフィルタと
前記第2のアノードと前記接地ノードとの間に設けられ、高周波成分の伝達を阻止する第3のフィルタと、
前記第2のカソードと前記第2のフィルタとの間、および前記第2のアノードと前記第3のフィルタとの間のいずれか一方の間に設けられ、前記第2のアノードまたは前記第2のカソードから出力された前記電気信号を前記光端末ユニットの外部に出力させるための出力端子とをさらに備える、請求項1に記載の光端末ユニット。
【請求項3】
前記信号生成部は、
入力された光信号を前記第1および第2の光信号に分岐する光分岐器を含む、請求項1または2に記載の光端末ユニット。
【請求項4】
前記信号生成部に入力された前記光信号は、互いに波長が異なる複数の光信号が多重化された信号であり、
前記信号生成部は、
入力された前記光信号を波長の違いに応じて分離することにより前記第1および第2の光信号を生成する光分波器を含む、請求項1または2に記載の光端末ユニット。
【請求項5】
光放送信号を送出する信号送出装置と、
前記信号送出装置から送出された前記光放送信号を伝送するための光ファイバと、
前記光ファイバを介して前記光放送信号が供給される、請求項1に記載の光端末ユニットと、
前記光端末ユニットから出力された前記電気信号を受信する端末機器とを備える、光伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−49961(P2011−49961A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198216(P2009−198216)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】