説明

光符号分割多重ネットワークシステム、光符号分割多重ネットワークシステムに備わる局舎ノード、並びに符号器及び復号器の動作安定化方法

【課題】符号器と対応する復号器の動作波長が常に合致する状態に制御される機能を備える光符号分割多重ネットワークシステムを提供する。
【解決手段】光符号変調部は、N台の加入者ノード(12-1〜12-N)と一対一に対応させて、光符号変調部24-1〜24-Nとして設けられている。受信部30は、分波器32と、光復号受信部とを備え、光復号受信部34-1〜34-Nは、N台の加入者ノード(12-1〜12-N)と一対一に対応させて設けられている。波長制御部40は、入力された局舎ノード入力信号39を波長スペクトル分解して帰還残渣第1光多重信号及び第2光多重信号のそれぞれの波長スペクトルを測定し、それぞれのスペクトルが、第1基準波長スペクトル及び第2基準波長スペクトルの形状の相似形又は合同形に近づくように、符号器18等及び復号器46等の動作波長を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、符号器あるいは復号器の動作波長が変動することに伴う符号化及び復号化の不安定動作を抑止できる光符号分割多重ネットワークシステム、並びに符号器及び復号器の動作波長を制御して符号化及び復号化動作の安定化を図る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等により通信需要が急速に増大している。それに対応して光ファイバ等を用いた高速で大容量のネットワークが整備されつつある。このような高速で大容量の光ネットワークを構築するためには、一本の光ファイバ伝送路に複数通信チャンネルの光パルス信号をまとめて伝送する光多重伝送技術が必要とされる。この光多重伝送技術の一つとして、光符号分割多重伝送(OCDM: Optical Code Division Multiplexing)技術が盛んに研究されている。
【0003】
OCDMは、送信側ではチャンネルごとに異なる符号で光パルス信号を符号化し、かつ受信側では送信側と同じ符号を用いて復号化して元の光パルス信号に戻す光符号分割多重伝送技術である。OCDMによれば、符号化されて送信された信号は、符号化時の符号と同一の符号でなければ復号化されないのでこの符号が知られない限り復号化されない。このため、OCDMは情報の秘匿性の確保に優れる。
【0004】
また、OCDMは、符号をチャンネル識別標識(鍵)として利用していることから、時間軸上で時間スロットによってチャンネルを識別する必要がなく、また波長によってチャンネルを識別する必要もない。そのため、時間軸上で同一の時間スロットに複数の通信チャンネルを設定できる上、波長軸上においても同一波長に複数の通信チャンネルを設定できる。すなわち、OCDMによれば、波長あるいは時間スロット等の通信資源を節約しつつ大容量のデータ通信が行える。
【0005】
光パルス信号の符号化に使われる符号器、あるいは受信信号の復号化に使われる復号器として、受動光素子である超格子構造ファイバブラッググレーティング(SSFBG: Super-Structured Fiber Bragg Grating)を利用することができる。
【0006】
光ファイバに周期的な屈折率変調を施すことによってファイバブラッググレーティング(FBG: Fiber Bragg Grating)が形成される。SSFBGは、屈折率周期が一定であって一定の長さを有する単位FBGを、光ファイバの長さ方向に沿って複数個直列に配置することによって形成される。単位FBGとは、途中に屈折率変調周期の変動あるいは位相の跳躍する部分が存在しない、光ファイバに形成された一続きのFBGの部分を言う。
【0007】
符号器あるいは復号器に利用されるSSFBGでは、隣接して配置される単位FBG間に位相シフト部が設けられている。この位相シフト部に設定する位相シフト量は、設定される符号によって確定される。例えば、単位FBGがt個配置されたSSFBGにあっては、位相シフト部は、(t-1)個所に設けられることになる。光パルス間の位相差を符号として用いるOCDM(位相符号方式OCDM)では、この(t-1)個所のそれぞれに設定される位相シフト量によって、SSFBGに設定される符号が確定する。
【0008】
SSFBGを用いた符号器及び復号器は、SSFBGに設定されている符号が同一であるが、SSFBGの入出力端が逆の関係となる。すなわち、SSFBGの両端をそれぞれA、Bとしたとき、符号器に設置されるSSFBGの入出力側が端Aとなるように設定されている場合、復号器に設置されるSSFBGの入出力側は端Bとなる。
【0009】
上述したように、SSFBGを用いた符号器と復号器とは、入出力端が逆の関係になっているだけであり、それぞれは素子として同一のものである。そこで、以後の説明においては、符号器及び復号器の何れをも指す場合には、光パルス拡散器ということもある。
【0010】
ここで、符号器あるいは復号器を構成するSSFBGの特性である、反射光の波長及び位相特性(以後「動作特性」ということもある。)は、その周囲温度等の条件で変化する。特に、位相符号方式OCDMによる伝送においては、送信側の符号器を構成するSSFBGの反射光の波長(以後「動作波長」又は「ブラッグ反射波長」ということもある。)と受信側の復号器を構成するSSFBGの動作波長とが異なれば、受信側において復号化がうまくできない。そのため、送信側の符号器を構成するSSFBGと受信側の復号器を構成するSSFBGの動作特性が常に同一に保たれるように、符号器あるいは復号器を構成するSSFBGの少なくとも一方の動作特性を随時調整する必要がある。
【0011】
一般的に、SSFBGのブラッグ反射波長が変化しなければ、反射光の位相も変化しない。すなわち、SSFBGのブラッグ反射波長を変化しないように制御すれば、SSFBGの動作特性も不変に保たれる。
【0012】
SSFBGを用いた符号器と復号器を備えて構成される光通信システムの構成例として、局舎ノードと複数台の加入者ノードがリング状に接続され、局舎ノードと加入者ノードとの間で光符号分割多重通信を行う光符号分割多重ネットワークシステムが知られている。このシステムでは、各加入者ノードに設置された復号器の動作波長と各加入者ノードに対応する、局舎ノードに設置された符号器の動作波長とを合致させ、かつ各加入者ノードで符号化光送信信号の生成に利用される符号器と当該加入者ノードに対応する、局舎ノードに設置された復号器の動作波長を合致させるという制御が必要とされる。
【0013】
上述した光パルス拡散器(符号器及び復号器)の動作波長を一定の条件を満たすように制御する技術は、光符号分割多重ネットワークシステム以外の装置等についても必要とされる。
【0014】
例えば、複数の光送信器に対応して波長が割り当てられており、これらの各光送信器の送出波長が割り当てられた波長からずれないように、光送信器のそれぞれを制御する機能を備えた波長多重光送信装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0015】
この波長多重光送信装置は、送出波長の異なる複数の光送信器と、光送信器からの光信号を合波する波長合波器と、合波した光信号を分岐する光カプラと、光カプラからの光信号を受光する受光器と、受光器からの信号に基づいて各光送信器の波長を制御する波長制御手段とを備えて構成されている。波長合波器は周期的なスペクトル特性を有している。送出波長が波長合波器のスペクトル特性のピークからずれると、波長合波器で合波されて生成された光信号に含まれる送出波長成分の光パワーが低下する。
【0016】
波長制御手段は、複数の光送信器の一つ一つを制御して受光器からの光パワーの値がそれぞれ最大になるように制御する機能を有している。そこで、波長制御手段によって複数の光送信器の送出波長を順次一つずつ制御して、全ての送出波長を波長合波器の周期的なスペクトル特性のピークと一致させる。このように送出波長を制御することにより、光送信器の全ての送出波長を安定化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008-172717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述の、局舎ノードと複数台の加入者ノードがリング状に接続されて構成される光符号分割多重ネットワークシステムにおいても、上述の波長多重光送信装置において実行された手法と同様に、各加入者ノードに備えられた符号器あるいは復号器の動作波長を加入者ノードごとに順次調整することによって、各加入者ノード及び局舎ノードのそれぞれに設置された符号器と復号器との間で、それぞれの動作波長を合致させることは可能である。
【0019】
しかしながら、このように加入者ノードごとに順次調整する手法を使うと、波長多重光送信装置が備える全ての光送信器の出力波長を安定化するためには、光送信器の個数に等しい回数の波長制御を実行する必要があり、制御のために長時間を要することになる。また、加入者ノードの何れかに備えられた符号器あるいは復号器の動作波長に変化が生じた場合、改めて全ての加入者ノードに対して符号器あるいは復号器の動作波長制御を行うこととなる。従って、通常の通信を中断しなければならない事態も生じ得る。
【0020】
そこで、この発明の目的は、局舎ノードと複数台の加入者ノードがリング状に接続され、局舎ノードと加入者ノードとの間で光符号分割多重通信を行う光ネットワークシステムであって、符号器と対応する復号器の動作波長が常に合致する状態に制御される機能を備える光符号分割多重ネットワークシステムを提供することにある。
【0021】
また、この光符号分割多重ネットワークシステムにおいて、通常の通信を中断することなく、加入者ノードの数に依存せずに短時間かつ小数の手順で符号器及び復号器の動作安定化を実現させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の目的を達成するため、この発明の光符号分割多重ネットワークシステムは、局舎ノードと複数台の加入者ノードがリング状に接続され、局舎ノードと加入者ノードとの間で光符号分割多重通信を行う光ネットワークシステムであって、当該局舎ノードが、少なくとも、送信部と波長制御部とを備えている。また、この発明の光符号分割多重ネットワークシステムの局舎ノードは、送信部と、受信部と、波長制御部とを具えているのが好適である。
【0023】
送信部は、各加入者ノードに一対一に対応させてそれぞれ割り当てられた相異なる固有の符号が設定された符号器で加入者ノードごとに光送信信号を符号化して符号化光送信信号を生成し、この符号化光送信信号を多重して第1光多重信号を生成して出力する。
【0024】
受信部は、各加入者ノードからそれぞれ相異なる固有の符号で符号化されて出力される符号化光送信信号が多重されて送られてくる第2光多重信号を、各加入者ノードに対応する復号器で加入者ノードごとに復号化して受信する。
【0025】
波長制御部は、第1光多重信号が、加入者ノードの全てを経由して再び局舎ノードに戻った帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルに基づいて符号器の動作波長を調整すると共に、第2光多重信号の波長スペクトルに基づいて復号器の動作波長を調整する。
【0026】
波長制御部は、スペクトルモニタと、動作波長コントローラとを備えるのが好適である。
【0027】
スペクトルモニタは、帰還残渣第1光多重信号、及び第2光多重信号のそれぞれの波長スペクトルを測定する。
【0028】
動作波長コントローラは、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの形状が、加入者ノードに設置された復号器の動作波長と、各加入者ノードに対応する、局舎ノードに設置された符号器の動作波長が合致しているときに実現される波長スペクトルである第1基準波長スペクトルの形状に近づくように符号器の動作波長を調整する。また、第2光多重信号の波長スペクトルの形状が、各加入者ノードで符号化光送信信号の生成に利用された符号器と、この符号器に対応する、局舎ノードに設置された復号器の動作波長が合致しているときに実現される波長スペクトルである第2基準波長スペクトルの形状に近づくように復号器の動作波長を調整する。
【0029】
この発明の符号器及び復号器の動作安定化方法は、光符号分割多重ネットワークシステムの局舎ノードが備える、加入者ノードごとに相異なる符号で光送信信号を符号化して符号化光送信信号を生成する、各加入者ノードに一対一に対応させてそれぞれ相異なる固有の符号が設定された符号器、及び各加入者ノードの符号化光送信信号をそれぞれ復号化する、各加入者ノードに割り当てられた固有の符号が設定された復号器の動作安定化方法であって、波長スペクトル測定ステップと、波長制御ステップとを含んでいる。
【0030】
波長スペクトル測定ステップは、各加入者ノードの符号化光送信信号が多重された第1光多重信号が、加入者ノードの全てを経由して再び局舎ノードに戻った帰還残渣第1光多重信号、及び各加入者ノードから出力される符号化光送信信号が多重された第2光多重信号のそれぞれの波長スペクトルを測定するステップである。
【0031】
波長制御ステップは、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルに基づいて符号器の動作波長を調整すると共に、第2光多重信号の波長スペクトルに基づいて復号器の動作波長を調整するステップである。
【0032】
波長制御ステップは、符号器動作波長調整ステップと復号器動作波長調整ステップとを含むのが好適である。
【0033】
符号器動作波長調整ステップは、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの形状が、各加入者ノードに対応する符号器の動作波長と、この符号器と対応する加入者ノードに設置された復号器の動作波長が合致しているときに実現される波長スペクトルである第1基準波長スペクトルの形状に近づくように符号器の動作波長を調整するステップである。
【0034】
復号器動作波長調整ステップは、第2光多重信号の波長スペクトルの形状が、各加入者ノードで符号化光送信信号の生成に利用された符号器と、この符号器に対応するこの局舎ノードに設置された復号器の動作波長が合致しているときに実現される波長スペクトルである第2基準波長スペクトルの形状に近づくように復号器の動作波長を調整するステップである。
【発明の効果】
【0035】
この発明の光符号分割多重ネットワークシステムは、波長制御部を備えており、この波長制御部において、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルに基づいて符号器の動作波長が調整され、また、第2光多重信号の波長スペクトルに基づいて復号器の動作波長が調整される。
【0036】
従って、この発明の光符号分割多重ネットワークシステムによれば、このシステムが備える波長制御部によって、符号器と対応する復号器の動作波長が常に合致する状態に制御される機能が実現される。
【0037】
また、この発明の符号器及び復号器の動作安定化方法によれば、波長制御ステップにおいて、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルに基づいて符号器の動作波長が調整されると共に、第2光多重信号の波長スペクトルに基づいて復号器の動作波長が調整される。
【0038】
符号器の動作波長の調整は、例えば、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの形状が、第1基準波長スペクトルの形状の相似形に近づくように符号器の動作波長を調整する符号器動作波長調整ステップによって実現される。
【0039】
復号器の動作波長の調整は、第2光多重信号の波長スペクトルの形状が、第2基準波長スペクトルの形状の合同形に近づくように復号器の動作波長を調整する復号器動作波長調整ステップによって実現される。
【0040】
符号器の動作波長を調整するためのステップ及び復号器の動作波長を調整するためのステップの何れも、動作波長が変動した符号器あるいは復号器に対してのみ実行すればよく、全ての符号器あるいは復号器に対して順次実行する必要はない。従って、加入者ノードの数に依存せずに短時間かつ小数の手順で符号器及び復号器の動作安定化を実現させることが可能となる。
【0041】
また、符号器の動作波長の調整は、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルを利用すれば実行でき、復号器の動作波長の調整は第2光多重信号の波長スペクトルを利用すれば行える。帰還残渣第1光多重信号及び第2光多重信号は、通信用光伝送路からタップして取り出すことが可能であるから、通常の通信を中断することなく、それぞれの波長スペクトルを測定することが可能である。
【0042】
従って、この発明の符号器及び復号器の動作安定化方法によれば、通常の通信を中断することなく、符号器及び復号器の動作特性を統一して動作安定化を実現させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施形態の光符号分割多重ネットワークシステムの概略的ブロック構成図である。
【図2】局舎ノードの概略的構成を示すブロック構成図である。
【図3】加入者ノードの概略的構成を示すブロック構成図である。
【図4】この発明の実施形態の光符号分割多重ネットワークシステムで利用される符号器あるいは復号器を構成するためのSSFBG光パルス拡散器の構成を概略的に示す図である。
【図5】互いに異なる符号が設定されたSSFBGのブラッグ反射スペクトルの一例を示す図である。
【図6】第1光多重信号の波長スペクトル及び帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルを示す図である。
【図7】符号器動作波長調整ステップについての説明に供する各種の波長スペクトルを示す図である。
【図8】第2基準波長スペクトルの波長スペクトルを示す図である。
【図9】復号器動作波長調整ステップについての説明に供する各種の波長スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、各図は、この発明に係る一構成例を示し、この発明の実施形態の光符号分割多重ネットワークシステムが理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、ブロック構成図において、光ファイバ等の光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。
【0045】
<光符号分割多重ネットワークシステム>
図1を参照して、この発明の実施形態の光符号分割多重ネットワークシステムの構成について説明する。
【0046】
この発明の実施形態の光符号分割多重ネットワークシステムは、局舎ノード10とN台の加入者ノード(12-1〜12-N)がリング状に接続され、局舎ノード10と加入者ノード(12-1〜12-N)の間で光符号分割多重通信を行う光ネットワークシステムである。加入者ノードは何台配置しても良いが、ここではN台配置されているものとして説明する。ここで、Nは2以上の整数である。
【0047】
図1に示すように、局舎ノード10とN台の加入者ノード(12-1〜12-N)のそれぞれが入力端及び出力端を備えている。局舎ノード10の出力端と加入者ノード12-1の入力端が光ファイバ伝送路で接続されており、加入者ノード12-1の出力端と加入者ノード12-2の入力端が光ファイバ伝送路で接続されている。加入者ノード12-2の出力端の後段に加入者ノード12-3が配置され、順次加入者ノード12-3〜12-Nが配置され、加入者ノード12-Nの出力端と局舎ノード10の入力端が光ファイバ伝送路で接続されている。このように接続されることによって、局舎ノード10とN台の加入者ノード(12-1〜12-N)がリング状に接続された光ネットワークシステムが構成されている。
【0048】
図1では、光ネットワークシステムにおける信号の流れの方向が、局舎ノード10から、加入者ノード(12-1〜12-N)に向けた左回りに設定されている例を示している。
【0049】
図2を参照して、局舎ノード10の構成及びその動作について説明する。局舎ノード10は、送信部20と、受信部30と、波長制御部40とを備えている。
【0050】
送信部20は、合波器22、光符号変調部24-1〜24-N、及びパルス光源部26を備えている。光符号変調部24-1〜24-Nは、N台の加入者ノード(12-1〜12-N)と一対一に対応させて設けられている。光符号変調部24-1〜24-Nのそれぞれは、変調器16と符号器18とを備えた同一の構成である。ただし、光符号変調部24-1〜24-Nのそれぞれに備えられる符号器18は、N台の加入者ノード(12-1〜12-N)と一対一に対応させて、互いに相異なる符号が設定されている。
【0051】
パルス光源部26から出力されるパルス光27は、分波器45でパルス光27-1〜27-NにN分割されて、光符号変調部24-1〜24-Nにそれぞれ入力される。
【0052】
光符号変調部24-1に入力されたパルス光27-1は、変調器16に入力されて加入者ノード12-1に送信する送信信号を反映する光送信信号17に変換される。この光送信信号17は、光サーキュレータ28を介して符号器18に入力されて、加入者ノード12-1に割り当てられた符号で符号化されて符号化光送信信号19に変換される。符号化光送信信号19は、光サーキュレータ28を介して合波器22に入力される。
【0053】
光符号変調部24-2〜24-Nのそれぞれにおいても光符号変調部24-1と同様の処理が行われて、それぞれ加入者ノード(12-2〜12-N)に送信する符号化光送信信号が出力され、合波器22に入力される。
【0054】
合波器22は、加入者ノード(12-1〜12-N)に送信するそれぞれの符号化光送信信号を合波することによって多重して、第1光多重信号23を生成して出力する。第1光多重信号23は、局舎ノード10の出力端から出力されて加入者ノード12-1の入力端に入力される。
【0055】
波長制御部40は、スペクトルモニタ42と、動作波長コントローラ44と、分波器48を備えている。
【0056】
波長制御部40には局舎ノード入力信号39が入力される。局舎ノード入力信号39は、第2光多重信号及び帰還残渣第1光多重信号を含んでいる。第2光多重信号は、加入者ノード(12-1〜12-N)から出力される、それぞれ相異なる固有の符号で符号化された符号化送信信号が多重化された信号である。帰還残渣第1光多重信号は、第1光多重信号が加入者ノードの全てを経由して再び局舎ノード10に戻った信号である。
【0057】
局舎ノード入力信号39は、分波器48で局舎ノード入力信号39-1と局舎ノード入力信号39-2に分岐される。局舎ノード入力信号39-1はスペクトルモニタ42に入力され、局舎ノード入力信号39-2は受信部30に入力される。
【0058】
スペクトルモニタ42は、入力された局舎ノード入力信号39-1を波長スペクトル分解して帰還残渣第1光多重信号、及び第2光多重信号のそれぞれの波長スペクトルを測定する。
【0059】
動作波長コントローラ44は、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの形状が、第1基準波長スペクトルの形状の相似形に近づくように送信部20が備える符号器18の動作波長を調整する。また、動作波長コントローラ44は、第2光多重信号の波長スペクトルの形状が、第2基準波長スペクトルの形状の合同形に近づくように、受信部30が備える復号器46の動作波長を調整する。
【0060】
第1基準波長スペクトル及び第2基準波長スペクトル、並びに動作波長の調整については、後述する。
【0061】
受信部30は、分波器32と、光復号受信部34-1〜34-Nとを備えている。光復号受信部34-1〜34-Nは、N台の加入者ノード(12-1〜12-N)と一対一に対応させて設けられている。光復号受信部34-1〜34-Nのそれぞれは、レシーバ36と復号器46とを備えた同一の構成である。ただし、光復号受信部34-1〜34-Nのそれぞれに備えられる復号器は、N台の加入者ノード(12-1〜12-N)と一対一に対応させて、互いに相異なる符号が設定されている。
【0062】
受信部30に入力された局舎ノード入力信号39-2は、分波器32で分波第2光多重信号33-1〜33-NにN分割されて、光復号受信部34-1〜34-Nにそれぞれ入力される。
【0063】
分波第2光多重信号33-1は、光復号受信部34-1が備える光サーキュレータ38を介して復号器46に入力されて、加入者ノード12-1に割り当てられた符号で復号化された受信光信号47に変換される。この受信光信号47は、光サーキュレータ38を介してレシーバ36に入力される。このようにして、加入者ノード12-1から送られてくる信号が局舎ノード10で受信される。
【0064】
光復号受信部34-2〜34-Nのそれぞれにおいても光復号受信部34-1と同様の処理が行われて、それぞれ加入者ノード(12-2〜12-N)から送信された符号化光送信信号が復号化されて受信される。
【0065】
図3を参照して加入者ノード(12-1〜12-N)の構造及びその動作について説明する。加入者ノード(12-1〜12-N)は同じ構造であるので、以下加入者ノードの構成の説明においては、代表して加入者ノード12-1について説明する。図3は、加入者ノード12-1の概略的ブロック構成図である。
【0066】
加入者ノード12-1は、受信部60と送信部70とを備えている。図3に示す加入者ノードは、受信部60と送信部70との間にアイソレータ82が設置されている。アイソレータ82は、送信部70が備える符号器74から受信部60に反射される光信号成分を遮断する。
【0067】
送信部70は、パルス光源部80と、光符号変調部72と、光サーキュレータ78とを備えている。
【0068】
パルス光源部80から出力されるパルス光81は、変調器76に入力され、加入者ノード12-1から局舎ノード10に向けて送信される送信信号を反映する光送信信号77に変換される。この光送信信号77は、光サーキュレータ78を介して符号器74に入力されて符号化光送信信号79に変換される。符号化光送信信号79は、光サーキュレータ78を介して出力端から出力される。
【0069】
一方、局舎ノード10から出力された光多重信号89は、光サーキュレータ90を介して受信部60が備える復号器62に入力され、復号化されて復号化光受信信号63に変換される。復号化光受信信号63は、光サーキュレータ90を介してレシーバ64に入力される。このようにして、局舎ノード10から送られてくる信号が受信される。復号器62には、加入者ノード12-1に割り当てられた符号が設定されている。
【0070】
局舎ノード10が備えるパルス光源部26、及び加入者ノード(12-1〜12-N)がそれぞれ備えるパルス光源部80は、例えば、モード同期半導体レーザ等の光パルスを等間隔で連続して出力する素子を利用して構成することが可能である。
【0071】
また、パルス光源部を、連続波光を出力する光源と電界吸収型変調器(EAM: Electro-Absorption Modulator)等を組み合わせて構成することも可能である。EAMは電気パルス信号によって、出力される光パルスの間隔を制御することが可能である素子であるので、この場合も、この発明の実施形態の光符号分割多重ネットワークシステムにおける光信号のデータ転送レートと同期するように光送信信号を生成することが容易に実現される。
【0072】
受信部60は、復号器62と、レシーバ64と、光サーキュレータ90とを備えている。
【0073】
加入者ノード12-1の入力端から入力される光多重信号89は、加入者ノード12-1にあっては局舎ノードから出力された第1光多重信号であるが、加入者ノード(12-2〜12-N)にあっては局舎ノードから出力された第1光多重信号の他に、上流の位置に配置された加入者ノードから出力される符号化光送信信号成分が含まれる。上流の位置に配置された加入者ノードとは、図1に示す構成のシステムにあっては、当該加入者ノードの入力端側から局舎ノード10の出力端の間に配置された加入者ノードを指す。
【0074】
従って、加入者ノード12-1を除く他の加入者ノードにあっては、受信部60に入力される光信号は、第1光多重信号と、この加入者ノード以外の加入者ノードの一部又は全てから出力される符号化光送信信号が多重された光多重信号である。受信部60はこの光多重信号を取り込んで、この加入者ノードに割り当てられた固有の符号が設定された復号器で局舎ノードからこの加入者ノードに宛てて送信された符号化光送信信号を復号化して受信する。
【0075】
復号器62からは、この加入者ノード12-1に割り当てられた固有の符号で符号化され局舎ノードから送信された符号化光送信信号成分を除いた信号成分、及び局舎ノードとこの加入者ノードの間の前段に設置された加入者ノードから出力された符号化光送信信号成分である復号器透過信号73が出力される。
【0076】
復号器透過信号73は、アイソレータ82を通過して、送信部70が備える符号器74に入力され、この符号器74も通過して光サーキュレータ78を介して出力端から出力される。
【0077】
従って、加入者ノード12-2〜12-Nは、それぞれに割り当てられた固有の符号で符号化され局舎ノードから送信された符号化光送信信号成分を除いた信号成分、及び局舎ノードとこの加入者ノードの間の前段に設置された加入者ノードから出力された符号化光送信信号成分を、局舎ノードの直近の後段に接続された加入者ノードに送り渡す。加入者ノード12-1は、加入者ノード12-1に割り当てられた固有の符号で符号化され、局舎ノードから送信された符号化光送信信号の成分を除いた信号成分を加入者ノード12-2に送り渡す。加入者ノード12-1については、局舎ノードとこの加入者ノードの間の前段に加入者ノードが配置されていない特殊な位置に存在するので他の加入者ノードから出力された符号化光送信信号成分が0であるという特殊性があるが、構造は加入者ノード12-2〜12-Nと同一であり、その動作特性に違いはない。
【0078】
<SSFBG光パルス拡散器>
図4を参照して、符号器及び復号器の役割を果たすSSFBG光パルス拡散器を構成するSSFBGの構造及びその動作について説明する。図4は、光ファイバにブラッグ反射格子が形成されてなるSSFBG光パルス拡散器の構造を、コアの部分を断面図の形式で概念的に示している。図4で光ファイバの等価屈折率の分布を、縦縞模様で示してある。
【0079】
SSFBG光パルス拡散器は、図4に示すSSFBGの何れか一方の端に光サーキュレータを配置することが可能な状態に保持されるように、外部シールドケース等に格納されて構成される。SSFBG光パルス拡散器の何れか一方の端に光サーキュレータを配置すれば、この光サーキュレータを介して符号化あるいは復号化される光信号がSSFBG光パルス拡散器に入力され、ブラッグ反射される出力光を再び光サーキュレータを介して外部に取り出すことができる。
【0080】
図4において、FBG1、FBG2、FBG3、FBG4、…、FBG45、FBG46、FBG47、FBG48と示された縦縞部分は、単位FBGを示す。図4に示すSSFBGは、単位FBGが48個直列に配置されて構成された一例である。ここに示す48個の単位FBGのブラッグ反射波長は全て等しく設定されている。
【0081】
単位FBGの個数は多いほどブラッグ反射光の波長軸に対する半値幅を狭くすることができる。加入者ノード数が増すことに対応させて、ブラッグ反射光の波長軸に対する半値幅を狭くすることが必要となるので、単位FBGの個数が増やされる。ブラッグ反射光の波長軸に対する半値幅が狭いほどこの半値幅より狭い幅で細かく波長スペクトルを観測することが求められる。すなわち、動作波長をそれだけ高い精度で制御することが求められる。
【0082】
このことから、上述した帰還残渣第1光多重信号及び第2光多重信号の波長スペクトルを測定するスペクトルモニタの測定波長間隔Δλを小さくとることが必要となり、それだけ高精度のスペクトルモニタが必要される。
【0083】
SSFBG光パルス拡散器への符号の設定は、単位FBGの配置間隔L及びブラッグ反射波長λBを、次式(1)を満たすように設定することによって行われる。
2L・neff=λB・(m+(1/2)) (1)
ここで、neffはSSFBGの導波光に対する等価屈折率、mは正の整数である。このように形成されたSSFBGに光パルスが入力されると、単位FBGの個数に等しい数のチップパルスの列がブラッグ反射されて出力される。このチップパルス列の隣接するチップパルス間の相対位相差Δφは、次式(2)で与えられる。
Δφ=2π・[(2LneffS)−(2Lneff)+(1/2)] (2)
ここで、λSは光搬送波の波長である。すなわち、パルス光源部26から出力されるパルス光27の波長であり、光符号変調部24-1〜24-Nから出力される符号化光送信信号の波長である。従って、これらの符号化光送信信号の光搬送波の波長は全て等しい。
【0084】
SSFBG光拡散器に符号を設定するとは、単位FBGの配置間隔L及びブラッグ反射波長λBを設定することを意味する。単位FBGの配置間隔L及びブラッグ反射波長λBを、光符号変調部24-1〜24-Nに対して、相異なる値として割り当てることによって、局舎ノードから加入者ノードに向けて送信される符号化光送信信号は、この符号によって識別可能となる。
【0085】
<符号器及び復号器の動作安定化方法>
図5(A)及び(B)を参照して、SSFBG光パルス拡散器のブラッグ反射スペクトルについて説明する。図5(A)及び(B)には互いに異なる符号が設定されたSSFBGのブラッグ反射スペクトルの一例を、横軸に相対波長をnm単位で目盛り、縦軸に反射量(光強度)をdBで目盛って示してある。
【0086】
図5(A)及び(B)のそれぞれに示すブラッグ反射スペクトルは、互いに異なる符号が設定されたSSFBのブラッグ反射スペクトルであるので、それぞれ複数あるピーク位置が両図において異なっている。これら複数のピーク位置及び隣接するピーク位置の間隔は、単位FBGの配置間隔L及び単位FBGに設定するブラッグ反射波長λBによって確定する。
【0087】
図5(A)及び(B)に示す、ブラッグ反射スペクトルから符号の相違を識別するには、SSFBGの動作波長であるこれらのピーク位置を判別すればよいことが分かる。符号器あるいは復号器の動作を安定化するとは、これらのピーク位置(動作波長)が変動しないように制御する、すなわち、単位FBGの配置間隔L及びブラッグ反射波長λBが変動しないように制御することを意味する。
【0088】
SSFBGを構成するガラスの屈折率は温度依存性があるので、SSFBGの温度の変動によって、光ファイバの等価屈折率が変動する。これにより、単位FBGの配置間隔Lに対する光学長及び、ブラッグ反射波長λBが変化する。また、SSFBGを固定している外部シールドケース等が外部の温度変動に伴って伸縮すると、それに伴ってSSFBGに働く張力の大きさが変動し、これによって、配置間隔L及び単位FBGの格子間隔が機械的に変動する。このことによって、SSFBGの動作波長が変動する。
【0089】
この発明の実施形態の符号器及び復号器の動作安定化方法は、局舎ノード10が備える復号器46及び符号器18の動作波長を制御して、動作安定化を図る方法である。
【0090】
符号器及び復号器の動作安定化方法は、波長スペクトル測定ステップ、符号器動作波長調整ステップ及び復号器動作波長調整ステップを備えている。以下、各ステップを、波長制御部40がプログラムによって自動的に実行する一例について説明する。なお、波長スペクトル測定ステップ、符号器動作波長調整ステップ及び復号器動作波長調整ステップはオペレータが行ってもよい。
【0091】
ここでは、局舎ノード10に対して、4台の加入者ノード(12-1〜12-4)(N=4に相当する。)がリング状に接続されて構成される光符号分割多重ネットワークシステムを例にとって説明する。しかしながら、以下の説明は、接続される加入者ノードの台数にかかわらず同様に成立する。
【0092】
まず、波長スペクトル測定ステップにおいて、局舎ノード10の波長制御部40が備えるスペクトルモニタ42によって、帰還残渣第1光多重信号及び第2光多重信号のそれぞれの波長スペクトルを測定する。例えば、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルと、第2光多重信号の波長スペクトルの測定は、交互に一定の時間間隔で実行される。
【0093】
ここで、帰還残渣第1光多重信号の波長帯域と第2光多重信号の波長帯域とは重ならないように設定されている。帰還残渣第1光多重信号の波長帯域は、局舎ノード10の送信部20が備えるパルス光源部26から出力されるパルス光27の波長帯域に等しい。一方、第2光多重信号の波長帯域は、加入者ノード(12-1〜12-N)のそれぞれの送信部が備えているパルス光源部から出力されるパルス光の波長帯域に等しい。
【0094】
例えば、帰還残渣第1光多重信号の波長帯域を1.49μm帯と設定し、第2光多重信号の波長帯域を1.31μm帯と設定する。この場合、局舎ノード10の波長制御部40が備えるスペクトルモニタ42によって、帰還残渣第1光多重信号及び第2光多重信号のそれぞれの波長スペクトルをそれぞれ個別に測定することができる。すなわち、スペクトルモニタ42において、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの測定と第2光多重信号の波長スペクトルの測定とを、それぞれ測定波長帯域を1.49μm帯と1.31μm帯に設定して測定することで、両者は個別に測定可能である。
【0095】
スペクトルモニタ42によって、帰還残渣第1光多重信号及び第2光多重信号のそれぞれの波長スペクトルが、光強度を波長の関数とするデジタル信号の形で測定される。例えば、波長スペクトルが、波長λと、この波長λの値に対応する光強度Iの値との数値の組(λ,I)として測定される。波長の測定される最小間隔をΔλとした場合、スペクトルモニタ42によって波長スペクトルは、(λ+Δλ,I1)、(λ+2Δλ,I2)、…、(λ+nΔλ,In)という数値の組の集合として観測される。ここで、nは正の整数である。
【0096】
波長λは、パルス光源部から出力されるパルス光の最小波長にとられる。すなわち、波長λは、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの測定においては、局舎ノード10の送信部20が備えるパルス光源部26から出力されるパルス光の最小波長に設定され、第2光多重信号の波長スペクトルの測定においては、加入者ノード(12-1〜12-N)のそれぞれの送信部が備えているパルス光源部から出力されるパルス光の最小波長に設定される。
【0097】
波長λ、波長の最小間隔Δλ、及びnの値は、局舎ノード10及び加入者ノード(12-1〜12-N)が備える符号器及び復号器に設定された符号、及び局舎ノード10及び加入者ノード(12-1〜12-N)が備えるパルス光源部から出力されるパルス光の波長スペクトルの形状等から決定される。
【0098】
Δλの値を小さくとり、nを大きくとれば、符号器及び復号器の動作安定化が正確に行われるが処理時間が長くなる。一方、Δλの値を大きくとり、nを小さくとれば処理時間は短時間になるが、符号器及び復号器の動作安定化の正確さが失われる場合がある。従って、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルと第2光多重信号の波長スペクトルを、波長制御ステップが実行可能な程度の忠実性を以って測定可能であって、波長制御ステップの処理時間が最小となるように、Δλの値とnの値が設定される。
【0099】
図6(A)、(B)及び図7(A)〜(D)を参照して、符号器動作波長調整ステップについて説明する。符号器動作波長調整ステップは、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの形状が、第1基準波長スペクトルの形状の相似形に近づくように局舎ノード10が備える符号器の動作波長を調整するステップである。
【0100】
ここで、第1基準波長スペクトルとは、加入者ノードに設置された復号器の動作波長と、各加入者ノードに対応する局舎ノードの符号器の動作波長が合致しているときに実現される第1光多重信号23と相似形の波長スペクトルを指す。
【0101】
図6(A)は、各加入者ノードに一対一に対応させてそれぞれ割り当てられた相異なる固有の符号が設定された局舎ノードの符号器で加入者ノードごとに光送信信号を符号化して符号化光送信信号を生成し、これらの符号化光送信信号を多重して生成される第1光多重信号の波長スペクトルを示す。
【0102】
図6(B)は加入者ノードに設置された復号器の動作波長と、各加入者ノードに対応する局舎ノードの符号器の動作波長が合致しているときに実現される帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルを示す。従って、図6(B)に示す波長スペクトルが、この場合の第1基準波長スペクトルの一例となる。
【0103】
図7(A)〜(D)は、それぞれ加入者ノード(12-1〜12-4)の復号器と、局舎ノード10に加入者ノード(12-1〜12-4)に対応させて設置された符号器の動作波長間でずれが生じた場合の帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルを示す。
【0104】
図6(A)、(B)及び図7(A)〜(D)に示す波長スペクトルのピーク位置に、1、2、3、4の番号を付し、番号ごとに対応するピークに識別模様を付してあるが、これらの番号を付したそれぞれのピーク位置が、加入者ノード(12-1〜12-4)に割り当てられた符号を特徴付けているブラッグ反射波長である。
【0105】
図6(A)と図6(B)に示す波長スペクトルの形状は互いに相似形である。すなわち、図6(B)に示す波長スペクトルのピーク強度は、図6(A)に示す波長スペクトルのピーク強度が一定の比で縮小されている。これは、加入者ノードに設置された復号器の動作波長と、各加入者ノードに対応する局舎ノードの符号器の動作波長が合致しているため、当該加入者ノード宛に送信された信号波長成分のみが、各加入者ノードにおいて等しい比率で抜き取られた結果を反映している。
【0106】
図7(A)〜(D)に示すように、特定のブラッグ反射波長のピーク強度が他のブラッグ反射波長のピーク強度と比較して、第1基準波長スペクトルとの相似性が破れる程度にその強度が大きい場合は、強度の大きいピークに対応するブラッグ反射波長が符号として割り当てられた加入者ノードに配置された復号器の動作波長が、周囲温度等の変動に起因してずれが生じたものと理解される。この場合、当該ブラッグ反射波長が符号として割り当てられた加入者ノードにおいては、送信された光信号を十分に取り込めず、当該加入者ノードを通過して帰還残渣第1光多重信号に含まれて局舎ノード10に帰還したものと考えられる。
【0107】
従って、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルにおいて、第1基準波長スペクトルとの相似性が破れる程度にその強度が大きいピークが観測された場合は、そのピークに対応するブラッグ反射波長が符号として割り当てられた加入者ノードが特定される。そこで、局舎ノード10に設置された、当該加入者ノードに対応する符号器の温度を制御することによって、当該符号器の動作波長を調整することで、当該加入者ノードに配置された復号器と局舎ノード10に設置された符号器との互いの動作波長を合致させることができる。この操作が符号器動作波長調整ステップである。
【0108】
図7(A)〜(D)に示す波長スペクトルは、それぞれ加入者ノード(12-1〜12-4)の復号器と局舎ノード10にこれらの復号器に対応させて設置された符号器の動作波長間でずれが生じた場合の帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルであるので、それぞれ1、2、3、4の番号が付したピーク位置が第1基準波長スペクトルとの相似性が破れる程度にその強度が大きい。
【0109】
スペクトルモニタ42で、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルとして図7(A)〜(D)に示す波長スペクトルが観測された場合、それぞれ、強度の大きいピークに対応するブラッグ反射波長が符号として割り当てられた加入者ノードに対応する、局舎ノード10に設置された符号器の動作波長を調整することで、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの形状を第1基準波長スペクトルの形状の相似形に近づくよう制御できる。
【0110】
スペクトルモニタ42による帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの観測を、例えば次のように行うことができる。
【0111】
スペクトルモニタ42は、局舎ノード10の合波器22から出力される第1光多重信号23の波長スペクトルを観測し、波長λとこのλの値に対応する光強度の値Iとの数値の組(λ,I)として(λ+Δλ,I1)、(λ+2Δλ,I2)、…、(λ+nΔλ,In)という数値の組の集合を、スペクトルモニタ42が備える一時記憶装置(図示を省略してある。)に取り込む。
【0112】
(λ+Δλ,I1)、(λ+2Δλ,I2)、…、(λ+nΔλ,In)という数値の組の集合として取り込まれた情報から、ピークの位置と強度(1λp1,1Ips1)、(1λp2,1Ips2,)、…、(1λpM ,1IpsM)情報を読み取り、この情報も、予めスペクトルモニタ42が備える一時記憶装置に記憶する。ここで、Mは1以上の整数であり、波長スペクトルのピークを短波長側から長波長側にわたって指定するためのパラメータである。
【0113】
数値の組(λ,I)として取り込まれた、第1光多重信号23の波長スペクトルから、ピークの位置と強度(1λp1,1Ips1)、(1λp2,1Ips2)、…、(1λpM,1IpsM)情報を読み取ることは、周知のアルゴリズムによって実行できる。例えば、(λ+Δλ,I1)、(λ+2Δλ,I2)、…、(λ+nΔλ,In)という数値の組の集合を、強度Iの波長λに関する関数としてスムージング処理を施して、このスムージング処理を施して得られた関数I(λ)をλに関して微分処理を施し、関数I(λ)の極大を求める処理を施せばよい。
【0114】
符号器動作波長調整ステップにおいて基準とされる第1基準波長スペクトルは、例えば次のように設定する。
【0115】
まず、第1光多重信号23が減衰を受けて再び局舎ノード10に戻った信号が帰還残渣第1光多重信号であるので、この減衰の大きさを予め測定する。
【0116】
局舎ノード10の分波器32に入力される信号を局舎ノード入力信号39に含まれる帰還残渣第1光多重信号をスペクトルモニタ42で観測しつつ、局舎ノード10に加入者ノード(12-1〜12-N)に一対一に対応させて設置されている符号器の動作波長を帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルのピークが最小となるように順次調整する。この調整は、波長制御部40が実行するプログラムにより自動的に、あるいは、オペレータの操作により手動で行われる。
【0117】
減衰の大きさを測定するには、例えば、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルのピークが最小となるように調整された状態で、第1光多重信号23の波長スペクトルのピークの位置と強度(1λp1,1Ips1)、(1λp2,1Ips2)、…、(1λpM,1IpsM)と、局舎ノード入力信号39に含まれる第1光多重信号23の波長スペクトル成分のピークの位置と強度(1λp1,1Ips1')、(1λp2,1Ips2')、…、(1λpM,1IpsM')を比較することによって行うことができる。
【0118】
すなわち、局舎ノード10の符号器に対応するブラッグ波長のピークを適宜選んで、このブラッグ波長に対する、局舎ノード10の合波器22から出力される第1光多重信号23の波長スペクトルのピーク強度1Ipsiと、局舎ノード入力信号39に含まれる第1光多重信号23の波長スペクトル(帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトル)のピーク強度1Ipsi'との比R(=1Ipsi'/1Ipsi)を求め、この比を減衰比と設定する。ここで、iは選択した符号器に対応するブラッグ波長の強度を指定するパラメータ1〜Mの何れかである。比Rを求めるに当っては、(1λp1,1Ips1')、(1λp2,1Ips2')、…、(1λpM,1IpsM')の内、ピーク強度1Ipsi'が最大となるピークを指定するのが好ましい。
【0119】
そして、第1基準波長スペクトルのピークの位置と強度情報として(1λp1,R1Ips1)、(1λp2,R1Ips2)、…、(1λpM,R1IpsM)の組を確定させて、スペクトルモニタ42が備える一時記憶装置に記憶させる。
【0120】
光符号分割多重ネットワークシステムの運用状態において、波長スペクトル測定ステップ及び符号器動作波長調整ステップを実行するには、以下のように行う。
【0121】
スペクトルモニタ42によって、帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルを、(1λ+Δλ,1Ip1’)、(1λ+2Δλ,1Ip2')、…、(1λ+nΔλ,1Ipn')という数値の組の集合として取り込んで、ピークの位置と強度を与える(1λp1,1Ip1)、(1λp2,1Ip2)、…、(1λpM,1IpM)の組を確定する。そして、第1基準波長スペクトルのピークの位置と強度情報である(1λp1,R1Ips1)、(1λp2,R1Ips2)、…、(1λpM,R1IpsM)の組を読み出して、1Ip1/R1Ips1, 1Ip2/R1Ips2,…、1IpM/R1IpsMのそれぞれの値を演算することによって、これらの値のうち予め設定した基準値αを上回る値をとるピークを検出する。この検出されたピーク位置を示す波長(ピーク波長)が第1基準波長スペクトルとの相似性が破れる程度にその強度が大きいピークであると判定される。
【0122】
例えば、基準値αを1.1と設定すれば、符号器の動作波長のずれによりこの符号器に対応するピーク強度が10%を超えて大きくなった場合に符号器の動作波長の調整が行われる。すなわち、波長スペクトルのピーク強度が10%以内の変動に収まるように制御される。
【0123】
すなわち、判定されたピークに対応するブラッグ反射波長が復号器の符号として割り当てられた加入者ノードが特定される。スペクトルモニタ42は、この判定されたピーク波長を示す信号43を、動作波長コントローラ44に送る。この信号43を受け取った動作波長コントローラ44は、対応する符号器の温度を制御することによって、この符号器の動作波長を制御する。
【0124】
動作波長コントローラ44による符号器の温度制御は、山登り法、最急降下法等の周知の最適化アルゴリズムによって実行される。
【0125】
SSFBGの動作波長は、温度あるいは張力に依存する。従って、局舎ノード10に設置された符号器の動作波長を調整するには、この符号器を構成するSSFBGの温度及び張力の少なくとも一方を制御すればよい。
【0126】
次に、図8及び図9(A)〜(D)を参照して、復号器動作波長調整ステップについて説明する。復号器動作波長調整ステップは、第2光多重信号の波長スペクトルの形状が、第2基準波長スペクトルの形状の合同形に近づくように、局舎ノードに設置された復号器の動作波長を調整するステップである。第2基準波長スペクトルとは、各加入者ノードで符号化光送信信号の生成に利用された符号器とこの符号器に対応する局舎ノードに設置された復号器の動作波長が合致しているときに実現される局舎ノード入力信号39の波長スペクトルの形状である。
【0127】
図8は、各加入者ノードの符号器の動作波長と、これらの符号器と対応する局舎ノード10に設置された復号器の動作波長が合致しているときに実現される第2基準波長スペクトルの波長スペクトルを示す。
【0128】
図9(A)〜(D)は、それぞれ加入者ノード(12-1〜12-4)の符号器と、局舎ノード10にこの符号器に対応させて設置された復号器の動作波長間でずれが生じた場合の第2光多重信号の波長スペクトルを示す。
【0129】
図8及び図9(A)〜(D)に示す波長スペクトルのピーク位置に、1、2、3、4の番号が付してあるが、これらの番号を付したそれぞれのピーク位置が、加入者ノード(12-1〜12-4)に割り当てられた符号を特徴付けているブラッグ反射波長である。
【0130】
図9(A)〜(D)に示すように、第2基準波長スペクトルのピーク位置におけるピーク強度が減少し、第2基準波長スペクトルのピーク位置以外の位置にピークが現れている場合は、強度が減少しているピークに対応するブラッグ反射波長が符号として割り当てられた加入者ノードに配置された符号器の動作波長が、周囲温度等の変動に起因してずれが生じていることを意味している。図9(A)〜(D)に、第2基準波長スペクトルのピーク位置以外の位置に現れているピークを×印で示してある。
【0131】
従って、スペクトルモニタ42で観測された第2光多重信号の波長スペクトルにおいて、第2基準波長スペクトルとの合同性が破れる程度に第2基準波長スペクトルのピーク位置のピーク強度の減少が観測された場合は、減少したピークに対応するブラッグ反射波長が符号として割り当てられた加入者ノードに配置された符号器が特定される。そこで、局舎ノード10に設置された、当該加入者ノードに配置された符号器に対応する復号器の動作波長を、当該復号器の温度あるは張力を制御することによって調整することで、当該加入者ノードに配置された符号器と局舎ノード10に設置された復号器との互いの動作波長を合致させることができる。この操作が復号器動作波長調整ステップである。
【0132】
図9(A)〜(D)に示す波長スペクトルは、それぞれ加入者ノード(12-1〜12-4)の符号器と局舎ノード10にこれらの符号器に対応させて設置された復号器の動作波長間でずれが生じた場合の第2光多重信号の波長スペクトルであるので、それぞれ1、2、3、4の番号が付したピーク位置が第2基準波長スペクトルとの合同性が破れる程度にその強度が大きい。
【0133】
スペクトルモニタ42で、第2光多重信号の波長スペクトルとして図9(A)〜(D)に示す波長スペクトルが観測された場合、それぞれ、加入者ノード(12-1〜12-4)の符号器に対応させて局舎ノード10に設置された復号器の動作波長を調整することで、第2光多重信号の波長スペクトルの形状を第2基準波長スペクトルの形状の合同形に近づくよう制御できる。
【0134】
復号器動作波長調整ステップについても上述の符号器動作波長調整ステップと同様に、スペクトルモニタ42によって第2光多重信号の波長スペクトルの観測を行うことによって実行できる。
【0135】
復号器動作波長調整ステップにおいて基準とされる第2基準波長スペクトルは、例えば次のように設定する。
【0136】
局舎ノード10の分波器32に入力される信号を、局舎ノード入力信号39に含まれる第2光多重信号をスペクトルモニタ42で観測しつつ、局舎ノード10に加入者ノード(12-1〜12-N)の備える符号器に一対一に対応させて設置されている復号器の動作波長を、第2基準波長スペクトルの波長スペクトルのピークが最大となるように順次調整する。この調整は、波長制御部40が実行するプログラムにより自動的に、あるいは、オペレータの操作により手動で行われる。
【0137】
このように調整された状態で、第2光多重信号を、スペクトルモニタ42が備える一時記憶装置に第2基準波長スペクトルのピークの位置と強度(2λp1,2Ips1)、(2λp2,2Ips2)、…、(2λpM,2IpsM)情報として記憶しておく。
【0138】
光符号分割多重ネットワークシステムの運用状態において、波長スペクトル測定ステップ及び復号器動作波長調整ステップを実行するには、以下のように行う。
【0139】
スペクトルモニタ42によって、第2光多重信号の波長スペクトルを、(2λ+Δλ,2I1)、(2λ+2Δλ,2I2)、…、(2λ+nΔλ,2In)という数値の組の集合として取り込んで、ピークの位置と強度情報(2λp1,2Ip1)、(2λp2,2Ip2)、…、(2λpM,2IpM)を確定する。そして、第2基準波長スペクトルのピークの位置と強度の情報である(2λp1,2Ips1)、(2λp2,2Ips2)、…、(2λpM,2IpsM)を読み出して、2Ip1/2Ips1, 2Ip2/2Ips2,…、2IpM/2IpsMのそれぞれの値を演算する。そして、これらの値のうち予め設定した基準値βを下回る値をとるピークを検出する。この検出されたピーク位置を示す波長(ピーク波長)が第2基準波長スペクトルとの合同性が破れる程度にその強度が小さいピークであると判定される。
【0140】
例えば、基準値βを0.9と設定すれば、加入者ノードが備える符号器の動作波長のずれによりこの符号器に対応するピーク強度が10%以上小さくなった場合に局舎ノードが備える復号器の動作波長の調整が行われる。すなわち、波長スペクトルのピーク強度が10%以内の変動に収まるように制御される。
【0141】
加入者ノードに配置された符号器の動作波長にずれが生じると、第2基準波長スペクトルのピーク位置におけるピーク強度が減少し、第2基準波長スペクトルのピーク位置以外の位置にピークが現れるが、この波長ずれが解消されれば、このピークは消滅する。従って、復号器動作波長調整ステップにおいても、この符号器に割り当てられた第2基準波長スペクトルのピーク位置におけるピーク強度が最大となるように調整される。
【0142】
復号器動作波長調整ステップにおいても、同様に、スペクトルモニタ42は、強度が小さいと判定されたピーク波長を示す信号43を、動作波長コントローラ44に送る。この信号43を受け取った動作波長コントローラ44は、対応する復号器の温度を制御することによって、この復号器の動作波長を制御する。
【0143】
上述の基準値α及びβは、光符号分割多重ネットワークシステムの加入者ノードの数、復号化の精度等を総合的に勘案して、局舎ノードと加入者ノードとの間の最低限の通信品質が確保されるように設定されるべき値である。
【0144】
動作波長コントローラ44による復号器の温度制御は、上述の符号器の温度制御と同様に、山登り法、最急降下法等の周知の最適化アルゴリズムによって実行される。
【0145】
また、SSFBGの動作波長の調整を可能とするSSFBG光パルス拡散器としては、例えば、ベース部材にSSFBGを固定して、ベース部材の温度を制御するサーモモジュールを備えて構成すればよい。このサーモモジュールを、局舎ノードの波長制御部40が備える動作波長コントローラ44によって制御すれば、SSFBGの動作波長を制御することが可能である。動作波長コントローラ44からサーモモジュールに対して、上述の符号器動作波長調整ステップ及び復号器動作波長調整ステップで必要とされる温度調整をするための制御信号を送り、サーモモジュールがこの制御信号に応じてSSFBGの温度制御をする温度制御システムを形成すればよい。
【符号の説明】
【0146】
10:局舎ノード
12-1〜12-N:加入者ノード
16、76:変調器
18、74:符号器
20、70:送信部
22:合波器
24-1〜24-N、72:光符号変調部
26、80:パルス光源部
28、38、78、90:光サーキュレータ
30、60:受信部
32、45、48:分波器
34-1〜34-N:光復号受信部
36、64:レシーバ
40:波長制御部
42:スペクトルモニタ
44:動作波長コントローラ
46、62:復号器
82:アイソレータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
局舎ノードと複数台の加入者ノードがリング状に接続され、前記局舎ノードと前記加入者ノードとの間で光符号分割多重通信を行う光ネットワークシステムに備わる局舎ノードであって、
前記各加入者ノードに一対一に対応させてそれぞれ割り当てられた相異なる固有の符号が設定された符号器で前記加入者ノードごとに光送信信号を符号化して符号化光送信信号を生成し、該符号化光送信信号を多重して第1光多重信号を生成して出力する送信部と、
前記第1光多重信号が、前記加入者ノードの全てを経由して再び前記局舎ノードに戻った帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの形状が、該第1光多重信号の波長スペクトルの形状に対して相似形に近づくように前記符号器の動作波長を調整する波長制御部と
を備えることを特徴とする局舎ノード。
【請求項2】
局舎ノードと複数台の加入者ノードがリング状に接続され、前記局舎ノードと前記加入者ノードとの間で光符号分割多重通信を行う光ネットワークシステムであって、
前記局舎ノードは、
前記各加入者ノードに一対一に対応させてそれぞれ割り当てられた相異なる固有の符号が設定された符号器で前記加入者ノードごとに光送信信号を符号化して符号化光送信信号を生成し、該符号化光送信信号を多重して第1光多重信号を生成して出力する送信部と、
前記各加入者ノードからそれぞれ相異なる固有の符号で符号化されて出力される符号化光送信信号が多重されて送られてくる第2光多重信号を、前記各加入者ノードに対応する復号器で前記加入者ノードごとに復号化して受信する受信部と、
前記第1光多重信号が、前記加入者ノードの全てを経由して再び前記局舎ノードに戻った帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルに基づいて前記符号器の動作波長を調整すると共に、前記第2光多重信号の波長スペクトルに基づいて前記復号器の動作波長を調整する波長制御部と
を備えることを特徴とする光符号分割多重ネットワークシステム。
【請求項3】
前記波長制御部は、
前記帰還残渣第1光多重信号、及び前記第2光多重信号のそれぞれの波長スペクトルを測定するスペクトルモニタと、
前記帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの形状が、前記加入者ノードに設置された復号器の動作波長と、前記各加入者ノードに対応する前記符号器の動作波長が、合致しているときに実現される波長スペクトルである第1基準波長スペクトルの形状に近づくように、前記符号器の動作波長を調整し、前記第2光多重信号の波長スペクトルの形状が、前記各加入者ノードで符号化光送信信号の生成に利用された符号器と、当該符号器に対応する、当該局舎ノードに設置された前記復号器の動作波長が合致しているときに実現される波長スペクトルである第2基準波長スペクトルの形状に近づくように、前記復号器の動作波長を調整する動作波長コントローラと
を備えることを特徴とする請求項2に記載の光符号分割多重ネットワークシステム。
【請求項4】
前記加入者ノードは、
当該加入者ノードに割り当てられた固有の符号が設定された符号器で光送信信号を符号化して符号化光送信信号を生成して出力する送信部と、
前記第1光多重信号と、当該加入者ノード以外の加入者ノードの一部又は全てから出力される符号化光送信信号が多重された光多重信号を取り込んで、当該加入者ノードに割り当てられた固有の符号が設定された復号器で前記局舎ノードから当該加入者ノードに宛てて送信された符号化光送信信号を復号化して受信する受信部と
を備え、
前記光多重信号に含まれる、当該加入者ノードに割り当てられた固有の符号で符号化され前記局舎ノードから送信された符号化光送信信号成分を除いた信号成分を、前記局舎ノードの直近の後段に接続された加入者ノードに送り渡す
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の光符号分割多重ネットワークシステム。
【請求項5】
局舎ノードと複数台の加入者ノードがリング状に接続され、前記局舎ノードと加入者ノードとの間で光符号分割多重通信を行う光符号分割多重ネットワークシステムの、前記局舎ノードが行う、
前記加入者ノードごとに相異なる符号で光送信信号を符号化して符号化光送信信号を生成する、前記各加入者ノードに一対一に対応させてそれぞれ相異なる固有の符号が設定された符号器、及び前記各加入者ノードの符号化光送信信号をそれぞれ復号化する、前記各加入者ノードに割り当てられた固有の符号が設定された復号器の動作安定化方法であって、
前記各加入者ノードの符号化光送信信号が多重された第1光多重信号が、前記加入者ノードの全てを経由して再び前記局舎ノードに戻った帰還残渣第1光多重信号、及び前記各加入者ノードから出力される符号化光送信信号が多重された第2光多重信号のそれぞれの波長スペクトルを測定する波長スペクトル測定ステップと、
前記帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルに基づいて前記符号器の動作波長を調整すると共に、前記第2光多重信号の波長スペクトルに基づいて前記復号器の動作波長を調整する波長制御ステップと
を含むことを特徴とする符号器及び復号器の動作安定化方法。
【請求項6】
前記波長制御ステップは、
前記帰還残渣第1光多重信号の波長スペクトルの形状が、前記加入者ノードに設置された復号器の動作波長と、前記各加入者ノードに対応する前記符号器の動作波長が合致しているときに実現される波長スペクトルである第1基準波長スペクトルの形状に近づくように前記符号器の動作波長を調整する符号器動作波長調整ステップと、
前記第2光多重信号の波長スペクトルの形状が、前記各加入者ノードで符号化光送信信号の生成に利用された符号器と、当該符号器に対応する、当該局舎ノードに設置された前記復号器の動作波長が合致しているときに実現される波長スペクトルである第2基準波長スペクトルの形状に近づくように前記復号器の動作波長を調整する復号器動作波長調整ステップと
を含むことを特徴とする請求項5に記載の符号器及び復号器の動作安定化方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−195916(P2012−195916A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60402(P2011−60402)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/広域加入者系光ネットワーク技術の研究開発 課題イ 適応ネットワーク構成技術」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】