説明

光結合素子およびそれを備えたフォトリフラクティブ素子ならびに光情報処理装置

操作性・機能性に優れていて容易かつ高効率でフォトリフラクティブ媒質内に光干渉縞を発生可能なフォトリフラクティブ素子を実現するための光結合素子およびそれを備えたフォトリフラクティブ素子ならびに光情報処理装置を提供する。フォトリフラクティブ媒質へ入射される書き込み光に対して所定の傾きに設定された入射面を備えた台形状のプリズムよりなり、上記フォトリフラクティブ媒質の少なくとも一方の面側に配置される光結合素子である。フォトリフラクティブ素子は、フォトリフラクティブ媒質の少なくとも一方の面側に上記光結合素子を配設している。光情報処理装置は、フォトリフラクティブ媒質の少なくとも一方の面側に上記光結合素子を配設したフォトリフラクティブ素子を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光結合素子およびそれを備えたフォトリフラクティブ素子ならびに光情報処理装置に関し、さらに詳細には、フォトリフラクティブ素子に用いて好適な光結合素子およびそれを備えたフォトリフラクティブ素子ならびに光情報処理装置に関し、特に、フォトリフラクティブ素子を構成するフォトリフラクティブ媒質内において光干渉縞を容易かつ高効率に発生することを可能にした光結合素子およびそれを備えたフォトリフラクティブ素子ならびに光情報処理装置に関する。
ここで、フォトリフラクティブ媒質には、フォトリフラクティブ媒質内における光干渉縞の形成により該フォトリフラクティブ媒質内に発生した電荷の移動を、外部から電界を加えることにより促進してフォトリフラクティブ効果を増大させるフォトリフラクティブ媒質(本明細書においては、「外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質」と称する。)と、外部から電界を加えることなしにフォトリフラクティブ媒質内に誘起された拡散電界のみにより促進してフォトリフラクティブ効果を増大させるフォトリフラクティブ媒質(本明細書においては、「内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質」と称する。)とが知られている。そして、本明細書においては、これら外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質と内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質とを総称して、単に「フォトリフラクティブ媒質」と称するものとする。
また、本明細書においては、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質を用いたフォトリフラクティブ素子を「外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子」と称し、内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質を用いたフォトリフラクティブ素子を「内部電界駆動型フォトリフラクティブ素子」と称するものとし、これら外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子と内部電界駆動型フォトリフラクティブ素子とを総称して、単に「フォトリフラクティブ素子」と称するものとする。
なお、一般に、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質としてはガラス転移温度が室温付近かそれよりも低いか、あるいはそれ以上の材料を用い、一方、内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質としてはガラス転移温度が室温よりも十分に高い材料を用いる。
【背景技術】
一般に、フォトリフラクティブ素子において、フォトリフラクティブ効果の性能を増大化させるためには、フォトリフラクティブ素子に対する2本の書き込み光の照射によってフォトリフラクティブ媒質内に形成された光干渉縞の格子ベクトル方向に、より大きな電界(実効駆動電界)を印加する必要があることが知られている。即ち、光干渉縞の格子ベクトル方向に実効駆動電界を印加することにより、応答振幅の増大や応答速度の高速化などが期待できるからである。
なお、2本の書き込み光をフォトリフラクティブ素子に照射すると、光干渉縞は、フォトリフラクティブ媒質内において2本の書き込み光の2等分線と平行に発生される。
ここで、図1には、従来の外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子の概念構成説明図が示されている。
この図1に示す外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10は、略長方体状の外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12と、一対の略平板状の透明基板14a、14bと、一対の略平板状の透明基板14a、14bにそれぞれ取り付けられた一対の略平板状の透明電極16a、16bとを有して構成されている。
そして、透明基板14aに取り付けられた透明電極16aと透明基板14bに取り付けられた透明電極16bとの間に、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12が挟持されている。より詳細には、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12と透明電極16a、16bとは、略長方体状の外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の一方の面と透明基板14aに取り付けられた略平板状の透明電極16aの平面とが当接するように配置され、略長方体状の外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の一方の面と対向する他方の面と透明基板14bに取り付けられた略平板状の透明電極16bの平面とが当接するように配置されている。
なお、こうした構成の外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子の構造は、一般にサンドイッチ型セル構造と称されている。
また、符号18は、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12に外部から電界を加えるために一対の透明電極16a、16bにそれぞれ接続された電源である。
従来、この外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10に光干渉縞を形成するための書き込み光を照射するには、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の片面側、例えば、図1に示すように一方の透明基板14a側から2本の書き込み光を照射する。2本の書き込み光を外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10に照射すると、光干渉縞は、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内において2本の書き込み光の2等分線と平行に発生される。なお、こうした書き込み光の配置を、一般にチルト型配置と称する。
この図1に示すチルト型配置においては、上記したように光干渉縞形成用の2本の書き込み光が外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10の片面側から入射されるものであるが、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内に形成される光干渉縞に駆動電界を加えるために、光干渉縞の格子ベクトルが電源18により印加される外部印加電界ベクトルに対して傾斜角θ(<90°)だけ傾く(チルトする)ように、書き込み光の入射角を選択する。
このようにすると、光干渉縞の格子ベクトル方向に加えられる実効駆動電界は、電源18により印加される外部印加電界の余弦成分として与えられることになる。従って、光干渉縞の格子ベクトル方向に加えられる実効駆動電界を大きくするためには、傾斜角θを限りなく0に近づけることが必要となる。
しかしながら、この図1に示すチルト型配置においては、傾斜角θを十分に小さくすることができないという問題点があった。
即ち、傾斜角θを小さくしていくと書き込み光の入射角が大きくなり、このため透明基板14aの表面での書き込み光の反射損が大きくなってしまい、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内に書き込み光が到達できなくなるからである。そのため、結果として実効駆動電界成分を十分に大きくすることができないものであった。なお、従来においては、傾斜角θは一般的に30°前後で利用されることが多く、この場合には実効駆動電界として外部印加電界の50%ほどしか利用できないものであった。
このように、従来から用いられているサンドイッチ型セル構造のフォトリフラクティブ素子と書き込み光のチルト型配置との組み合わせは、フォトリフラクティブ性能を最大化させることができないシステムであるという問題点があった。
こうした問題点に鑑みて、フォトリフラクティブ性能を最大化させることを目的とした手法が提案されている(例えば、特許文献1として提示する特開平7−140499号公報の第3−5頁ならびに図1および図13を参照する。)。
しかしながら、上記した特許文献1に開示された手法においては、操作性・機能性を備えて容易かつ高効率に光干渉縞を発生可能な具体的な素子化については開示されておらず、操作性・機能性に優れていて容易かつ高効率でフォトリフラクティブ媒質内に光干渉縞を発生可能なフォトリフラクティブ素子を実現するための手法の提案が強く望まれていた。
本発明は、上記したような発明の背景ならびに従来の技術の有する問題点や従来の技術に対する要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作性・機能性に優れていて容易かつ高効率でフォトリフラクティブ媒質内に光干渉縞を発生可能なフォトリフラクティブ素子を実現するための光結合素子およびそれを備えたフォトリフラクティブ素子ならびに光情報処理装置を提供しようとするものである。
【発明の開示】
上記目的を達成するために、本発明による光結合素子は、例えば、従来から用いられているサンドイッチ型セル構造と組み合わせることで、フォトリフラクティブ媒質内に、最適に配置された光干渉縞、即ち、傾斜角θが0°となるように配置された光干渉縞の形成を容易かつ高効率で実現することができるものである。
また、上記目的を達成するために、本発明によるフォトリフラクティブ素子は、本発明による光結合素子を用いてフォトリフラクティブ素子を構成したものである。
さらに、上記目的を達成するために、本発明による光情報処理装置は、本発明によるフォトリフラクティブ素子を用いて光情報処理装置を構成したものである。
即ち、本発明は、フォトリフラクティブ媒質へ入射される書き込み光に対して所定の傾きに設定された入射面を備えた台形状のプリズムよりなり、上記フォトリフラクティブ媒質の少なくとも一方の面側に配置される光結合素子である。
また、本発明による光結合素子は、上記入射面の傾きを、上記書き込み光の上記フォトリフラクティブ媒質への入射により上記フォトリフラクティブ媒質内に形成される光干渉縞の所望の周期に応じて設定するようにしたものである。
また、本発明は、フォトリフラクティブ媒質の少なくとも一方の面側に、本発明による光結合素子を配設したフォトリフラクティブ素子である。
また、本発明によるフォトリフラクティブ素子は、上記光結合素子が、略長方体状のフォトリフラクティブ媒質の一方の面側と該一方の面側と対向する他方の面側とにそれぞれ配置され、上記フォトリフラクティブ媒質の厚さ方向に対して垂直、かつ、上記厚さの中心を通る面に対して鏡像をなす方向から照射される2本の書き込み光のうちの一方を上記フォトリフラクティブ媒質の一方の面側に配置された光結合素子の入射面に入射し、上記2本の書き込み光のうちの他方を上記フォトリフラクティブ媒質の上記一方の面側と対向する上記他方の面側に配置された光結合素子の入射面に入射するようにしたものである。
また、本発明は、2次元符号化装置と、空間変調器制御装置と、空間変調器と、フォトリフラクティブ素子とを有し、入力信号を上記2次元符号化装置と上記空間変調器制御装置とを通して上記空間変調器へ入力して、上記フォトリフラクティブ素子への2本の書き込み光が入射される上記空間変調器により該2本の書き込み光のいずれか一方または双方を制御する光情報処理装置において、フォトリフラクティブ素子が、本発明によるフォトリフラクティブ素子である光情報処理装置である。
また、本発明による光情報処理装置は、上記フォトリフラクティブ素子が本発明によるフォトリフラクティブ素子であり、単一の上記空間変調器により上記フォトリフラクティブ素子への2本の書き込み光を制御するようにしたものである。
また、本発明は、2次元符号化装置と、空間変調器制御装置と、空間変調器と、フォトリフラクティブ素子とを有し、入力信号を上記2次元符号化装置と上記空間変調器制御装置とを通して上記空間変調器へ入力して、上記フォトリフラクティブ素子への2本の書き込み光が入射される上記空間変調器により該2本の書き込み光を制御する光情報処理装置において、フォトリフラクティブ素子は、チルト型配置により2本の書き込み光を入射するものであり、上記2次元符号化装置と上記空間変調器制御装置との間に斜め画像補正回路を有し、上記斜め画像補正回路の補正により単一の上記空間変調器によって上記2本の書き込み光の画像変調を行う光情報処理装置である。
【図面の簡単な説明】
図1は、従来の外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子の概念構成説明図である。
図2は、本発明による光結合素子を備えた本発明によるフォトリフラクティブ素子としての外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子の概念構成斜視説明図である。
図3は、図2のA矢視図(側面図)であり、図1に示す図面に対応する。
図4は、(a)は本発明による光結合素子としてのプリズムの斜視図であり、(b)は(a)のB矢視図(側面図)である。
図5は、図2乃至図3に示す本発明による外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子における光干渉縞の形成を示す説明図である。
図6は、本発明による外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子についての書き込み光入射側の頂角αと透過光の全損失との計算結果の一例を示すグラフである。
図7は、本発明による外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子による2光波結合実験の実験結果を示すグラフである。
図8は、光情報処理として光相関法を積極的に利用した光メモリ、画像認識(パターンマッチング)ならびにリアルタイム劣化画像クリーニングを行うための装置構成を示す本発明による光情報処理装置である。
図9は、光情報処理として動体検出あるいは動画像のリアルタイム増幅を行うための装置構成を示す本発明による光情報処理装置である。
図10は、従来の光情報処理装置における、図8に示す本発明による光情報処理装置の符号Cに相当する構成を示す説明図である。
図11は、図8に示す符号Cの構成のみを取り出して示した要部拡大図である。
図12は、斜め画像補正回路を備えた従来の外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子を用いた光情報処理装置の構成の要部を示す説明図である。
図13は、本発明による光結合素子を備えた本発明によるフォトリフラクティブ素子としての内部電界駆動型フォトリフラクティブ素子の説明図である。
図14は、本発明による光結合素子を備えた本発明によるフォトリフラクティブ素子としての外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子であって、透明基板を備えていないものの説明図である。
図15は、本発明による光結合素子を備えた本発明によるフォトリフラクティブ素子としての内部電界駆動型フォトリフラクティブ素子であって、透明基板を備えていないものの説明図である。
図16は、(a)は本発明による光結合素子を備えた本発明によるフォトリフラクティブ素子としての外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子であって、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質の一方の面にのみ光結合素子としてプリズムを配設したものの概念構成斜視説明図であり、(b)は(a)のD矢視図(側面図)である。
【符号の説明】
10、100 外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子
12 外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質
14a、14b 透明基板
16a、16b 透明電極
18 電源
102a、102b プリズム
104a、104b 書き込み光の入射面
106a、106b 書き込み光の出射面
108a、108b 底面
110a、110b 上面
200、300 中央制御装置
202、208、302 2次元符号化装置
204、210、304 空間変調器制御装置
206、212、306、502 空間変調器
214、308、310 CCDカメラ
216、312 2次元復号化装置
218、220、314 レーザー
222、316 ビームセパレーター
224、226 ハーフミラー
400a、400b 空間変調器
500 斜め画像補正回路
【発明を実施するための最良の形態】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による光結合素子およびそれを備えたフォトリフラクティブ素子ならびに光情報処理装置の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。なお、本明細書における説明ならびに添付の図面において、それぞれ同一あるいは相当する構成や内容については、それぞれ同一の符号を用いて示すことにより、その構成ならびに作用に関する重複する説明は省略する。
図2には、本発明による光結合素子を備えた本発明によるフォトリフラクティブ素子として、外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子の概念構成斜視説明図が示されており、図3には図2のA矢視図(側面図)が示されている(図3に示す図面は、図1に示す図面に対応する。)。
この図2に示す外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100は、本発明による光結合素子として、一対の台形状、より詳細には、四角錐台形状のプリズム102a、102bを備えている点において、図1に示す外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10とは異なる。
即ち、外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100は、透明基板14a上に台形状のプリズム102aを配置しており、一方、透明基板14b上に台形状のプリズム102bを配置している。より詳細には、透明基板14aとプリズム102aの底面108a(プリズム102aは、底面108aの面積の方が上面110aの面積より広い台形状である。)とが当接するように配置され、透明基板14bとプリズム102bの底面108b(プリズム102bは、底面108bの面積の方が上面110bの面積より広い台形状である。)とが当接するように配置されている。
ここで、図4(a)にはプリズム102a、102bの斜視図が示されており、図4(b)には図4(a)のB矢視図(側面図)が示されている。
プリズム102a、102bは、書き込み光入射側の頂角α(α<90°)と、書き込み光出射側の頂角β(β<90°)と、屈折率nと、底辺長Lとを特性パラメータとする側面形状が台形の台形状のプリズムである。即ち、プリズム102a、102bの書き込み光の入射面104a、104bは、底面108a、108bに対してαの傾斜を備え、プリズム102a、102bの書き込み光の出射面106a、106bは、底面108a、108bに対してβの傾斜を備えている。
プリズム102a、102bを構成する材料としては、光学的に透明であって切断ならびに研磨などの加工が可能な固体を用いるものであり、例えば、無機ガラスやポリマーなどを用いることができる。さらに詳細に説明すれば、無機ガラスとしては、例えば、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスあるいは鉛ガラスなどがある。また、ポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネートあるいはポリビニルカルバゾールなどがある。
ここで、プリズム102a、102bにおける特性パラメータのうち書き込み光入射側の頂角αと書き込み光出射側の頂角βと屈折率nとは、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12に形成される光干渉縞の周期Λと、外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100全体の透過率Tと、光入出力結合率(なお、光入出力結合率とは、フォトリフラクティブ素子に入射される書き込み光のパワーに対するフォトリフラクティブ素子から出射された光のパワーの割合を示すものである。)とを決定するためのパラメータである。なお、書き込み光入射側の頂角α、書き込み光出射側の頂角β、屈折率n、光干渉縞の周期Λ、フォトリフラクティブ素子全体の透過率Tならびに光入出力結合率の関係については、後に詳述する。
以上の構成において、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内に光干渉縞を発生させるには、図5に示すように、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の厚さt方向に対して垂直、かつ、厚さtの中心を通る面に対して鏡像をなす方向から2本の書き込み光をプリズム102a、102bの入射面104a、104bにそれぞれ入射する。
即ち、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の厚さt方向に対して垂直、かつ、厚さtの中心を通る面に対して鏡像をなす方向から照射される2本の書き込み光のうちの一方をプリズム102aの入射面104aに入射し、他方をプリズム102bの入射面104bに入射する。
上記したように、2本の書き込み光が、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の厚さt方向に対して垂直、かつ、厚さtの中心を通る面に対して鏡像をなす方向からプリズム102a、102bの入射面104a、104bにそれぞれ入射されると、2本の書き込み光はプリズム102a、102bにより屈折されて外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内に入射され、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の厚さtの中心を通る面において交差する。
そして、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内に入射されて交差する2本の書き込み光により、フォトリフラクティブ媒質12内において2本の書き込み光の2等分線と平行に光干渉縞が形成される。
なお、フォトリフラクティブ媒質12内に入射された2本の書き込み光は、当該書き込み光が入射したプリズム102a、102bとはそれぞれ異なるプリズム102a、102bへ入射して、それぞれプリズム102a、102bの出射面106a、106bから外部へ出射される。
プリズム102a、102bの入射面104a、104bへそれぞれ入射される2本の書き込み光が平行光である場合において、プリズム102aと102bとが同一の特性パラメータを備えており、かつ、「頂角α=頂角β」であるならば、図5に示すように、プリズム102a、102bの出射面104a、104bからそれぞれ入射される2本の書き込み光は平行光となる。
ここで、2本の書き込み光は外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の厚さt方向に対して垂直、かつ、厚さtの中心を通る面に対して鏡像をなす方向からプリズム102a、102bの入射面104a、104bにそれぞれ入射され、プリズム102a、102bにより屈折されて外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内に入射されているので、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内に発生される光干渉縞の格子ベクトルの方向を、外部印加電界ベクトルの方向と一致させることができる。このため、外部印加電界の全てを実効駆動電界に利用することができるようになる。
なお、上記特許文献1に開示された手法においても、外部印加電界ベクトルの方向と光干渉縞の格子ベクトルの方向とを一致させることができるが、上記特許文献1に開示された手法はプリズム102a、102bのような光結合素子を備えていないので、書き込み光を入射する光学系の配置を変更することなしに、2本の書き込み光の交叉角を任意の大きさに設定することが困難であり、任意の周期の光干渉縞を得ることが難しい。
しかしながら、後述するように、プリズム102a、102bのような光結合素子を備えた本発明によるフォトリフラクティブ素子においては、書き込み光を入射する光学系の配置を変更せずともに、光結合素子の書き込み光入射側の頂角α、即ち、書き込み光の入射面の傾きを適当に選択することにより、2本の書き込み光の任意の交叉角、即ち、任意の周期の光干渉縞を容易に得ることができるものである。
次に、プリズム102a、102bの書き込み光入射側の頂角αと書き込み光出射側の頂角βと屈折率nとは、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の屈折率に対応して、高光入出力結合率、例えば、80%以上の光入出力結合率が得られるように設定することができる。
ここで、書き込み光入射側の頂角αに対して得られる光干渉縞の周期Λについては、次式によって与えられる。
Λ=λ/(2ncosθin
ただし、λは書き込み光として使用する光の波長であり、nは外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の屈折率であり、θinは外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内での屈折角であって次式で表されるものである。

ただし、αはプリズム102a、102bの書き込み光入射側の頂角であり、nはプリズム102a、102bの屈折率である。
次に、フォトリフラクティブ素子100全体、即ち、フォトリフラクティブ媒質12と、一対の透明基板14a、14bと、一対の透明電極16a、16bと、一対のプリズム102a、102bとを有するフォトリフラクティブ素子100の透過率Tは、次式の関係で表される。なお、ここでいう透過率Tとは、入射光パワー1に対して、フォトリフラクティブ素子100を透過して出射した後でのパワーに等しい。

ただし、βはプリズム102a、102bの書き込み光出射側の頂角である。
図6に示すグラフは、上記した式を用いて、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の屈折率1.70に対して光干渉縞の周期0.5μm〜2.0μmを得るために算出した、プリズム102a、102bの書き込み光入射側の頂角αと透過光の全損失との計算結果を示している。この図6に示すグラフにおいては、実線(プリズム102a、102bの書き込み光入射側の頂角αを示す。)および破線(透過光の全損失を示す。)により示す曲線はともに、グラフ中の下からステップ0.25μm刻みで0.5μm〜2.0μmの光干渉縞周期に対応している。
なお、書き込み光入射側の頂角αと書き込み光出射側の頂角βとは、等しいものと仮定する。また、透明基板14a、14bならびに透明電極16a、16bの屈折率は、プリズム102a、102bの屈折率と等しいものと仮定する。
こうした場合に、例えば、周期1.25μmの光干渉縞を外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内に形成するにあたっては、プリズム102a、102bの屈折率nを1.690〜1.737の範囲の値に設定し、プリズム102a、102bの書き込み光入射側の頂角αを57°〜76°の範囲の値に設定することによって、フォトリフラクティブ素子100に入射されて当該フォトリフラクティブ素子100を透過し、当該フォトリフラクティブ素子から出射される透過光、即ち、出射される書き込み光の全損失を20%以下に抑制する、換言すれば、80%以上の高い光入出力結合率を達成することができる。
なお、プリズム102a、102bの底辺長Lについては、例えば、「プリズム102a、102bの屈折率n=1.737」および「プリズム102a、102bの書き込み光入射側の頂角α=57°」として、透明電極16a、16bからの書き込み光の入射光高さを3mmと仮定した場合には、「プリズム102a、102bの底辺長L=27mm」となる。ただし、プリズム102a、102bの書き込み光出射側頂角βの最適化あるいは書き込み光の入射光高さ調整によって、プリズム102a、102bの底辺長Lは短縮化が可能である。
さらに、このプリズム102a、102b、即ち、本発明による光結合素子は、以下の特徴をも有する。
即ち、光干渉縞の周期は、プリズム102a、102bの書き込み光入射側の頂角αの値、換言すれば、プリズム102a、102bの入射面104a、104bの傾きで決定されることになる。従って、光干渉縞の周期を変更したい場合には、書き込み光入射側の頂角αを所望の値に設定したプリズムに交換すればよい。なお、従来のフォトリフラクティブ素子10において光干渉縞の周期を変更したい場合には、書き込み光の外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12への入射角をミラーなどで微調整することが必要であった。しかしながら、本発明による光結合素子を用いれば、所望の頂角αを備えたプリズムに交換するだけでよく、ミラーなどで入射光のビーム配置を一切変更する必要がない。従って、本発明による光結合素子を用いることにより、構成が簡潔で振動に強い光学系の構築が可能となる。
なお、本発明による光結合素子を用いた場合においては、書き込み光入射側の頂角αを変更せずとも、光結合素子へ入射される書き込み光の波長を変更することにより、光干渉縞の周期を変更することもできる。
次に、本願発明者により行われた実験結果について説明するが、この実験に使用した外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100は、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12として低ガラス転移温度を有するポリマー材料を用いている。このポリマー材料は、ポリビニルカルバゾール(光導電性ポリマー)、((4−ピペリジルフェニル)メチレン)メタン−1,1−ジカルボニトリル(光2次非線形色素)などを含む多成分系材料である。このポリマー材料は、室温よりも低いガラス転移温度を有するために、配向増大効果による大きなフォトリフラクティブ効果が室温で得られるものである。また、このポリマー材料により形成されたフォトリフラクティブ媒質12は、実験で使用する波長633nmの書き込み光に対して屈折率1.70±0.01を有することが確認された。なお、フォトリフラクティブ媒質12は、厚さtとして100μmの厚さを持つものを用いた。
また、プリズム102a、102bおよび透明基板14a、14bの材料としては、屈折率1.77のガラスを使用した。
そして、プリズム102a、102bにおける書き込み光入射側の頂角αの設計値は、30°とした。この書き込み光入射側の頂角「α=30°」の値は、光干渉縞周期0.5μm、光入出力結合率95%以上に対応する。
なお、透明基板14a、14bのそれぞれの一方の表面には透明電極16a、16bが積層され、透明電極16aと透明電極16bとが互いに向かい合うように組み合わされ、透明電極16aと透明電極16bとの間に外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12が挟持されてサンドイッチ型セル構造が形成されている。
上記した構成の外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100を用いるとともに、光源として波長633nmを発するHe−Neレーザーを使用して、図5に示すように2本の書き込み光を外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100に照射し、2光波結合実験を行った。
この2光波結合実験では、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12中を透過した書き込み光の出力変化を観測することによって、フォトリフラクティブ効果の発生を確認することができる。即ち、光干渉縞の発生によって、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12内にフォトリフラクティブ効果に基づく屈折率回折格子の形成が確認できる。フォトリフラクティブ回折格子が形成されると、2光波間でパワーの移動が生じ、片方のパワーが増大すると同時にもう片方のパワーが減少する光結合現象が生じる。フォトリフラクティブ回折格子が効果的に形成されるほど、移動するパワー量が大きくなる。
ここで、図7に示すグラフは、上記した2光波結合実験の実験結果を示しており、図7に示すグラフ中で○印で示されたプロットは、本発明による外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100を用いた2光波結合実験の実験結果を示し、一方、図7に示すグラフ中で◇印で示されたプロットは、図1に示す従来の外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10を用いた2光波結合実験の比較実験結果を示している。
図7に示すグラフには、電源18により電圧をしばらく印加した後に、書き込み光を一本だけ透過させ(時間t<0)、「時間t=0」においてもう片方の書き込み光を入射したときにおける、両方の書き込み光のパワー変化が示されている。なお、書き込み光パワーは200mW/cmであり、電源18による印加電界強度は25V/μmであった。
図7のグラフから明らかなように、2本の書き込み光が照射されてフォトリフラクティブ媒質12に光干渉縞が形成されると同時に、2光波間で明らかなパワー移動が生じていることが分かる(図7に示すグラフ中の○印参照)。図1に示す従来の外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10の場合(図7に示すグラフ中の◇印参照)と比較して、本発明による外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100の場合(図7に示すグラフ中の○印参照)はパワー移動量が大きいことが分かる。
この結果は、本発明による外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100においては、光干渉縞が外部印加電界ベクトルと平行な格子ベクトルを有するように形成されたため、外部印加電界を損失無く実効駆動電界に利用することができたことに由来するものと認められる。
本発明による光結合素子は、フォトリフラクティブ応答を決定づける内部電界の強度と位相と相互作用長の増大をもたらすよう設計されている。本発明による光結合素子を備えたフォトリフラクティブ素子においては、光キャリア移動に必要な電界が外部電界によって最大限に供給されることになる。
次に、本発明による光結合素子を備えた本発明によるフォトリフラクティブ素子を有して構成される、本発明による光情報処理装置について説明する。
即ち、本発明による光結合素子を備えた本発明によるフォトリフラクティブ素子を用いて様々な光情報処理装置を作製することができる。具体的には、例えば、画像記録、画像認識(パターンマッチング)、リアルタイム劣化画像クリーニング、動体検出あるいは動画像のリアルタイム増幅などの光情報処理を行うための光情報処理装置を実現することができる。
図8乃至図9は、上記した各種の光情報処理を行うための装置構成を示す概略構成説明図である。ここで、図8は、光情報処理として光相関法を積極的に利用した画像記録、画像認識(パターンマッチング)ならびにリアルタイム劣化画像クリーニングを行うため装置構成例を示している。一方、図9は、光情報処理として動体検出あるいは動画像のリアルタイム増幅を行うため装置構成例を示している。
図8に示す光情報処理装置においては、中央制御装置200から出力された入力信号を2次元符号化装置202、空間変調器制御装置204を通して空間変調器206へ入力して、外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100への2本の書き込み光が入射される空間変調器206により当該2本の書き込み光を制御すると同時に、中央制御装置200から出力された入力信号を2次元符号化装置208、空間変調器制御装置210を通して空間変調器212へ入力し、外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100へ入射する光を制御して、得られる結果画像情報はCCDカメラ214、2次元復号化装置216を介して中央制御装置200へ入力することにより得ることができる。
また、図9に示す情報処理装置においては、中央制御装置300から出力された入力信号を2次元符号化装置302、空間変調器制御装置304を通して空間変調器306へ入力して、外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100への2本の書き込み光のうちの1本の書き込み光が入射される空間変調器306により当該1本の書き込み光を制御し、得られる結果画像情報はCCDカメラ308あるいはCCDカメラ310によって2次元復号化装置312を介して中央制御装置300へ入力することにより得ることができる。
なお、レーザー218、220、314としては、いずれも波長可変レーザーを使用することができ、その場合には、各装置内の光路を調整することなくマルチ波長での多重動作が可能となる。
また、符号222はビームセパレーターであり、符号224、226はハーフミラーであり、符号316はビームセパレーターである。
ここで、上記した図8乃至図9に示す光情報処理装置は、フォトリフラクティブ素子として、図1に示す従来の外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10に代えて、本発明による外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100を用いた点において、従来の光情報処理装置とは異なっている。
さらに、図8に示す光情報処理装置においては、符号Cで示す構成についても、従来の光情報処理装置の構成とは異なっている。
即ち、従来の光情報処理装置における図8に示す光情報処理装置の符号Cに相当する構成が図10に示されているが、従来の光情報処理装置においては、光相関などの光情報処理を行うためには、チルト型配置で外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10へ入射される2本の書き込み光の両者に対して、それぞれ空間変調器400a、400bを設置する必要があった。
しかしながら、本発明による外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100を用いた本発明による光情報処理装置においては、図11(図11は、図8に示す符号Cの構成のみを取り出して示した要部拡大図である。)に示すように、外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子100への2本の書き込み光として平行光を入射することができるので、1つの空間変調器206で2本の書き込み光の画像変調を兼ねることができるとともに、図12を参照しながら後述する斜め画像補正回路も不要になる。従って、光学配置のスペースを節約できるとともに、光情報処理装置の全体構成を簡素化することができる。
なお、従来のサンドイッチ型セル構造の外部電界駆動型フォトリフラクティブ素子10を用いて、チルト型配置で2本の書き込み光を入射する従来の光情報処理装置においても、図12に示すように、2次元符号化装置202と空間変調器制御装置204との間に斜め画像補正回路500を組み込むことによって、1つの空間変調器502によって、2本の書き込み光の画像変調を兼ねることができる。こうした構成によっても、光学系の配置のスペースを節約することができる。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(6)に説明するように変形することができる。
(1)上記した実施の形態においては、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の材料については詳細な説明を省略したが、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の材料としては、光導電性と電気光学効果とを有する材料を用いることができる。こうした材料は、例えば、光導電性材料と電気光学効果材料とを混合あるいは化学的に結合させることで作製することができる。そして、光導電性を有する材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンビニレンなどがある。さらには、これらの材料にトリニトロフルオレノンやフラーレンなどの増感色素を加えることによって、光感度を増強させることができる。また、電気光学効果を示す材料としては、例えば、光2次非線形分子や大きな異方性線形分極率をもつ分子などがあり、具体的には、アゾ、スチルベン、ポリエン骨格などにアミノ基、メトキシ基などのドナー基と、ホルミル基、ニトロ基などのアクセプターとを組み合わせた分子構造のものがある。
(2)上記した実施の形態においては、フォトリフラクティブ効果の発現に外部印加電界が必要な外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質について説明したが、本発明は外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質に限られるものではないことは勿論である。即ち、フォトリフラクティブ効果の発現に外部印加電界が必要ではない内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質に関して本発明を適用してもよい。
ここで、内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質も、基本的には上記(1)において示した材料を用いることができるものであるが、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質の材料はガラス転移温度が室温かあるいはそれ以下あるいはそれ以上であること、一方、内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質の材料はガラス転移温度が室温よりも十分に高いことが条件として加わる。なお、ガラス転移温度の降下は、例えば、エチルカルバゾール、ブチルベンジルフタレートなどの可塑剤の添加、あるいは材料への長鎖アルキル基の化学的修飾などによって可能である。
また、内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質により本発明によるフォトリフラクティブ素子を構成する場合には、上記した実施の形態と同様な構成として、単に透明電極16a、16bに外部から電界を印加しないようにしてもよいし、あるいは、図13に示すように、透明電極を設けることなしにフォトリフラクティブ素子を構成してもよい。
(3)上記した実施の形態においては、透明基板14a、14bに透明電極16a、16bを配設するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、図14に示すように、プリズム102a、102bに直接的に透明電極16a、16bをそれぞれ配設して、透明電極16aと透明電極16bとの間に外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12を挟持するようにしてもよい。
また、図13に示すような内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質を用いた本発明によるフォトリフラクティブ素子においては、図15に示すように、プリズム102aと102bとの間に直接的に内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質を挟持するようにしてもよい。
(4)上記した実施の形態においては、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の一方の面にプリズム102aを配設するとともに当該一方の面と対向する他方の面にプリズム102bを配設して、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の両方の面に光結合素子を配設するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、図16(a)(b)に示すように、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の一方の面にのみ、プリズム102aなどの光結合素子を配設するようにしてもよい。同様に、内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質の一方の面にのみ、プリズムなどの光結合素子を配設するようにしてもよい。
なお、上記したように外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の一方の面にのみプリズムなどの光結合素子を配設した場合、例えば、図16(a)(b)に示す構成の場合には、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12の一方の面にのみ配設した光結合素子としてのプリズム102aに入射される1本の書き込み光に対して、もう一本の書き込み光は、外部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質12と透明電極16bとの界面で反射される上記1本の書き込み光の反射光によって供給される。この場合においても、上記したと同様に、格子ベクトルと外部印加電界ベクトルとが完全に一致した光干渉縞が形成される。従って、1本の書き込み光によってフォトリフラクティブ効果を発生させることができる。
また、上記したように内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質の一方の面にのみプリズムなどの光結合素子を配設した場合、例えば、図13に示す構成においてプリズム102aのみを配設して、プリズム102bを配設しなかった場合には、内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質の一方の面にのみ配設した光結合素子としてのプリズム102aに入射される1本の書き込み光に対して、もう一本の書き込み光は、内部電界駆動型フォトリフラクティブ媒質と透明基板14bとの界面で反射される上記1本の書き込み光の反射光によって供給される。この場合においても、上記したと同様に、格子ベクトルと外部印加電界ベクトルとが完全に一致した光干渉縞が形成される。従って、1本の書き込み光によってフォトリフラクティブ効果を発生させることができる。
(5)上記した実施の形態においては詳細な説明を省略したが、プリズム102a、102bは、透明基板14a、14bに対して脱着自在に構成することができ、このように構成すると、書き込み光入射側の頂角αなどの特性パラメータの異なるプリズムを適宜に容易に着脱することができる。
(6)上記した実施の形態ならびに上記(1)乃至(5)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
本発明は、以上説明したように構成されているので、操作性・機能性に優れていて容易かつ高効率でフォトリフラクティブ媒質内に光干渉縞を発生可能なフォトリフラクティブ素子を実現するための光結合素子およびそれを備えたフォトリフラクティブ素子ならびに光情報処理装置を提供することができるようになるという優れた効果を奏する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリフラクティブ媒質へ入射される書き込み光に対して所定の傾きに設定された入射面を備えた台形状のプリズムよりなり、前記フォトリフラクティブ媒質の少なくとも一方の面側に配置される
ことを特徴とする光結合素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光結合素子において、
前記入射面の傾きは、前記書き込み光の前記フォトリフラクティブ媒質への入射により、前記フォトリフラクティブ媒質内に形成される光干渉縞の所望の周期に応じて設定される
ことを特徴とする光結合素子。
【請求項3】
フォトリフラクティブ媒質の少なくとも一方の面側に、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の光結合素子を配設した
ことを特徴とするフォトリフラクティブ素子。
【請求項4】
請求項3に記載のフォトリフラクティブ素子において、
前記光結合素子は、略長方体状のフォトリフラクティブ媒質の一方の面側と該一方の面側と対向する他方の面側とにそれぞれ配置され、
前記フォトリフラクティブ媒質の厚さ方向に対して垂直、かつ、前記厚さの中心を通る面に対して鏡像をなす方向から照射される2本の書き込み光のうちの一方を前記フォトリフラクティブ媒質の一方の面側に配置された光結合素子の入射面に入射し、前記2本の書き込み光のうちの他方を前記フォトリフラクティブ媒質の前記一方の面側と対向する前記他方の面側に配置された光結合素子の入射面に入射する
ことを特徴とするフォトリフラクティブ素子。
【請求項5】
2次元符号化装置と、空間変調器制御装置と、空間変調器と、フォトリフラクティブ素子とを有し、入力信号を前記2次元符号化装置と前記空間変調器制御装置とを通して前記空間変調器へ入力して、前記フォトリフラクティブ素子への2本の書き込み光が入射される前記空間変調器により該2本の書き込み光のいずれか一方または双方を制御する光情報処理装置において、
フォトリフラクティブ素子は、請求項3または請求項4のいずれか1項に記載のフォトリフラクティブ素子である
ことを特徴とする光情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光情報処理装置において、
前記フォトリフラクティブ素子は、請求項4に記載のフォトリフラクティブ素子であり、
単一の前記空間変調器により前記フォトリフラクティブ素子への2本の書き込み光を制御する
ことを特徴とする光情報処理装置。
【請求項7】
2次元符号化装置と、空間変調器制御装置と、空間変調器と、フォトリフラクティブ素子とを有し、入力信号を前記2次元符号化装置と前記空間変調器制御装置とを通して前記空間変調器へ入力して、前記フォトリフラクティブ素子への2本の書き込み光が入射される前記空間変調器により該2本の書き込み光を制御する光情報処理装置において、
フォトリフラクティブ素子は、チルト型配置により2本の書き込み光を入射するものであり、
前記2次元符号化装置と前記空間変調器制御装置との間に斜め画像補正回路を有し、前記斜め画像補正回路の補正により単一の前記空間変調器によって前記2本の書き込み光の画像変調を行う
ことを特徴とする光情報処理装置。

【国際公開番号】WO2004/097507
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505823(P2005−505823)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003926
【国際出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】