説明

光触媒体、その製造方法およびそれを用いてなる光触媒体コーティング剤

【課題】可視光線の照射によって高い活性を示す光触媒体および光触媒体コーティング剤の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、酸化チタンの表面に酸化タングステンまたは酸化ニオブを有し、BET比表面積55m2/g以上である光触媒体を製造する方法であり、チタン化合物の水溶液と、チタン化合物を水酸化チタンに変えるのに必要な化学量論量に対し1.2倍以上のアンモニアまたはアミンを60℃以下で反応させ、得られた生成物を600℃以下で焼成して酸化チタンを得、得られた酸化チタンをタングステン化合物またはニオブ化合物の溶液またはスラリーに接触させた後、600℃以下で焼成することを特徴とする。この製造方法により光触媒体を得、得られた光触媒体を溶媒に分散させて光触媒体コーティング剤を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒体、その製造方法およびそれを用いてなる光触媒体コーティング剤に関するものである。詳細には、可視光線の照射によって高い活性を示す光触媒体およびその製造方法、さらには、建材などに光触媒機能を付与するときに使用する光触媒体コーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体に紫外線を照射すると強い還元作用を持つ電子と強い酸化作用を持つ正孔が生成し、半導体に接触した分子種を酸化還元作用により分解する。このような作用を光触媒作用と呼び、この光触媒作用を利用することによって、大気中の有機溶剤などを分解除去することができる。光触媒作用を示す物質として酸化チタンが注目され、酸化チタンからなる光触媒体が市販されている。
【0003】
しかしながら、現在市販されている光触媒体は、可視光線を照射する場合には十分な活性を示すものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、可視光線の照射によって高い活性を示す光触媒体、その製造方法およびそれを用いてなる光触媒体コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、酸化チタンの光触媒活性の向上について検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、酸化チタンの表面に、酸化チタン以外の、酸点をもつ金属酸化物を有し、BET比表面積が55m2/g以上であることを特徴とする光触媒体を提供するものである。
【0007】
また本発明は、チタン化合物の水溶液と塩基を60℃以下で反応させ、得られた生成物を焼成して酸化チタンを得、この酸化チタンをチタン以外の金属化合物の溶液またはスラリーに接触させた後、焼成することを特徴とする前記の光触媒体の製造方法を提供するものである。
【0008】
さらに本発明は、前記の光触媒体と溶媒とを含む光触媒体コーティング剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光触媒体は、高い光触媒作用を示し、アセトアルデヒド等のアルデヒド類をはじめ各種有機物を効率よく分解する。本発明の光触媒体コーティング剤は、建築材料、自動車材料等に光触媒体を塗布することを容易にし、これらの材料に高い光触媒作用を付与することを可能とする。また、本発明の光触媒体の製造方法によれば、前記の光触媒体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の光触媒体は、酸化チタンを基材とするものである。基材である酸化チタンとしては、例えば、TiO2なる組成式で表されるものが挙げられ、結晶構造がアナターゼ型であるものが好ましい。この酸化チタンは、粒子、薄膜のような各種形状のものが適用できる。
【0011】
この酸化チタンは、例えば、オキシ硫酸チタン、硫酸チタン、オキシ塩化チタン、塩化チタンのようなチタン化合物の水溶液と塩基を反応させ、得られた生成物を焼成する方法で調製することができる。このときに用いる塩基としては、アンモニア、アミン等が挙げられ、その塩基の使用量は、水溶液中のチタン化合物を水酸化チタンに変えるのに必要な塩基の化学量論量に対し、1.2倍以上、さらには2倍以上が好ましく、また20倍以下、さらには10倍以下が適当である。反応温度は通常60℃以下、好ましくは40℃以下であり、また焼成温度は通常300℃以上、好ましくは350℃以上であり、600℃以下、さらには500℃以下が適当である。また、基材である酸化チタンは、オキシ硫酸チタンを、塩基と反応させることなしに、空気流通下で焼成する方法で調製することもできる。
【0012】
基材である酸化チタンの表面には、TiO2なる組成式で表される酸化チタン以外の、酸点をもつ金属酸化物が存在させられる。この金属酸化物は、ブレンステッド酸点、ルイス酸点またはそれらを両方を有するもののいずれであってもよく、具体例としては、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズのような金属の1元系酸化物、珪素−亜鉛、珪素−ジルコニウム、珪素−マグネシウム、珪素−カルシウム、珪素−ガリウム、珪素−アルミニウム、珪素−ランタン、珪素−チタン、チタン−亜鉛、チタン−銅、チタン−亜鉛、チタン−アルミニウム、チタン−ジルコニウム、チタン−鉛、チタン−ビスマス、チタン−鉄、亜鉛−マグネシウム、亜鉛−アルミニウム、亜鉛−ジルコニウム、亜鉛−鉛、亜鉛−アンチモンのような2種金属の複合酸化物が挙げられる。また、酸点をもつ金属酸化物であれば3種以上の金属の複合酸化物も適用できる。これらの金属酸化物の中でも、特に、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、スズのような金属の1元系酸化物の適用が推奨される。なお、金属酸化物の酸点は、酸性中心と呼ばれることもあり、その存在は金属酸化物表面への気体塩基の吸着量または溶液からの塩基の吸着量を測定することによって確認することができる。また、種々のpKa値をもった指示薬の変色を利用して酸点の酸強度およびその酸強度における酸点の数を求めることもできる。
【0013】
この金属酸化物は、基材である酸化チタンの表面全体を被覆するように存在してもよいし、酸化チタンの表面の一部を被覆するように存在してもよい。酸化チタンの表面の一部が金属酸化物で被覆されている光触媒体には、例えば、上述した金属酸化物が酸化チタンの上に点として不連続に存在するもの、金属酸化物が酸化チタンの上に線状または格子状に連続して存在するもの等がある。金属酸化物の量は、基材である酸化チタンのチタンに対し金属元素換算で0.05mol%以上、さらには0.1mol%以上であることが好ましい。一方、金属酸化物の量はあまり多くなると、光触媒体の活性が低下することがあるので、50mol%以下、さらには30mol%以下、とりわけ10mol%以下が好ましい。
【0014】
酸化チタンの表面に酸点をもつ金属酸化物を存在させてなる本発明の光触媒体が高い活性を示す機構については必ずしも明らかではないが、酸化チタンの表面に存在する金属酸化物のもつ酸点に優先的に有機化合物が吸着する一方、光照射によって酸化チタンに生成した電子と正孔が、この酸点に吸着した有機化合物を効率よく還元または酸化して分解することが影響しているものと考えられる。金属酸化物のもつ酸点には、ブレンステッド酸点、ルイス酸点がある。通常、ブレンステッド酸点には塩基性化合物、またルイス酸点には含酸素化合物および含硫黄化合物が選択的に吸着する傾向があるので、光触媒体で分解しようとする対象物質に応じて、ブレンステッド酸点またはルイス酸点の量、さらにブレンステッド酸点とルイス酸点の両方が存在するときにはそれらの量と割合を適宜決定すればよい。酸点の種類とその量は、上述した金属酸化物の種類、量を選定することにより調節することができる。
【0015】
本発明の光触媒体は、上で述べた基材である酸化チタンの表面に酸点をもつ金属酸化物が存在するものであって、BET比表面積が55m2/g以上である。BET比表面積が55m2/g未満であると、たとえ、表面に酸点をもつ金属酸化物が存在するものであっても、可視光線の照射により十分な光触媒活性を示さない。光触媒体のBET比表面積は高いほど、その光触媒活性は高くなる傾向にあるが、比表面積があまり大きくなると、溶媒と混合してコーティング剤を調製するとき、溶媒中に分散させることが困難になる。よって、BET比表面積は250m2/g以下、さらには200m2/g以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の光触媒体は、紫外可視拡散反射スペクトルを測定して、波長220nm〜800nmの吸光度の積分値をAとし、波長400nm〜800nmの吸光度の積分値をBとしたとき、式(I)
X=B/A (I)
により算出される指数Xが0.2以上であることが好ましい。尚、吸光度の積分値は、縦軸に吸光度、横軸に波長とした紫外可視拡散反射スペクトルにおいて、指定された波長の範囲内で横軸と拡散反射スペクトルとで囲まれた領域の面積を示す。
【0017】
本発明の光触媒体は、X線光電子分光法により4回分析し、チタンの電子状態について、2回目と4回目の分析のスペクトルを求め、それぞれのスペクトルのうち結合エネルギー458eV〜460eVにあるピークを求め、2回目の分析のスペクトルにあるピークの半価幅をCとし、4回目のスペクトルにあるピークの半価幅をDとしたとき、式(II)
Y=(C−D)/C (II)
により算出される指数Yが0.05以上、さらには0.08以上であることが好ましい。
【0018】
酸化チタンの表面に特定の金属酸化物を有し、かつ特定の比表面積を有する、本発明の光触媒体は、例えば、上述した基材である酸化チタンを金属化合物の溶液またはスラリーに接触させた後、焼成する方法(含浸法)で製造することができる。含浸法で用いる金属化合物には、酸点をもつ金属酸化物の他、焼成によって上述した酸点をもつ金属酸化物になるものが挙げられ、例えば、金属酸アンモニウム塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、有機酸塩、水酸化物、またはアルコキシド等、焼成することにより金属酸化物を構成するものがある。このときの焼成は、通常、200℃以上、さらには250℃以上で行われることが好ましく、また600℃以下、さらには500℃以下で行われることが適当である。
【0019】
また、酸化チタンの表面に金属酸化物を存在させるには、酸素分圧を調整した密閉容器内に、基材である酸化チタンと、金属酸化物、その塩またはその金属酸化物を構成する金属とを入れ、後者の金属酸化物等を融解、蒸発させて、その蒸気を酸化チタンの表面に膜として凝着させる方法(蒸着法)等、公知の種々の方法を適用するもできる。
【0020】
得られる光触媒体は、通常、粒子状であるが、必要に応じて、高分子樹脂、結合剤、成形助剤、帯電防止剤、吸着剤等を添加された後、成形されてペレット、繊維またはシートとすることもできる。
【0021】
この光触媒体を使用するときの具体例としては、可視光線を透過するガラス容器内に光触媒体と被処理物とを入れ、光源を用いて光触媒体に波長430nm以上である可視光線を照射する方法等が挙げられる。照射時間は、光源の光線強度および被処理物の種類や量により適宜選択すればよい。用いる光源は、波長が430nm以上である可視光線を照射できるものであれば制限されるものではなく、太陽光線、蛍光灯、ハロゲンランプ、ブラックライト、キセノンランプ、水銀灯またはナトリウムランプ等が適用できる。
【0022】
本発明の光触媒体コーティング剤は、前述した特定の光触媒体と溶媒とを含む。
【0023】
光触媒体コーティング剤は、建築材料、自動車材料等に光触媒体を塗布することを容易にし、かつこれらの材料に高い光触媒活性を付与することを可能とする。このようにして得られた建築材料および自動車材料は、大気中のNOxを分解したり、居住空間や作業空間での悪臭物質(例えば、煙草臭)を分解したり、水中の有機溶剤、農薬、界面活性剤を分解したり、または細菌(例えば、放射菌)、藻類、黴類等の増殖を抑制することに適用できる。光触媒体コーティング剤の調製に用いる溶媒としては、酸化チタンの表面に存在する金属酸化物を溶解せず、かつ塗布後に蒸発して光触媒体に残存しないものが好ましく、例えば、水、塩酸、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。この光触媒体コーティング剤は、例えば、上で示した光触媒体を水、アルコール類、ケトン類のような溶媒に分散させてスラリー化する方法、または光触媒体を希塩酸で解膠させる方法等によって製造することができる。光触媒体コーティング剤は、必要に応じて分散剤を添加し調製してもよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、光触媒体の物性測定は以下の方法で行った。
【0025】
(1)BET比表面積(m2/g):
窒素吸着法により求めた。
【0026】
(2)指数X〔=B/A〕:
紫外可視分光光度計(商品名“UV−2500PC”、島津製作所製)を用い、硫酸バリウムを標準白板として紫外可視拡散反射スペクトルを測定し、このスペクトルから波長220〜800nmの吸光度の積分値Aと400〜800nmの吸光度の積分値Bを求めた。これらの値をもとに、前記式(I)から指数Xを算出した。
【0027】
(3)指数Y〔=(C−D)/C〕:
光電子分光測定装置(商品名"XPS−7000"、理学電機製)を用い、X線源 MgKα 8kV 30mA、ナロースキャン、pass E=10eV、step E=0.04eVの条件で、チタンの電子状態(Ti2p2/3)を1回あたり60秒で2回分析(1回目、2回目)、酸素の電子状態を1回あたり47秒で2回分析、炭素の電子状態(C1s)を1回あたり47秒で2回分析、チタンの電子状態を1回あたり60秒で2回分析(3回目、4回目)、酸素の電子状態(O1s)を1回あたり47秒で2回分析、炭素の電子状態を1回あたり47秒で2回分析、を順に行ってスペクトルを測定し、2回目のスペクトルのピークの中で結合エネルギー458eV〜460eVにあるチタンのピークの半価幅Cと、4回目のスペクトルのピークの中で結合エネルギー458eV〜460eVにあるチタンのピークの半価幅Dを求めた。これらの値をもとに前記式(II)により指数Yを算出した。前記の一連の分析は、分析時及び分析と分析との間、光触媒体を大気中に暴露させることなく行った。
【0028】
実施例1
酸化チタンの調製〕
オキシ硫酸チタン(添川理化学製)90gを水360gに溶解させた。このオキシ硫酸チタン水溶液に25%アンモニア水(試薬1級、和光純薬工業製)104gを、氷冷下、200rpmで攪拌しながら、5ml/minで添加して加水分解させスラリーを得た。このとき使用したアンモニア水の量は、オキシ硫酸チタンを水酸化チタンに変えるために必要な量の2倍であった。上で得られたスラリーを濾過し、得られた固形物を温水で洗浄し、乾燥して粉末を得た。この粉末を390℃の空気中で1時間焼成した後、室温まで冷却して、含水率15重量%の粒子状アナターゼ型酸化チタンを得た。
【0029】
〔金属酸化物の被覆〕
パラタングステン酸アンモニウム5水和物((NH4)101241・5H2O、和光純薬工業製)を水に溶解させて、タングステン濃度1重量%のパラタングステン酸アンモニウム水溶液を得た。水100gに、このパラタングステン酸アンモニウム水溶液17.6gを添加した後、上で得られた粒子状アナターゼ型酸化チタン3gを添加し、常温常圧下で20分間攪拌した。この混合物をさらに攪拌しながら減圧し、50℃で水分を蒸発させて乾燥した後、390℃の空気中で1時間焼成して、光触媒体を得た。この光触媒体は、酸化チタンの上に、該酸化チタンのチタンに対しタングステン換算で3mol%の酸化タングステンを有するものであり、BET比表面積が65m2/gであった。この光触媒体の紫外可視拡散反射スペクトルを図1に示し、スペクトルの吸光度の積分値および指数Xを表1に示し、また2回目のX線光電子分光スペクトル(以下、XPSスペクトルという。)を図2に、4回目のXPSスペクトルを図3に示し、それらのXPSスペクトルにあるチタンのピークの半価幅および指数Yを表2に示す。
【0030】
〔光触媒体の活性評価〕
直径8cm、高さ10cm、容量約0.5リットルの密閉式ガラス製容器内に、直径5cmのガラス製シャーレを設置し、そのシャーレ上に、上で得られた光触媒体0.3gを置いた。容器内を酸素20容量%と窒素80容量%とからなる混合ガスで満たし、アセトアルデヒドを13.4μmol封入し、容器の外から可視光線を照射した。可視光線の照射には、500Wキセノンランプ(商品名“オプティカルモジュレックスSX−UI500XQ”、“ランプUXL−500SX”、ウシオ電機製)に、波長約430nm以下の紫外線をカットするフィルター(商品名“Y−45”、旭テクノガラス製)と波長約830nm以上の赤外線をカットするフィルター(商品名“スーパーコールドフィルター”、ウシオ電機製)とを装着したものを光源として用いた。可視光線の照射によりアセトアルデヒドが分解すると、二酸化炭素が発生するので二酸化炭素の濃度を光音響マルチガスモニタ(型番“1312型”、INNOVA製)で経時的に測定し、濃度変化より算出した二酸化炭素の生成速度により、光触媒体をアセトアルデヒドに対する光分解作用を評価した。この例における二酸化炭素の生成速度は光触媒体1gあたり112.9μmol/hであった。
【0031】
実施例2
シュウ酸水素ニオブ(Nb(HC24)5、Nb25として14.6重量%、三津和化学製)1.45gを水100gに溶解させて、ニオブ濃度0.15重量%のシュウ酸水素ニオブ水溶液を得た。この水溶液100gに、実施例1と同じ方法で調製した粒子状アナターゼ型酸化チタン5gを添加し、常温室圧下で20分間攪拌して混合した。この混合物をさらに攪拌しながら減圧し、50℃で水分を蒸発させて乾燥した後、300℃の空気中で1時間焼成して、光触媒体を得た。この光触媒体は、酸化チタンの上に、該酸化チタンのチタンに対しニオブ換算で3mol%の酸化ニオブを有するものであり、BET比表面積が65m2/gであった。この光触媒体の紫外可視拡散反射スペクトルを図4に示し、スペクトルの吸光度の積分値および指数Xを表1に示し、また2回目のXPSスペクトルを図5に、4回目のXPSスペクトルを図6に示し、それらのXPSスペクトルにあるチタンのピークの半価幅および指数Yを表2に示す。
【0032】
上で得られた光触媒体について、実施例1と同一条件で活性評価を行った。この例における二酸化炭素の生成速度は光触媒体1gあたり74.8μmol/hであった。
【0033】
実施例3
パラタングステン酸アンモニウム5水和物((NH4)101241・5H2O、和光純薬工業製)を水に溶解させて、タングステン濃度1重量%のパラタングステン酸アンモニウム水溶液を得た。水100gに、このパラタングステン酸アンモニウム水溶液58.69gを添加した後、実施例1と同じ方法で調製した粒子状アナターゼ型酸化チタン3gを添加し、常温常圧下で20分間攪拌した。この混合物をさらに攪拌しながら減圧し、50℃で水分を蒸発させて乾燥した後、390℃の空気中で1時間焼成して、光触媒体を得た。この光触媒体は、酸化チタンの上に、該酸化チタンのチタンに対しタングステン換算で10mol%の酸化タングステンを有するものであり、BET比表面積が65m2/gであった。この光触媒体の紫外可視拡散反射スペクトルの吸光度の積分値および指数Xを表1に示す。
【0034】
上で得られた光触媒体について、実施例1と同一条件で活性評価を行った。この例における二酸化炭素の生成速度は触媒1gあたり81.0μmol/hであった。
【0035】
比較例1
市販の酸化チタン(商品名“P−25”、デグッサ製)を用い、これを実施例1の〔金属酸化物の被覆〕と同様の操作を施して、光触媒体を製造した。この光触媒体は、酸化チタンの上に、該酸化チタンのチタンに対しタングステン換算で3mol%の酸化タングステンを有するものであり、BET比表面積が48m2/gであった。この光触媒体の紫外可視拡散反射スペクトルを図7に示し、スペクトルの吸光度の積分値および指数Xを表1に示す。
【0036】
上で得られた光触媒体について、実施例1と同一条件で活性評価を行った。この例における二酸化炭素の生成速度は触媒1gあたり4.9μmol/hであった。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1で得られた光触媒体の紫外可視拡散反射スペクトル。
【図2】実施例1で得られた光触媒体の2回目のXPSスペクトル。
【図3】実施例1で得られた光触媒体の4回目のXPSスペクトル。
【図4】実施例2で得られた光触媒体の紫外可視拡散反射スペクトル。
【図5】実施例2で得られた光触媒体の2回目のXPSスペクトル。
【図6】実施例2で得られた光触媒体の4回目のXPSスペクトル。
【図7】比較例1で得られた光触媒体の紫外可視拡散反射スペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンの表面に酸化タングステンまたは酸化ニオブを有し、BET比表面積が55m2/g以上である光触媒体を製造する方法であり、チタン化合物の水溶液と、チタン化合物を水酸化チタンに変えるのに必要な化学量論量に対し1.2倍以上のアンモニアまたはアミンを60℃以下で反応させ、得られた生成物を600℃以下で焼成して酸化チタンを得、得られた酸化チタンをタングステン化合物またはニオブ化合物の溶液またはスラリーに接触させた後、600℃以下で焼成することを特徴とする前記光触媒体の製造方法。
【請求項2】
光触媒体における前記酸化タングステンまたは酸化ニオブの量が、酸化チタンのチタンに対し金属元素換算で0.05mol%以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の製造方法により光触媒体を得、得られた光触媒体を溶媒に分散させる光触媒体コーティング剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−62237(P2008−62237A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304025(P2007−304025)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【分割の表示】特願2000−321026(P2000−321026)の分割
【原出願日】平成12年10月20日(2000.10.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】