説明

光触媒性塗布剤

【課題】物体への付着性、塗膜の常温硬化性に優れ、かつ、光触媒としての酸化チタンを高濃度に含ますことができるようにされた光触媒性塗布剤を提供すること。
【解決手段】合成樹脂を分散相とする水性エナルジョンに光触媒源の添加混合された液剤に、有機溶媒を含む液剤が添加混合されてなる光触媒性塗布剤であり、光触媒源として、波長が約400nmより短い紫外光を主とする光で励起される紫外光反応型酸化チタン光触媒微粉末、及び/又は、波長が約380nmより長い可視光を主体とする光で励起される可視光型酸化チタン光触媒微粉末が用いられる光触媒性塗布剤。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布された物体を、その表面に形成された塗膜で外界から遮断して保護するとともに、塗膜に含まれる紫外光型及び/又は可視光型光触媒としての微粒子状光触媒性酸化チタンが、波長が約400nmより短い紫外光を主とする光、及び/又は、波長が約380nmより長い可視光を主とする光で励起されることで、塗膜表面に有機物分解能をもたらす光触媒性塗布剤に関するものである。
【0002】
ちなみに、有機物分解能とは、たとえば、塗膜表面での汚れ分解能や、細菌発育阻止能のことを指す。細菌発育阻止能は、可逆的であったり非可逆的であったりする。「静菌(制菌)」(菌を殺滅しないまでも、その活動を停止ないし低下させ、その増殖を抑制する作用)は可逆的細菌発育阻止能であり、「滅菌」は非可逆的細菌発育阻止能である。また、この光触媒性塗布剤については、従来の光触媒塗料の場合同様、屋内外の各種構造物への使用のみならず、例えば、屋内外、特に屋内で持続的な静菌・殺菌を必要とするが、化学的殺菌剤のように人畜への芳しからぬ影響の懸念される物質の散布が憚られる場所(例えば、病院、介護施設、託児所、幼稚園、公民館、宿泊施設、飲食店、調理施設、更衣室、公衆トイレ、食品工場、薬品工場、衛生関係の実験室、酪農場/施設、植物栽培場/施設など)での使用も想定される。このうち、特に植物栽培場/施設では、栽培農作物や花卉自体、土壌や人工的培地、付帯設備などへの散布や塗布が考えられる。
【背景技術】
【0003】
従来、この種の光触媒塗料においては、塗料液中に光触媒源としての酸化チタンを含有させるのに、次の▲1▼,▲2▼のような方法がとられた。
▲1▼塗料の液状成分が、水、有機溶媒、結合剤(例えば、ポリメチルメトキシシロキサンなど)、界面活性剤などの混ざった液剤の場合、その液剤に光触媒性酸化チタン微粉末を直接混ぜたり、光触媒性酸化チタン微粒子を分散相とする水性ゾル(スラリ)やアルコールゾル(スラリ)を混ぜたりする。
▲2▼塗料の液状成分がペルオキソチタン酸水溶液の場合、その液を80℃以上の或る温度で数時間〜数十時間加熱して、その液中に酸化チタン微粒子を生成させ(特許公報第2875993号、第2938376号)、場合により、その液に別途光触媒性酸化チタン微粉末を混ぜたり、光触媒性酸化チタン微粒子を分散相とする水性ゾルやアルコールゾルを混ぜたりする(特開平7−286114明細書)。
【0004】
しかし、上記▲1▼の場合、水、有機溶媒、結合剤、界面活性剤などの混合液剤は、決して酸化チタン微粉末ないしは微粒子を懸濁させやすいものではなく、特に有機溶媒、就中アルコール含有量の多い場合には、酸化チタン微粒子の液剤中での沈殿を招きやすいものである。とはいえ、沈殿抑制のため、液剤に強力な界面活性剤を多量に添加したりすると、最終的に得られた光触媒塗料液が泡立ちやすくなったり、得られた塗膜の耐水性の劣化を招いたりする。したがって、水、有機溶媒、結合剤、界面活性剤などの混合液剤に、光触媒源としての光触媒性酸化チタン微粉末を直接添加したり、光触媒性酸化チタン微粒子を分散相とする水性ゾルやアルコールゾルを添加したりし、酸化チタン微粉末ないしは微粒子を安定的に懸濁させるのは困難である。
【0005】
一方、▲2▼の場合、ペルオキソチタン酸水溶液を或る温度で或る時間加熱し、その水溶液中に光触媒性酸化チタン微粒子を生成させても、その量は僅少であるため、ペルオキソチタン酸水溶液、若しくは、生成酸化チタン微粒子を含むペルオキソチタン酸水溶液に、さら光触媒性酸化チタン微粉末を直接混ぜたり、光触媒性酸化チタン微粒子を分散相とする水性ゾルやアルコールゾルを混ぜたりする必要があった。しかし、ペルオキソチタン酸水溶液自体、酸化チタン微粉末や微粒子を懸濁させにくいものであるため、ペルオキソチタン酸水溶液中の全酸化チタン含有量(ペルオキソチタン酸水溶液から生成した酸化チタンと、別途添加された酸化チタンの総量)は、高々1重量%位にしかできなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明で意図される光触媒性塗布剤は、従来の光触媒塗料の場合同様、屋内外の各種構造物へも勿論使用可能であるが、さらに、例えば、屋内外、特に屋内で持続的な静菌・殺菌を必要とするが、人畜への芳しからぬ影響の懸念される化学的殺菌剤の散布が憚られる場所(例えば、病院、介護施設、託児所、幼稚園、公民館、宿泊施設、飲食店、調理施設、更衣室、公衆トイレ、食品工場、薬品工場、衛生関係実験室、酪農施設、植物栽培施設など)へも、人畜や環境に優しい一種の静菌・殺菌剤として使用可能なものである。
【0007】
本発明の光触媒性塗布剤は、従来の光触媒塗料の場合と異なり、単に平坦な構造物面に塗装される塗料としてのみならず、様々な形状や面状態を備えた物に散布・塗布される一種の静菌・殺菌剤としても用いられる。したがって、当該光触媒性塗布剤については、それに含まれる光触媒性二酸化チタン量を、場合によっては、一般の光触媒の場合の高々1重量%位よりかなり高い量まで(たとえば、6重量%位まで)高めることが必要になり、また、光触媒性二酸化チタン含有量が従来の通念的レベルを超越していても、当該二酸化チタン微粒子を十分安定的に懸濁することができ、例えば半年間位は実質的に沈殿しないように調製することも必要になってくる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光触媒性塗布剤の調製に際しては、まず合成樹脂を分散相とする水性エマルジョンに、光触媒剤(光触媒性酸化チタン微粉末や、光触媒性酸化チタン微粒子の懸濁された水性ゾル)を添加し、十分混合する。次いで、そうして得られた、光触媒微粒子の懸濁された一次液剤に、有機溶媒や無機結合剤などを含む液剤を徐々に添加し、十分混合する。そうすることで、光触媒性酸化チタン量が通念的レベルよりかなり高くても、光触媒性酸化チタン微粒子が長期間にわたり実質的に沈殿しない光触媒性塗布剤を二次的液剤として得ることができる。光触媒剤としての光触媒性酸化チタン微粉末や、水性ゾル中の光触媒性酸化チタン微粒子としては、波長が約400nmより短い光で励起されるもの(紫外光反応型品)、及び/又は、波長が約380nmより長い光で励起されるもの(可視光反応型品)を用いることができ、また、表面がアパタイトで部分的に被覆されたものや、表面がペルオキソ基で修飾されたものなども用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
この本発明の光触媒性塗布剤は、光触媒剤(光触媒性酸化チタン微粉末ないしは光触媒性酸化チタン微粒子)を、従来のその種の塗布剤若しくは塗料において通念的な含有量を超越した量で、しかも、長期間にわたり沈殿を招かない状態で懸濁させる能力を備えたものである。したがって、この発明の光触媒性塗布剤については、従来の光触媒性塗料同様、単に屋内外で構造物の平坦面に塗装される塗料的用途のみならず、特に、人畜に必ずしも芳しくない化学的殺菌剤の散布が憚られる屋内外、特に屋内にて、様々な形状や表面状態を備えた物に散布・塗布され、持続的な静菌・殺菌を発揮し得る一種の静菌・殺菌剤としても利用可能なものとして位置づけられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
光触媒剤としては、波長が約400nmより短い紫外光を主とする光で励起される紫外光反応型のもの、及び/又は、波長が約380nmより長い可視光を主とする光で励起される可視光反応型のものを、酸化チタン微粉末や、光触媒性酸化チタン微粒子の懸濁された水性ゾル(スラリ)の形で用いることができる。紫外光反応型の水性ゾルとしては、例えば、平均粒子径が15〜30nm程度のアパタイト被覆光触媒性酸化チタン微粒子を約20重量%含むもの(昭和タイタニウム社製など)や、所定熱処理により自己内に生成せしめられた光触媒微粒子を含むペルオキソチタン酸溶液を挙げることができ、可視光反応型の水性ゾルとしては、例えば、可視光反応型酸化チタン微粒子を約10重量%含むもの(住友チタニウム社製など)を挙げることができる。
【0011】
ちなみに、アパタイト被覆光触媒性酸化チタンは、光触媒性酸化チタンの表面がアパタイトで部分的に(光触媒性酸化チタンに励起光が到達できる程度に)被覆されたものであり、塗膜や塗装されるべき構造物表面での、いわゆるチョーキング現象を起こしにくいとされているものである。光触媒剤が添加混合されるべき、合成樹脂を分散相とする水性エマルジョンにおける合成樹脂としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、及び、これら樹脂のうちの少なくとも二種類の共重合体から選ばれる少なくとも一種類を用いることができる。また、有機溶媒としては、アルコール、ケトン、エステル、キシレン、トルエンから選ばれる少なくとも一種類を用いることができる。アルコールの例として、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)を挙げることができる。ケトンの例としてアセトン、エステルの例として酢酸エチル、アミルの例として酢酸アミルを挙げることができる。
【実施例1】
【0012】
光触媒剤源として、紫外光反応型アパタイト被覆光触媒性酸化チタン微粒子を約20重量%含む水性ゾル(スラリ)(昭和電光社製)を用いて、光触媒性塗布剤A,B,C(酸化チタン微粒子含有量0.5,0.3,0.4重量%)を試作した。分散相としてシリコーン・アクリル樹脂を含む水性エマルジョンに、上記、酸化チタン微粒子を含む水性ゾルを徐々に添加して十分混合し、「一次液剤」を得た。そしてこの一次液剤に「有機溶媒を含む液剤」を徐々に添加して十分混合し、本発明の光触媒性塗布剤A,B,Cを二次液剤として得た。塗布剤A,B,Cには一次液剤が、それぞれ62,5,62.5,19.0重量%配合された。塗布剤A,B,CのpHは9.0,9.0,8,0である。
【0013】
光触媒性塗布剤A,B,C用一次液剤の組成(重量比)は表1のとおりである。
【表1】

【0014】
光触媒性塗布剤A,B,Cには「有機溶媒を含む液剤」が、それぞれ25,35,77重量%配合された。光触媒性塗布剤A,B,C用の「有機溶媒を含む液剤」の組成は表2のとおりである。
【表2】

【0015】
ただし、ここでの結合剤はポリメチルメトキシシランであり、アルコールは、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)の混合物である。各アルコールの割合は表3のとおりである。
【表3】

【0016】
なお、光触媒性塗布剤A,B,C用として、それぞれ一次液剤と「有機溶媒を含む液剤」の混合によって得られた液に、水性シリカゾル(シリカ分20重量%)が、2.5,1.5,2.0重量%配合された。シリカゾルは、塗膜面に親水性を与えるとともに、塗膜を強化するものである。光触媒性塗布剤Aは、主として建物内装に用いられることを意図した塗布剤(実質的に塗料)であり、同B,Cは、主として建物外装に用いられることを意図した塗布剤(実質的に塗料)である。塗装試験において、いずれの塗布剤A,B,Cも下塗りなしで、金属面、プラスチック面、塗装面に何ら問題なく(水性塗料に有りがちな“弾き”や“だれ”を生ずることなく)均一に塗装することができ、短時間で常温硬化した。塗布剤B,Cにおけるアセトンは、速乾性向上と、特にプラスチック面や塗装面における塗布剤の塗着性向上のために配合されている。
【実施例2】
【0017】
光触媒源として、可視光反応型光触媒性酸化チタン微粒子を約10重量%含む水性ゾル(住友チタニウム社製)を用いて、光触媒性塗布剤X1,X2,X3,X4(酸化チタン微粒子含有量0.5,1.0,2.0,6.0重量%)を試作した。分散相としてシリコーン・アクリル樹脂を含む水性エマルジョンに、上記、酸化チタン微粒子を含む水性ゾルを徐々に添加して十分混合し、「一次液剤」を得た。そして,この一次液剤に「有機溶媒を含む液剤」を徐々に添加して十分混合し、本発明の光触媒性塗布剤X1,X2,X3,X4を二次液剤として得た。塗布剤X1,X2,X3,X4のpHは、9.0,8.5,7.5,5,5である。この実施例2の光触媒性塗布剤には、実施例1の塗布剤に配合されているコロイダルシリカが配合されていないが、それは、この実施例2の塗布剤が、主として塗膜における硬さ、親水性をさほど要しない場所で、一種の静菌・殺菌剤として用いられるべく想定されているからである。
【0018】
光触媒性塗布剤X1,X2,X3,X4には一次液剤が、それぞれ51.5,53.0,59.0,68.0重量%配合された。光触媒性塗布剤X1,X2,X3,X4用一次液剤の組成(重社比)は表4のとおりである。
【表4】

【0019】
光触媒性塗布剤X1,X2,X3,X4には「有機溶媒を含む液剤」が、それぞれ48.5,47.0,41.0,32.0重量%配合された。光触媒性塗布剤X1,X2,X3,X4用の「有機溶媒を含む液剤」の組成は表5のとおりである。
【表5】

【0020】
ただし、ここでの結合剤はポリメチルメトキシシランであり、アルコールは、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)の混合物である。各アルコールの割合は表6のとおりである。
【表6】

【0021】
塗装試験においては、吹き付け塗装、刷毛塗り塗装の場合とも、塗布剤X1,X2,X3,X4のいずれにあっても下塗りなしで、金属面、プラスチック面、塗装面に何ら問題なく(水性塗料に有りがちな“弾き”や“だれ”を生ずることなく)均一に塗装することができ、形成された塗膜については、30分以内に見掛け上の常温硬化が認められた。
【実施例3】
【0022】
実施例2で調製した光触媒性塗布剤X1,X2,X3,X4につき、JIS−Z2801(抗菌加工製品ー抗菌性試験方法・抗菌効果)に基づいて静菌・殺菌性を調べた。試験板としては、塗布剤X〜X4を5cm×5cmの硬質塩化ビニル板に噴霧塗装機で均一に塗装後、常温で24時間放置し、硬質塗膜を形成させたものを使用した。光照射実験は、無菌正圧チャンバー内で20時間行った。光源はとしては15cm間隔で列状に配置した100watt白熱灯を用いた。光源−試験板間の距離は約40cmとされた(試験塗膜上での照度は約4700lux)。接種菌としては、JIS法により培養、調製した大腸菌(E.coli−3110)を用いた。ただし、上記、光照射試験、細菌学的試験は、本特許出願人と共同研究を行っている千葉大学医学部で行われた。
【0023】
静菌・殺菌性の検定結果は表7のとおりである。
【表7】

表7から明らかなように、本発明の光触媒性塗布剤では、少なくとも酸化チタン微粒子が塗布剤中で長期間にわたり沈殿しにくく、経済的にも問題にならないレベルの0.5〜2重量%の場合には、菌の発育が殺菌レベルまで阻止されている。また、塗布剤が、凹凸や粗面を備えた物に無造作に塗布されたときに起こりえる塗布部での酸化チタンの不均一分布への対処上、酸化チタン含有量が敢えて高くされた6重量%の場合でも、同様の殺菌効果が見られる。
【実施例4】
【0024】
光触媒源として、二種類のもの、即ち、可視光反応型光触媒性酸化チタン微粒子を約10重量%含む水性ゾル(A)、及び、ペルオキソチタン酸溶液を出発原料とする液剤(紫外線反応型と可視光反応型の光触媒性酸化チタン微粒子が総量で約1重量%含まれるもの)(B)を用いて、光触媒性塗布剤Z1を試作した。分散相としてシリコーン・アクリル樹脂を含む水性エマルジョンに、上記水性ゾル(A)と液剤(B)を徐々に添加して十分混合し、「一次液剤」を得た。ただし、水性ゾル(A)と液剤(B)の配合割合は重量比で1:5とされた。次いで、この一次液剤に「有機溶媒を含む液剤」を徐々に添加して十分混合し、本発明の光触媒性塗布剤を二次液剤として得た。光触媒性塗布剤Z1には一次液剤が78重量%配合された。
【0025】
光触媒性塗布剤Z1用一次液剤の組成(重量比)は表8のとおりである。ただし、表8において、「水溶液」とは、液剤(B)に由来する成分を含む水溶液のことをいう。
【表8】

【0026】
光触媒性塗布剤Z1には「有機溶媒を含む液剤」が22重量%配合された。光触媒性塗布剤Z1用の「有機溶媒を含む液剤」の組成は表9のとおりである。
【表9】

【0027】
ただし、ここでの結合剤はポリメチルメトキシシランであり、アルコールは、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)の混合物である。各アルコールの割合は表10のとおりである。
【表10】

【0028】
塗布剤Z1は吹きつけ塗装においても、刷毛塗り塗装においても、下塗りなしで金属面、プラスチック面、塗装面に何ら問題なく(水性塗料に有りがちな“弾き”や“だれ”を生ずることなく)均一に塗装することができ、得られた塗膜は30分以内に見掛け上、常温硬化した。また、静菌・殺菌性についても、実施例3に準じて行ったが、塗布剤Z1にも殺菌効果が認められたが、上記一連の試験から示唆されるように、塗布剤Z1が常温硬化塗布剤として用いられる場合、塗装性、静菌・殺菌性については、ペルオキソチタン酸溶液を出発原料とした液剤が配合されることに何ら意義が認められない。しかし、塗布剤Z1による塗装部が200〜500℃で加熱される場合には、塗膜自体の緻密化と、塗膜の下地への密着強度の向上に期待する余地がある(特許第2875993号明細書)。
【比較例】
【0029】
実施例3と同様に調製された、酸化チタン微粒子含有量が0.1重量%の光触媒性塗布剤(a)、ペルオキソチタン酸を出発原料として調製された市販の屋内用・可視光反応型光触媒塗料(酸化チタン含有量約1重量%のもの)(b)、光触媒性表面を備えた市販の抗菌タイル(c)の三種類につき、実施例3の要領で静菌・殺菌性試験を行ったが、いずれの場合も静菌性すら見られなかった(実施例3の表7に示された*に相当)。少なくとも、本発明の光触媒性塗布剤(a)の場合、酸化チタン微粒子含有量が0.1重量%では過少であること、市販の屋内用・可視光反応型光触媒塗料(b)、市販の抗菌タイル(c)については、静菌性が否定できないにしても、静菌性を発揮させるには使用条件にかなり制限が課されることがうかがえる。なお、市販の塗料(b)については、実施例3の試験に用いた硬質塩化ビニル板に直接塗布しても付着が全く認められなかった。そのため、塗料(b)については、硬質塩化ビニル板にシリコーン・アクリル樹脂塗料で下塗りを施し、下塗り塗膜が十分硬化した後、下塗り塗膜に対し塗装を行う必要があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂を分散相とする水性エマルジョンに光触媒源の添加混合された液剤に、有機溶媒を含む液剤が添加混合されてなる光触媒性塗布剤。
【請求項2】
光触媒源として、波長が約400nmより短い紫外光を主とする光で励起される紫外光反応型酸化チタン光触媒微粉末、及び/又は、波長が約380nmより長い可視光を主とする光で励起される可視光型酸化チタン光触媒微粉末が用いられる、請求項1に記載の光触媒性塗布剤。
【請求項3】
光触媒源として、波長が約400nmより短い紫外光を主とする光で励起される紫外光反応型酸化チタン光触媒微粒子の懸濁された水性ゾル、及び/又は、波長が約380nmより長い可視光を主とする光で励起される可視光型酸化チタン光触媒微粒子の懸濁された水性ゾルが用いられる、請求項1に記載の光触媒性塗布剤。
【請求項4】
光触媒源としての酸化チタン光触媒微粉末若しくは微粒子として、表面がアパタイトで部分的に被覆されたものの用いられる、請求項2又は3に記載の光触媒性塗布剤。
【請求項5】
光触媒源としての酸化チタン光触媒微粉末若しくは微粒子として、表面がペルオキソ基で修飾されたものの用いられる、請求項2又は3に記載の光触媒性塗布剤。
【請求項6】
合成樹脂として、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、これら樹脂のうちの少なくとも二種類からなる共重合体から選ばれた少なくとも一種類が用いられる、請求項1から請求項5のいずれかに記載の光触媒性塗布剤。
【請求項7】
有機溶媒を含む液剤として、ポリメチルメトキシシロキサンの溶解されたものが使用される、請求項1から請求項6のいずれかに記載の光触媒性塗布剤。
【請求項8】
有機溶媒として、アルコール、ケトン、エステル、キシレン、トルエンから選ばれた少なくとも一種類が用いられる、請求項1から請求項7のいずれかに記載の光触媒性塗布剤。

【公開番号】特開2008−81712(P2008−81712A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288087(P2006−288087)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(506313121)サン・メディック株式会社 (2)
【出願人】(506356508)
【Fターム(参考)】