説明

光触媒担持フッ素繊維からなるパルプおよびそれを用いたペーパー

【課題】
本発明は、光触媒を強固に担持し、かつ、優れた光触媒性能を有し、さらには、繊維同士の交絡性を向上した光触媒担持フッ素繊維からなるパルプおよびそれを用いたペーパーを提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプは、光触媒担持フッ素繊維からなるパルプであって該繊維が分枝構造もしくはフィブリル構造を有し、かつ、該分枝構造もしくはフィブリル構造部分が捲縮を有する部位を含むことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を担持したフッ素繊維からなるパルプおよびそのパルプを含むペーパーに関するものである。さらには、ペーパー等を作るときに繊維同士の交絡性に優れ、かつ、光触媒担持力と光触媒性能にも優れるパルプおよびペーパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化チタン等の光触媒は空気や水の浄化や抗菌用途に活用できる有効な物質として注目を集めており、この光触媒を利用する様々な技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光触媒を担持したポリテトラフルオロエチレン(以下PTFE)繊維の形状が幹繊維から枝繊維が分岐した形状であるPTFE繊維の技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、酸化チタンとフッ素繊維とを含む抄紙スラリーから抄紙して得たプリント回路基板の技術が記載されている。
【0005】
一般に繊維を用いて紙を作る場合、スラリーでの分散性向上のために繊維は短くカットされて使用されることが多い。しかしながら、フッ素繊維は摩擦が小さく、滑りやすい、つまり絡みにくい繊維であるために、特許文献1に記載されているような従来の方法では繊維同士の絡みが不十分であり、充分な強度のペーパーが得られないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載される方法によれば、シート強度は得られるが、酸化チタンがPTFE繊維の表面に付着しているだけなので、シートへの酸化チタンの固着力が不十分であり、取り扱っている間に、かかる酸化チタンが脱落してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平9−256217号公報
【特許文献2】特開2003−8156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、光触媒を強固に担持し、かつ、優れた光触媒性能を有し、さらには、繊維同士の交絡性を向上した光触媒担持フッ素繊維からなるパルプおよびそれを用いたペーパーを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプは、光触媒担持フッ素繊維からなるパルプであって該繊維が分枝構造もしくはフィブリル構造を有し、かつ、該分枝構造もしくはフィブリル構造部分が捲縮を有する部位を含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、かかる光触媒担持フッ素繊維からなるパルプは、光触媒担持フッ素繊維のカットファイバーを、力学的作用によって叩解して構成することが好ましい。
【0010】
さらに、前記光触媒は、少なくとも酸化チタン、酸化チタン変性物およびフラーレンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
さらには、前記光触媒担持フッ素繊維は、吸着剤を含有するものであることが好ましい。
【0012】
また、前記フッ素繊維は、ポリテトラフルオロエチレンを素材として構成されたものであることが好ましい。
【0013】
さらに、前記フッ素繊維は、湿式紡糸法によって得られたものであることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明のペーパーは、かかる光触媒担持フッ素繊維パルプを用いて構成されたものである。
【0015】
また、前記ペーパーは、前記光触媒担持フッ素繊維パルプを10〜100wt%含んで構成されたものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプによれば、光触媒を強固に担持し、かつ、優れた光触媒性能を発揮することができ、しかも、かかるパルプを用いてペーパーを作製すれば、パルプの分子構造部もしくはフィブリル構造部分が捲縮を有する部位を含むので繊維同士の交絡性に優れ、抄紙加工性に優れ、かつ、得られたペーパーは強度が大きく緻密性に優れたペーパーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、前記課題、つまり光触媒を強固に担持し、かつ、優れた光触媒性能を有し、さらには、繊維同士の交絡性を向上した光触媒担持フッ素繊維からなるパルプについて、鋭意検討し、光触媒担持フッ素繊維のカットファイバーを、力学的作用によって叩解して、該繊維に分枝構造もしくはフィブリル構造を形成し、かつ、該分枝構造もしくはフィブリル構造の部分に捲縮を付与してみたところ、前記課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0018】
本発明の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプは、光触媒担持フッ素繊維で構成されており該繊維が分枝構造もしくはフィブリル構造を有するものであって、しかも、前記分枝構造部分もしくはフィブリル構造部分に捲縮を有する部位を含むものであることが重要である。
【0019】
本発明でいうフッ素繊維とは、重合体の繰り返し構造単位の90%以上が、主鎖または側鎖にフッ素原紙を1個以上含むモノマーで構成された繊維であれば、いずれのものでも使用することができるが、フッ素原子数の多いモノマーで構成された繊維であるほど好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)またはエチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE)を用いることがさらに好ましい。PTFEは光触媒で最も劣化を受けにくい高分子であり、かかるPTFEからなる繊維を用いることが好ましい。
本発明でいう光触媒は、TiO、ZnO、Fe等の金属酸化物やCdS、CdSe、また、CO、CO等炭素のみからなる一連の球状炭素分子であるフラーレン、さらに、TiOにCuやCr、V、Sr等の金属をともに含有するTiO変性物等いかなるものを用いてもよいが、中でも酸化力が強いTiO、TiO変性物、COが好ましく、その中でも最もTiOが好ましい。また、これらの光触媒は単体で用いてもよいし、2種類以上を混合しても良い。
【0020】
光触媒の担持方法としては、フッ素樹脂の中に光触媒を練り込んで繊維状にする練り込みのものでもよい。練り込む場合には、繊維内に均一に担持されていてもよいし、芯鞘構造になっていて、鞘の部分に多く光触媒が担持されていてもよい。また、フッ素繊維の表面に光触媒を接着剤等で接着する、あるいは、フッ素繊維の表面を熱溶融して光触媒を熱接着する等の表面で担持する方法であってもよい。
【0021】
かかる光触媒担持フッ素繊維において、該光触媒の担持量は、0.5wt%以上80wt%以下の範囲で含有させるのが好ましい。すなわち、0.5wt%未満では光触媒の効果が充分に得られないし、80wt%を超えると、光触媒の量が多すぎて繊維の風合いが悪くなる。好ましくは、練り込みで担持する場合には0.5wt%以上30wt%以下がよい。30wt%より多いと生産するときに糸切れを頻繁に起こしてしまい、生産性が悪い。さらには。0.5wt%以上20wt%以下が良い。また、表面で担持する場合には0.5wt%以上50wt%以下、さらに好ましくは5wt%以上50wt%以下が好ましい。
【0022】
前記光触媒担持フッ素繊維は、分枝構造もしくはフィブリル構造を有する。ここで、分枝構造とは一本の単繊維が長さ方向に裂け目が入り、長さ方向に幹繊維から枝繊維が分かれて出ている状態を意味するものであり、長さ方向に複数本の構成本数を有する状態をいう。また、複数本に分かれた状態は、再び一本の単繊維の状態に戻っても構わないし、戻らずに箒の先の状態であっても構わない。ここでいうフィブリル構造とは、上記の分枝構造と同様の状態の構造を意味するものであるが、フィブリル構造の場合は、枝分かれした繊維の一本一本は極めて細い状態をいう。
【0023】
かかる光触媒は、表面に露出していないと光が当たらず、光で励起するラジカルが発生しない、または、ラジカルが発生しても表面に出ないので反応物と接触せず光触媒性能を発揮することができない。したがって、かかる光触媒は表面に露出していることが重要である。そこで、繊維が分枝構造もしくはフィブリル構造を有していると、繊維の内部等に入っている光触媒も露出させることができるので、光触媒を有効活用することができる量が増えて、光触媒性能を強く発揮することができるようになる。
【0024】
本発明でいう捲縮とは、繊維が分枝したところの枝繊維部分や、フィブリル化して枝分かれした繊維の一本一本の少なくとも一部がちぢれた状態であることを意味するものである。繊維をちぢれた状態にするために捲縮加工を施してもよい。しかし、フッ素繊維は力学的作用によって叩解してパルプ化すると、捲縮加工を施さなくても、力学的作用によって枝繊維部分やフィブリル化して枝分かれした繊維がちぢれるので、かかる叩解すれば、捲縮を付与することができる。かかる繊維のちぢれ部分同士やちぢれた部分と真っ直ぐな繊維の部分とが絡まり合うので、交絡性が著しく向上する。かかる繊維同士の交絡性の向上により、ペーパーの強度を強くすることができ、取り扱い性や加工性のよいペーパーを提供することができるのである。
【0025】
本発明の光触媒担持フッ素繊維パルプは、光触媒担持フッ素繊維のカットファイバーを力学的作用によって叩解することによって得られる。
【0026】
光触媒担持フッ素繊維のカットファイバーのカット長は、1mm〜30mmの範囲内であれば、いずれの長さでも構わないが、カット長が短すぎるとパルプの繊維長が短くなり、カット長が長すぎるとパルプの繊維長が長くなるので好ましくない。より好ましいカット長は、3mm〜15mmであり、特に好ましくは5mm〜10mmである。
【0027】
光触媒担持フッ素繊維のカットファイバーを得る方法は、ギロチンカッターなどの公知の方法により、光触媒担持フッ素繊維のカットファイバーを得ることができる。
【0028】
得られた光触媒担持フッ素繊維のカットファイバーを力学的作用により叩解することによって、光触媒担持フッ素繊維パルプは得られるが、本発明における力学的作用とは、カットファイバーをすり潰す作用を与えることのできるものなら、いかなる手段を採用してもよい。例えば、ビーター、ホモジナイザーやディスクリファイナーなどを用いても良いし、あるいは、ライカイ機やすり棒とすり鉢を用いて叩解することもできる。また、高圧の水流によるウォータージェットパンチによって叩解しても良い。力学的作用を与えることで、分枝構造部分やフィブリル構造部分の繊維がちぢれて捲縮を付与することができ、交絡性が向上したパルプを得ることができるのである。
さらに、光触媒担持フッ素繊維からなるパルプが、吸着剤を含有するのが好ましい。かかる吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、アパタイト、多孔シリカ、などいかなるものでもよい。吸着剤は、空気中や水中に含まれる汚染物質を吸着する作用がある。光が当たらず光触媒作用が発生しないときにも、吸着剤による汚染物質吸着作用が持続的に発揮される。そして、光が照射されて光触媒効果により、吸着剤に吸着された汚染物質を分解することで、再び吸着剤が吸着できるようになる。よって、光触媒フッ素繊維からなるパルプが吸着剤を含有すると、光が当たらないときも汚染物質の除去ができるので光の有無に関わらず連続的に効果が発揮でき、光触媒で吸着物質を分解するので吸着剤の効果を長く保つことができて、空気や水等の浄化に一層効果的に使用することができる。
【0029】
前述の通り、フッ素繊維はPTFE繊維を好ましく使用することができることができる。PTFE繊維の製法はPTFE樹脂粉末と潤滑剤とを混合し、ペースト押し出しし、シート状物を得て、延伸してフィルム状にして、それをスリットしてフィラメントを得るスリット法や前記フィルムを擦過して開繊するスカイブ法、あるいは、PTFE樹脂粉末を含む分散液とビスコース等セルロース系樹脂とを含む分散液を減圧、脱泡しながら混合、撹拌し、口金から硫酸等の酸性の水溶液中に吐出した糸状物を加熱ロールに接触させて焼成して得る湿式紡糸法等いかなる手段も用いることができる。湿式紡糸法は口金を適切に設計することによって、単糸の繊度が均一な糸を得ることができ、また、単糸を細くすることもできる。
【0030】
まず、PTFE繊維に練り込み担持する方法について述べる。例えば、PTFE樹脂粉末に潤滑剤と酸化チタン等の光触媒を混合して、ペースト押し出ししてシート状物を得、それを延伸してフィルムを得てそれをスリットしてフィラメントを得るスリット法や前記光触媒を含有するフィルムを擦過して開繊する、いわゆるスカイブ法などでもよい。
【0031】
さらに好ましくは、PTFE樹脂粉末を含む分散液とビスコース等セルロース系樹脂と光触媒粉末を含む分散液を減圧、脱泡しながら混合、撹拌し、口金から硫酸等の酸性の水溶液中に吐出した糸状物を加熱ロールに接触させて焼成して得る湿式凝固法を好ましく得ることができる。湿式紡糸法で得たPTFE繊維を用いることで、スリット法やスカイブ法よりも単糸が細く、かつ、繊度が均一な糸を得ることができ、後加工を施し易くなるのである。
【0032】
また、表面担持する方法として、前記いずれかの方法で得たPTFE繊維の表面に接着剤等で光触媒を接着する、または、フッ素系樹脂をバインダーとして熱溶融して光触媒を担持する、または、バインダーや接着剤を用いないでPTFE繊維の表面を熱で溶融したり、光触媒を熱してその熱でPTFE繊維の表面を溶融して光触媒を担持する方法などを用いることができる。前記と同様に、PTFE繊維は、単糸が細く、かつ、繊度を均一にすることができる湿式紡糸法により得られたものが好ましい。
【0033】
前述の通り、光触媒担持フッ素繊維からなるパルプは力学的作用により叩解することにより製造することができる。かかる力学的作用を受けても、繊維に担持された光触媒が脱落しないような強固な担持を実現させるために、練り込み法で担持させるのが好ましい。
【0034】
また、光触媒担持PTFE繊維であって、PTFE樹脂粉末を含む分散液とビスコース等セルロース系樹脂と光触媒粉末を含む分散液を減圧、脱泡しながら混合、撹拌し、口金から硫酸等の酸性の水溶液中に吐出した糸状物を加熱ロールに接触させて焼成して得る湿式凝固法で得たものからなるPTFE繊維からなり、繊維長が0.01mm〜10mmであって、繊維が分枝構造もしくはフィブリル構造を有するパルプであってもよい。光触媒の担持方法は前述の練り込みタイプであっても表面担持方法であってもよい。湿式凝固法で得たPTFE繊維を用いることで、スリット法やスカイブ法よりも単糸が均一で、かつ、単糸繊度が細い糸を得ることができるので、それを分枝構造もしくはフィブリル構造化することで、非常に細い分枝構造部分やフィブリル構造部分を得ることができる。
光触媒担持フッ素繊維からなるパルプを用いると、ペーパーの紙力が強く光触媒の担持力が強く、かつ、優れた光触媒性能を有するという特徴があるペーパーを得ることができる。光触媒担持フッ素繊維のペーパーを得るには、光触媒担持フッ素繊維からなるパルプを水中に分散して抄紙した後に乾燥する、通常公知の湿式抄紙法によればよい。前記光触媒担持フッ素繊維からなるパルプは、分枝構造もしくはフィブリル構造を有し、かつ、分枝構造部分もしくはフィブリル構造部分が捲縮されているので、湿式抄紙時の繊維同士の絡みを向上し、ウェット状態でのペーパーの強力である紙力を向上させることができる。また、光触媒を担持したフッ素繊維からなるパルプを用いているので、抄紙のときにスラリーに光触媒を分散して紙を得た場合のように紙の表面に光触媒をのせるような方法よりも光触媒を強力に担持することができる。さらに、乾燥後に、カレンダーロールなどの手法で、高温下でプレスをすることにより、より緻密な紙力の向上したペーパーとしても差し支えない。
光触媒担持フッ素繊維からなるペーパーには、光触媒担持フッ素繊維以外の他の成分を含んでいても差し支えない。他の成分を混合することによって、更なるペーパーの強度アップやペーパーのコストダウンを図ることができる。例えば、さらに紙の強度向上のために、パラ系アラミド繊維を混ぜることができる。その他、ポリアリーレンスルフィド繊維、メタアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、高強度ポリエチレン繊維などの高機能繊維や、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維、ポリビニルアセテート繊維、などの汎用繊維、ガラス繊維やバサルト繊維、シリカ繊維などの無機繊維のカットファイバーやパルプ、あるいは、木綿繊維、羊毛繊維などの天然繊維やパルプや木材パルプなどを混ぜることも差しつかえない。光触媒担持フッ素繊維からなるパルプとその他の成分とを含むペーパーの場合、光触媒担持フッ素繊維からなるパルプの混率は10〜100wt%がよい。10wt%よりも混率が少なくなると十分な光触媒性能が得られなくなる。さらに好ましくは、30〜80wt%がよい。
光触媒を担持したフッ素繊維からなるパルプを用いて抄紙する方法であるので、ペーパー内で光触媒を均一に、かつ、強固に担持したペーパーを得ることができる。また、すでに光触媒を担持したパルプを用いているので、新たに抄紙工程で光触媒を加える必要がなく、通常の抄紙工程でよく、特に工程を煩雑にすることなく光触媒を担持したペーパーを得ることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を、実施例を記す。ただし、下記する実施例は本発明の一例であって、これに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
分散剤としてアルキルアリルエーテルアルコールを用いて純水に分散されたPTFE系樹脂を60wt%含有するエマルジョン(A)と、ビスコース(B)(セルロース10wt%と苛性ソーダ5wt%、二硫化炭素29wt%/セルロース量、残りイオン交換水)と、酸化チタンエマルジョン(C)(酸化チタン40wt%と純水60wt%とを撹拌しながら水酸化カリウムを添加しpH12に調整したもの)とをA:B:C=55:5:40の割合で混合し、8℃、1.3kPaで24時間脱泡混合して原液をえた。これを口金から凝固浴(硫酸10wt%、硫酸ソーダ15wt%を純水にて溶解した水溶液入り)中に吐出て得た凝固繊維を純水の入った洗浄浴で洗浄し、これを370℃に加熱されたロールに接触させて焼成し、続いて350℃に加熱されたロールに接触させて延伸して単糸繊度7dtexの光触媒担持フッ素繊維を得た。
【0037】
これを、ギロチンカッターを用いて6mmにカットした。このカットファイバー200gを水20リットルとともに、50リットル型ナイアガラビーターに投入して、このナイアガラビーターを30分間運転して、叩解処理を実施し、光触媒担持フッ素繊維のパルプを得た。
【0038】
得られたパルプを顕微鏡により拡大して観察したところ、単繊維が繊維軸方向に分かれて分枝構造を有している部分および繊維先端が細かく枝別れしてフィブリル構造を有しており、分枝構造部分やフィブリル構造部分の繊維が捲縮されている部分が散見できた。
【0039】
実施例2
総繊度440dtex、単糸フィラメント数60フィラメントのPTFE繊維(東レ社製、商品名トヨフロン(R)、)を酸化チタンエマルジョン(酸化チタン40wt%と純水60wt%とを撹拌しながら水酸化カリウムを添加しpH12に調整したもの)に含浸し、絞り、これを400℃で線圧9.8kN/10cm、2m/minでカレンダー処理して光触媒担持フッ素繊維を得た。
【0040】
これを、ギロチンカッターを用いて6mmにカットした。このカットファイバー200gを水20リットルとともに、50リットル型ナイアガラビーターに投入して、このナイアガラビーターを30分間運転して、叩解処理を実施し、光触媒担持フッ素繊維のパルプを得た。
【0041】
得られたパルプを顕微鏡により拡大して観察したところ、短繊維が繊維軸方向に分かれて分枝構造を有している部分および繊維先端が細かく枝別れしてフィブリル構造を有しており、分枝構造部分やフィブリル構造部分の繊維が捲縮されている部分が散見できた。
【0042】
実施例3
実施例1で得た光触媒担持フッ素繊維のパルプ5gと水とを家庭用ミキサーに投入して分散した。この分散液を、大きさ25cm×25cmで高さ40cmの熊谷理機工業製の手漉き抄紙機に投入し、さらに水を追加するとともに、ポリビニルアルコールの糊剤を若干量添加してさらに撹拌した。手漉き抄紙機の水を抜き、金網上に残ったペーパーを濾紙に転写して、濾紙ごとジャポー製乾燥機に温度125℃、速度0.5m/minにて投入して、乾燥処理をして、目付69g/mの光触媒担持フッ素繊維パルプ100%のペーパーを得た。
【0043】
このペーパーは、若干紙力は弱いものの良好なペーパーであった。
【0044】
実施例4
実施例2で得た光触媒担持フッ素繊維のパルプ3.5gとパラ系アラミド繊維(2.5dtex×4mmカットファイバー、東レ・デュポン社製、ケブラー)0.5gと、芯部はポリエステル、鞘部は変性ポリエステルからなる芯鞘構造を有するポリエステル繊維(1.1dtex×4mmカットファイバー)を1.0gと水とを家庭用ミキサーに投入して分散した。
【0045】
この分散液を、大きさ25cm×25cmで高さ40cmの熊谷理機工業製の手漉き抄紙機に投入し、さらに水を追加するとともに、ポリビニルアルコールの糊剤を若干量添加してさらに撹拌した。
【0046】
手漉き抄紙機の水を抜き、金網上に残ったペーパーを濾紙に転写して、濾紙ごとジャポー製乾燥機に温度125℃、速度0.5m/minにて投入して、乾燥処理をして、その後、鉄ロールとペーパーロールからなるカレンダー加工機に通した。カレンダー条件は、温度100℃、荷重は25cm幅のペーパーに対して、100kN/25cm、ロール周速度2m/minとした。
【0047】
得られたペーパーは、目付72g/mの光触媒担持フッ素繊維パルプ含有率約75wt%の良好なペーパーであった。
【0048】
比較例1
分散剤としてアルキルアリルエーテルアルコールを用いて純水に分散されたPTFE系樹脂を60wt%含有するエマルジョン(A)と、ビスコース(B)(セルロース10wt%と苛性ソーダ5wt%、二硫化炭素29wt%/セルロース量、残りイオン交換水)と、酸化チタンエマルジョン(C)(酸化チタン40wt%と純水60wt%とを撹拌しながら水酸化カリウムを添加しpH12に調整したもの)とをA:B:C=55:5:40の割合で混合し、8℃、1.3kPaで24時間脱泡混合して原液をえた。これを口金から凝固浴(硫酸10%、硫酸ソーダ15%を純水にて溶解した水溶液入り)中に吐出て得た凝固繊維を純水の入った洗浄浴で洗浄し、これを370℃に加熱されたロールに接触させて焼成し、続いて350℃に加熱されたロールに接触させて延伸して単糸繊度7dtexの光触媒担持フッ素繊維を得た。これを、ギロチンカッターを用いて6mmにカットした。
【0049】
この光触媒担持フッ素繊維のカットファイバー5gと水とを家庭用ミキサーに投入して分散した。この分散液を、大きさ25cm×25cmで高さ40cmの熊谷理機工業製の手漉き抄紙機に投入し、さらに水を追加するとともに、ポリビニルアルコールの糊剤を若干量添加してさらに撹拌した。
【0050】
手漉き抄紙機の水を抜いた。金網上に残ったペーパーを濾紙に転写しようとしたが、金網上のペーパーの紙力が弱すぎて、濾紙に転写できず、ペーパーを得ることができなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒担持フッ素繊維からなるパルプであって該繊維が分枝構造もしくはフィブリル構造を有し、かつ、該分枝構造もしくはフィブリル構造部分が捲縮を有する部位を含むことを特徴とする光触媒担持フッ素繊維からなるパルプ。
【請求項2】
該パルプが、該光触媒担持フッ素繊維のカットファイバーを力学的作用によって叩解して製造されたものであることを特徴とする光触媒担持フッ素繊維からなるパルプ。
【請求項3】
前記光触媒が、少なくとも酸化チタン、酸化チタン変性物およびフラーレンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプ。
【請求項4】
前記光触媒担持フッ素繊維が、吸着剤を含有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプ。
【請求項5】
前記フッ素繊維が、ポリテトラフルオロエチレンを素材として構成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプ。
【請求項6】
前記フッ素繊維が、湿式紡糸法によって得られたものである請求項1〜5のいずれかに記載の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプを含有することを特徴とするペーパー。
【請求項8】
前記ペーパーが、請求項1〜6のいずれかに記載の光触媒担持フッ素繊維からなるパルプを10〜100wt%含んで構成されたものであることを特徴とする請求項7に記載のペーパー。

【公開番号】特開2007−107118(P2007−107118A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297217(P2005−297217)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】