説明

光触媒活性度評価装置

【課題】
光触媒物質の光触媒活性度を測定する方法としては、被試験材料をサンプルとして実験室に持ち込み、本格的な分析手法と分析機器により評価することが行われてきている。しかし、特に建築用外装材、内装材表面に光触媒物質を塗布する場合には、施工現場での品質確認と、品質保証をする手段が無かった。そこで、建築施工現場で光触媒活性度を簡易に検出し評価する方法、及びそのための携帯型光触媒活性度評価装置の開発が課題であった。
【解決手段】
光触媒物質を塗布、及び含有した外装材表面等にメチレンブルーを基材に含む透明な接着テープを貼り付け、その表面からUV-LED光あるいは可視LED光を照射し、光触媒反応を起こさせる。光触媒の還元反応によるメチレンブルーの脱色過程を、測定光として試料表面に照射した赤色LED光の反射強度の時間変化として測定し、デジタル数値として表示し、光触媒活性度を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築用外装材、内装材、木材表面等に光触媒物質を塗布あるいは含有する物質表面について、その光触媒の活性度を評価、検出し、品質保証を行うための光触媒活性度評価装置と光触媒活性度を評価する基準物質としてのテープ状メチレンブルー試薬の作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒物質は酸化チタンを主成分とし、物質表面に紫外線ならびに可視光線を照射することにより光触媒活性を示す物質である。酸化チタンは紫外線あるいは可視光の光エネルギーにより価電子帯の電子が励起され、電子と正孔のキャリアが生まれる。正孔は空気中の水分子から電子を奪い安定になり、電子を奪われた水分子はヒドロキシラジカルとなる。一方、電子は空気中の酸素と還元反応を起こしスーパーオキサイドアニオンを生成する。一般にヒドロキシラジカルとスーパーオキサイドアニオンは活性酸素と呼ばれ非常に強力な酸化還元分解力を持つ。この分解力で有害物質を分解する。従って、この光触媒反応により、有害ガスの分解、除菌作用、防汚作用等有用な性質が得られる。しかし、これらの有用な光触媒の活性度を評価するためにはサンプルを実験室や研究室に持ち込んで時間をかけて評価しなければならなかった。特に光触媒物質を外装材や内装材に塗布するような場合に、施工現場において短時間で光触媒の活性度を評価するための簡易な評価方法及び評価装置は存在しなかった。
【0003】
この問題を解決する方法として、光触媒標準化委員会で試験方法として提案されている湿式分解性能試験方法である、有機色素のメチレンブルーの還元作用による脱色過程を光学的に測定する方法を採用する。
【特許文献1】特許公開2004-138387 光触媒を起こさせるための活性化光源と、測定光を所定の試料に照射するための発光素子と、当該試料を介して到達した光を受光する受光素子とを有する光量検出部とを備え、受光素子にて得られた結果に基づいて光触媒機能を評価する光触媒機能評価装置であり、活性化光源は波長の異なる複数のランプを有し、光量検出部は、光触媒機能を評価する際の基準となる試料のための規準試料用検出部と光触媒機能が評価される試料のための評価試料用検出部とを備え、基準試料用検出部と評価試料用検出部の複数のランプに対する光学的配置が同一であることを特徴としている。この装置は基準試料との相対的比較により光活性度を測定することを目的として開発されており、厳密な光活性度の測定には適している。しかしながら、測定装置が本格的となり、携帯型検出目的には適用できない。光触媒を施工する工事現場等で簡易に活性度を確認する目的には適していない。
【特許文献2】特許公開2005−313044 試験用光触媒塗膜や光触媒含有物を、持ち運びが可能でいかなる場所においても迅速に、かつ需要者に対して直感的に判り易く展示することができる評価装置である。持ち運び可能な箱型ケースの中身部と蓋部を約90度開き、蓋部または中身部側壁から伸びる腕部により光源を保持することにより、中身部上部に水平に並べて載置した光触媒塗膜およびインク塗装板と、インク塗装板とを照射し、または光触媒塗膜を形成した後、インクを塗布した塗装板の上に塗膜被覆小片を載置して光源を照射し、光触媒塗膜の防汚効果を目視にて比較するための評価装置である。携帯型の簡易な評価装置ではあるが数値的に検出するのではなく、目視によることから、誰でもどのような種類の光触媒についても客観的な評価をするのには適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化チタンを主成分とする光触媒は太陽光の照射のもとで、表面に吸着した水分と作用し、酸化、還元作用を起こすことから、有機物分解性と、高い水濡れ性能という主に2つの機能を発現することで知られている。この現象を利用して防菌、防カビ、防汚性能を有する建築用素材を提供できることから、医療関係、食品流通関係、建築関係業界で広く使用されるようになってきている。光触媒は酸化チタンの濃度が濃いほど光活性度が高いが、濃すぎると表面に結晶が析出するなどいわゆる白華現象が起きるので、濃度調整が必要であり、濃度の非常に低い不良品も出回ることが問題となっている。光触媒の活性度を評価する方法としては(1)オレイン酸試験方法(2)親水性能試験方法(3)湿式分解性能試験方法、の3つの方法が検討されている。このうち(1)のオレイン酸試験方法と(2)の親水性能試験方法はいづれも試料に光照射を行い、水接触角の変化を追跡し、何度まで水接触角が下がるか(最終接触角)を求めるもので、有機物分解のセルフクリーニング効果との関連性から光活性度を評価しようというものである。両者の相関関係は良いことが知られているが試料を実験室に持ち込んで、一般的には48時間程度の測定時間を必要とする。(3)の湿式分解性能試験方法は試験片に円筒を貼り付け、その円筒の中に色素水溶液(メチレンブルー)を注ぎ、光照射の経過とともに、その還元反応による脱色過程を吸光光度計を用いて追跡するものである。この方法は測定時間は30分から1時間程度で測定できるが、試料を実験室に持ち込み、吸光光度計を使うという本格的な測定装置を用いなければならず、施工現場での検出・評価には適さない。このような事情から、施工現場で簡易に光触媒の活性度を評価する装置の開発が課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では光触媒物質を塗布あるいは含有する被検査対象材料表面に、光活性度を評価する評価基準物質として、メチレンブルーを含む光触媒反応物質を塗布あるいは含有するテープを貼り付けた後、テープ状薄膜を透過させてUV-LEDあるいは可視光LEDからの光を照射し、光触媒反応を起こす。被検査対象材料表面で光触媒反応が進行するに伴い、評価基準物質であるメチレンブルーの還元反応による脱色が進行する。この脱色過程を、測定光として赤色LEDからの赤色光をメチレンブルーに照射し、照射光に対する反射光の反射率を測定する。測定結果をデジタル表示、視覚化表示し、光触媒活性度を評価するシステムである。
【発明の効果】
【0006】
以上のように請求項1,2記載の発明によれば、光触媒活性度の評価が建設施工現場等で比較的簡易かつ確実に行うことが可能となる。また、光触媒活性度測定用の光源としてUV-LEDと可視光LEDを具備し、両者を選択して照射できることから、被検査対象材料のUV光及び可視光に対する光触媒活性度を評価することが可能となり、広い範囲での光触媒物質の品質保証を確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
酸化チタンを主成分とする光触媒物質の表面にメチレンブルーを主成分とする光触媒反応物質を塗布あるいは含有するテープを貼り付け、その表面から光を照射することにより、光触媒を活性化させ、還元反応によるメチレンブルーの脱色を進行させる。このメチレンブルーの脱色過程を光学的に検出するため、測定光として赤色LEDスポット光を照射し、メチレンブルー表面からの反射光強度をホトダイオードあるいはホトトランジスタを用いて検出する。従って、光触媒活性度評価装置は試料表面にUV光あるいは可視光を集光させ照射するための光源部と、試料表面からの反射光を光ファイバーを用いて集光し、光検出器に導くための反射光受光部より構成された検出器ヘッド部分と、検出器ヘッド部分からの反射光を光ファイバーを通して連結された測定器本体部分とで構成される。測定器本体部分は測定器ヘッド部分より光ファイバーで取り込まれた反射光を検出するための光検出回路と、検出器回路からの出力である光起電力をデジタル変換し、数値的に表示すると共に視覚化して表示する回路、及び光源部、検出回路部、デジタル表示部にそれぞれ供給する電源回路部より構成されている。
【0008】
照射光として使用するUVLED及び可視光LEDは測定器ヘッド部分において同軸状に配置され、スイッチを切り替えることにより、測定する光触媒物質上に同じ条件で集光させる。測定光としての赤色LED光はメチレンブルーテープ表面に対し垂直に入射させ、同じ配置で垂直に反射する反射光を光ファイバーを通して光電検出器で検出する。この測定用LEDの光源回路及び反射光検出回路はパルス変調させることにより、測定光以外の光による影響を排除する回路構成とすることを特徴とする。
【0009】
図1は光照射時間に対する反射光強度の変化を示すグラフであり、3本のグラフは照射するUV-LEDの光強度がそれぞれ強、中、弱の場合の結果を示している。図2は図1で測定した反射光強度の変化を、発光ダイオードのセグメント表示で示した様子を撮影した写真であり、1分程度で光触媒活性度が評価可能であることを示している。図3は請求項1にかかわる光触媒活性度評価装置の配置及び構成図であり、図4は評価装置ヘッド部の断面配置図である。


































【産業上の利用可能性】
【0010】
一般建築用外装材、内装材、トラック等輸送用機器の外装材、内装材表面への塗布、含浸、便器等各種衛生用機器に使用されるタイル等の表面へ塗布及び含浸させた光触媒物質の評価、品質保証用としての利用が見込まれる。またこれら施工後の評価確認と経年変化に伴う劣化程度の評価、判定にも利用可能である。











































【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】光照射時間に対する反射光強度の変化の測定例を示すグラフである。
【図2】光照射時間に対する光触媒活性度を発光ダイオードのセグメント表示で示した様子を撮影した写真である。
【図3】本発明に係わる光触媒活性度評価装置の配置及び構成を示す図である。
【図4】評価装置ヘッド部分の配置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0012】
1・・・光電検出器主回路
2・・・電源
3・・・動作表示灯
4・・・デジタル表示部
5・・・赤色LED,光検出器
6・・・UVLED,可視光LED
7・・・テープ(メチレンブルー)
8・・・光触媒物質
9・・・2心光ファイバー
10・・・評価装置ヘッド部カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン等を主成分とする光触媒の活性度を評価検出する方法であって、(a)光触媒が塗布された或いは含有する物質表面に、光触媒活性度を評価する評価基準物質として、メチレンブルーを含む光触媒反応物質を塗布あるいは含有するテープを貼り付ける。(b)テープの表面にUV-LEDあるいは可視光LEDを用いて紫外線あるいは可視光を照射し、テープを透過した紫外線あるいは可視光により光触媒物質を活性化させ光触媒反応を進行させる。(c)光触媒反応の活性度を評価基準物質であるメチレンブルーの還元反応である脱色過程の進行状況から判定する。(d)メチレンブルーの脱色過程を測定するため、テープ表面に測定光として光ファイバーにて集光した赤色LED光を照射し、テープからの反射光の強度を光強度検出用デバイスにより検出する。(e)その強度を数値的にデジタル表示すると共に発光ダイオードにより棒グラフ状に視覚的に表示し、光触媒の活性度を評価する。これら(a) ,(b), (c) ,(d), (e)の手順によりタイル、建築用外装材、内装材、木材、壁紙等の表面に使用した光触媒物質の光触媒活性度を評価、検出するための評価装置。
【請求項2】
光触媒物質の光触媒活性度を評価するための評価基準物質としてメチレンブルーを使用する。活性度評価の行程において、光触媒物質とメチレンブルーを密着反応させる手段として、テープ状薄膜表面にメチレンブルーを塗布し、光活性度を正確に検出できるようにするための方法ならびにメチレンブルー試薬の作成方法及び作製した活性度検出用試薬テープ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−298328(P2007−298328A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125155(P2006−125155)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(304006311)
【Fターム(参考)】