説明

光触媒

【課題】バンドギャップが水分解反応に必要な範囲(1.5eV以上)で出来るだけ小さく可視光を吸収するとともに、化学的に安定な光触媒材料を提供する。
【解決手段】InZn(式中、xとyは、x+y=1と0<y≦0.1を満足する正数であって、zは1である。)で表される組成を有する光触媒と、前記光触媒の粒子と金属粒子又は金属酸化物粒子を結合させた水分解用触媒粒子と、前記光触媒を陰極として水を電解分解する水素の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーによって水を分解して水素を生成する水分解用光触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化が進む現在、COを排出しない非化石燃料をベースとしたエネルギー源の確保が強く望まれている。光触媒を用いた水分解反応は、光触媒に太陽光を照射すると、光触媒が光エネルギーを吸収して電子と正孔を生成し、それらの電荷が水と反応して、それぞれ水素と酸素を発生させるものである。当該技術は、1972年の藤嶋らの報告(非特許文献1)に端を発する。その原理を図2に示す。光触媒材料1にバンドギャップ以上のエネルギーの光を照射すると価電子帯の電子が伝導帯へと励起される。励起された電子は水を還元して水素を生成し、一方で価電子帯に形成された正孔は、助触媒2に移動し、水を酸化し酸素を生成する。水の解離エネルギーは1.23eVであり、原理的には光触媒材料のバンドギャップはこれより大きければ良い事になる。即ち、水の完全分解を進行させるには、伝導帯の底がH/Hの酸化還元電位(0Vvs.NHE,pH=0)よりも負で、価電子帯の上端が0/HO電位(1.23Vvs.NHE,pH=0)よりも正であれば良い。即ち、反応の過電圧が全くないと仮定すればバンドギャップは1.23Vあれば良く、理想的には1000nmまでの光を利用できる事になるが、経験的には化学反応の推進力を確保するため、1.5eV程度以上ある事が必要とされている。即ち、光触媒のバンドギャップは可視光吸収の点からは小さい事が望ましいが、水分解機能を持つためには原理的には1.23eV以上、経験的には1.5eV以上(波長約800nm以下に相当)ある事が必要である。
【0003】
これに拠れば、水と接する光触媒に太陽光を照射するだけで水素ガスと酸素ガスを得る事ができる。水素ガスを燃焼しても水が得られるだけなので環境負荷はほとんど無く、上記の温暖化対策エネルギー減としては理想的なものである。
【0004】
この光触媒材料としては、最初に当該現象が観測されたTiOの他、各種酸化物、酸窒化物が開示されている(例えば特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2003−19437号公報
【特許文献2】特開2006−116415号公報
【非特許文献1】A.Fujishima and K.Honda,Nature,238,37(1972)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現在までに得られた触媒材料では、紫外光に対しては比較的高い効率が得られているものの、可視光については低い感度しか示さない。これは、多くの光触媒はバンドギャップが大きい(>3eV)ため、可視光に対してはほとんど透明で、これらを吸収しないためである。紫外線は太陽光の中に約3%程度しか含まれておらず、実用化にあたっては可視光を吸収して水を分解する光触媒の開発が必要とされている。
【0006】
現在までに得られている光触媒の多くは金属酸化物であるが、可視光吸収を得るために、例えば硫化物が検討されている。しかしながら、酸化物の価電子帯上端はO2p軌道で構成され、真空準位から見て深くなり化学的には安定であるのに対し、硫化物では、価電子帯上端のS2p軌道が浅く、バンドギャップが小さくなるので可視光吸収が可能となるが、化学的には不安定となり光酸化が発生するという問題がある。
【0007】
同様に、IIIV族半導体であるGaP、InPは、バンドギャップが小さく、特にInPバンドギャップは1.35eV(波長では約890nmに相当)で、可視光全域を吸収するとともに、水分解反応に最小限必要な1.23eVよりは大きいので、水分解用光触媒として原理的には好適であるが、光触媒としての活性を確保する1.5eVよりは小さく、かつ、光酸化が発生するので光触媒としては用いられていない。
【0008】
このように、バンドギャップが水分解反応に必要な範囲(1.5eV以上)で出来るだけ小さく可視光を吸収するとともに、化学的に安定な光触媒材料が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、バンドギャップが水分解反応に必要な範囲(1.5eV以上)で出来るだけ小さく可視光を吸収するとともに、化学的に安定な光触媒材料を提供する事を目的としている。
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明においては、InZn(x+y=1,0<y≦0.1,z=1。)で表される組成を有し、好ましい態様として、これらの光触媒の代表寸法が10nm以下である事とした。ここで、代表寸法とは、光触媒の形態が粒子であれば平均粒径、棒状であれば平均直径、面状であれば平均膜厚、また多孔質とした場合は当該材料壁の厚さなどを示し、物理的には、光照射により光触媒内部で発生した電荷が、光触媒表面へ移動するのに必要な距離を表すものである。
【0011】
すなわち、本発明は、InZn(式中、xとyは、x+y=1と0<y≦0.1を満足する正数であって、zは1である。)で表される組成を有する光触媒と、前記光触媒の粒子と金属粒子又は金属酸化物粒子を結合させた水分解用触媒粒子と、前記光触媒を陰極として水を電解分解する水素の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、バンドギャップが水分解反応に必要な範囲(1.5eV以上)で出来るだけ小さく可視光を吸収するとともに、化学的に安定な光触媒材料を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の要点の1つは、水分解に適したバンドギャップを持つ光触媒に不純物を添加してp型半導体とし、主触媒である光触媒表面では、水素イオンに電子を供給する還元反応が起こり、水に正孔を供給して酸素を発生させる酸化反応は酸化反応に耐性のある助触媒で起こるように構成する事により、当該光触媒の酸化反応による腐食を抑制した事にある。一般的には、酸化還元の役割が逆になることもあるため、広い意味での助触媒の機能は、光吸収で生じた正負の電荷対のうち一方を捕獲して、正負の電荷の分離を促進することである。本発明においては、主触媒では還元反応が促進され、助触媒では酸化反応が促進される。
【0014】
図1に示すように、一般にp型半導体においては、フェルミ準位が価電子帯近傍となる。光触媒1に接触する助触媒2を標準にすると、助触媒の仕事関数とp型半導体のフェルミ準位は一致するので、p型半導体のエネルギー準位は全体的に上へ押し上げられるが、水3との界面でエネルギー準位がピンニングされると半導体内部でエネルギー準位が水側に向かって下り勾配で曲がる事になる。この状態は、水側がプラスとなる電界に相当する。ここで、光照射により半導体内に電子と正孔の電荷対が生じると、電子は水に向かって流れ、水との界面で水素イオンを還元して水素ガスを発生する。一方の正孔は、助触媒2へ移動し、助触媒と水との界面で酸素ガスを発生する。この構成によれば、半導体/水の界面では強い還元力が生じるが、GaP、InPのようなIIIV族半導体は還元反応に対する耐久性が高く、化学的に安定である。なお、このように、半導体のp/n極性により半導体表面での還元/酸化反応の逆転が生じる事は、GaNでも確認されているものである{藤井等、信学会報ED2005・149,47(2005・10)}。一方、助触媒では酸化反応が起きるが、材料として酸化物や、Pt、Au、Ti、Ag等の耐食性の高い金属を用いる事により、化学的に安定とする事ができる。特に酸化物としては、IrO、Laは酸素発生機能を持つ助触媒として知られているものである。
【0015】
本発明の他の要点は、光触媒材料のバンドギャップの調整である。前述のように、光触媒のバンドギャップは可視光吸収の点からは小さい事が望ましいが、水分解機能を持つためには原理的には1.23eV以上、経験的には化学反応の推進力を確保するため、1.5eV程度以上ある事が必要とされている。InPのバンドギャップは、1.29eV(波長では約890nm)とされ、水分解反応を効率的に進めるには不足する場合がある。これらの材料のバンドギャップを調整する手段としては、以下の方法がある。
【0016】
例えばInPにGaを添加してバンドギャップを大きくする事が可能である。即ち、化合物半導体の元素を同族(InとGaはIII族)元素と置換してバンドギャップを調整する事は化合物半導体で広く行なわれている手法である。基本的には元素の大きさが異なるため、置換する元素が一定割合を超えると結晶歪が大きくなり、結晶性が損なわれる場合がある。
【0017】
光触媒としては、In(式中、xとyは、x+y=1と0<y≦0.1を満足する正数であって、zは1であり、MはZn、Cd、Hg及びMgからなる群から選ばれた元素である。)で表される組成を有する光触媒が挙げられる。Mとしては、Znが好ましい。
【0018】
上記に述べた微細半導体粒子へのp型ドーパントの添加量が多くなると、母体材料の結晶性が損なわれるので、アニオン元素のうち、おおよそ10mol%(y≦0.1)以内である事が望ましく、実効的には3mol%あれば充分な効果が得られるものである。またナノサイズの粒子では原子数が数100個程度であるため、添加量は0.1mol%以上でなくては物理的意味を持たない。
【0019】
他の方法としては、Inをナノ寸法まで微細化する事により実質的なバンドギャップを小さくする事が可能である。即ち、半導体粒子の寸法が10nm以下となると量子力学的効果によりエネルギー準位が離散化し、同時にバンドギャップが拡大する(図5)。この手法によれば、元素の大きさの差異に基づく結晶歪が生じないという利点がある。
同時に、寸法が微細化される事で、実質的に光触媒の表面積が増加するので、反応効率が上昇するとともに、光照射により光触媒内で生じた電荷が効率良く光触媒表面に到達できるという利点が生じる。即ち、一般には光触媒には電界が印加されていないので、光照射で生じた電荷の移動は拡散プロセスによる。拡散では移動速度が小さいので、触媒内の欠陥等に捕獲される確率が高く、その移動距離は、材料や条件に依存するが、おおよそ10nm程度である。即ち、表面から10nm以上の深さで吸収された光により生じた電荷は表面に到達しないため、化学反応に有効に用いられる事がなく、量子効率を低下される事となる。このため、光触媒の代表寸法は、10nm以下で有ることが望ましい。
【0020】
代表寸法とは、透過型電子顕微鏡を用いて、少なくとも5試料、1試料につき少なくとも10箇所の測定を行い、光触媒の形態が粒子であれば平均粒径、棒状であれば平均直径、面状であれば平均膜厚、また多孔質とした場合は当該材料壁の厚さなどを示し、物理的には、光照射により光触媒内部で発生した電荷が、光触媒表面へ移動するのに必要な距離を表すものである。
【0021】
一方、例えば光触媒を膜として構成しこれに電界を印加する場合、あるいはpn接合やショットキー接合などにより光触媒内に空乏層を形成する場合など、電界により電荷が移動するよう構成した場合には、移動距離を数100nmとする事も可能である。この場合、光触媒をナノ寸法まで微細化する利点は、実質的にバンドギャップの調整と反応表面積の増加に止まるが、それらの効果だけでも絶大である事に変わりはない。
【0022】
P型のInPは既にウェファとして市販されており、これをそのまま用いる事も可能である。また組成を最適化した薄膜として得るには、例えば市販のウェファを基板としてMOCVDなどエピタキシャル成長による事が可能であるが、それだけでは、10nm以下の微細粒子を得る事はできない。
【0023】
次に、本発明の実施の形態に係る光触媒の製造方法を説明する。
10nm以下の微細寸法の半導体粒子を作製する方法としては、化学合成による方法が知られておりこれを用いる事が好適である{B.O.Dabbousi,J.Phys.Chem.B1997,101,9463(1997)}。
【0024】
好ましくは、InCl等のインジウム塩100質量部、P(SiMe40〜100質量部を含み、好ましい濃度は0.05g/mL〜0.35g/mLであるホスフィン溶液、例えばトリオクチルフォスフィン(TOP)溶液と、ZnEt等のアルキル亜鉛 <7 質量部と、トリオクチルフォスフィン酸化物(TOPO)1000〜1800質量部とを混合し、80〜500℃で加熱し反応させることにより、InZnのコロイド分散液が得られる。
もしくはCIn等の有機インジウム化合物のトルエン溶液を50℃に加熱する事でInナノ粒子の分散液を得た後、P(SiMe1000〜3000質量部とZnEt等のアルキル亜鉛 <7 質量部を含むトリオクチルフォスフィン(TOP)溶液と、ヘキサデシルアミン等の長鎖アルキルアミン100〜600質量部とを混合し、80〜500℃で加熱し反応させることにより、InZnのコロイド分散液が得られる。
【0025】
また、形状を例えばロッド状とし、その片側にAuなどの金属粒子を付着させ助触媒として機能するように構成する事も可能である{N,M,Dimitrijevic,J,Phys,Chem.B2005,18243(2005)}。
【0026】
光触媒の粒子に金属粒子又は金属酸化物粒子を付着させた水分解用触媒粒子の製造方法の具体例を説明する。
好ましくは、InCl等のインジウム塩100質量部、P(SiMe40〜100質量部を含み、好ましい濃度は0.05g/mL〜0.35g/mLであるホスフィン溶液、例えばトリオクチルフォスフィン(TOP)溶液と、Auナノ粒子1000〜4000質量部のトルエン等の芳香族炭化水素分散液と、ZnEt等のアルキル亜鉛 <7 質量部と、トリオクチルフォスフィン酸化物(TOPO)1000〜1800質量部とを混合し、300〜500℃で加熱し反応させることにより、一端にAuナノ粒子が付加されたInZnのコロイド分散液が得られる。
【0027】
光触媒の粒子(ロッドを含む)の大きさは、好ましくは、平均粒径(平均直径)10nm以下であり、助触媒の形状は概ね球状であり、その大きさは、好ましくは、平均粒径10nm以下である。助触媒としては、好ましくは、Pt、Au、Ti、Ag等の金属や、IrO、La等の酸素発生機能を持つ金属酸化物が挙げられる。
【0028】
本発明の実施の形態に係る光触媒を用いた水分解水素製造装置の例を図3に示す。図3は光触媒1に助触媒2を付着させた水分解用触媒粒子を、反応容器4内の水3中に分散している水分解装置を示す。前述のメカニズムにより、光発生した電荷のうち電子は光触媒、正孔は助触媒へと分離される。助触媒は、好ましくは、Pt、Au、Ti、Ag等の金属や、IrO、La等の酸素発生機能を持つ金属酸化物である。
【0029】
また、図4は、反応容器15内に光触媒11と助触媒12がそれぞれコーティングされた基板13、14を備える加水分解水素製造装置を示す。光触媒11は導電性薄膜が形成されたガラス基板13上にキャストコートやスピンコートなどの手段で数nm厚さの薄膜として形成された後、例えば50nm程度の厚さの、シリカ等の透明酸化物薄膜で被覆される。また、助触媒12はガラス基板14上にスパッタ等の方法で50nm程度の厚さの薄膜として形成される。さらに光触媒11と助触媒12の基板13、14は配線16により電気的に接続されるので、図3と同様に光発生した電荷のうち電子は光触媒、正孔は助触媒へと分離される。このようにして、前述のメカニズムにより、光触媒では水素、助触媒では酸素が発生する。助触媒については上記と同様である。電極間の距離、電極の大きさは任意であるが、電極間の距離1〜30mm、電極の一辺300〜1000mm程度が望ましい。また、主触媒と助触媒の面は対抗する事が望ましいが、外部からの太陽光の照射効率の点からは主触媒面は反応容器の外側を向いている事も望ましい。最適配置は、基板や電極の透明性などを勘案して適宜設計する事が望ましい。
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0030】
InClのトリオクチルフォスフィン(TOP)溶液(濃度0.15g/mL)10mLとP(SiMe(Meはメチル基を表す。)850mg、直径2nmのAuナノ粒子のトルエン分散液(6.7g/mL)5mL、ZnEt(ジエチル亜鉛)0.5mg、及びTOP5mLを、360℃に加熱したトリオクチルフォスフィン酸化物(TOPO)20gへ添加し、良く撹拝した後、別のTOPを注入する事で220℃に急冷し、その後、室温へ冷却した。これにより、Znを微量添加し、一端にAuナノ粒子が付加されたInZnナノロッドのコロイド分散液を得た。平均寸法は約2nmΦx30nm長さであった。また、生成したInZnの組成は、x=0.994、y=0.006であった。
このコロイド溶液にオレイン酸を添加し、ナノロッドを親水化した後、水を注入して移送処理を行なった。このようにして得たナノロッドの分散液を図3に示す反応容器に入れ、次いで犠牲試薬となるメタノールを体積比で10%入れ、容器外部よりキセノンランプ(500W、520nm以下のカットオフフィルター付き)を照射して、発生水素量を測定した。
【実施例2】
【0031】
100mgのCIn、1mLのTOP、100mLトルエンを混合し、50℃に加熱する事で金属Inナノ粒子のコロイド溶液を作製した。このInコロイド溶液を用い、In10mg、P(SiMe(Meはメチル基を表す。)300mg、25mLのトルエン、ZnEt(ジエチル亜鉛)0.5mg、300mgのヘキサデシルアミンを混合し、窒素雰囲気中、110℃で2時間加熱する事によりInZnのナノロッドのコロイド分散液を得た。生成したInZnの組成は、x=0.96、y=0.04であった。
ナノロッドの平均寸法は約9nmΦx50nm長さであった。次にこれをITO付きのガラス基板上に塗布し、真空中200℃で加圧しながら熱処理を行い固定した。次いで図4に示す反応容器において、助触媒としてのAu薄膜と電気的に接続し、容器外部よりキセノンランプ(500W、520nm以下のカットオフフィルター付き)を照射した。
【0032】
比較例1
ZnEtを添加しない以外は実施例1と同様にして、比較例1の試料を得、実施例1と同様の試験を行なった。
【0033】
比較例2
ZnEtを添加しない以外は実施例2と同様にして、比較例2の試料を得、実施例2と同様の試験を行なった。
【0034】
比較例3
光触媒として市販のP型InPウェファ(住友電工製)を用い、図4に示す反応容器において、助触媒としてのAu薄膜と電気的に接続し、容器外部よりキセノンランプ(500W、520nm以下のカットオフフィルター付き)を照射した。
【0035】
実施例1、2及び比較例1、2、3の各光触媒について、光照射により発生したガス量を測定した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1と2においては、水素ガスの発生が認められ、かつ3時間後も安定した反応が認められている。これに対し、比較例1と2では時間経過による反応の低下が顕著であり、触媒機能の低下が示唆される結果となっている。また比較例3では当初から触媒活性が認められず、実施例1と2におけるナノ粒子化の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の光触媒のエネルギー準位と光生成電荷の移動プロセスを示す説明図。
【図2】光触媒を用いた水分解反応のメカニズムを示す説明図。
【図3】本発明の光触媒を用いた水分解装置の一例を示す説明図。
【図4】本発明の光触媒を用いた水分解装置の他の一例を示す説明図。
【図5】粒径とエネルギー準位の関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0039】
1 光触媒
2 助触媒
3 水
4 反応容器
11 光触媒
12 助触媒
13 基板
14 基板
15 反応容器
16 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
InZn
(式中、xとyは、x+y=1と0<y≦0.1を満足する正数であって、zは1である。)
で表される組成を有する光触媒。
【請求項2】
代表寸法が10nmである請求項1に記載の光触媒。
【請求項3】
可視光を吸収し、水を分解して水素を発生する請求項1に記載の光触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒の粒子に金属粒子又は金属酸化物粒子を付着させた水分解用触媒粒子。
【請求項5】
上記金属粒子が、Pt、Au、Ti及びAgからなる群から選ばれる請求項4に記載の水分解用触媒粒子。
【請求項6】
上記金属酸化物粒子が、IrO又はLaである請求項4又は請求項5に記載の水分解用触媒粒子。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒を陰極として水を電解分解する水素の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−255013(P2009−255013A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109959(P2008−109959)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】