説明

光計測装置及び光計測装置のフォーカス調整方法

【課題】検出器の構成に起因するケラレを抑制できる光計測装置を提供する。
【解決手段】光計測装置1は、測定対象としての面光源101からの光を投影する集光レンズ21と、集光レンズ21を介して面光源101の共役点に配置される視野絞り部材23と、視野絞り部材23を透過した面光源101からの光を投影するリレーレンズ25と、リレーレンズ25により投影された光が入射する複数の入射面31aが当該複数の入射面31a間に隙間が生じるように配置された入射部27を有し、複数の入射面31aに入射した光に応じた信号を出力する検出器7とを有し、複数の入射面31aは、リレーレンズ25を介した視野絞り部材23の共役点からリレーレンズ25の光軸方向へずれた位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源における輝度や色度等の光に係る量を計測する光計測装置及び当該光計測装置のフォーカス調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源の輝度や色度等の物理量若しくは心理物理量を計測する技術が知られている。特許文献1では、紙等のウェブの光学情報を収集する収集装置として、ウェブの各部からの光を順次偏向することによりウェブを走査するガルバノミラーと、ガルバノミラーにより偏向された光を透過させる2つのスリットと、2つのスリットを透過した光を分光する分光器とを有する装置が開示されている。また、複数の光ファイバ(多芯ファイバ)により構成された入射部を有し、多芯ファイバに入射した光を分光する分光器が知られている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−93326号公報
【特許文献2】特開2006−162509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光源の光を多芯ファイバに入射させるときに、光源と多芯ファイバとの間に光学系を配置し、光源の像を多芯ファイバの入射面に結像させることが考えられる。しかし、多芯ファイバの入射面は、複数の光ファイバの入射面の集合であることから、複数の光ファイバ間の隙間においては、光が取り込まれない。すなわち、測定領域の局所的な光が検出器に取り込まれ、ケラレが生じることになる。この場合、測定領域全体における光を精度よく計測しているとはいえない。
【0004】
本発明の目的は、検出器の構成に起因するケラレを抑制できる光計測装置及び光計測装置のフォーカス調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光計測装置は、測定対象としての被測定光源からの光を投影する第1光学系と、前記第1光学系を介して前記被測定光源の共役点に配置される視野絞り部材と、前記視野絞り部材を透過した前記被測定光源からの光を投影する第2光学系と、前記第2光学系により投影された光が入射する複数の入射面が当該複数の入射面間に隙間が生じるように配置された入射部を有し、前記複数の入射面に入射した光に応じた信号を出力する検出器と、を有し、前記複数の入射面は、前記第2光学系を介した前記視野絞り部材の共役点から前記第2光学系の光軸方向へずれた位置に配置されている。
【0006】
本発明の光計測装置のフォーカス調整方法は、測定対象としての被測定光源からの光を投影する第1光学系、前記第1光学系を介して前記被測定光源の共役点に配置される視野絞り部材、前記視野絞り部材を透過した前記被測定光源からの光を投影する第2光学系、前記第2光学系により投影された光が入射する複数の入射面が当該複数の入射面間に隙間が生じるように配置された入射部と、当該入射部により導光された光を受光して、受光した光に応じた信号を出力する本体部とを有する検出器の、前記入射部、並びに、前記本体部に代えて前記入射部に接続され、前記複数の入射面から光を出射可能な置換型逆投影用光源、を配置し、その配置された、前記第1光学系、前記視野絞り部材、前記第2光学系、及び、前記入射部の少なくとも一つを移動させ、前記視野絞り部材及び前記複数の入射面の像を前記被測定光源の配置位置に合焦させ、その合焦の後、前記入射部を移動させ、前記被測定光源の配置位置における前記複数の入射面の像をデフォーカスし、そのデフォーカスの後、前記置換型逆投影用光源に代えて前記本体部を前記入射部に接続する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検出器の構成に起因するケラレを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1の実施形態)
(光計測装置の概略構成)
図1は、本発明の実施形態に係る光計測装置1の概略構成を示す簡略図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。
【0009】
光計測装置1は、測定対象である面光源101の輝度分布や色度分布等の光に係る量の分布を計測する装置として構成されている。面光源101は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の、複数の画素毎に輝度を調整して表示を行う表示装置である。面光源101の平面形状(図1の紙面右側から見た形状)は、適宜に設定されてよいが、例えば、所定方向(本実施形態の例では水平方向、図1(a)の紙面上下方向、図1(b)の紙面貫通方向)を長手方向とする矩形である。なお、一般的な表示装置では、アスペクト比(長手方向の長さ:短手方向の長さ)=16:9である。
【0010】
光計測装置1は、面光源101の各部(測定領域A)の光を順次取り込む動作を行う空間分割装置3と、空間分割装置3により取り込まれた光を集光する光学集光装置5と、光学集光装置5により集光された光を受光し、受光した光に応じた信号を出力する検出器7と、空間分割装置3の制御や検出器7の検出結果に基づく処理を行う演算装置9(図1(a))と、光学集光装置5のフォーカス調整を行うための逆投影装置11(図1(b))とを有している。
【0011】
(空間分割装置及び他の装置の配置)
空間分割装置3は、例えば、一のガルバノミラー13と、ガルバノミラー13を駆動する第1モータ15及び第2モータ17とを有している。
【0012】
ガルバノミラー13は、面光源101の各部からの光を順次一定の方向(光学集光装置5の方向、矢印aw1で示す。)へ偏向するためのものである。ガルバノミラー13は、例えば、金属コートや多層膜コート等の表面処理がなされている。ガルバノミラー13は、第1軸AX1及び第2軸AX2回りに(2軸回りに)回転可能に軸支されている。第1軸AX1は、例えば、面光源101の短手方向(図1(a)の紙面貫通方向、図1(b)の紙面上下方向)に延びる軸であり、第2軸AX2は、例えば、面光源101の長手方向(図1(a)の紙面上下方向、図1(b)の紙面貫通方向)に延びる軸である。
【0013】
ガルバノミラー13が第1軸AX1回りに回転することにより、面光源101のうち、光学集光装置5及び検出器7に光が取り込まれる部分(測定領域A)が、面光源101の長手方向に移動する。すなわち、面光源101は、長手方向に走査される。同様に、ガルバノミラー13が第2軸AX2回りに回転することにより、測定領域Aが面光源101の短手方向に移動し、面光源101は、短手方向に走査される。
【0014】
第1モータ15は、ガルバノミラー13を第1軸AX1回りに駆動する。第2モータ17は、ガルバノミラー13を第2軸AX2回りに駆動する。第1モータ15及び第2モータ17の動作は、例えば、演算装置9により制御される。なお、空間分割装置3は、ガルバノミラー13の支持機構、及び、第1モータ15及び第2モータ17の回転をガルバノミラー13に伝達する伝達機構を有するが、図示は省略する。
【0015】
ガルバノミラー13により偏向された光が入射する光学系(例えば、光学集光装置5。ただし、光学集光装置5のうちガルバノミラー13側の一部の光学系でもよい。例えば、後述する、開口絞り部材19及び集光レンズ21でもよい。)は、例えば、ガルバノミラー13に対して面光源101側に配置されている。
【0016】
ただし、光学集光装置5は、面光源101からガルバノミラー13に向かう光を遮らないように、面光源101からガルバノミラー13への光路外に配置されている。具体的には、光学集光装置5は、図1(b)に示すように、面光源101の短手方向において、面光源101の短手方向の端部からガルバノミラー13への光路よりも、面光源101の外側に配置されている。ただし、光学集光装置5は、図1(a)に示すように、面光源101の長手方向においては、面光源101の長手方向の端部からガルバノミラー13への光路よりも面光源中央側に配置されている。好適には、光学集光装置5は、面光源101の長手方向において、面光源101の中央に配置されている。
【0017】
図2は、本実施形態の空間分割装置の構成及び他の装置の配置における作用を説明する図であり、図2(a)は、入射角度の定義を示す断面図であり、図2(b)は、入射角度が反射率に及ぼす影響を光の波長毎に示す図である。
【0018】
図2(a)に示すように、入射角度は、反射面(ガルバノミラー13)に直交する線(法線)に対する光の角度によって定義される。図2(b)に示すように、入射角度が大きくなると、反射率は低下する。すなわち、反射率は角度依存性を有する。また、反射率及びその角度依存性は、波長毎に相違する。なお、このような角度依存性や波長依存性は、例えば、金属コートや多層膜コート等により生じる。
【0019】
一般に、光計測装置においては、面光源の外周側の光を取り込むときほど、面光源からの光のガルバノミラーへの入射角度は大きくなる。従って、面光源の中央側を計測するときと、面光源の外側を計測するときとでは、ガルバノミラーの反射率が変化し、ひいては、測定誤差が生じることになる。入射角度による反射率の変化に起因して生じる誤差の補正は、入射角度の変化だけでなく、反射率の波長依存性も考慮しなければない。また、複数のガルバノミラーを用いて変更すると、補正はさらに複雑化する。
【0020】
ここで、入射角度による反射率の変化は、入射角度が大きくなるほど、変化率が大きくなる。例えば、キセノンランプの輝度の実測値について、入射角度23度のときと45度度のときとを比較すると誤差は0.2%程度であり、入射角度45度のときと68度のときとを比較すると誤差は2.0%程度である。
【0021】
本実施形態では、光学集光装置5はガルバノミラー13に対して面光源101側に配置されている。従って、例えば、図1(b)において光学集光装置5がガルバノミラー13の直下に配置されたような場合に比較して、ガルバノミラー13への入射角度を小さくすることができる。さらに、光学集光装置5は、面光源101からの光を遮らないように、面光源101の短手方向において、面光源101の短手方向端部からガルバノミラー13への光路よりも、面光源101の外部側へ配置されている。従って、これとは逆に、光学集光装置5が面光源101の長手方向において面光源101の外側に配置された場合に比較して、一層、ガルバノミラー13への入射角度を小さくすることができる。その結果、反射率の入射角度による変化を抑制し、測定誤差を縮小することができる。
【0022】
なお、ガルバノミラー13への入射角度の最大値は、図1(a)に示す角度β若しくは図1(b)に示す角度γである。角度βは、面光源101の長手方向端部からガルバノミラー13への光路と、ガルバノミラー13から光学集光装置5への光路との成す角である。角度γは、面光源101の、光学集光装置5とは反対側の、短手方向端部からガルバノミラー13への光路と、ガルバノミラー13から光学集光装置5への光路との成す角である。光学集光装置5は、角度β及びγが45度以下になるように配置されることが好ましい。
【0023】
また、本実施形態では、面光源101を2次元走査する空間分割装置3は、2軸回りに回転可能な一のガルバノミラー13を含んで構成されている。従って、1軸回りに回転可能なガルバノミラーを2つ組み合わせて2次元走査可能な空間分割装置が構成された場合に比較して、反射回数が減るから、反射率の変化が抑制される。また、反射率を考慮した測定結果の補正も容易化される。
【0024】
(光学集光装置及び検出器)
図3は、光学集光装置5及び検出器7の要部を示す斜視図である。図4は、光学集光装置5及び検出器7における光路図である。なお、図4では、理解を容易にするために、空間分割装置3を省略して面光源101の正面に光学集光装置5及び検出器7を図示している。
【0025】
光学集光装置5は、空間分割装置3により偏向された光が入射する開口絞り部材19と、開口絞り部材19を透過した光が入射する集光レンズ21と、集光レンズ21を透過した光が入射する視野絞り部材23と、視野絞り部材23を透過した光が入射するリレーレンズ25とを有している。
【0026】
また、検出器7は、リレーレンズ25を透過した光が入射する入射部27と、入射部27により導光された光を受光し、受光した光に応じた信号を出力する本体部29とを有している。
【0027】
開口絞り部材19は、例えば、集光レンズ21の前側焦点に配置されている。開口絞り部材19には、空間分割装置3からの光を、その径(断面)を規定しつつ透過させる開口絞り19aが形成されている。なお、開口絞り部材19は、開口絞り19aの径が固定のものでも可変のものでもよい。
【0028】
集光レンズ21は、開口絞り19aを透過した光を集光することにより、面光源101からの光を結像させる。集光レンズ21は、単レンズにより構成されていてもよいし、レンズ群により構成されていてもよい。なお、集光レンズ21の径は、開口絞り19aからの光が全て入射可能な大きさに設定されている。
【0029】
視野絞り部材23は、例えば、集光レンズ21の像面に配置されている。視野絞り部材23には、集光レンズ21により集光された光を、その径(断面)を規定しつつ透過させる視野絞り23aが形成されている。視野絞り23aは、例えば、0.3〜3mmの開口である。視野絞り23aの形状は適宜な形状でよいが、例えば、円形や矩形である。なお、視野絞り部材23は、視野絞り23aの径が固定のものでも可変のものでもよい。
【0030】
リレーレンズ25は、集光レンズ21の結像した像を転送するレンズである。なお、上述のように、集光レンズ21の像面には視野絞り部材23が配置されているから、リレーレンズ25は、視野絞り部材23により径が規定された像を転送する。リレーレンズ25は、適宜に構成されてよく、リレーレンズ25の構成に応じて適宜な位置に配置されてよい。例えば、リレーレンズ25は、アフォーカル系の光学系により構成され、前側焦点距離f2及び後側焦点距離f3(図4)の比によって決定される倍率で物体を結像する。また、この場合、例えば、リレーレンズ25は、前側焦点が視野絞り部材23に位置するように配置され、視野絞り部材23により規定された面光源101の像を後側焦点に結ぶ。
【0031】
検出器7の入射部27は、例えば、複数の光ファイバ31(図7(a)参照)の束を有して構成されている。入射部27の入射面27aは、光ファイバ31の端面により構成された入射面31a(図7(a)参照)が複数集合することにより構成されている。入射面27aは、リレーレンズ25を介した視野絞り部材23の共役点P1(図4)付近且つ共役点P1からリレーレンズ25の光軸方向にずれた位置に配置されている。換言すれば、入射面27aは、光学集光装置5を介した面光源101の共役点P1(図4)付近且つ共役点P1から光学集光装置5の光軸方向にずれた位置に配置されている。なお、入射面27aは、共役点P1に対して、リレーレンズ25側及びその反対側のいずれ側にずれていてもよい。
【0032】
検出器7の本体部29は、例えば、分光器により構成されている。なお、検出器7全体が分光器として捉えられてもよい。本体部29は、光ファイバ31により導光された光を受光し、受光した光を分光して光のスペクトルを求め、そのスペクトルのデータを、若しくは、そのスペクトルから算出された輝度や色度を、電気信号として出力する。検出器7は、例えば、特に図示しないが、モノクロメータ等のいわゆる狭義の分光器と、狭義の分光器により分光された光を受光して、受光した光の光量に応じた電気信号を出力するCCD等の光電変換器とを有している。
【0033】
光計測装置1は、図3に示すように、開口絞り部材19及び集光レンズ21を保持する第1保持部33と、視野絞り部材23、リレーレンズ25、及び、入射部27を保持する第2保持部35と、第1保持部33及び第2保持部35を集光レンズ21の光軸方向(図3の紙面左右方向)に相対移動可能に保持するベース37とを有している。従って、光計測装置1は、第1保持部33及び第2保持部35の相対移動により、集光レンズ21の像面に視野絞り部材23を位置させること(合焦)が可能である。
【0034】
なお、第1保持部33、第2保持部35及びベース37の材質、形状、及び、移動機構は、適宜に選択されてよい。第1保持部33及び第2保持部35の相対移動は、第1保持部33及び第2保持部35のいずれが移動することにより実現されてもよいし、双方が移動することにより実現されてもよく、また、人力で駆動されても、モータ等の駆動機器により駆動されてもよい。第1保持部33に保持される光学部材同士、及び、第2保持部35に保持される光学部材同士も、光軸方向の位置を調整可能であってよい。検出器7の本体部29は、第2保持部35に保持されていてもいなくてもよい。
【0035】
光学集光装置5の作用の説明に先立って、測定距離、測定面積、測定角、立体角及び取込光量について説明する。
【0036】
測定距離(図5(b)のLを参照)は、面光源101と光学集光装置5との距離である。なお、光学集光装置5における、測定距離の基準となる位置は、適宜に選択されてよいが、例えば、集光レンズ21の配置位置である。
【0037】
測定面積(図5(b)のSmを参照)は、面光源101上の面積であって、走査の各時点において計測対象となる測定領域A(図1参照)の面積である。すなわち、光学集光装置5が一時点において検出器7へ出力する光の、光源の面積である。
【0038】
測定角(図5(b)の2αを参照)は、光学集光装置5から測定領域Aを見込む角度である。すなわち、測定角は、測定領域Aの大きさを光学集光装置5の光軸に対する角度で示す。なお、測定面積は、測定角及び測定距離の関数となる。
【0039】
立体角(単位:ステラジアン)は、一般に、S/r2で定義される。rは、球の半径であり、Sは、その球の表面の所定部分の面積である。本実施形態では、立体角は、面光源101上の各点から出射された光線により形成される錐体において定義される。なお、立体角は、図5(b)の頂角ωに相関するから、頂角ωを立体角とみなして考察してもよい。
【0040】
取込光量は、測定領域Aから出射され、且つ、光学集光装置5により取り込まれて検出器7へ出力される単位時間当たりの光の量である。
【0041】
光学集光装置5の作用について説明する。
【0042】
開口絞り部材19は、集光レンズ21の前側に配置されているから、集光レンズ21に入射する光の径を規定できる。すなわち、開口絞り部材19は、開口絞り19aにより、光学集光装置5に取り込まれる光の立体角を規定できる。なお、開口絞り部材19が、開口絞り19aの大きさを可変のものである場合には、開口絞り19aの大きさの調整により、立体角を調整できる。
【0043】
集光レンズ21は、面光源101の像を結び、視野絞り部材23は、集光レンズ21の像面に配置されている。すなわち、面光源101と視野絞り部材23とは共役となっている。従って、視野絞り23aの面積により、測定面積等を規定できる。なお、視野絞り部材23が、視野絞り23aの大きさを可変のものである場合には、視野絞り23aの大きさの調整により、測定面積等を調整できる。
【0044】
上述のように、集光レンズ21は、前側焦点が開口絞り部材19に位置するように配置されている。その結果、測定距離によらず、取込光量が一定になるという作用を奏する。具体的には、以下のとおりである。
【0045】
図5(a)は、測定角2αを説明する図である。
【0046】
物高h(測定領域Aの半分の高さ)と、像高h′(視野絞り23aの半分の高さ)とが常に結像関係にある場合、次の式が成り立つ。
h/h′ = x/f
h/x = h′/f
ここで、焦点距離fと視野絞り23aの半径であるh′は不変であるためh/xも常に一定となることが分かる。
【0047】
一方、測定角2αをxとhとで作る三角形で構成すれば、
2α = 2tan−1(h/x)
となる。
【0048】
以上のように、測定角2αの基準は、集光レンズ21の前側焦点となる。また、測定距離L(図5(a)ではx)が変化しても、測定角2αは変化しない。測定角2αを変えるためには、視野絞り23aの径(h′)を変化させなければならない。
【0049】
図5(b)は、取込光量が一定になる作用を説明する図である。
【0050】
測定面積Smは、測定角2α及び測定距離Lにより決定される。例えば、視野絞り23aの形状、換言すれば、測定領域Aの形状が円形であるとすると、その半径は、(L−f1)tanαとなるから、Sm=π((L−f1)tanα)となる。
【0051】
また、測定領域A内の点光源がもつエネルギーをPと考えると、入射瞳(開口絞り19a)の位置における光束密度は、エネルギーPを、L−f1を半径とする球の表面積で割った値となるから、P/(4π(L−f1))となる。
【0052】
このとき光源からみて入射瞳に取り込まれる光線の円錐頂角ωによって取込の立体角が規定される。入射瞳径が2Rとすると、点光源から発した光線のうち立体角によって制限された取込光量は、上述の入射瞳の位置における光束密度に入射瞳の面積πRを乗じて、P・R/(4(L−f1))となる。
【0053】
取込光量は、測定面積ד点光源から発した光線のうち立体角によって制限された取込光量”の関係で決定されるので
π((L−f1)tanα) × P・R/(4(L−f1)
=(P・πR・tanα)/4
となり距離の関数ではなくなり、計測器としての取込光量は測定角α,瞳径Rと光源のエネルギーPによって決定される。これは測定距離の変化による測定面積の変化量を、同様に測定距離によって変化する立体角の変化によって相殺していることを意味している。
【0054】
すなわち、光学集光装置5においては、測定距離Lを変化させても、面光源101の一定の位置(例えば、面光源101の中央位置)からの取込光量は変化しない。また、このような作用が生じる結果、測定領域Aが面光源101の中央に位置するときの取込光量と、測定領域Aが面光源101の外周部に位置するときの取込光量とは、測定距離Lによらず、一定の関係(一定の比)を保つことになる。その結果、例えば、輝度の絶対値を測定することが可能になる。また、シェーディング補正等を行うときに、測定距離に応じて異なる処理を行う必要がなくなる。
【0055】
測定距離Lが変化すると、集光レンズ21の像面の位置は変化する。しかし、光計測装置5は、第1保持部33に対して第2保持部35を光軸方向へ移動可能であるから、開口絞り部材19を集光レンズ21の前側焦点に位置させたまま、集光レンズ21の像面に視野絞り部材23を位置させるように調整すること(フォーカス調整、ピント合わせ)が可能である。
【0056】
光学集光装置5では、開口絞りの径を変化させることにより、立体角を変化させて取込光量を調整することができる。当該調整は、NDフィルタによる取込光量の調整のように、波長毎の減光率の相違を考慮した補正を行う必要がない。すなわち、NDフィルタは、波長毎に減光率が異なるから、NDフィルタを用いて取込光量を調整した場合には、測定誤差を縮小するために検出値の補正が必要となるが、本実施形態では、その必要がない。
【0057】
なお、開口絞り部材は、撮像装置のシャッタのように、複数の絞り羽根により構成され、複数の絞り羽根の相対移動により開口絞りの径を変化させるものであってもよい。また、例えば、開口絞り部材は、回転可能に軸支され、円周方向に沿って複数の絞りが形成されており、回転移動により光路に挿入される絞りが切り換えられることにより、開口絞りの径を変化させるターレットであってもよい。光学集光装置5は、開口絞りの径が互いに異なる複数の開口絞り部材が着脱可能であってもよい。
【0058】
光学集光装置5は、上述の特許文献1に開示された2つのスリットによりガルバノミラーからの光を透過させる技術(2アイリス方式)に比較すると、取込光量を大きくしつつ測定精度を高く保つことができる。すなわち、特許文献1の技術では、2つめのスリットが小さければ小さいほど計測精度は向上するが、2つめのスリットが小さすぎると光量が少なくなってしまうことから、計測精度と光量を大きくすることとを両立することが難しい。しかし、本実施形態では、測定精度を高くするために開口絞り19a及び視野絞り23aを小さくする必要がない。その結果、特許文献1のスリットに比較して大きい開口絞り19a及び視野絞り23aにより光を取り込むことができる。
【0059】
検出器7の入射部27の入射面27aが、共役点P1からずれていることによる作用を説明する。当該作用については、理解を容易にするために、入射面27aから光を出射したときに、光学集光装置5により面光源101に投影される像を参照して説明する。
【0060】
図6は、検出器7の本体部29に代えて置換型逆投影用光源39を入射部27に接続した状態における光計測装置1の光路図である。
【0061】
置換型逆投影用光源39の生成した光は、入射面27aから出射され、光学集光装置5を介して面光源101に投影される。なお、面光源101の位置に、面光源101に代えて適宜なスクリーンが配置されていてもよい。
【0062】
図7(a)は、入射部27の入射面27aを示す図である。
【0063】
入射面27aは、上述のように、複数の入射面31aを有している。複数の入射面31aは、光ファイバ31の断面が円形であることなどから、当該複数の入射面31a間に隙間が生じるように配置されている。従って、仮に、入射面27aが、面光源101の共役点P1(図4)に配置されたと仮定すると、面光源101においては、図7(a)に示す入射面27aの像が結ばれることになる。すなわち、面光源101においては、各光ファイバ31に対応した輝度の高い部分と、複数の光ファイバ31間の隙間に対応した輝度の低い部分とが生じることになる。
【0064】
これは、面光源101からの光を入射面27aに入射させ、面光源101の光を検出器7により計測する場合においては、面光源101の測定領域Aの光が、局所的に検出器7に取り込まれ、ケラレが生じることに相当する。この場合、測定領域A全体の光を精度よく検出しているとは言い難い。
【0065】
そこで、入射面27aにおいて、面光源101からのデフォーカスされた像を取り込むことが考えられる。これは、図6に示す逆投影を行った場合においては、図7(c)に示すデフォーカスされた像が、面光源101に投影されることに相当する。図7(c)では、複数の光ファイバ31の像は結像せず、光が均一に面光源101に投影されている。従って、面光源101からの光を入射面27aに入射させる場合においては、ケラレが抑制される。
【0066】
しかし、図7(c)に示すように、像の輪郭がぼけていることは、面光源101からの光を検出器7により検出する場合においては、測定領域A(測定面積Sm)が正確に定まっていないことに相当する。さらに、デフォーカスの仕方によっては、上述した取込光量一定となる位置関係が成立しなくなり、取込光量が一定とならない。以上のとおり、デフォーカスの仕方次第では、誤差が拡大することになる。また、作業者は、どの程度デフォーカスしてよいか判断できない。
【0067】
本実施形態では、図4を参照して説明したように、入射面27aを共役点P1からずらすことにより、デフォーカスしている。その結果、図6に示す逆投影を行った場合においては、図7(b)に示す、輪郭ははっきりしており、内部がぼけた像が面光源101に結ばれる。これは、面光源101からの光を検出器7により検出する場合においては、測定領域Aが正確に定まるとともに、取込光量一定となる位置関係が保たれ、且つ、測定領域A全体の光をケラレなく取り込めていることに相当する。
【0068】
入射面27aを共役点P1からずらすことにより、図7(b)に示す像が得られるのは、視野絞り部材23の位置において入射面27aの像はぼけるが、視野絞り部材23の位置にある像は、面光源101において合焦することからである。
【0069】
そして、本実施形態では、視野絞り部材23、リレーレンズ25、及び、入射部27は、第2保持部35に保持されて、第1保持部33(集光レンズ21)に対して、集光レンズ21の光軸方向へ移動可能であるから、入射面27aの共役点P1からのずれ量t(図4)を一定に保ったまま、測定距離Lの変化に応じて視野絞り部材23を集光レンズ21の像面に位置させる(フォーカス調整する)ことができる。その結果、作業者においては、光計測装置1の製造者において設定したデフォーカス量、または、自らが事前に設定した適切なデフォーカス量を保つことができる。すなわち、測定距離Lに応じてデフォーカス量を判断する必要がない。
【0070】
なお、入射面27aの共役点P1からのずれ量tについては、計測に要求される精度、検出器7の測定精度、測定距離L等の種々の事情に応じて適宜に設定されてよい。
【0071】
例えば、ずれ量tは、光学集光装置5により面光源101からの光を集光したことによる、光学集光装置5を設けない場合(例えば、2アイリス方式)に比較した、取込光量の増大の効果等が失われないように設定される。例えば、ずれ量tは、リレーレンズ25の後側焦点距離f3よりも小さく設定される。
【0072】
また、例えば、ずれ量tは、図6に示す逆投影を行ったときに、面光源101を適宜な位置から視認した作業者によって、面光源101の位置に投影された複数の入射面31aの像がぼけていると認識されるときの値以上に設定される。
【0073】
より好適には、ずれ量tは、図6に示す逆投影を行ったときに、面光源101を適宜な位置から視認した作業者によって、図7(b)に示す像が視認される(像の内部において輝度のムラが認識されない、複数の入射面31aの像が認識されない)ときの値、若しくは、当該値以上に設定される。
【0074】
なお、輝度のムラの認識、ひいては、ぼけているか否かの判断、及び、図7(b)に示す像であるか否かの判断には、個人差があり、また、空間周波数等の条件にも影響される。しかし、当該判断は、光計測装置1を用いて複数の被験者を対象に実験することにより可能である。
【0075】
また、このような判断に資することができる評価方法も種々提案されており、そのような評価方法を適宜に利用して判断してもよい。
【0076】
例えば、「印刷物微小濃淡むらの高精度検出法に関する研究」(山下他、三菱重工技報 Vol.35 No.3 第202〜205頁)では、撮像画像に基づいて輝度ムラの有無を判定する評価値を算出する手法が開示されている。当該評価値は、人間の濃淡に対する知覚が空間周波数毎に異なることを考慮して算出されている。具体的には、以下のとおりである。
【0077】
まず、視認対象を撮像し、その撮像画像を2次元フーリエ変換して、空間周波数(f)毎のパワースペクトルを算出する。次に、そのパワースペクトルに空間周波数毎に設定された重み係数H(f)を乗じる。重み係数は下記式により表わされる。
H(f) = 0.31+0.69fe−0.29f
その乗算結果を逆フーリエ変換して変換画像を得る。そして、その変換画像の標準偏差(輝度レベルの標準偏差)を評価値として算出する。
【0078】
上記の研究結果では、被験者20人を対象として、被験者のムラの知覚と、評価値との比較を行っている。その比較結果によれば、評価値が0.6付近において、被験者の一部によりムラが知覚され、評価値が0.8を超えると、被験者のほぼ全員によりムラが知覚されている。そして、上記の研究報告は、閾値を0.6に設定して評価値を用いることにより、人が感じるムラを検出することが可能であると結んでいる。
【0079】
従って、上記の研究報告によれば、図6に示す逆投影を行い、適宜な位置から面光源101の位置における像を撮像し、上記の順により得られた評価値が、0.6未満であれば、図7(b)に示す像が得られることになる。なお、面光源101を撮像する位置については、本実施形態において測定角や立体角の基準となっている集光レンズ21の位置と等価な位置又はその近辺など、適宜に選択されてよい。
【0080】
光学集光装置5における各種設定事項の数値の一例を示すと、距離(L−f1)は300mm〜∞、測定角2αは2度、入射部27の入射面27aの直径は1mm、入射部27のNA(開口数)は0.2、集光レンズ21の焦点距離f1は80nm、リレーレンズ25の前側焦点距離f2は100mm、リレーレンズ25の後側焦点距離f3は30mm、開口絞り19aの直径は10mm、視野絞り23aの直径は2.78mm、集光レンズ21と視野絞り部材23との距離L3は76〜97mmである。なお、光学集光装置5の出射側のNAは、入射部27のNAよりも小さくなるように設定されている。
【0081】
(逆投影装置)
図8は、逆投影装置11の構成を説明する斜視図である。図9は、逆投影装置11を説明する光路図である。
【0082】
上述のように、光計測装置1では、測定距離Lの変化に応じて第2保持部35(図3)を集光レンズ21に対して移動させ、視野絞り部材23が集光レンズ21の像面に位置するようにフォーカス調整を行う必要がある。逆投影装置11は、このフォーカス調整における、視野絞り部材23が集光レンズ21の像面に位置したか否か(合焦されたか否か)の判断を容易化させるためのものである。
【0083】
逆投影装置11は、反射型逆投影用光源41と、反射型逆投影用光源41から出射された光を反射してリレーレンズ25に入射させる挿入ミラー43とを有している。
【0084】
反射型逆投影用光源41は、出射面41aから所定の断面形状の光を出射する。図8では、出射面41aの例を3つ拡大して示している。第1例の出射面41a_Aは、断面が複数の矩形に分割された光を出射可能である。第2例の出射面41a_Bは、断面が複数の円形に分割された光を出射可能である。第3例の出射面41a_Cは、断面の輪郭の一部が内側へ突出する光を出射可能である。
【0085】
第1の例の出射面41a_A及び第3の例の出射面41a_Cは、例えば、遮光性の薄膜フィルム等により形成されたマスク41bを出射面に配置することにより実現される。また、第2の例の出射面41a_Bは、例えば、反射型逆投影用光源41の出射部を、入射部27と同様に、複数の光ファイバ41cの束(多芯ファイバ)を含んで構成することによって実現される。なお、第2の例の出射面41a_Bは、マスク41bによっても実現可能である。
【0086】
挿入ミラー43は、リレーレンズ25と入射部27との間の光路に対して挿入及び退避可能である。なお、挿入ミラー43は、スライド機構や回転機構により挿入及び退避可能であってもよいし、第2保持部35に対して着脱可能であることにより挿入及び退避可能であってもよい。
【0087】
図10は、図9の逆投影装置11付近の拡大図である。
【0088】
反射型逆投影用光源41は、リレーレンズ25と出射面41aとの距離Dbが、リレーレンズ25と共役点P1との距離Daに等しくなる位置に配置されている。換言すれば、挿入ミラー43は、共役点P1を検出器7の方向とは異なる方向へ移動させ(当該移動された共役点を共役点P1′とする。)、出射面41aは、その移動された共役点P1′に配置されている。
【0089】
従って、出射面41aの像が、光学集光装置5を介して、面光源101又は面光源101の位置に配置されたスクリーンにおいて結像したときには、面光源101の位置と視野絞り部材23とは共役になっていることになる。すなわち、視野絞り部材23が集光レンズ21の像面に位置したことになる。その結果、作業者は、出射面41aの像を面光源101の位置に結像させるように第1保持部33に対して第2保持部35を移動させることにより、視野絞り部材23を集光レンズ21の像面に位置させることができる。
【0090】
この際、出射面41aは、断面が複数に分割された光、若しくは、断面の輪郭が内側に突出した光を出射することから、光の断面形状が円形や矩形の場合に比較して、面光源101の位置において結像したか否かを判断しやすい。
【0091】
このような逆投影は、面光源101の測定位置と、空間分割装置3の動作量との対応関係の把握にも効果的である。例えば、逆投影を行わずに、共役点P1(又はP1′)において接眼レンズを介して作業者が面光源101からの光を視認して、上記の対応関係を把握することは、視野が狭いことから難しい。しかし、逆投影では、面光源101を直接視認することから、上記の対応関係を把握すること、例えば、面光源101の端部に測定領域Aが位置していることを把握することが容易である。
【0092】
なお、逆投影は、図6に示した方法でも可能である。しかし、逆投影装置11が設けられると、本体部29に代えて置換型逆投影用光源39を接続するために頻繁に入射部27と本体部29とを着脱することが抑制され、ひいては、入射部27等が破損することが抑制される。また、図6に示した方法では、せっかく入射面27aと共役点P1とのずれ量tを適切に設定しても、その後、測定距離Lが変化すると、入射面27aを共役点P1に位置させて合焦を行い、再度、ずれ量tを設定しなければならない。しかし、逆投影装置11が設けられることにより、その必要性がなくなり、ずれ量tが維持される。
【0093】
(フォーカス調整の手順)
フォーカス調整は、事前調整と、事前調整の後に行われる測定時調整とを含む。具体的には以下のとおりである。
【0094】
図11は、事前調整の手順を示すフローチャートである。事前調整は、光計測装置1の製造者又は使用者(光計測の作業者)により行われる。なお、図11に示す手順の一部は自動化されてもよい。
【0095】
ステップST1では、図6を参照して説明したように、検出器7の本体部29に代えて、置換型逆投影用光源39を入射部27に接続し、逆投影を行う。
【0096】
ステップST2では、図7(a)に示す入射面27aの像が得られるように、集光レンズ21、視野絞り部材23、リレーレンズ25、及び、入射部27の少なくともいずれか一つを光軸方向へ移動させる。すなわち、面光源101の位置に投影される像の、輪郭及び内部の双方を合焦させる。このときは、第2保持部35の第1保持部33に対する移動だけなく、視野絞り部材23、リレーレンズ25、及び、入射部27を相互に移動させてもよい。ただし、開口絞り19は、集光レンズ21の前側焦点に配置されている。
【0097】
ステップST3では、入射部27の位置を光軸方向にずらす。すなわち、図7(b)の示す像が得られるように、ずれ量tを適切に設定する。
【0098】
ステップST4では、図8〜図10を参照して説明したように、挿入ミラー43をリレーレンズ25と入射部27との間に配置する。
【0099】
ステップST5では、反射型逆投影用光源41から光を出射して、挿入ミラー43を介した逆投影を行う。
【0100】
ステップST6では、面光源101の位置に投影される出射面41aの像を視認しつつ、反射型逆投影用光源41の位置を調整し、出射面41aの像を面光源101の位置に合焦させる。なお、視野絞り部材23は、ステップST2において、既に面光源101の共役点に配置されているから、ステップST6は、反射型逆投影用光源41により面光源101に投影される像の内部を合焦させる調整となる。
【0101】
ステップST7では、挿入ミラー43をリレーレンズ25から入射部27への光路から退避させる。
【0102】
図12は、測定時調整の手順を示すフローチャートである。光計測装置1の使用者により行われる。なお、図12に示す手順の一部は自動化されてもよい。測定時調整は、事前調整が行われた後、測定距離Lが変化するなど、測定条件が変化したときに行われる。
【0103】
ステップST11及びステップST12は、ステップST5及びST6と同様であり、図8〜図10を参照して説明したように、挿入ミラー43を介した逆投影を行う。
【0104】
ステップST13では、面光源101の位置に投影される出射面41aの像を視認しつつ、第2保持部35を第1保持部33に対して移動させて、出射面41aの像を面光源101の位置に合焦させる。なお、ステップST13は、反射型逆投影用光源41による逆投影の観点においては、面光源101に投影される像の輪郭及び内部を合焦させる調整となる。すなわち、作業者は、像の輪郭及び内部を合焦させるように調整を行う。一方、面光源101からの光を検出器7により検出する観点においては、入射面27aは、共役点P1からずれた位置に配置されているから、ステップST13は、図7(b)を参照して説明したように、像の輪郭を合焦させる一方で、像の内部をぼかす調整となる。
【0105】
ステップST14は、ステップST7と同様であり、挿入ミラー43を光路から退避させる。
【0106】
事前調整及び計測時調整を有するフォーカス調整が行われることにより、事前調整によって得られた視野絞り部材23と入射部27との位置関係などの、複数の光学部品間の一部の位置関係は、測定距離L等が変化しても、計測時調整においては変更されず、基本的には維持される。その結果、例えば、上述のように、ずれ量tは、好適な量に維持され、作業者がどの程度ぼかしたらよいか判断に困ることがない。また、例えば、置換型逆投影用光源39を頻繁に入射部27に接続する必要性がなくなり、入射部27の破損が抑制される。
【0107】
なお、以上の第1の実施形態において、面光源101は、本発明における被測定光源の一例であり、集光レンズ21は本発明の第1光学系の一例であり、リレーレンズ25は本発明の第2光学系の一例であり、第2保持部35は本発明の保持部の一例であり、ガルバノミラー13は本発明の偏向ミラーの一例である。
【0108】
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態に係る光計測装置201の概略構成を示す平面図である。図14は、光計測装置201における光路図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。また、図14では、図4と同様に、理解を容易にするために、空間分割装置を省略して、各光学部品を同軸上に配置して図示している。
【0109】
第2の実施形態の光計測装置201は、空間分割装置及び光学集光装置の構成が第1の実施形態の光計測装置1と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0110】
第2の実施形態の空間分割装置203は、互いに異なる軸(例えば互いに直交する軸)回りに回転可能な2枚のガルバノミラー213及び214を有している。ガルバノミラー213及び214は、それぞれ、第1モータ15及び第2モータ17により駆動され、面光源101を2次元走査する。
【0111】
第2の実施形態の光学集光装置205は、走査レンズ206を有している点、開口絞り部材19が、集光レンズ21の前側焦点ではなく、集光レンズ21の前側焦点の共役点に配置されている点、リレーレンズの構成等が第1の実施形態と相違する。
【0112】
走査レンズ206は、例えば、レンズ群により構成されている。ただし、走査レンズ206は、単レンズにより構成されてもよい。走査レンズ206は、面光源101に対して対向して配置されている。
【0113】
走査レンズ206は、計測の目的に照らして、面光源101の各部(中央部や外周部)からの光を所定の射影方式で射出するレンズにより構成されている。例えば、以下のとおりである。
【0114】
y=f・tanθで表される中心射影レンズにより走査レンズ206を構成すれば、面光源101の中央部と外周部との間における立体角の差を小さくできる。
【0115】
y=2f・tan(θ/2)で表される立体射影レンズにより走査レンズ206を構成すれば、面光源101の中央部と外周部との間における立体角及び測定角の差を小さくできる。
【0116】
y=f・θで表される等距離射影レンズにより走査レンズ206を構成すれば、面光源101の中央部と外周部との間における測定面積の差を小さくできる。
【0117】
なお、yは、測定面(面光源101)における走査レンズ206の光軸LAと測定位置との距離(物高)、fは走査レンズ206の焦点距離、θは空間分割装置203へ入射する(走査レンズ206から射出された)光束が光軸LAと成す角(走査角)である。
【0118】
走査レンズ206を透過した面光源101からの光は、空間分割装置203を介して一定の方向(集光レンズ21の方向)へ偏向される。偏向された光は集光レンズ21に入射し、集光レンズ21により結像される。視野絞り部材23は、第1の実施形態と同様に、面光源101の共役点に配置される。たたし、第2の実施形態では、視野絞り部材23は、走査レンズ206及び集光レンズ21を含む光学系を介した面光源101の共役点に配置される。
【0119】
開口絞り部材19は、集光レンズ21の前側焦点の共役点に配置されている。換言すれば、図14に示すように、開口絞り部材19の像219は、集光レンズ21の前側焦点に位置している。従って、面光源101から集光レンズ21に入射する光の立体角は、開口絞り19aによって規定される。すなわち、第2の実施形態においても、第1の実施形態のように、集光レンズ21の前側焦点に開口絞り部材19を配置したのと同様の効果が得られる。
【0120】
リレーレンズは、第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226を有している。第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226は、例えば、第1の実施形態と同様に、アフォーカル系を構成している。すなわち、第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226は、第1リレーレンズ225の後側焦点に第2リレーレンズ226の前側焦点が位置するように配置されており、第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226の焦点距離f4及びf5(図14参照)の比によって決定される倍率で物体を結像する。
【0121】
また、第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226は、例えば、第1リレーレンズ225の前側焦点が走査レンズ206から集光レンズ21までの光学系の像面に位置するように配置され、第2リレーレンズ226の後側焦点に像を結ぶ。なお、第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226は、それぞれ、レンズ群により構成されていてもよいし、単レンズにより構成されていてもよい。
【0122】
開口絞り部材19は、例えば、第1リレーレンズ225の後側焦点(第2リレーレンズ226の前側焦点)に配置されており、第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226とともにテレセントリック光学系を形成している。
【0123】
検出器7の入射部27(図13及び図14では図示省略)は、第1の実施形態と同様に、第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226を介した、視野絞り部材23の共役点からずれた位置に配置されている。
【0124】
光計測装置201は、走査レンズ206、空間分割装置203及び集光レンズ21を保持する第1保持部233と、視野絞り部材23、第1リレーレンズ225、開口絞り部材19、第2リレーレンズ226及び検出器7(若しくは検出器7のうち入射部27)を保持する第2保持部235と、第1保持部233及び第2保持部235を集光レンズ21の光軸方向(図1の紙面左右方向)に相対移動可能に保持するベース237とを有している。
【0125】
第1保持部233、第2保持部235及びベース237の材質、形状、及び、移動機構は、適宜に選択されてよい。第1保持部233及び第2保持部235の相対移動は、第1保持部233及び第2保持部235のいずれが移動することにより実現されてもよいし、双方が移動することにより実現されてもよく、また、人力で駆動されても、モータ等の駆動機器により駆動されてもよい。第1保持部233に保持される光学部材同士、及び、第2保持部35に保持される光学部材同士も、光軸方向の位置を調整可能であってよい。
【0126】
第1保持部233に対して第2保持部235を移動させることにより、視野絞り部材23を走査レンズ206及び集光レンズ21を含む光学系の像面に位置させることができる。この際、第1リレーレンズ225、開口絞り部材19及び第2リレーレンズ226は、テレセントリック光学系を形成していることから、第1保持部233に対して第2保持部235を光軸方向へ移動させても、開口絞り19aの像219a(図14)の大きさは変化しない。
【0127】
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、光計測装置201は、測定対象としての面光源101からの光を投影する走査レンズ206及び集光レンズ21を含む光学系と、当該光学系を介して面光源101の共役点に配置される視野絞り部材23と、視野絞り部材23を透過した面光源101からの光を投影する第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226を含む光学系と、当該光学系により投影された光が入射する複数の入射面31aが当該複数の入射面31a間に隙間が生じるように配置された入射部27を有し、前記複数の入射面31aに入射した光に応じた信号を出力する検出器7とを有し、複数の入射面31aは、第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226を介した視野絞り部材23の共役点から第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226の光軸方向へずれた位置に配置されていることから、図7(b)を参照して説明したように、入射部27の構成に起因するケラレを抑制することができる。
【0128】
なお、以上の第2の実施形態において、走査レンズ206及び集光レンズ21は本発明の第1光学系の一例であり、第1リレーレンズ225及び第2リレーレンズ226は本発明の第2光学系の一例であり、第2保持部235は本発明の保持部の一例である。
【0129】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0130】
光計測装置及び計測用光学装置は、光源を走査するものに限定されない。例えば、点光源からの光を計測するものであってもよい。光計測装置及び計測用光学装置が、光源を走査するものである場合、光計測装置及び走査光学系は、2次元の走査を行うものに限定されず、一次元の走査を行うものであってもよい。また、計測対象となる面光源は、一次元の走査のみで光源全体の計測が行われることが可能な長尺状のものであってもよい。面光源は表示装置に限定されない。例えば、照明として使用されたり、表示装置のバックライトとして使用される面光源であってもよい。
【0131】
光学集光装置は、レンズにより構成されるものに限定されない。例えば、曲面鏡により、若しくは、レンズと曲面鏡との組み合わせにより構成されてもよい。曲面鏡を用いる場合には、反射波長の角度依存を軽減できる等のメリットがある。
【0132】
面光源の各部からの光を順次取り込む(面光源を走査する)動作を行う空間分割装置は、面光源の各部からの光を一定の方向へ偏向する偏向器(偏向ミラー)に限定されない。例えば、空間分割装置は、光学集光装置や検出器等を面光源に沿って移動させる移動装置であったり、光学集光装置や検出器等の面光源に対する向きを変化させる回転装置であったりしてもよい。
【0133】
偏向器は、ガルバノミラーに限定されない。例えば、偏向器は、ポリゴンミラーを含んで構成されてよい。検出器は、分光器に限定されない。例えば、光を分光しないものであってもよい。検出器の検出する光に係る量は、物理量でも心理物理量でもよく、また、輝度や色度以外の量であってもよい。
【0134】
視野絞り部材は、第1光学系(第1の実施形態では集光レンズ21、第2の実施形態では走査レンズ206及び集光レンズ21)を介した面光源の共役点に配置されればよいから、第1光学系の像面位置ではなく、像面位置の共役点に配置されてもよい。
【0135】
光計測装置及び走査光学系には、使用目的や測定対象の種類等の具体的事情に応じて、視感度補正フィルタ、色フィルタ、拡散透過板等の光学要素が適宜な位置に配置されてよい。第1光学系や第2光学系の光軸はミラーにより適宜に屈曲されてよい。
【0136】
第1の実施形態及び第2の実施形態は、適宜に組み合わされてよい。例えば、第1の実施形態において、開口絞り部材19を集光レンズ21の前側焦点の共役点に配置してもよい。換言すれば、走査レンズ206が設けられない構成と、開口絞り部材19を集光レンズ21の前側焦点の共役点に配置する構成とを組み合わせてもよい。
【0137】
また、例えば、第2の実施形態において、第1の実施形態のように、開口絞り部材19を集光レンズ21の前側焦点に配置してもよい。換言すれば、走査レンズ206を設ける構成と、開口絞り部材19を集光レンズ21の前側焦点に配置する構成とを組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光計測装置の概略構成を示す簡略図。
【図2】図1の光計測装置における空間分割装置の構成及び他の装置の配置における作用を説明する図。
【図3】図1の光計測装置の光学集光装置及び検出器の要部を示す斜視図。
【図4】図3の光学集光装置及び検出器における光路図。
【図5】図3の光学集光装置の作用を説明する図。
【図6】図1の光計測装置において置換型の逆投影を行ったときの光路図。
【図7】図3の光学集光装置及び検出器の位置関係の作用を説明する図。
【図8】図1の光計測装置の逆投影装置の構成を説明する斜視図。
【図9】図8の逆投影装置を説明する光路図。
【図10】図9の光路図の逆投影装置付近の拡大図。
【図11】図1の光計測装置におけるフォーカス調整の事前調整の手順を示すフローチャート。
【図12】図1の光計測装置におけるフォーカス調整の計測時調整の手順を示すフローチャート。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る光計測装置の概略構成を示す簡略図。
【図14】図13の光計測装置における光路図。
【符号の説明】
【0139】
1…光計測装置、7…検出器、21…集光レンズ(第1光学系)、23…視野絞り部材、25…リレーレンズ(第2光学系)、27…入射部、31a…入射面、101…面光源(被測定光源)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象としての被測定光源からの光を投影する第1光学系と、
前記第1光学系を介して前記被測定光源の共役点に配置される視野絞り部材と、
前記視野絞り部材を透過した前記被測定光源からの光を投影する第2光学系と、
前記第2光学系により投影された光が入射する複数の入射面が当該複数の入射面間に隙間が生じるように配置された入射部を有し、前記複数の入射面に入射した光に応じた信号を出力する検出器と、
を有し、
前記複数の入射面は、前記第2光学系を介した前記視野絞り部材の共役点から前記第2光学系の光軸方向へずれた位置に配置されている
光計測装置。
【請求項2】
前記視野絞り部材、前記第2光学系、及び、前記入射部を保持し、前記第1光学系に対して前記第1光学系の光軸方向へ移動可能な保持部を有する
請求項1に記載の光計測装置。
【請求項3】
前記第2光学系と前記検出器との間に挿入され、前記第2光学系を介した前記視野絞り部材の共役点を前記検出器の方向とは異なる方向へ配置可能な挿入ミラーと、
前記挿入ミラーにより配置された共役点に配置され、前記挿入ミラーへ光を出射可能な反射型逆投影用光源と、
を有する請求項1に記載の光計測装置。
【請求項4】
前記反射型逆投影用光源は、断面が複数に分割された光、又は、断面の輪郭の一部が内側へ突出する光を出射可能である
請求項3に記載の光計測装置。
【請求項5】
前記反射型逆投影用光源は、光の断面を整形するマスクを前記挿入ミラーにより配置された共役点に有する
請求項4に記載の光計測装置。
【請求項6】
前記反射型逆投影用光源は、光を出射する複数の出射面が、前記挿入ミラーにより配置された共役点に位置する複数の光ファイバを有する
請求項4に記載の光計測装置。
【請求項7】
前記被測定光源は、出射面が長手方向及び当該長手方向に直交する短手方向を有する面光源であり、
前記面光源の各部からの光を前記第1光学系の方向へ順次反射するように移動可能な偏向ミラーが設けられ、
前記第1光学系は、
前記偏向ミラーよりも前記面光源側の位置、
前記長手方向において、前記面光源の長手方向端部から前記偏向ミラーへの光路よりも、前記面光源の中央側の位置、且つ、
前記短手方向において、前記面光源の短手方向端部から前記偏向ミラーへの光路よりも、前記面光源の外側の位置に配置されている
請求項1に記載の光計測装置。
【請求項8】
前記第1学系の前側焦点、又は、当該前側焦点の共役点に配置された開口絞り部材を有する
請求項1に記載の光計測装置。
【請求項9】
測定対象としての被測定光源からの光を投影する第1光学系、
前記第1光学系を介して前記被測定光源の共役点に配置される視野絞り部材、
前記視野絞り部材を透過した前記被測定光源からの光を投影する第2光学系、
前記第2光学系により投影された光が入射する複数の入射面が当該複数の入射面間に隙間が生じるように配置された入射部と、当該入射部により導光された光を受光して、受光した光に応じた信号を出力する本体部とを有する検出器の、前記入射部、並びに、
前記本体部に代えて前記入射部に接続され、前記複数の入射面から光を出射可能な置換型逆投影用光源、
を配置し、
その配置された、前記第1光学系、前記視野絞り部材、前記第2光学系、及び、前記入射部の少なくとも一つを移動させ、前記視野絞り部材及び前記複数の入射面の像を前記被測定光源の配置位置に合焦させ、
その合焦の後、前記入射部を移動させ、前記被測定光源の配置位置における前記複数の入射面の像をデフォーカスし、
そのデフォーカスの後、前記置換型逆投影用光源に代えて前記本体部を前記入射部に接続する
光計測装置のフォーカス調整方法。
【請求項10】
前記本体部を前記入射部に接続した後、前記第2光学系と前記検出器との間に挿入ミラーを挿入し、前記第2光学系を介した前記視野絞り部材の共役点を前記検出器の方向とは異なる方向へ配置し、
前記挿入ミラーにより配置される共役点に配置された反射型逆投影用光源からの光を前記挿入ミラーにより反射して前記被測定光源の位置へ投影し、
前記反射型逆投影用光源の像を前記被測定光源の配置位置に合焦させるように、前記第1光学系に対して、当該第1光学系の光軸方向において、前記視野絞り部材、前記第2光学系、及び、前記入射部を一体的に移動させる
請求項9に記載の光計測装置のフォーカス調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−287979(P2009−287979A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138618(P2008−138618)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】