説明

光記録媒体およびその製造方法

【課題】高反射率と高コントラストとを両立することができる光記録媒体を提供する。
【解決手段】光記録媒体は、基板と、基板上に設けられた情報信号層と、情報信号層上に設けられた保護層とを備える。情報信号層は、反射層と、反射層上に設けられた記録層と、記録層上に順次積層された第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層とを備える。第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なる。第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層のうち、最も屈折率が大きい誘電体層は、酸化チタン、酸化ニオブ、および、硫化亜鉛と酸化シリコンとの混合体の少なくとも1種を主成分とする。最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、波長405nmにおいて2.3以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光記録媒体およびその製造方法に関する。詳しくは、複数の情報信号層を備える光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生専用型DVD(DVD−ROM:Digital Versatile Disc-Read Only Memory)や、記録型DVDなどにおける著作権保護技術は広く知られている。その一つとして、未記録ディスクの状態にて最内周側領域(Burst Cutting Area:BCA)に、メディアIDと称される媒体に固有の2進情報を記録しておき、このメディアIDを使用して記録されるコンテンツデータを暗号化するものがある。
【0003】
また、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標):BD)などの高密度光ディスクにおいても、2進情報であるバーコード状のマーク(以下、BCAマークと称する)をBCAに記録することが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、BCAマークが相変化記録層の結晶状態およびアモルファス状態を利用して記録されることが記載されている。また、BCAでは、隣接するエリアのトラックピッチの5倍以上のトラックピッチでもってグルーブまたはピットが形成されることが記載されている。さらに、BCAマークが複数のトラックを横断して半径方向に形成されることなどが記載されている。
【0005】
BCAは以下のようにして形成することができる。
例えば製造段階において、記録層成膜直後の初期化前の状態では、記録層はアモルファス状態にある。データ領域に関しては、その領域全体に対して、例えば赤色ハイパワーレーザーによりレーザー光を照射して初期化を行うことで、アモルファスから結晶の状態に変化させるようにしている。一方、BCAに関しては、BCA全体を初期化して結晶の状態にするのではなく、BCAマーク例えばディスクIDの内容に対応したバーコードのパターンに対応させて円周方向における所要の部分についてのみレーザー光の照射を行って結晶状態とする。この工程の結果、BCAにおいては、円周方向に沿った所要幅のアモルファス状態のバー部分と、結晶状態のバー部分とのパターンによる、バーコード状の情報記録が行われたことになる。
【0006】
近年、記録可能なDVDやBDなどの高密度光記録媒体において、記録容量を増大させるために、多層の光記録媒体の記録再生フォーマットが提案されている。2層の高密度光記録媒体、例えば2層のBDでは、情報読み取り側から奥に位置する情報信号層(L0層と称する。手前側に位置する情報信号層をL1層と称する。)に対してBCAマークが記録される。
【0007】
図18は、かかる2層BDのBCAマークの再生信号の波形の一例を示す。結晶状態では、反射率が高いので高レベルIHの再生信号が得られ、アモルファス状態では、反射率が低いので、低レベルILの再生信号が得られる。IHとILの比、すなわちIH/ILの式で定義されるBCA変調度は、規格上4以上(小数第1位までを有効数字とすると3.5以上)とされる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−518055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
2層BDでは、L0層あるいはL1層への情報信号層の記録または再生は、各情報信号層に選択的に焦点を合わせることで行われる。一般的には、L0層およびL1層とも、レーザー光の照射による記録材料の相変化を利用して情報信号を記録する相変化記録膜が用いられる。L0層は、一般的にはレーザー光入射側より保護層、記録層、保護層、反射層から構成される。L1層もほぼ同様の層構成となるが、記録層、反射層はいずれも10nm程度あるいはそれ以下の合金材料が用いられる。このため、L1層の光透過率は制限されることになり、更に保護層として使用する材料の光学特性、特に消光係数に応じて光透過率は更に減衰されることとなる。L1層の透過率の減少はL1層を介してL0層に入射されるレーザー光の減衰、およびL0層で反射したL0層の再生信号の減衰に繋がる。例えばL1層の反射率R1、吸収率A1、透過率T1をそれぞれ5%、45%、50%とする。また、L0層の反射率R0、吸収率A0、透過率T0をそれぞれ20%、0%(L0層はレーザー光を透過させる必要がないため、反射と吸収のみに振り分けることができる)、80%とする。このように各パラメータを設定した場合、表面から入射したレーザーPrを100%とすると、L1層を通してL0層で合焦し、反射した光がL1層を通って表面に戻ってくる成分Pr0は図19および以下の式に示すように5%となる。
Pr0=Pr×T1×R0×T1
=100×0.5×0.2×0.5=5[%]
【0010】
一方、2層BDでは反射率の規格は4乃至8%となるため、十分な反射率を確保するためにはL1層の透過率をできるだけ高めること、およびL0層の反射率をできるだけ高めることが必要となる。上述したように相変化記録層および反射層を含むL1層では高い透過率を確保するのにも限度があり概ね45%乃至50%程度となる。それに対してL0層の反射率に関しては、反射率を高めることで吸収率が低下し記録感度は低下するものの、層構成を最適化すれば記録感度を補償することは可能である。一方、結晶状態の反射率と、結晶とアモルファスの反射率比(以下、コントラストと称する)との関係は、多重干渉の計算により図20に示すようになる。コントラストはほぼBCA変調度に等しい値となる。即ち、反射率を上げればコントラストまたはBCA変調度は低下することを示している。そのため、より高い反射率であっても、十分高いコントラストが得られる記録層材料および層構成を実現する必要がある。
【0011】
したがって、この発明の目的は、高反射率と高コントラストとを両立することができる光記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
基板と、
基板上に設けられた情報信号層と、
情報信号層上に設けられた保護層と
を備え、
情報信号層は、
反射層と
反射層上に設けられた記録層と、
記録層上に順次積層された第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層と
を備え、
第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なり、
第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層のうち、最も屈折率が大きい誘電体層は、酸化チタン、酸化ニオブ、および、硫化亜鉛と酸化シリコンとの混合体の少なくとも1種を主成分とし
最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、波長405nmにおいて2.3以上である光記録媒体である。
【0013】
第2の発明は、
基板上に情報信号層を形成する工程と、
情報信号層上に保護層を形成する工程と
を備え、
情報信号層の形成工程では、
記録層、第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層を基板上に順次積層する工程を備え、
第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なり、
第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層のうち、最も屈折率が大きい誘電体層は、酸化チタン、酸化ニオブ、および、硫化亜鉛と酸化シリコンとの混合体の少なくとも1種を主成分とし
最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、波長405nmにおいて2.3以上である光記録媒体の製造方法である。
【0014】
第3の発明は、
基板と、
基板上に設けられた情報信号層と、
情報信号層上に設けられた保護層と
を備え、
情報信号層は、
反射層と
反射層上に設けられた記録層と、
記録層上に順次積層された第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層と
を備え、
第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なり、
第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層のうち、最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、波長405nmにおいて2.3以上である光記録媒体である。
【0015】
この発明では、第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なる。また、最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、波長405nmにおいて2.3以上である。したがって、反射率を向上させた場合にもコントラストまたはBCA変調度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、この発明によれば、高反射率と高コントラストとを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(L0層の記録層上に3層構成の誘電体層を備えた例)
2.第2の実施形態(L0層の反射層と誘電体層との間にバリア層を備えた例)
【0018】
(1)第1の実施形態
(1−1)光記録媒体の構成
図1は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の構成の一例を示す。この光記録媒体は、データの消去や書換が可能である書換型の光記録媒体であり、図1に示すように、基板1上に、第1情報信号層(L0層)2、中間層3、第2情報信号層(L1層)4、カバー層5が順次積層された構成を有する。
【0019】
この光記録媒体では、カバー層5側から第1情報信号層2または第2情報信号層4にレーザー光を照射することによって、情報信号の記録および再生が行われる。例えば、400nm〜410nmの波長を有するレーザー光が0.84〜0.86の開口数を有する対物レンズ10により集光され、カバー層5側から第1情報信号層2または第2情報信号層4に照射されることで、情報信号の記録または再生が行われる。このような光記録媒体としては、例えばBD−RE(Blu-ray Disk ReWritable)が挙げられる。
【0020】
図2は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体のフォーマットの一例を示す。図2に示すように、光記録媒体の第1情報信号層2には、例えば、その中央から外周側に向かってBCA11、リードイン領域12、データ領域13、リードアウト領域14が設定されている。また、第2情報信号層4には、例えば、その中央から外周側に向かってリードアウト領域15、データ領域16、アウター領域17が設定されている。リードイン領域12は、例えば、さらにPIC(Permanent Information & Control Data)領域、OPC(Optimum Power Control)領域およびINFO領域に分けられる。
【0021】
以下、光記録媒体を構成する基板1、第1情報信号層2、中間層3、第2情報信号層4、カバー層5について順次説明する。
【0022】
(基板)
基板1は、中央に開口(以下センターホールと称する)が形成された円環形状を有する。この基板1の一主面は、凹凸面となっており、この凹凸面上に第1情報信号層2が成膜される。以下では、凹凸面のうち凹部をイングルーブGin、凸部をオングルーブGonと称する。
【0023】
このイングルーブGinおよびオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、アドレス情報を付加するためにウォブル(蛇行)されている。BCA11においてオングルーブGonの形状は、バーコード信号を良好に再生する観点から、V字状であることが好ましい。
【0024】
基板1の直径は、例えば120mmに選ばれる。基板1の厚さは、剛性を考慮して選ばれ、好ましくは0.3mm以上1.3mm以下から選ばれ、より好ましくは0.6mm以上1.3mm以下から選ばれ、例えば1.1mmに選ばれる。また、センタホールの径(直径)は、例えば15mmに選ばれる。
【0025】
基板1の材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂もしくはアクリル系樹脂などの樹脂材料またはガラスを使用できるが、コストなどの点を考慮すると、樹脂材料を使用することが好ましい。樹脂材料としては、具体的には例えばゼオネックス、ポリカーボネート(PC)(屈折率1.59)を用いることができる。
【0026】
基板1の成形方法は、所望の形状と光学的に十分な基板表面の平滑性が得られる方法であればよく、特に限定されるものではない。例えば、射出成形法(インジェクション法)、紫外線硬化樹脂を使うフォトポリマー(2P法)法を用いることができる。射出成形法では、作製したマザースタンパを、ディスク基板作製用の金型キャビティ内に配設し、ポリカーボネートなどの透明樹脂をキャビティ内に注入し、マザースタンパの凹凸形状を樹脂に転写することにより、基板1が作製される。
【0027】
(第1情報信号層、第2情報信号層)
図3は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の第1情報信号層および第2情報信号層の一構成例を示す。図3に示すように、第1情報信号層2は、反射層21、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27を基板1上に順次積層してなる積層膜である。
【0028】
反射層21を構成する材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの合金を主成分とするものを挙げることができる。これらのうち、特にAl系、Ag系、Au系、Si系、Ge系の材料が実用性の面から好ましい。合金としては、例えばAl−Ti、Al−Cr、Al−Cu、Al−Mg−Si、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Si−Bなどが好適に用いられる。これらの材料のうちから、光学特性および熱特性を考慮して設定することが好ましい。例えば、単波長領域においても高反射率を有する点を考慮すると、Al系またはAg系材料を用いることが好ましい。誘電体層23を構成する材料としては、例えば、SiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SiO2−Cr23−ZrO2からなる複合酸化物(以下SCZと称する)、SiO2−In23−ZrO2からなる複合酸化物(以下SIZと称する)、TiO2、Nb25を用いることができる。
【0029】
記録層24を構成する材料としては、例えば、レーザー光の照射を受けて可逆的な状態変化を生じる相変化材料を主成分とする材料を用いることができる。かかる相変化材料としては、例えば、アモルファス状態と結晶状態との可逆的相変化を生じる共晶系相変化材料または化合物系相変化材料を用いることができ、反射率および結晶化速度の観点からすると、共晶系相変化材料を用いることが好ましい。
【0030】
共晶系相変化材料としては、例えば、SbTe系の共晶系材料を用いることができる。SbTe系の共晶系材料としては、Sb70Te30の共晶組成近傍の共晶系材料が好ましい。また、この共晶系材料に、保存耐久性の向上、結晶化速度の調整、変調度の向上などを目的として、Ag、In、Geなどの添加元素を加えることが好ましい。例示するならば、Sb−Te、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te、Au−In−Sb−Te、Ge−Sb−Te−Pd、Ge−Sb−Te−Se、Ge−Sb−Te−Bi、Ge−Sb−Te−Co、Ge−Sb−Te−Auを含む系、またはこれらの系に窒素、酸素などのガス添加物を導入した系などを挙げることができる。
【0031】
第1誘電体層25、第2誘電体層26、および第3誘電体層27の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なる。第1誘電体層25、第2誘電体層26、および第3誘電体層27のうち、最も屈折率が大きい誘電体層は、TiO2(酸化チタン)、Nb25(酸化ニオブ)、および、ZnS−SiO2(硫化亜鉛と酸化シリコンとの混合体)の少なくとも1種を主成分とする。最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、波長405nmにおいて2.3以上、好ましくは2.3以上2.65以下である。このような構成とすることで、高反射率と高コントラストとを両立することができる。
【0032】
保存信頼性の観点からすると、記録層24に隣接する第1誘電体層25の材料としては、ZnS−SiO2が好ましい。このZnS−SiO2としては、硫化亜鉛の含有量が70原子%以上90原子%以下であり、酸化シリコンの含有量が10原子%以上30原子%以下であるものが好ましい。具体的には例えば、ZnS−SiO2としては、硫化亜鉛の含有量が80原子%程度であり、酸化シリコンの含有量が20原子%程度のものが好ましい。
【0033】
第1誘電体層25、第2誘電体層26および第3誘電体層27の屈折率をそれぞれn1、n2、n3としたとき、例えば、屈折率n1、n2、n3がn1>n2>n3、またはn2>n1、n2>n3の関係を満たす。高反射率と高コントラストとをさらに向上させる観点からすると、屈折率n1、n2、n3がn1>n2>n3の関係を満たすことが好ましい。n2>n1、n2>n3の関係は、より具体的にはn2>n1>n3の関係であることが好ましい。また、記録特性の観点からすると、記録層24に隣接する第1誘電体層25の材料としては、SiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SiO2、SCZ、SIZを主成分とする材料を用いることが好ましい。
【0034】
最も屈折率が大きい誘電体層以外の、2層の誘電体層の材料としては、例えば、SiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SiO2、SCZ、SIZを主成分とする材料を用いることができる。
【0035】
第1誘電体層25、第2誘電体層26、および第3誘電体層27の積層膜は、低屈折率層(以下、L層と適宜称する。)、中屈折率層(以下、M層と適宜称する。)、および高屈折率層(以下、H層と適宜称する。)のうちの少なくとも2種の層を3層積層してなる積層膜である。具体的には例えば、L層、M層およびH層の3種の層を3層積層してなる積層膜、L層およびM層の2種の層を3層積層してなる積層膜、L層およびH層の2種の層を3層積層してなる積層膜を挙げることができる。なお、この3層の積層膜では、隣接する屈折率層同士は互いに異なる種類の屈折率層とされる。
【0036】
積層膜の組合せとしては、例えば、L層−H層−M層、H層−L層−M層、L層−M層−L層、L層−M層−H層、M層−H層−L層、M層−L層−H層、M層−L層−M層、L層−M層−L層などが挙げられる。高反射率と高コントラストとをさらに向上させる観点からすると、L層−M層−H層の組合せが好ましい。但し、上記表記“L層−M層−H層”は、記録層24から中間層3に向かってH層、M層、L層の積層順を示している。すなわち、上記表記“L層−M層−H層”では、H層が記録層24に隣接する層、L層が中間層3に隣接する層を示している。なお、“L層−M層−H層”以上の上記表記も、上記と同様の内容を示す。
【0037】
ここで、L層とは、L層、M層およびH層のうちで最も屈折率が低い層のことをいい、その屈折率は、2.30未満、好ましくは1.96以上2.30未満である。H層とは、L層、M層およびH層のうちで最も屈折率が高い層のことをいい、その屈折率は、2.55以上、好ましくは2.55以上2.65以下である。M層とは、上述のL層およびH層の屈折率の間の屈折率を有する層のことをいい、その屈折率は、2.30以上2.55未満である。なお、上記屈折率は、波長405nmにおけるものである。
【0038】
図3に示すように、第2情報信号層4は、反射層31、第2誘電体層32、第1誘電体層33、記録層34、第1誘電体層35、第2誘電体層36を中間層3上に順次積層してなる積層膜である。
【0039】
反射層31を構成する材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの合金を主成分とするものを挙げることができる。これらのうち、特にAl系、Ag系、Au系、Si系、Ge系の材料が実用性の面から好ましい。合金としては、例えばAl−Ti、Al−Cr、Al−Cu、Al−Mg−Si、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Si−Bなどが好適に用いられる。これらの材料のうちから、光学特性および熱特性を考慮して設定することが好ましい。例えば、単波長領域においても高反射率を有する点を考慮すると、Al系またはAg系材料を用いることが好ましい。
【0040】
第2誘電体層32、第2誘電体層36の材料としては、例えばSiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SCZ、TiO2、Nb25を主成分とする材料を用いることができ、ZnS−SiO2を用いることが好ましい。また、第1誘電体層33、第1誘電体層35の材料としては、例えばSiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SCZ、SIZ、TiO2、Nb25を主成分とする材料を用いることができ、SiNを用いることが好ましい。
【0041】
(中間層)
基板1に形成された第1情報信号層2上には、例えば、厚さ25μmを有する樹脂層としての中間層3が形成される。この中間層3は、透明性を有する樹脂材料からなり、このような材料としては、例えばポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂若しくはアクリル系樹脂などのプラスチック材料を用いることができる。中間層3のカバー層5側となる面は、基板1と同様に、イングルーブGinおよびオングルーブGonからなる凹凸面となっている。この凹凸面上に第2情報信号層4が成膜される。
【0042】
中間層3は、例えば、第1情報信号層2上に平坦塗布した紫外線硬化樹脂に対して真空環境下で透明樹脂スタンパを押し当て、このスタンパの凹凸を紫外線硬化樹脂に対して転写し、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射して硬化させることにより形成される。この中間層3の一主面は、上述の基板1と同様に凹凸面となっており、この凹凸面上に第2情報信号層4が成膜される。以下では、中間層3の凹凸面のうち凹部をイングルーブGin、凸部をオングルーブGonと称する。
【0043】
この凹状のイングルーブGinおよび凸状のオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、アドレス情報を付加するためにウォブル(蛇行)されている。
【0044】
(カバー層)
カバー層5は、例えば、円環形状を有する光透過性シートと、この光透過性シートを基板1に対して貼り合わせるための接着層とから構成される。光透過性シートは、記録および/または再生に用いられるレーザー光に対して、吸収能が低い材料からなることが好ましく、具体的には透過率90パーセント以上の材料からなることが好ましい。光透過性シートの材料としては、例えばポリカーボネート樹脂材料、ポリオレフィン系樹脂(例えばゼオネックス(登録商標))が挙げられる。光透過性シートの厚さは、好ましくは0.3mm以下に選ばれ、より好ましくは3μm〜177μmの範囲内から選ばれる。接着層は、例えば紫外線硬化樹脂または感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)からなる。また、カバー層5が、UVレジンなどの感光性樹脂を硬化してなるレジンカバーから構成するようにしてもよい。レジンカバーの材料としては、例えば紫外線硬化型のアクリル系樹脂が挙げられる。
【0045】
カバー層5の厚さは、好ましくは10μm〜177μmの範囲内から選ばれ、例えば100μmに選ばれる。このような薄いカバー層5と、例えば0.85程度の高NA(numerical aperture)化された対物レンズとを組み合わせることによって、高密度記録を実現することができる。
【0046】
(光記録媒体の各領域)
以下、この発明の第1の実施形態による光記録媒体に設けられたBCA11、リードイン領域12、およびデータ領域13について説明する。
【0047】
図4、図5は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の情報信号層2のグルーブ配置の一例を概念的に示すものである。ここでは、オングルーブGonがデータを記録するためのトラックとなる場合を例として説明する。また、図5では、図示を容易にするために、BCA11に設けられたオングルーブGonの幅と、リードイン領域12およびデータ領域13に設けられたオングルーブGonの幅とをほぼ同一にしている。しかし、BCA11に設けられたオングルーブGonの幅dは、リードイン領域12およびデータ領域13に設けられたオングルーブGonの幅dに比して狭くしてもよい。
【0048】
最内周側のBCA11には、例えば2000nmトラックピッチのグルーブの配列が形成されている。その外側のリードイン領域12には、例えば350nmトラックピッチのウォブルグルーブの配列が形成されている。さらに外側のデータ領域13には、例えば320nmトラックピッチのウォブリンググルーブが形成されている。これらの各領域に形成されているグルーブは、基板表面に1つの螺旋状に連なるように形成され、トラックピッチが変化する領域間にトラックピッチ切り換えのためのトラックピッチ遷移領域(図示を省略)が配されている。
【0049】
BCA11は、例えば半径r=21.3mm〜22.0mmの間に設けられ、BCA11にグルーブ状トラックが形成されている。トラックピッチは例えば2000nmであり、十分に広い間隔となっている。BCA11には、例えばBCAマーク17が記録されている。このBCAマークは矩形状であることが好ましい。BCAマーク17は、例えば、シリアル番号、ロット番号などの2進情報をバーコード化したデータであり、光記録媒体に固有の情報として著作権保護のために利用される。BCAマーク17は、BCA11の複数のグルーブを横断して半径方向に延びる矩形状のマークが例えば1周にわたって形成されたものである。
【0050】
BCAマーク17は、光記録媒体の作製後に記録される。光記録媒体の初期状態では、情報信号層は未記録の状態にあり、BCAマーク17に対応させて、所要の部分(図5における斜線を付した領域)についてのみレーザー光の照射を行って記録状態とする。この工程の結果、情報信号層2のBCA11においては、円周方向に沿った所要幅の記録状態のバー部分と、未記録状態のバー部分とのパターンによる、バーコード態様の情報記録が行われる。
【0051】
リードイン領域12は、再生専用領域であり、例えば半径r=22.4mm〜23.197mmの間に設けられ、リードイン領域12には、例えば矩形ウォブルグルーブの配列からなるグルーブトラックが例えばトラックピッチ350nmで形成されている。矩形ウォブルグルーブの配列から情報が再生される。
【0052】
データ領域13は、例えば半径r=23.2mm〜58.5mmの間に設けられ、データ領域13に正弦波ウォブルグルーブが形成されている。トラックピッチは例えば320nmであり、これはピッチを詰めることによりさらに長時間記録・再生が可能な大容量を得ることができるようにするためである。
【0053】
BCA11においてオングルーブGonの幅dは、データ領域13のオングルーブGonの幅dに比べて狭くなっていることが好ましい。また、BCA11のオングルーブGonの深さ(高さ)hは、データ領域13のオングルーブGonの深さ(高さ)hに比べて浅く(低く)なっていることが好ましい。また、BCA11とデータ領域13とでは隣り合うオングルーブGon間の距離、すなわちトラックピッチTpが異なっており、BCA11のトラックピッチTpはデータ領域13のトラックピッチTpに比べて広くなっていることが好ましい。このようにすることで、オングルーブGonによる回折でBCA信号が変調されることを低減できる。すなわち、BCAマークの再生信号におけるレベルの変動を低減できる。すなわち、コントラストIH/ILを向上させることができる。
【0054】
BCA11において、オングルーブGonの位相深さλ/αnがλ/296.8n〜λ/16.0nの範囲内であることが好まく、より好ましくはλ/296.8n〜λ/63.6nの範囲内である。このような範囲内にすることで、コントラストIH/ILを向上させることができるからである。但し、λ:記録または再生のレーザー光の波長、α:グルーブ深さの係数、n:記録または再生のレーザー光に対するカバー層の屈折率である。
【0055】
BCA11において、オングルーブGonの深さhは、0.9nm〜16.7nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.9nm〜4.2nmの範囲内である。このような範囲内にすることで、コントラストIH/ILを向上することができるからである。
【0056】
BCA11において、オングルーブGonの幅dは、55nm〜126nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは55nm〜95nmの範囲内である。このような範囲内にすることで、コントラストIH/ILを向上することができるからである。
【0057】
BCA11において、オングルーブGonの幅dとトラックピッチTpとの比(d/Tp)は、0.0275〜0.063の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.0275〜0.0475の範囲内である。このような範囲内にすることで、コントラストIH/ILを向上することができるからである。ここで、オングルーブGonの幅dは、その最大幅d1maxと、その最小幅d2minとの平均値(d1max+d2min)/2である。但し、最大幅d1max:レーザー光入射面Sの側におけるオングルーブGonの幅d1のうちの最大幅、d2min:レーザー光入射面Sとは反対の底部側におけるオングルーブGonの幅d2のうちの最小幅である。
【0058】
(1−2)光記録媒体の製造方法
次に、上述のような構成を有する光記録媒体の製造方法の一例について説明する。
【0059】
まず、例えば射出成形(インジェクション)法、フォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などにより、基板1を成形する。
【0060】
次に、例えばスパッタリング法により、反射層21、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27を基板1上に順次積層する。これにより、基板1上に第1情報信号層2が形成される。
【0061】
次に、例えばスピンコート法により紫外線硬化樹脂を第1情報信号層2上に均一に塗布する。その後、基板1上に均一に塗布された紫外線硬化樹脂に対してスタンパの凹凸パターンを押し当て、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射して硬化させた後、スタンパを剥離する。これらにより、スタンパの凹凸パターンが紫外線硬化樹脂に転写され、イングルーブGinおよびオングルーブGonが設けられた中間層3が形成される。
【0062】
次に、例えばスパッタリング法により、反射層31、第2誘電体層32、第1誘電体層33、記録層34、第1誘電体層35、第2誘電体層36を基板1上に順次積層する。これにより、中間層3上に第2情報信号層4が形成される。
【0063】
次に、カバー層5を第2情報信号層4上に形成する。カバー層5の形成方法としては、例えば、UVレジンなどの感光性樹脂を第2のカバー層5上にスピンコートし、UV光などの光を感光性樹脂に照射することにより、カバー層5を形成するレジンコート法を用いることができる。また、光透過性シートを接着剤を用いて、基板1上の凹凸面側に貼り合わせることにより、カバー層5を形成するシート接着法を用いることもできる。このシート接着法としては、例えば、第2情報信号層4上に塗布されたUVレジンなどの感光性樹脂を用いて、光透過性シートを基板1上の凹凸面側に貼り合わせることにより、カバー層5を形成するシートレジン接着法を用いることができる。また、シート接着法としては、光透過性シートを、このシートの一主面に予め均一に塗布された感圧性粘着剤(PSA)を用いて、基板1上の凹凸面側に貼り合わせることにより、カバー層5を形成するシートPSA接着法を用いることもできる。
以上の工程により、図1に示す光記録媒体が得られる。
【0064】
上述したように、この発明の第1の実施形態によれば、記録層24上に第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27を順次積層する。第1誘電体層25、第2誘電体層26、および第3誘電体層27の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なる。第1誘電体層25、第2誘電体層26、および第3誘電体層27のうち、最も屈折率が大きい誘電体層は、酸化チタン、酸化ニオブ、および、硫化亜鉛と酸化シリコンとの混合体の少なくとも1種を主成分とする。最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、2.3以上である。これにより、高反射率と高コントラストとを両立することができる。
【0065】
(2)第2の実施形態
図6は、この発明の第2の実施形態による光記録媒体の第1情報信号層および第2情報信号層の一構成例を示す。この第2の実施形態による光記録媒体は、図6に示すように、第1情報信号層2の反射層21と誘電体層23との間にバリア層22を備えている点において、第1の実施形態によるものとは異なっている。
【0066】
バリア層22は、反射層21に含まれる材料と、誘電体層23に含まれる材料とが反応することを防ぐためのものである。例えば、反射層21がAgを含み、誘電体層23がSを含む場合には、AgとSとの反応およびそれによるAgの腐食を防ぐことができる。バリア層22の材料としては、例えば、Si34、SiO2、Cr23、In23、ZrO2などの誘電体を主成分とする材料を用いることができる。
【0067】
この発明の第2の実施形態によれば、第1情報信号層2の反射層21と誘電体層23との間にバリア層22を備えているので、反射層21に含まれる材料と、誘電体層23に含まれる材料とが反応することを防ぐことができる。したがって、良好な信号特性および高い信頼性を得ることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、上述の実施形態と対応する部分には同一の符号を付す。
【0069】
この発明の効果を検証するため、層構成および材料を変えて第1情報信号層(L0層)2の反射率およびBCA変調度を評価した。評価サンプルとしては、厚さ1.1mmの基板1上に第1情報信号層(L0層)2をスパッタリングにより成膜し、この第1情報信号層(L0層)2上にカバー層5を形成した後、第1情報信号層(L0層)2を初期化したものを用いた。
【0070】
すなわち、評価サンプルは、図7に示すように、中間層3、第2情報信号層(L1層)4のない媒体構造となっている。しかし、結晶−アモルファス間の反射率比であるBCA変調度は媒体構造にはよらないため、上記手法によりサンプル作製し、BCA変調度の評価を行った。
【0071】
以下、図7を参照しながら、実施例ならびに比較例について説明する。
[実施例1]
まず、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板上に反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27をスパッタリング法で順次積層した。これにより、第1情報信号層2を基板1上に形成した。次に、円環形状のポリカーボネートシートを、このシートの一主面に予め塗布された感圧性粘着材(PSA)により基板1上に貼り合わせて、厚さ0.1mmのカバー層5を第1情報信号層2上に形成した。次に、カバー層5側から第1情報信号層2対して赤色レーザー光を照射することにより、第1情報信号層2を初期化した。
以上により目的とする光記録媒体が得られた。
【0072】
以下に、第1情報信号層2の各膜の材料および膜厚を示す。
なお、第3誘電体層27の厚さは以下に示すように変えて、3種のサンプルを作製した。
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm、
バリア層
材料:Si34、膜厚:10nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:12nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:Si34、膜厚:10nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:32nm
第3誘電体層
材料:Si34、膜厚:10nm、13nm、15nm
【0073】
記録層24上下の誘電体層を(ZnS)80(SiO220により形成するのは、当該材料が非常に低い熱伝導率をもつことから十分な記録感度を光記録媒体に付与させることができるからである。また、第3誘電体層27の膜厚を3水準変化させてサンプルを作製しているのは、反射率を変化させた場合の反射率とBCA変調度の傾向を調べるためである。
【0074】
[実施例2]
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0075】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO2)20、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)50(SiO250、膜厚:10nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:5nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:45nm、47nm、49nm
【0076】
[実施例3]
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0077】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)50(SiO250、膜厚:5nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:10nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:48nm、50nm、52nm
【0078】
[実施例4]
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0079】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)50(SiO250、膜厚:5nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:5nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:48nm、50nm、52nm
【0080】
[実施例5]
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0081】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚15nm
第2誘電体層
材料:TiO2、膜厚:6nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:37nm、40nm、43nm
【0082】
[実施例6]
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0083】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層:
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:15nm
第2誘電体層
材料:TiO2、膜厚:12nm、
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:15nm、18nm、21nm
【0084】
[実施例7]
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0085】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:15nm
第2誘電体層
材料:Nb25層、膜厚:8nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:37nm、40nm、43nm
【0086】
[実施例8]
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0087】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:15nm
第2誘電体層
材料:Nb25、膜厚:12nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:12nm、15nm、18nm
【0088】
[比較例1]
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第3誘電体層27により第1情報信号層2を形成した。これらの第1情報信号層2を構成する各膜の材料および膜厚を以下のようにした。これ以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0089】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:5nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:12nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:20nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:53nm、56nm、59nm
【0090】
[比較例2]
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第3誘電体層27により第1情報信号層2を形成した。これらの第1情報信号層2を構成する各膜の材料および膜厚を以下のようにした。これ以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0091】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:15nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:53nm、56nm、59nm
【0092】
(BCA変調度の評価)
以上のようにして得られたサンプルを光ディスク評価機(パルステック工業株式会社製、商品名:ODU−1000)を用いて、以下のようにしてBCA変調度を評価した。すなわち、再生レーザーパワーを0.3mWとしてBCA領域にレーザー光をフォーカスし、BCAマークの信号を読み取りBCA変調度を評価した。その結果を表1に示す。
【0093】
(反射率の評価)
以上のようにして得られたサンプルの反射率を以下のようにして測定した。すなわち、半径28mmにトラッキングサーボをかけ、グルーブからの反射光レベルを読み取り反射率に換算した。反射率の換算は、反射率が既知の光ディスクを同評価機に取り付け、上記同様に所定の半径にて反射光レベルを読み取り反射率と反射光レベルの校正曲線を求めることにより行った。その結果を表1に示す。
【0094】
表1は、実施例1〜8、比較例1、2のBCA変調度および反射率の評価結果を示す。図8に、実施例1〜8、比較例1、2におけるBCA変調度と反射率との関係を示すグラフ示す。なお、図8中、基準となるBCA変調度3.5、および反射率21.0%に引いた直線は、本実施例に係る光記録媒体(BD)に規格上要求される基準値を示している。すなわち、本実施例に係る光記録媒体のBCA変調度は規格上3.5以上であることが要求され、反射率は規格上21.0%以上であることが要求される。なお、この反射率21.0%は、2層の光記録媒体に要求される反射率4.0%を、1層の光記録媒体に換算した値である。
【表1】

【0095】
表2は、実施例1〜8、比較例1、2の各誘電体層の屈折率を示す。なお、屈折率は、波長405nmを有する光の屈折率である。
【表2】

【0096】
表1、表2および図8から以下のことが分かる。
比較例1は、規格上要求されるBCA変調度3.5以上、反射率21.0%の範囲(以下、規格範囲と称する。)を満たすことはできない。また、比較例2は、規格範囲を非常に限られた膜厚の範囲では満たすことができる。しかしながら、第3誘電体電層などの僅かな膜厚の変化により、規格範囲からはずれてしまう。すなわち、実際に光記録媒体を量産する点からすると、比較例2の膜構成は好ましくない。
これに対して、実施例1〜実施例8は、第3誘電体電層などの膜厚の変化によっても、規格範囲を満たすことができる。特に、実施例1、実施例6、実施例8は、広い膜厚の範囲で規格範囲を満たすことができる。
【0097】
記録層24の両主面のうち、レーザー光が入射する面上に、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27を連続して成膜し、これらの誘電体層のうちで第2誘電体層26の屈折率を最も大きくする。そして、最も屈折率が大きい第2誘電体層26を、波長405nmにおいて屈折率2.3以上を有するTiO2、Nb25、およびZnS−SiO2の少なくとも1種により形成する。これにより、反射率とBCA変調度とを両立することができる。
【0098】
第1誘電体層25、第2誘電体層26、および第3誘電体層27を、低屈折率層(屈折率:2.30未満)と、中屈折率層(2.30以上2.55未満)との組合せで形成することで、反射率とBCA変調度とを両立できる。また、第1誘電体層25、第2誘電体層26、および第3誘電体層27を、低屈折率層(屈折率:2.30未満)と、中屈折率層(2.30以上2.55未満)と、高屈折率層(屈折率:2.55以上)との組合せで形成した場合にも、反射率とBCA変調度とを両立できる。
【0099】
(保存信頼性の評価)
以上のようにして得られたサンプルに対して、温度80℃、相対湿度80%の恒温槽内に200時間保存する加速試験を行った。実施例1〜8、比較例1、2のうち、実施例1、2、5〜8の加速試験の結果を代表して図9〜図14に示す。
【0100】
また、図9〜図14から以下のことが分かる。
SiNからなる第1誘電体層25と記録層24とが接する構成とした実施例1では、加速試験後に信号エラーレートの上昇が顕著になる傾向がある(図9参照)。
また、(ZnS)50(SiO250からなる第1誘電体層25と記録層24とが接する構成とした実施例2でも、実施例1と同様に加速試験後に信号エラーレートの上昇が顕著になる傾向がある(図10参照)。
実施例1および実施例2における信号エラーレートの上昇は、SiNまたは(ZnS)50(SiO250からなる第1誘電体層25が記録層24に形成された記録マークの結晶化を促す作用を有するためと考えられる。
これに対して、(ZnS)80(SiO220からなる第1誘電体層25と記録層24とが接する構成とした実施例5〜8では、加速試験後に信号エラーレートの上昇が抑制される傾向がある(図11〜図14参照)。
【0101】
以上により、反射率とBCA変調度と両立する観点から、第2誘電体層をTiO2、Nb25、およびZnS−SiO2の少なくとも1種を主成分として形成すると共に、その屈折率を2.3以上とすることが好ましい。
また、保存信頼性の観点から、記録層24に隣接する第1誘電体層25をZnS−SiO2により形成すると共に、ZnSの含有量を70原子%以上90原子%以上、SiO2の含有量を10原子%以上30原子%以下にすることが好ましいと考えられる。
【0102】
(実施例9−1)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0103】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:15nm
第2誘電体層
材料:TiO2、膜厚:6nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:41、43、45nm
【0104】
(実施例9−2)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0105】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:10nm
第2誘電体層
材料:TiO2、膜厚:16nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:36、38、40nm
【0106】
(実施例10−1)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0107】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:10nm
第2誘電体層
材料:SiN、膜厚:24nm
第3誘電体層
材料:TiO2、膜厚:8、10、12、14nm
【0108】
(実施例10−2)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0109】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:30nm
第2誘電体層
材料:SiN、膜厚:18nm
第3誘電体層
材料:TiO2、膜厚:2、4、6nm
【0110】
(実施例11−1)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0111】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:SiN、膜厚:60nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:52nm
第3誘電体層
材料:TiO2、膜厚:24、26、28nm
【0112】
(実施例11−2)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0113】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:SiN、膜厚:22nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:10nm
第3誘電体層
材料:TiO2、膜厚:6、8、10nm
【0114】
(実施例12−1)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0115】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:TiO2、膜厚:4nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:30nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:22、26、30nm
【0116】
(実施例12−2)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0117】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:TiO2、膜厚:16nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:20nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:26、28、30nm
【0118】
(実施例13−1)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0119】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:SiN、膜厚:30nm
第2誘電体層
材料:TiO2、膜厚:8nm
第3誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:2、4、6nm
【0120】
(実施例13−2)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0121】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:SiN、膜厚:22nm
第2誘電体層
材料:TiO2、膜厚:12nm
第3誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:4、6、8nm
【0122】
(実施例14−1)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0123】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:TiO2、膜厚:20nm
第2誘電体層
材料:SiN、膜厚:18nm
第3誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:13、16、19nm
【0124】
(実施例14−2)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0125】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:TiO2、膜厚:4nm
第2誘電体層
材料:SiN、膜厚:22nm
第3誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:17、20、23nm
【0126】
(実施例15−1)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0127】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:12nm
第2誘電体層
材料:SiN、膜厚:12nm
第3誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:19、22、25nm
【0128】
(実施例15−2)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0129】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:18nm
第2誘電体層
材料:SiN、膜厚:18nm
第3誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11、14、17nm
【0130】
(実施例16−1)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0131】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:SiN、膜厚:20nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:18nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:6、10、14nm
【0132】
(実施例16−2)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第2誘電体層26、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0133】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:SiN、膜厚:6nm
第2誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:28nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:16、20、24nm
【0134】
(比較例3)
反射層21、バリア層22、誘電体層23、記録層24、第1誘電体層25、第3誘電体層27の材料および膜厚を以下のようにする以外のことは、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0135】
反射層
材料:Ag合金、膜厚:100nm
バリア層
材料:(SiO235(In2330(ZrO235、膜厚:4nm
誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:11nm
記録層
材料:Ge5.5Sb75.6Te18.9、膜厚:11nm
第1誘電体層
材料:(ZnS)80(SiO220、膜厚:15nm
第3誘電体層
材料:SiN、膜厚:52、56、60nm
【0136】
(反射率Rc、反射率Ra)
製膜直後の記録膜はアモルファスであるが、サンプルは初期化装置にて適切なレーザーパワーを照射し結晶状態とした(初期化)。本評価では、ディスクの一部の領域は初期化を行わず、アモルファス状態とした。反射率の評価は、光ディスク評価機(パルステック工業株式会社製、商品名:ODU−1000)を用い、初期化(結晶)領域にトラッキングサーボをかけ、未記録状態の反射光レベルから換算した反射率をRc、未初期化(アモルファス)領域にフォーカスした場合の信号レベルから換算した反射率をRaとした。反射率の換算は、反射率が既知のディスクサンプルで測定される信号レベルから校正曲線を求めることで行っている。その結果を表3に示す。
【0137】
(コントラストの評価)
初期化領域の反射率Rcと未初期化領域の反射率Raの比で定義されるコントラストは、上記により求めた各反射率の比から算出される。その結果を表3に示す。
【0138】
表3は、実施例9−1〜16−2、比較例3のコントラストおよび反射率の評価結果を示す。図15〜図17に、実施例9−1〜16−2、比較例3のコントラストおよび反射率との関係を示すグラフ示す。
【表3】

【0139】
表3、および図15〜図17から以下のことがわかる。
第2誘電体層26以外の誘電体層、すなわち第1誘電体層25または第3誘電体層27の屈折率を、積層した3層の誘電体層のうちで最も大きくした場合にも、反射率とBCA変調度とを両立することができる。
特に、第1誘電体層25、第2誘電体層26および第3誘電体層27の屈折率をそれぞれn1、n2、n3としたとき、屈折率n1、n2、n3がn1>n2>n3の関係を満たすようにすることで、高反射率と高コントラストとの向上の効果が顕著となる。
また、上述の実施例の評価結果から判断すると、1層または3層以上の光記録媒体に対して本願発明を適用した場合にも、高反射率と高コントラストとを両立できることがわかる。
【0140】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0141】
例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0142】
また、上述の実施形態および実施例では、書換型光記録媒体に対してこの発明を適用した場合を例として説明したが、この発明は再生専用型光記録媒体および追記型光記録媒体に対しても適用可能である。
【0143】
また、上述の実施形態および実施例では、中間層またはカバー層側からレーザー光を情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光記録媒体に対してこの発明を適用した場合を例として説明した。しかしながら、この発明はこの例に限定されるものではない。例えば、基板上に情報信号層を有し、基板側からレーザー光を情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光記録媒体に対してもこの発明は適用可能である。また、2枚の基板を貼り合わせてなり、一方の基板の側からレーザー光を基板間の情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光記録媒体に対してもこの発明は適用可能である。
【0144】
また、上述の実施形態および実施例では、2層の情報信号層を備える光記録媒体に対してこの発明を適用した場合を例として説明したが、単層の情報信号層を備える光記録媒体および3層以上の情報信号層を備える光記録媒体に対してもこの発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】この発明の第1の実施形態による光記録媒体の構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態による光記録媒体のフォーマットの一例を示す概略図である。
【図3】この発明の第1の実施形態による光記録媒体の第1情報信号層および第2情報信号層の一構成例を示す概略断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態による光記録媒体の情報信号層のグルーブ配置の一例を概念的に示す概略断面図である。
【図5】この発明の第1の実施形態による光記録媒体の情報信号層のグルーブ配置の一例を概念的に示す概略平面図である。
【図6】この発明の第2の実施形態による光記録媒体の構成の一例を示す概略断面図である。
【図7】実施例による光記録媒体の構成の一例を示す概略断面図である。
【図8】実施例1〜8、比較例1〜2による光記録媒体における反射率とBCA変調度との関係を示すグラフである。
【図9】実施例1による光記録媒体の加速試験前後のSERを示すグラフである。
【図10】実施例2による光記録媒体の加速試験前後のSERを示すグラフである。
【図11】実施例5による光記録媒体の加速試験前後のSERを示すグラフである。
【図12】実施例6による光記録媒体の加速試験前後のSERを示すグラフである。
【図13】実施例7による光記録媒体の加速試験前後のSERを示すグラフである。
【図14】実施例8による光記録媒体の加速試験前後のSERを示すグラフである。
【図15】実施例9−1〜11−2のコントラストおよび反射率との関係を示すグラフ示す。
【図16】実施例12−1〜14−2のコントラストおよび反射率との関係を示すグラフ示す。
【図17】実施例15−1〜16−2、比較例3のコントラストおよび反射率との関係を示すグラフ示す。
【図18】2層BDのBCAマークの再生信号の波形の一例を示す波形図である。
【図19】L0層およびL1層における透過率および反射率の関係を示す概略断面図である。
【図20】反射率とコントラストとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0146】
1 基板
2 第1情報信号層
3 中間層
4 第2情報信号層
5 カバー層
11 BCA
12 リードイン領域
13,16 データ領域
14,15 リードアウト領域
17 アウター領域
21 反射層
22 バリア層
23 誘電体層
24 記録層
25 第1誘電体層
26 第2誘電体層
27 第3誘電体層
31 反射層
32 第2誘電体層
33 第1誘電体層
34 記録層
35 第1誘電体層
36 第2誘電体層
Gin イングルーブ
Gon オングルーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に設けられた情報信号層と、
上記情報信号層上に設けられた保護層と
を備え、
上記情報信号層は、
反射層と
上記反射層上に設けられた記録層と、
上記記録層上に順次積層された第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層と
を備え、
上記第1誘電体層、上記第2誘電体層、および上記第3誘電体層の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なり、
上記第1誘電体層、上記第2誘電体層、および上記第3誘電体層のうち、最も屈折率が大きい誘電体層は、酸化チタン、酸化ニオブ、および、硫化亜鉛と酸化シリコンとの混合体の少なくとも1種を主成分とし
上記最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、波長405nmにおいて2.3以上である光記録媒体。
【請求項2】
上記第1誘電体層、上記第2誘電体層、上記第3誘電体層の屈折率をそれぞれn1、n2、n3としたとき、該屈折率n1、n2、n3がn1>n2>n3の関係を満たす請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
上記第1誘電体層、上記第2誘電体層、上記第3誘電体層の屈折率をそれぞれn1、n2、n3としたとき、該屈折率n1、n2、n3がn2>n1、n2>n3の関係を満たす請求項1記載の光記録媒体。
【請求項4】
上記第1誘電体層、上記第2誘電体層、および上記第3誘電体層の積層膜は、低屈折率層、中屈折率層および高屈折率層のうちの少なくとも2種の層を3層積層してなる積層膜であり、
上記低屈折率層の屈折率が、波長405nmにおいて2.30未満であり、
上記中屈折率層の屈折率が、波長405nmにおいて2.30以上2.55未満であり、
上記高屈折率層の屈折率が、波長405nmにおいて2.55以上である請求項1記載の光記録媒体。
【請求項5】
上記硫化亜鉛の含有量が70原子%以上90原子%以上であり、上記酸化シリコンの含有量が10原子%以上30原子%以下である請求項1記載の光記録媒体。
【請求項6】
上記基板は、第1の領域および第2の領域を有し、
上記基板の第1の領域には、上記基板の周方向に延びる複数の溝が配列されている請求項1記載の光記録媒体。
【請求項7】
上記第1の領域の上記記録層には、上記複数の溝を横切る記録マークが形成されている請求項6記載の光記録媒体。
【請求項8】
上記記録マークは、矩形状を有する請求項7記載の光記録媒体。
【請求項9】
上記基板は、第1の領域および第2の領域を有し、
上記基板の第1の領域および第2の領域にはそれぞれ、上記基板の周方向に延びる複数の溝が配列され、
上記第1の領域の溝が、上記第2の領域の溝に比してより浅くまたはより狭くされている請求項1記載の光記録媒体。
【請求項10】
上記情報信号層と上記保護層との間に情報信号層をさらに備える請求項1記載の光記録媒体。
【請求項11】
上記記録層は、共晶系相変化材料を含んでいる請求項1記載の光記録媒体。
【請求項12】
基板上に情報信号層を形成する工程と、
上記情報信号層上に保護層を形成する工程と
を備え、
上記情報信号層の形成工程では、
記録層、第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層を上記基板上に順次積層する工程を備え、
上記第1誘電体層、上記第2誘電体層、および上記第3誘電体層の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なり、
上記第1誘電体層、上記第2誘電体層、および上記第3誘電体層のうち、最も屈折率が大きい誘電体層は、酸化チタン、酸化ニオブ、および、硫化亜鉛と酸化シリコンとの混合体の少なくとも1種を主成分とし
上記最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、波長405nmにおいて2.3以上である光記録媒体の製造方法。
【請求項13】
基板と、
上記基板上に設けられた情報信号層と、
上記情報信号層上に設けられた保護層と
を備え、
上記情報信号層は、
反射層と
上記反射層上に設けられた記録層と、
上記記録層上に順次積層された第1誘電体層、第2誘電体層、および第3誘電体層と
を備え、
上記第1誘電体層、上記第2誘電体層、および上記第3誘電体層の屈折率は、隣接する誘電体層同士で互いに異なり、
上記第1誘電体層、上記第2誘電体層、および上記第3誘電体層のうち、最も屈折率が大きい誘電体層の屈折率は、波長405nmにおいて2.3以上である光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−135005(P2010−135005A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310318(P2008−310318)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】