説明

光記録媒体および光記録媒体の製造方法

【課題】低温下での光記録媒体の反りを抑制することができる光記録媒体および光記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】追記型記録媒体10は、光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、基板1上に形成された情報記録層4と、情報記録層4上に形成された上記光を透過する光透過層6とを備える。−5℃における光透過層6の貯蔵弾性率は、1500MPa以下の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光記録媒体に関する。詳しくは、紫外線硬化樹脂で構成された光透過層を有する光記録媒体およびこの光記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体の高密度化が進み、例えば従来のCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)に比較して著しい大容量化を実現した高密度光ディスクなどが知られている。
【0003】
高密度光ディスクでは、情報信号を記録および/または再生するための情報信号部をディスク基板の一主面に形成し、この情報信号部には反射膜が形成される。さらにその上に例えばスピンコート法により光透過層・保護層を形成する。そして、記録再生時には、レーザ光がその光透過層を通して情報信号部に照射され、記録または再生が行われる。
【0004】
この高密度光ディスクは、片側(レーザ光が入射される情報出面側)にのみ活性化エネルギー線硬化型樹脂で形成した光透過層を有することから、ディスクの厚み方向に非対称である。このような構造上、DVDなどと比較して元来的に反り易い性質を持つ。
【0005】
このような高密度光ディスクの反りの問題に対応するため、従来では、様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1では、−20℃と25℃間における光透過層の引張弾性率の差が1400MPa以下である光記録媒体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−009638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の請求項1に記載の光記録媒体では、光透過層の−20℃と25℃間における光透過層の引張弾性率の差が1400MPa以下とされている。しかしながら、特許文献1の請求項1に記載の光記録媒体では、−5℃程度の低温下における反りを十分に抑制することができなかった。
【0008】
また、特許文献1の請求項2に記載の光記録媒体では、25℃における光透過層の引張弾性率が100MPa以上800MPa以下とされている。しかしながら、特許文献1の請求項2に記載の光記録媒体では、−5℃程度の低温化における反りを十分に抑制することができなかった。
【0009】
したがって、この発明の目的は、低温下での光記録媒体の反りを抑制することができる光記録媒体および光記録媒体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、基板と、光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、基板上に形成された情報記録層と、光を透過する光透過層とを備え、−5℃における光透過層の貯蔵弾性率が、1500MPa以下の範囲内である光記録媒体である。
【0011】
第2の発明は、基板上に、光の照射により情報信号の記録および再生が行われる情報記録層を形成する工程と、情報記録層上に、紫外線硬化樹脂組成物を塗布した後硬化させることにより、光透過層を形成する工程とを有し、−5℃における光透過層の貯蔵弾性率を、1500MPa以下の範囲内とする光記録媒体の製造方法である。
【0012】
第1の発明および第2の発明では、光透過層の−5℃における貯蔵弾性率が、1500MPa以下の範囲内にに設定されている。これにより、例えば、−5℃程度の低温下における光記録媒体の反りを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、低温下での光記録媒体の反りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1の実施の形態による光記録媒体の構成例を示す断面図である。
【図2】この発明の第2の実施の形態による光記録媒体の構成例を示す断面図である。
【図3】この発明の第3の実施の形態による光記録媒体の構成例を示す断面図である。
【図4】この発明の第3の実施の形態による光記録媒体の情報記録層の一構成例を示す断面図である。
【図5】この発明の第4の実施の形態による光記録媒体の情報記録層の一構成例を示す断面図である。
【図6】サンプル1〜サンプル7の貯蔵弾性率の測定結果を示すグラフである。
【図7】−5℃の貯蔵弾性率に対するΔR−skewをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(光記録媒体の第1の例)
2.第2の実施の形態(光記録媒体の第2の例)
3.第3の実施の形態(光記録媒体の第3の例)
4.第4の実施の形態(光記録媒体の第4の例)
5.他の実施の形態(変形例)
【0016】
1.第1の実施の形態
[光記録媒体の構成]
この発明の第1の実施の形態による追記型光記録媒体について説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態による追記型光記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。この追記型光記録媒体10は、基板1上に、反射層2、第1の保護層3、情報記録層4、第2の保護層5、光透過層6が順次積層された構成を有する。
【0017】
追記型光記録媒体10では、光透過層6の側からレーザ光を情報記録層4に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。例えば、400nm以上410nm以下の範囲の波長を有するレーザ光を、0.84以上0.86以下の範囲の開口数を有する対物レンズにより集光し、光透過層6の側から情報記録層4に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。このような追記型光記録媒体10としては、例えばBD−R(Blu-ray Disk Recordable)が挙げられる。
【0018】
以下、追記型光記録媒体10を構成する基板1、反射層2、第1の保護層3、情報記録層4、第2の保護層5、光透過層6について順次説明する。
【0019】
(基板)
基板1は、例えば、中央に開口(以下センターホールと称する)が形成された円環形状を有する。この基板1の一主面は、例えば、凹凸面8となっており、この凹凸面8上に情報記録層4が成膜される。以下では、凹凸面8のうち凹部をイングルーブGin、凸部をオングルーブGonと称する。
【0020】
このイングルーブGinおよびオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、例えば、アドレス情報を付加するためにウォブル(蛇行)されている。
【0021】
基板1の径(直径)は、例えば120mmに選ばれる。基板1の厚さは、剛性を考慮して選ばれ、好ましくは0.3mm〜1.3mm、より好ましくは0.6mm〜1.3mm、例えば1.1mmに選ばれる。また、センタホールの径(直径)は、例えば15mmに選ばれる。
【0022】
基板1の材料としては、例えばプラスチック材料またはガラスを用いることができ、コストの観点から、プラスチック材料を用いることが好ましい。プラスチック材料としては、例えばポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができる。
【0023】
(反射層)
反射層2の材料としては、例えばAg合金やAl合金など、従来公知の光ディスクにおいて一般的に使用可能な金属や半金属などをこの反射層2に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。また、反射層2の材料としては、光の反射能に加えてヒートシンク(放熱)能を有するものを用いることが望ましい。こうすることで反射層2に放熱層としての機能を持たせることもできる。
【0024】
(第1の保護層、第2の保護層)
第1の保護層3、および第2の保護層5は情報記録層4を保護し、記録/再生時の光学特性および熱特性を制御するためのものである。第1の保護層3、および第2の保護層5の材料としては、SiN、ZnS−SiO2、Ta25など、従来公知の光ディスクにおいて一般的に使用可能な誘電体を用いることができる。
【0025】
第1の保護層3、および第2の保護層5の少なくとも一方が、インジウムとスズの酸化物(Indium Tin Oxde、以下ITOと称する)を主成分として含むようにしてもよい。このような構成にすることで、保存信頼性と高い生産性とを両立することができる。特に、第1の保護層3、および第2の保護層5の両方がITOを主成分としていることが好ましい。保存信頼性をより向上することができるからである。
【0026】
第1の保護層3の厚さは、適切な反射率を得るために、好ましくは10nm〜40nm、より好ましくは20nm〜30nmである。第2の保護層5の厚さは、記録パワーマージン向上の観点から、11nm〜34nmであることが好ましく、より好ましくは16nm〜30nmである。
【0027】
(情報記録層)
情報記録層4は、追記型の情報記録層である。この情報記録層4は、例えば、ZnS、SiO2およびSbを主成分とし、必要に応じてZn、Ga、Te、V、Si、Ta、Ge、In、Cr、SnおよびTbからなる群から選択された少なくとも1つの元素をさらに含み、好適には、以下の式(1)の組成を有する。
[(ZnS)x(SiO21-xy(Sbz1-z1-y・・・・・(1)
ただし、0<x≦1.0、0.3≦y≦0.7、0.8<z≦1.0であり、XはGa、Te、V、Si、Zn、Ta、Ge、In、Cr、SnおよびTbからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素である。
また、情報記録層4の厚さは、良好な記録再生特性を得る観点から、3nm〜40nmであることが好ましい。
【0028】
ZnS、SiO2およびSbを主成分とする情報記録層4は、記録前にはZnS、SiO2、Sbがアモルファス状態となっている。このような状態にある情報記録層4に対してレーザ光を照射すると、情報記録層4の中央部分にSbの結晶が形成され、その他の原子は界面近傍に集中する。これにより、光学定数(n:屈折率、k:減衰係数)が変化し、情報信号が記録される。このように中央部分にSbの結晶が形成された状態にある情報記録層4を、記録前のアモルファス状態に戻すことは困難であるため、上記情報記録層は追記型の情報記録層として用いられる。
【0029】
このように、情報記録層4がZnS、SiO2およびSbを主成分とし、好適には、上記式(1)の組成を有することで、記録された情報が初期のまま長期にわたって安定して保存され、信号再生時に再生用レーザ光によって信号が損なわれず、通常の長期保存によって変質せず書き込み特性が保存され、記録および/または再生用レーザ光に対して十分な感度と反応速度とが得られ、これによって広い線速や記録パワーにわたり良好な記録再生特性を得ることができる。
【0030】
情報記録層4の材料は、上述の材料に限定されるものではなく、従来公知の追記型光記録媒体において一般的に使用可能な無機記録材料を用いることも可能である。
【0031】
例えば、情報記録層4としては、例えば、Te、PdおよびO(酸素)を主成分とする相変化タイプの情報記録層を用いることができ、この情報記録層は、例えば、以下の式(2)の組成を有する。
(TexPd1-xy1-y・・・・・(2)
ただし、0.7≦x≦0.9、0.3≦y≦0.7
【0032】
また、情報記録層4としては、例えば、シリコン(Si)膜と銅(Cu)合金膜を積層してなる合金タイプの情報記録層、もしくは、Ge、BiおよびNを主成分とする情報記録層を用いることもできる。
【0033】
(光透過層)
光透過層6は、紫外線硬化樹脂組成物を硬化することによって、形成されている。この光透過層6の−5℃における貯蔵弾性率は、1500MPa以下の範囲内に設定され、より好ましくは、20MPa以上1500MPa以下の範囲内に設定される。これにより、−5℃程度の低温における追記型光記録媒体10の反りを著しく低減することができる。
【0034】
(紫外線硬化樹脂組成物)
紫外線硬化樹脂組成物は、少なくとも、オリゴマー成分および光重合開始剤成分を含む。また、2官能以上モノマー成分および単官能モノマー成分の少なくとも何れかを含んでいてもよい。
【0035】
例えば、紫外線硬化樹脂組成物は、硬化反応前の液状状態での25℃における粘度が300mPa・s〜3000mPa・sで、かつ単体硬化物のガラス転移温度が−50℃〜15℃以下であるオリゴマー成分と、光重合開始剤成分とを含む。また、この紫外線硬化樹脂組成物は、単体硬化物のガラス転移点温度が−40℃〜90℃以下である2官能以上のモノマー成分および単官能モノマー成分の少なくとも何れかを含んでいてもよい。
【0036】
また、この紫外線硬化樹脂組成物は、硬化反応後において、−5℃における貯蔵弾性率が、1500MPa以下の範囲内に設定されたものである。また、この紫外線硬化樹脂組成物は、より好ましくは、20MPa以上1500MPa以下の範囲内に設定されたものである。また、この紫外線硬化樹脂組成物は、硬化反応後において、ガラス転移点温度が−20℃以上20℃以下となるものである。
【0037】
(オリゴマー成分)
オリゴマー成分としては、例えば、(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることができる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタアクリレートの何れかを意味するものである。(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、単体硬化物のガラス転移点温度が−50℃〜15℃であるウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートの市販品の一例としてはUV−6100B(日本合成化学(株)製)、EB230、EB8405(ダイセル・サイテック(株)製)、CN9004(サートマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレート市販品の一例としてはEB3500(ダイセル・サイテック(株)製)が挙げられる。(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば分子(繰り返し単位)中に2〜4個の(メタ)アクリロイル基を有する。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基の何れかを意味する。(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量は、500〜10000であることが好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種類で用いてもよく、また、2種類以上併用してもよい。
【0038】
(光重合開始剤成分)
光重合開始剤成分としては、0.01%アセトニトリル溶液の紫外−可視吸収スペクトルの長波長側吸収端がλ=405nm未満になる光重合開始剤を好適に用いることができる。この光重合開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−メチルチオ]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどが挙げられる。1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの市販品の一例としてはイルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの市販品の一例としてはダロキュア1173(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの市販品の一例としてはダロキュア1173(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。2−メチル−1[4−メチルチオ]フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オンの市販品の一例としてはイルガキュア907(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0039】
(2官能以上モノマー成分)
2官能以上モノマー成分としては、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。この2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーは、単体硬化物のガラス転移点温度が−40℃〜90℃であり、主鎖構造もしくは、および側鎖構造に脂肪族残基、脂環式残基、芳香族残基を有するものである。
【0040】
2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、エトキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。上記2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーは2種類以上併用することもできる。
【0041】
カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの市販品の一例としてはHX−620(日本化薬(株)製)が挙げられる。エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートの市販品の一例としてはCD561、SR9035(いずれもサートーマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートの市販品の一例としてはSR492(サートーマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの市販品の一例としてはDPCA−120(日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0042】
(単官能モノマー成分)
単官能モノマー成分としては、単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。この単官能(メタ)アクリレートモノマーは、単体硬化物のガラス転移点温度が−50℃〜50℃であり、主鎖構造もしくは、および側鎖構造に脂肪族残基、脂環式残基、芳香族残基を有するものである。単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては2−フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなどが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートモノマーは1種類で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
2−フェノキシエチルアクリレートの市販品の一例としては、ライトアクリレートPO−A(共栄化学(株)製)が挙げられる。テトラヒドロフルフリルアクリレートの市販品の一例としては、SR285(サートマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0044】
オリゴマー成分の配合量は、例えば、紫外線硬化樹脂組成物の全量を100質量部とすると、例えば10重量部〜80重量部とされる。光重合開始剤成分の配合量は、例えば0.5質量部〜10質量部とされる。2官能以上のモノマー成分および単官能モノマー成分を配合する場合は、以下の配合量とされる。2官能以上のモノマー成分の配合量は、20質量部〜60質量部とされる。単官能モノマー成分の配合量は、5質量部〜30質量部とされる。
【0045】
光透過層6の厚さは、好ましくは10μm〜177μmの範囲内から選ばれ、例えば100μmに選ばれる。このような薄い光透過層6と、例えば0.85程度の高NA(numerical aperture)化された対物レンズとを組み合わせることによって、高密度記録を実現することができる。
【0046】
[追記型光記録媒体の製造方法]
上述した追記型光記録媒体10の製造方法の一例について説明する。
【0047】
(基板の成形工程)
まず、一主面に凹凸面8が形成された基板1を成形する。基板1の成形の方法としては、例えば射出成形(インジェクション)法、フォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などを用いることができる。
【0048】
(反射層の成膜工程)
次に、基板1を、例えば反射層2となる材料を含むターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、基板1上に反射層2を成膜する。
【0049】
(第1の保護層の成膜工程)
次に、基板1を、例えば第1の保護層3となる材料を含むターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2などのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、反射層2上に第1の保護層3を成膜する。スパッタリング法として、例えば高周波(RF)スパッタリング法、直流(DC)スパッタリング法を用いることができるが、特に直流スパッタリング法が好ましい。直流スパッタ法は高周波スパッタ法に比して成膜レートが高いため、生産性を向上することができるからである。
【0050】
(情報記録層の成膜工程)
次に、基板1を、例えば、情報記録層4となる材料を含むターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、第1の保護層3上に情報記録層4を成膜する。
【0051】
(第2の保護層の成膜工程)
次に、基板1を、例えば第2の保護層5となる材料を含むターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2などのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、情報記録層4上に第2の保護層5を成膜する。スパッタリング法として、例えば高周波(RF)スパッタリング法、直流(DC)スパッタリング法を用いることができるが、特に直流スパッタリング法が好ましい。直流スパッタ法は高周波スパッタ法に比して成膜レートが高いため、生産性を向上することができるからである。
【0052】
(光透過層の形成工程)
次に、光透過層6を第2の保護層5上に形成する。光透過層6の形成は、例えば、上述の紫外線硬化樹脂組成物を第2の保護層5上にスピンコート法により塗布した後、紫外線を塗布した紫外線硬化樹脂組成物に照射し硬化させることによって行う。
以上の工程により、図1に示す追記型光記録媒体10が得られる。
【0053】
<効果>
この発明の第1の実施の形態による光記録媒体では、光透過層6の−5℃における貯蔵弾性率が、1500MPa以下の範囲内であり、より好ましくは、20MPa以上1500MPa以下の範囲内に設定されている。これにより、−5℃程度の低温における追記型光記録媒体10の反りを著しく低減することができる。
【0054】
2.第2の実施の形態
[光記録媒体の構成]
この発明の第2の実施の形態による追記型光記録媒体について説明する。図2は、この発明の第2の実施の形態による追記型光記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。この追記型光記録媒体20は、基板1上に、情報記録層66、誘電体層64、光透過層6が順次積層された構成を有する。
【0055】
この第2の実施形態による追記型光記録媒体20では、光透過層6の側からレーザ光を情報記録層66に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。例えば、400nm以上410nm以下の範囲の波長を有するレーザ光を、0.84以上0.86以下の範囲の開口数を有する対物レンズにより集光し、光透過層6の側から情報記録層6に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。このような追記型光記録媒体10としては、例えばBD−R(Blu-ray Disc -Recordable)が挙げられる。
【0056】
以下、追記型光記録媒体10を構成する基板1上、情報記録層66、誘電体層64および光透過層6について順次説明する。
【0057】
(基板)
基板1は、第1の実施の形態と同様の構成を有する。
【0058】
(情報記録層)
情報記録層66は、基板1の凹凸面8上に順次積層された金属層62および酸化物層63からなる。金属層62は、酸化物層63に隣接して設けられる隣接層であって、実質的にチタン(Ti)から構成される。Tiを主たる材料とすれば基本的に良好な記録特性を得ることができる。
【0059】
また、光学特性、耐久性および記録感度などの向上を目的として、金属層62に添加物を加えるようにしてもよい。このような添加物としては、例えばアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、バナジウム(V)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、硫黄(S)、セレン(Se)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ガドリニウム(Gd)、ネオジウム(Nd)、亜鉛(Zn)、タンタル(Ta)およびストロンチウム(Sr)からなる群より選ばれた1種以上を用いることができる。
【0060】
また、金属層62を構成する材料を酸化するようにしてもよく、このような酸化物としては、例えばTiSiOを挙げることができる。このように酸化することで、ジッターを改善することができる。
【0061】
また、金属層62を構成する材料を窒化するようにしてもよく、このような窒化物としては、例えばTiSi−Nを挙げることができる。このように窒化することで、パワーマージンを広げることができる。
【0062】
酸化物層63は、実質的にゲルマニウム(Ge)の酸化物であるGeOから構成される。酸化物層63の吸収係数kは、好ましくは0.15以上0.90以下、より好ましくは0.20以上0.70以下、更により好ましくは0.25以上0.60以下の範囲内である。また、酸化物層63の層厚は、好ましくは10nm以上35nm以下の範囲内である。0.15以上0.90以下の範囲を満たすことで、例えば良好な変調度およびキャリア対ノイズ比(以下、C/N比)を得ることができる。0.20以上0.70以下の範囲を満たすことで、例えばより良好な変調度およびC/N比を得ることができる。0.25以上0.60以下の範囲を満たすことで、例えば更により良好な変調度およびC/N比を得ることができる。
【0063】
なお、この明細書における吸収係数は波長410nmにおけるものである。また、その測定値は、エリプソメータ(ルドルフ社製、商品名:Auto EL-462P17)により測定されたものである。
【0064】
また、酸化物層63に添加物を加えるようにしてもよく、この添加物としては、例えばテルル(Te)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、鉛(Pt)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、金(Au)、銀(Ag)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)およびアンチモン(Sb)からなる群より選ばれた1種以上を用いることができる。このような添加物を加えることで、耐久性および/または反応性(記録感度)を向上することができる。なお、耐久性を向上させるためには、特にPd、Pt、Si、Sb、Crが好ましい。
【0065】
(誘電体層)
誘電体層64は、情報記録層66上に順次積層された第1の誘電体層64aおよび第2の誘電体層64bからなる。第1の誘電体層4aおよび第2の誘電体層4bは、情報記録層6の光学的、機械的保護、すなわち耐久性の向上や、記録時の情報記録層6の変形、すなわちふくらみの抑制などを行うためのものである。
【0066】
第1の誘電体層64aは、例えばZnS−SiO2より構成される。この第1の誘電体層64aの厚さは、好ましくは10nm以上58nm以下、より好ましくは23nm以上53nm以下の範囲内である。層厚を10nm以上にすることで、良好なジッターを得ることができ、層厚を58nm以下にすることで、良好な反射率を得ることができる。
【0067】
第2の誘電体層64bは、例えばZrO2およびCr23からなる。Cr23の含有量は、40原子%以上90原子%以下の範囲内であることが好ましい。40原子%未満であると、耐久性が低下してしまい、90原子%を超えると、耐久性が低下すると共に初期の記録特性も低下するからである。第2の誘電体層4bが、SiO2をさらに含有することが好ましい。SiO2を含有することで、記録感度、パワーマージンおよびライトストラテジーといった記録特性の調整が可能となる。第2の誘電体層64bの層厚は、2nm以上20nm以下の範囲内であることが好ましい。2nm未満であると、第2の誘電体層64bの均一性が低下してしまい、20nmを越えると、成層時間が長くなるため生産性が低下するからである。
【0068】
(光透過層)
光透過層6は、第1の実施の形態と同様の構成を有する。
【0069】
[追記型光記録媒体の製造方法]
次に、上述の構成を有する追記型光記録媒体20の製造方法の一例について説明する。
【0070】
まず、例えば射出成形(インジェクション)法またはフォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などにより、基板1を成形する。次に、例えば、金属層62、酸化物層63、第1の誘電体層64a、第2の誘電体層64bをこの順序で基板11上に積層する。これらの薄膜の形成方法としては、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などの真空薄膜形成技術を用いることができる。
【0071】
次に、光透過層6を第2の誘電体層64b上に形成する。光透過層6の形成は、例えば、上述の紫外線硬化樹脂組成物を第2の誘電体層64b上にスピンコート法により塗布した後、紫外線を照射し硬化させることにより行う。
以上の工程により、図2に示す光記録媒体20が得られる。
【0072】
<効果>
この発明の第2の実施の形態による光記録媒体は、第1の実施の形態と同様の効果を有する。
【0073】
3.第3の実施の形態
[光記録媒体の構成]
図3は、この発明の第3の実施の形態による光記録媒体の一構成例を示す。この光記録媒体は、データの消去や書換が可能である書換型の光記録媒体30である。図3に示すように、この光記録媒体30は、情報記録層14、光透過層16がこの順序で基板11上に積層された構成を有する。
【0074】
この光記録媒体30では、光透過層16側から情報記録層14にレーザー光を照射することによって、情報信号の記録および再生が行われる。例えば、400nm〜410nmの波長を有するレーザー光が0.84〜0.86の開口数を有する対物レンズ40により集光され、光透過層16側から情報記録層14に照射されることで、情報信号の記録または再生が行われる。このような光記録媒体30としては、例えばBD−RE(Blu-ray Disk ReWritable)が挙げられる。
【0075】
以下、光記録媒体30を構成する基板11、情報記録層14、光透過層16について順次説明する。
【0076】
(基板)
基板11は、第1の実施の形態における基板1と同様である。
【0077】
(情報記録層)
図4は、情報記録層14の一構成例を示す。図4に示すように、情報記録層14は、例えば、反射層22、第2誘電体層23、第1誘電体層24、記録層25、第1誘電体層26、第2誘電体層27、第3誘電体層28をこの順序で基板11上に積層してなる積層膜である。
【0078】
(反射層)
反射層22は、入射されたレーザー光を反射し光学特性を向上させるとともに、記録層25に吸収された熱を速やかに放熱させる層である。反射層22を構成する材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの合金を主成分とするものを挙げることができる。これらのうち、特にAl系、Ag系、Au系、Si系、Ge系の材料が実用性の面から好ましい。合金としては、例えばAl−Ti、Al−Cr、Al−Cu、Al−Mg−Si、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Si−Bなどが好適に用いられる。これらの材料のうちから、光学特性および熱特性を考慮して設定することが好ましい。例えば、単波長領域においても高反射率を有する点を考慮すると、Al系またはAg系の材料を用いることが好ましい。
【0079】
第1誘電体層24、第2誘電体層23、第1誘電体層26、第2誘電体層27および第3誘電体層28は、記録層25を保護するとともに、光学的特性および熱的安定性などを制御する層である。これらの誘電体層を構成する誘電体材料としては、例えば、Si、In、Zr、Cr、Sn、Ta、AlもしくはNbなどの酸化物、SiもしくはAlなどの窒化物、Znなどの硫化物、またはこれらの誘電体材料を2種以上混合したものを用いることができる。具体的には、SiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SiO2、Cr23、In23、ZrO2、SCZ、SIZ、TiO2、Nb25などを用いることができる。第1誘電体層24および第1誘電体層26が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。また、第2誘電体層23および第2誘電体層27が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。
【0080】
反射層22に隣接する第2誘電体層23の熱伝導率は、記録層25に隣接する第1誘電体層24の熱伝導率に比べて高く設定されていることが好ましい。これにより、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を速やかにAg合金へと逃がすことが可能となり、第2情報記録層4の繰り返し記録耐久性を向上することができきる。第1誘電体層24および第2誘電体層23がSiO2、In23およびZrO2を主成分とする場合、それぞれの誘電体層に含まれるIn23の比率が以下の関係を満たすことが好ましい。すなわち、記録層25に隣接する第1誘電体層24に含まれるIn23の比率をa(mol%)、反射層22に隣接する第2誘電体層23に含まれるIn23の比率をb(mol%)としたとき、a<bの関係を満たすことが好ましい。このような関係を満たすことで、第2誘電体層23の熱伝導率を第1誘電体層24の熱伝導率に比べて高く設定することができる。ここで、比率は、第1誘電体層24または第2誘電体層23に含まれるSiO2とIn23とZrO2との総量を100mol%としている。ここで、熱伝導率は、薄膜の厚さ方向の熱伝導率である。
【0081】
具体的には、第1誘電体層24および第2誘電体層23がSiO2、In23およびZrO2を主成分とする場合、第1誘電体層24が以下の式(1)の組成を有し、第2誘電体層23が以下の式(2)の組成を有することが好ましい。
(SiO2x1(In23y1(ZrO2z1・・・(1)
(但し、x1+y1+z1=100、5≦x1≦20、40≦y1≦60、30≦z1≦50)
(SiO2x2(In23y2(ZrO2z2・・・(2)
(但し、x2+y2+z2=100、5≦x2≦20、60≦y2≦90、5≦z2≦20)
【0082】
記録層25は、例えば、レーザー光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層である。具体的には、記録層25は、例えば、レーザー光の照射により非晶質相と結晶相との間を可逆的に変化させることにより、情報信号の記録および書き換えが行われる相変化記録層である。この相変化記録層の材料としては、例えば、共晶系相変化材料または化合物系相変化材料を用いることができる。具体的には、相変化材料としては、例えば、GeSbTe、SbTe、BiGeTe、BiGeSbTe、AgInSbTeまたはGeSnSbTeなどを主成分とした相変化材料が挙げられる。これらを主成分とした相変化材料に、必要に応じて、Ag、In、CrおよびMnなどの金属材料を1種以上添加するようにしてもよい。
【0083】
化合物系相変化材料であるBiGeTe系材料としては、以下の式(3)に示す組成を有するものが好ましい。
BixGeyTez・・・(3)
(但し、x+y+z=100、2≦x≦10、35≦y≦45、45≦z≦55である。)
【0084】
この情報記録層14では、反射層22に隣接する第2誘電体層23の熱伝導率を、記録層25に隣接する第1誘電体層24の熱伝導率よりも高くしている。これにより、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を速やかに反射層22へと逃がすことが可能となり、情報記録層14の繰り返し記録耐久性を向上することができる。すなわち、書換型の光記録媒体において、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0085】
また、情報記録層14を透過するレーザー光の透過率を制御するために、反射層22の膜厚を薄くした場合にも、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を反射層22へと速やかに逃がすことが可能となる。したがって、書換型の光記録媒体において、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0086】
また、SiO2とIn23とZrO2とを主成分とする第1誘電体層24および第2誘電体層23を用いた場合には、これら2つの誘電体層におけるIn23の比率を調整することにより、これら2つの誘電体層の熱伝導率を容易に制御することが可能となる。具体的には、それらの誘電体層における比率は、記録層25に隣接する第1誘電体層24のIn23の比率をa(mol%)、反射層22に隣接する第2誘電体層23のIn23の比率をb(mol%)としたときに、a<bの関係を満たすように設定することが好ましい。このように設定することで、反射層22に隣接する第2誘電体層23の熱伝導率を、記録層25に隣接する第1誘電体層24の熱伝導率よりも高く設定できるからである。
【0087】
また、第1誘電体層24および第2誘電体層23としてSiO2とIn23とZrO2とを主成分とするものを用い、記録層25としてBiとGeとTeを主成分とする記録層25を用いることが好ましい。このようにすることで、記録層25の結晶生成を制御し、より良好な信号特性を得ることができる。
【0088】
(光透過層)
光透過層16は、第1の実施の形態による追記型光記録媒体10の光透過層6と同様の構成を有する。
【0089】
[光記録媒体の製造方法]
次に、上述の構成を有する光記録媒体30の製造方法の一例について説明する。
【0090】
まず、例えば射出成形(インジェクション)法またはフォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などにより、基板11を成形する。次に、例えば、反射層22、第2誘電体層23、第1誘電体層23、記録層25、第1誘電体層26、第2誘電体層27、第3誘電体層28をこの順序で基板11上に積層する。これにより、基板11上に情報記録層14が形成される。これらの薄膜の形成方法としては、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などの真空薄膜形成技術を用いることができる。
【0091】
次に、光透過層16を情報記録層14上に形成する。光透過層16の形成は、例えば、上述の紫外線硬化樹脂組成物を情報記録層14上にスピンコート法により塗布した後、紫外線を塗布した紫外線硬化樹脂組成物に照射し硬化させることにより行う。
以上の工程により、図3に示す光記録媒体20が得られる。
【0092】
<効果>
この発明の第3の実施の形態による光記録媒体30は、光透過層16の−5℃における貯蔵弾性率が、1500MPa以下の範囲内であり、より好ましくは、20MPa以上1500MPa以下の範囲内に設定されている。これにより、−5℃程度の低温における書き換え型の光記録媒体30の反りを著しく低減することができる。
【0093】
4.第4の実施の形態
この発明の第4の実施の形態による光記録媒体について説明する。図5は、この発明の第4の実施の形態による光記録媒体の情報記録層の一構成例を示す。なお、上述の第3の実施の形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0094】
この発明の第4の実施の形態による光記録媒体は、情報記録層14の構成以外第3の実施の形態による光記録媒体と同様である。したがって、以下では情報記録層14の構成について詳細に説明し、その他については、第3の実施の形態による光記録媒体と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0095】
[情報記録層]
図5に示すように、第4の実施の形態による光記録媒体は、反射層22と記録層25との間に、単層の誘電体層51が形成された情報記録層14を有する点において、第3の実施のとは、異なっている。
【0096】
誘電体層51は、SiO2とIn23とZrO2を主成分としている。誘電体層51に含まれるIn23の比率は、40mol%以上60mol%以下であることが好ましい。ここで、比率は、誘電体層51に含まれるSiO2とIn23とZrO2との総量を100mol%としている。より具体的には、誘電体層51が、以下の式(4)の組成を有していることが好ましい。
(SiO2x1(In23y1(ZrO2z1・・・(4)
(但し、x1+y1+z1=100、5≦x1≦20、40≦y1≦60、30≦z1≦50)
【0097】
<効果>
この発明の第4の実施の形態による光記録媒体は、第3の実施の形態と同様の効果を有する。
【実施例】
【0098】
<サンプル1>
以下の成分の配合量を適宜調整し、図6の線L1の貯蔵弾性率を示すサンプル1の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
オリゴマー成分
ウレタン(メタ)アクリレート(日本合成化学(株)製 商品名:UV6100B)
光重合開始剤成分
(チバ・ジャパン(株)製 商品名イルガキュア184)
2官能以上モノマー成分
プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(サートーマー・ジャパン(株)製 商品名:SR9035)
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:DPCA−120)
【0099】
なお、図6に示す貯蔵弾性率は、以下のように測定した(以下のサンプル2〜7も同様)。まず、紫外線硬化樹脂組成物を、PETフィルムに挟み込み、硬化後膜厚が100μmになるよう塗布した後、メタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製 UVL−4000M3−N1、ランプ出力120W/cm)を用いて500mJ/cm2で硬化させた。この硬化膜の−20℃〜120℃の温度環境下の貯蔵弾性率を、粘弾性スペクトロメータ(セイコーインスツルメンツ社製DMS6100)で測定した。
【0100】
<サンプル2>
サンプル1における、オリゴマー成分、光重合開始剤成分、2官能以上モノマー成分に用いる材料種、各成分の配合量を適宜変え、また、必要に応じて、上述の単官能モノマー成分を配合し、図6の線L2の貯蔵弾性率を示すサンプル2の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0101】
<サンプル3>
サンプル1における、オリゴマー成分、光重合開始剤成分、2官能以上モノマー成分に用いる材料種、各成分の配合量を適宜変え、また、必要に応じて、上述の単官能モノマー成分を配合し、図6の線L3の貯蔵弾性率を示すサンプル3の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0102】
<サンプル4>
サンプル1における、オリゴマー成分、光重合開始剤成分、2官能以上モノマー成分に用いる材料種、各成分の配合量を適宜変え、また、必要に応じて、上述の単官能モノマー成分を配合し、図6の線L4の貯蔵弾性率を示すサンプル4の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0103】
<サンプル5>
サンプル1における、オリゴマー成分、光重合開始剤成分、2官能以上モノマー成分に用いる材料種、各成分の配合量を適宜変え、また、必要に応じて、上述の単官能モノマー成分を配合し、図6の線L5の貯蔵弾性率を示すサンプル5の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0104】
<サンプル6>
サンプル1における、オリゴマー成分、光重合開始剤成分、2官能以上モノマー成分に用いる材料種、各成分の配合量を適宜変え、また、必要に応じて、上述の単官能モノマー成分を配合し、図6の線L6の貯蔵弾性率を示すサンプル6の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0105】
<サンプル7>
サンプル1における、オリゴマー成分、光重合開始剤成分、2官能以上モノマー成分に用いる材料種、各成分の配合量を適宜変え、また、必要に応じて、上述の単官能モノマー成分を配合し、図6の線L7の貯蔵弾性率を示すサンプル7の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0106】
<サンプル8>
サンプル1における、オリゴマー成分、光重合開始剤成分、2官能以上モノマー成分に用いる材料種、各成分の配合量を適宜変え、また、必要に応じて、上述の単官能モノマー成分を配合し、図6の線L8の貯蔵弾性率を示すサンプル8の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0107】
<サンプル9>
サンプル1における、オリゴマー成分、光重合開始剤成分、2官能以上モノマー成分に用いる材料種、各成分の配合量を適宜変え、また、必要に応じて、上述の単官能モノマー成分を配合し、図6の線L9の貯蔵弾性率を示すサンプル9の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0108】
サンプル1〜サンプル9の紫外線硬化樹脂組成物について、以下の測定を行った。
【0109】
(光ディスクの反りの測定)
サンプル1〜サンプル9の紫外線樹脂組成物を用いて光透過層を形成した評価用の光ディスクを、以下のように作製した。
【0110】
まず、射出成形法により、一主面にイングルーブおよびオングルーブが設けられた基板を成形した。なお、この基板は、厚さ1.1mm、トラックピッチ0.32μm、グルーブ深さ20nmのBD用の基板である。
【0111】
次に、スパッタリング法により、以下の膜構成で各膜を基板上に順次成膜した。
【0112】
以下に、各膜の材料および膜厚を示す。
金属膜
材料:AgNdCu、膜厚:123nm
第1の誘電体膜
材料:Si34、膜厚:8nm
第2の誘電体膜
材料:(ZnS)80−(SiO220、膜厚:7nm
相変化記録膜
材料:Ge6.5Sb77.1Te16.4、膜厚:10nm
第3の誘電体膜
材料:(ZnS)80−(SiO220、膜厚:8nm
第4の誘電体膜
材料:Si34、膜厚:50nm
第5の誘電体膜
材料:(SiO220(Cr2330(ZrO250、膜厚:5nm
【0113】
次に、紫外線樹脂組成物を上記の膜が形成された基板上にスピンコート法により塗布した。その後、紫外線を照射することによって、紫外線樹脂組成物を硬化させ、厚さ0.1mmの光透過層を形成した。この光透過層は、BDの規格に準拠したものであり、この光透過層側が記録再生光の入射面となる。以上により、評価用光ディスクを作製した。
【0114】
この評価用の光ディスクを−5℃の環境下に24時間以上放置し、その放置前(25℃の環境下)の光ディスクの反り角(β角)と、放置後の光ディスクの反り角(β角)との差を測定した。光ディスクの反り角の差は、放置前の光ディスクの径方向の反り角R−skew[deg]と、放置後の光ディスクの径方向の反り角R−skew[deg]との差ΔR−skew[deg]を測定した。測定結果を図7に示す。なお、図7に示すグラフは、−5℃の貯蔵弾性率を横軸、ΔR−skewを縦軸としたグラフである。
【0115】
[評価]
図7に示すように、−5℃の貯蔵弾性率が1500MPa以下では、ΔR−skewを−0.2[deg]より小さい値に抑制できることが確認できた。一方、−5℃の貯蔵弾性率が1500MPaを超えると、ΔR−skewが−0.2[deg]より大きくなることが確認できた。すなわち、矢印pに示す−5℃の光透過層の貯蔵弾性率が1500MPa以下の範囲では、低温における光ディスクの反りを著しく低減できることが確認できた。なお、ΔR−skew=−0.2[deg]を判定基準とした理由は、BD(Blu-ray Disk)の信号特性、信頼性等を考慮すると、R−skewが−0.35〜+0.35degであることが求められることに基づくものである。すなわち、−0.35〜+0.35degの0.7degの範囲内に、skew経時変化、Sudden change(急な温度環境変化によるskew変化)、環境変化におけるskewマージン、製造でのskewマージンを含める必要がある。これらのskew経時変化、Sudden change、環境変化におけるskewマージン、製造でのskewマージンの配分を考慮すると、環境変化におけるskewマージン(すなわち、−5℃の温度環境下でのskew変化)は、最低でも0.2deg以下にする必要がある。
【0116】
この発明は、上述したこの発明の実施の形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、光透過層上に、保護層としてのハードコート層を形成してもよい。また、例えば、レーザ光の入射側からみて反対側の面(いわゆるレーベル面)には、光ディスクの内容を表示するためのレーベル印刷が施された印刷面を形成してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1,11・・・基板
2・・・反射層
3・・・第1の保護層
4,14・・・情報記録層
5・・・第2の保護層
6,16・・・光透過層
8・・・凹凸面
10,20・・・追記型光記録媒体
11・・・基板
30・・・光記録媒体
22・・・反射層
23,27・・・第2誘電体層
24,26・・・第1誘電体層
25・・・記録層
28・・・第3誘電体層
51・・・誘電体層
62・・・金属層
63・・・酸化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、上記基板上に形成された情報記録層と、
上記情報記録層上に形成された上記光を透過する光透過層と
を備え、
−5℃における上記光透過層の貯蔵弾性率が、1500MPa以下の範囲内である光記録媒体。
【請求項2】
−5℃における上記光透過層の貯蔵弾性率が、20MPa以上1500MPa以下の範囲内である請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
上記基板は、ポリカーボネート系樹脂を主成分とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項4】
上記光透過層は、紫外線硬化樹脂組成物を主成分とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項5】
上記紫外線硬化樹脂組成物は、
硬化反応前の液状状態での25℃における粘度が300mPa・s以上3000mPa・s以下であり、且つ単体硬化物のガラス転移点温度が−50℃以上15℃以下であるオリゴマー成分と、
光重合開始剤成分とを含む
請求項4記載の光記録媒体。
【請求項6】
上記紫外線硬化樹脂組成物は、
2官能以上モノマー成分および単官能モノマー成分のうちの少なくとも1種をさらに含む
請求項5記載の光記録媒体。
【請求項7】
上記情報記録層が、光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層である
請求項1記載の光記録媒体。
【請求項8】
基板上に、光の照射により情報信号の記録および再生が行われる情報記録層を形成する工程と、
上記情報記録層上に、紫外線硬化樹脂組成物を塗布した後硬化させることにより、光透過層を形成する工程と
を有し、
−5℃における上記光透過層の貯蔵弾性率を、1500MPa以下の範囲内とする光記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−60368(P2011−60368A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208157(P2009−208157)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Blu−ray Disc 
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】