説明

光記録媒体の記録装置

【課題】移動する光学ユニットの応答性を向上させる。
【解決手段】光記録媒体10′を支持する媒体支持部(スピンドル21)と、記録用のパルスレーザ光を発生する第1のレーザ光源と、第1のレーザ光源から出射されたパルスレーザ光に情報をエンコードする変調器とを有する変調レーザ光発生ユニット30と、光記録媒体10′に照射されるパルスレーザ光を集光する対物レンズ41と、当該対物レンズ41を支持する支持部材(基板40A)とを有し、位置が移動されることで媒体支持部に支持される光記録媒体に対し移動される光学ユニット40と、変調レーザ光発生ユニット30から出力されるパルスレーザ光を、光学ユニット40へ導くため、変調レーザ光発生ユニット30と光学ユニット40とを接続する、可撓性を有する第1の光導波路91とを備えて光記録媒体の記録装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体に情報を記録するため、2光子吸収などの多光子吸収反応を用いて光記録媒体中の記録材料に光学的変化を起こさせる方法が知られている。多光子吸収化合物に多光子吸収反応を起こさせるためには、ほぼ同時に複数の光子が与えられなければならないため、強いピークパワーを有するレーザを用いるのが望ましく、そのために、連続波レーザではなくパルスレーザを用いることが検討されている(特許文献1)。
【0003】
また、光記録媒体の記録材料として、光を照射することにより蛍光特性が変化するものを用いることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−277270号公報
【特許文献2】特表2001−505701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、パルスレーザ光を発する光源装置は、連続波レーザ光を発する光源装置に比較して非常に大きい。そのため、連続波レーザを用いていた従来のCDやDVDなどの光ディスクドライブのように、移動する光ピックアップユニットにパルスレーザを搭載するのは極めて困難である。
【0006】
また、蛍光特性によりエンコードされた情報を光記録媒体から読み取ろうとする場合、蛍光の強度は非常に弱いことから、光検出器には光電子倍増管(PMT)やアバランシェフォトダイオード(APD)などの、感度が非常に高いものを用いるのが望ましい。
【0007】
しかし、これらの光検出器は、比較的大きいので、これらを、移動する光ピックアップユニットとして搭載するのは非常に困難である。
【0008】
そこで、本発明は、パルスレーザを光源装置として用いる光記録媒体の記録装置において、光記録媒体に対して移動する部分を軽量化して、応答性を良くし、光記録媒体の実用的な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するため、本発明の光記録媒体の記録装置は、光記録媒体を支持する媒体支持部と、記録用のパルスレーザ光を発生する第1のレーザ光源と、前記第1のレーザ光源から出射されたパルスレーザ光に情報をエンコードする変調器とを有する変調レーザ光発生ユニットと、前記光記録媒体に照射されるパルスレーザ光を集光する対物レンズと、当該対物レンズを支持する支持部材とを有し、位置が移動されることで前記媒体支持部に支持される前記光記録媒体に対し移動される光学ユニットと、前記変調レーザ光発生ユニットから出力されるパルスレーザ光を、前記光学ユニットへ導くため、前記変調レーザ光発生ユニットと前記光学ユニットとを接続する、可撓性を有する第1の光導波路とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような光記録媒体の記録装置によれば、重量の大きな第1のレーザ光源を光学ユニットに搭載しないで済むので、光学ユニットを軽くすることができる。そのため、光学ユニットの慣性が小さいので、光学ユニットを移動させるときに応答性良く位置の制御ができる。したがって、実用的な光記録媒体の記録装置を実現することができる。
【0011】
前記した光記録媒体の記録装置においては、再生用のレーザ光を発生する第2のレーザ光源と、前記再生用のレーザ光が前記光記録媒体に照射された結果、前記光記録媒体から帰ってきた再生光を検出する光検出器とをさらに備え、前記光学ユニットは、前記第2のレーザ光源から出射されたレーザ光を前記対物レンズに導くように構成され、前記光記録媒体から帰ってきた再生光を前記光検出器に導くため、前記光学ユニットと前記光検出器とを接続する、可撓性を有する第2の光導波路を備える構成とすることができる。
【0012】
このような再生機能を有する光記録媒体の記録装置によれば、光検出器を光学ユニットに搭載しないで済むので、光学ユニットを軽くすることができる。そのため、光学ユニットの慣性が小さく、光学ユニットを移動させるときに、応答性良く位置の制御ができるので実用的な光記録媒体の記録装置を実現することができる。
【0013】
前記した光記録媒体の記録装置においては、前記変調器から出力されたパルスレーザ光の波長を短くする高調波発生器を備えることができる。または、光記録媒体の記録装置は、前記変調器に入力されるパルスレーザ光の波長を短くする高調波発生器を備えることができる。高調波発生器を備えることで、パルスレーザ光の波長を短くして、ビームを小さく絞って高い密度で情報を記録することができる。
【0014】
前記した光記録媒体の記録装置において、前記第1の光導波路は、シングルモード光ファイバであることが望ましい。シングルモード光ファイバを用いると、コアの径が小さいため、光記録媒体に集光するビームを小さく絞ることができ、高密度で光記録媒体に情報を記録することができる。
【0015】
前記した再生機能を有する光記録媒体の記録装置においては、前記光検出器は、アバランシェフォトダイオードまたは光電子倍増管を有する構成とすることができる。アバランシェフォトダイオードや光電子倍増管光検出器は、比較的大きいため、光検出器を光学ユニットから分離することによる効果を有効に利用することができる。
【0016】
前記した再生機能を有する光記録媒体の記録装置においては、前記第2の光導波路は、マルチモード光ファイバであることが望ましい。マルチモード光ファイバを用いると、伝送する光量を大きくすることができるので、光記録媒体から帰ってきた光を効率良く光検出器に導くことができ、S/N比を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パルスレーザ光を光源装置として用いる光記録媒体の記録装置において、光記録媒体に対して移動する部分である光学ユニットを軽量化して、光学ユニットの位置の応答性を良くするので、光記録媒体の実用的な記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光記録ディスクの記録装置の全体構成図である。
【図2】(a)多層の光記録媒体の断面図と(b)単層の光記録媒体の断面図である。
【図3】第1実施形態に係る記録再生装置の構成図である。
【図4】第1実施形態に係る記録再生装置の変形例を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る記録再生装置の構成図である。
【図6】光記録ディスクの記録再生装置の全体構成図である。
【図7】第3実施形態に係る記録再生装置の構成図である。
【図8】第4実施形態に係る記録再生装置の構成図である。
【図9】3つのダイクロイックミラーの特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明のいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、図2を参照して、本発明の光記録媒体の記録装置および再生装置が情報を記録し、再生する対象となる光記録媒体の一例について説明する。
【0020】
図2(a)に示すように、多層の光記録媒体10は、基板11と、サーボ信号層12と、複数の中間層13および記録層14と、遮光フィルタ層15と、カバー層16とを備えてなる。
【0021】
基板11は、ポリカーボネートなどの円板であり、記録層14を支持する支持体である。
サーボ信号層12は、中間層13および記録層14を基板11に保持させるための粘着性または接着性の樹脂材料からなり、基板11側の面に予め凹凸または屈折率の変化によりサーボ信号が記録された層である。ここでのサーボ信号は、記録時および再生時のフォーカスの基準面であることを記録再生装置1が認識できるように予め設定された信号である。所定の記録層14に焦点を合わせる場合には、この基準面からの距離を考慮して焦点を制御する。また、記録時および再生時に円周方向に並んだ記録スポットのトラックに正確にレーザ光を照射できるようにトラッキング用のサーボ信号または溝を設けておくとよい。
【0022】
記録層14は、情報が光学的に記録される感光材料からなる層であり、記録光(記録用の照射光)の照射により、2光子吸収反応などの多光子吸収反応を起こし、蛍光強度、屈折率、光吸収率などの光学的特性が変化するものを用いる。
【0023】
記録層14は、例えば1〜100層程度設けられる。光記録媒体10の記憶容量を大きくするため、記録層14は多い方が望ましく、例えば10層以上であるのが望ましい。
【0024】
中間層13は、複数の記録層14の間に配置され、記録時および再生時のレーザ光の照射により変化しない材料が用いられる。中間層13は、複数の記録層14の間で層間クロストーク(隣接する記録層14間の信号の混じり合い)が生じないように、記録層14同士の間隔を所定量空けるために設けられている。中間層13の材料としては、例えば、ポリビニルアルコールや、アクリル酸およびアクリル酸エステルからなる分子量10万以上のポリマーをイソシアネートでゆるく架橋したTgが室温以下のポリマーを含む組成物を用いることができる。なお、複数の中間層13および記録層14を合わせた層を便宜的に複合層19と称することとする。
【0025】
遮光フィルタ層15は、複合層19の上に設けられ、記録再生に不要な波長の光を吸収もしくは反射して減衰させる層である。遮光フィルタ層15は、長期的な不要光の暴露による記録層14の劣化を防止するために任意的に設けることができる。
【0026】
カバー層16は、複合層19を保護するために設けられる層であり、記録時および再生時のレーザ光が透過可能な材料からなる。カバー層16は、数十μm〜数mmの適宜な厚さで設けられる。
【0027】
図2(b)は、光記録媒体を記録層14が1つだけの単層とした場合の例である。図2(b)の光記録媒体10′は、基板11の上に記録層14が設けられ、記録層14の上にカバー層16が設けられている。基板11には、トラッキングのための溝11Aを設けておくとよい。また、必要に応じて、記録層14とカバー層16の間に反射層を設けてもよい。
【0028】
次に、記録装置の構成について説明する。図1に示すように、記録装置の一例としての光ディスクの記録再生装置1は、一例としてディスク形状の光記録媒体10′に対し情報の記録や再生を行う装置であり、筐体5内に、ディスク駆動部20と、変調レーザ光発生ユニット30と、光学ユニット40と、制御装置95とを備えて構成されている。
【0029】
ディスク駆動部20は、モータ22と、モータ22のスピンドル21を有している。媒体支持部の一例としてのスピンドル21は、光記録媒体10′の支持ができる形状に形成されている。
【0030】
変調レーザ光発生ユニット30は、情報が強度変化としてエンコードされたレーザ光を出力するユニットである。変調レーザ光発生ユニット30は、通常の使用時において筐体5に対して移動しないように固定されている。
【0031】
光学ユニット40は、DVDドライブの光ピックアップのように、位置が移動することで、光記録媒体10′に対する位置が移動するユニットである。光学ユニット40は、光記録媒体10′に対し照射するレーザ光を集光する対物レンズ41と、この対物レンズ41を支持する支持部材の一例としての基板40Aが設けられている。光学ユニット40は、光記録媒体10′の半径方向に沿って延びるガイド71に沿って移動できるように、ガイド71と係合する光学ユニット駆動部72を有している。
なお、光学ユニット40の位置の移動は、光記録媒体30に対する単なる相対的な移動ではなく、絶対的な位置の移動、つまり、慣性が問題となるような移動を意味する。つまり、光学ユニット40の移動により、結果として光記録媒体10′に対する相対的な移動が生じるのはもちろんであるが、例えば、図1の例でいえば、筐体5に対しても移動することを意味する。
【0032】
変調レーザ光発生ユニット30と光学ユニット40とは、変調レーザ光発生ユニット30から出力されるレーザ光を光学ユニット40へ導くために、可撓性の第1の光導波路91により接続されている。
【0033】
筐体5に対し移動しない変調レーザ光発生ユニット30と、筐体5に対して移動する光学ユニット40の相対的な変位を吸収するため、第1の光導波路91は、十分なたるみをもってこれらを接続している。例えば、図1に示したように、第1の光導波路91はU字に曲げられた部位を有し、U字の末端が延びる方向(図1の左右方向)に光学ユニット40が移動するように構成されている。これにより、光学ユニット40の移動が可能であり、図1の2点鎖線で示したように、光学ユニット40の移動により第1の光導波路91のたるみ状態の変化も抑制することができる。
第1の光導波路91のレーザ入射部は、レーザ光の結合効率を高め伝達光量を増加するためにコア拡大処理をしておくのが望ましい。また、伝達光量を増加するために、第1の光導波路91の両端部は、反射防止処理をしておくのが望ましい。
第1の光導波路91の種類は特に限定されないが、例えば、光ファイバや、フォトニッククリスタルファイバ(PCF)、その他の光導波路を用いることができる。また、その構成材料も、ガラス、樹脂、結晶質材料など、特に限定されない。
【0034】
ディスク駆動部20、変調レーザ光発生ユニット30および光学ユニット40は、制御装置95と接続され、各動作が制御される。すなわち、制御装置95により、モータ22の回転、光学ユニット40の位置、後述するフォーカスやトラッキング、変調レーザ光発生ユニット30での発光および変調の制御などがなされる。また、情報の再生時には、光記録媒体10から帰ってきた光は、光学ユニット40で検出され、制御装置95に出力されて、復調されるようになっている。
【0035】
このように、光学ユニット40とは別に変調レーザ光発生ユニット30が設けられ、これらが可撓性の第1の光導波路91により接続されている場合において、より詳細な構成を示した第1および第2実施形態について説明する。
【0036】
[第1実施形態]
図3に示す、第1実施形態に係る記録再生装置1A(記録再生装置1の一つの詳細例)は、記録層14が単層の光記録媒体10′を対象とし、記録層14としては、記録光の照射により屈折率が変化する記録材料を採用した場合を想定している。
【0037】
変調レーザ光発生ユニット30は、パルスレーザ31と、変調器32と、SHG素子33とコネクタ39を有している。
【0038】
変調器32は、パルスレーザ31から出力されたパルスレーザ光のうちの一部のパルス光を間引くことで、パルスレーザ光に情報をエンコードする装置である。変調器32としては、音響光学素子(AOM)、マッハツェンダ(MZ)型光変調素子その他の電気光学変調素子(EOM)を用いることができる。変調器32として、これらの音響光学素子、電気光学素子を用いることで、メカニカルシャッタを用いる場合に比較して極めて高速に光のON・OFFを行うことができる。
【0039】
変調器32とパルスレーザ31の間には、不要な反射光によるノイズを防止するため、パルスレーザ31から変調器32への光の透過のみを許容する光アイソレータを配置するのが望ましい。
【0040】
光学ユニット40は、対物レンズ41の光軸上に、対物レンズ41から順に、収差補正のためのビームエキスパンダ46、λ/4波長板45、DBS(ダイクロイックビームスプリッタ)44、レンズ55、PBS(偏光ビームスプリッタ)54、集光レンズ62、シリンドリカルレンズ63および受光素子61Aを備えている。
【0041】
対物レンズ41は、記録光および読出光(本明細書において情報の再生のために光記録媒体に照射する光をいう。)を複数の記録層14のうちの一つに収束するレンズである。対物レンズ41は、図示しないフォーカスアクチュエータにより光軸方向に移動され、記録層14に焦点を合わせることができるようになっている。
【0042】
DBS44は、特定の波長域の光を反射し、その他の波長域の光を透過させる光学素子であり、記録光を反射し、読出光を透過するものが用いられている。本実施形態では、側方から入射される記録光を光記録媒体10′へ向けるために配置されている。
【0043】
λ/4波長板45は、直線偏光を円偏光に変換し、円偏光を回転方向に応じた向きの直線偏光に変換する光学素子である。
【0044】
DBS44の、対物レンズ41の光軸に直交する方向には、第1の光導波路91のコネクタ49Aが配置され、コネクタ49Aから出射された光が、コリメートレンズ42およびλ/2波長板43を介してDBS44に導入されるようになっている。これにより、コネクタ49Aから出射された記録光は、DBS44により反射されて光記録媒体10′に照射されるようになっている。
【0045】
PBS54の、対物レンズ41の光軸に直交する方向には、再生用レーザ51Aが配置されている。再生用レーザ51Aは、連続波レーザが用いられ、パルスレーザ31とは異なる波長のレーザ光を発するものが用いられる。
【0046】
受光素子61Aは、再生時に、読出光が記録層14とこの記録層14に隣接する界面(反射層がある場合には反射層の表面)で反射することで、光記録媒体10′から対物レンズ41に帰ってきた光(本明細書において、情報の再生時に光記録媒体から帰ってきた、情報を含む光を「再生光」という。)を受光する素子である。受光素子61Aは、再生された情報を含む光を受光して、これにより得た信号を制御装置95に出力する。また、受光素子61Aが受光した光は、シリンドリカルレンズ63を通過しているので、光量分布を制御装置95に出力することで、制御装置95において、非点収差法により、再生光のフォーカシングサーボのための制御量を得ることができる。
【0047】
このような記録再生装置1Aは、情報を記録する際に、制御装置95によりモータ22が駆動されて光記録媒体10′が回転し、光学ユニット駆動部72を制御することで、所望の記録位置(半径位置)に対物レンズ41が位置するように光学ユニット40が移動される。そして、パルスレーザ31が駆動されてパルスレーザ光が変調器32に出力される。同時に、情報を記録媒体に記録するピットパターンに変調した信号が制御装置95から変調レーザ光発生ユニット30に出力され、変調器32において、パルスレーザ光の強度を変化させて、パルスレーザ光に情報をエンコードする。情報がエンコードされたパルスレーザ光(記録光)は、SHG素子33で2分の1の波長に変換され、コネクタ39、第1の光導波路91を通って、光学ユニット40のコネクタ49Aに到達する。コネクタ49Aから出た記録光は、コリメートレンズ42、λ/2波長板43を通ってDBS44に入り、DBS44で反射されて、λ/4波長板45に向けて向きが変えられる。そして、この記録光は、λ/4波長板45、ビームエキスパンダ46、対物レンズ41を通過して、光記録媒体10′の記録層14に集光される。記録層14は、記録光が照射されることにより、屈折率が変化し、屈折率の変調によりピットパターンが形成される。
【0048】
そして、このように情報を記録しながら、制御装置95は、光学ユニット駆動部72を制御して、光学ユニット40の位置を光記録媒体10′の径方向に徐々に移動させ、これにより、光記録媒体10′の平面方向に広がるように情報が記録された箇所を形成していくことができる。
【0049】
このような情報の記録の過程において、光学ユニット40が逐次移動されるが、本実施形態の記録再生装置1Aは、大きな装置であるパルスレーザ31を移動する光学ユニット40に設けず、移動しない変調レーザ光発生ユニット30に設けたので、光学ユニット40を軽量化して、光学ユニット40の位置の応答性を良くすることができる。すなわち、パルスレーザ31を用いる記録再生装置を実用的な装置とすることができる。
【0050】
また、パルスレーザ31だけでなく、変調器32およびSHG素子33も比較的サイズが大きいことから光学ユニット40から分離して変調レーザ発生ユニット30に設けることで、光学ユニット40を軽量化することができる。特に、高精度な変調およびSHG変換を行う場合に、これらの素子は一定温度に制御されることが望ましいので、光学ユニット40の外部にこれらの素子を設置することで、温度制御が容易になるという利点もある。
【0051】
なお、情報を再生する場合には、再生用レーザ51Aから、読出光を発する。読出光は、コリメートレンズ52、λ/2波長板53を通過し、PBS54で反射し、レンズ55,DBS44、λ/4波長板45、ビームエキスパンダ46、対物レンズ41を通過して、光記録媒体10′の記録層14に集光される。光記録媒体10′で反射した光は、対物レンズ41を通過して平行光束となった後、対物レンズ41の光軸上の光学素子をシリンドリカルレンズ63まで順次通過し、受光素子61Aで受光される。受光素子61Aで受光された光は、情報の信号およびフォーカシングサーボ用の信号として、制御装置95に出力される。
【0052】
第1実施形態においては、発明の理解の容易のため、単層の光記録媒体10′を対象とする記録再生装置を説明したが、多層の光記録媒体に対して情報の記録・再生を行うようにするには、後述する第4実施形態のように、基準サーボ光レーザと、基準サーボ用の受光素子を設けるとよい。
【0053】
また、第1実施形態において、変調器32およびSHG素子33の順序は使用する変調器の特性により順序を入れ替えることが可能である。変調器の光学特性が長波長で効率が良い場合は波長変換前に変調器32を設置することが望ましく、短波長で効率が良ければSHG素子33の後に設置することが望ましい。例えば、図4に示す記録再生装置1A′の変調レーザ発生ユニット30では、パルスレーザ31が出力したパルスレーザ光は、SHG素子33に入力されて2分の1の波長に変換され、この短くなった波長の光が変調器32に入力されるように構成されている。
【0054】
[第2実施形態]
図5に示す、第2実施形態に係る記録再生装置1Bは、記録層14が単層の光記録媒体10′を対象とし、記録層14としては、記録光の照射により蛍光強度が変化するものを採用した場合を想定している。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、同じ部分については、図面に同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
記録再生装置1Bは、光記録媒体10′から帰ってきた蛍光を検出するための光学素子が追加された以外は、第1実施形態と同様の構成である。光記録媒体10′に読出光を照射することで記録層14で発生した蛍光を検出するため、レンズ55とPBS54の間にDBS64Fが設けられ、DBS64Fの、対物レンズ41の光軸に直交する方向には、DBS64Fから順に、フィルタ65F、集光レンズ66F、受光素子61Fが配置されている。DBS64Fは、DBS44とは別の波長選択性を有し、光記録媒体10′で発生した蛍光の波長に近い波長の光を反射するものが用いられる。このような構成により、光記録媒体10′で発生した再生光としての蛍光は、DBS64Fで反射して、受光素子61Fに受光される。受光素子61Fで蛍光を受光した信号は、再生情報を含む信号として制御装置95に出力される。なお、受光素子61Aで受光されて得られた信号は、再生情報を含まないので、読取光のフォーカシングサーボのためにのみ用いられる。
【0056】
このような、蛍光強度の強弱で情報を記録・再生するために、受光素子61Fを備えた記録再生装置1Bにおいても、変調レーザ光発生ユニット30が移動する光学ユニット40と別に設けられ、これらが第1の光導波路91で接続された構成であるので、光学ユニット40の軽量化が図られ、光学ユニット40の位置の応答性を良くすることができる。すなわち、パルスレーザ31を用いる記録再生装置を実用的な装置とすることができる。
【0057】
第2実施形態においては、発明の理解の容易のため、単層の光記録媒体10′を対象とする記録再生装置を説明したが、多層の光記録媒体に対して情報の記録・再生を行うようにするには、後述する第4実施形態のように、基準サーボ光レーザと、基準サーボ用の受光素子を設けるとよい。
【0058】
次に、再生用のレーザ光が光記録媒体に照射された結果、光記録媒体から帰ってきた再生光を検出する光検出器を、光学ユニットと別に設けた例である第3および第4実施形態について説明する。
【0059】
図6に示す本発明の記録装置の一例としての記録再生装置2は、図1を参照して説明した記録再生装置1に対し、再生光を検出する光検出器60が光学ユニット40と別に設けられ、筐体5に固定されている。光記録媒体10′(10)から帰ってきた再生光を光検出器60に導くため、光学ユニット40と光検出器60は、可撓性を有する第2の光導波路92により接続されている。第2の光導波路92としては、第1の光導波路91と同様のものを用いることができる。
【0060】
[第3実施形態]
図7に示す、第3実施形態に係る記録再生装置2Aは、記録層14が単層の光記録媒体10′を対象とし、記録層14としては、記録光の照射により蛍光強度が変化するものを採用した場合を想定している。なお、第3実施形態においては、第2実施形態と異なる点についてのみ説明し、同じ部分については、図面に同じ符号を付して説明を省略する。
【0061】
記録再生装置2Aは、第2実施形態において光学ユニット40に設けられていた受光素子61Fが、前記した光検出器60に設けられている。一方、光学ユニット40における、集光レンズ66Fにより再生光が集光される部分には、この光を導入可能なコネクタ49Fが設けられている。受光素子61Fは、コネクタ69Fと接続され、コネクタ49Fとコネクタ69Fの間が可撓性の第2の光導波路92で接続されている。これにより、受光素子61Fは、再生光を受光することができる。なお、本実施形態において再生用レーザ51Aは、第2のレーザ光源の一例である。
【0062】
そして、本実施形態においては、光検出器60の受光素子61Fとして、アバランシェフォトダイオードまたは光電子倍増管のような、感度が高いものを用いている。このような受光素子61は、比較的大きなものであるが、移動する光学ユニット40には設けず、移動しない光検出器60に設け、光学ユニット40と光検出器60を第2の光導波路92で接続するようにしたので、光学ユニット40の軽量化が図られ、光学ユニット40の位置の応答性を良くすることができる。すなわち、パルスレーザ31および受光素子61Fを用いる記録再生装置を実用的な装置とすることができる。
【0063】
第3実施形態においては、発明の理解の容易のため、単層の光記録媒体10′を対象とする記録再生装置を説明したが、多層の光記録媒体に対して情報の記録・再生を行うようにするには、後述する第4実施形態のように、基準サーボ光レーザと、基準サーボ用の受光素子を設けるとよい。
【0064】
[第4実施形態]
図8に示す、第4実施形態に係る記録再生装置2Bは、記録層14が多層の光記録媒体10を対象とし、記録層14としては、記録光の照射により蛍光強度が変化するものを採用した場合を想定している。なお、第4実施形態においては、第3実施形態と異なる点についてのみ説明し、同じ部分については、図面に同じ符号を付して説明を省略する。
【0065】
図8に示すように、記録再生装置2Bは、情報の記録時に記録光を所望の記録層14にフォーカシングするための基準サーボ光を発する基準サーボ用レーザ51Lと、光記録媒体10から帰ってきた基準サーボ光を検出する受光素子61Lが設けられている。具体的には、記録光がコネクタ49AからDBS44に入る光学経路の途中である、λ/2波長板43とDBS44の間にDBS44Lが配置されて、記録光の光路への基準サーボ光の導入および導出が行われている。DBS44Lの側方(コネクタ49A〜DBS44の光路に対し直交する方向)には、レンズ55L、PBS54L、集光レンズ62L、シリンドリカルレンズ63L、受光素子61Lが設けられている。これらは、それぞれ、レンズ55、PBS54、集光レンズ62、シリンドリカルレンズ63、受光素子61と同様の構成である。そして、PBS54Lの側方(DBS44L〜受光素子61Lの光路に対し直交する方向)には、λ/2波長板53L、コリメートレンズ52L、基準サーボ用レーザ51Lが設けられている。基準サーボ用レーザ51Lは、再生用レーザ51Aや、パルスレーザ31の発する波長とは別の波長で連続波レーザを発する。なお、本実施形態において再生用レーザ51Aは、第2のレーザ光源の一例である。
【0066】
受光素子61Lで受光して得られた信号は、制御装置95に出力される。そして、所定の記録層14に記録光の焦点を合わせる場合には、サーボ信号層12を基準面とし、この基準面から記録層14を順に数えていき、目的の記録層14で、隣接する中間層13との界面反射に基づき、非点収差法によりフォーカシングサーボを行う。そして、記録光のトラッキングサーボを行う場合も同様に、サーボ信号層12から得られるトラッキング制御信号に基づき対物レンズ41を駆動することで所定のトラック間隔で記録層14に信号を記録することができる。
【0067】
ちなみに、DBS64F(DBS−1とする)、DBS44(DBS−2とする)およびDBS44L(DBS−3とする)は、それぞれ異なる反射率の波長依存性を有している。図9に示すように、DBS−1,DBS−2,DBS−3は、これらのうちDBS−1が最も短いカットオフ波長を有し、DBS−2,DBS−3は、この順でDBS−1よりも長いカットオフ波長を有している。再生用レーザ光の波長λは、DBS−1のカットオフ波長より短く、再生光の波長λは、DBS−1のカットオフ波長とDBS−2のカットオフ波長の間、記録光の波長λは、DBS−2のカットオフ波長とDBS−3のカットオフ波長の間、基準サーボ光の波長λは、DBS−3のカットオフ波長より長い。このように、各光の波長と、ダイクロイックミラーのカットオフ波長を選択することで、図8に示したような光学系で、各光の分岐および合流をすることが可能である。より具体的にいえば、再生用レーザ光の波長λ、再生光の波長λ、記録光の波長λ、基準サーボ光の波長λ、をこの順で短い波長に設定し、この4つの波長の光のうち、2つの短い波長の光と2つの長い波長の光をDBS−2で分離し、その後、2つの短い波長(λ,λ)の光をDBS−1で分離し、2つの長い波長(λ,λ)の光をDBS−4で分離しているので、4つの波長の光を分離するのにDBSを通す回数を最大でも2回と少なくすることができ、損失を小さくすることができる。また、光学系の構成が、記録光・再生光・基準サーボ光の3つを合波しつつ、検出器(受光素子61F)側に反射される波長は再生光(蛍光)のみになるので、微弱な再生光のS/Nを確保することが可能である。
【0068】
このように、記録再生装置2Bによれば、多層の光記録媒体10に対して情報の記録・再生を行うことができ、その際、第3実施形態と同様に、移動する光学ユニット40には、パルスレーザ31と受光素子61Fを設けず、これらをそれぞれ動かない変調レーザ光発生ユニット30と光検出器60に設けたので、光学ユニット40の軽量化が図られ、光学ユニット40の位置の応答性を良くすることができる。すなわち、パルスレーザ31を用いる記録再生装置を実用的な装置とすることができる。
【0069】
以上に、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。例えば、図1および図6においては、情報の記録と再生の両方を行う装置を例示したが、記録のみを行う装置として構成することもできる。また、本発明の記録装置が対象とする光記録媒体は、図2に例示したものに限られない。もっとも、本発明の意義が最も高いのは、複数の記録層を有する光記録媒体に対し、パルスレーザを用いて記録を行う場合である。この場合には、パルスレーザが大きい装置であることから、光学ユニットの重量を小さくする意義が大きいといえる。
【符号の説明】
【0070】
1,1A,1A′,1B,2,2A,2B 記録再生装置
10,10′ 光記録媒体
11 基板
12 サーボ信号層
13 中間層
14 記録層
15 遮光フィルタ層
16 カバー層
21 スピンドル
30 変調レーザ光発生ユニット
31 パルスレーザ
32 変調器
33 SHG素子
40 光学ユニット
40A 基板
41 対物レンズ
51A 再生用レーザ
51L 基準サーボ用レーザ
60 光検出器
61 受光素子
61A 受光素子
61F 受光素子
61L 受光素子
71 ガイド
72 光学ユニット駆動部
91 第1の光導波路
92 第2の光導波路
95 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光記録媒体を支持する媒体支持部と、
記録用のパルスレーザ光を発生する第1のレーザ光源と、前記第1のレーザ光源から出射されたパルスレーザ光に情報をエンコードする変調器とを有する変調レーザ光発生ユニットと、
前記光記録媒体に照射されるパルスレーザ光を集光する対物レンズと、当該対物レンズを支持する支持部材とを有し、位置が移動されることで前記媒体支持部に支持される前記光記録媒体に対し移動される光学ユニットと、
前記変調レーザ光発生ユニットから出力されるパルスレーザ光を、前記光学ユニットへ導くため、前記変調レーザ光発生ユニットと前記光学ユニットとを接続する、可撓性を有する第1の光導波路とを備えることを特徴とする光記録媒体の記録装置。
【請求項2】
再生用のレーザ光を発生する第2のレーザ光源と、
前記再生用のレーザ光が前記光記録媒体に照射された結果、前記光記録媒体から帰ってきた再生光を検出する光検出器とをさらに備え、
前記光学ユニットは、前記第2のレーザ光源から出射されたレーザ光を前記対物レンズに導くように構成され、
前記光記録媒体から帰ってきた再生光を前記光検出器に導くため、前記光学ユニットと前記光検出器とを接続する、可撓性を有する第2の光導波路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体の記録装置。
【請求項3】
前記変調器から出力されたパルスレーザ光の波長を短くする高調波発生器を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光記録媒体の記録装置。
【請求項4】
前記変調器に入力されるパルスレーザ光の波長を短くする高調波発生器を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光記録媒体の記録装置。
【請求項5】
前記第1の光導波路は、シングルモード光ファイバであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光記録媒体の記録装置。
【請求項6】
前記光検出器は、アバランシェフォトダイオードまたは光電子倍増管を有することを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体の記録装置。
【請求項7】
前記第2の光導波路は、マルチモード光ファイバであることを特徴とする請求項2または請求項6に記載の光記録媒体の記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−198447(P2011−198447A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67448(P2010−67448)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】