説明

光誘起無電解めっき

光起電太陽電池における金属接点にめっきを施すための方法及び組成物を記載する。めっき性金属イオン及び化学還元剤を含有する水性浴に前記電池を浸漬する。次いで、前記電池を光に曝露して、前記電池の2つの側面を逆の極性に帯電させる。外部電気接触、裏側のアノード腐蝕、及び裏側の犠牲物質の必要なしに、金属イオンをめっきできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、シリコン太陽電池を含む光起電電池における金属接点に無電解めっきを施す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、光起電電池又はモジュールであり、日光を直接電気に変換する。光起電(PV)電池は、半導体材料から作製され、前記半導体材料としてはシリコンが最も一般的である。電池に光(紫外線、可視光線、及び赤外線)があたると、前記光の特定の部分が半導体材料に吸収され、その結果、吸収された光のエネルギーが半導体に移動し、電流が生じる。PV電池の上面及び下面に接触させて金属を配置することによって、電流を取り出して外部で使用することができる。電流は、電池の電圧と共に、太陽電池が発生させることのできるワット数を規定する。
【0003】
半導体光起電電池は、大きな面積のpn接合を有し、そこで光が吸収されて電子−正孔対が生じる。電子及び正孔は、各々接合から逆側に向かって移動し、その結果、過剰の負電荷がn−ドープ側に蓄積し、過剰の正電荷がp−ドープ側に蓄積する。電流を収集して電力を発生させるためには、pn接合の両側を外部回路に電気接触させなければならない。前記接触は、典型的に、デバイスとオーミック接触している金属パターンからなる。理想的な接触パターンは、抵抗損失を最小化するために高い伝導性を有し、効率的に電流を収集するために基材と良好に電気接触し、且つ機械的安定性を確保するために強く密着するものである。金属パターンは、電池の表面の任意の位置で発生する電流を収集すると同時に、金属によって遮られ、延いては電流を発生させるために失われる入射放射の量を最小化するために低抵抗経路を提供するように設計される。
【0004】
シリコン、特に結晶形のシリコンは、太陽電池を製造するために用いられている一般的な材料である。大部分の太陽電池は、p型/n型接合を形成するためにホウ素及びリンでドープされた結晶質シリコンから作製される。太陽電池の製造において製造コストを下げるために多結晶質シリコンを用いる場合もあるが、得られる電池は、単結晶シリコン電池ほど効率的ではない場合がある。また、結晶構造を有しない非晶質シリコンを用いる場合もあるが、これも製造コストを下げるためである。太陽電池の製造において用いられる他の材料としては、ガリウムヒ素、セレン化銅インジウム、及びテルル化カドミウムが挙げられる。
【0005】
シリコン太陽電池の典型的な配置は、以下の通りである:
(a)バック接点;
(b)P型Si;
(c)N型Si;
(d)反射防止コーティング;
(e)接触グリッド;及び
(f)カバーガラス。
【0006】
シリコンは、極めて反射性が高いので、典型的に、電池の上面に反射防止コーティングを塗布して反射による損失を低減する。次いで、典型的に、電池を自然環境から保護するために反射防止層上にガラスカバー板が適用される。
【0007】
従来の太陽電池は、結晶質シリコンウェハを用いて製造することができる。Si(+4)ウェハは、当初ホウ素(+3)ドーパントを含むp型で用いられていた。より多くの光を捕捉するために、光がシリコンに斜めに反射されるように水酸化物又は硝酸/フッ化水素酸で前記ウェハをテクスチャ化してもよい。p−n接合は、蒸着を用いて拡散させ、再度真空装置内で表面パッシベーション層を塗布して窒化シリコンフィルムを付与することによって形成される。
【0008】
シリコン太陽電池製造の標準的なプロセスにおいて、シリコンウェハの前側は、典型的に窒化シリコンを含む反射防止パッシベーション層でコーティングされる。この窒化シリコン層は、電池により吸収された(反射されなかった)光の割合を最大化し、且つ表面における電子の再結合を防いで電池効率を高めるために表面をパッシベーションするという2つの目的のために役立つ。
【0009】
太陽電池接点を形成しなければならないので、裏面には全領域に金属接点が形成され、前面には細い「指状部(fingers)」及び太い「母線」で構成される格子状金属接点が形成される。太陽電池導体が形成された後、平角線又は金属リボンによって複数の太陽電池を直列(及び/又は並列)に相互接続し、モジュール又は「ソーラーパネル」に組み立てる。完成ソーラーパネル製品は、典型的に、前面に強化ガラスのシートを有し、前記シートを環境から保護するために裏面をポリマーで被覆する。
【0010】
太陽電池パネルの製造に最も一般的に用いられている材料は、シリコンである。図1は、典型的なシリコン太陽電池の前側金属母線12を有する前側10と、金属線14と、裏側金属母線22を有する裏側20とを示す。図2は、反射防止コーティング層32と、n−ドープシリコン層34と、p−ドープシリコン層36とを有する典型的なシリコン太陽電池の断面図を示す。シリコンは、単結晶シリコンであっても多結晶シリコンであってもよいが、これは単なる例示であり、本発明を限定するものではない。前側10における金属線14は、光によって誘起された電流を収集する。前側母線12は、複数の金属線14、即ち「指状部」から電流を収集する。電池の裏側20は、典型的に、前側と同様の一組の母線22を有するが、裏側20は、光を透過させる必要はない。前側母線12及び裏側母線22は、モジュール用に電池を直列に接続させる。
【0011】
前側金属パターンの設計においては、競合する要因について考慮しなければならない。デバイスの前側は、光を透過させなければならないので、遮光による損失を最小化するために金属トレースが被覆する面積をできるだけ小さくすべきである。一方、効率的に電流を収集するには、できるだけ大きな面積を被覆することが好ましい。その理由は、前側のシート抵抗が比較的高い(約50オームパースクエア〜約100オームパースクエア)場合があるので、被覆率が低すぎる場合抵抗損失が生じるためである。
【0012】
伝導性ペーストのスクリーン印刷、インクジェット印刷、及びシード層への電解めっきを含む様々な方法を用いて金属パターンを形成することができる。1つの一般的に用いられている方法は、ガラスフリットを含有する銀ペーストをスクリーン印刷し、次いで、約800℃で焼成する方法であって、反射防止コーティングが存在する場合は焼成中に前記ペーストによって溶け落ちる。この方法は、合理的に優れた電気接点を有する伝導性パターンを提供するが、前記伝導性パターン上に更に金属を沈着させることによって伝導性、密着性、及び性能を更に高めることができる。
【0013】
前側に伝導性パターンを形成するために用いられる別の方法では、反射防止コーティングに形成された線及び母線のパターン上に可溶性金属イオン溶液から金属を析出させる。フォトリソグラフィーの後、エッチング、機械的スクライビング、又はレーザーイメージングを行う等の様々な方法を用いてパターンを形成することができる。このような方法は、特許文献1に記載されている。
【0014】
可溶性金属イオン溶液からの金属の析出は、酸化及び還元反応が行われる電気化学的機序によって生じる。溶液から基材に金属を析出させるには、大きく分けて3つの異なる機序が存在する:
(1)ガルバニー析出としても知られる置換析出では、卑金属から貴金属への電子の移動に伴って卑金属基材上に金属が析出して、貴金属の析出及び卑金属基材の溶解が生じる。しかし、この方法は、卑金属基材が完全に被覆された時点で析出が停止するので、析出する厚みに限界があるという点で制限を受ける。また、基材の一部が消費される。
(2)電解めっきでは、外部電流源を用いて酸化及び還元が誘導される。この方法は、厚みの限界なしに迅速に金属を析出させることができる。しかし、基材と電気接続しなければならない。
(3)無電解めっきとしても知られている自己触媒では、溶液中に還元剤が含まれていることによって化学的に金属イオンの還元が生じ、触媒的に活性である表面上でのみ析出が生じる。この方法では、外部電源が必要ない。しかし、実際には、この方法は幾つかの問題点を抱えている。第1に、溶液は本質的に熱力学的に不安定であるのでプロセスを制御することが困難である場合があり、細心の注意を払って系を最適化しない限り、金属の沈殿と共に自発的分解が生じることがある。これが、析出速度を制限して非常に低下させる場合がある。特に、自己触媒銀めっき溶液は、非常に不安定であることが当該技術分野において周知である。
【0015】
これら問題のうちの一部を解決するため、先行技術では、金属析出に影響を及ぼすために、例えば光誘起電圧を用いて光起電デバイスに電解めっきを施す様々な方法が提案されている。
【0016】
その主題を参照することにより全体が本願に援用される特許文献2には、金属イオンを含有する電解質溶液に電池を浸漬し、デバイスのアノード表面で金属のめっきが生じるように太陽電池の表面を光に曝露することによって太陽電池の表面における電気接点にめっきを施す方法について記載されている。デバイスに光が照射されたときにアノードの裏側から銀が溶解しカソードの前側に析出するように、裏側(アノード側)は、厚い銀の犠牲層によって被覆される。シアン化物含有銀めっき溶液が記載されている。シアン化物含有銀電解質は、優れためっきの結果が得られることが周知であるが、安全性及び環境に対する配慮の点でシアン化物の使用は好ましくない。
【0017】
その主題を参照することにより全体が本願に援用される特許文献3には、特許文献2に記載されている方法と同様のめっき方法が記載されている。更に、この特許には、電流が適切に調整されているときには裏側で析出も腐蝕も生じないように、デバイスのカソードの裏側がDC電源の負端子に取り付けられ、正端子は溶液中の銀電極に取り付けられる配置が記載されている。この場合も、シアン化物含有銀めっき溶液が使用されている。この配置を図3に示す。
【0018】
その主題を参照することにより全体が本願に援用される特許文献4には、銅又は銀等の金属の光誘起析出によって、光起電電池上に印刷された前側の金属パターンを強化する方法が記載されている。裏側(アノード側)は、デバイスに光が照射されたときに、前側への析出と同時に裏側から金属が溶解することによって電荷の中立性が維持されるように、印刷された犠牲金属ペーストを含む。
【0019】
その主題を参照することにより全体が本願に援用される特許文献5には、光起電デバイスにおける電気接点にめっきを施す方法であって、銀イオンと、ニトロ含有化合物のうちの少なくとも1つと、界面活性剤と、アミノ化合物と、アミノ酸又はスルホン酸のうちの少なくとも1つとを含む銀めっき溶液にデバイスが浸漬されている間に前記デバイスを光に曝露する方法が記載されている。しかし、光起電デバイスを金属化するためのこの「光誘起めっき方法」は、特許文献2及び3に既に記載されている方法と同じ又は類似の方法であり、同じ問題点を有している。
【0020】
その主題を参照することにより全体が本願に援用される特許文献6には、ヒダントイン又は置換ヒダントインとの錯体の形態である銀と、電解質と、2,2’−ジピリジルとを含む無シアン化物銀電解めっき組成物が記載されている。
【0021】
その主題を参照することにより全体が本願に援用される特許文献7には、ヒダントイン又は置換ヒダントインとの錯体の形態である銀を含有する無シアン化物銀電解めっき浴が記載されている。
【0022】
その主題を参照することにより全体が本願に援用される特許文献8には、スクシンイミド等の有機ジカルボン酸のイミド類と錯体を形成している銀を含有する無シアン化物銀電解めっき溶液が開示されている。
【0023】
その主題を参照することにより全体が本願に援用される特許文献9には、ピロリジン−2,5−ジオン(スクシンイミド)又は3−ピロリン−2,5−ジオン(マレイミド)と錯体を形成している銀を含有する無シアン化物銀電解めっき溶液が記載されている。
【0024】
その主題を参照することにより全体が本願に援用される特許文献10には、銀のカチオン、チオ硫酸塩、及び亜硫酸塩を含む無シアン化物無電解銀めっき溶液が記載されている。この特許は、従来の銀めっき溶液よりも優れためっき速度及び溶液安定性について請求している。
【0025】
無電解銀めっきにも、幾つかの問題点が存在する。例えば、浴が非常に不安定であり分解が速やかに生じるので、沈殿による銀の損失が生じ、浴の寿命を制限してしまうことが周知である。また、めっき速度は、一般的に、好適な安定性に必要な条件下において非常に緩徐である。
【0026】
外部電源がデバイスに電流を提供するという、先行技術に記載の光誘起めっきを含む無電解めっきによってめっき速度を速めることができる。しかし、電気接続の取り付けにおいて、脆弱なシリコン太陽電池が破損してしまう場合があるという点が問題になることがある。
【0027】
したがって、電気接続の取り付けによってシリコン太陽電池が破損することなしに電解めっきによって実現されるより速やかなめっき速度を得ることができ、且つ無電解銀めっきの重大な欠陥を最小化することもできるめっき方法を提供することが望まれている。
【0028】
本発明は、化学還元剤を含む無電解めっき溶液及び方法を用いることによって、これら問題点に対処する。本発明の改良された無電解めっき溶液は、光起電電池に金属でめっきを施すために用いられるとき、光によって活性化される。デバイスとの電気接触は必要としない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】国際公開第2005/083799号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,144,139号明細書(Durkee)
【特許文献3】米国特許第4,251,327号明細書(Grenon)
【特許文献4】米国特許第5,882,435号明細書(Holdermann)
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0035489号明細書(Allardyce)
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0151863号明細書(Morrissey)
【特許文献7】米国特許第5,601,696号明細書(Asakawa)
【特許文献8】米国特許第4,126,524号明細書(Hradil等)
【特許文献9】米国特許第4,246,077号明細書(Hradil等)
【特許文献10】米国特許第5,322,553号明細書(Mandich等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の目的は、化学還元剤を含む自己触媒プロセスによって光起電デバイスにおける金属導体にめっきを施すための方法及び組成物を提供することにある。
【0031】
本発明の別の目的は、光によって活性化される自己触媒プロセスによって光起電デバイスにおける金属導体にめっきを施すための方法及び組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的のために、1つの実施形態では、本発明は、一般的に光起電太陽電池における金属接点にめっきを施すための組成物であって、
a)可溶性銀イオン源と、
b)還元剤と
を含む組成物に関する。
【0033】
別の実施形態では、本発明は、一般的に、光起電太陽電池を金属化して前記光起電太陽電池上に厚い金属の層を析出させる方法であって、前記光起電太陽電池が前側と裏側とを有し、前記前側が金属パターンを有し、
a)i)可溶性銀イオン源、及び
ii)還元剤
を含む無電解めっき組成物と前記光起電太陽電池とを接触させる工程と;次いで
b)光源からの放射エネルギーに前記光起電太陽電池を曝す工程と
を含み、
前記太陽電池の前側及び裏側が逆の極性に帯電し、前記無電解めっき溶液の金属イオンが前記太陽電池の前側の金属パターン上にめっきされて、無電解金属の厚い層が前記金属パターン上に析出する方法に関する。
【0034】
この方法を用いると、任意の金属イオンの水溶液から太陽電池の前側に前記任意の金属を析出させることができるが、但し、前記金属の還元能が水の還元能を上回る場合に限られる。好ましい金属としては、伝導性が高いことから銅及び銀、特に銀が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、シリコン太陽電池の前側及び裏側を示す。
【図2】図2は、シリコン太陽電池の断面図を示す。
【図3】図3は、先行技術の光誘起電解めっき方法の実施形態を示す。
【図4】図4は、本発明に係る光誘起無電解めっき方法の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、一般的に、光によって活性化される自己触媒プロセスによって光起電デバイスにおける金属導体にめっきを施すための方法及び組成物に関する。本発明は、化学還元剤を含むので、金属導体にめっきを施すために電気接触又は犠牲層を用いる必要がなく、光起電の裏側からのアノード腐蝕も実質的になくなる。
【0037】
1つの実施形態では、本発明のめっき組成物は、
a)可溶性銀イオン源と、
b)還元剤と
を含む。
【0038】
本発明の組成物において銀(I)を含有する殆ど全ての化合物を用いることができる。可溶性銀イオン源は、酸化銀、硝酸銀、メタンスルホン酸銀、酢酸銀、硫酸銀、又は任意の他の銀塩であってもよいが、これらは単なる例示であり、本発明を限定するものではない。1つの実施形態では、可溶性銀イオン源は、酢酸銀又はメタンスルホン酸銀が好ましい。好ましい実施形態では、可溶性銀イオン源は、本発明の無電解めっき組成物中に約15グラム/リットル〜約35グラム/リットルの濃度で存在する。
【0039】
少なくとも1つの還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、グルコース、デキストロース、グリオキサール、硝酸により転化された糖、ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アルドン酸、アルドン酸ラクトン、酒石酸塩(「ロッシェル塩」としても知られている)、コバルトイオン、硫化物塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、次亜リン酸塩、ヒドリドホウ酸塩、ジメチルアミン、他のアルキルアミンボラン、ヒドラジンボラン、シアノヒドリドホウ酸塩を挙げることができるが、これらは単なる例示であり、本発明を限定するものではない。当該技術分野において公知である他の還元剤も本発明で使用可能である。1つの実施形態では、還元剤は、ロッシェル塩又はグリオキサール若しくはその塩である。好ましい実施形態では、少なくとも1つの還元剤は、本発明の無電解めっき組成物中に約15グラム/リットル〜約60グラム/リットルの濃度で存在する。
【0040】
任意で錯化剤を添加して、銀カチオン及び存在する可能性のある金属封鎖不純物を可溶化及び安定化させてもよい。公知の銀錯化剤としては、シアン化物、スクシンイミド、置換スクシンイミド、ヒダントイン、置換ヒダントイン、ウラシル、チオ硫酸塩、及びアミン類が挙げられるが、これらは単なる例示であり、本発明を限定するものではない。1つの実施形態では、錯化剤は、ヒダントイン又は置換ヒダントインである。錯化剤が用いられる場合、前記錯化剤は、無電解めっき組成物中に約40グラム/リットル〜約80グラム/リットルの濃度で存在してもよい。
【0041】
最後に、本発明の組成物は、様々な表面活性剤、結晶微細化剤、及び界面活性剤を含んでいてもよい。例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、2,2’−ジピリジル、及びチオ尿素を本発明の組成物に添加してもよいが、これらは単なる例示であり、本発明を限定するものではない。
【0042】
溶液のpHは、好適なpH調整剤を用いて約7.5〜約9.5に調整することが好ましい。単なる例示であり、本発明を限定するものではないが、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを用いて溶液のpHを調整してもよい。
【0043】
図4に示す通り、本発明は、一般的に、光起電太陽電池を金属化して前記光起電太陽電池上に金属の層を析出させる方法であって、前記光起電太陽電池が前側と裏側とを有し、前記前側が金属パターンを有し、
a)i)可溶性銀イオン源、及び
ii)還元剤
を含む無電解めっき組成物と前記光起電太陽電池とを接触させる工程と;次いで
b)光源からの放射エネルギーに前記光起電太陽電池を曝す工程と
を含み、
前記太陽電池の前側及び裏側が逆の極性に帯電し、前記無電解めっき溶液の金属イオンが前記太陽電池の前側の金属パターン上にめっきされて、無電解金属の層が前記金属パターン上に析出する方法に関する。
【0044】
上述の通り、太陽電池の前側における金属パターンは、一般的に、複数の電流収集線及び母線を含む。
【0045】
本発明の光源は、光起電太陽電池を放射エネルギーに曝すために配置される。例えば、クオーツハロゲンランプ、白熱ランプ、及び水銀ランプを含む様々な光源を本発明の実施において用いることができる。
【0046】
光起電電池と無電解めっき組成物とを接触させる工程は、典型的に、前記光起電電池を前記無電解めっき組成物中に浸漬することを含む。本発明の実施では、外部電源との電気接触を必要としない。更に、デバイスからの金属の犠牲溶解も必要としない。
【0047】
理論に縛られるものではないが、本発明者らは、カソードにおける金属イオンの光活性化還元機序について2つの可能性があると考えている。第1に、直接カソードから金属カチオンに電子が供与されることによって、カソード上に金属原子が析出している可能性がある。残りの正電荷は、電池の裏側であるアノードに留まり、そこで還元剤と反応することができる。或いは、カソードが化学還元剤から金属への電子の供与を触媒して、カソードにおいて金属イオンを析出させている可能性もある。これら2つの機序の組み合わせが生じている可能性もある。いずれの機序であっても結果は同じである。即ち、外部電気接触の取り付け及び裏側におけるアノード腐蝕なしに、金属カソード上で選択的に金属の光誘起析出が生じる。
【実施例】
【0048】
実施例1:
以下の通り溶液を作製した:
72.6グラム/リットル 5,5−ジメチルヒダントイン
20.2グラム/リットル 酢酸銀
14.0グラム/リットル メタンスルホン酸カリウム
30.0グラム/リットル 酒石酸ナトリウムカリウム(「ロッシェル塩」)
KOHを添加してpH=9.1にした。
【0049】
実施例2:
以下の通り溶液を作製した:
72.6グラム/リットル 5,5−ジメチルヒダントイン
20.2グラム/リットル 酢酸銀
18.2グラム/リットル グリオキシル酸水和物
72.7グラム/リットル メタンスルホン酸カリウム
NaOHを添加してpH=9.2にした。
【0050】
実施例3:
以下の通り溶液を作製した:
48.0グラム/リットル ヒダントイン
10.3グラム/リットル メタンスルホン酸
32.0グラム/リットル ホウ酸
28.7グラム/リットル メタンスルホン酸銀
54.0グラム/リットル グリオキシル酸水和物
KOHを添加してpH=8.8にした。
【0051】
比較例1:
比較のために、還元剤を含まない溶液を以下の通り作製した:
72.6グラム/リットル 5,5’−ジメチルヒダントイン
20.2グラム/リットル 酢酸銀
NaOHを添加してpH=9.1にした。
【0052】
図1及び2に示される太陽電池をこれら溶液でめっきした。前側の線は、印刷された銀ペーストからなっており、トップ−ダウン型光学顕微鏡によって測定したところ、平均幅は約82ミクロンであった。裏側の母線は、印刷された銀ペーストからなっており、蛍光X線分析(XRF)によって測定したところ、厚みは約4.5ミクロンであった。
【0053】
透明なガラス製ビーカー内で溶液を45℃に加熱した。約5インチの距離から250Wのランプを用いて前側に光を照射しながら、太陽電池片を8分間浸漬した。次いで、前記電池を脱イオン水ですすぎ、乾燥させた。処理後の線の幅をトップ−ダウン型光学顕微鏡によって測定し、裏側の母線の厚みをXRFによって測定した。
【0054】
実施例1及び2では、線の幅が大きく増加したが、比較例1では線の幅は増加しなかったことが分かる。
【0055】
表1は、それぞれ光学顕微鏡及びXRFを用いて前側の線の幅及び裏側の母線の厚みを測定した結果を示す。
【表1】

【0056】
実施例1〜3では前側の線の幅が大きく増加したが、比較例1では増加しなかったことが分かる。更に、実施例1〜3では裏側の銀母線が純増したが、比較例1では純減した。これは、溶液中に還元剤が存在しない場合、母線のアノード腐蝕が生じることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電太陽電池を金属化して前記光起電太陽電池上に金属の層を析出させる方法であって、前記光起電太陽電池が前側と裏側とを有し、前記前側が金属を含むパターンを有し、
a)i)可溶性銀イオン源、及び
ii)還元剤
を含む無電解めっき組成物と前記光起電太陽電池とを接触させる工程と;次いで
b)光源からの放射エネルギーに前記光起電太陽電池を曝す工程と
を含み、
前記太陽電池の前側及び裏側が逆の極性に帯電し、前記無電解めっき溶液の金属イオンが前記太陽電池の前側の金属パターン上にめっきされ、前記太陽電池が、めっき中、外部電源に電気的に接続されないことを特徴とする方法。
【請求項2】
無電解めっき組成物が、銀イオンの錯化剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
可溶性銀イオン源が、酸化銀、硝酸銀、メタンスルホン酸銀、酢酸銀、硫酸銀、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
可溶性銀イオン源が、酢酸銀である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
可溶性銀イオン源が、メタンスルホン酸銀である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
可溶性銀イオン源の濃度が、約15グラム/リットル〜約35グラム/リットルである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
還元剤が、ホルムアルデヒド、グルコース、デキストロース、グリオキサール、硝酸により転化された糖、ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アルドン酸、アルドン酸ラクトン、ロッシェル塩、コバルトイオン、硫化物塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、次亜リン酸塩、ヒドリドホウ酸塩、アルキルアミンボラン、ヒドラジンボラン、シアノヒドリドホウ酸塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
還元剤が、ロッシェル塩である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
還元剤が、グリオキサール又はその塩である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
還元剤の濃度が、約15グラム/リットル〜約60グラム/リットルである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
錯化剤が、シアン化物、スクシンイミド、置換スクシンイミド、ヒダントイン、置換ヒダントイン、ウラシル、チオ硫酸塩、アミン類、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項2に記載の方法。
【請求項12】
錯化剤が、ヒダントイン又は置換ヒダントインである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
錯化剤の濃度が、約40グラム/リットル〜約80グラム/リットルである請求項2に記載の方法。
【請求項14】
太陽電池の前側における金属を含むパターンが、前記パターン上に印刷された電流収集線及び母線を含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
金属を含むパターンが、印刷された銀ペーストを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
光源が、クオーツハロゲンランプ、白熱ランプ、及び水銀ランプからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
光起電電池を無電解めっき組成物と接触させる工程が、前記光起電電池を前記無電解めっき組成物に浸漬することを含む請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−503258(P2013−503258A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526746(P2012−526746)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/037456
【国際公開番号】WO2011/025568
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(502304286)マクダーミッド アキューメン インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】