説明

光走査装置の製造方法及び光走査装置

【課題】光走査装置を構成する構造体を台座に溶接固定するときに、ミラー部の鏡面に汚れが付着して光走査装置の機能が低下するのを防止することができる光走査装置の製造方法及び光走査装置を提供する。
【解決手段】光を反射する鏡面を備えたミラー部と前記ミラー部を揺動させる駆動部とを備える構造体と、前記構造体を固定する台座とを有する光走査装置の製造方法であって、金属製の板材から平板状の前記構造体を形成する構造体形成工程と、前記構造体形成工程で形成された前記構造体に前記駆動部を形成する駆動部形成工程と、前記鏡面とは反対側の面側から、前記駆動部形成工程により前記駆動部が形成された前記構造体を前記台座に溶接する溶接工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置の製造方法及び光走査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光等の光ビームを走査する光走査装置は、バーコードリーダ、レーザープリンタ、ヘッドマウントディスプレイ等の光学機器、あるいは赤外線カメラ等入力デバイスの光取り入れ装置として用いられている。このような光走査装置として、例えば、ミラー部を支持する捩れ梁部を有する基板に圧電体を配置して、ミラー部に捩れ振動を発生する光走査装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−293116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような光走査装置を構成する基板は、台座に固定されて使用される。基板が金属製の板材から形成される場合、基板を溶接により台座に固定するが、溶接のときに発生する金属粉等などの飛散物によりミラー部の鏡面に汚れが付着すると、光走査装置の機能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、光走査装置を構成する構造体を台座に溶接固定するときに、ミラー部の鏡面に溶接により発生する金属粉等の汚れが付着して、光走査装置の機能が低下するのを防止することができる光走査装置の製造方法及び光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1発明の光走査装置の製造方法は、光を反射する鏡面を備えたミラー部と前記ミラー部を揺動させる駆動部とを備える構造体と、前記構造体を固定する台座とを有する光走査装置の製造方法であって、金属製の板材から平板状の前記構造体を形成する構造体形成工程と、前記構造体形成工程で形成された前記構造体に前記駆動部を形成する駆動部形成工程と、前記鏡面とは反対側の面側から、前記駆動部形成工程により前記駆動部が形成された前記構造体を前記台座に溶接する溶接工程とを有することを特徴とする。
【0007】
第2発明の光走査装置の製造方法は、上記第1発明の構成に加えて、前記金属製の板材の表面を研磨することにより前記鏡面を形成する鏡面形成工程を備え、前記構造体形成工程は、前記鏡面形成工程により前記鏡面が形成された前記板材から前記構造体を形成することを特徴とする。
【0008】
第3発明の光走査装置の製造方法は、上記第1発明の構成に加えて、前記駆動部形成工程により前記駆動部が形成された前記構造体において、前記ミラー部の表面に、鏡面を有する薄片部材を貼り付けることにより前記鏡面を形成する鏡面貼付工程を備え、前記溶接工程は、前記鏡面貼付工程により貼り付けられた前記鏡面とは反対側の面側から、前記構造体を前記台座に溶接することを特徴とする。
【0009】
第4発明の光走査装置の製造方法は、上記第1発明ないし第3発明のいずれかの構成に加えて、前記ミラー部は前記駆動部に対して前記構造体の一側に設けられ、前記固定部は前記駆動部に対して前記構造体の他側に設けられることを特徴とする。
【0010】
第5発明の光走査装置は、光を反射する鏡面を備えたミラー部と前記ミラー部を揺動させる駆動部とを備える構造体と、前記構造体を固定する台座とを有する光走査装置であって、前記構造体は金属製の平板状の板材であって、前記鏡面が形成された面と反対の面側から前記構造体を前記台座に溶接して固定する固定部を有することを特徴とする。
【0011】
第6発明の光走査装置は、上記第5発明に加えて、前記ミラー部は前記駆動部に対して前記構造体の一側に設けられ、前記固定部は前記駆動部に対して前記構造体の他側に設けられることを特徴とする。
【0012】
第7発明の光走査装置は、光を反射する鏡面を備えたミラー部と前記ミラー部を揺動させる駆動部とを備えると共に金属製の平板状の板材からなる構造体と、前記構造体を溶接により固定する台座とを有する光走査装置であって、前記構造体が前記台座に固定された場合に、前記鏡面と前記台座が前記構造体に対して同じ面側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明の光走査装置の製造方法によれば、ミラー部の鏡面とは反対側の面側から、駆動部形成工程により駆動部が形成された構造体を台座に溶接する溶接工程を有するため、溶接により発生する金属粉などの飛散物がミラー部の鏡面に付着して光走査装置の機能が低下するのを防止することができる。
【0014】
第2発明の光走査装置の製造方法によれば、第1発明の効果に加え、ミラー部の鏡面が研磨により形成される鏡面形成工程を有する場合に、ミラー部の鏡面に溶接により発生する金属粉などの飛散物が付着して光走査装置の機能が低下するのを確実に防止することができる。
【0015】
第3発明の光走査装置の製造方法によれば、第1発明に加え、鏡面を有する薄片部材をミラー部に貼り付ける鏡面貼付工程を有する場合に、ミラー部の鏡面に溶接により発生する飛散物が付着して光走査装置の機能が低下するのを確実に防止することができる。また、駆動部形成工程の後に薄片部材が貼り付けられるので、駆動部を形成する際の影響により、ミラー部に貼り付けた薄片部材が剥がれたりすることを防止できる。
【0016】
第4発明の光走査装置の製造方法によれば、第1発明ないし第3発明のいずれかに加え、ミラー部は駆動部に対して構造体の一側に設けられ、固定部は駆動部に対して構造体の他側に設けられるため、ミラー部と固定部が離間される。そのため、溶接により発生する飛散物が、ミラー部の鏡面に付着して光走査装置の機能が低下するのをより確実に防止することができる。
【0017】
第5発明の光走査装置によれば、ミラー部の鏡面が形成された面と反対の面側から構造体を台座に溶接して固定する固定部を有するため、ミラー部の鏡面に溶接により発生する汚れが付着して光走査装置の機能が低下するのを防止することができる。
【0018】
第6発明の光走査装置によれば、第5発明に加え、ミラー部は駆動部に対して構造体の一側に設けられ、固定部は駆動部に対して構造体の他側に設けられるため、ミラー部と固定部が離間される。これにより、ミラー部の鏡面に溶接により発生する汚れが付着して光走査装置の機能が低下するのをより確実に防止することができる。
【0019】
第7発明の光走査装置によれば、構造体が台座に固定された場合に、鏡面と台座が構造体に対して同じ面側に配置されるため、ミラー部の鏡面に溶接により発生する汚れが付着して光走査装置の機能が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態の光走査装置の一面側平面図である。
【図2】実施形態の光走査装置の他面側平面図である。
【図3】図2の光走査装置を3−3線で切断した断面図である。
【図4】実施形態の光走査装置の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】変形例の光走査装置の一面側平面図である。
【図6】変形例の光走査装置の他面側平面図である。
【図7】図6の光走査装置を7−7線で切断した断面図である。
【図8】変形例の光走査装置の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(光走査装置について)
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい光走査装置の実施形態について図1ないし図3を用いて説明する。図1及び図2に示すように、本発明の光走査装置10は略長方形形状である構造体11と台座30とを有する。構造体11は、固定部15にレーザー溶接を行って台座30に固定される。以下、光走査装置10を構成する各構成部材について説明する。
【0022】
構造体11は、ステンレスやチタンなどの金属製の板材から形成される。構造体11は、図1のX軸方向に長い略長方形の平板状である。構造体11の厚さは約30〜500μmである。構造体11には、金属製の板材をエッチング加工やプレス加工等の除去加工することにより、板部19、ミラー部12、梁部13、開口部16,16が形成される。なお、構造体11の中央部には長方形状の開口部16,16が梁部13に対して対称に2箇所形成される。
【0023】
ミラー部12は、レーザー光等の光を反射する後述の鏡面121を有している(図2、3参照)。また、ミラー部12は図1及び図2のY軸方向に形成された梁部13に支持されて、開口部16,16の中央に配置される。ミラー部12は揺動される際の中心軸である揺動軸L1に対して、線対称になるように設けられる。ミラー部12は本実施形態では長方形状に形成されているが、形状は特に限定されず、円形、楕円形、菱形、多角形等であってもよい。
【0024】
また、ミラー部12は、図3において、後述の第一駆動部20A、第2駆動部20Bを挟んで、固定部15とは反対側に配置されている。具体的には、ミラー部12は第一駆動部20Aに対して、X軸正側(図3の右側)に配置され、固定部15は第一駆動部20Aに対して、X軸負側(図3の左側)に配置される。また、ミラー部12は第2駆動部20Bに対して、X軸負側(図3の左側)に配置され、固定部15は第二駆動部20Bに対して、X軸正側(図3の右側)に配置される。
【0025】
このように、ミラー部12と固定部15が第一駆動部20A及び第2駆動部20Bのそれぞれに対して、反対側に配置されて離間されることで、溶接により固定部15を形成するときに発生する金属製の飛散物等の汚れが鏡面121に付着しにくくなる。そのため、光走査装置10の機能低下を防止することができる。
【0026】
鏡面121は、図3に示すように、固定部15が形成された構造体11の一面側17(Z軸正側)とは反対の他面側18(Z軸負側)に形成される。鏡面121は、表面に鏡面を有するアルミニウムや銀などの金属薄膜が設けられた透明誘電体125が、ミラー部12のZ方向負側の表面に熱硬化などにより接着されて形成されてもよい。透明誘電体125としては、ダイヤモンドやサファイヤなどがあげられる。なお、表面に鏡面を有する透明誘電体125が本発明の薄片部材である。
【0027】
加えて、鏡面121は後述の変形例のように、金属製の板材の表面を研磨した後、板材を加工して構造体11を形成することにより、構造体11の他面側18に鏡面121が形成されてもよい。その他に、アルミや銀などの金属薄膜が、スパッタリングや蒸着などによって、ミラー部12の表面にコーティングされてもよい。
【0028】
梁部13は、図1及び図2に示すように、ミラー部12のY軸方向の両端側部から延出して形成され、ミラー部12の揺動軸L1を含むように形成される。
【0029】
第一駆動部20A及び第二駆動部20Bは、図2及び図3のように、構造体11の板部19の他面側18にミラー部12に対して対称的に1つずつ設けられる。本実施形態では構造体11に第一駆動部20A及び第2駆動部20Bが設けられているが、後述の変形例のように、駆動部は1つだけ形成されてもよい。なお、第一駆動部20A及び第二駆動部20Bは、説明のために区別しているが、構成としては同じ構成であるため、以下第一駆動部20Aについて説明する。
【0030】
第一駆動部20Aは、圧電素子により構成され、例えば熱硬化性のエポキシ系、アクリル系、シリコン系等の合成樹脂材料で形成された導電性を有する導電性接着剤によって構造体11に接着される。
【0031】
第一駆動部20Aの上下面は、それぞれ全面に渡って金や白金等が積層されて、図示しない上部電極と下部電極が形成されている。第一駆動部20Aの上部電極と下部電極との間に交番電圧を印加することによって、構造体11に揺動軸L1を軸とする定在的な波を発生させ、ミラー部12を揺動軸L1回りに揺動させることができる。
【0032】
固定部15は、図1のように、構造体11を台座30に固定するために、構造体11の一面側17の4隅に形成される。本実施形態では後述のように、固定部15はレーザー溶接により形成され、固定部15により構造体11が台座30に固定される。構造体11は台座30に固定されると、図3に示されるように、鏡面121と台座30が構造体11に対してZ軸負側の同じ面側(他面側18)に配置され、鏡面121の反対側(一面側17)からレーザー溶接される。このように配置されることで、固定部15を形成するときにレーザー溶接により発生する金属製の飛散物等の汚れが、鏡面121に付着しにくくなり光走査装置の機能低下を防止することができる。
【0033】
(光走査装置の製造方法)
次に、図4を用いて本実施形態の光走査装置の製造方法について説明する。
【0034】
ステップS101において、構造体11が形成される。具体的には、まず、金属製の板材が構造体10の外形と等しい大きさに分割される。そして、ミラー部12、梁部13、板部19に対応する位置に、マスキングのためのレジスト膜が形成される。ウェットエッチングによって構造体11が形成された後に、レジスト膜が除去される。なお、構造体11の外形に比して十分大きな板材に複数の構造体11の外形が形成された後に、個々の複数の構造体11に分割されてもよい。
【0035】
ステップS102は、第一駆動部20Aと第二駆動部20Bを構造体11に接着するための接着剤が、構造体11に塗布される。具体的には、水平に置かれた構造体11の図2の他面側18表面に、第一駆動部20Aと第二駆動部20Bに対応する位置の2箇所に、ディスペンサなどによって接着剤が塗布される。接着剤としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、シリコン系等の合成樹脂材料に銀フィラーなどの導電材を含有する導電性接着剤が用いられる。導電性接着剤の塗布後、ステップS103が実行される。
【0036】
次に、ステップS103は、第一駆動部20Aと第二駆動部20Bが、ステップS102にて塗布された導電性接着剤の上に設置される。第一駆動部20Aと第二駆動部20Bとして、あらかじめ圧電素子の両面に電極層を備えたバルクの圧電材料が用いられる。先ず、平面状のプレートに複数のエア吸引用の孔を有する吸着ヘッドによって、第一駆動部20Aが吸着される。そして、吸着された第一駆動部20Aが、図2の直線L2上に圧電材料の中心位置21が位置するようにして、導電性接着剤の上に設置される。他方の第二駆動部20Bも同様に、構造体11に接着される。
【0037】
そして、ステップS104は、第一駆動部20Aと第二駆動部20Bそれぞれと構造体11とを接着する導電性接着剤が硬化される。具体的には、第一駆動部20Aと第二駆動部20Bが設置された構造体11が、100〜200℃の雰囲気に保たれた加熱炉内に30〜60分間装入される。これにより、導電性接着剤は熱硬化される。導電性接着剤の硬化後、ステップS105が実行される。
【0038】
ステップS105は、ステップS101で形成したミラー部12の表面であって、構造体11の他面側18に、鏡面が形成された透明誘電体125が貼り付けられる。なお、透明誘電体125にはあらかじめアルミや銀などの金属薄膜が接着剤により貼り付けて鏡面が形成されている。
【0039】
ステップS106は、第一駆動部20Aと第二駆動部20Bと構造体11とに対して、ワイヤボンディングによって信号線が接続される。この信号線は、非図示の交流電源に接続される。構造体11と第一駆動部20A、第二駆動部20Bとは導電性接着剤によって接着されているので、この信号線を介して第一駆動部20A、第二駆動部20Bと構造体11との間に電圧が印加されることによって、第一駆動部20A、第二駆動部20BのZ方向に電位差が生じる。
【0040】
ステップS107は、構造体11の両端側を台座30上に載置して、図1の一面側17からレーザー溶接により固定する。即ち、図3の矢印A方向であって、ミラー部12に鏡面121が貼り付けられた側(他面側18)とは反対側(一面側17)から、台座30に対して構造体11の4隅にレーザー溶接を行う。本実施形態では、構造体11の4隅に固定部15が形成されて、台座30に固定されている(図1、3参照)。なお、スポット溶接などにより、構造体11が台座30に固定されてもよい。以上で、光走査装置10の製造工程が終了する。
【0041】
以上説明した本実施形態の光走査装置の製造方法によれば、ステップS107の溶接固定工程でミラー部12に鏡面121が貼り付けられた側(他面側18)とは反対側からレーザー溶接を行う。そのため、溶接による金属製の飛散物が空気中へ分散しても、溶接を行う側(一面側17)とは反対側(他面側18)に鏡面121が備えられているので、鏡面121に飛散物が付着することを防止することができる。即ち、レーザー溶接により生じる金属製の飛散物等の汚れが鏡面121に付着することにより、光走査装置10の機能が低下することを防止することができる。
【0042】
また、本実施形態では、ステップS105の鏡面貼り付け工程をステップS104の駆動部20を熱硬化する工程の後に行う。仮に、熱硬化の前に鏡面121をミラー部12に貼り付けると、ステップS104で熱を加えることによって構造体11に歪が生じるおそれがあり、この影響でミラー部12に貼り付けた鏡面121が剥がれたりするのを防ぐことができる。
【0043】
上述した光走査装置10の製造方法において、ステップS101の金属製の板材にエッチング加工を行う工程が本発明の構造体形成工程に該当し、ステップS102の接着剤を構造体11に塗布する工程と、ステップS103の構造体11に圧電素子を設置する工程と、その後にステップS104で接着剤を熱硬化させる工程が本発明の駆動部形成工程に該当し、ステップS105で鏡面を有する透明誘電体をミラー部12に貼り付ける工程が本発明の鏡面貼付工程に該当し、ステップS107で構造体11を台座30にレーザー溶接で固定する工程が本発明の溶接工程に該当する。
【0044】
(光走査装置の変形例)
次に、図5ないし図7を用いて、本発明における変形例の光走査装置10Aを説明する。なお、図1ないし図3と同じ符号の構成は同様の構成を示すものとしてその説明を省略する。
【0045】
構造体11Aは、上述の構造体11と同様に、金属製の板材をエッチング加工やプレス加工等の除去加工することにより、板部19、ミラー部12A、梁部13、開口部16,16が形成される。構造体11Aでは、図5のX軸方向の負側に、開口部16,16、ミラー部12A、梁部13が形成されている。板部19は構造体11Aにおいて、図5のX軸正側にのみ設けられており、上述の構造体11よりも構造体11AのX軸方向の長さが短く形成されている。
【0046】
ミラー部12Aは、図7において、第一駆動部20Aに対して、固定部15とはX軸方向の反対側に配置され、上述した実施形態同様にミラー部12Aと固定部15が離間して配置される。具体的には、ミラー部12Aは第一駆動部20Aに対して、X軸負側(図7の左側)に配置され、固定部15は、第一駆動部20Aに対して、X軸正側(図7の右側)に配置される。
【0047】
また、ミラー部12Aは、鏡面121にかえて、図6の鏡面121Aを有している点が上述のミラー部12と異なる。金属製の板材の表面を研磨して鏡面を形成した後、板材を加工して構造体11Aを作製することにより、構造体11Aの他面側18に鏡面が形成される。すなわち、鏡面121Aは、図6のY軸方向に形成された梁部13に支持されたミラー部12Aの他面側18に形成される。
【0048】
第一駆動部20Aは、図6のように、構造体11Aの板部19の他面側18にミラー部12Aに対してX軸方向正側(図6の右側)に設けられる。上述の実施形態とは異なり、構造体11Aに第一駆動部20Aが1つ備えられる。
【0049】
固定部15は、図5及び図7のように、構造体11Aを台座30に固定するために、構造体11Aの一面側17のX軸正側の端部に4個所、図7の矢印A方向からレーザー溶接を行って形成される。図5では固定部15は構造体11AのX軸正側端部に4箇所形成されているが、固定部15の数や位置は特に限定されず、構造体11Aをレーザー溶接で台座30に固定できればよい。すなわち、上述の実施形態では、構造体11Aは固定部15により台座30に両持ち支持されていたが、本変形例では、構造体11Aは固定部15により台座30に片持ち支持される。
【0050】
(変形例の光走査装置の製造方法)
次に、変形例の光走査装置10Aの製造方法について図8を用いて説明する。なお、図4と同じ符号の工程は、同様の工程内容であるのでその説明を省略する。図8では、図4と異なり、ステップS100の表面研磨工程が追加され、ステップS105の鏡面貼り付け工程が省略される点が異なる。
【0051】
ステップS100において、金属製の板材の片面側の表面を研磨して鏡面が形成される。また、鍍金加工等により鏡面が形成される。
【0052】
ステップS101では、上述のように金属製の板材にエッチング加工を行って構造体11Aが形成される。このとき、ミラー部12Aを含めた構造体11Aの片側表面である他面側18に鏡面が形成されている。
【0053】
ステップS102は、第一駆動部20Aを構造体11Aに接着するための接着剤が、構造体11Aに塗布される。このとき、構造体11Aの鏡面が形成された表面側に接着剤が塗布される。ここで、接着剤が塗布される表面側が図6の他面側18である。構造体11Aの他面側18の板部19表面に接着剤が塗布された後、ステップS103以降の処理が実行される。
【0054】
ステップS107は、図5の構造体11AのX軸正側端部を台座30上に載置して、図5の一面側17からレーザー溶接により固定する。即ち、ミラー部12Aの鏡面121Aが形成された側である他面側18とは反対側であって、図7の矢印A方向の一面側17からレーザー溶接を行う。以上で、本変形例の光走査装置10Aの製造工程が終了する。
【0055】
以上説明した変形例の光走査装置10Aの製造方法によれば、ステップS107の溶接固定工程でミラー部12Aの鏡面121Aが形成された側である他面側18とは反対側の一面側17からレーザー溶接を行う。そのため、溶接により発生した金属製の飛散物等の汚れが空気中へ飛散しても、鏡面121Aにその汚れが付着することを防止することができる。即ち、レーザー溶接により生じる汚れが鏡面121Aに付着することにより、光走査装置10Aの機能が低下することを防止することができる。
【0056】
上述した光走査装置10Aの製造方法において、ステップS100の金属製の板材の表面を研磨する工程が本発明の鏡面形成工程に該当する。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10,10A 光走査装置
11,11A 構造体
12,12A ミラー部
15 固定部
17 一面側
18 他面側
20A,20B 第一駆動部、第二駆動部
30 台座
121,121A 鏡面
125 薄片部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射する鏡面を備えたミラー部と前記ミラー部を揺動させる駆動部とを備える構造体と、前記構造体を固定する台座とを有する光走査装置の製造方法であって、
金属製の板材から平板状の前記構造体を形成する構造体形成工程と、
前記構造体形成工程で形成された前記構造体に前記駆動部を形成する駆動部形成工程と、
前記鏡面とは反対側の面側から、前記駆動部形成工程により前記駆動部が形成された前記構造体を前記台座に溶接する溶接工程とを有することを特徴とする光走査装置の製造方法。
【請求項2】
前記金属製の板材の表面を研磨することにより前記鏡面を形成する鏡面形成工程を備え、
前記構造体形成工程は、前記鏡面形成工程により前記鏡面が形成された前記板材から前記構造体を形成することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置の製造方法。
【請求項3】
前記駆動部形成工程により前記駆動部が形成された前記構造体において、前記ミラー部の表面に、鏡面を有する薄片部材を貼り付けることにより前記鏡面を形成する鏡面貼付工程を備え、
前記溶接工程は、前記鏡面貼付工程により貼り付けられた前記鏡面とは反対側の面側から、前記構造体を前記台座に溶接することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置の製造方法。
【請求項4】
前記ミラー部は前記駆動部に対して前記構造体の一側に設けられ、前記固定部は前記駆動部に対して前記構造体の他側に設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光走査装置の製造方法。
【請求項5】
光を反射する鏡面を備えたミラー部と前記ミラー部を揺動させる駆動部とを備える構造体と、前記構造体を固定する台座とを有する光走査装置であって、
前記構造体は金属製の平板状の板材であって、前記鏡面が形成された面と反対の面側から前記構造体を前記台座に溶接して固定する固定部を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
前記ミラー部は前記駆動部に対して前記構造体の一側に設けられ、前記固定部は前記駆動部に対して前記構造体の他側に設けられることを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
光を反射する鏡面を備えたミラー部と前記ミラー部を揺動させる駆動部とを備えると共に金属製の平板状の板材からなる構造体と、
前記構造体を溶接により固定する台座とを有する光走査装置であって、
前記構造体が前記台座に固定された場合に、前記鏡面と前記台座が前記構造体に対して同じ面側に配置されることを特徴とする光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−123087(P2012−123087A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272364(P2010−272364)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】