説明

光起電力応用のための高性能バックシート及びその製造方法

【解決手段】
本発明は、光起電力応用のための高性能なバックシート(裏打ちシートとも称される)及びそれを製造するための方法を提供する。高性能バックシートは、配合された熱可塑性ポリオレフィン又は配合されたエチレン酢酸ビニル(EVA)を含む。配合された熱可塑性ポリオレフィン又はEVAは、1層として単独で用いられてよく、あるいは層内に組み込まれてよく、あるいは多重層積層体内の層として用いられてよい。配合された熱可塑性ポリオレフィン又はEVAは、裏打ちシート内でのポリエステルの使用の必要性を排除することにおいて有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光起電力モジュールに関する。さらに具体的には、本発明は光起電力モジュールの保護用裏打ちシート及び封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力モジュール(photovoltaic modules)によって利用される太陽エネルギは、今世紀にも使い尽くされようとしている化石燃料の最も有望な代替案の1つである。しかし、光起電力モジュールの製造及び設置は、依然として高価なプロセスのままである。典型的な光起電力モジュールは、ガラス製の又は柔軟で透明な前面シート(front sheet)、複数のソーラセル(solar cells)、封止材(encapsulant)、保護用裏打ちシート(protective backing sheet)、モジュールの縁を覆う保護用シール(protective seal)、及びシールを覆うアルミニウム製の周囲フレーム(perimeter frame)からなる。図1に示されるように、前面シート10、裏打ちシート20並びに封止材30及び30’は、天候因子、湿度、機械的な負荷及び衝撃からセルのアレイ40を保護するように設計される。それらはまた、人々の安全及び電流損失のための電気的な隔離を提供する。保護用裏打ちシート20は、光起電力モジュールの寿命及び効率を改善することを目的としており、その結果、光起電性電気のワット毎コストを低減する。前面シート10並びに封止材30及び30’は高い光透過率のために透明である必要がある一方で、裏打ちシートは典型的には、審美的な目的で高い不透明性を、また機能的な目的で高い反射率を有している。特に建築上の(建物一体型PV)及び宇宙への応用の他、軍事的な応用(兵士装備に組み込まれる、等)のための重量減少を含む多くの理由から、軽量で且つ薄いソーラセルモジュールが望まれている。加えて、軽量で且つ薄いモジュールはコスト低減に寄与する。また、消費される材料の量の削減は、この技術を「よりグリーン(greener)」にし、こうしてより多くの天然資源を節約する。
【0003】
軽量で且つ軽いソーラセルを製造するための1つの手段は、軽量で且つ軽い裏打ちシートを組み込むことである。しかし、背面を覆う材料はまた、水蒸気及び水の浸透を防ぐために高い耐湿性を有している必要がある。水蒸気及び水の浸透は、光起電力素子、ワイヤ、及び電極のような内部部品の腐食を生じさせる可能性があり、ソーラセルを損傷させる可能性がある。加えて、裏打ちシートは、電気的な隔離、機械的な保護、UV保護、封止材への接着性及び出力リードを取り付ける機能を提供するべきである。
【0004】
PV(光起電力)モジュールは、しばしばアンモニア生成生体排泄物に富む農業環境を含む「厳しい(hostile)」化学的環境において使用される。多くの商業的なPVモジュールは、湿気進入、UV劣化、及び物理的損傷からの環境的保護のため、そして電気絶縁性を提供するために、ポリマー製バックシートを利用する。今日市場に出回っている実際上全てのポリマー製バックシートは、その優れた誘電特性及び機械強度により、その主要な構成要素としてポリエステル(より具体的にはポリエチレンテレフタレート)を利用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ポリエステルフィルム、特に従来のポリエチレンテレフタレートフィルムは、加水分解(及び他の環境的劣化メカニズム)の影響を受け易い。そのような加水分解は、高pH(塩基性)及び低pH(酸性)の条件下で加速される。高pH暴露条件は、例えば農業環境における使用によって生じ得る。低pH暴露条件は、例えば「酸性雨」への暴露によって生じ得るし、あるいは、極端な環境条件がないとしても、PVモジュールの内部要素(例えばEVA封止材)が徐々に劣化することによっても生じ得る。
【0006】
ポリエステルフィルム要素が化学的に劣化するのに従って、その誘電性及び機械的性質の両方が劣化し、それにより多機能のバックシートの有効性が低減すると共にPVモジュール故障の危険性が増大する。ポリエステルフィルム供給業者等は、基本ポリマー(例えばPEN、PBT)、重合プロセス、若しくはそれに続くオリゴマーレベルを最小化するための精製プロセスの改良によって、又は適切な添加剤を配合することによって、加水分解安定性や他の潜在的な劣化メカニズムを改良する能力を実証してきた。そのような改良は、効果的ではあることが判明しているものの、かなり高価であることも判っている。
【0007】
ソーラセル裏打ちシートの加水分解安定性や他の潜在的な劣化メカニズムを、現在利用可能なものよりも低コストで改良する、よりコスト効率の高い手段を見出すことが望ましいであろう。また、ポリエステルの欠点となる特性を最小化しつつポリエステルの機能を果たす、よりコスト効率の高い材料を見出すことが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光起電力応用のための高性能なバックシート(「裏打ちシート」とも称される)及びそれを製造するための方法を提供する。高性能バックシートは、配合された熱可塑性ポリオレフィン又は配合されたエチレン酢酸ビニル(EVA)を含む。この配合された熱可塑性ポリオレフィン又はEVAは、それ自体で1つの層として用いられてよく、あるいはある層内に組み込まれてよく、あるいは多重層積層体内のある層として用いられてよい。この配合された熱可塑性ポリオレフィン又はEVAは、裏打ちシート内でのポリエステルの使用の必要性を排除することにおいて有用である。
【0009】
配合(compounding)とは、基本ポリマー系への添加物の組み込み(incorporation)のことである。これらの添加物は、単独で又は他の添加物と組み合わせられて種々の機能を果たすことができる。例えば酸化防止剤サイアノックス(Cyanox)2777(サイテック(Cytec))は、フィルム押し出しプロセスのために用いられる昇温された温度でのポリマー鎖の熱分解を最小限に抑える。有機UV吸収剤、及びTiO等のUV遮断無機顔料は、最終用途でのバックシートの耐候性を高め、また従来の酸化防止剤がない場合であっても、熱酸化安定性を高める。モジュール性能の向上は、バックシートの光反射性(photo-reflectance)及び/又はフォトルミネッセンス(photo-luminescence)並びに熱放散(相変化材料及び熱伝導性無機顔料の使用による)を高める添加剤を含ませることによって達成される。
【0010】
1つの実施形態においては、ポリエステル層を必要としないバックシートが提供される。別の実施形態においては、バックシートは積層体であり、そして従来の積層体のポリエステル層は、配合されたEVAで置換される。望ましい実施形態においては、EVAは、酸化防止剤及び光安定剤の組み合わせと共に配合される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明のより良い理解のために、添付図面への参照がなされることがある。
【図1】図1は典型的な光起電力モジュールの要素の拡大図を示す。
【図2】図2は典型的な裏打ちシートの1つの実施形態を示す図である。
【図3】図3は実施例1の試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
光起電力モジュールのためのバックシートは、従来のバックシートと同じ性能を示し、あるいはより良い性能が低コストで提供される。新規なバックシートは、配合された熱可塑性ポリオレフィン若しくは配合されたエチレン酢酸ビニルの1つ以上の層又は配合されたポリマー層の組み合わせを組み込んでいる。
【0013】
ポリオレフィンは、広範囲の応用に役立つ極めて多用途で且つ低コストな類のポリマー材料を代表する。ここで用いられるポリオレフィンは、モノマーとしての単純なオレフィン(一般式C2nのアルケンとも称される)から生成されるポリマーを意味し、限定はされないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマー(COC)、EPDM、TPX(ポリメチルペンテン)、オレフィンコポリマー、オレフィンアクリルコポリマー、オレフィンビニルコポリマー等を含む。用いられるポリオレフィンは、単一のホモポリマー若しくはコポリマーのポリオレフィン又は2種以上のポリオレフィンの組み合わせであってよい。ポリオレフィンは、加水分解及び他の化学的攻撃の手段による分解に対して本質的に耐性を示し、そして他のメカニズムによる分解(例えばUV及び酸化的分解)を最小限に抑えるために容易に配合され得る。ポリオレフィンは、高温及びUV光への暴露で容易に分解するという理由で、バックシートにおいては典型的には用いられていない。
【0014】
エチレン酢酸ビニル(EVA)は極めて良好な誘電特性及び優れた耐湿性を有する。加えて、ポリエステルのようには加水分解の影響を受け易くはない。しかし、非配合のEVA(uncompounded EVA)は熱的に安定ではなく、また熱にさらされたときに酸性の酸(酢酸)を放出する。酢酸は、バックシートの引張強度に悪影響を与える。そこで、EVAに配合することは、EVAの安定性を改善し且つUV及び熱による分解を最小限に抑えることが発見された。
【0015】
ここで用いられる配合とは、基本ポリマー系への添加物の組み込みのことである。用いられる具体的な添加物は、最終製品の所望の特性又は製造に役に立つ特性のいずれかに依存することになる。用いられ得る添加物の例は、限定はされないが、屋外グレードの(exterior-grade)TiO(又はBaSO、CaCO)、UVA、HAL、光安定剤、AO、熱伝導性の/電気的に抵抗性の顔料、光学的増白剤/フォトルミネッセント剤、可視光顔料、IR反射顔料、等を含み得る。添加物は、単独で又は他の添加物と組み合わされて用いられ得る。
【0016】
バックシートは、配合されたポリマーの単一シートのみから構成されてよく、あるいは代替的には多重層構造(積層体)から構成されてよく、この場合、各層は、バックシートの価格要求及び性能要求に応じて異なる特性を有する。例えば1つの実施形態では、バックシートは、耐候性外層に接着される配合された熱可塑性ポリオレフィンの内層を有する積層体である。別の例では、配合された熱可塑性ポリオレフィンの層は、耐候性外層及び内層を含む3層積層体の中間層であってよく、この場合、内層は、セル若しくは封止材との接着を提供するように機能し且つ/又はバックシートの反射強化を提供するように機能する。これらの追加層は、配合されたポリオレフィン若しくはEVA又はバックシート構造において典型的に用いられる他の何らかの材料であってよい。
【0017】
典型的な光起電力モジュールにおいては、ソーラセルに隣接するバックシート積層体の層は、より熱的に安定で且つ難燃性であるべきである。内部層は極めて誘電性である必要がある。このことは別個の層の2層又は3層の積層体として達成され得るし、あるいは全ての特性を1層内に備えている1層であってもよい。即ち、ポリオレフィン又はEVAは、必要な全ての特性を1枚のシート内に有するように配合されてよく、あるいは異なって配合される別個の層であってよい。例えば裏打ちシートは、配合されたEVAを有していてよく、必要であればバックシート全体に機械的剛性を付与するための配合されたポリプロピレンの層を有していてよい。配合された熱可塑性ポリオレフィン物又はEVAは、裏打ちシート内でポリエステルを使用する必要性を排除する上で有用である。
【0018】
裏打ちシートは、望ましくは、適切に配合された、ポリオレフィンベースの又はEVAベースのフィルムの押し出し又は共押し出しによって製造される。典型的には、配合プロセスは、後続の処理又は最終用途のいずれかのための特性を改良するために、ポリマーマトリクス全体への添加剤の均質な分布を必要とする。ポリオレフィン樹脂は、典型的には、配合物における融点を越えて十分に加熱することによって、又は、混合器、押し出し機、この押し出し機は混合部の機能が強調される押し出し機である、によって配合される。この手法は、汚染の危険性を低減すること、熱酸化安定性を確実にするための不活性雰囲気の使用、及び、連続的な配合/調合プロセス、の利益を提供する。単一又は複数の耐候性外層と組み合わせる場合には、そのフィルムに対する追加層のインラインコーティングが引き続いて行われる。製造プロセスは、過剰な溶媒を使用せずに実行され得るし、望ましくはそうされ、この種の製造は、基板(配合されたポリオレフィン層)のための溶融押し出し/共押し出し技術の使用によって容易にされ、補助層(例えば耐候性外層、接着促進及び/又は光反射のための内層)のインライン無溶媒コーティングがこれに続く。
【0019】
望ましい実施形態においては、耐候性外層は、無溶媒放射硬化型又はデュアルメカニズム(放射及び熱)硬化型としてコーティングされるが、他の方法が用いられてもよい。
【0020】
バックシートが積層体である場合、単一又は複数の追加層は、ポリマーフィルム又は当該分野で既知の材料から選択され得る。1つの実施形態においては、積層体は、(a)耐候性フィルムの第1の外層、(b)少なくとも1つの中間層、及び(c)第2の外層(内層とも称される)を備える。光起電力モジュールにおいて用いられる場合には、積層体の第1の外層は環境に暴露され、また内層はソーラセル及び太陽放射にさらされ又は面する。内層は任意の材料から作製され得るが、典型的には1つ以上のポリマーから作製される。
【0021】
代替的には、裏打ちシートは、全ての所望の特性が1層内で組み合わされている1つの単層であってよい。その1層は、配合されたポリオレフィン、EVA又は両方の組み合わせであってよい。
【0022】
外側の耐候性フィルムは、フッ素ポリマー(例えばテドラー(Tedlar))、アクリル、ポリシロキサン、ウレタン、及びアルキド又は配合されたポリオレフィン若しくはEVA等の種々の耐候性ポリマーから選択されてよい。1つの望ましい耐候性層は、有機溶媒に可溶な架橋性アモルファスフッ素ポリマーである。フッ素ポリマーは、塩化三フッ化エチレン(CTFE)と1つ以上のアルキルビニルエーテルとのフッ素コポリマーであってよく、1つ以上のアルキルビニルエーテルは反応性OH官能基を有するアルキルビニルエーテルを含む。裏打ちシートは、フッ素コポリマーと混合された架橋剤を含んでいてよい。別の実施形態においては、フッ素コポリマー層は、テトラフルオロエチレン(TFE)と反応性OH官能基を有する炭化水素オレフィンとのコポリマーを備える。裏打ちシートは、フッ素コポリマーと混合された架橋剤を更に含んでいてよい。
【0023】
裏打ちシートのフッ素コポリマー層は、接着剤を伴う又は伴わない配合された熱可塑性ポリオレフィンに適用されてよい。また、単層又は多重層として適用されてよい。別の実施形態では、フッ素コポリマーはシリカ、望ましくは疎水性シリカを含む。上に示したように、耐候性外層は望ましくは無溶媒硬化型としてコーティングされる。固体フッ素ポリマー樹脂(例えばルミフロン(Lumiflon)、ゼッフル(Zeffle)、及びアルケマ(Arkema)9301)の適切なモノマー/反応性希釈剤内での可溶化は、従来の室温での広範な混合プロセスを用いて種々の液体モノマー又は反応性希釈剤内で達成される。これらのモノマーは、限定はされないが、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、エポキシド、ハロゲン化ビニリデン、α−オレフィン、及びアクリロニトリルを含む。結果として得られるフッ素ポリマー樹脂溶液は、次に、従来の湿式コーティング方法を用いて適切な基板、例えばポリオレフィンフィルムに塗布されてよい。液相は次いで、高強度放射、例えばUV若しくは電子線、及び/又は、熱にさらされて「硬化され(cured)」又はその場で(in-situ)重合され、既存のフッ素ポリマー樹脂及びその場で重合されたポリマーの相互侵入ネットワーク(interpenetrating network)を生じさせる。
【0024】
フッ素ポリマー樹脂のための適切なモノマー/反応性希釈剤の選択は、多重反応メカニズムを介した制御されたネットワーク又は架橋の形成、即ち(例えば)アクリル及びビニルエーテル官能基のUV又は電子線により開始されるフリーラジカル重合/共重合、(例えば)ビニルエーテル及びエポキシ官能基のUV又は電子線により開始されるカチオン重合/共重合、並びに、ウレタン、尿素又はエポキシドの形成を介した熱駆動架橋、を可能にする。
【0025】
固体フッ素ポリマー樹脂の無溶媒硬化は、多くの利点を有している。これらの利点の中でも、溶媒使用の排除は、結果として環境により優しい製品をもたらす。硬化はより低い温度で行うことができ、それにより、より高速なライン速度が可能になる。またプロセスは、より広範な共重合候補、即ちアクリル、ビニルエーテル、他のビニル樹脂、エポキシ等の利用により製品特性能力を拡大する。
【0026】
無溶媒硬化は、結果として得られる積層体の機械的な及び他の特性を高めることができる。無溶媒硬化は、相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)を生じさせることができる。フッ素ポリマー樹脂の存在下でのモノマー系の無溶媒硬化は、IPN又はセミIPNを生じさせ、これはここでは各々架橋された(又はネットワーク化された)2つのポリマーからなる材料について言及している。これらのポリマーは、互いの存在で架橋され且つ架橋に際して全相分離(gross phase separation)を呈しない必要がある(それらが分離すると、相間の貧弱な界面に起因して十分でない特性を一般的には有する、2つの分離した材料の粗い混合が、結果としてもたらされる)。
【0027】
そのようなプロセスによる利点は、堆積のための有機溶媒の使用を排除することによって、単一コーティング内で異種ポリマー材料の固有の特性を活かせることである。IPN及びセミIPNは、架橋/硬化に先立つ分子レベルでの混合により異種ポリマー材料の相乗効果的な組み合わせを可能にすることができる。例えば1つの利点は、高いTg材料(例えばルミフロンベース(Lumiflon based))と低いTg材料、例えばポリビニルブチルエーテル、ポリエチルアクリレート、種々のTgが調節されたアクリレートコポリマー、α−オレフィンコポリマーのマトリックスとの間でのIPNの生成により熱サイクル特性が高まることである。
【0028】
本発明の3層積層体の1つの実施形態においては、内層は、基板(配合された熱可塑性ポリオレフィン又はEVAの中間層)の特性を有するが、従来の封止材に対して必要な接着特性をも有することになる。大抵の場合、内層は、中間層とは組成が異なる配合されたポリオレフィンから構成されるであろうし、またベースフィルムと同時に共押し出しされ得る。代替的には、内層は、後続のコーティング/押し出しプロセスにおいて適用され得る。
【0029】
しかし、内層は、ポリオレフィンから構成される必要はなく、異なる種類の1つ以上のポリマーから作製され得る。1つの実施形態においては、内層は配合されたエチレン酢酸ビニル(EVA)から作製される。EVAの酢酸ビニル含有量は、一般的に約2〜33重量パーセントであり、望ましくは2〜8重量パーセントである。望ましくは、内層は高いレベルの反射率を提供する。この反射率は、顔料によって、又は光反射材料のコーティングによって提供され得る。
【0030】
顔料は任意の種類であってよいが、1つの実施形態では白色顔料が用いられ、また白色顔料は、二酸化チタン(TiO)及び硫酸バリウム(BaSO)を含む、白色着色のために典型的に用いられる顔料から選択され得る。言うまでもなく、二酸化チタンはその入手容易性から望ましい。そのような着色は、マイカ又は真珠光沢を付加する成分を含んでいてもよい。白色顔料は、積層プロセスを容易にし、積層の過程で生じるガスが逃げるための経路を提供する。加えて、白色顔料は、積層体の光学密度及び反射率の増大を結果としてもたらす。このことは同時に、積層体が保護層として用いられる光起電性セルの電力発生を増大させる。この層には、例えば光安定剤、酸化防止剤、又は両方が配合され得る。
【0031】
本発明の積層体を形成する具体的な手段は、層の組成及び結果として得られる積層体の望ましい特性、並びに積層体の最終用途に応じて変化し得る。
【0032】
これらの層は、必要に応じて上述したように無溶媒コーティングとして適用されてよい。代替的には、1つの層に接着剤を塗布し、別の層を貼付することによって、複数の層が互いに接合されてよく、必要であれば層の数に応じてこのプロセスが繰り返されてよい。本発明の積層体を製造するために、他の積層体の層を互いに接着するために現在知られまた用いられている接着剤を含めて種々の接着剤が用いられ得る。用いられ得る特定の接着剤は、層の組成及び積層体の使用目的に応じて変化し得る。
【0033】
ここで引用される種々の刊行物、特許及び特許出願の開示は、それらの全てにおいて参照により組み込まれる。
実施例
金属化PP(ポリプロピレン)を組み込んだ積層体を準備し、水蒸気透過率(Moisture Vapor Transmission Rates)(MVTR)を試験した。金属化PPは、金属化された(アルミニウムの層)ポリプロピレンである。試料は、エクソンモービル(ExxonMobil)から商業的に入手可能な異なるグレード、すなわち18XM882及び40UBM−E5を用いて準備された。金属化PP、及びプロテクト(Protekt)/金属化PP/EVAの積層体は、南ミシシッピ大学(Southern Mississippi University)でのMVTR試験に供された。これらの積層体は、13μm厚のプロテクト(Protekt)(登録商標)(ルミフロン(Lumiflon)(登録商標)ベースのフッ素コポリマーコーティング)層及び100μm厚のEVA(エチレン酢酸ビニル)層を有していた。製造元(エクソンモービル)はMVTRが0.02g/m/日であると報告している。しかし、以下の表1に示されるように、積層体は10分の1のMVTRを示していた。表1においてSL081809−1及び2は積層体の異なる試料である。
【0034】
【表1】

【0035】
図3は時間に対する結果を示している。
【0036】
MVTRは典型的には厚みの関数であるから、100μmのEVAがMVTRの減少の理由であったと考えられた。プロテクト(Protekt)層の貢献をより良く理解するために、プロテクトでコーティングされた金属化PP(EVAなし)の試料を試験した。追加の試料を準備して試験し、プロテクトコーティングが顕著なMVTR減少の理由であることが示された。プロテクト(登録商標)13μm/40UBM−E5の試料及びプロテクト(登録商標)13μm/18XM88の試料を準備して試験した。結果は表1における3層積層体に対して得られたものと同様であった。2層積層体は約10分の1のMVTRであった。1×10−3g/m/日のMVTRが必要とされ1×10−2では不十分とされる、薄いフィルム応用のためには、従来、スパッタリングされたフィルム(高価である)又はアルミニウム(金属であるから、必要な電気絶縁性を達成するためにより厚い周囲ポリマー層を必要とする)のみが典型的には用いられ得る。しかし、上述の結果は、上部にプロテクト(登録商標)コーティングを有する安価な金属化PPでも、要求されるレベルの湿気保護が達成され得ることを示している。
【0037】
実施例2
EVA及び他のポリオレフィンの不利な点は、熱酸化分解に対するそれらの感受性である。これはPV応用においてバックシートとして用いられるポリマー材料に対して特に重要である。UL1703は、バックシートのRTI(相対温度指数(Relative Thermal Index))が少なくとも90℃であるべきことを述べている。加えて、RTIは、測定されるモジュールの動作温度を20℃超える温度よりも低くないべきである。モジュールがますます高い温度で動作するにつれて、105℃のRTIが一般的な定格になってきている。ポリマーが分解すると、分解生成物は放出され(ガス放出)、これらの生成物は、ヘッドスペースガスクロマトグラフ(Head Space Gas Chromatograph)(HSGC)によって(定量的及び定性的に)検出され得る。
【0038】
幾つかの配合されたEVA試料を準備してガス放出を試験した。具体的な分解生成物は識別されなかったが、155℃で160〜500時間加熱した後にポリマーから放出された揮発性物質の量を解析した。マイラー(Mylar)A(ポリエステル)をコントロールとして用いた。非配合のEVA(添加物のないEVA)もコントロールとして用いた。
【0039】
幾つかの異なる添加物、例えばユビテックス(Uvitex)OB(蛍光光学的増白剤)、サイアソーブ(Cyasorb)UV1164UVA(紫外光吸収剤)、サイアノックス(Cyanox)2777酸化防止剤、サイアソーブUV6408光安定剤、サイアソーブUV2908光安定剤、及びこれらの添加物の組み合わせ、を用いて試料を調製した。
【0040】
試料は以下のように調製した。先ず、EVAを固体分18.7%でMEK内に加熱及び攪拌しながら溶解させた。各添加物を濃度1%でMEK内に溶解させて液体の形態のEVA溶液に加えた。調製した処方を次いでマイラーA5ミル(mil)にロッド#50でコーティングした。溶媒を蒸発させるために、コーティングを75℃で20分間加熱した。次いでそれらを4平方インチ試料に切断し、GCバイアル(vials)内に収容して蓋をした。試料は160時間155℃のオーブン内に置かれる。HSGCはオーブン内で160時間後に試料に対して実行された。結果は以下の通りであった。全材料の初期「ガス放出」は無視可能であった(約400000ng/4平方インチ)。密封されたバイアル内で160時間の間155℃にさらされた後、「配合された」EVAの「ガス放出」は加熱されないのと同じ位のままであったが、非配合のEVAは、約15000000ng/4平方インチの揮発分をガス放出した。このことは、EVAに配合することによって熱分解のプロセスが顕著に抑制され、ポリエステル層を必要とせずにEVA自身がバックシート内で十分に使用可能であることを実証している。
【0041】
実施例3
i)熱的安定性、ii)UV安定性に関する配合されたEVAのロバスト性(robustness)の向上を以下の実施例で説明する。実施例のフィルムを次のように準備して評価した。1)コントロールEVA、2)R105_TiO(デュポン(DuPont))、サイテックサイアソーブ(Cytec Cyasorb)(登録商標)UV−2908光安定剤(フリーラジカル捕捉剤ヒンダードベンゾエート(free radical scavenger hindered benzoate)0.1重量%、サイテックサイアノックス(Cytec Cyanox)(登録商標)2777酸化防止剤0.1%、及びR105_TiO、UVOBチバ(Ciba)0.1重量%が配合されたEVA。ここに説明される調合された(formulated)EVAは、押し出し、吹きつけ(blowing)若しくは他の手段によるフィルムとして製造されてよく、又はポリオレフィン、ポリカーボネート等の基板上に直接押し出されてよい。積層体は次のようにして作製された。1)フッ素コポリマーコーティング(ルミフロン(Lumiflon)(登録商標)ベース)/5ミルマイラーA/EVA、2)フッ素コポリマー/5ミルマイラーA/EVA0.1%添加物。
【0042】
試験方法及び結果:試料に幾つかの試験をして試料の特性を評価した。
酸素誘導時間(Oxygen induction time)(OIT)試験は、酸素安定性及び/又はポリマーの分解を評価するための技術である。これは、易酸化性ポリマーの安定性に対する酸化防止剤の相対的有用性を検査するのに特に効果的である。これはまた、酸化防止剤がポリマーから浸出してそれらの有効性を打ち消してしまったか否かを決定するためにも有用である。試験は冷蔵冷却システム(Refrigerated Cooling System)を備えたDSC_Q200(TAインストゥルメンツ(TA Instruments)を用いて行われた。試料(2〜3mg)は、50℃〜200℃の窒素雰囲気中において開アルミ鍋(蓋なし)内で加熱される。試料は5分間200℃で維持される。次いでガスが酸素に変えられ、材料は酸素雰囲気中において100分間200℃で維持され続けられる。OITは、EVAの熱的安定性及び添加物の有効性の迅速なスクリーニングのために用いられ得る。
【0043】
得られた結果は、EVAコントロール(添加物なし)が200℃の酸化雰囲気中での10分間の暴露の後に酸化を開始したことであった。一方、添加物ありのEVAは、50分の試験の後に酸化した。これらの結果は、添加物ありのEVAが熱的により安定であることを示している。
【0044】
UV照射。耐候試験機セノン(Xenon)CI4000(アトラス(Atlas))内で保持されることによって、試料は、DI水(UL_746Cに従う)が周期的に噴霧されるとともにUVに曝された。色、フィルム完全性が100時間毎に評価される。試験の最初と最後に引張強度が測定される。試験をパスするためには、材料は最初の特性の少なくとも70%を維持している必要がある。
【0045】
結果は以下の通りであった。コントロールは、700時間の照射の後に亀裂を生じた。配合されたEVAは1600時間の直接UV照射をパスし、亀裂なしで且つ最初の引張強度の70%を維持していた。これらの結果は、配合されたEVAが非配合のEVAよりもはるかにUV安定であることを示している。このことは、太陽光に連続的にさらされるソーラセルにとって極めて重要である。UL746Cは、太陽光に直接さらされるソーラモジュールの部品が1000時間試験にパスする必要があることを要求している。配合されたEVAはこの要求を容易に満たす。
【0046】
実施例4
配合されたポリプロピレンベースのバックシート試料をクロスハッチ接着対湿熱暴露(cross-hatch adhesion vs. damp-heat exposure)に供した。クロスハッチ接着値は、湿熱にて200時間を越えて一定(約5)のままであった。配合されたポリプロピレンベースのバックシート試料はまた、経時的に引張強度を試験するために湿熱にさらされた。引張強度は2000時間を越えて一定のままであった。
【0047】
当業者にとって明白なはずである、開示される本発明の種々の修正、調整、及び応用があるであろうし、また本出願はそのような実施形態に及ぶことが意図されている。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、それらの最大限の範囲は以下の特許請求の範囲への参照によって評価されることが意図されている。
【0048】
ここで引用される種々の刊行物、特許及び特許出願の開示は、それらの全てにおいて参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力モジュールのための裏打ちシートであって、
配合された熱可塑性ポリオレフィンを含む裏打ちシート。
【請求項2】
前記裏打ちシートは、少なくとも内層及び外層を備え、前記配合された熱可塑性ポリオレフィンは前記内層内に組み込まれ、前記裏打ちシートはポリエステル層を含まない請求項1の裏打ちシート。
【請求項3】
前記内層は1つ以上の配合された熱可塑性ポリオレフィンからなる請求項2の裏打ちシート。
【請求項4】
前記外層は耐候性層である請求項2の裏打ちシート。
【請求項5】
前記裏打ちシートは(a)耐候性フィルムの第1の外層、(b)少なくとも1つの中間層、及び(c)内層を備える積層体であり、少なくとも1つの中間層は前記配合された熱可塑性ポリオレフィンを含む請求項1の裏打ちシート。
【請求項6】
前記内層はエチレン酢酸ビニル(EVA)を含み、前記EVAの酢酸ビニル含有量は約2〜33重量パーセントである請求項5の裏打ちシート。
【請求項7】
前記第1の外層及び/又は中間層は熱伝導性フィラーを含む請求項5の裏打ちシート。
【請求項8】
前記第1の外層は塩化三フッ化エチレンと1つ以上のアルキルビニルエーテルとのフッ素コポリマーを含み、前記1つ以上のアルキルビニルエーテルは反応性OH官能基を有するアルキルビニルエーテルを含む請求項5の裏打ちシート。
【請求項9】
前記ポリオレフィンには光安定剤が配合される請求項1の裏打ちシート。
【請求項10】
前記ポリオレフィンには顔料が更に配合される請求項9の裏打ちシート。
【請求項11】
前記裏打ちにはポリエステル層が含まれない請求項1の裏打ちシート。
【請求項12】
光起電力モジュールのための裏打ちシートであって、
配合されたEVAを含み、ポリエステル層を含まない裏打ちシート。
【請求項13】
前記EVAには光安定剤が配合される請求項12の裏打ちシート。
【請求項14】
前記EVAには酸化防止剤が更に配合される請求項13の裏打ちシート。
【請求項15】
塩化三フッ化エチレンと1つ以上のアルキルビニルエーテルとのフッ素コポリマーの耐候層を更に備え、前記1つ以上のアルキルビニルエーテルは反応性OH官能基を有するアルキルビニルエーテルを含む請求項14の裏打ちシート。
【請求項16】
光起電性セルと、
1つ以上の配合されたポリオレフィン若しくは配合されたEVA又はこれらの両方を含む裏打ちシートと、を備える光起電力モジュール。
【請求項17】
前記光起電性セルはEVAで封止されている請求項16の光起電力モジュール。
【請求項18】
前記裏打ちシートは当該EVA封止材と接触する配合されたEVA層を含む請求項17の光起電力モジュール。
【請求項19】
前記ポリオレフィン又はEVAには、光安定剤、酸化防止剤又はこれらの両方が約0.1%〜約1%の重量パーセントで配合されている請求項16の光起電力モジュール。
【請求項20】
前記酸化防止剤及び光安定剤は約0.1重量%〜約1重量%で各々存在する請求項14の裏打ちシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−516073(P2013−516073A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546242(P2012−546242)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/062049
【国際公開番号】WO2011/079292
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(500570564)マディコ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】