説明

光通信システム及び光通信方法

【課題】本発明は、主信号によるデータ伝送をコアネットワークを介さず行なう。
【解決手段】本発明は、(2n+1)個(nは自然数)の基地局と、(2n+1)個の基地局に対して上位に配置される送信機T及び受信機Rと、(2n+1)個の基地局と同数配置され、各々が各基地局に接続される下位端子Bと、(2n+1)個の基地局と同数配置され、n組の各ペアは相互に接続され、残りの1個は送信機T及び受信機Rに接続される上位端子Uと、を有するアレイ導波路回折格子AWGと、を備えることを特徴とする光通信システムである。一の基地局から他の基地局にデータ信号を送信するときには、アレイ導波路回折格子AWGでデータ信号を基地局側にループバックし、一の基地局から受信機Rにデータ信号を送信するときには、アレイ導波路回折格子AWGでデータ信号を受信機R側に出力する。これらの処理は、コアネットワークを介さない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロードバンド・無線アクセスネットワークが関わる光通信システム及び光通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの爆発的な普及に伴い、高速通信サービスを提供するFTTH(Fiber To The Home)の加入者が急速に増加している。現行FTTHシステムでは、通信速度1Gbit/sの1G−EPON(Gigabit−Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)が利用されているが、今後、更なるインターネット普及による加入者増大や、放送通信融合時代に向けたHD映像の配信・利用サービスなどへの対応に向け、更なる高速化が求められている。現在、これら要求に対し、現行の10倍のスループットを実現する10Gbit/sの高速通信が可能な10G−EPONや、更なる高速化・広帯域化に向けた次世代PONシステムに関する検討が、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)やFSAN(Full Service Access Network)等の標準化団体で活発に議論されている。
【0003】
一方、スマートフォン等のモバイル端末が爆発的な普及をしている移動体通信の分野では、無線技術の発展に伴いピーク伝送速度は2年でほぼ倍のペースで向上している。移動体通信は「どこからでも利用できる」という特徴を持っており、多くのベンダーや通信事業者が、新しい無線技術の開発に取り組んでいる。例えば、モバイルWiMAXは、伝送距離1〜3キロメートル、最大伝送速度20Mbit/sで、120km/hの移動体からでも利用できる。また、IEEE802.11nは、802.11a/gとの下位互換性を保ちながら、実効速度100Mbit/s以上を実現する高速無線LAN規格で、大容量のデータ通信が可能である。更には、将来システムとして、国際電気通信連合無線通信部門(ITU−R:International Telecommunication Union−Radio communication sector)で検討されているIMT(International Mobile Telecommunications)−Advancedにおいては、新周波数帯を利用した最高1Gbit/s伝送の実現が想定されており、次世代の無線アクセスにおいても、ギガビットクラスの高速サービス実現への期待が高まってきている。
【0004】
無線アクセスサービスは、移動性やカバレッジにより、通信時は準静止状態での利用を想定する無線LAN系から発展したWiMAXと、場所を問わず広い範囲で、かつ高速移動中も含めて音声通信を提供するために最適化された携帯電話系システムの2種類に大別できる。特に現在、世界中で導入が検討されているLTE(Long Term Evolution)、LTE−Advancedでは、携帯電話系システムの特徴を踏襲しつつ、準静止時のデータ転送速度の飛躍的な増大が想定されている。このLTE、LTE−Advanced等の移動体通信ネットワークでは、移動端末の追跡を行なうために、位置登録・ページング技術によるロケーション制御とハンドオーバ制御が必要となる。LTE−Advanced以降の次世代無線アクセスネットワークでは、更なる高速化実現のため、高いキャリア周波数を利用することによりセルサイズの縮小化が予想されるため、これら制御には、これまで以上に短い処理時間(低遅延)が要求される。
【0005】
また、今後リアルタイム性の高いアプリケーションの提供、シンクライアント環境での適用等を考慮して、データ伝送においても伝送遅延/接続遅延時間の短縮、遅延揺らぎの低減が求められることが予想される。更にLTE−Advancedでは、これまで課題となっていたセル端問題を解決するために、セル間協調(CoMP:Coordinated Multi−Point)送受信技術が導入される。これは、ある移動端末に対して、複数のセクタ、あるいはセルと信号の送受信を行なう技術である。複数のセルが協調して送受信を行なうことにより所望の信号電力の増大が期待され、これまで課題であったセル端スループットの低下を防ぐことが可能となる。上記CoMP送受信技術を実現するためには、無線基地局/移動端末のTTI(Transmission Time Interval)の間に、協調する無線基地局間でCSI(Channel State Information)の交換が必要となる。
【0006】
従って、無線アクセスネットワークでは、「位置登録・ページング技術によるロケーション制御とハンドオーバ制御」、「主信号によるデータ伝送」、そして「CoMP送受信技術の実現」の3つの観点から、低遅延なネットワークの実現が期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Thas A Nirmalathas,Christina Lim,Yizhuo Zhang,Prasanna A Gamage,DalmaNovak,Rod Waterhouse,“Cost−effective Fiber−Wireless Networks”,OSA/OFC/NFOEC 2011,OTuO4.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、無線通信のトラフィック量は、指数関数的な伸びを見せている一方で、フラットレート制の導入により通信収入は頭打ちが現状であり、収益確保のためには、CAPEX(Capital Expenditure)/OPEX(Operating Expense)の削減が重要である。この課題を解決するために無線アクセスネットワークにおける世の中の動向は、図1に示すように既存PONシステム(E−PON又はG−PON)にモバイル用波長をオーバーレイすることで、設備、媒体の共用化を図るFixed/Mobile Access Networkが注目を集めている(非特許文献1)。
【0009】
具体的に、図1では、OLT(Optical Line Terminal)及びONU(Optical Network Unit)が関わる固定アクセス用に波長λ1を割り当てて、BBU(Base Band Unit)及びRRU(Remote Radio Unit)が関わる固定アクセス用以外に波長λ2〜λnを割り当てる。そして、これらの波長についてWDM(Wavelength Division Multiplexing)を行ない、さらに、各WDMフィルタにより無線信号が重畳された光信号を分波し、RRUにて無線信号を出力し、各モバイル端末と通信を行なう。
【0010】
また、LTE−Advanced及びそれ以降の無線アクセスネットワークでは、前述したように高速化によりセルサイズの縮小化が予想されるため、これまでと同様のカバレッジエリアを確保するためには、無線基地局を新たに敷設しなければならない。モバイル用アクセス網設備を新たに敷設することはCAPEXの増加を招くため、光スプリッタを用いて1対多の接続を経済的に実現することが可能なPONにオーバーレイすることでCAPEXの低減を図る。このように、既存PONシステムとモバイルアクセスを統合し設備を共用化することで、経済的な無線アクセスネットワークを実現することができる。
【0011】
しかしながら、上記Fixed/Mobile Access Networkは、固定系アクセスネットワークと無線アクセスネットワークが波長スプリッタを介して同一媒体網上で経済的に運用することが可能であるが、以下2つの課題が存在する。
【0012】
第1の課題は、主信号及び制御信号に関わる低遅延化である。上記Fixed/Mobile Access Networkを既存LTE、LTE−Advancedネットワークと同様の運用とした場合、「位置登録・ページング技術によるロケーション制御とハンドオーバ制御」は、コアネットワーク上に設置されるMME(Mobility Management Entity)からこれら処理がなされ、「主信号によるデータ伝送」に関しても同様に、コアネットワーク上に設置されるS/P−GW(GateWay)を介して信号のやり取りを行なう。それぞれ、コアネットワークを介して信号の送受が行われるため、ネットワーク上遅延が課題となっている。
【0013】
第2の課題は、制御信号のブロードキャスト化である。上記Fixed/Mobile Access Networkでは、AWGを設置しているため、各RRUが移動端末の追跡を行なうために、位置登録・ページング技術によるロケーション制御信号、ハンドオーバ制御信号等の報知チャネルには、データ信号とは別に特定の波長を送信しなければならない。RRUはこのチャネルを使って、位置登録のための情報、チャネル構造に関する情報、システム情報などをセル内の全移動局へ転送するため、有限の波長資源を効率的に運用するためにも、当該チャネル信号はブロードキャストできることが望ましい。
【0014】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、ロケーション制御、ハンドオーバ制御及び主信号によるデータ伝送をコアネットワークを介さず行なうとともに、ロケーション制御信号及びハンドオーバ制御信号を経済的にブロードキャストすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、複数の下位装置と上位装置の間に波長ルータ装置を配置し、波長ルータ装置の本願の配線を利用し、一の下位装置から他の下位装置にデータ信号を送信するときには、波長ルータ装置でデータ信号を下位装置側にループバックし、一の下位装置から上位装置にデータ信号を送信するときには、波長ルータ装置でデータ信号を上位装置側に出力することとした。
【0016】
具体的には、本発明は、(2n+1)個(nは自然数)の下位装置と、前記(2n+1)個の下位装置から上り信号を受信するとともに、前記(2n+1)個の下位装置に下り信号を送信する上位装置と、前記(2n+1)個の下位装置と同数配置され、各々が各下位装置に接続される下位端子と、前記(2n+1)個の下位装置と同数配置され、n組の各ペアは相互に接続され、残りの1個は前記上位装置に接続される上位端子と、を有し、前記下位端子及び前記上位端子の入出力する光信号の有する波長が周回性を有する波長ルータ装置と、を備えることを特徴とする光通信システムである。
【0017】
この構成によれば、一の下位装置から他の下位装置又は上位装置にデータ信号を送信するとき、複数の下位装置と上位装置の間に配置される波長ルータ装置を介するのみであり、コアネットワークを介する必要はなく、低遅延化を図ることができる。
【0018】
また、本発明は、前記(2n+1)個の下位装置は、(2n+1)個のセルにそれぞれ配置される(2n+1)個の公衆移動通信システムの無線基地局であることを特徴とする光通信システムである。
【0019】
この構成によれば、一の基地局から他の基地局又は上位装置にデータ信号を送信するとき、複数の基地局と上位装置の間に配置される波長ルータ装置を介するのみであり、コアネットワークを介する必要はなく、低遅延化を図ることができる。
【0020】
また、本発明は、(2n+1)個(nは自然数)の下位装置と、前記(2n+1)個の下位装置から上り信号を受信するとともに、前記(2n+1)個の下位装置に下り信号を送信する上位装置と、前記(2n+1)個の下位装置と同数配置され、各々が各下位装置に接続される下位端子と、前記(2n+1)個の下位装置と同数配置され、n組の各ペアは相互に接続され、残りの1個は前記上位装置に接続される上位端子と、を有し、前記下位端子及び前記上位端子の入出力する光信号の有する波長が周回性を有する波長ルータ装置と、を用いて、前記(2n+1)個の下位装置のうちの一の下位装置から、前記一の下位装置に接続される下位端子に、前記(2n+1)個の下位装置のうちの他の下位装置又は前記上位装置のいずれかの送信先に対応する波長を有する上り光信号を送信する上り送信ステップと、前記上り光信号を前記n組のペアのうちの1組のペアにおいてループバックさせて、前記他の下位装置に送信する下位装置上り送信ステップ、あるいは、前記上り光信号を前記残りの1個の上位端子から出力して、前記上位装置に送信する上位装置送信ステップと、を順に備えることを特徴とする光通信方法である。
【0021】
この構成によれば、一の下位装置から他の下位装置又は上位装置にデータ信号を送信するとき、複数の下位装置と上位装置の間に配置される波長ルータ装置を介するのみであり、コアネットワークを介する必要はなく、低遅延化を図ることができる。
【0022】
また、本発明は、前記上位装置から、前記上位装置に接続される上位端子に、前記(2n+1)個の下位装置のいずれかの送信先に対応する波長を有する下り光信号を送信する下り送信ステップと、前記下り光信号を前記いずれかの下位装置に接続される下位端子から出力して、前記いずれかの下位装置に送信する下位装置下り送信ステップと、を前記上り送信ステップ、前記下位装置上り送信ステップ及び前記上位装置送信ステップと並行して順に備えることを特徴とする光通信方法である。
【0023】
この構成によれば、上位装置から一の下位装置にデータ信号を送信するとき、複数の下位装置と上位装置の間に配置される波長ルータ装置を介するのみであり、コアネットワークを介する必要はなく、低遅延化を図ることができる。
【0024】
上記発明で複数の下位装置と上位装置の間に波長ルータ装置を配置することから、複数の下位装置に制御信号をブロードキャストするためには、制御信号の生成装置で下位装置と同一の個数の使用波長を必要とする。上記目的を達成するために、制御信号の生成装置において、下位装置と同一の個数の使用波長を発振するのではなく、以下のように光反射器、光変調器又は広帯域光源を利用することとした。そして、波長ルータ装置において、制御信号を複数の下位装置に振り分けることとした。
【0025】
具体的には、本発明は、前記残りの1個の上位端子と前記上位装置の間に配置される光カプラと、前記光カプラに接続され、前記残りの1個の上位端子から入力された光信号を、前記(2n+1)個の下位装置への同報信号のタイミングで、前記残りの1個の上位端子へ反射することで、前記(2n+1)個の下位装置への同報光信号を送信する光反射器と、をさらに備えることを特徴とする光通信システムである。
【0026】
この構成によれば、光反射器において、下位装置と同一の個数の使用波長を発振するのではなく、下位装置からの光信号を使い回すため、制御信号を経済的にブロードキャストすることができるとともに、ロケーション制御及びハンドオーバ制御を行なうとき、コアネットワークを介することなく、低遅延化を図ることができる。
【0027】
また、本発明は、前記残りの1個の上位端子と前記上位装置の間に配置され、前記上位装置がデータ信号のタイミングで第1変調を施した光信号に対して、前記(2n+1)個の下位装置への同報信号のタイミングで前記第1変調と異なる第2変調を施す光変調器、をさらに備え、前記(2n+1)個の下位装置は、前記上位装置及び前記光変調器がそれぞれ前記第1変調及び前記第2変調を施した光信号に対して、前記第1変調に対応する復調を施すことで前記データ信号を抽出し、前記第2変調に対応する復調を施すことで前記同報信号を抽出することを特徴とする光通信システムである。
【0028】
この構成によれば、光変調器において、下位装置と同一の個数の使用波長を発振するのではなく、上位装置からの光信号を使い回すため、制御信号を経済的にブロードキャストすることができるとともに、ロケーション制御及びハンドオーバ制御を行なうとき、コアネットワークを介することなく、低遅延化を図ることができる。
【0029】
また、本発明は、前記(2n+1)個の下位装置と前記上位装置の間の光通信に利用されない前記波長ルータ装置のフリースペクトラルレンジを光波長帯に含む、前記(2n+1)個の下位装置への同報光信号を生成する広帯域光源と、前記(2n+1)個の下位装置と前記上位装置の間の光通信に利用される前記波長ルータ装置のフリースペクトラルレンジを通過帯域とする、前記上位装置に接続される上位側端子と、前記(2n+1)個の下位装置と前記上位装置の間の光通信に利用されない前記波長ルータ装置のフリースペクトラルレンジを通過帯域とする、前記広帯域光源に接続される広帯域端子と、前記上位側端子及び前記広帯域端子からの光信号を合波する、前記残りの1個の上位端子に接続される端子と、を有する光フィルタと、をさらに備えることを特徴とする光通信システムである。
【0030】
この構成によれば、広帯域光源において、下位装置と同一の個数の使用波長を発振するのではなく、これらの使用波長を光波長帯に含むため、制御信号を経済的にブロードキャストすることができるとともに、ロケーション制御及びハンドオーバ制御を行なうとき、コアネットワークを介することなく、低遅延化を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、ロケーション制御、ハンドオーバ制御及び主信号によるデータ伝送をコアネットワークを介さず行なうとともに、ロケーション制御信号及びハンドオーバ制御信号を経済的にブロードキャストすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来技術のFixed/Mobile Access Networkである。
【図2】実施形態1のセル構成を示す図である。
【図3】実施形態1の光通信システムを示す図である。
【図4】実施形態1の光通信システムを示す図である。
【図5】実施形態2−4のセル構成を示す図である。
【図6】実施形態2の光通信システムを示す図である。
【図7】実施形態3の光通信システムを示す図である。
【図8】実施形態4の光通信システムを示す図である。
【図9】実施形態4のAWGの波長配置及びWDMフィルタの透過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0034】
(実施形態1)
実施形態1のセル構成を図2に示す。実施形態1の光通信システムを図3及び図4に示す。ページングエリアPAは、セルA、B、C、D、E、F、Gを有しており、セルA、B、C、D、E、F、Gは、それぞれ基地局BS−A、BS−B、BS−C、BS−D、BS−E、BS−F、BS−Gを有している。ここで、基地局を中心として、その基地局がカバーするエリアとなる六角形のセルが形成されている。また、中央のセルAに隣接するように、6個のセルB、C、D、E、F、Gが配置されている。そして、基地局とは、公衆移動通信システムの無線基地局であり、例えば、携帯電話やPHS(Personal Handy−phone System)等の無線基地局である。
【0035】
波長周回性を有する波長ルータ装置として、アレイ導波路回折格子AWGを用いる。7×7の周回性を有するアレイ導波路回折格子AWGと各基地局BSは、例えば以下のように接続される。セルAに配置される基地局BS−Aとアレイ導波路回折格子AWGの下位端子B1が接続される。セルBに配置される基地局BS−Bとアレイ導波路回折格子AWGの下位端子B2が接続される。セルCに配置される基地局BS−Cとアレイ導波路回折格子AWGの下位端子B3が接続される。セルDに配置される基地局BS−Dとアレイ導波路回折格子AWGの下位端子B4が接続される。セルEに配置される基地局BS−Eとアレイ導波路回折格子AWGの下位端子B5が接続される。セルFに配置される基地局BS−Fとアレイ導波路回折格子AWGの下位端子B6が接続される。セルGに配置される基地局BS−Gとアレイ導波路回折格子AWGの下位端子B7が接続される。
【0036】
アレイ導波路回折格子AWGの上位端子U側では、例えば上位端子U1と上位端子U7が接続され、上位端子U2と上位端子U6が接続され、上位端子U3と上位端子U5が接続される。上位端子U4は、送信機T、受信機R、送受信機TR(例えばOLT)に接続される。各基地局BSは、自分以外の6個の基地局BSとアレイ導波路回折格子AWGの波長ルーティングによる直接接続を可能にし、かつ受信機R又は送受信機TRに上り信号を送信するために、合計7波長の信号を出力可能な光源を搭載する。複数の基地局BSは、どのような複数の下位装置に置き換えられてもよく、送信機T、受信機R、送受信機TRは、どのような上位装置に置き換えられてもよい。
【0037】
以下、図3及び図4に示すセル構成及び接続形態において、アレイ導波路回折格子AWGの波長ルーティングによるフルメッシュ型の論理接続が可能であることを説明する。
【0038】
セルA〜Gから出力された光信号の波長を、λ1+λ2+λ3+λ4+λ5+λ6+λ7と記述する。いずれのセルからも同じ波長が出力され区別するため、例えばセルAから出力された光信号の波長を、A1+A2+A3+A4+A5+A6+A7と記述する。アレイ導波路回折格子AWGへの入力信号は、マトリクスで記述すると数1のようになる。
【数1】

アレイ導波路回折格子AWGのFSR(Free Spectral Range)を1とした場合、アレイ導波路回折格子AWGからの出力信号は、数2のようになる。
【数2】

数2は、例えば、上位端子U1からは、セルAからの波長λ1、セルBからの波長λ2、セルCからのλ3、セルDからのλ4、セルEからのλ5、セルFからのλ6、セルGからのλ7の信号が出力されることを意味している。
【0039】
アレイ導波路回折格子AWGへの再入力信号は、数3のようになる。
【数3】

アレイ導波路回折格子AWGからの再出力信号は、数4のようになる。
【数4】

数4は、例えば、下位端子B1からは、セルBからの波長λ1、セルDからの波長λ2、セルFからのλ3、セルCからのλ5、セルEからのλ6、セルGからのλ7の信号が出力されることを意味している。
【0040】
数4より、7個のセルA〜Gが波長λ1〜λ7により、論理的にフルメッシュで接続されていることがわかる。数2より、上位端子U4からは、セルAからの波長λ4、セルBからの波長λ5、セルCからの波長λ6、セルDからの波長λ7、セルEからの波長λ1、セルFからの波長λ2、セルGからの波長λ3の7波長が出力される。
【0041】
図3においては、WDMフィルタWは、上り信号と下り信号を分波/合波して、受信機Rでは、波長毎に分割して受信を行ない、送信機Tでは、波長ごとに多重して送信を行なう。上り信号の波長と下り信号の波長が、アレイ導波路回折格子AWGのFSR分ずれていれば、各基地局BSと送信機T、受信機Rは、一芯双方向の通信が可能である。
【0042】
図4においては、送受信機TRでは、波長ごとに分割・多重して、送受信を行なう。送受信機TRが備えるアレイ導波路回折格子が有する周回性を利用すれば、各基地局BSと送受信機TRは、一芯双方向の通信が可能である。
【0043】
下り信号の光通信方法を説明する。まず、一の基地局BSから、一の基地局BSに接続される下位端子Bに、他の基地局BS又は受信機R、送受信機TRのいずれかの送信先に対応する波長を有する上り光信号を送信する。次に、上り光信号を上位端子U4以外においてループバックさせて、他の基地局BSに送信する。又は、上り光信号を上位端子U4から出力して、受信機R、送受信機TRに送信する。例えば、基地局BS−Aは、波長λ1、λ4を有する光信号を、下位端子B1に出力する。波長λ1を有する光信号については、上位端子U1、U7においてループバックされ、下位端子B2に出力され、基地局BS−Bに送信される(数2−4を参照)。波長λ4を有する光信号については、上位端子U4に出力され、受信機R、送受信機TRに送信される(数2を参照)。
【0044】
上り信号の光通信方法を説明する。まず、送信機T、送受信機TRから、送信機T、送受信機TRに接続される上位端子U4に、基地局BSのいずれかの送信先に対応する波長を有する下り光信号を送信する。次に、下り光信号をいずれかの基地局BSに接続される下位端子Bから出力して、いずれかの基地局BSに送信する。例えば、送信機T、送受信機TRは、波長λ4を有する光信号を、上位端子U4に出力する。波長λ4を有する光信号は、下位端子B1に出力され、基地局BS−Aに送信される(数1、2を参照)。
【0045】
以上に説明したように、一の基地局BSから他の基地局BS又は上位装置にデータ信号を送信するとき、又は、上位装置から一の基地局BSにデータ信号を送信するとき、複数の基地局BSと上位装置の間に配置されるアレイ導波路回折格子AWGを介するのみであり、コアネットワークCNWを介する必要はなく、低遅延化を図ることができる。
【0046】
(実施形態2)
実施形態2のセル構成を図5に示す。3つのページングエリアPA1、PA2、PA3が配置されている。一般的に携帯電話の着信では、モバイル端末が存在する特定のセルに呼び出しを行なうのではなく、複数のセルで構成されるページングエリアPAに一斉に呼び出しを行なう仕組みである。モバイル端末の位置は、複数のセルで構成されるページングエリアPAという単位で、コアネットワークCNWに設置されるHLR(Home Location Register)内に記録される。
【0047】
実施形態2の光通信システムを図6に示す。図6では、図5のページングエリアPA1、PA2、PA3のうち、1つのページングエリアPAについて説明する。実施形態2では、実施形態1に加えて、光カプラCP及び光反射器RDが配置されている。
【0048】
光カプラCPは、上位端子U4と送受信機TRの間に配置される。光反射器RDは、光カプラCPに接続され、上位端子U4から入力された光信号を、7個の基地局BSへの同報信号のタイミングで、上位端子U4へ反射することで、7個の基地局BSへの同報光信号を送信する。つまり、基地局BS−A、BS−B、BS−C、BS−D、BS−E、BS−F、BS−Gは、それぞれ数1における波長A4、B5、C6、D7、E1、F2、G3を有する光信号を出力する。そして、光反射器RDは、数2における波長E1+F2+G3+A4+B5+C6+D7を有する光信号を入力され、同報信号のタイミングでスイッチのオン/オフを制御して、数2における波長E1+F2+G3+A4+B5+C6+D7を有する同報光信号を反射する。そして、基地局BS−A、BS−B、BS−C、BS−D、BS−E、BS−F、BS−Gは、それぞれ数1における波長A4、B5、C6、D7、E1、F2、G3を有する同報光信号を入力される。
【0049】
光反射器RDには、例えばRSOA(Reflective Semiconductor Optical Amplifier)や反射型EAM(Electronic Absorption Modulator)等が挙げられる。図6では、図4での上位端子U4から送受信機TRへの経路から光を分岐させているが、図3でのWDMフィルタWから受信機Rへの経路から光を分岐させてもよい。
【0050】
以上に説明したように、光反射器RDにおいて、基地局BSと同一の個数の使用波長を発振するのではなく、基地局BSからの光信号を使い回すため、制御信号を経済的にブロードキャストすることができるとともに、ロケーション制御及びハンドオーバ制御を行なうとき、コアネットワークCNWを介することなく、低遅延化を図ることができる。
【0051】
(実施形態3)
実施形態3の光通信システムを図7に示す。図7では、図5のページングエリアPA1、PA2、PA3のうち、1つのページングエリアPAについて説明する。実施形態3では、実施形態1に加えて、光変調器Mが配置されている。
【0052】
光変調器Mは、上位端子U4と送信機Tの間に配置され、送信機Tがデータ信号のタイミングで第1変調を施した光信号に対して、各基地局BSへの同報信号のタイミングで第1変調と異なる第2変調を施す。各基地局BSは、送信機T及び光変調器Mがそれぞれ第1変調及び第2変調を施した光信号に対して、第1変調に対応する復調を施すことでデータ信号を抽出し、第2変調に対応する復調を施すことで同報信号を抽出する。
【0053】
送信機Tが周波数変調を施し、光変調器Mが強度変調を施すとき、光変調器Mは、強度変調の消光比を低く設定し、基地局BSは、コヒーレント検波に基づきデータ信号を復調し、直接検波を行なうことで同報信号を復調する。データ信号及び同報信号を独立に抽出することができるならば、第1変調と第2変調は上述以外の如何なる変調であってもよく、基地局BSにおける復調方法は如何なる復調方法であってもよい。
【0054】
以上に説明したように、光変調器Mにおいて、基地局BSと同一の個数の使用波長を発振するのではなく、送信機Tからの光信号を使い回すため、制御信号を経済的にブロードキャストすることができるとともに、ロケーション制御及びハンドオーバ制御を行なうとき、コアネットワークCNWを介することなく、低遅延化を図ることができる。
【0055】
(実施形態4)
実施形態4の光通信システムを図8に示す。実施形態4のアレイ導波路回折格子AWGの波長配置及びWDMフィルタMの透過特性を図9に示す。図8では、図5のページングエリアPA1、PA2、PA3のうち、1つのページングエリアPAについて説明する。実施形態4では、実施形態1に加えて、広帯域光源ASE及び実施形態1とは異なる透過特性を有するWDMフィルタWが配置されている。
【0056】
広帯域光源ASEは、各基地局BSと送受信機TRの間の光通信に利用されないアレイ導波路回折格子AWGのFSR(図9のFSR=3)を光波長帯に含む、各基地局BSへの同報光信号を生成する。WDMフィルタWは、上位側端子P2、広帯域端子P1及び上位端子U4に接続される端子を有する。上位側端子P2は、送受信機TRに接続され、各基地局BSと送受信機TRの間の光通信に利用されるアレイ導波路回折格子AWGのFSR(図9のFSR=1、2)を通過帯域とする。広帯域端子P1は、広帯域光源ASEに接続され、各基地局BSと送受信機TRの間の光通信に利用されないアレイ導波路回折格子AWGのFSR(図9のFSR=3)を通過帯域とする。上位端子U4に接続される端子は、上位側端子P2及び広帯域端子P1からの光信号を合波する。
【0057】
広帯域光源ASEは、スペクトル幅の広い光を発生する。アレイ導波路回折格子AWGにおいて、基地局BSと送受信機TRの間のデータ信号及び広帯域光源ASEから基地局BSへの同報光信号が、干渉を発生させてSNR(Signal to Noise Ratio)を劣化させないように、WDMフィルタMにおいて、データ信号の帯域を図9のFSR=1、2に制限して、同報光信号の帯域を図9のFSR=3に制限する。
【0058】
広帯域光源ASEから基地局BSへの同報光信号は、WDMフィルタMの通過後では、帯域は図9のFSR=3に制限されるところ、波長分布は非離散的であるが、アレイ導波路回折格子AWGの通過後では、帯域は図9のFSR=3に制限されるうえに、波長分布はスペクトラルスライスによって7個の離散値に制限される。
【0059】
以上に説明したように、広帯域光源ASEにおいて、基地局BSと同一の個数の使用波長を発振するのではなく、これらの使用波長を光波長帯に含むため、制御信号を経済的にブロードキャストすることができるとともに、ロケーション制御及びハンドオーバ制御を行なうとき、コアネットワークCNWを介することなく、低遅延化を図ることができる。
【0060】
(変形例)
下位端子Bの個数及び上位端子Uの個数を、7個から(2n+1)個(nは自然数)に変化させても、本発明を実施することができる。下位端子Bの個数及び上位端子Uの個数を、7個から(2n+1)個(nは4以上の自然数)に増加させれば、図1で説明したように、無線アクセスネットワーク及び固定アクセスネットワークを、アレイ導波路回折格子AWGを介して、同一媒体網上で運用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る光通信システム及び光通信方法は、無線アクセスネットワークに対して適用でき、固定アクセスネットワークに対して適用でき、同一媒体網上での無線アクセスネットワーク及び固定アクセスネットワークに対して適用できる。
【符号の説明】
【0062】
PA:ページングエリア
A−F:セル
BS:基地局
AWG:アレイ導波路回折格子
B:下位端子
U:上位端子
W:WDMフィルタ
T:送信機
R:受信機
TR:送受信機
CNW:コアネットワーク
CP:光カプラ
RD:光反射器
M:光変調器
ASE:広帯域光源
P1:広帯域端子
P2:上位側端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2n+1)個(nは自然数)の下位装置と、
前記(2n+1)個の下位装置から上り信号を受信するとともに、前記(2n+1)個の下位装置に下り信号を送信する上位装置と、
前記(2n+1)個の下位装置と同数配置され、各々が各下位装置に接続される下位端子と、前記(2n+1)個の下位装置と同数配置され、n組の各ペアは相互に接続され、残りの1個は前記上位装置に接続される上位端子と、を有し、前記下位端子及び前記上位端子の入出力する光信号の有する波長が周回性を有する波長ルータ装置と、
を備えることを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記(2n+1)個の下位装置は、(2n+1)個のセルにそれぞれ配置される(2n+1)個の公衆移動通信システムの無線基地局であることを特徴とする、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記残りの1個の上位端子と前記上位装置の間に配置される光カプラと、
前記光カプラに接続され、前記残りの1個の上位端子から入力された光信号を、前記(2n+1)個の下位装置への同報信号のタイミングで、前記残りの1個の上位端子へ反射することで、前記(2n+1)個の下位装置への同報光信号を送信する光反射器と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記残りの1個の上位端子と前記上位装置の間に配置され、前記上位装置がデータ信号のタイミングで第1変調を施した光信号に対して、前記(2n+1)個の下位装置への同報信号のタイミングで前記第1変調と異なる第2変調を施す光変調器、をさらに備え、
前記(2n+1)個の下位装置は、前記上位装置及び前記光変調器がそれぞれ前記第1変調及び前記第2変調を施した光信号に対して、前記第1変調に対応する復調を施すことで前記データ信号を抽出し、前記第2変調に対応する復調を施すことで前記同報信号を抽出することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記(2n+1)個の下位装置と前記上位装置の間の光通信に利用されない前記波長ルータ装置のフリースペクトラルレンジを光波長帯に含む、前記(2n+1)個の下位装置への同報光信号を生成する広帯域光源と、
前記(2n+1)個の下位装置と前記上位装置の間の光通信に利用される前記波長ルータ装置のフリースペクトラルレンジを通過帯域とする、前記上位装置に接続される上位側端子と、前記(2n+1)個の下位装置と前記上位装置の間の光通信に利用されない前記波長ルータ装置のフリースペクトラルレンジを通過帯域とする、前記広帯域光源に接続される広帯域端子と、前記上位側端子及び前記広帯域端子からの光信号を合波する、前記残りの1個の上位端子に接続される端子と、を有する光フィルタと、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光通信システム。
【請求項6】
(2n+1)個(nは自然数)の下位装置と、
前記(2n+1)個の下位装置から上り信号を受信するとともに、前記(2n+1)個の下位装置に下り信号を送信する上位装置と、
前記(2n+1)個の下位装置と同数配置され、各々が各下位装置に接続される下位端子と、前記(2n+1)個の下位装置と同数配置され、n組の各ペアは相互に接続され、残りの1個は前記上位装置に接続される上位端子と、を有し、前記下位端子及び前記上位端子の入出力する光信号の有する波長が周回性を有する波長ルータ装置と、を用いて、
前記(2n+1)個の下位装置のうちの一の下位装置から、前記一の下位装置に接続される下位端子に、前記(2n+1)個の下位装置のうちの他の下位装置又は前記上位装置のいずれかの送信先に対応する波長を有する上り光信号を送信する上り送信ステップと、
前記上り光信号を前記n組のペアのうちの1組のペアにおいてループバックさせて、前記他の下位装置に送信する下位装置上り送信ステップ、あるいは、前記上り光信号を前記残りの1個の上位端子から出力して、前記上位装置に送信する上位装置送信ステップと、
を順に備えることを特徴とする光通信方法。
【請求項7】
前記上位装置から、前記上位装置に接続される上位端子に、前記(2n+1)個の下位装置のいずれかの送信先に対応する波長を有する下り光信号を送信する下り送信ステップと、
前記下り光信号を前記いずれかの下位装置に接続される下位端子から出力して、前記いずれかの下位装置に送信する下位装置下り送信ステップと、
を前記上り送信ステップ、前記下位装置上り送信ステップ及び前記上位装置送信ステップと並行して順に備えることを特徴とする、請求項6に記載の光通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−74396(P2013−74396A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210897(P2011−210897)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】