説明

光通信システム

【課題】電気信号で行なわれていた所定のプロトコルに基づく通信を光通信でも実現することができる光通信システムを提供する。
【解決手段】複数の光通信装置30が、光通信線5、光分配器10、及び光信号中継装置20を介して光通信する。光分配器10は、いずれかの光入力部に入力された光信号を全ての光出力部から出力する。光信号中継装置20は、複数の接続部を有し、光分配器10に接続する所定の接続部にて受信した光信号を他の接続部から送信し、他の接続部にて受信した光信号を所定の接続部から送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子機器が光信号を介して通信を行う光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌には多数の電子機器が搭載されており、各電子機器が通信線を介して接続され、相互に情報交換を行いながら協調動作することによって、車輌の走行に係る制御及び車室内などの快適性に係る制御等を実現している。車輌に搭載された電子機器が通信を行う場合、通信プロトコルとしてCAN(Controller Area Network)が広く採用されている(非特許文献1、2参照)。
【0003】
CANの通信プロトコルでは、差動信号を伝送するツイストペアケーブルにて構成されたCANバスに複数の電子機器が接続され、各電子機器は差動信号によって表されるデジタル信号を送受信する構成が一般的である。また、CANはシリアル通信のプロトコルであり、CANバスに接続された複数の電子機器のうち、一の電子機器のみが送信処理を行うことができ、他の電子機器は一の電子機器の送信処理が終了するまで待機する必要がある。このため、複数の電子機器が同時的に送信処理を行った場合(即ち、通信の衝突が発生した場合)には、各電子機器にて通信の調停処理(アービトレーション)が行われ、優先度の高い通信が実行される。
【0004】
通信の衝突に対する調停処理を行うために、各電子機器は、CANバスに送信信号の出力を行うと同時に、CANバスの信号レベルの検出を行う。各電子機器は、自らが出力した送信信号に対して、検出した信号の信号レベルがレセシブ(劣性値)からドミナント(優性値)に変化した場合、通信の衝突が発生したと判断し、送信処理を停止する。CANバス上の信号はレセシブよりドミナントが優位であるため、通信の衝突が発生してもドミナントを出力した電子機器は送信処理を継続して行うことができる。
【0005】
近年では、車輌に搭載する電子機器は増加する傾向にあるため、一つのCANバスに多くの電子機器を接続し、多くの電子機器間で相互に通信を行う必要が生じている。特にEV(Electric Vehicle、電気自動車)又はHEV(Hybrid Electric Vehicle、ハイブリッド電気自動車)は、従来の車輌と比較して、搭載される電子機器の数が多く、より多くの電子機器が通信を行う必要がある。
【0006】
しかし、CANバスに複数の電子機器を接続するためには、CANバスに複数の分岐部分を設ける必要があり、この分岐部分でのインピーダンス不整合などの要因によって信号反射などが繰り返され、信号の伝送路上にリンギングが発生する虞がある。よって、CANバスに多くの電子機器を接続するとリンギングなどが発生しやすくなり、通信障害の発生頻度が増加するという問題がある。また車輌のエンジンルームなど、多数の電子機器及び通信線等が集中して配設される箇所においては、特に高電圧の信号を扱う電子機器及び通信線の近傍にて、CANバスに外乱のノイズが重畳されて通信障害が発生するという問題がある。
【0007】
通信システムに許容される信号の遅延は、CANの通信回路による信号処理に要する遅延及びCANバス上での信号の伝送遅延のみでなく、上記のリンギングなどの影響を含めた遅延を考慮する必要がある。このため、リンギングなどが発生しやすい環境においては、通信システムが許容遅延の規定を満たすことができず、通信システムの通信速度を高速化することが困難化するという問題があった。
【0008】
そこで、リンギング及び外乱ノイズ等の影響を受けない光通信を、車輌内の電子機器が行う構成とすることが考えられる。例えば特許文献1においては、車輌に搭載された複数の電子機器を光通信線にてスター状に変換器に接続してスター型ネットワークを構成し、複数のスター型ネットワークの変換器間を電気通信線にて接続した構成の車輌用ネットワークシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ISO 11898−1:2003 Road vehicles--Controller area network(CAN)--Part1:Data link layer and physical signaling
【非特許文献2】ISO 11519−1:1994 Road vehicles--Low-speed serial data communication--Part1:General and definitions
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−219353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の車輌用ネットワークシステムは、車輌内のネットワークの一部を光通信化した構成であるが、一部のみならず、車輌に搭載された複数の電子機器間の通信を全て光通信化することも考えうる。この場合、車載の電子機器を光通信に対応させる必要があるが、電子機器及び通信システムの高コスト化を抑制するためには、従来の電子機器の機能を可能な限り変更することなく光通信に対応させることが望ましい。よって車載の各電子機器が有する従来の通信プロトコルの通信機能を利用できるように、通信システムを実現することが求められる。
【0012】
上述のように車載の通信システムにおける通信プロトコルにはCANが広く採用されている。CANのプロトコルでは特に、通信の衝突に対する調停処理を行なうために、各電子機器は通信線を常に監視する必要がある。各電子機器は自身が送信する場合も、通信線を送信されている信号と自身が送信した信号とを比較して一致する場合は送信処理を続行し、不一致の場合は送信処理を停止する。よってCANのプロトコルに対応した光通信システムを実現するためには、各電子機器間の光信号の送受信に係る構成を、自ら送信する信号も他からの信号をも全て電子機器が検出できるものとする必要がある。
【0013】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、電気信号で行なわれていた所定のプロトコルに基づく通信を光通信でも実現することができる光通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る光通信システムは、優性値及び劣性値の2値で表される光信号の送受信を行う複数の光通信装置と、複数の光入力部及び複数の光出力部を有し、一の光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力する光分配器と、光信号を送受信するための送信用及び受信用の一組の光通信線がそれぞれ接続される接続部を複数有し、所定の接続部にて受信した光信号を全ての他の接続部から送信し、他の接続部にて受信した光信号を前記所定の接続部から送信する複数の光信号中継装置とを備え、前記光分配器の一の光入力部及び一の光出力部に、光通信線を介して前記光信号中継装置の前記所定の接続部が接続されてあり、前記光信号中継装置の前記他の接続部に、光通信線を介して前記光通信装置が接続されてあり、前記所定の接続部は、受信した光信号を電気信号に変換して出力する受信部を有し、前記他の接続部の全ては、前記受信部から出力される電気信号を光信号に変換して出力する送信部、及び受信した光信号を電気信号に変換して出力する受信部を有し、前記光信号中継装置は、優性値に対応する信号レベルの電気信号が前記他の接続部のいずれかが有する前記受信部から出力された場合に、該電気信号を前記所定の接続部へ入力する信号合成部を有し、前記所定の接続部は、前記信号合成部から入力される電気信号を光信号に変換して送信する送信部を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光通信システムは、光信号の優性値に電気信号のハイレベル/ローレベルが対応付けてあり、前記信号合成部が、全ての前記他の接続部が有する前記受信部が出力する電気信号の論理和/論理積を、前記所定の接続部へ入力するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る光通信システムは、光信号の優性値に電気信号のハイレベルが対応付けてあり、前記他の接続部が有する受信部が、変換した電気信号を出力する端子をそれぞれ有し、前記信号合成部が、前記他の接続部が有する前記受信部の前記端子にアノードがそれぞれ接続され、カソードが共通のプルダウン抵抗にそれぞれ接続された複数のダイオードと、該ダイオードのカソードの電位及び基準電位を比較する比較器とを有し、該比較器の出力信号を前記所定の接続部へ入力するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る光通信システムは、前記光分配器が、2つの前記光入力部及び2つの前記光出力部を有する光カプラを一又は複数個用いて構成してあることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、車輌などに搭載された複数の電子機器が、ツイストペアケーブルを介した差動信号による通信ではなく、光ファイバなどの光通信線(送信用及び受信用の一組の光通信線)を介した光信号による通信を行う構成とする。この光通信システムでは、光分配器を中心に光信号中継装置を複数接続し、各光信号中継装置に複数の電子機器(光通信装置)を接続する。光分配器は、複数の光入力部及び複数の光出力部を備え、一の光入力部に入力された光信号を全ての光出力部から出力する。光信号中継装置は、光通信線を接続するための接続部を複数備えており、光分配器が接続される所定の接続部にて受信した光信号を他のすべての接続部から送信し、他の接続部にて受信した光信号を所定の接続部から送信する。これにより、光通信線と光分配器及び光信号中継装置とがCANバスの役割を果たすことができる。
【0019】
光信号中継装置は、受信した光信号を電気信号に変換して出力する受信部と、入力された電気信号を光信号に変換して送信する送信部とが接続部毎に設けられる。所定の接続部の受信部が出力した電気信号は、全ての他の接続部の送信部へ入力される。他の接続部の受信部が出力した電気信号は信号合成部へ与えられ、光信号のドミナントに対応する電気信号がいずれかの受信部から出力された場合に信号合成部がこの電気信号(即ちドミナント)を所定の接続部の送信部へ入力する。またドミナントに対応する電気信号がいずれの受信部からも出力されていない場合、信号合成部はレセシブを所定の接続部の送信部へ入力すればよい。
【0020】
上記の構成において、例えば光通信線における光の有/無をドミナント(優性値)/レセシブ(劣性値)の信号値に対応させることにより、各電子機器は差動信号による通信と同様にCANのプロトコルに従った光通信を実現できる。一の電子機器などが送信した光信号は、光信号中継装置を介して光分配器へ送信され、光分配器から全ての光信号中継装置へ分配され、各光信号中継装置により全ての電子機器へ分配される。また同一の光信号中継装置に接続された複数の電子機器が同時的に光信号の送信を行った場合には、ドミナントを優性とした光信号の合成が光信号中継装置にて行われ、合成後の光信号が光分配器へ送信され、全ての電子機器へ送信される。なお異なる光信号中継装置に接続された複数の電子機器が同時的に光信号の送信を行った場合には、光分配器にて光信号の合成を行う。これにより各電子機器は、自らが送信した光信号及び他の電子機器が送信した光信号を検出することができるため、CANのプロトコルに規定された通信の調停(アービトレーション)を行うことが可能である。
【0021】
このように、電子機器間の通信を光化することによって、リンギング及び外乱ノイズ等の影響なく通信を行うことができ、通信速度の高速化が可能となる。しかも、光通信化したとしても、光通信システムの各電子機器がCANのプロトコルによる通信を行うことができるため、CANの通信機能を有する従来の通信装置に対して、光通信線に接続するためのインタフェース回路などを搭載するのみで、光通信に対応した電子機器を構成することが可能であり、低コストで光通信システムを開発することができる。
【0022】
また、本発明においては、光信号のドミナントに電気信号のハイレベルを対応付ける。信号合成部は、複数の他の接続部の受信部が出力する電気信号のOR(論理和)の演算を行って、演算結果を所定の接続部の送信部へ入力する。OR演算は、例えば2入力1出力又は4入力1出力等のロジック素子のIC(Integrated Circuit)を用いて行うことができる。これにより信号合成部は、電気信号のハイレベルを優性とした信号の合成を行って、所定の接続部に接続された光分配器へ光信号の送信を行うことができる。なお光信号のドミナントに電気信号のローレベルを対応付けてもよく、この場合に信号合成部はAND(論理積)の演算を行って信号の合成を行う構成とすればよい。
【0023】
また、本発明においては、信号合成部のOR演算を実現するために、複数のダイオードと比較器とを用いた回路を構成する。詳しくは、光信号を変換した電気信号を出力する他の接続部の受信部の端子にそれぞれダイオードのアノードを接続し、複数のダイオードのカソードを共通のプルダウン抵抗に接続する。比較器は、複数のダイオードのカソードの電位と、予め設定された基準電位とが入力され、これらの電位の比較結果を所定の接続部の送信部へ入力する。他の接続部の受信部の出力が全てローレベルの場合、全てのダイオードは非導通状態であるため、プルダウン抵抗によって比較器へは接地電位が入力される。他の接続部の受信部のいずれかの出力がハイレベルの場合、対応するダイオードが導通状態となってプルダウン抵抗へ電流が流れるため、比較器への入力電位が上昇する。よって、プルダウン抵抗の抵抗値、ダイオードが導通状態の場合に流れる電流量、及び比較器へ入力する基準電位等を適切に設定することによって、比較器はいずれかの受信部の出力がハイレベルであることを検出することができる。この構成では、OR演算の対象となる入力信号の数に制限がないため、拡張性の高い光信号中継装置を実現できる。
【0024】
また、本発明においては、安価な2入力2出力の光カプラを一又は複数個用いて、光分配器を構成することにより、光通信システムのコストを低減することができる。例えば、2つの光通信機器を光分配器に接続する場合には1つの光カプラを用いればよく、4つの光通信機器を光分配器に接続する場合には4つの光カプラを用いればよく、8つの光通信機器を光分配器に接続する場合には12個の光カプラを用いればよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明による場合は、電子機器が送信する光信号を合成して光分配器へ送信すると共に、光分配器からの光信号を複数の電子機器へ分配する光信号中継装置を用いて光通信システムを構成することにより、光通信であっても衝突検知及びアービトレーション等を必須とするCANなどのプロトコルによる通信を実現させることができる。また、光分配器のみを用いて光通信システムを構成する場合と比較して、より多くの電子機器を接続することができ、大規模な光通信システムを容易に実現することができる。車載の通信システムの光通信化を実現することによって、電気通信で発生するリンギング及び外乱ノイズ等の影響による通信障害を防止することができるため、通信システムに必要とされる信号の許容遅延を容易に満たすことができ、通信速度の高速化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る光通信システムの一構成例を示す模式図である。
【図2】光通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】光分配器の構成例を示す模式図である。
【図4】光信号中継装置の構成を示すブロック図である。
【図5】光通信システムの通信手順を説明するための模式図である。
【図6】光通信システムの通信手順を説明するための模式図である。
【図7】本発明に係る光通信システムの他の構成例を示す模式図である。
【図8】光分配器の他の構成例を示す模式図である。
【図9】実施の形態2の光信号中継装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る光通信システムの一構成例を示す模式図である。図において破線で示す1は車輌であり、本実施の形態の光通信システムは、車輌1に搭載された複数の光通信装置30を、光通信線5、光分配器10及び光信号中継装置20を介して接続した構成である。なお図1においては、光通信装置30を円形のシンボルで示し、光分配器10を八角形のシンボルで示し、光信号中継装置20を正方形のシンボルで示してある。また光通信線5は、送信用及び受信用の2本の光ファイバを一組としたものであり、図1において二重線で示してある。
【0028】
本実施の形態に係る光通信システムは、12個の光通信装置30と、1つの光分配器10と、4つの光信号中継装置20とを備えて構成されている。光分配器10には、4つ(4組)の光通信線5を介して4つの光信号中継装置20が接続され、各光信号中継装置20には、3つの光通信線5を介して3つの光通信装置30がそれぞれ接続されている。
【0029】
光分配器10は、光通信線5を介して接続されたいずれかの光信号中継装置20から入力される光信号を、全ての光信号中継装置20へ出力する。また光分配器10は、複数の光信号中継装置20から同時的に光信号が入力された場合、複数の光信号を合成して出力する。
【0030】
各光信号中継装置20は、光通信線5を介して接続されたいずれかの光通信装置30から受信した光信号を光分配器10へ送信すると共に、光分配器10から受信した光信号を接続された3つの光通信装置30へ送信する。また光信号中継装置20は、複数の光通信装置30から同時的に光信号が入力された場合、複数の光信号を合成して送信する。
【0031】
よって、一の光通信装置30が送信した光信号は、まず光信号中継装置20にて受信され、光信号中継装置20により光分配器10へ送信される。光分配器10にて受信されたこの光信号は、光分配器10により全ての光信号中継装置20へ送信され、各光通信中継装置20により全ての光通信装置30へ送信される。よって光信号の送信元の光通信装置30は、自らが送信した光信号を受信することができるため、光信号の信号値に変化が生じたか否かを判定することによって、CANのプロトコルに応じたアービトレーションを行うことができる。
【0032】
図2は、光通信装置30の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る光通信装置30は、車輌1に搭載されたECU(Electronic Control Unit)などの電子機器に光
通信の機能を搭載したものである。光通信装置30は、CPU(Central Processing Unit)31、CANコントローラ32、コネクタ部33及び光送受信モジュール40等を備
えて構成されている。光通信装置30のCPU31は、予めROM(Read Only Memory)などに記憶されたプログラムを実行することによって、装置内の各部の動作制御及び制御に必要な各種の演算等の処理を行うものである。またCPU31は、これらの処理過程において他の光通信装置30との情報交換が必要と判断した場合には、CANコントローラ32へ通信指示を与えることによって、他の光通信装置30との通信を行うことができる。CPU31は、他の光通信装置30へデータを送信する場合、このデータをCANコントローラ32へ与える。またCANコントローラ32は、他の光通信装置30からのデータを受信した場合、このデータをCPU31へ与える。
【0033】
CANコントローラ32は、CPU31から送信するデータが与えられた場合、このデータをCANプロトコルのデータ形式に従った送信用データに変換し、光送受信モジュール40の送信部41へ与える。CANプロトコルにて送受信されるデータは、アービトレーションフィールド、コントロールフィールド、データフィールド、CRC(Cyclic Redundancy Check)フィールド及びACK(ACKnowledgement)フィールド等の複数のフィールドで構成されており、CPU31から与えられたデータはデータフィールドに格納される。またアービトレーションフィールドは通信の衝突を調停するためのデータであり、送信データの優先度に応じた値が格納され、データ"0(ドミナント)"の方がデータ"1(レセシブ)"より優先度が高い。
【0034】
またCANコントローラ32は、光送受信モジュール40の受信部42にて受信されたデータが与えられている。この受信データはCANプロトコルのデータ形式であるため、CANコントローラ32は受信データのデータフィールドから必要なデータを抽出してCPU31へ与える。これによりCPU31は、他の光通信装置30からの受信データに応じた処理を行うことができる。
【0035】
光送受信モジュール40は、送信部41及び受信部42を有しており、CANコントローラ32との間で授受する電気信号と、他の光通信装置30との間で授受する光信号との相互変換を行うものである。光送受信モジュール40の送信部41は、例えば発光ダイオードなどの光源及びこの光源の点灯/消灯を行う駆動回路等を有して構成され、CANコントローラ32から電気信号として与えられた送信データを光信号に変換し、この光信号を送信用の光ファイバ5aへ出力する。
【0036】
光送受信モジュール40の受信部42は、例えばフォトダイオードなどの受光素子を有して構成され、受信用の光ファイバ5bから出射される光を検出する。受信部42は、受光素子にて検出した光に応じた電気信号を出力することができ、これにより他の光通信装置30が送信した光信号を受信して電気信号に変換し、CANコントローラ32へ与えることができる。
【0037】
コネクタ部33は、送信用の光ファイバ5a及び受信用の光ファイバ5bを一組とした光通信線5を、嵌合などの方法によって光通信装置30に接続するためのものである。コネクタ部33に光通信線5が接続された場合、送信用の光ファイバ5aの端部が光送受信モジュール40の送信部41が有する発光素子に対向し、受信用の光ファイバ5bの端部が光送受信モジュール40の受信部42が有する受光素子に対向する。これにより光送受信モジュール40は発光素子及び受光素子によって光信号の送受信を行うことができる。
【0038】
なお本実施の形態においては、送信部41の発光ダイオードが発光して光通信線5内に光信号が導通している状態をCANプロトコルのドミナント(優性値)に対応付け、光通信線5内に光信号が導通していない状態をレセシブ(劣性値)に対応付けて、各光通信装置30がCANプロトコルに従った光通信を行うものとする。
【0039】
図3は、光分配器10の構成例を示す模式図である。図3には、4つの光カプラ10a,10b,10c,10dを用いて、4入力4出力の光分配器10を構成する例が示してある。光カプラ10a,10b,10c,10dは、それぞれ光ファイバ型(導波路型ともいう)、融着型等の光カプラであり、一側に2つの光入力部11、他側に2つの光出力部12が設けられ、光入力部11から入力された光を2分配して2つの光出力部12へ出力する。光分配器10は、光カプラ10a、10bを前段(入力側)とし、4つの光通信器が出力する4つの光信号を光カプラ10a、10bの光入力部11へそれぞれ入力することができる。また、2つの光カプラ10c、10dを後段(出力側)とし、前段の光カプラ10aの2つの光出力部12が後段の2つの光カプラ10c、10dそれぞれの光入力部11に接続され、前段の光カプラ10bの2つの光出力部12が後段の2つの光カプラ10c、10dそれぞれの光入力部11に接続されている。これにより、前段の光カプラ10a、10bの光入力部11のいずれかに入力された光信号は、後段の光カプラ10c、10dの全ての光出力部12から出力される。また前段の光カプラ10a、10bに複数の光信号が入力された場合には、これらの光信号が合成されて、後段の光カプラ10c、10dの全ての光出力部12から出力される。
【0040】
光分配器10は、前段の光カプラ10a、10bによる4つの光入力部11、及び後段の光カプラ10c、10dによる4つの光出力部12を有しており、光入力部及び光出力部の組を4組形成することができるため、4組の光通信線5を介して、光信号中継装置20又は光通信装置30を4つ接続することができる。上記のように、光分配器10は、接続された他の装置(光信号中継装置20又は光通信装置30)から入力された光信号を、接続された全ての他の装置へ出力することができる。また光分配器10は、複数の他の装置から同時的に光信号が入力された場合に、光信号を合成して、全ての他の装置へ出力することができる。
【0041】
図4は、光信号中継装置20の構成を示すブロック図である。光信号中継装置20は、光分配器10との接続を行うための1つのコネクタ部21と、光通信装置30との接続を行うための3つのコネクタ部22と、4つの光送受信モジュール50と、1つのOR素子25とを備えて構成されている。光信号中継装置20のコネクタ部21及び22は、光通信装置30のコネクタ部33と同様に、送信用の光ファイバ5a及び受信用の光ファイバ5bを一組とした光通信線5を、嵌合などの方法によってそれぞれ接続するためのものである。本実施の形態の光信号中継装置20は、1つのコネクタ部21に1組の光通信線5を介して光分配器10を接続し、3つのコネクタ部22に3組の光通信線5を介して3つの光通信装置30を接続する。このため光信号中継装置20では、1つのコネクタ部21と3つのコネクタ部22とを外観などで区別できる構成であることが望ましい。
【0042】
光信号中継装置20の各光送受信モジュール50は、送信部51及び受信部52をそれぞれ有し、光信号と電気信号との相互変換をそれぞれ行うものであり、1つのコネクタ部21及び3つのコネクタ部22にそれぞれ一対一に対応付けて設けられており、対応するコネクタ部21又は22に接続された光通信線5との間で光信号の送受信を行って、送受信に係る光信号と電気信号との相互変換を行う。
【0043】
各光送受信モジュール50は、電気信号の入出力を行うための入力端子51a及び出力端子52aをそれぞれ有している。ただし光信号中継装置20では、光信号のドミナントと電気信号のハイレベルとが対応付けられており、光送受信モジュール50の送信部51は、入力端子51aにハイレベルの電気信号が入力された場合にドミナントの光信号を送信し、入力端子51aにローレベルの電気信号が入力された場合にレセシブの光信号を送信する。同様に光送受信モジュール50の受信部52は、ドミナントの光信号を受信した場合にハイレベルの電気信号を出力端子52aから出力し、レセシブの光信号を受信した場合にローレベルの電気信号を出力端子52aから出力する。
【0044】
3つのコネクタ部22に対応付けられた3つの光送受信モジュール50の出力端子52aは、4入力1出力のOR素子25の入力にそれぞれ接続されている。OR素子25の残りの1つの入力は、接地電位に接続されている。またOR素子25の出力は、コネクタ部21に対応付けられた1つの光送受信モジュール50の入力端子51aに接続されている。OR素子25は、4つの入力のいずれかにハイレベルの電気信号が入力された場合にハイレベルの電気信号を出力し、全ての入力にローレベルの電気信号が入力された場合にローレベルの電気信号を出力するロジックゲート回路である。コネクタ部21に対応付けられた光送受信モジュール50の出力端子52aは、コネクタ部22に対応付けられた3つの光送受信モジュール50の入力端子51aに接続されている。
【0045】
これにより光信号中継装置20は、コネクタ部22に接続された光通信装置30から受信した光信号を、コネクタ部21に接続された光分配器10へ送信することができると共に、コネクタ部21に接続された光分配器10から受信した光信号を、コネクタ部22に接続された3つの光通信装置30の全てへ送信することができる。また光信号中継装置20は、コネクタ部22に接続された複数の光通信装置30から同時的に光信号を受信した場合に、ドミナントに対応する電気信号を優性としてOR素子25にて信号合成を行って、コネクタ部21に接続された光分配器10へ送信することができる。
【0046】
図5及び図6は、光通信システムの通信手順を説明するための模式図である。なお本図においては、図1と同様のシンボルを用いて光分配器10、光信号中継装置20及び光通信装置30を示すと共に、4つの光信号中継装置20を20a〜20dの符号を付して区別し、12個の光通信装置30を30a〜30lの符号を付して区別して示す。また光通信システムにて行われる光通信を矢印で示すと共に、光通信の順序を矢印の種別で示し、実線の矢印、一点鎖線の矢印、二点鎖線の矢印、破線の矢印の順で光通信が行われるものとする。
【0047】
図5に示すように、例えば光通信装置30bが送信した光信号は光信号中継装置20aにて受信され(実線の矢印参照)、光信号中継装置20aは受信した光信号を光分配器10へ送信する(一点鎖線の矢印参照)。光信号中継装置20aからの光信号が入力された光分配器10は、入力された光信号を4つの光信号中継装置20a〜20dへ出力する(二点鎖線の矢印参照)。光分配器10からの光信号を受信した4つの光信号中継装置20a〜20dは、受信した光信号をそれぞれ3つの光通信装置30a〜30c、30d〜30f、30g〜30i、30j〜30lへ送信する(破線の矢印参照)。これにより、最初に光通信装置30bが送信した光信号は、光分配器10及び光信号中継装置20a〜20dを介して、全ての光通信装置30a〜30lにて受信される。
【0048】
また図示は省略するが、例えば光通信装置30aと光通信装置30bとが同時的に光信号の送信を行った場合、これらからの光信号を受信した光信号中継装置20aは、2つの光信号を合成して光分配器10へ送信する。その後に行われる通信は、図5の二点鎖線の矢印及び破線の矢印にて示すものと同じである。
【0049】
図6に示すように、例えば光通信装置30bと光通信装置30hとが同時的に光信号の送信を行った場合、光通信装置30bが送信した光信号は光信号中継装置20aにて受信され、光通信装置30hが送信した光信号は光信号中継装置20cにて受信される(実線の矢印参照)。光信号中継装置20aは受信した光信号を光分配器10へ送信すると共に、光信号中継装置20cは受信した光信号を光分配器10へ送信する(一点鎖線の矢印参照)。これにより光分配器10では2つの光信号中継装置20a及び20cからの光信号が同時的に入力される。
【0050】
2つの光信号が同時的に入力された光分配器10は、2つの光信号を合成して4つの光信号中継装置20a〜20dへ出力する(二点鎖線の矢印参照)。光分配器10からの光信号を受信した4つの光信号中継装置20a〜20dは、受信した光信号をそれぞれ3つの光通信装置30a〜30c、30d〜30f、30g〜30i、30j〜30lへ送信する(破線の矢印参照)。これにより、最初に光通信装置30b及び30hが送信した光信号は、光分配器10にて合成され、全ての光通信装置30a〜30lにて受信される。
【0051】
以上の構成の光通信システムにおいては、車輌1に搭載されたECUなどの電子機器に光通信機能を搭載して光通信装置30とし、複数の光通信装置30が光通信線5、光分配器10及び光信号中継装置20を介して光通信する構成とすることにより、電気信号の通信にて生じるリンギング及び外乱ノイズ等の影響なく複数の光通信装置30が通信を行うことができ、車輌1内における装置間の通信を高速化することができる。
【0052】
また、光分配器10は、いずれかの光入力部11に入力された光信号を、全ての光出力部12から出力する構成とし、光信号中継装置20は、いずれかのコネクタ部22にて受信した光信号を所定のコネクタ部21から送信すると共に、所定のコネクタ部21にて受信した光信号を他の全てのコネクタ部22から送信する構成とした。この構成により、各光通信装置30は、自らが送信した光信号と他の光通信装置30が送信した光信号とを受信することができる。また、光分配器10及び光信号中継装置20は、複数の光通信装置30から送信された複数の光信号を同時的に受信した場合に、複数の光信号を合成して送信する構成とした。これらの構成により、複数の光通信装置30は、光通信線5、光分配器10及び光信号中継装置20をCANバスとして、CANのプロトコルに従ったアービトレーションを行うことができ、CANのプロトコルに従った光通信を実現することができる。
【0053】
光分配器10は、光入力部11毎に入力された光信号は全て光出力部12へ分配される。光信号中継装置20は、光分配器10が接続されるコネクタ部21と光通信装置30が接続される複数のコネクタ部22とを有し、コネクタ部21、22毎に光送受信モジュール50が設けられ、コネクタ部22に対応付けて設けられた光送受信モジュール50が出力する信号がOR素子25に入力され、OR素子25の出力信号がコネクタ部21に対応付けて設けられた光送受信モジュール50へ与えられる。また光信号中継装置20のコネクタ部21に対応付けて設けられた光送受信モジュール50が出力する信号が、コネクタ部22に対応付けて設けられた全ての光送受信モジュール50へ与えられる。これらの構成により、光信号のドミナントに電気信号のハイレベルを対応付けることで、光分配器10及び光信号中継装置20は、複数の光通信装置30が同時的に送信した信号を受信して合成し、合成した信号を送信することができる。この光分配器10及び光信号中継装置20を適宜に配置して光通信システムを構成することによって、多数の光通信装置30を光通信によるCANバスに接続してCANのプロトコルに従った光通信を行うことができる。
【0054】
図7は、本発明に係る光通信システムの他の構成例を示す模式図である。図示の光通信システムでは、光分配器10に2つの光信号中継装置20a、20c及び2つの光通信装置30a、30bが接続されている。光信号中継装置20aには、更に、別の光信号中継装置20b及び2つの光通信装置30c、30dが接続されている。光信号中継装置20bには、更に、3つの光通信装置30e〜30gが接続されている。また、光信号中継装置20cには、更に別の光信号中継装置20d及び2つの光通信装置30h、30iが接続されている。光信号中継装置20dには、更に、3つの光通信装置30j〜30lが接続されている。
【0055】
このように、光通信システムは1つの光分配器10と、複数の光信号中継装置20とを適宜に組み合わせることによって、様々な構成とすることが可能である。ただし光通信システムを構成するに当たっては、光分配器10を中心とし、光分配器10に複数の光信号中継装置20(図7では光信号中継装置20a、20c)を接続し、この光信号中継装置20に複数の光通信装置30を接続するか、若しくは、更に別の光信号中継装置20(図7では光信号中継装置20b、20d)を接続することが好ましい。又は、光分配器10に複数の光通信装置30(図7では光通信装置30a、30b)を接続する構成としてもよい。
【0056】
このとき、図1に示すように、光通信装置30と光分配器10との間に介在する光信号中継装置20の数が、光通信システムに含まれる全ての光通信装置30について同数となるように光通信システムを構成することが更に好ましい。これにより全ての光通信装置30について、光信号の送受信に係る通信遅延などを均等化することができる。
【0057】
なお、本実施の形態においては、光分配器10は4入力4出力の構成としたが、これに限るものではなく、2入力2出力、8入力8出力以上の光分配器であってもよい。安価な2入力2出力の光カプラを一又は複数個用いて、光分配器10を構成することにより、光通信システムのコストを低減することができる。例えば、2つの光通信機器を光分配器に接続する場合には1つの光カプラを用いればよく、4つの光通信機器を光分配器に接続する場合には4つの光カプラを用いればよく、8つの光通信機器を光分配器に接続する場合には12個の光カプラを用いればよい。図8は、光分配器10の他の構成例を示す模式図である。図8に示す光分配器10は、12個の光カプラを用いた8入力8出力の光分配器である。この光分配器10は、前段に4つの光カプラ10a〜10dを、中段に4つの光カプラ10e〜10hを、後段に4つの光カプラ10i〜10lを配し、例えば、光カプラ10a,10bから出力される光信号をそれぞれ中段の光カプラ10e,10fに入力する等、各光カプラ間を接続したものである。
【0058】
また、光信号中継装置20は、1つのコネクタ部21及び3つのコネクタ部22を備える構成としたが、これに限るものではなく、2つ以下又は4つ以上のコネクタ部22を備える構成としてもよい。また光信号中継装置20内においては、光信号のドミナントを電気信号のハイレベルに対応付ける構成としたが、これに限るものではなく、光信号のドミナントを電気信号のローレベルに対応付ける構成としてもよく、この場合には論理和演算を行うOR素子25に代えて論理積演算を行うAND素子を用いればよい。また、図1に示した光通信システムの構成、即ち光通信装置30の数及び配置等は一例であって、これに限るものではない。
【0059】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る光通信システムは、光信号中継装置20の内部回路構成が実施の形態1のものとは異なる構成である。図9は、実施の形態2の光信号中継装置220の構成を示すブロック図である。
【0060】
実施の形態2に係る光通信システムの光信号中継装置220は、実施の形態1の光信号中継装置20のOR素子25に代えて、論理和演算回路225を備えている。論理和演算回路225は、3つのダイオードD1〜D3と、抵抗Rと、ツェナーダイオードZDと、コンパレータ226とを備えて構成されている。3つのダイオードD1〜D3は、アノードがコネクタ部22に対応する3つの光送受信モジュール50の出力端子52aにそれぞれ接続され、カソードが抵抗Rの一端及びコンパレータ226の一方の入力端子に接続されている。抵抗Rの他端は接地電位に接続されており、抵抗Rはコンパレータ226の入力を接地電位にプルダウンするためのプルダウン抵抗である。
【0061】
コンパレータ226は、図示しない基準電圧回路などが出力する基準電位が他方の入力端子に入力されており、一方の入力端子の入力電位が基準電位より高い場合に、ハイレベルの信号を出力する。またコンパレータ226の一方の入力端子はツェナーダイオードZDを介して接地電位に接続されている。コンパレータ226の出力端子は、コネクタ部21に対応する光送受信モジュール50の入力端子51aに接続されている。またコネクタ部21に対応する光送受信モジュール50の出力端子52aは、コネクタ部22に対応する3つの光送受信モジュール50の入力端子51aに接続されている。
【0062】
コネクタ部22に対応するいずれかの光送受信モジュール50の出力がハイレベルの場合、対応するダイオードD1〜D3が導通し、抵抗Rを介して接地電位へ電流が流れる。このためコンパレータ226の一方の入力端子の電位は、抵抗Rの抵抗値と電流量とに応じた電位に上昇し、この電位が基準電位を超えた時点でコンパレータ226はハイレベルを出力し、この信号がコネクタ部21に対応する光送受信モジュール50の入力端子51aに入力される。よって論理和演算回路215は、抵抗Rの抵抗値と、ダイオードD1〜D3が導通した場合に流れる電流量とに応じて適切に基準電位を設定することによって、コネクタ部22に対応するいずれかの光送受信モジュール50がハイレベルを出力した場合に、コネクタ部21に対応する光送受信モジュール50へハイレベルの信号を与えることができる。
【0063】
また、コネクタ部21に対応する光送受信モジュール50にて受信された光信号は、電気信号に変換されてコネクタ部22に対応する全ての光送受信モジュール50へ与えられる。
【0064】
また例えばコネクタ部22に対応する全ての光送受信モジュール50の出力がハイレベルとなり、全てのダイオードD1〜D3が導通した場合に、抵抗Rを流れる電流量は、1つのダイオードD1〜D3が導通した場合と比較して約3倍となるため、コンパレータ226の入力電位も約3倍となる。この場合に入力電位の過度の上昇によってコンパレータ226が破壊されることを防止するためにツェナーダイオードZDが設けられており、コンパレータ226の入力電位の上昇はツェナーダイオードZDの降状電圧(ツェナー電圧)に制限されている。なお、光送受信モジュール50の出力が電流出力でなく電圧出力である場合には、電圧が加算されることがないため、ツェナーダイオードZDを備えない構成であってもよい。
【0065】
以上の構成の実施の形態2に係る光通信システムは、実施の形態1に係る光通信システムと同様に、リンギング及び外乱ノイズ等の影響なく複数の光通信装置30が通信を行うことができ、車輌1内における装置間の通信を高速化することができる。また光通信装置30は、光通信線5、光分配器10及び光信号中継装置220をCANバスとして、CANのプロトコルに従ったアービトレーションを行うことができ、CANのプロトコルに従った光通信を実現することができる。
【0066】
実施の形態2の光信号中継装置220が備える論理和演算回路225は、コンパレータ226の入力端子に接続するダイオードを追加することで、入力信号数を増加させることができる。このため、コネクタ部22及び光送受信モジュール50を追加して光信号中継装置220に接続可能な装置の数を増加させることが容易であり、光信号中継装置220の拡張性を向上することができる。
【0067】
なお本実施の形態においては、光信号中継装置220が論理和演算回路225を備えて複数の光送受信モジュール50が出力する信号の論理和演算を行う構成としたが、論理和演算回路225の回路構成は、図9に示すものに限らない。例えば複数のトランジスタをプルアップ又はプルダウンの抵抗に接続したいわゆるワイヤードORなどの論理和演算回路を用いる構成であってもよく、更に異なる回路構成の論理和演算回路を用いる構成であってもよい。また、光信号中継装置220が有するコンパレータ226は、単純な論理バッファ又はインバータ等であってもよい。
【0068】
実施の形態2に係る光通信システムのその他の構成は、実施の形態1に係る光通信システムの構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0069】
1 車輌
5 光通信線(一組の光通信線)
5a 送信用の光ファイバ(送信用の光通信線)
5b 受信用の光ファイバ(受信用の光通信線)
10 光分配器
20 光信号中継装置
21 コネクタ部(接続部)
22 コネクタ部(接続部)
25 OR素子
30 光通信装置
31 CPU
32 CANコントローラ
33 コネクタ部
40 光送受信モジュール
41 送信部
42 受信部
50 光送受信モジュール
51 送信部
51a 入力端子
52 受信部
52a 出力端子
220 光信号中継装置
225 論理和演算回路
226 コンパレータ(比較器)
D1〜D3 ダイオード
R 抵抗
ZD ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
優性値及び劣性値の2値で表される光信号の送受信を行う複数の光通信装置と、
複数の光入力部及び複数の光出力部を有し、一の光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力する光分配器と、
光信号を送受信するための送信用及び受信用の一組の光通信線がそれぞれ接続される接続部を複数有し、所定の接続部にて受信した光信号を全ての他の接続部から送信し、他の接続部にて受信した光信号を前記所定の接続部から送信する複数の光信号中継装置と
を備え、
前記光分配器の一の光入力部及び一の光出力部に、光通信線を介して前記光信号中継装置の前記所定の接続部が接続されてあり、
前記光信号中継装置の前記他の接続部に、光通信線を介して前記光通信装置が接続されてあり、
前記所定の接続部は、受信した光信号を電気信号に変換して出力する受信部を有し、
前記他の接続部の全ては、前記受信部から出力される電気信号を光信号に変換して出力する送信部、及び受信した光信号を電気信号に変換して出力する受信部を有し、
前記光信号中継装置は、優性値に対応する信号レベルの電気信号が前記他の接続部のいずれかが有する前記受信部から出力された場合に、該電気信号を前記所定の接続部へ入力する信号合成部を有し、
前記所定の接続部は、前記信号合成部から入力される電気信号を光信号に変換して送信する送信部を有すること
を特徴とする光通信システム。
【請求項2】
光信号の優性値に電気信号のハイレベル/ローレベルが対応付けてあり、
前記信号合成部は、全ての前記他の接続部が有する前記受信部が出力する電気信号の論理和/論理積を、前記所定の接続部へ入力するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
光信号の優性値に電気信号のハイレベルが対応付けてあり、
前記他の接続部が有する受信部は、変換した電気信号を出力する端子をそれぞれ有し、
前記信号合成部は、
前記他の接続部が有する前記受信部の前記端子にアノードがそれぞれ接続され、カソードが共通のプルダウン抵抗にそれぞれ接続された複数のダイオードと、
該ダイオードのカソードの電位及び基準電位を比較する比較器と
を有し、
該比較器の出力信号を前記所定の接続部へ入力するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記光分配器は、2つの前記光入力部及び2つの前記光出力部を有する光カプラを一又は複数個用いて構成してあること
を特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−46251(P2013−46251A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182950(P2011−182950)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】