説明

光配向膜の製造方法、位相差フィルムの製造方法、光配向膜製造システム、光配向膜及び位相差フィルム

【課題】安価で簡便な装置や非平行光を用いて、連続搬送する長尺状の樹脂基材を用いても容易に、かつ、搬送方向に囚われずに高精度なパターン状の露光が可能な光配向膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】(i)長尺状の第一の透明樹脂基材の一面側に配向膜を備える被照射基材及び長尺状の第二の透明樹脂基材の一面側に所望の紫外線遮蔽パターンを有する長尺状のフォトマスクを準備する工程、(ii)被照射基材を連続で供給する工程、(iii)フォトマスクを連続で供給する工程、(iv)被照射基材の配向膜側の面に、フォトマスクを貼り合わせて積層体とする工程、(v)積層体を搬送しながら、フォトマスクを介して配向膜に一定の偏光方向の直線偏光を照射し、配向膜をパターン露光する工程、(vi)積層体からフォトマスクを剥離する工程、を含むことを特徴とする、光配向膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向膜の製造方法、位相差フィルムの製造方法、光配向膜の製造システム並びに当該製造方法により得られる光配向膜及び位相差フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等に用いられている位相差フィルムは、基材上に形成された配向膜に偏光紫外線を照射して配向膜の配向処理を行い、その配向処理された配向膜上に液晶を塗布、配向させる(位相差層を形成する)ことで作製することができる。
このような配向膜の配向処理方法として、偏光紫外線を照射してポリビニルシンナメート配向膜の架橋結合の生成する方向を制御する方法(例えば、非特許文献1)、紫外線照射によりポリイミド配向膜の分解反応に異方性を持たせる方法(例えば、非特許文献2)等の光二量化反応、光分解反応又は光異性化反応等による方法が報告されている。
【0003】
近年、立体的(3次元的)に画像や映像を表現、観賞する技術が研究されている。
立体映像の表示方式の一つに、偏光メガネを用いた方式が挙げられる(例えば、特許文献1)。
液晶表示装置を用いた偏光メガネ方式の一例では、図11に示すように、液晶表示装置のパネル(表示面)250の偶数ラインからは立体視用の右目用映像(光)が発せられ、奇数ラインからは立体視用の左目用映像(光)が発せられ、その立体視用の光のうち、第一の偏光板260(図11では透過軸は縦方向)の偏光軸(透過軸)270と同じ縦方向の直線偏光のみが第一の偏光板260を透過する。
そしてその透過した直線偏光のうち右目用の光が、立体視用の右目用映像を表示する表示面の偶数ラインに対応して、第一の偏光板260の偏光軸270に対して遅相軸280を45°傾けて配置した第一のλ/4板290を透過すると、円偏光(又は楕円偏光)300に変換される。同様に、直線偏光のうち左目用の光が、立体視用の左目用映像を表示する表示面の奇数ラインに対応して、第一の偏光板260の偏光軸270に対して遅相軸281を−45°傾けて配置した第一のλ/4板291を透過すると、円偏光(又は楕円偏光)301に変換される。このとき、第一のλ/4板の遅相軸の傾き(45°又は−45°)に応じて、直線偏光は右回り又は左回りの円偏光(楕円偏光)に変換される。
そして、この円偏光(楕円偏光)300を第一のλ/4板290の遅相軸280と直交する遅相軸310を有する第二のλ/4板320を透過させ、円偏光(楕円偏光)300を偏光方向が縦方向の直線偏光に変換する。円偏光(楕円偏光)301も第二のλ/4板321を用いて同様に偏光方向が縦方向の直線偏光に変換する。
このとき、第二のλ/4板の遅相軸の傾きと円偏光(楕円偏光)の右回り又は左回りとの組み合わせによって、偏光方向が縦方向の直線偏光又は偏光方向が横方向の直線偏光に変換される。すなわち、第一及び第二のλ/4板の遅相軸の制御によって、右目用の光と左目用の光から任意の光のみを特定の偏光方向に変換することができる。
そして、偏光軸271が縦方向の第二の偏光板261で特定の偏光方向(縦方向)に変換した右目用映像と左目用映像とを分離して取り出す。すなわち、第一のλ/4板290、291で右目用映像と左目用映像を分離し、第二のλ/4板320、321と第二の偏光板261の組み合わせからなる偏光メガネ330の右目部分と左目部分で分離された右目用映像と左目用映像をそれぞれ受け取り、立体視を可能としている。
なお、図11では、遅相軸280、281の傾きが偶数ライン又は奇数ラインに応じて異なる第一のλ/4板290、291を模式的に分離して図示したが、通常は1枚のλ/4板において遅相軸が異なる部分がパターン状に配置されたλ/4板(位相差フィルム)が必要となる。上述したように位相差フィルムは、配向膜上に位相差層を形成して作製されるため、立体視用のλ/4板では1枚の配向膜において配向方向が異なる部分がパターン状に配置された配向膜が必要となる。
【0004】
配向膜の作製において、基板がガラス基板のような枚葉状の基板の場合、特許文献1の図12のようにフォトマスクを遮光対象の配向膜から一定間隔(プロキシミティギャップ、以下、単に「ギャップ」ということがある。)をあけて保持し、そしてフォトマスクを介して配向膜をパターン状に偏光露光して配向処理を行った後に、フォトマスクを除去し、そのパターン露光とは異なる偏光方向(偏光軸)を有する偏光紫外線を配向膜に全面露光することで、配向膜において配向方向が異なる部分がパターン状に配置された配向膜を作製することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−299337号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】(M.Schadt et al.:Jpn.J.Appl.Phys.31,2155−2164(1992))
【非特許文献2】(M.Nishikawa et al.:Liquid Crystals 26,575−580(1990))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のようにフォトマスクと配向膜との間にギャップを設けて露光を行う場合、ギャップの設定や面内での位置合わせ(以下、「アライメント」ともいう。)に高い精度が要求されるという問題があった。
特にギャップのずれの問題は、長尺状の樹脂基材を連続搬送しながら、フォトマスクを介してパターン状に露光する場合は、長尺状の樹脂基材が振動するため、ギャップを一定に保つことができず、より深刻となる。
【0008】
また、特許文献1の図12のように一定のギャップを設定し、フォトマスクを介して露光する場合、照射する光が全て平行に進み、かつ、露光対象面に対して垂直な光(以下、単に「平行光」という。)でなければ、フォトマスクで遮光される部分に光が回り込み、パターンがぼやけてしまう。そのため、高出力ではあるが平行光が得られない長軸状の光源を用いることができないという問題もあった。
【0009】
また、上述した長尺状の樹脂基材を連続搬送しながら一定のギャップでフォトマスクを保持して露光する場合、当該樹脂基材の搬送方向に平行なストライプパターンでしかパターン状に露光できないという問題もあった。
【0010】
さらに、一般的なフォトマスクは、ガラス基板又は合成石英上に遮光部を形成したものを用いるため、配向膜を形成した長尺状の樹脂基材と同じ幅、特に1500mm以上の幅のフォトマスクは高価で、ギャップを一定に保つ保持機構も含めると非常に高価で大掛かりな装置になってしまうという問題があった。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、安価で簡便な装置や非平行光を用いて、連続搬送する長尺状の樹脂基材を用いても容易に、かつ、搬送方向に囚われずに高精度なパターン状の露光が可能な光配向膜の製造方法を提供することを第一の目的とする。
本発明の第二の目的は、上記光配向膜の製造方法を利用した位相差フィルムの製造方法を提供することである。
本発明の第三の目的は、上記光配向膜の製造方法により得られる光配向膜を提供することである。
本発明の第四の目的は、上記位相差フィルムの製造方法により得られる位相差フィルムを提供することである。
本発明の第五の目的は、上記光配向膜を製造可能な光配向膜製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が鋭意検討した結果、フォトマスクの基材に安価で可撓性を有する透明樹脂基材を用いることで、フォトマスク自体の価格を抑えることができ、透明樹脂基材が可撓性を有することで配向膜上に貼り合わせて密着させることが可能となることを見出した。そして、配向膜とフォトマスクとを密着させることによってギャップ自体がなくなり、ギャップを一定に保つ必要もなく保持機構を省略できることを見出した。配向膜とフォトマスクを密着させるため、アライメントも簡便になることを見出した。また、ギャップがないため、非平行光を用いても露光パターンがぼやけてしまう問題もないこと、さらにはフォトマスクと長尺状の樹脂基材上に形成された配向膜が一緒に(相対的に同位置で)搬送されるため、長尺状の樹脂基材の搬送方向に平行なストライプパターン以外でもパターン状に露光できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る光配向膜の製造方法は、(i)長尺状の第一の透明樹脂基材の一面側に配向膜を備える被照射基材及び長尺状の第二の透明樹脂基材の一面側に所望の紫外線遮蔽パターンを有する長尺状のフォトマスクを準備する工程、(ii)前記被照射基材を連続で供給する工程、(iii)前記フォトマスクを連続で供給する工程、(iv)前記(ii)工程で供給された被照射基材の配向膜側の面に、前記(iii)工程で供給されたフォトマスクを貼り合わせて積層体とする工程、(v)前記(iv)工程で得られた積層体を当該積層体の長手方向に搬送しながら、前記フォトマスクを介して前記配向膜に一定の偏光方向の直線偏光を照射し、当該配向膜をパターン露光する工程、(vi)前記(v)工程で直線偏光を照射した積層体からフォトマスクを剥離する工程、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る光配向膜の製造方法の好適な実施形態では、さらに、(vii)工程として、前記(vi)工程で得られた光配向膜のパターン露光された配向膜に、当該配向膜側から、前記(v)工程の偏光方向と異なる偏光方向の第2の直線偏光を照射し、第一の透明樹脂基材の一面側に、配向膜において配向方向が異なる部分がパターン状に配置された配向膜を形成する工程、を含む態様とすることで、配向膜において配向方向が異なる部分がパターン状に配置された配向膜を形成することもできる。
【0015】
本発明に係る位相差フィルムの製造方法は、上記光配向膜の製造方法の(vii)工程の後に、さらに当該光配向膜の前記配向膜側の面に、位相差層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る光配向膜製造システムは、長尺状の第一の透明樹脂基材の一面側に配向膜を備える被照射基材を連続で供給する手段、長尺状の第二の透明樹脂基材の一面側に所望の紫外線遮蔽パターンを有する長尺状のフォトマスクを連続で供給する手段、連続で供給された前記被照射基材の配向膜側の面に、連続で供給された前記フォトマスクを貼り合わせて積層体とする手段、前記積層体の配向膜に、前記フォトマスク側から一定の偏光方向の直線偏光を照射し、パターン露光する手段、前記直線偏光を照射された積層体からフォトマスクを剥離する手段、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る光配向膜製造システムの好適な実施形態では、さらに、前記フォトマスクを剥離した後の配向膜に、当該配向膜側から前記パターン露光の直線偏光とは異なる偏光方向を有する第2の直線偏光を照射する手段、を含む態様とすることで、配向膜において配向方向が異なる部分がパターン状に配置された配向膜を形成することもできる。
【0018】
本発明に係る光配向膜は、上記光配向膜の製造方法により得られることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る位相差フィルムは、上記位相差フィルムの製造方法により得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る光配向膜の製造方法によれば、フォトマスクと配向膜の間のギャップを調節、保持する必要がなく、簡便な装置を用いて高い生産効率で光配向膜を製造することができる。また、ギャップがないため、長尺状の透明樹脂基材を用いて、非平行光によりパターン露光しても、露光パターンがぼやけず高い精度のパターンを形成することができ、フォトマスクと長尺状の樹脂基材上に形成された配向膜が一緒に(相対的に同位置で)搬送されるため、長尺状の樹脂基材の搬送方向に平行なストライプパターン以外でもパターン状に露光できる。
本発明に係る光配向膜の製造システムによれば、フォトマスクと配向膜の間のギャップを調節、保持する手段が必要なく、簡便な装置を用いて高い生産効率で光配向膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る光配向膜の製造方法のフローの一例を示したフローチャートである。
【図2】図2は、本発明に係る光配向膜の製造方法の(iv)〜(vi)工程における積層体及び光配向膜の構成の一例を示した模式図である。
【図3】図3は、従来のフォトマスクを固定、保持して、被照射基材を連続搬送しながら露光した場合の被照射基材の露光パターンの一例を示した模式図である。
【図4】図4は、本発明に係る光配向膜の製造方法で被照射基材を連続搬送しながら露光した場合の被照射基材の露光パターンの一例を示した模式図である。
【図5】図5は、フォトマスクと配向膜の間にギャップを設定して露光した場合及びフォトマスクと被照射基材を貼り合わせて露光した場合の露光の様子の一例を模式的に表した側面図並びにそのパターン形状を模式的に表した平面図である。
【図6】図6は、本発明に係る光配向膜の製造方法の(vii)工程における光配向膜の構成の一例を示した模式図である。
【図7】図7は、本発明の位相差フィルムの構成の一例を示した模式図である。
【図8】図8は、本発明に係る光配向膜製造システムを模式的に表した斜視図である。
【図9】図9は、本発明に係る光配向膜製造システムを模式的に表した斜視図である。
【図10】図10は、実施例で用いたフォトマスクの分光透過率を示したグラフである。
【図11】図11は、偏光メガネ方式における立体視の一例の原理を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
本発明において樹脂とは、モノマーやオリゴマーの他、ポリマーを含む概念である。
本明細書において、「板」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。
【0024】
(光配向膜の製造方法)
本発明に係る光配向膜の製造方法は、(i)長尺状の第一の透明樹脂基材の一面側に配向膜を備える被照射基材及び長尺状の第二の透明樹脂基材の一面側に所望の紫外線遮蔽パターンを有する長尺状のフォトマスクを準備する工程、(ii)前記被照射基材を連続で供給する工程、(iii)前記フォトマスクを連続で供給する工程、(iv)前記(ii)工程で供給された被照射基材の配向膜側の面に、前記(iii)工程で供給されたフォトマスクを貼り合わせて積層体とする工程、(v)前記(iv)工程で得られた積層体を当該積層体の長手方向に搬送しながら、前記フォトマスクを介して前記配向膜に一定の偏光方向の直線偏光を照射し、当該配向膜をパターン露光する工程、(vi)前記(v)工程で直線偏光を照射した積層体からフォトマスクを剥離する工程、を含むことを特徴とする。
【0025】
以下、図を参照しながら本発明に係る光配向膜の製造方法を説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る光配向膜の製造方法のフローの一例を示したフローチャートである。
まず、長尺状の第一の透明樹脂基材の一面側に配向膜を備える被照射基材と、長尺状の第二の透明樹脂基材の一面側に所望の紫外線遮蔽パターンを有する長尺状のフォトマスクを準備する(i工程)。
次いで、前記被照射基材とフォトマスクを連続で供給する(ii工程、iii工程)。
続いて、連続で供給した前記被照射基材とフォトマスクを貼り合わせ、積層体とする(iv工程)。
次いで、その積層体を搬送しながら、フォトマスクを介して配向膜を一定の偏光方向の直線偏光(紫外線)によりパターン状に露光する(v工程)。
次いで、パターン状に露光した積層体からフォトマスクを剥離し、配向膜において特定の配向方向を有する部分がパターン状に配置された光配向膜を得る(vi工程)。
【0027】
図2は、本発明に係る光配向膜の製造方法の(iv)〜(vi)工程における積層体及び光配向膜の構成の一例を示した模式図である。なお、本発明の模式図においては、説明の便宜上、各部材の縦横の寸法比及び各部材間の寸法比は適宜、実寸とは変えて誇張して図示してある。
(iv)工程で得られる積層体70は、被照射基材30の配向膜20側の面に、フォトマスク60の紫外線遮蔽パターン40が貼り合わせられてなる。
(v)工程では、(iv)工程で得られた積層体70に、フォトマスク60を介して配向膜20に一定の偏光方向の直線偏光80を照射し、パターン状に露光部90と未露光部100が形成された積層体70を得る。
(vi)工程では、(v)工程で直線偏光80を照射した積層体70から、フォトマスク60を剥離し、配向膜20において特定の配向方向を有する部分(露光部)90がパターン状に配置された光配向膜110を得る。
【0028】
このように、被照射基材30の配向膜20にフォトマスク60の紫外線遮蔽パターン40が貼り合わされ密着しているため、特許文献1の図12のようにギャップを調節、保持する必要がなく、簡便な装置で容易に高い生産性で光配向膜を製造することができる。
【0029】
第一及び第二の透明樹脂基材が、一般的なフォトマスクの基材であるガラスや合成石英に比べて安価なため、低コストで光配向膜を製造することができる。
また、被照射基材30の第一の透明樹脂基材10及びフォトマスク60の第二の透明樹脂基材50が共に長尺状の形状で可撓性を有するため、フォトマスク60と被照射基材30の貼り合わせが、例えば、ラミネーター等の従来公知の装置を用いて簡単に行うことができる。
【0030】
図3は、従来のフォトマスクを固定、保持して、被照射基材を連続搬送しながら露光した場合の被照射基材の露光パターンの一例を示した模式図である。
フォトマスク60を被照射基材30(配向膜20)の搬送方向120に対して平行に配列して搬送方向120に平行なパターンを形成しようとしても、図3に示すように、フォトマスク60の開口部が被照射基材30の搬送方向120に対して傾いて保持された場合、フォトマスク60と配向膜20の相対的な位置が被照射基材30の搬送によって常に搬送方向120と垂直な方向に変動する(フォトマスク60が被照射基材30の幅方向にぶれる)ため、未露光部100が本来のマスクパターンと比較して細く形成された配向膜130しか得られず、フォトマスク60の傾きの程度によっては被照射基材30の幅方向全般に亘って露光されてしまう。そのため、従来のフォトマスクを固定、保持して配向膜を露光する場合では、フォトマスク60の開口部が搬送方向(被照射基材の長手方向)120に対して高度に平行に保持された場合しか所定の寸法の平行な方向のパターンが得られなかった。
これに対して、本発明に係る光配向膜の製造方法では、図4に示すように、フォトマスク60と被照射基材30が貼り合わされ、共に連続搬送されるため、フォトマスク60と配向膜20の相対的な位置が被照射基材30の搬送によっても変動せず、搬送方向120に平行なパターン以外でも、例えば、搬送方向(被照射基材の長手方向)120に直交するパターン、その他搬送方向に交差するパターンでも形成することができる。
【0031】
図5は、フォトマスクと配向膜の間にギャップを設定して露光した場合及びフォトマスクと被照射基材を貼り合わせて露光した場合の露光の様子の一例を模式的に表した側面図並びにそのパターン形状を模式的に表した平面図である。
図5の(a)は、配向膜を搬送しないでフォトマスクと配向膜の間にギャップを設定して平行光を用いて露光した場合の側面図であり、配向膜20とフォトマスクの紫外線遮蔽パターン40との間にギャップ140が存在しても、平行光81を用いれば、図5の(b)の平面図に示すように精度の高い露光部90のパターン形状を得ることができる。
しかし、図5の(c)のように、図5の(a)において平行光81に代えて非平行光82を用いると、フォトマスクの遮光部(紫外線遮蔽パターン40)の裏側の、本来露光しない部分まで露光され、図5の(d)の平面図に示すように精度の低い露光部90のパターン形状となってしまう。
これに対して、本発明に係る光配向膜の製造方法の場合、図5の(e)のように、配向膜20とフォトマスクの紫外線遮蔽パターン40が密着しておりギャップ140が存在せず、非平行光82を用いても、非平行光82がフォトマスクの遮光部の裏側に届かないため、非遮光部のみがパターン状に露光され、図5の(f)に示すように精度の高い露光部90のパターン形状を得ることができる。
なお、図5においては、説明の便宜上、被照射基材の第一の透明樹脂基材及びフォトマスクの第二の透明樹脂基材を省略している。
【0032】
このように、本発明に係る光配向膜の製造方法によれば、フォトマスクの紫外線遮蔽パターンと配向膜の間にギャップが存在しないため、非平行光を平行光に変換してから照射する必要がなく、高出力の非平行光を用いることができ、容易にパターン露光を行うことができ、被照射基材の搬送速度を高め、生産効率を高めることができる。
さらに、配向膜(被照射基材)とフォトマスクを密着させているため、アライメントも容易となる。
【0033】
本発明に係る光配向膜の製造方法の(v)工程において、露光する際に照射する紫外線(平行光又は非平行光)は、特定の偏光方向を有する直線偏光であれば良い。紫外線を放射する点光源又は線状(長軸状)光源を用いて、放射された光を偏光素子を用いて所望の特定の偏光方向を有する直線偏光に変換すれば良い。
光源としては、従来公知の紫外線を放射する光源を用いれば良く、例えば、超高圧水銀ランプ又は高圧水銀ランプ等の放電ランプ等を挙げることができる。
偏光素子としては、従来公知のブリュースター角を用いた偏光板又はグリッド偏光板等を用いることができる。
ブリュースター角を用いた偏光板とは、複数のガラス板を所定の間隔をあけて主光線の入射方向に対してブリュースター角だけ傾けて平行配置されたものである。このとき、ガラス板としては、光配向に対して効果の大きい波長310nmの紫外線に対する内部透過率が高いものを用いるのが好ましく、内部透過率が98%以上の石英ガラスを用いるのがより好ましい。
グリッド偏光板は、石英基板上にアルミニウムがストライプパターン状に配置されたものである。
いずれの偏光素子でも、偏光素子(偏光軸)を回転させることにより所望の偏光方向の直線偏光を得ることができる。後述するように、(vii)工程として、パターン露光された配向膜に、(v)工程の偏光方向と異なる偏光方向の第2の直線偏光を照射する場合、同種又は異種の光源を用いて、放射された光に対して(vii)工程では偏光素子の偏光軸の傾きを(v)工程と異なるように設定すれば、第2の直線偏光を得ることができる。
【0034】
露光量としては、積層体の搬送速度、配向膜の所望の配向等に応じて適宜調節すれば良い。例えば、光源と積層体の距離が最短となる位置(以下、単に「基材搬送位置」という。)での波長310nmにおけるピーク照度は、10〜100mW/cmとすれば良い。配向膜(積層体)への照射量は10〜100mJ/cmとすれば良い。
【0035】
ここまで、特定の偏光方向を有する直線偏光を1回だけパターン状に照射し、配向膜において特定の配向方向を有する部分がパターン状に配置された光配向膜を製造する方法を説明してきた。
そして、配向膜において配向方向が異なる部分がパターン状に配置された配向膜、すなわち、上述したように立体視等に好適に用いることができる光配向膜を得る製造方法は、さらに、(vii)工程として、前記(vi)工程で得られた光配向膜のパターン露光された配向膜に、当該配向膜側から、前記(v)工程の偏光方向と異なる偏光方向の第2の直線偏光を照射し、第一の透明樹脂基材の一面側に、配向膜において配向方向が異なる部分がパターン状に配置された配向膜を形成する工程、を含むようにすれば良い。
【0036】
図6は、本発明に係る光配向膜の製造方法の(vii)工程における光配向膜の構成の一例を示した模式図である。
積層体からフォトマスクを剥離した図2の光配向膜110の配向膜20に(v)工程の偏光方向と異なる偏光方向の第2の直線偏光83を照射すると、(v)工程で露光された露光部90の配向は維持されたまま、フォトマスク60で覆われていた未露光部100のみが第2の直線偏光83で配向処理され、配向膜20において配向方向が異なる部分(90、91)がパターン状に配置された配向膜20を備える光配向膜111が得られる。
【0037】
なお、上記説明では2回目の偏光露光の際にフォトマスクを全て剥離し、(v)工程の未露光部100全てを第2の直線偏光で偏光露光し、露光部91としたが、この方法以外にも、図示しないがフォトマスクの一部をパターン状に剥離し、2回目の偏光露光を行い、さらにフォトマスクの残りの一部又は全部を剥離して3回目以降の偏光露光(1回目と2回目の偏光方向と異なる偏光方向を有する第3の直線偏光による露光)を行えば、配向膜において、配向方向が異なる3つ以上の部分が、パターン状に配置された配向膜を備える光配向膜を得ることも可能である。
【0038】
以下、本発明に係る光配向膜の製造方法において用いる被照射基材、フォトマスク等の各部材及び当該製造方法により得られる光配向膜について説明する。
【0039】
(被照射基材)
被照射基材30は、第一の透明樹脂基材10の一面側に配向能を有する配向膜20を備えてなり、第一の透明樹脂基材10に由来した長尺状の形状であって、可撓性を有する。
【0040】
(第一の透明樹脂基材)
第一の透明樹脂基材10は、長尺状の形状であって、可撓性を有するものであれば良く、従来公知の位相差フィルム又は光学フィルムに用いられている透明樹脂基材を用いることができる。
本発明において透明樹脂基材の透明とは、光(可視光線)透過率が80%以上であることをいう。
透明樹脂基材としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート並びにセルロースエステル等のセルロース系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー並びにポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等を挙げることができる。
透明樹脂基材の厚さは、光配向膜や位相差フィルムとしたときの厚さを考慮して適宜選択すれば良く、例えば、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがより好ましい。
透明樹脂基材上に設けられる配向膜との密着性を向上するため、透明樹脂基材には、例えば、ケン化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理又は火炎処理等の表面処理を施しても良いし、プライマー層(接着剤層)を設けても良い。
透明樹脂基材の市販品としては、例えば、ノルボルネン系ポリマーでは、JSR(株)製の商品名アートン、日本ゼオン(株)製の商品名ゼオノアフィルム等が挙げられる。この他、シクロオレフィン系ポリマーでは、例えば、積水化学(株)製の商品名エスシーナ等が挙げられる。
【0041】
(配向膜)
配向膜20は、直線偏光の照射による光異性化反応や光二量化反応等によって照射された部分(露光部分)の配向方向が特定方向に揃う配向能を有し、配向膜上に液晶分子を含む位相差層が形成される際に、当該液晶分子の配向を制御する働きを有する。
本発明の製造方法で得られる光配向膜110では、少なくとも1つの特定の配向方向を有する部分がパターン状に配置されており、上述したように偏光方向が異なる直線偏光を2回露光した場合では、配向膜20において配向方向が異なる部分(90、91)がパターン状に配置された配向膜20を備える光配向膜111となる。
【0042】
配向膜は、第一の透明樹脂基材の一面側に、配向膜を形成する材料を、ロールコート又はスロットダイコート等の従来公知の方法で塗布して形成すれば良い。
配向膜を形成する材料は、紫外線による配向能を有すれば特に限定されず、従来公知の光配向膜の材料を用いることができる。
配向膜を形成する材料としては、例えば、特開2009−230069号公報に記載の分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物及びアゾベンゼン骨格を側鎖として有する重合性モノマー等の光異性化型材料並びに特開2009−230069号公報に記載の、側鎖にケイ皮酸エステル、クマリン又はキノリンを含む反応性ポリマー及び特開2006−350322号公報に記載の光反応型材料等を挙げることができる。
【0043】
配向膜の厚さは、配向能等の所望の性能に応じて適宜調節すれば良く、コストを抑え、かつ、十分な配向能を得る観点から、1〜1000nmであることが好ましく、3〜100nmであることがより好ましい。
【0044】
(フォトマスク)
本発明で用いるフォトマスク60は、被照射基材30の形状と可撓性に対応して、長尺状であり、第二の透明樹脂基材50の一面側に紫外線遮蔽パターン40を有する部材である。
フォトマスクとしては、例えば、特開2005−191180号公報記載のフォトマスク等の従来公知のフォトリソグラフィー等で用いられているフォトマスクを用いることができる。
【0045】
(第二の透明樹脂基材)
フォトマスクの第二の透明樹脂基材50は、上記第一の透明樹脂基材10を用いることができる。
第二の透明樹脂基材50は、被照射基材30に対してフォトマスク60を貼り合わせ(ラミネート)可能で、所望のパターン形状に露光することができれば良く、材料、光透過率及び寸法等が第一の透明樹脂基材10と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0046】
(紫外線遮蔽パターン)
紫外線遮蔽パターン40は、上述の(v)工程の直線偏光をそのパターン形状に対応して遮蔽(遮光)する働きを有する。紫外線遮蔽パターンは、従来公知の紫外線吸収能を有するインクで形成すれば良い。
紫外線遮蔽パターンのうち、遮光部は、例えば、特開2005−191180号公報に記載の金属クロム等の無機遮光性材料、タングステン等の無機光吸収性材料又は有機バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料等の遮光性粒子を含有させた複合材料により形成することができる。
紫外線遮蔽パターンのパターン形状は、配向膜に形成するパターン形状に応じて適宜選定される。
紫外線遮蔽パターンをストライプ形状とする場合、線幅165〜330μmの遮光部を165〜330μmの間隔で設ければ良い。本発明に係る光配向膜の製造方法では、ギャップが存在しないため、100〜150μmのパターン(遮光部)の間隔でも高精度の配向方向を有するパターンが得られる。
フォトマスク60の非遮光部(上記遮光材料を有しない部分)の波長300〜400nmにおける紫外線透過率が50%以上であることが、配向膜の露光部を十分に配向させる観点から好ましい。
【0047】
(積層体)
積層体70は、(iv)工程で被照射基材30にフォトマスク60を貼り合わされてなり、配向膜20と紫外線遮蔽パターン40のギャップをなくすために、図2に示したように被照射基材30の配向膜20にフォトマスク60の紫外線遮蔽パターン40側を貼り合わせて(密着させて)形成される。
配向膜20に紫外線遮蔽パターン40を貼り合わせるためには、例えば、配向膜20が塗工された基材にラミネーターを用いて紫外線遮光パターン40を密着すれば接着剤等は用いなくても良い。
【0048】
(光配向膜)
光配向膜110は、第一の透明樹脂基材10の一面側に、特定の配向方向を有する部分がパターン状に配置された配向膜20を備える。
さらに、光配向膜111は、第一の透明樹脂基材10の一面側に、配向方向が異なる部分がパターン状に配置された配向膜20を備える。
光配向膜111を用いれば、配向方向が異なる部分がパターン状に配置されているため、位相差層の配向方向を複数の方向に高精度に、かつ、微細なパターンで制御することができる。したがって、光配向膜111は、特定の1つの偏光方向の直線偏光を回転方向が異なる2種以上の楕円偏光に変換する等の2種以上の光学補償がパターン状に可能な位相差フィルムの作製に適している。
【0049】
本発明の光配向膜は、立体視に用いる場合、図11に示したように表示面から右目用映像と左目用映像が発せられる表示装置に適用できるため、表示面から右目用映像と左目用映像が直線偏光によって発せられる表示装置であれば液晶表示装置以外の有機ELディスプレイ又はプラズマディスプレイの表示面に偏光板を貼合したもの等のその他の表示装置にも適用できる。
【0050】
(位相差フィルムの製造方法)
本発明に係る位相差フィルムの製造方法は、上記光配向膜の製造方法の(vii)工程の後に、さらに当該光配向膜の前記配向膜側の面に、位相差層を形成する工程を含むことを特徴とする。
図7は、本発明の位相差フィルムの構成の一例を示した模式図である。
上記光配向膜の製造方法の(vii)工程の後に、さらに配向膜20上に位相差層150を形成することで位相差フィルム160が得られる。位相差層150の配向方向は配向膜20の配向によって制御されるため、位相差層150は、露光部90と91にそれぞれ対応して配向方向が異なる部分152と151を有する。上述したように、配向膜の配向方向が異なる部分の数が2以上の場合は、それに対応して位相差層の配向方向が異なる部分が形成される。
上記製造方法により得られる位相差フィルム160は、配向膜20の微細パターンでの配向方向の制御により、位相差層160の配向方向を複数の方向に高精度に、かつ、微細なパターンで制御可能であり、上述したような立体視用のλ/4板等に好適に用いることができる。
【0051】
位相差フィルム160において、位相差層150は、図7に示すように一層のみでも良いし、図示しないが二層以上積層したものであっても良い。
位相差層を形成する材料は、従来公知の位相差層の材料を用いることができる。
このような材料としては、例えば、ネマチック液晶相を発現する液晶材料が挙げられる。このような液晶材料は、従来公知の液晶材料を用いれば良く、例えば、棒状の液晶分子、ポリマー液晶及び重合性液晶化合物等が挙げられる。
重合性液晶化合物を用いる場合、耐熱性の高い光学素子を得るために、重合性液晶化合物の分子の両末端に重合性基を有することが好ましい。
この他、位相差層は、特開2009−162874号公報に記載の位相差層としても良い。
【0052】
(光配向膜製造システム)
本発明に係る光配向膜製造システムは、長尺状の第一の透明樹脂基材の一面側に配向膜を備える被照射基材を連続で供給する手段、長尺状の第二の透明樹脂基材の一面側に所望の紫外線遮蔽パターンを有する長尺状のフォトマスクを連続で供給する手段、連続で供給された前記被照射基材の配向膜側の面に、連続で供給された前記フォトマスクを貼り合わせて積層体とする手段、前記積層体の配向膜に、前記フォトマスク側から一定の偏光方向の直線偏光を照射し、パターン露光する手段、前記直線偏光を照射された積層体からフォトマスクを剥離する手段、を含むことを特徴とする。
【0053】
図8及び図9は、本発明に係る光配向膜製造システムの一例を模式的に表した斜視図である。
図8は、上記光配向膜の製造方法の(ii)〜(vi)工程に対応した手段を有する光配向膜製造システムである。
図8の光配向膜製造システム170は、被照射基材30を連続で供給する手段である送り出しローラ180、フォトマスク60を連続で供給する手段である送り出しローラ190、被照射基材30の配向膜側の面に、フォトマスク60を貼り合わせて積層体70とする手段200、パターン露光する手段及び積層体70からフォトマスク60を剥離する手段210を含む。パターン露光する手段は、さらに積層体の幅に対応した線状の光源220、光源220から放射された紫外線を特定の偏光方向の直線偏光に変換する偏光素子であるグリッド偏光板230、とを含む。ここで、グリッド偏光板230の透過軸の方向(直線偏光の偏光方向)を矢印240で表わしている。
図9は、上記光配向膜の製造方法の(ii)〜(vii)工程に対応した手段を有する光配向膜製造システムである。
図9の光配向膜製造システム171は、図8の各手段に加えて、フォトマスクを剥離した後の光配向膜110に、配向膜20側から前記パターン露光の直線偏光とは異なる偏光方向を有する第2の直線偏光を照射する手段を含む。当該第2の直線偏光を照射する手段は、さらに積層体の幅に対応した線状の光源220、光源220から放射された紫外線を特定の偏光方向の直線偏光に変換する偏光素子であるグリッド偏光板231とを含む。ここで、グリッド偏光板231の透過軸の方向(グリッド偏光板231を透過した後の直線偏光の偏光方向)を矢印241(偏光方向240と241は直交している)で表わしている。
【0054】
被照射基材30やフォトマスク60を連続で供給する手段180、190としては、上記送り出しローラの他、例えば、フィルム巻き出し機等があり、従来公知の手段を用いることができる。
被照射基材30やフォトマスク60を貼り合わせて積層体70とする手段としては、例えば、ラミネーター等があり、従来公知の手段を用いることができる。
積層体70からフォトマスク60を剥離する手段としては、例えば、オートピーラー等があり、従来公知の手段を用いることができる。
被照射基材30、フォトマスク60、光源220、偏光板(偏光素子)230、231としては、上記製造方法で挙げたものを用いれば良いのでここでの説明は省略する。
【0055】
図8では、直線偏光の偏光方向240が積層体70の搬送方向に対して平行な向きで示したが、パターン露光する際の偏光方向はこれに限定されず、適宜調節することができる。また、図9では、パターン露光の直線偏光の偏光方向240と、第2の直線偏光の偏光方向241が直交するように示したが、二つの偏光方向240と241の関係は異なる方向に設定されればこれに限定されず、所望の特性に応じて適宜調節することができる。
図9では、得られた光配向膜111を巻き取って回収しているが、巻き取らずにそのまま位相差層150(図示せず)の形成を行っても良い。
また、図9では、積層体70からフォトマスク60を剥離し、インライン(同一の製造ライン)で光配向膜110の配向膜20に対して2回目の偏光露光を行っているが、これに限定されず、光配向膜110を巻き取り、オフライン(別個の製造ライン)で光配向膜110を送り出して、2回目の偏光露光を行っても良い。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0058】
(被照射基材の準備)
第一の透明樹脂基材として、幅1500mmで長尺状の富士フィルム(株)製の商品名フジタック(トリアセチルセルロースフィルム)を用い、当該第一の透明樹脂基材上に、配向膜を形成する材料として特開2009−230069号公報記載の方法で作製した配向膜を用い、幅1450mm、厚さ0.05μmの配向膜を形成し、被照射基材を得た。
【0059】
(フォトマスクの準備)
第二の透明樹脂基材として、幅1500mmで長尺状の富士フィルム(株)製の商品名フジタック(トリアセチルセルロースフィルム)を用い、当該第二の透明樹脂基材上に、カラーフィルター用ブラックマトリクス用レジストを用いた遮光性材料で、第二の透明樹脂基材の長手方向に対して平行となる紫外線遮蔽パターン(遮光部の線幅270μm)を270μm間隔で形成し、フォトマスクを得た。このとき、フォトマスクの非遮光部の波長300〜400nmにおける透過率は80%以上であった。フォトマスクの波長200〜800nmにおける分光透過率を示したグラフを図10に示す。
【0060】
(実施例1)
図9に示したようなシステムで、ロール状の被照射基材30とフォトマスク60を巻き出し、配向膜20に紫外線遮蔽パターン40を貼り合わせ、光源220として無電極ランプ(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製)Hバルブを用い、当該光源220から放射された紫外線をグリッド偏光板(ポラテクノ(株)製の商品名ProFlux)を用いて偏光方向240が積層体70の搬送方向に対して平行な直線偏光に変換し、フォトマスク60を介して配向膜20にパターン状に照射した。このとき、積層体70の搬送速度を8m/分、基材搬送位置での波長310nmにおけるピーク照度を44mW/cm、照射量を10mJ/cmに設定した。
次いで、パターン状に偏光露光した積層体70からフォトマスク60を剥離し、インラインで光配向膜110に、図9に示すように光源220無電極ランプ(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製)Hバルブを用いて、その二つ目の光源220から照射された紫外線を透過軸が光配向膜の搬送方向に対して垂直であるグリッド偏光板(ポラテクノ(株)製の商品名ProFlux)を用いて偏光方向241が光配向膜の搬送方向に対して垂直の直線偏光に変換し、配向膜20に照射し、未露光部100を偏光露光し、光配向膜111を得た。2回目の偏光露光において、光配向膜110の搬送速度を8m/分、基材搬送位置での波長310nmにおけるピーク照度を22mW/cm、照射量を5mJ/cmに設定した。
得られた光配向膜111の、配向膜20上にネマティック液晶を膜厚1μmとなるように塗布し、位相差層150を形成して位相差フィルム160を得た。
λ/4板と得られた位相差フィルム160のサンプルを遅相軸を直交させて積層し、偏光顕微鏡を用いて観察したところ、フォトマスクの紫外線遮蔽パターン通りの配向を確認した。
【0061】
(比較例1)
実施例1において、フォトマスク60と被照射基材30を貼り合わせず、フォトマスク60をギャップ150(μm)で設定して1回目のパターン露光を行った以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを得た。
実施例1と同様にλ/4板と得られた位相差フィルムのサンプルを遅相軸を直交させて積層し、偏光顕微鏡を用いて観察したところ、得られたフィルムの配向軸は、全面に亘って1回目の偏光露光の配向軸に平行であった。
【符号の説明】
【0062】
10 第一の透明樹脂基材
20 配向膜
30 被照射基材
40 紫外線遮蔽パターン
50 第二の透明樹脂基材
60 フォトマスク
70 積層体
80 直線偏光
81 平行光
82 非平行光
83 第2の直線偏光
90、91 露光部
100 未露光部
110、111 光配向膜
120 搬送方向
130 従来の配向膜
140 ギャップ
150 位相差層
151、152 特定の配向方向を有する部分
160 位相差フィルム
170、171 光配向膜製造システム
180、190 送り出しローラ
200 貼り合わせ手段
210 剥離手段
220 光源
230、231 グリッド偏光板
240、241 透過軸(偏光方向)
250 パネル
260 第一の偏光板
261 第二の偏光板
270 偏光軸(透過軸)
280、281 遅相軸
290、291 第一のλ/4板
300、301 円偏光(楕円偏光)
310 遅相軸280と直交する遅相軸
320、321 第二のλ/4板
330 偏光メガネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)長尺状の第一の透明樹脂基材の一面側に配向膜を備える被照射基材及び長尺状の第二の透明樹脂基材の一面側に所望の紫外線遮蔽パターンを有する長尺状のフォトマスクを準備する工程、
(ii)前記被照射基材を連続で供給する工程、
(iii)前記フォトマスクを連続で供給する工程、
(iv)前記(ii)工程で供給された被照射基材の配向膜側の面に、前記(iii)工程で供給されたフォトマスクを貼り合わせて積層体とする工程、
(v)前記(iv)工程で得られた積層体を当該積層体の長手方向に搬送しながら、前記フォトマスクを介して前記配向膜に一定の偏光方向の直線偏光を照射し、当該配向膜をパターン露光する工程、
(vi)前記(v)工程で直線偏光を照射した積層体からフォトマスクを剥離する工程、を含むことを特徴とする、光配向膜の製造方法。
【請求項2】
さらに、(vii)工程として、前記(vi)工程で得られた光配向膜のパターン露光された配向膜に、当該配向膜側から、前記(v)工程の偏光方向と異なる偏光方向の第2の直線偏光を照射し、第一の透明樹脂基材の一面側に、配向膜において配向方向が異なる部分がパターン状に配置された配向膜を形成する工程、を含むことを特徴とする、前記請求項1に記載の光配向膜の製造方法。
【請求項3】
前記請求項2に記載の光配向膜の製造方法の(vii)工程の後に、さらに当該光配向膜の前記配向膜側の面に、位相差層を形成する工程を含むことを特徴とする、位相差フィルムの製造方法。
【請求項4】
長尺状の第一の透明樹脂基材の一面側に配向膜を備える被照射基材を連続で供給する手段、
長尺状の第二の透明樹脂基材の一面側に所望の紫外線遮蔽パターンを有する長尺状のフォトマスクを連続で供給する手段、
連続で供給された前記被照射基材の配向膜側の面に、連続で供給された前記フォトマスクを貼り合わせて積層体とする手段、
前記積層体の配向膜に、前記フォトマスク側から一定の偏光方向の直線偏光を照射し、パターン露光する手段、
前記直線偏光を照射された積層体からフォトマスクを剥離する手段、を含むことを特徴とする、光配向膜製造システム。
【請求項5】
さらに、前記フォトマスクを剥離した後の配向膜に、当該配向膜側から前記パターン露光の直線偏光とは異なる偏光方向を有する第2の直線偏光を照射する手段、を含むことを特徴とする、前記請求項4に記載の光配向膜製造システム。
【請求項6】
前記請求項1又は2に記載の製造方法により得られることを特徴とする、光配向膜。
【請求項7】
前記請求項3に記載の製造方法により得られることを特徴とする、位相差フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−14064(P2012−14064A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152167(P2010−152167)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】