説明

光配向膜の製造方法

【課題】
低照射量で光配向基を配列させることができ、十分な液晶配向能を得るための光配向膜の製造方法を提供する。
【解決手段】
光配向性基を有する化合物を含有する組成物を基板上に塗布した後、該塗膜に異方性を有する光を照射する光配向膜の製造方法において、該塗膜が1〜50質量%の有機溶剤を含んだ状態で異方性を有する光を照射する光配向膜の製造方法。前記光配向性基を有する化合物は二色性基を有する化合物が好ましく、アゾ化合物が最も好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶配向膜の製造方法に関し、さらに詳しくは、光を照射することにより、ラビングを行うことなく液晶分子を配向させることができる、液晶配向膜(以下、光配向膜と略す)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置においては、液晶の分子配列の状態を電場等の作用によって変化させて、これに伴う光学特性の変化を表示に利用している。多くの場合、液晶は二枚の基板の間隙に挟んだ状態で用いられるが、液晶分子を特定の方向に配列させるために、基板の内側に配向処理が施される。
通常、配向処理は、ガラス等の基板にポリイミド等の高分子の膜を設け、これを一方向に布等で摩擦する、ラビングという方法が用いられる。これにより、基板に接する液晶分子はその長軸(ダイレクタ)がラビングの方向に平行になるように配列する。しかしながら、ラビング法は製造装置が簡単であるという利点を有するものの、製造工程において配向膜表面に生じた傷やほこりが原因で配向欠陥が発生し、得られる液晶素子の表示特性に悪影響を与えることがあった。また、今日液晶表示装置の製造に用いられる基板のサイズが大型化するのに伴って、基板全面に亘って、かつ長期間均一な配向を得るためのラビング装置の設計および管理が困難になりつつある。
【0003】
これに対し、近年ラビングを行わない液晶配向膜作製技術が注目されている。とりわけ、基板上に設けた塗膜に異方性を有する光を照射して液晶配向能を生じさせる光配向法は、簡便であり盛んに研究が行われている。具体的には、光の吸収能が偏光の電気ベクトルの方向によって異なる基(以下、光配向性基と略す)を有する化合物に光を照射して、光配向性基を一定の方向に配列させ、液晶配向能を発現させる。ここで、光配向性基としては、例えば、アゾベンゼン等の光異性化反応を生じる基、シンナモイル基、クマリン基、カルコン基等の光二量化反応を生じる基、ベンゾフェノン基等の光架橋反応を生じる基、あるいはポリイミド、シラン化合物等が知られている。
【0004】
光配向法は、通常、前記光配向性基を有する化合物の溶液を基板上に塗布し乾燥させ、比較的固化した塗膜とした状態で光照射し、光配向性基を配列させる。従って光配向性基にモビリティがなく、一番感度の高いアゾ化合物でも、実用化レベルの液晶配向能を得るためには相当量の光照射量を必要とする。従って、大面積の光配向膜を製造する場合には、大出力の紫外線ランプを使用して長時間照射することが必要であり、これが実用化上での大きな問題であった。(例えば、特許文献1参照)
光照射量を低減させるための、アプローチはいくつかなされた例はあるが(例えば、特許文献2参照)、後に焼成工程を必要とするなど、エネルギー効率の悪い方法であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−250924号公報
【特許文献2】特開2002−90752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、低照射量で光配向基を配列させることができ、十分な液晶配向能を得るための光配向膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、光配向性基を有する化合物を含有する組成物を基板上に塗布した後、該塗膜に異方性を有する光を照射して液晶配向能を与える際に、該塗膜が一定量の有機溶剤を含んでいると、より少ない照射量で十分な液晶配向能が得られることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、光配向性基を有する化合物を含有する組成物を基板上に塗布した後、該塗膜に異方性を有する光を照射する光配向膜の製造方法において、該塗膜が1〜50質量%の有機溶剤を含んだ状態で異方性を有する光を照射する光配向膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、低照射量で光配向基を配列させることができ、十分な液晶配向能を得るための光配向膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(光配向性基を有する化合物)
本発明において光配向性基を有する化合物に特に限定はないが、低分子化合物であると、本発明の効果がより発現しやすく好ましい。また、光配向性基としては、二色性基(ここで二色性基とは、発色団における光の吸収能が偏光の電気ベクトルの方向によって異なる基をいう)を有する化合物が、元々の光に対する感度が高く好ましい。二色性基を有する化合物としては、アントラキノン系、アゾ系、キノフタロン系、ペリレン系の化合物などが挙げられるが、これらの中でも、アゾ化合物又はアントラキノン化合物が好ましく、アゾ化合物が最も好ましい。高感度のアゾ化合物の例として、一般式(1)で表される化合物が最も好ましく用いられる。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、R、Rは、各々独立して、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基、およびマレイミド基からなる群から選ばれる重合性基を表す。
また、XまたはXはそれぞれ、RまたはRがヒドロキシ基の場合、単結合を表し、RまたはRが重合性基の場合、それぞれ−(A−B)m−または−(A−B)−で表される連結基を表す。ここで、AまたはAはそれぞれRまたはRと結合し、BおよびBは各々隣接するフェニレン基と結合する。
およびAは、各々独立して単結合、または二価の単価水素基を表し、BおよびBは、各々独立して単結合、−O−、−CO−O−,−O−CO−、−CO−NH−,−NH−CO−、−NH−CO−O−、又は−O−CO−NH−を表す。
mおよびnは、各々独立して0〜4の整数を表す。但し、mまたはnが2以上のとき、複数のA、BA2、およびBは同じ基であっても異なった基であってもよい。但し、二つのBまたはBの間に挟まれたA又はAは、単結合ではないものとする。
また、RおよびRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基又は水酸基、−OR(但し、Rは、炭素原子数2〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、または炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6のアルキル基を表す)を表す。但し、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。
およびRは各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、またはヒドロキシ基を表す。但し、カルボキシ基、スルホ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。
【0013】
前記一般式(1)で示される二色性化合物において、R、Rは、各々独立して、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基、およびマレイミド基からなる群から選ばれる重合性基を表す。R、Rが重合性基であると、本発明による光配向膜に光照射して、該二色性化合物を配列させた後、得られた配列状態を重合によって固定化することで、光や熱に対し高い安定性が得られる点で好ましい。重合性基の中では特に(メタ)アクリロイルオキシ基が反応性が高く好ましい。
【0014】
またはXはそれぞれ、RまたはRがヒドロキシ基の場合、単結合を表し、RまたはRが重合性基の場合、それぞれ−(A−B)m−または−(A−B)−で表される連結基を表す。ここで、AまたはAはそれぞれRまたはRと結合し、BおよびBは各々隣接するフェニレン基と結合する。AおよびAは、各々独立して単結合、または二価の単価水素基を表し、BおよびBは、各々独立して単結合、−O−、−CO−O−,−O−CO−、−CO−NH−,−NH−CO−、−NH−CO−O−、又は−O−CO−NH−を表す。mおよびnは、各々独立して0〜4の整数を表す。但し、mまたはnが2以上のとき、複数のA、B、A、およびBは同じ基であっても異なった基であってもよい。但し、二つのBまたはBの間に挟まれたA又はAは、単結合ではないものとする。R、Rが(メタ)アクリロイルオキシ基である場合、連結基X、Xとしてアルキレンオキシフェニレン基が−CO−O−結合している形態が、高い配向規制力を得るために、これらの中で特に好ましい。
【0015】
およびRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基又は水酸基、−OR(但し、Rは、炭素原子数2〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、または炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6のアルキル基を表す)を表す。但し、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。また、R、Rは4、4’−(ビスフェニルアゾ)ビフェニル骨格両端のフェニレン基のメタ位に置換していると、特に優れた光配向能を付与できる。
およびRは各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、またはヒドロキシ基を表す。但し、カルボキシ基、スルホ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。また、R、Rは4、4’−(ビスフェニルアゾ)ビフェニル骨格の2、2’位に置換していると、優れた光配向能を付与できるため特に好ましい。
【0016】
一般式(1)で表されるアゾ化合物の例として、式(a)で表される化合物や、式(b)で表される化合物が挙げられる。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
(製造方法)
本発明は、前記光配向性基を有する化合物を含有する組成物(以下、光配向膜用組成物と略す)を基板上に塗布した後、該塗膜に異方性を有する光を照射する光配向膜の製造方法において、該塗膜が1〜50質量%の有機溶剤を含んだ状態で異方性を有する光を照射する。有機溶剤の含有量は、中でも1〜30質量%が好ましい。光配向膜の膜厚は通常数十nmであるので、塗膜中に有機溶剤が1質量%存在するだけで、光感度に大きな影響を与えると推定される。
【0020】
塗膜中に有機溶剤が存在することで光感度が向上する理由は、推定ではあるが、光配向性基を有する化合物分子間の相互作用が小さくなるためではないかと考えている。
通常化学反応は、反応性分子もしくは反応性基の運動の自由度を上げるために、溶媒中で反応を行う。これを考えると、該塗膜を完全に乾燥させた状態では、光配向性基を有する化合物分子の運動の自由度が殆ど無いので配列させるために相当量のエネルギーが必要であるが、該塗膜に溶剤が1質量%以上存在させることで、光配向性基を有する分子の運動の自由度が大きくなり、少量のエネルギーで配列できるのではないかと推定している。
該塗膜に溶剤が50質量%を越える量が存在する状態では、配向膜分子が非常に動きやすく、熱的分子運動のために光照射によって得られた配列がくずれてしまうので好ましくない。
【0021】
該塗膜に1〜50質量%の有機溶剤を含ませるには、光配向性基を有する化合物を含有する有機溶剤溶液を基板上に塗布した後、目的量の有機溶剤が残存するように乾燥させる方法が最も簡単で好ましい。この時の溶液濃度に特に限定はないが、0.2〜5質量%であると、均一な塗膜を得ることができる。
塗膜中の有機溶剤の含有量調節は、乾燥時の温度や時間ですることが可能である。また、含有量の調節のしやすさから、使用する有機溶剤は、比較的沸点の高いもので、かつ光配向性基を有する化合物を溶解しやすいものを選択することが好ましい。
有機溶剤としては、例えば、2−フェノキシエタノール(沸点:245℃)、2−ピロリドン(沸点:245℃)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(沸点:213℃)、ジエチレングリコールブチルエーテル(沸点:230℃)、トリアセチン(沸点:260℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(沸点:166℃)、N−メチル−2−ピロリドン(沸点:202℃)、2−メトキシエタノール(沸点:125℃)、2−エトキシエタノール(沸点:135℃)、2−ブトキシエタノール(沸点:170℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、プロピレングリコール(沸点:188℃)、1、3−ブタンジオール(沸点:208℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(沸点:203℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:204℃)、テトラヒドロフラン(沸点:66℃)、クロロベンゼン(沸点:132℃)、ジメチルスルホオキシド(沸点:189℃)などが挙げられる。該有機溶剤は二種類以上を混合して用いても良い。
【0022】
特に沸点が210℃以上の有機溶剤を5〜100質量%含有する有機溶剤を使用すると、塗膜中の有機溶剤の含有量を更に容易に調節することができ好ましい。
【0023】
本発明で使用する光配向性基を有する化合物を含有する組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を使用してもよい。添加剤としては、例えば、ガラスなどの基板に対する密着性を向上させるためのシランカップリング剤、一様な塗膜を得るためのレベリング剤、また、前記式(b)で表される化合物のように、光配向性基を有する化合物が重合性基を有する場合は、重合開始剤が挙げられる。
【0024】
(塗布)
前記光配向性基を有する化合物を含有する組成物を基板上に塗布する方法に特に限定はない。通常は、ガラスやプラスチックなどの基板に、スピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、ディッピング法など公知の方法により塗布する。
【0025】
(有機溶剤の含有量調節:乾燥)
次に、得られた塗膜を乾燥させる工程において、有機溶剤の含有量を1〜50質量%となるように調節する。加熱する場合は、加熱温度を60〜110℃の範囲で行うのが好ましい。例えば、加熱温度が低温の場合は、加熱時間は比較的長く、高温の場合は加熱時間を短くする。有機溶剤の含有量は、例えば、得られた塗膜を基板ごと、使用した有機溶剤とは異なる溶媒に漬けて残存有機溶剤を抽出し、ガスクロマトグラフィー等で計測して算出する。
【0026】
(照射方法)
異方性を有する光は、偏光または塗膜面に対して斜め方向から照射した非偏光を使用することができる。偏光は、直線偏光あるいは楕円偏光を使用することができ、例えば、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrFやArFの紫外線レーザーなど、紫外光線、可視光線からの光を偏光フィルム、あるいはグラントムソンやグランテーラーなどの偏光プリズムを通すことで得られる。塗膜面に対して斜め方向から非偏光を照射する場合は、非偏光の入射角は基板法線に対して10°〜80°の範囲が好ましい。また、偏光、非偏光のいずれを使用する場合でも、照射光はほぼ平行光であることがより望ましい。
【0027】
光照射後、残存する有機溶剤を除去するには、塗膜を光照射前より高温かつ長時間で加熱乾燥すればよい。例えば、120℃で2分以上乾燥させるのが好ましい。
【0028】
光配向性基を有する化合物が重合性基を有する場合は、上記光照射処理の後に重合を行うことが好ましい。重合方法は光重合、熱重合のいずれでも良いが、熱重合であると、配向後に塗膜中に存在する有機溶剤を重合と同時に乾燥させることができ好ましい。光重合の場合は光配向剤に光重合開始剤を添加し、光照射によって光配向膜に液晶配向能を付与し、後に、例えば異なる波長の光を照射することで光重合反応を行う。一方、熱重合の場合は光配向剤に熱重合開始剤を添加し、光照射によって液晶配向能を付与した後に加熱を行うことで熱重合反応を行う。
【0029】
(用途)
本発明からなる光配向膜は、主に液晶組成物を配向させる目的に用いられる。以下にその例を示すが、これに限定されるものではない。
【0030】
(液晶表示素子)
本発明で製造した光配向膜を用いて、液晶表示素子を製造するには公知慣例の方法で行われる。一例として、TN型液晶表示素子の製造方法を示す。ITOなどの透明電極を設けた2枚のガラス基板の電極面に、本発明の光配向剤を塗布、乾燥した後、光配向膜へ紫外光線あるいは可視光線を照射することにより配向処理を行う。続いて、各々の光配向膜面はスペーサーを介して、かつ、液晶配向方向が直交するように対向させ、その間隙に液晶を注入する。得られた液晶素子の外側に、偏光板を貼り付ける。該偏光板の透過軸方向は各々の基板における液晶配向方向と平行にする。この結果、ノーマリーホワイト方式のTN型液晶表示素子を製造することができる。
【0031】
(光学異方体)
本発明で製造した光配向膜を用いて、光学異方体を作製することができる。製造は公知慣例の方法で行われる。以下に一例を示す。
本発明による光配向剤をガラス基板やプラスチック基板などの下地に塗布乾燥した後、光配向膜に可視光線あるいは紫外光線を照射することで配向処理を行う。得られた光配向膜上に、光学異方体を形成可能な重合性液晶組成物などを塗布、または2枚の基板間に狭持させる。その後、重合させることで、光学異方体を製造できる。
【実施例】
【0032】
以下に、感度の高いアゾ化合物を例にとり、本発明を実施例、比較例によって説明する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
(光配向膜用組成物(a))
式(a)で示される化合物2部と熱重合開始剤V−40(和光純薬工業株式会社製)0.05部を、表1に記載の有機溶剤に溶解させ、固形分比2.0%の溶液を作製した。得られた溶液は0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、光配向膜用組成物(a)を得た。
【0036】
(光配向膜用組成物(b))
式(b)で示される化合物1部を表1に記載の有機溶剤に溶解させ、固形分比1.0%の溶液を作製した。得られた溶液は0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、光配向膜用組成物(b)を得た。
【0037】
(塗膜作成方法)
光配向膜用組成物(a)又は(b)をスピンコーターでガラス基板上に塗布し、表1に記載の乾燥条件で乾燥して、光配向膜用塗膜(a)又は(b)を得た。
【0038】
(光配向膜(a)の作成方法(光照射して配列+熱重合)
光配向膜用塗膜(a)に、超高圧水銀ランプにバンドパスフィルターを介した平行光である波長365nm付近の非偏光な紫外光線(照射強度:20mW/cm2)を使用し、塗膜表面に対して斜め45°から照射した。その後窒素置換された150℃のオーブンで60分間熱重合処理を行い、光配向膜(a)を得た。積算光量は表1に記載の値とした。
【0039】
(光配向膜(b)の作成方法(光照射して配列)
光配向膜用塗膜(b)に、超高圧水銀ランプにバンドパスフィルターを介した平行光である波長365nm付近の非偏光な紫外光線(照射強度:20mW/cm2)を使用し、塗膜表面に対して斜め45°から照射し、光配向膜(b)を得た。積算光量は表1に記載の値とした。
【0040】
(光配向膜の膜厚測定)
前記方法で作成した光配向膜(a)及び(b)の膜厚は、自動エリプソメーター(フォトデバイス株式会社製MARY−102、光源He−Neレーザー)で測定した。
【0041】
(光配向膜中の残留有機溶剤量測定)
前記方法で作成した光配向膜用塗膜(a)又は(b)をバイアル瓶に入れ、テトラヒドロフラン0.5mlを加え、光配向膜用塗膜中の残留有機溶剤を溶解させた。その溶液をGC/MS(島津製作所株式会社製QP5050)に1μl注入し、SIMモードで光配向膜中の残留した有機溶剤量を求め、塗膜中の有機溶剤量とした。
【0042】
(配向性評価方法 液晶セルの配向状態を目視で観察した)
(液晶セル作製方法)
前記方法で作成した光配向膜付きガラス基板の周囲に、直径5μmのシリカビーズ(商品名「ハイプレシカ」:宇部日東化成株式会社製)を含んだエポキシ系熱硬化型接着剤(商品名「XN5A」:三井化学株式会社製)を液晶注入口だけ残して塗布した。80℃で30分間予備硬化した後、接着剤が塗布されていないガラス基板と圧着させ、150℃90分で接着剤を硬化させた。このとき液晶配向方向は反平行になるように重ね合わせた。続いてフッ素系液晶(商品名「11−3323」:大日本インキ化学工業株式会社製)を真空下で液晶注入口より注入充填する。液晶注入口はエポキシ系光硬化型接着剤で封止することで、反平行型(アンチパラレル型)液晶セルを得た。
【0043】
(液晶配向状態の評価方法)
液晶セルの配向状態を目視で観察し、良否を3段階評価(×:液晶配向が得られていなかった、△:液晶配向に顕著な配向ムラがあった、○:セル全面にわたって均一な液晶配向が得られていた)した。その結果は液晶セル(1)は○であった。
【0044】
【表1】

【0045】
表中、NMPはN−メチルピロリドン(沸点:202℃)を、PDは2−ピロリドン(沸点:245℃)を、PGはプロピレングリコール(沸点:188℃)を、BCは2−ブトキシエタノール(沸点:170℃)を、PhEtは2−フェノキシエタノール(沸点:245℃)を、DMFはN,N−ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)を表す。
【0046】
この結果、塗膜中の有機溶媒濃度が1〜50質量%の状態で光照射した実施例1〜4は、積算光量が2J/cmでも、液晶配向状態は良好であったが、塗膜中の有機溶媒濃度が1質量%以下、あるいは50質量%を越える比較例は、積算光量が2J/cmでは、液晶配向が得られていなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光配向性基を有する化合物を含有する組成物を基板上に塗布した後、該塗膜に異方性を有する光を照射する光配向膜の製造方法において、該塗膜が1〜50質量%の有機溶剤を含んだ状態で異方性を有する光を照射することを特徴とする光配向膜の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶剤が、沸点210℃以上の有機溶剤を5〜100質量%含有する請求項1に記載の光配向膜の製造方法。
【請求項3】
前記光配向性基を有する化合物が二色性基を有する化合物である請求項1に記載の光配向膜の製造方法。
【請求項4】
前記光配向性基を有する化合物がアゾ化合物である請求項1に記載の光配向膜の製造方法。
【請求項5】
アゾ化合物が一般式(1)で表される化合物である請求項4記載の光配向膜の製造方法。
【化1】

(式中、R、Rは、各々独立して、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基、およびマレイミド基からなる群から選ばれる重合性基を表す。
また、XまたはXはそれぞれ、RまたはRがヒドロキシ基の場合、単結合を表し、RまたはRが重合性基の場合、それぞれ−(A−B)m−または−(A−B)−で表される連結基を表す。ここで、AまたはAはそれぞれRまたはRと結合し、BおよびBは各々隣接するフェニレン基と結合する。
およびAは、各々独立して単結合、または二価の単価水素基を表し、BおよびBは、各々独立して単結合、−O−、−CO−O−,−O−CO−、−CO−NH−,−
NH−CO−、−NH−CO−O−、又は−O−CO−NH−を表す。
mおよびnは、各々独立して0〜4の整数を表す。但し、mまたはnが2以上のとき、複
数のA、B、A、およびBは同じ基であっても異なった基であってもよい。但し、二つのBまたはBの間に挟まれたA又はAは、単結合ではないものとする。
また、RおよびRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基又は水酸基、−OR(但し、Rは、炭素原子数2〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、または炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6のアルキル基を表す)を表す。但し、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。
およびRは各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、またはヒドロキシ基を表す。但し、カルボキシ基、スルホ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。)
【請求項6】
前記光配向性基を有する化合物が重合性基を有するアゾ化合物であり、該アゾ化合物を含有する組成物を基板上に塗布し、該塗膜が1〜50質量%の有機溶剤を含んだ状態で異方性を有する光を照射した後、重合性基を重合させる請求項1に記載の光配向膜の製造方法。

【公開番号】特開2012−63792(P2012−63792A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−274986(P2011−274986)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【分割の表示】特願2005−186332(P2005−186332)の分割
【原出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】