説明

光重合性且つ光開裂性の樹脂及び低応力複合組成物

本発明は、極めて低い重合収縮及びさらに極めて低い収縮応力を含むバランスのとれた固有の全体性能を特徴とする、光重合性且つ光開裂性の樹脂モノマー並びに樹脂複合組成物に関する。かかる新規の樹脂のメインフレームに組み込まれる光反応性部位は、かかる樹脂の光開裂性に基づく、樹脂及び/又は硬化樹脂の網目構造を生成することができる。このため、網目構造形成プロセスを変えて結果的に収縮応力を有意に緩和させることから、(メタ)アクリレートベース樹脂系に関するフリーラジカル反応の重合速度は実質的に遅いものとなる。加えて、かかるP&P樹脂を含有するラジカル重合性樹脂系は、硬化材料中の寸法安定性及び収縮応力が全体性能にとって重要である、マイクロエレクトロニクス、特別なコーティング及び修復歯科における広範な用途を見い出すものであると期待されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて低い重合収縮及びさらに極めて低い収縮応力を含むバランスのとれた固有の全体性能を特徴とする、光重合性且つ光開裂性の樹脂モノマー並びに樹脂複合組成物に関する。かかる新規の樹脂のメインフレームに組み込まれる光反応性部位は、かかる樹脂の光開裂性に基づく、樹脂及び/又は硬化樹脂の網目構造を生成することができる。このため、網目構造形成プロセスを変えて結果的に収縮応力を有意に緩和させることから、(メタ)アクリレートベース樹脂系に関するフリーラジカル反応の重合速度は実質的に遅いものとなる。加えて、かかるP&P樹脂を含有するラジカル重合性樹脂系は、硬化材料中の寸法安定性及び収縮応力が全体性能にとって重要である、マイクロエレクトロニクス、特別なコーティング及び修復歯科における広範な用途を見い出すものであると期待されている。
【背景技術】
【0002】
高架橋ポリマーは、複合体、発泡構造体、構造用接着剤、電子パッケージ用の絶縁体等のマトリクスとして広範に検討されている。高密架橋構造は、高弾性率、高破壊強度及び耐溶剤性等の優れた機械特性に基づくものである。しかしながら、これらの材料は、クラックの形成及び伝播に起因する高い応力によって不可逆的に損傷を受ける。重合応力は、制限される鎖移動性と併せて重合収縮によって生じる。これは最終的に収縮応力集中をもたらし、また徐々にこのような閉じ込められた応力が放出して、界面領域のような或る特定の弱い帯域に損傷を微視的にもたらす。微視的にこれは、剥離、クラッキング等として反映されていた。同様に、現行の接着修復物における収縮応力の発生は、樹脂複合体が硬化している間の収縮の制限にも起因し、またこれは修復物の構成に大いに影響を受ける。さらに、機能充填(functional loading)中の不均質変形は材料の界面並びに凝集に損傷を与えるおそれがある。種々のアプローチは、修復材料からの全体的な応力の発生を制限することによって、又は修復された界面の直接的な応力集中を最小限に抑えることによって研究されている。このようなアプローチには、例えば、新規の樹脂、新規の樹脂化学物質、新規のフィラー、新規の硬化プロセス、新規の結合剤及びさらに新規の手法が含まれる。
【0003】
低重合収縮及び低収縮応力を与え得る新規の樹脂マトリクスの開発には多大な関心が寄せられている。例えば、(メタ)アクリレートベース樹脂系の種々の構造及び幾何学形状の誘導体、例えば非(メタ)アクリレート樹脂系、非ラジカルベース樹脂系が挙げられる。加えて、光硬化性の低収縮歯科用複合材料について、新規の樹脂系及び新規の光開始剤のみならず、ナノメートルからマイクロメートルまでの種々の粒径及びサイズ分布、異なる形状、粉砕された不規則の又は仕上がりが球状の形状を有するフィラーのような新規のフィラー及びフィルタの表面改質が広範囲にわたって研究されている。これはまた、無機、有機、ハイブリッドであるような組成が異なり得る。漸進的な改良は、各アプローチ及び/又はそれらの相互の寄与によって達成されているが、重合応力は依然として硬化網目構造系における最大の課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、極めて低い重合収縮及びさらに極めて低い収縮応力を含むバランスのとれた固有の全体性能を特徴とする、光重合性且つ光開裂性の樹脂モノマー並びに樹脂複合組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は新規の種類の樹脂組成物に関する。しかしながら、従来の樹脂系とは異なり、新たな考えがかかる新たな樹脂組成物の設計に関与し、応力を一部放出させるために、ポストゲル段階における重合応力を、その後の選択的な網目構造の開裂に与える。上述のように、低収縮及び低応力に向けたこれまでの技術は全て、一般的に収縮及び応力の形成を制限することに基づくものである。しかしながら、硬化網目構造系における収縮及び応力の発生は、2つの異なる段階、即ちプレゲル段階及びポストゲル段階を有するものである。実際に、現行の技術の大半の試みはプレゲル段階に着目するものであり、試みのいくつかが効果的であることが判明している。残念なことに、これらのアプローチは、収縮がプレゲル段階ほど起こらないが、任意の重合伸長に対して応力がさらに影響を受けるようになるポストゲル段階における応力の発生を制御する点で効果的でない。硬化系内で増大する架橋密度の不動性は、硬化系中の応力集中を増大させる。さらに悪いことに、ここで問題は終わらず、閉じ込められた応力が最終的に緩徐な弛緩によって開放されることにより、修復系にさらなる損傷が生じるおそれがある。このため、本発明者らのアプローチは、ポストゲル段階において、任意の架橋系の「閉じた網」の幾つかが選択的に破壊されて応力緩和期間の延長を促し得る場合に、全応力集中が実質的に軽減されるとう考えに基づくものである。このような課題に応えるために、光重合性且つ光開裂性の樹脂を提案し、包括的な分子構造を設計する。かかる樹脂モノマーは、任意の他の樹脂モノマーのように重合することができるが、そのメインフレームは、近UVが融合されているような付加的な光源を受けて破壊を誘起することができると予想された。これは典型的な光開裂プロセスであるが、光重合され且つ架橋系中に包埋される性能はかかる樹脂モノマーを独特なものとする。加えて、光開裂プロセスはまた、このような二次破壊による如何なる浸出可能な種も再生しないようにすることができる。
【0006】
光開裂はペプチドの固相合成では新規のものでなく、これより、新たなペプチドを設計配列の或る特定の鋳型上に方向付けた後、その後の露光によってこれを鋳型から切断した。このようなプロセスでは化学な汚染はない。他方で、光酸及び光塩基を光開裂の拡大応用とみなすことができる。酸成分又は塩基成分は、系中の他のものとのあらゆる望ましくない相互作用を避けるように一時的に潜伏し、露光等の要求により放出されて酸又は塩基の再生を誘起することができる。その後、これらの酸又は塩基は、次の工程の反応のための一般的な酸性触媒又は塩基性触媒として作用する。近年、MEMS、熱不安定性接着剤、熱スプレーコーティング及び除去可能な封入等の中の充填ポリマーの容易な除去のような用途のために、ポリマー又は高分子網目構造を解重合性又は分解性にするために、熱によって脱着可能であるか又は光化学的に可逆的な材料が開発されている。ごく最近では、薬剤送達の有効性を改善するために光開裂性デンドリマーが研究されている。本発明者らの知識によれば、収縮応力の制御についての硬化網目構造中の光開裂性セグメントに関する先行技術は存在しない。しかしながら、関連技術の全てを実用的なベースとして使用して、この研究を正当化することができた。
【0007】
【化1】

【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】P&P樹脂/ペースト対TPH樹脂/ペーストの応力比較を示す図である。
【図2】P&P樹脂対TPH樹脂の窒素中における光重合熱を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
アプローチ:
理論的に言うと、熱開裂性又は光不安定性の結合のようないくらか環境に影響を受けやすい部位が重合性樹脂モノマー中に組み込まれた場合、かかる樹脂又はその結果得られる高分子材料はコマンドに依存性(command-responsible)になり、より詳細には、それらを熱開裂性又は光開裂性にすることができる。幾つかの従来の光開始剤の化学は、このような開始剤が重合性光開始剤又はマクロ開始剤として研究されてきたことから、かかる光重合性且つ光開裂性の樹脂モノマーを設計するベースとして使用することができた。しかしながら、実際にはそれらのうちのいずれも、どうにかしてポリマー鎖又は網目構造を破壊可能にするようにポリマー鎖又は高分子網目構造中に組み込まれていなかった。
【0010】
本研究の別の目的は、光開裂性又は熱不安定性の部位を光重合性樹脂モノマーの一部として組み込むことによって、低収縮及び低応力の次世代修復材料用の新規の樹脂系を開発することである。このような独特のアプローチを用いて、従来の重合網目構造が選択的に開裂され、これにより、重合後に応力が分散し、さらに自己応力の緩和がもたらされ、最終的には全応力集中が最小限に抑えられるようにすることができると予想した。
【0011】
重合網目構造を光によるコマンドに応じた開裂性又は光開裂性にするために、光応答性部位は、エネルギーレベルが顕著な特定の光に対するさらなる露光まで、可視光硬化等の標準露光プロセスに対して安定であるものとする。詳細には、かかるエネルギー源は、標準可視青色光以外の任意のものであり得る。近UV光は、多くの可能な選択肢の典型的な例の1つである。さらに、オルト−ニトロベンジルセグメント又はα−ヒドロキシアルキルフェノンに由来の化合物が、可視光によって光重合され且つ必要に応じてさらなるUV光によって破壊可能になるよう誘起されるこの新規のクラスの樹脂モノマーの理想的な候補であると予想された。
【0012】
【化2】

スキームI:α−ヒドロキシアルキルフェノンに基づく典型的な重合性且つ光開裂性の樹脂モノマー
【0013】
このアプローチの実行可能性により、新規のクラスの樹脂に対する多用性についての迅速な研究が可能になる。したがって、多様なかかる重合性且つ光開裂性の樹脂モノマーを、スキームIIに示すように広範な構成で首尾良く調製した。
【0014】
【化3】

スキームII:P&P樹脂モノマーへの一般的な反応経路
【0015】
したがって、かかるα−ヒドロキシアルキルフェノンの1つは、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロパノン(HP)、即ち典型的なα−ヒドロキシアセトフェノン光開始剤である。その2つのヒドロキシル基は、スキームIIに示したような種々の単純な反応を介して広範な光重合性モノマーを構成し得る。例えば、HPには、1段階反応又は2段階反応を介してメタクリレート、アクリル化エーテル又はビニルエーテル等を組み込むことができる。様々な光重合性HP誘導体は、エステル−エステル結合、エステル−カーボネート結合、カーボネート−カーボネート結合及びウレタン−ウレタン結合を介して調製した。それらのうち、ウレタン−ウレタン結合が最もしっかりとしたプロセス(例えば、制御が容易な非溶剤プロセス)を提供する。
【0016】
また、かかる新たな樹脂モノマーは、得られる複合材料の全体的な性能のバランスをとるために、BisGMA、TEGDMA、UDMAのような他の従来の樹脂モノマー、又は大環状樹脂のような実験樹脂モノマーと共に様々な比率で配合した。以下の実施例に示すように、顕著な低収縮、低応力及び優れた機械特性、並びに良好なハンドリング特性が、かかる新たなクラスのP&P樹脂モノマーに基づくそれらの複合材料によって示された。
【0017】
実施例に示すように、典型的なウレタンベースのP&P樹脂は、単純なバルクプロセスを介して容易に調製することができる。イソシアネートの性質に応じて、かかるP&P樹脂を調製するのに1段階反応又は2段階反応を伴う。IEMは最も単純な重合性イソシアネートである。残念なことに、その毒性が、生物医学的な材料としてのその適用を制限している。ここで、本発明者らは、このような光重合性且つ光開裂性の樹脂を生成する単純な2段階プロセスを開発することに成功した:工程Iでは、HPをジイソシアネートでキャップして、配列が十分に制御された新たなジイソシアネートを形成し、次にこれを、工程IIの反応として、ヒドロキシル基を含有する任意の(メタ)アクリレートとさらに反応させた。この手法は、1つの反応器内における反応の実施を可能にするだけでなく、IEMの代わりに容易に入手可能なジイソシアネートを用いることを可能にする。
【0018】
好適なジイソシアネートとしては、アルキレン基が2個〜約18個の炭素原子に及ぶアルキレンジイソシアネート、並びにアリーレン及び置換アリーレンジイソシアネート及びポリイソシアネートが挙げられる。このため、例示的なジイソシアネート及びポリイソシアネートとしては、例えば、
アルキレンジイソシアネート類、
エチレンジイソシアネート、
プロピレンジイソシアネート、
テトラメチレンジイソシアネート、
ペンタメチレンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、
ヘキサメチレンジイソシアネートビウレット、
ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(イソシアヌレート)、
オクタメチレンジイソシアネート、
デカメチレンジイソシアネート、
ウンデカメチレンジイソシアネート、
ドデカメチレンジイソシアネート、
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、
水素化ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、
アリーレンジイソシアネート類、
キシリレン−1,4−ジイソシアネート(p−XDI)、
キシリレン−1,3−ジイソシアネート(m−XDI)、
m−フェニレンジイソシアネート、
p−フェニレンジイソシアネート、
トルエン−2,6−ジイソシアネート(2,6−TDI)、
トルエン−2,4−ジイソシアネート(2,4−TDI)、
メシチレンジイソシアネート、
ジュリレンジイソシアネート、
ベンジデンジイソシアネート、
1−メチルフェニレン−2,4−ジイソシアネート、
ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、
1,2,4−ベンゼントリイソシアネート、
4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、
3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、
4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、
ジアニシジンジイソシアネート、
m−テトラメチレンキシレンジイソシアネート(TMXDI)、
が挙げられる。
【0019】
また、ヒドロキシル基を含有する好適な(メタ)アクリレートとしては、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
3−(アクリルオキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
ジエチレングリコールモノヒドロキシル(メタ)アクリレート、
トリエチレングリコールモノヒドロキシル(メタ)アクリレート、
テトラエチレングリコールモノヒドロキシル(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールモノヒドロキシル(メタ)アクリレート、
が挙げられる。
【0020】
驚くべきことに、硬化後の高分子網目構造のための本発明による樹脂状歯科用組成物が如何なるフィラーも添加しなくとも、光開裂の前であっても著しく低い重合応力を有することが見出された(図1)。かかる新規なP&P樹脂中に組み込まれるHP部位は何らかの形でラジカル反応に関与するため、たとえこの時点で開裂が起きていなくとも可視光に曝されている間、従来の光重合時の重合速度を遅くすると考えられる。これらのP&P樹脂ベース材料の比較的遅い重合速度(図2)は、それらの急速な硬化系よりも大幅な応力の緩和を可能にする。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
【表5】

【0026】
ここで、本発明の範囲を決して限定するものではない以下の実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0027】
実施例では以下の省略形を使用する。
BisGMA:2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル)プロパン
HP:4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロパノン
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HEPA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
UDMA:ジ(メタクリルオキシエチル)トリメチル−1,6−ヘキサエチレンジウレタン
HEMASA:モノ−2−(メタクリル−オキシ)エチル−スクシネート
TMDI:2,2,4(2,4,4)−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
IEM:メタクリルオキシエチルイソシアネート
ICEM:1−メタクリルオキシエチル−2,4,4(2,2,4)−トリメチル−6−ヘキサンイソシアネート
CDI:1,1’−カルボニルジイミダゾール
BHT:ブチルヒドロキシトルエン
DBTDL:ジブチルスズジラウレート
TCDCA:トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−ジメタノールジアクリレート
【0028】
[実施例1]
IEM−HP−IEM(XJ5−129)の付加物の調製
油浴中に浸漬させた、機械攪拌機、乾燥空気導入口及び水冷コンデンサーを備えた250ml容の三口フラスコに、25.5グラムのIEM、並びに0.15グラムのDBTDL及び0.1グラムのBHTを充填した。次に、これに14.7グラムの粉砕HPを充填した。油浴温度によって反応を25℃に維持した後、一晩反応させるように温度を30℃〜35℃に徐々に上げた。HPを95%まで変換させた。さらなる希釈剤(33グラムのTCDCA)を用いて粘度を調節した。
【0029】
[実施例2]
HEMA−TMDI−HP−TMDI−HEMA(XJ5−140)の付加物の調製
油浴中に浸漬させた、粉末添加漏斗、機械攪拌機、乾燥空気導入口及び水冷コンデンサーを備えた500ml容の三口フラスコに、71.5グラムのTMDI及び0.21グラムのDBTDLを充填した。次に、TMDI−HP−TMDIの所望の配列を危うくする可能性のある急速な反応熱の上昇を避けるように、22.4グラムの粉砕HPを、分割して5時間〜6時間の間フラスコに徐々に添加した。TMDIで完全にキャップされたHPの完全な変換を、1H NMRによって容易に確定することができる。次に、0.15グラムのBHTを系中に充填した。乾燥空気を反応系へ連続的にパージしながら、71.6グラムのHEMAを、2時間の間に滴下漏斗を介してフラスコに添加した。早期重合又はゲル化を起こす可能性のある系の過熱を避けるように反応速度を最小限に抑えるために、効果的な攪拌がHEMA添加の初期段階時に重要である。反応温度を60℃以下に制御しなければならならず、45℃以下が最も好ましい。HEMA添加後に、35℃〜40℃でさらに1時間反応させる。その後、TEGDMA等のさらなる希釈剤を系中に充填し、2時間混合した。同様に1H NMRを用いてHEMA/NCO変換を判断した。典型的な2段階反応は、97%〜99%の収率で14時間以内に完了した。
【0030】
[実施例3]
HEMA−HDI−HP−HDI−HEMA(XJ5−136)の付加物の調製
油浴中に浸漬させた、粉末添加漏斗、機械攪拌機、乾燥空気導入口及び水冷コンデンサーを備えた250ml容の三口フラスコに、40.8グラムのHDI、並びに0.17グラムのDBTDL及び0.15グラムのBHTを充填した。その後、22.4グラムの粉砕HPを、分割して3時間〜4時間の間フラスコに徐々に添加した。HDI−HP−HDIの所望の配列を危うくする可能性のある急速な反応熱の上昇を避けるように、反応温度は工程を通して25℃に維持した。反応を一晩実施し続け、得られた樹脂ははっきりと分かるように部分的に結晶化された不透明体となった。TMDIで完全にキャップされたHPの完全な変換を、1H NMRによって容易に判断することができる。乾燥空気を反応系へ連続的にパージしながら、27.0グラムのHEMAをフラスコに徐々に添加した。反応温度を35℃〜40℃に上げた。35℃〜40℃のさらに6時間の反応後、70グラムの希釈剤を得られた樹脂と排出前に2時間混合した。
【0031】
[実施例4]
HEMA−TMDI−HP−TMDI−HEMA(LB6−73)の付加物の調製
35℃の加熱された水を反応中に循環させた、粉末添加漏斗、機械攪拌機、乾燥空気導入口及び水冷コンデンサーを備えた1000ml容のジャック付(jacked)シリンダー樹脂ケトルに96.6グラムのTMDI及び0.25グラムのDBTDLを充填した。35.5グラムの粉砕HPを、分割して6時間の間フラスコに徐々に添加した。TMDIで完全にキャップされたHPの完全な変換を、1H NMRによって容易に判断することができる。その後、0.20グラムのBHTを系中に充填した。乾燥空気を反応系へ連続的にパージしながら、86.2グラムのHEMAを、2時間の間に滴下漏斗を介してフラスコに添加した。早期重合又はゲル化を起こす可能性のある系の過熱を避けるように反応速度を最小限に抑えるために、効果的な攪拌がHEMA添加の初期段階時に重要である。反応温度を60℃以下に制御しなければならならず、45℃以下が最も好ましい。HEMA添加後に、35℃〜40℃でさらに1時間反応させる。その後、30グラム〜40グラムのTEGDMA等のさらなる希釈剤を系中に充填し、2時間混合した。同様に1H NMRを用いてHEMA/NCO変換を判断した。典型的な2段階反応は、97%〜99%の収率で14時間以内に完了した。
【0032】
[実施例5〜実施例14]
実施例4に記載したような同様な反応手順毎に、表Iは、様々な組成に基づく35℃における他の反応行程について詳細に記載している。
【0033】
【表6】

【0034】
[実施例15]
HPN−HDI−HPN(XJ5−160)の付加物の調製
油浴中に浸漬させた、機械攪拌機、乾燥空気導入口及び水冷コンデンサーを備えた500ml容の三口フラスコに、9.7グラムのHDI、並びに0.11グラムのDBTDL及び19.3グラムのHPNを室温で充填した。その後、反応温度を35℃に上げ、一晩処理を続けた。
【0035】
[実施例16]
HP−TMDI−HP(XJ5−169)の付加物の調製
油浴に浸漬させた、機械攪拌機、乾燥空気導入口及び水冷コンデンサーを備えた250ml容の三口フラスコに、250mlの乾燥二塩化メチレン、22.45グラムのHP及び0.14グラムのDBTDLを室温で充填した。HPは溶媒に不溶性である。その後、10.55グラムの粉砕TMDIをフラスコに1時間以内で滴下した後、反応を一晩実施し続けた。その後、50グラムのTEGDMAを得られたビスコース液体と混合した。
【0036】
[実施例17]
HPN−TMDI−HEMA(XJ5−157)の付加物の調製
油浴に浸漬させた、機械攪拌機、乾燥空気導入口及び水冷コンデンサーを備えた250ml容の三口フラスコに、22.63グラムのTMDI及び0.16グラムのDBTDLを室温で充填した。その後、滴下添加漏斗中の16.4グラムのHPNを、1.5時間以内でフラスコに徐々に添加した。さらに1時間反応させた後、18.8グラムのHEMAを、2時間の間滴下添加漏斗を介してフラスコに徐々に充填した。反応を一晩実施し続けた。
【比較例1】
【0037】
ICEM−HP−ICEM(XJ5−146)の付加物の調製
油浴に浸漬させた、機械攪拌機、乾燥空気導入口及び水冷コンデンサーを備えた500ml容の三口フラスコに、56.3グラムのICEM及び20.0グラムのTEGDMAを充填した。次に、0.11グラムのDBTDL及び0.05グラムのBHTを充填した。油浴温度を25℃に設定した。その後、11.2グラムの粉砕HPを全て添加した。遅い温度上昇によってはっきりと分かるように反応は徐々に起こった。35℃まで加熱し、上記で用いたのと同様の1H NMR法によって判断されるような最大の変換(96%)前にさらに222時間その温度に維持した。実施例3〜実施例14に示したように、2段階反応プロセスは、この対照実施例に記載の1段階プロセスよりも効率的であることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性光応答性部位を含む、光重合性且つ光開裂性の樹脂モノマー。
【請求項2】
前記部位がより好ましくはα−ヒドロキシアルキルフェノンである、請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
前記α−ヒドロキシアルキルフェノンが4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロパノンである、請求項2に記載のモノマー。
【請求項4】
エステル結合、カーボネート結合、尿素結合、ウレタン結合又はエーテル結合、及びそれらの組合せをさらに含む、請求項1に記載のモノマー。
【請求項5】
少なくとも2つの光重合性基をさらに含む、請求項1に記載のモノマー。
【請求項6】
前記光重合性基が、同じであるか又は異なり、ビニル基、ビニルエーテル基、アクリレート基及びメタクリレート基から成る群から選択される、請求項5に記載のモノマー。
【請求項7】
1段階プロセス又は2段階プロセスを経てウレタンベースモノマーの誘導体として形成される、請求項1に記載のモノマー。
【請求項8】
前記ウレタンベースモノマーが、アルキレン基が2個〜約18個の炭素原子を有するアルキレンジイソシアネート、並びにアリーレン・及び置換アリーレン・ジ‐及びポリ‐イソシアネートから成る群から選択される、請求項7に記載のモノマー。
【請求項9】
前記シアネートが、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘキサメチレンジイソシアネートビウレット、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(イソシアヌレート)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ウンデカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、キシリレン−1,4−ジイソシアネート(p−XDI)、キシリレン−1,3−ジイソシアネート(m−XDI)、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート(2,6−TDI)、トルエン−2,4−ジイソシアネート(2,4−TDI)、メシチレンジイソシアネート、ジュリレンジイソシアネート、ベンジデンジイソシアネート、1−メチルフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−テトラメチレンキシレンジイソシアネート(TMXDI)から成る群から選択され、また、ヒドロキシル基を含有する好適な(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(アクリルオキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヒドロキシル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノヒドロキシル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノヒドロキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノヒドロキシル(メタ)アクリレート、及びそれらの組合せが挙げられる、請求項8に記載のモノマー。
【請求項10】
請求項1に記載のモノマーを含有する、歯科用材料。
【請求項11】
BisGMA、TEGDMA、UDMA及びHEMAから成る群から選択される少なくとも1つのさらなる樹脂をさらに含む、請求項10に記載の歯科用材料。
【請求項12】
前記材料が、該歯科用材料の約1重量%〜約99重量%の量のモノマーを含む、請求項11に記載の歯科用材料。
【請求項13】
前記モノマーが、前記歯科用材料の約20重量%〜約70重量%の量で存在する、請求項12に記載の歯科用材料。
【請求項14】
前記モノマーが、前記歯科用材料の約30重量%〜約50重量%の量で存在する、請求項13に記載の歯科用材料。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−540107(P2009−540107A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515527(P2009−515527)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/014158
【国際公開番号】WO2008/005173
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(590004464)デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド (85)
【Fターム(参考)】