説明

光重合性組成物、光記録媒体、および情報記録方法

【課題】高感度かつ超高密度光記録を実現するための手段を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物、非共鳴2光子吸収化合物、およびバインダーを含有することを特徴とする光重合性組成物。上記光重合性組成物を含む記録層を有する光記録媒体。上記光記録媒体への情報記録方法。


[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は隣り合う炭素原子、硫黄原子および該硫黄原子と結合する炭素原子とともに環構造を形成する原子団を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2光子吸収による光重合が可能な光重合性組成物に関するものであり、より詳しくは、非共鳴2光子吸収を利用したラジカル重合が可能な光重合性組成物に関するものである。
更に本発明は、3次元的屈折率変調が可能な光記録媒体およびこの光記録媒体への情報記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザー光により一回限りの情報の記録が可能な光情報記録媒体(光ディスク)が知られており、追記型CD(いわゆるCD−R)、追記型DVD(いわゆるDVD−R)などが実用化されている。
【0003】
最近、デジタル放送の開始、Blu-rayディスクの普及などにより、民生用途においても大容量記録媒体への要求が高くなっている。さらにはコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途、業務用途においては1TB以上、またはそれ以上の大容量の情報を高速かつ、安価に記録できる光記録媒体が求められている。そのような中、DVD−Rのような従来の2次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしても記録容量は片面25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない。
【0004】
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、3次元光記録媒体が注目を集めている。3次元光記録媒体は、3次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の2次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。3次元光記録媒体を提供するためには、3次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならない。
【0005】
近年、3次元光記録方法として、2光子吸収を利用する方法が提案されている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象である。2光子吸収の中でも、化合物の線形吸収帯が存在しないエネルギー領域で起こる2光子吸収を、非共鳴2光子吸収という。非共鳴2光子吸収の効率は、印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが多い。いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。
したがって、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて情報の記録や重合を起こすことができれば、3次元空間の任意の場所において重合を起こすことができるため、究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体や、微細3次元光造形材料等への応用も可能となる。例えば非特許文献1〜5には、非共鳴2光子吸収による2光子重合を、光造形などへ応用することが提案されている。
【0006】
しかし非特許文献1〜5に記載の方法では、高効率な2光子吸収化合物および適切な重合開始剤を用いていないため、重合の効率が悪い。したがって、これらの方法は、重合により光造形等を行うためには強いレーザー光を長時間照射しなければならず、光記録用途に使用することは実用上困難と考えられる。
【0007】
これに対し本願出願人は、非共鳴2光子吸収化合物と重合開始剤を併用することにより、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて重合を起こし、その結果、レーザー焦点部と非焦点部で3次元的に屈折率変調を起こすことにより3次元光記録が可能となることを見出した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−346238号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nature. 1999年、398巻、51頁
【非特許文献2】J. Phys. Org.Chem. 2000年、13巻、837頁
【非特許文献3】Chem. Phys. Lett. 2001年、340巻、444頁
【非特許文献4】J. Am. Chem. Soc. 2000年、122巻、1217頁
【非特許文献5】Oppt. Lett. 1997年、22巻、132頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載の方法は、3次元空間の任意の場所にきわめて高い空間分解能で屈折率変調を起こすことができ、これにより究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体を実現することができる優れた方法であるが、記録感度の点からは必ずしも十分とは言えず、更なる改善が求められる。
【0011】
そこで本発明の目的は、高感度かつ超高密度光記録を実現するための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(I)で表される環状アリルスルフィド化合物を、非共鳴2光子吸収化合物と併用することにより、高感度記録が可能な3次元光記録媒体を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]下記一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物、非共鳴2光子吸収化合物、およびバインダーを含有することを特徴とする光重合性組成物。
【化1】

[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は隣り合う炭素原子、硫黄原子および該硫黄原子と結合する炭素原子とともに環構造を形成する原子団を表す。]
[2]光記録用重合性組成物である[1]に記載の光重合性組成物。
[3]一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物は、下記一般式(II)で表される化合物である[1]または[2]に記載の光重合性組成物。
【化2】

[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義であり、R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、m1は0または1を表す。]
[4]一般式(II)中、R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す[3]に記載の光重合性組成物。
[5]一般式(II)中、R1およびR12はいずれも水素原子を表し、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基を表し、m1は1を表す[3]に記載の光重合性組成物。
[6]一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物は、下記一般式(III)で表される化合物である[1]または[2]に記載の光重合性組成物。
【化3】

[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義であり、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、m2は0または1を表す。]
[7]一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す[6]に記載の光重合性組成物。
[8]一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基を表し、m2は0を表す[6]に記載の光重合性組成物。
[9]ラジカル重合開始剤を更に含有する[1]〜[8]のいずれかに記載の光重合性組成物。
[10]前記バインダーは、前記ラジカル重合性化合物とは異なる屈折率を有する[1]〜[9]のいずれかに記載の光重合性組成物。
[11]前記バインダーは、前記ラジカル重合性化合物よりも低屈折率を有する[10]に記載の光重合性組成物。
[12]前記バインダーは、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリウレタン、およびフッ素原子含有高分子からなる群から選ばれる少なくとも一つのポリマーである[1]〜[11]のいずれかに記載の光重合性組成物。
[13]前記非共鳴2光子吸収化合物は、有機色素である[1]〜[12]のいずれかに記載の光重合性組成物。
[14]前記有機色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素およびポリアリール色素からなる群から選ばれる少なくとも一種である[13]に記載の光重合性組成物。
[15][1]〜[14]のいずれかに記載の光重合性組成物を含む記録層を有することを特徴とする光記録媒体。
[16][15]に記載の光記録媒体へ光照射することにより情報を記録する情報記録方法であって、
前記照射する光として、前記非共鳴2光子吸収化合物の線形吸収の存在しない波長であって、かつ該化合物の線形吸収帯よりも長波長域の波長のレーザー光を使用することを特徴とする情報記録方法。
[17]前記光照射により、前記記録層中に屈折率変調を起こすことによって情報を記録する[16]に記載の情報記録方法。
[18]前記屈折率変調は、3次元的屈折率変調である[17]に記載の情報記録方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光重合性組成物は、レーザー焦点部(記録部)と非焦点部(非記録部)にて屈折率を3次元的に変調することができ、その結果、光の反射率または透過率を変えることができるため、3次元光記録媒体への応用が可能である。
更に本発明によれば、高感度記録が可能な3次元光記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[光重合性組成物]
本発明の光重合性組成物は、下記一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物(環状アリルスルフィド化合物)、非共鳴2光子吸収化合物、およびバインダーを含有するものであり、任意にラジカル重合開始剤、連鎖移動剤、熱安定剤、可塑剤、溶剤等の成分を含むことができる。本発明の光重合性組成物は、光照射により非共鳴2光子吸収化合物が非共鳴2光子吸収を起こす。前記ラジカル重合性化合物は、非共鳴2光子吸収化合物が重合開始剤の役割を果たすことにより、または非共鳴2光子吸収化合物との相互作用によりラジカル種を発生するラジカル重合開始剤の作用により、光重合を起こすことができる。
【0016】
2光子吸収化合物とは、2つの光子を同時に吸収して励起される化合物であり、非共鳴2光子吸収化合物とは、2光子吸収化合物の中でも、化合物の線形吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子吸収(このような2光子吸収を、「非共鳴2光子吸収」という)を起こす化合物である。先に説明したように、非共鳴2光子吸収化合物は、2光子吸収の2乗特性に由来して空間内部の1点でのみ励起を起こすことができる。したがって、非共鳴2光子吸収化合物の励起エネルギーを用いることにより、3次元空間の任意の場所において重合を起こすことができる。そして本発明の光重合性組成物は、上記特性を有する非共鳴2光子吸収化合物を一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物と組み合わせることにより、3次元光記録の高感度化を実現することができる。一般式(I)で表される環状アリルスルフィド化合物は、成長ラジカルがSラジカルであることと、S原子のα位の水素(隣の炭素の水素)原子を有するため、チオールエン反応に見られるような酸素重合阻害を受けないという特徴を有する。そのため、汎用的なラジカル重合性モノマーであるメタクリレートや、アクリレートモノマーよりも酸素存在下、または溶存酸素存在下においても重合反応が進行しやすいという特徴を有する。光記録媒体を構成した際、記録層にも溶存酸素が存在し得るために、汎用モノマーを用いた場合は、ある程度の重合阻害を受ける。これに対して、一般式(I)で表される環状アリルスルフィドをモノマーとして用いた際は重合阻害を受けないために高感度で記録が可能である。
以上説明したように、本発明の光重合性組成物によれば、高感度な3次元光記録が可能となる。
以下、本発明の光重合性組成物について、更に詳細に説明する。
【0017】
ラジカル重合性化合物
本発明の光重合性組成物は、下記一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物を含む。
【0018】
【化4】

【0019】
以下、一般式(I)で表される環状アリルスルフィド化合物について説明する。
【0020】
一般式(I)中、Z1は隣り合う炭素原子、硫黄原子および該硫黄原子と結合する炭素原子とともに環構造を形成する原子団を表す。Z1により形成される環状構造の構成要素としてはメチレン炭素を挙げることができ、メチレン炭素以外に、カルボニル基、チオカルボニル基、酸素原子や、硫黄原子など二価の有機連結基を挙げることもでき、これらの組み合わせにより上記環構造が構成される。その環員数は6〜9であることが好ましく、6〜8であることがより好ましく、7〜8であることが特に好ましい。また、その環構造のメチレン炭素数は3〜7であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、4〜5であることが特に好ましい。
【0021】
一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表す。R1で表されるアルキル基としては直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜3であることが特に好ましい。なお、本発明において、ある基について「炭素数」とは、置換基を有する基については、該置換基を含まない部分の炭素数をいうものとする。
【0022】
1で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、2,3−ジブロモプロピル基、アダマンチル基、ベンジル基、4−ブロモベンジル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
【0023】
一般式(I)中において、R1で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(I)の環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、多官能体を表す。
【0024】
一般式(I)中においてR1が水素原子またはアルキル基を表し、かつZ1と隣り合う炭素原子、硫黄原子および該硫黄原子と結合する炭素原子とともに形成される環構造の環員数が6〜9であり、かつZ1で表される原子団がメチレン炭素以外に、カルボニル基、酸素原子または硫黄原子のいずれか、もしくはそれらの組み合わせを含むことが好ましく、R1が水素原子またはアルキル基を表し、かつZ1と隣り合う炭素原子、硫黄原子および該硫黄原子と結合する炭素原子とともに形成される環構造の環員数が6〜8であり、かつZ1で表される原子団がメチレン炭素以外にカルボニル基と酸素原子の組み合わせ、または硫黄原子を含むことより好ましく、R1が水素原子またはアルキル基を表し、かつZ1と隣り合う炭素原子、硫黄原子および該硫黄原子と結合する炭素原子とともに形成される環構造の環員数が7〜8であり、かつZ1で表される原子団がメチレン炭素以外に硫黄原子を含むこと特に好ましい。一般式(I)で表される化合物は、記録特性の点からは、一般式(II)、または一般式(III)で表される化合物であることが好ましく、一般式(II)で表される化合物であることが特に好ましい。
以下に、一般式(II)で表される化合物および一般式(III)で表される化合物について説明する。
【0025】
一般式(II)で表される環状アリルスルフィド化合物
【化5】

【0026】
一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義であり、R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、m1は0または1を表す。
【0027】
一般式(II)中、R1、R12、R13、R14、R15で表されるアルキル基の詳細は、上述した一般式(I)中のアルキル基の説明と同様である。
【0028】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリール基としては、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
【0029】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるヘテロ環基は、炭素数4〜14のヘテロ環基であることが好ましく、炭素数4〜10のヘテロ環基であることがより好ましく、炭素数5のヘテロ環基であることが特に好ましい。R13、R14、R15で表されるヘテロ環基の具体例としては、ピリジン環、ピペラジン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。前記ヘテロ環の中でもピリジン環が特に好ましい。
【0030】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルコキシ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ターシャリーオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2,3−ジブロモプロピルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、4−ブロモベンジルオキシ基などが挙げられる。
【0031】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基などが挙げられる。
【0032】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルキルチオ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルプロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ノルマルブチルチオ基、イソブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ターシャリーオクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基、2,3−ジブロモプロピルチオ基、アダマンチルチオ基、ベンジルチオ基、4−ブロモベンジルチオ基などが挙げられる。
【0033】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールチオ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラニルチオ基などが挙げられる。
【0034】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアルコキシカルボニル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ノルマルプロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ノルマルブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、ターシャリーブチルオキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ターシャリーオクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0035】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアリールオキシカルボニル基、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は7〜30であることが好ましく、7〜20であることが特に好ましい。具体例としては。例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0036】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシルオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ノルマルプロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ノルマルブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、ターシャリーブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ターシャリーオクチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
【0037】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアシルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0038】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるスルホニルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなスルホニルアミノ基としては、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基などが挙げられる。
【0039】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアミノ基は、一置換アミノ基であっても、二置換のアミノ基であってもよく、二置換のアミノ基が好ましい。無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
【0040】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるアシル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0041】
一般式(II)中、R13、R14、R15で表されるハロゲン基としては、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などが挙げられ、ブロモ基が好ましい。
【0042】
一般式(II)中、R1、R12、R13、R14、R15で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(II)で表される環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、多官能体を表す。
【0043】
一般式(II)中、m1は0または1の整数を表す。m1は1であることが好ましい。
【0044】
一般式(II)で表される化合物の好ましい態様としては、R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す化合物を挙げることができる。より好ましい態様としては、一般式(II)中、R1およびR12がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R13およびR14がそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アシル基であり、R15が水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基であり、かつm1が0または1である化合物を挙げることができる。更に好ましい態様としては、一般式(II)中、R1およびR12が水素原子またはメチル基であり、R13およびR14がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R15がアルキル基またはアシルオキシ基であり、かつm1が0または1である化合物を挙げることができる。よりいっそう好ましい態様としては、一般式(II)中、R1およびR12がいずれも水素原子であり、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基であり、m1が1である化合物を挙げることができる。最も好ましい態様としては、R1およびR12がいずれも水素原子であり、R13、R14が水素原子であり、R15がアシルオキシ基であり、かつm1が1である化合物を挙げることができる。
【0045】
一般式(III)で表される環状アリルスルフィド化合物
【化6】

【0046】
一般式(III)中、R1は一般式(I)における定義と同義であり、R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、m2は0または1を表す。
【0047】
一般式(III)中、R1、R23、R24、R25で表されるアルキル基の詳細は、上述した一般式(I)中のアルキル基の説明と同様である。
【0048】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアリール基としては、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
【0049】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるヘテロ環基は、炭素数4〜14のヘテロ環基であることが好ましく、炭素数4〜10のヘテロ環基であることがより好ましく、炭素数5のヘテロ環基であることが特に好ましい。R23、R24、R25で表されるヘテロ環基の具体例としては、ピリジン環、ピペラジン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。前記ヘテロ環の中でもピリジン環が特に好ましい。
【0050】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアルコキシ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ターシャリーオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2,3−ジブロモプロピルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、4−ブロモベンジルオキシ基などが挙げられる。
【0051】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアリールオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基などが挙げられる。
【0052】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアルキルチオ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、また、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルプロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ノルマルブチルチオ基、イソブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ターシャリーオクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基、2,3−ジブロモプロピルチオ基、アダマンチルチオ基、ベンジルチオ基、4−ブロモベンジルチオ基などが挙げられる。
【0053】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアリールチオ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることが特に好ましい。具体例としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラニルチオ基などが挙げられる。
【0054】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアルコキシカルボニル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ノルマルプロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ノルマルブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、ターシャリーブチルオキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ターシャリーオクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0055】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアリールオキシカルボニル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は7〜30であることが好ましく、7〜20であることが特に好ましい。具体例としては。例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0056】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアシルオキシ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ノルマルプロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ノルマルブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、ターシャリーブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ターシャリーオクチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
【0057】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアシルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアシルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0058】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるスルホニルアミノ基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなスルホニルアミノ基としては、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基などが挙げられる。
【0059】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアミノ基は、一置換アミノ基であっても、二置換のアミノ基であってもよく、二置換のアミノ基が好ましい。無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
【0060】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるアシル基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。その炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。このようなアシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0061】
一般式(III)中、R23、R24、R25で表されるハロゲン基としては、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などが挙げられ、ブロモ基が好ましい。
【0062】
一般式(III)中、R1、R23、R24、R25で表される基が更に置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、置換基として一般式(III)で表される環状アリルスルフィド化合物が置換した場合は、多官能体を表す。
【0063】
一般式(III)中、m2は0または1の整数を表す。m2は0であることが好ましい。
【0064】
一般式(III)で表される化合物の好ましい態様としては、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す化合物を挙げることができる。より好ましい態様としては、一般式(III)中、R1が水素原子またはメチル基であり、R23およびR24がそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アシル基であり、R25が水素原子、アルキル基、アリール基、アシルオキシ基であり、かつm2が0または1である化合物を挙げることができる。更に好ましい態様としては、一般式(III)中、R1が水素原子またはメチル基であり、R23およびR24がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R25がアルキル基またはアシルオキシ基であり、かつm2が0または1である化合物を挙げることができる。よりいっそう好ましい態様としては、一般式(III)中、R1がメチル基であり、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基であり、m2が0である化合物を挙げることができる。最も好ましい態様としては、R1がメチル基であり、R23、R24が水素原子であり、R25がアシルオキシ基であり、かつm2が0である化合物を挙げることができる。
【0065】
前記ラジカル重合性化合物は、記録感度の観点から、200〜1000nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、5,000mol・l・cm-1以上のモル吸光係数を示すことが好ましく、200〜500nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、5,000mol・l・cm-1以上のモル吸光係数を示すことが更に好ましい。5,000mol・l・cm-1以上のモル吸光係数を示す波長をλ1とすると、前記ラジカル重合性化合物は、記録感度の点からは、波長λ1に吸収極大を有することが好ましい。吸収極大波長におけるモル吸光係数は、10,000mol・l・cm-1以上であることが好ましく、30,000mol・l・cm-1以上であることが更に好ましく、100,000mol・l・cm-1以上であることが特に好ましい。吸収極大におけるモル吸光係数の上限は特に限定されるものではないが、例えば200,000 mol・l・cm-1程度である。
上記吸収特性は、化合物を塩化メチレン等の適当な溶媒に溶解して得られた溶液について、紫外可視分光光度計を用いて測定される吸収スペクトルから求めることができる。
【0066】
前述の吸収特性を得るためには、一般式(I)で表される化合物が下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C―4)、(C−5)または(C−6)で表される部分構造を少なくとも一種含むことが好ましい。一般式(I)で表される化合物は、例えば、上記部分構造を1分子中に少なくとも1つ含むことができるが、1分子中の上記部分構造の数は、前述の吸収特性が得られれば特に限定されるものではない。但し、前述の吸収特性を有する一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(C−1)〜(C−6)で表される部分構造を含むものに限定されるものではない。なお、部分構造として含むということは、一般式(I)、一般式(II)または一般式(III)で表される化合物に、一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C―4)、(C−5)または(C−6)で表される部分構造が同一分子として含まれることを示す。
具体的には、一般式(I)、(II)、(III)における置換基として、一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C―4)、(C−5)または(C−6)で表される構造が連結されている状態である。
【0067】
【化7】

[上記式中、R31、R32、R33、R34およびR37は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アミノ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン基または連結基を表し、A1およびA2は、それぞれ独立に−CR4344−、−O−、−NR45−、−S−、または−C(=O)−を表し、R43、R44、R45はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基または連結基を表す。R35およびR36はそれぞれ独立に電子求引性の置換基または連結基を表し、R35およびR36が互いに結合して環状構造を形成してもよい。R38、R39およびR40はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基または連結基を表し、R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、スルホニル基または連結基を表す。部分構造(C−1)〜(C−6)は、それぞれ1つ以上の連結基を含む。]
【0068】
一般式(I)、一般式(II)または一般式(III)で表される化合物に一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C―4)、(C−5)または(C−6)で表される構造が連結された場合は、その連結基はアルキレン基、フェニレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR46−から選ばれる基またはそれらの二種以上の組み合わせから構成されることが好ましい。なかでもアルキレン基、−O−、−S−、−CO−またはそれらの二種以上の組み合わせが好ましく、アルキレン基、−O−、−CO−またはそれらの二種以上の組み合わせがより好ましく、アルキレン基、−O−またはそれらの組み合わせが特に好ましく、−(OCH2CH2)−の構成単位を有するエチレンオキシド鎖が最も好ましい。
【0069】
以下に、一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C―4)、(C−5)または(C−6)で表される部分構造について説明する。
【0070】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45で表されるアルキル基の詳細は、一般式(I)中のアルキル基の説明と同様である
【0071】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37、R41、R42、R43、R44、R45で表されるアリール基の詳細は、一般式(I)中のアリール基の説明と同様である。
【0072】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37、R41、R42で表されるヘテロ環基の詳細は、一般式(I)中のヘテロ環基の説明と同様である。
【0073】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるアルコキシ基の詳細は、一般式(I)中のアルコキシ基の説明と同様である。
【0074】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるアリールオキシ基の詳細は、一般式(I)のアリールオキシ基の説明と同様である。
【0075】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるアルコキシカルボニル基の詳細は、一般式(I)中のアルコキシカルボニル基の説明と同様である。
【0076】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるアリールオキシカルボニル基の詳細は、一般式(I)中のアリールオキシカルボニル基の説明と同様である。
【0077】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37、R41、R42で表されるアシル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、炭素数1〜6のものがより好ましく、炭素数4のものが最も好ましい。具体的にはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、ノルマルプロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、ノルマルブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、ターシャリーブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、ヘプチルカルボニル基、オクチルカルボニル基、ターシャリーオクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、デシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0078】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37、R41、R42で表されるスルホニル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、炭素数1〜6のものがより好ましく、炭素数1〜4のものが最も好ましい。具体的にはメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ノルマルプロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ノルマルブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、ターシャリーブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、シクロペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基、ターシャリーオクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、デシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、などが挙げられる。
【0079】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるカルバモイル基としては、炭素数1〜12のカルバモイル基が好ましく、炭素数1〜6のカルバモイル基がより好ましい。このようなカルバモイル基としては、例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ノルマルプロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、ノルマルブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、ターシャリーブチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。該カルバモイル基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0080】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるスルファモイル基としては、炭素数1〜12のスルファモイル基が好ましく、炭素数1〜6のスルファモイル基がより好ましい。このようなスルファモイル基としては、例えばメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ノルマルプロピルスルファモイル基、イソプロピルスルファモイル基、ノルマルブチルスルファモイル基、イソブチルスルファモイル基、ターシャリーブチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。該スルファモイル基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0081】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるアミノ基の詳細は、一般式(I)中のアミノ基の説明と同様である。
【0082】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるアシルオキシ基の詳細は、一般式(I)中のアシルオキシ基の説明と同様である。
【0083】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるアシルアミノ基の詳細は、一般式(I)中のアシルアミノ基の説明と同様である。
【0084】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R31、R32、R33、R34、R37で表されるハロゲン基の詳細は、一般式(I)中のハロゲン基の説明と同様である。
【0085】
上記式(C−1)〜(C−6)中、A1およびA2は、それぞれ独立に−CR4344−、−O−、−NR45−、−S−、または−C(=O)−を表す。A1およびA2は、好ましくは−CR4344−、−O−、−NR45−、または−S−であり、より好ましくは−O−、−NR45−、または−S−であり、更に好ましくは−NR45−、または−S−である。
【0086】
1とA2の具体的な組み合わせとしては、A1、A2のいずれか一方と他方との組み合わせが(−CR4344−、−NR45−)、(−S−、−S−)、(−NR45−、−S−)、(−O−、−NR45−)、(−NR45−、−NR45−)、(−C(=O)−、−NR45−)などが挙げられ、好ましくは(−S−、−S−)、(−NR45−、−S−)、(−O−、−NR45−)、(−NR45−、−NR45−)であることが好ましく、より好ましくは(−NR45−、−S−)、(−O−、−NR45−)であり、最も好ましくは(−NR45−、−S−)である。
【0087】
一般式(C−1)〜(C−6)中、R35、R36で表される電子求引性の置換基とは、ハメットの置換基定数σp値が正の値である置換基であり、好ましくは、σp値が0.2以上であり、上限としては1.0以下の置換基を表す。σp値が0.2以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。ハメットのσp値については、Hansch,C.;Leo,A.;Taft,R.W.Chem.Rev.1991,91,165−195に詳しく記載されている。この中でもシアノ基、オキシカルボニル基、アシル基、スルホニル基が好ましい。
【0088】
35で表される置換基とR36で表される置換基は様々な組み合わせを取ることができる。好ましい組み合わせとしては、下記組み合わせ1〜9を挙げることができる。組み合わせ2、3および4において、R35で表される置換基とR36で表される置換基は同一であっても異なる基であってもよい。
【0089】
(組み合わせ1)R35:シアノ基、R36:シアノ基
(組み合わせ2)R35:アシル基、R36:アシル基
(組み合わせ3)R35:オキシカルボニル基、R36:オキシカルボニル基
(組み合わせ4)R35:スルホニル基、R36:スルホニル基
(組み合わせ5)R35:シアノ基、R36:オキシカルボニル基
(組み合わせ6)R35:シアノ基、R36:アシル基
(組み合わせ7)R35:オキシカルボニル基、R36:アシル基
(組み合わせ8)R35:アシル基、R36:スルホニル基
(組み合わせ9)R35:オキシカルボニル基、R36:スルホニル基
【0090】
上記組み合わせ中、組み合わせ1、3、4、5、9がより好ましく、組み合わせ5が最も好ましい。また、一般式(C−1)〜(C−6)中、R35およびR36が互いに結合して環状構造を形成してもよい。結合する場合は炭素鎖で連結されても、N、O、S原子などを含んでもよい。
【0091】
前述したように一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C―4)、(C−5)または(C−6)は一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物の部分構造として含まれ得るため、部分構造中に少なくとも1つの連結基を含む。即ち、R31、R32、R33、R34、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45で表されるいずれか1つ以上の基が連結基として存在し、一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C―4)、(C−5)または(C−6)は、上記連結基により結合し、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物に含まれる。各部分構造には1つ連結基が含まれればよい。連結基の詳細は前述の通りである。
【0092】
以下に、一般式(I)および(II)、(III)で表される環状アリルスルフィド化合物の具体例を示す。但し、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0093】
【化8】








【0094】
以上説明したラジカル重合性化合物の合成方法は、例えば、Macromolecules. 1994, 27, 7935. Macromolecules, 1996, 29, 6983.や Macromolecules, 2000, 33, 6722.や J. Po1ym. Sci.: Part A Polym. Chem. 2001, 39, 202等に詳細に記載されている。合成方法の詳細については、後述の実施例も参照できる。
【0095】
本発明の光重合性組成物には、前記ラジカル重合性化合物を一種のみ用いてもよく、二種以上を併用することもできる。本発明の光重合性組成物における前記ラジカル重合性化合物の含有量は、高感度記録の観点から、好ましくは5〜60質量%であり、より好ましくは15〜50質量%である。
【0096】
また、一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物を、他の重合性モノマーと併用して用いてもよい。併用する他のモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ナフト−1−オキシエチルアクリレート、2−カルバゾイル−9−イルエチルアクリレート、(トリメチルシリルオキシ)ジメチルシリルプロピルアクリレート、ビニル−1−ナフトエート、2,4,6−トリブロムフェニルアクリレート、ペンタブロムアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、スチレン、p−クロロスチレン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロピドンなどが挙げられる。それらの中でもフェノキシエチルアクリレート、2,4,6−トリブロムフェニルアクリレート、ペンタブロムアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートが好ましく、2,4,6−トリブロムフェニルアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートがより好ましい。他の重合性モノマーと併用する場合、全重合性モノマー中の併用する重合性モノマー量は50質量%以下であることが好ましい。
【0097】
非共鳴2光子吸収化合物
本発明の光重合性組成物に含まれる2光子吸収化合物は、非共鳴2光子吸収を起こす化合物である。非共鳴2光子吸収化合物とは、化合物の線形吸収帯が存在しないエネルギー領域で2つの光子を同時に吸収して励起される現象(非共鳴2光子吸収)を起こす化合物である。非共鳴2光子吸収は、通常、化合物の線形吸収の存在しない、該吸収帯よりも長波長域において誘起される。いわゆる透明領域の近赤外光を用いて2光子吸収を起こすことができるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性により試料内部の1点をきわめて高い空間分解能で励起できる。
【0098】
前記非共鳴2光子吸収化合物は、有機色素であることができる。ここで色素とは、紫外域(好ましくは200〜400nm)、可視光領域(400〜700nm)、または近赤外領域(好ましくは700〜2000nm)に吸収の一部を有する化合物をいう。前記有機色素は、可視光領域に吸収の一部を有する化合物であることが好ましい。
【0099】
前記有機色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、ポリアリール色素が好ましい。シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素についての2光子吸収化合物の具体的な構造については特開2004−346238号公報、特開2007−87532号公報、および特開2007−262155号公報に詳しく記載されている。またより短波な波長(例えば700nmよりも短い波長)での2光子吸収化合物としてはポリアリール色素を用いることができる。ポリアリール色素とは、以下の一般式(IV)で表される構造を有する化合物である。
【0100】
【化9】

[一般式(IV)中、XおよびYは、それぞれ独立にハメットの置換基定数(σp値)がゼロ以上の値を有する置換基を表し、nは1〜4の範囲の整数を表し、Rは置換基を表し、Rが複数存在する場合は同一でもそれぞれ異なってもよく、mは0〜4の範囲の整数を表す。]
【0101】
一般式(IV)中、XおよびYはハメット式におけるσp値がゼロ以上の値を取るもの、所謂電子求引性の基を指し、好ましくは例えばトリフルオロメチル基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、などが挙げられ、より好ましくはトリフルオロメチル基、シアノ基、アシル基、アシルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基であり、最も好ましくはシアノ基、ベンゾイル基である。これらの置換基のうち、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基、およびアルコキシカルボニル基は、溶媒への溶解性の付与等の他、様々な目的で、更に置換基を有してもよく、そのような置換基としては、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、などが挙げられる。
【0102】
nは1〜4の範囲の整数を表し、より好ましくは2または3であり、最も好ましくは2である。nが5以上になるほど、線形吸収が長波長側に出てくるようになり、700nmよりも短波長の領域の記録光を用いての非共鳴2光子吸収記録が困難となる。
【0103】
Rは置換基を表し、置換基としては、特に限定されず、具体的には、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、などが挙げられる。mは0〜4の範囲の整数を表す。
【0104】
以下に、上記一般式(IV)で表される構造を有する化合物において、X、Yが、ハメットの置換基定数σp値が正の値を取る、所謂電子求引性の基であることが望ましい旨を述べる。
【0105】
T.Kogej, et al., Chem.Phys.Lett.,298,1(1998))によれば、有機化合物の2光子吸収効率、すなわち2光子吸収断面積δは、3次分子分極率(2次超分極率)γの虚数部と以下の関係にある。
【0106】
【数1】

【0107】
ここでc;光速、ν;周波数、n;屈折率、ε0;真空中の誘電率、ω;光子の振動数、Im;虚数部を表す。γの虚数部(Imγ)は、|g>と|e>間の双極子モーメント;Mge、|g>と|e'>間の双極子モーメント;Mge' 、|g>と|e>間の双極子モーメントの差;Δμge、遷移エネルギー;Ege、ダンピングファクター;Γと以下の関係にある。
【0108】
【数2】

【0109】
ここでPは可換演算子を表す。
従って、数式(2)の値を計算すれば、化合物の2光子吸収断面積を予測することが可能である。そこで、基底状態の最安定構造を6-31G*を基底関数としてB3LYP汎関数を用いたDFT法により計算し、その結果を基にMge、Mee'およびEgeを計算してImγの値を算出することができる。例えば、上記一般式(IV)で表される構造を有する化合物において、XおよびYに電子供与性置換基であるメトキシ基が置換したクアテルフェニル化合物の計算から得られたImγの極大値を1とした場合、その他の置換基として、ハメットの置換基定数σp値が正の値を取る、所謂電子求引性の基を有する分子のImγ極大値の相対値が大きいものとなる。
上記一般式(IV)で表される構造を有する化合物において、XおよびYに電子供与性基のメトキシ基が置換するクアテルフェニル化合物では、Imγは小さく、XおよびYが共に電子求引性置換基で置換された分子では総じてImγが大きく増大する。先にも述べたが、理論的に2光子吸収断面積δは3次超分極率γの虚数部、すなわちImγに比例するため、これらの計算よりXおよびYは共に電子求引性置換基が置換した構造が望ましい。
【0110】
また、上記一般式(IV)で表される構造を有する化合物としては、下記一般式(V)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0111】
【化10】

【0112】
一般式(V)中、X、Y、n、R、mは、それぞれ一般式(IV)で規定したものと同じである。
一般式(IV)または一般式(V)で表される構造を有する化合物において、XおよびYは、同一でもそれぞれ異なってもよいが、異なっているほうが、2光子吸収断面積が大きくなる傾向にあり好ましい。
一般式(IV)または一般式(V)で表される構造を有する化合物の具体例としては、特に限定されないが、下記のものが挙げられる。
【0113】
【化11】

【0114】
本発明の光重合性組成物において、非共鳴2光子吸収化合物は1種のみ使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の光重合性組成物における非共鳴2光子吸収化合物の含有量は、記録感度および重合効率向上の観点から、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜7質量%である。
【0115】
ラジカル重合開始剤
前記ラジカル重合性化合物は、非共鳴2光子吸収化合物がラジカル重合開始剤の役割を果たすことにより、または非共鳴2光子吸収化合物との相互作用によりラジカル種を発生するラジカル重合開始剤の作用により、光重合を起こすことができる。本発明の光重合性組成物は、重合効率の点から、非共鳴2光子吸収化合物とは別にラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。非共鳴2光子吸収化合物とラジカル重合性化合物との相互作用とは、エネルギー移動によるもの、または電子移動によるものである。重合開始剤としては、非共鳴2光子吸収化合物と相互作用できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ラジカル重合開始剤としては、ビスイミダゾール系重合開始剤を使用することができる。ビスイミダゾール系重合開始剤としては、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール誘導体、具体的には、例えばビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー(CDM−HABI)、1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′5,5′−テトラフェニル(o−Cl−HABI)、1H−イミダゾール、2,5−ビス(o−クロロフェニル)−4−〔3,4−ジメトキシフェニル〕−ダイマー(TCTM−HABI)などが挙げられる。また、ビスイミダゾール系重合開始剤は水素供与体と共に用いることもできる。水素供与体として好ましくは、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、などが挙げられる。その他、本発明において使用可能なラジカル重合開始剤の具体的な構造については特開2004−346238号公報に詳しく記載されている。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の光重合性組成物におけるラジカル重合性組成物の含有量は、重合効率の観点から、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜7質量%である。
【0116】
バインダー
本発明の光重合性組成物におけるバインダーは、重合前の組成物の成膜性、膜厚の均一性、保存時安定性の向上等の目的で通常使用される。バインダーとしては、組成物に含まれる各種成分(ラジカル重合性化合物、重合開始剤、非共鳴2光子吸収化合物等)と相溶性の良いものが好ましい。
【0117】
バインダーとしては、溶媒可溶性の熱可塑性重合体が好ましく、それらを単独または互いに組合せて使用することができる。
【0118】
本発明の光重合性組成物を塗布することにより形成された塗布膜に光照射(露光)を行うと、光が強い部分において光重合が開始され、それに伴いラジカル重合性化合物の濃度勾配ができ、光が弱い部分から強い部分にラジカル重合性化合物の拡散移動が起こると考えられる。本発明の光重合性組成物において3次元的屈折率変調を起こすことができる理由は、上記拡散移動の結果、記録光の強弱に応じて、ラジカル重合性化合物が密に存在する領域とバインダーポリマーが主成分として存在する領域とが形成され、それら領域の屈折率の差が生じるからと考えられる。記録感度を高めるためには、前記ラジカル重合性化合物とバインダーの屈折率が異なることが好ましい。これにより、非共鳴2光子吸収により起こる光重合によって、レーザー光照射された部分(レーザー焦点部)と未照射部(非焦点部)にて、ラジカル重合性化合物およびその重合反応物とバインダーとの組成比の不均一化が起こり、大きな屈折率変調を起こすことができ、記録感度を高めることができる。形成される屈折率変調は0.005より大きいことが好ましく、0.01より大きいことがより好ましく、0.05より大きいことがさらに好ましい。ラジカル重合性化合物とバインダーの屈折率の違いは、重合性化合物の方が屈折率が大きくても、バインダーの方が屈折率が大きくてもどちらでも構わないが、記録感度の点からは、バインダーがラジカル重合性化合物よりも低屈折率であることがより好ましい。
【0119】
ラジカル重合性化合物とバインダーとの屈折率を変えるためには、ラジカル重合性化合物またはバインダーのいずれか一方が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、他方がそれらを含まないことが好ましく、ラジカル重合性化合物が少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、バインダーはそれらを含まないことが好ましい。
【0120】
以下に、A)屈折率:ラジカル重合性化合物>バインダーの態様と、B)屈折率:バインダー>ラジカル重合性化合物、の態様にわけて、好ましいバインダーの例を説明する。
【0121】
A)屈折率:重合性化合物>バインダーの態様におけるバインダー(以下、「低屈折率バインダー」という)の好ましい例
好ましい低屈折率バインダーの具体例としては、アクリレートおよびアルファ−アルキルアクリレートエステル、酸性重合体およびインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチルおよびポリメタクリル酸エチル、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニルおよび加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和および不飽和ポリウレタン、ブタジエンおよびイソプレン重合体および共重合体、4,000〜1,000,000程度の重量平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレートまたはメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネートおよびセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラールおよびポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、米国特許3,458,311中および米国特許4,273,857中に開示されている酸含有重合体および共重合体、ならびに米国特許4,293,635中開示されている両性重合体バインダーなどが挙げられ、より好ましくはセルロースアセテートブチレート重合体、セルロースアセテートラクテート重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸およびメタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体を含むアクリル系重合体およびインターポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸またはメタクリル酸C2〜C4アルキル/アクリル酸またはメタクリル酸の3元重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ならびにそれらの混合物などが挙げられる。
【0122】
また、フッ素原子含有高分子も低屈折率バインダーとして好ましい。好ましいものとしては、フルオロオレフィンを必須成分とし、アルキルビニルエーテル、アリサイクリックビニルエーテル、ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、ならびにカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種または2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体が挙げられる。その重量平均分子量は5,000から200,000で、またフッ素原子含有量が5〜70質量%であることが更に好ましい。
【0123】
フッ素原子含有高分子におけるフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが使用される。また、他の共重合成分であるアルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アリサイクリックビニルエーテルとしてはシクロヘキシルビニルエーテルおよびその誘導体、ヒドロキシビニルエーテルとしてはヒドロキシブチルビニルエーテルなど、オレフィンおよびハロオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど、カルボン酸ビニルエステルとしては酢酸ビニル、n−酪酸ビニルなど、また不飽和カルボン酸およびそのエステルとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸のC1〜C18のアルキルエステル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC2〜C8のヒドロキシアルキルエステル類、およびN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性単量体はそれぞれ単独でも、また2種以上組み合わせて使用してもよく、更に必要に応じて該単量体の一部を他のラジカル重合性単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリルなどのビニル化合物と代替しても良い。また、その他の単量体誘導体として、カルボン酸基含有のフルオロオレフィン、グリシジル基含有ビニルエーテルなども使用可能である。
【0124】
前記したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の旭硝子社製「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、重量平均分子量:約50,000)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が上市されており、これらも使用することができる。
【0125】
以上説明した低屈折率バインダーの中で、前記ラジカル重合性化合物および非共鳴2光子吸収化合物との併用に好適なバインダーとしては、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリウレタン、およびフッ素原子含有高分子からなる群から選ばれる少なくとも一つのポリマーを挙げることができる。
【0126】
B)屈折率:バインダー>重合性化合物の態様におけるバインダー(以下、「高屈折率バインダー」という)の好ましい例。
好ましい高屈折率バインダーの具体例としては、ポリスチレン重合体、ならびに、例えばアクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびそのエステルとの共重合体、塩化ビニリデン共重合体(例えば、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、ビニリデンクロリド/メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体)、ポリ塩化ビニルおよび共重合体(例えば、ポリビニルクロリド/アセテート、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体)、ポリビニルベンザル合成ゴム(例えば、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3重合体、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、コポリエステル(例えば、式HO(CH2)nOH(式中nは、2〜10の整数である)のポリメチレングリコール、並びに(1)ヘキサヒドロテレフタル酸、セバシン酸およびテレフタル酸、(2)テレフタル酸、イソフタル酸およびセバシン酸、(3)テレフタル酸およびセバシン酸、(4)テレフタル酸およびイソフタル酸の反応生成物から製造されたもの、ならびに(5)該グリコール、および(i)テレフタル酸、イソフタル酸およびセバシン酸、および(ii)テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸およびアジピン酸から製造されたコポリエステルの混合物)、ポリN−ビニルカルバゾールおよびその共重合体、ならびにH.カモガワらによりJournal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition,18巻、9〜18頁(1979)中開示されているようなカルバゾール含有重合などが挙げられ、より好ましくはポリスチレン、ポリ(スチレン/アクリロニトリル)、ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル)、ならびにポリビニルベンザルおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0127】
本発明の光重合性組成物におけるバインダーの含有量は、例えば10〜90質量%であり、好ましくは45〜75質量%である。
【0128】
その他の成分
本発明の光重合性組成物は、必要により連鎖移動剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を適量含むことができる。
【0129】
本発明の光重合性組成物は連鎖移動剤を含むことが好ましい場合がある。好ましい連鎖移動剤としてはチオール類であり、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、4,4−チオビスベンゼンチオール、p−ブロモベンゼンチオール、チオシアヌル酸、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、p−トルエンチオールなど、また、米国特許第4414312号や特開昭64−13144号記載のチオール類、特開平2−291561号記載のジスルフィド類、米国特許第3558322号や特開昭64−17048号記載のチオン類、特開平2−291560号記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類なども挙げられる。特に重合開始剤が2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーの場合は連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤の使用量は、組成物全体に対して1.0〜30質量%とすることが好ましい。
【0130】
本発明の光重合性組成物には、保存時の重合を防止し、保存安定性を保つ目的で熱安定剤(熱重合禁止剤)を添加することができる。
有用な熱安定剤には、ハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、およびクロルアニールなどが含まれる。Pazos氏の米国特許第4,168,982号中に述べられた、ジニトロソダイマ類もまた有用である。
熱安定剤はラジカル重合性化合物100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0131】
光重合性組成物の接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の機械的諸特性を変えるために可塑剤を使用することができる。また、可塑剤は、ラジカル重合性化合物の移動を促進し、屈折率変調量を大きくする効果もある。
可塑剤としては例えば、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセバケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフタレート等が挙げられる。可塑剤の添加量は適宜設定すればよい。
【0132】
以上説明した各種成分は、公知の方法で合成可能であり、市販品として入手可能なものもある。
【0133】
本発明の光重合性組成物は、通常の方法で調製することができる。例えば上述の必須成分および任意成分をそのまま混合するか、または必要に応じて溶媒を加えることにより調製することができる。
【0134】
溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒を挙げることができる。
【0135】
本発明の光重合性組成物は、基体上に直接塗布することも、スピンコートすることもできるし、またはフィルムとしてキャストし次いで通常の方法により基体にラミネートすることもできる。使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。
【0136】
本発明の光重合性組成物は、重合反応に2光子吸収(非共鳴2光子吸収)を利用する2光子吸収重合性組成物であり、光重合を利用する各種用途に使用することができ、光記録用途に好適であり、3次元的屈折率変調が可能であるため3次元光記録媒体に特に好適である。本発明の光重合組成物は、レーザー光等の光を照射することにより屈折率変調記録を行った後、UVまたは可視光を全面照射して1光子吸収を起こし、定着処理を行うことが好ましい。またさらに40〜160℃の間で加熱を行うことも好ましい。
【0137】
[光記録媒体]
本発明の光記録媒体は、本発明の光重合性組成物を含む記録層を有する。即ち、記録層に前記ラジカル重合性組成物、非共鳴2光子吸収化合物およびバインダーを含み、任意にラジカル重合開始剤等の成分を含むものである。
【0138】
前記記録層は、好ましくは支持体上に直接または他の層を介して間接に設けられる。
支持体としては、透明性を有する基材フィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコールフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂製フィルムが代表的なものとして例示される。
支持体の厚さは、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、2〜200μm、好ましくは10〜50μmの範囲である。
【0139】
本発明の光記録媒体は、本発明の光重合性組成物を支持体上に塗布することで形成することができる。記録層形成用塗布液は、前記光重合性組成物を前述の如き適切な溶媒に溶解して調製することができ、これをスピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等の方法により、上記支持体基材上に塗布し、乾燥することで本発明の光記録媒体を得ることができる。
【0140】
記録層の厚みは、ある体積にできるだけ高密度、大容量に記録するためには厚いほうが好ましいが、その場合でも、記録層の光学濃度(OD)が高いと材料の屈折率変化の大きさを活かせないことになるので、記録光および読み取り光の波長における光学濃度は低いことが好ましい。これらの観点から、記録層の厚みは50〜2000μmが好ましく、100〜1000μmがさらに好ましく、最も好ましくは、200〜500μmの範囲である。また、記録層を深部まで均一に重合硬化させるという観点から、この厚みにおける記録層の光学濃度(OD)は0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがさらに好ましく、0.2以下であることが最も好ましい。
【0141】
また、乾燥後の塗布層に粘着性がある場合等には、保護フィルムを積層して表面を保護することができる。また、記録層上に酸素遮断性を有するフィルムを積層することも可能である。保護フィルムまたは酸素遮断性フィルムとしては、例えば、前記支持体基材フィルムとして例示されている材料からなる、厚さ0.1〜5μm程度の薄層フィルムを用いることができ、これをラミネートして用いればよい。この場合、ラミネートフィルムの記録層との接触面は、後から剥がしやすいように離型処理することもできる。
【0142】
本発明の光記録媒体は、2光子吸収を利用して記録を行う2光子吸収光記録媒体であり、非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能であるため3次元光記録媒体として好適である。本発明の光情報記録媒体への記録は、露光による記録工程を実施することで行われる。2光子吸収反応を起こすために、パルスレーザを用いることが好ましい。レーザの尖頭出力は1kW〜100GWが好ましく、パルス幅は1フェムト秒〜10ナノ秒が好ましい。用いるレーザー光源としては、波長中心1000nm付近に発振波長を有する固体レーザーやファイバーレーザー、780nm付近の発振波長を有する半導体レーザー、固体レーザー、ファイバーレーザー、620〜680nmの範囲の発振波長を有する半導体レーザーや固体レーザーなどを用いることができる。本発明の光記録媒体への情報記録方法の好ましい態様は、本発明の情報記録方法について後述する通りである。
【0143】
再生の際使用する光は、例えば上記レーザー光であることが好ましい。また、パワーまたはパルス形状は同じか異なるものの、記録時と同じ波長のレーザーを用いて再生することがより好ましい。また、再生の際使用する光として、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなども挙げられる。特定の波長域の光を照射するために、必要に応じてシャープカットフィルターやバンドパスフィルター、回折格子等を用いることも好ましい。
【0144】
[情報記録方法]
本発明の情報記録方法は、本発明の光情報記録媒体へ光照射することにより情報を記録する。ここで照射する光は、前記非共鳴2光子吸収化合物の線形吸収の存在しない波長であって、かつ該化合物の線形吸収帯よりも長波長域の波長のレーザー光である。上記波長のレーザー光を使用することにより、非共鳴2光子吸収を起こすことができ、その結果、前記ラジカル重合性化合物が光重合することによって記録層中に屈折率変調、好ましくは3次元的屈折率変調を起こし情報を記録することができる。
照射される光の波長は、記録層に含まれる非共鳴2光子吸収化合物の吸収特性に応じて決定すればよいが、例えば400〜1600nmの範囲であり、励起光が吸収や散乱を受けずに記録層内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性により記録層内部の1点をきわめて高い分解能で励起できる点から、波長400〜850nmのレーザー光を使用することが好ましい。
【実施例】
【0145】
以下、本発明を実施例により更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0146】
[ラジカル重合性化合物の合成例]
以下に示す例示化合物を、下記スキームにより合成した。
【0147】
【化12】


【0148】
上記スキームにより合成した例示化合物中、下記化合物について1H NMRにより同定を行った。結果を以下に示す。
M-17;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.00 (s, 3H), 3.05 (m, 4H), 3.21 (s, 4H), 4.95 (m, 1H), 5.20 (s, 2H)
M-18;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.23 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.20 (m, 1H), 7.30 (m, 3H), 8.0 (m, 3H)
M-46;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.24 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.22 (m, 1H), 7.36 (m, 2H), 7.79 (dd, 1H), 7.80 (dd, 1H)
M-47;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.16 (d, 2H), 3.18 (d, 2H), 3.24 (s, 4H), 5.20 (s, 2H), 5.20 (m, 1H), 7.30 (dd, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.79 (d, 1H)M-44;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.00 (s, 3H), 2.80-3.80(m, 7H), 4.10~4.30 (m, 2H), 4.85 (d, 2H)
M-35;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.95 (m, 2H), 2.36 (s, 2H), 4.50 (m, 2H), 5.60 (s, 1H), 5.85 (s, 1H)
MD-1;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ1.01 (t, 3H), 1.53 (dd, 2H), 1.87〜1.99 (m, 2H), 3.07 (dd, 4H), 3.18〜3.33 (m, 4H), 4.62 (dd, 2H), 5.09〜5.19 (m, 1H), 5.26 (s, 2H), 7.25〜7.34 (m, 2H), 7.47 (t, 1H), 7.68 (d, 1H) 〔λmax=341.0, ε=40859(in CH2Cl2)〕
MD-2;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ1.02 (t, 3H), 1.56 (dd, 2H), 1.90〜2.00 (m, 2H), 2.6.2〜2.71 (m,4H), 3.08(dd, 4H), 3.24 (s, 4H), 4.39〜4.49 (m, 4H), 4.60 (dd, 2H), 5.01〜5.09 (m, 1H), 5.23 (s, 2H), 7.29〜7.34 (m, 2H), 7.47 (t, 1H), 7.69 (d, 1H) 〔λmax=341.0, ε=41139(in CH2Cl2)〕
【0149】
[実施例1]
光重合性組成物の作製
以下の組成にて、グローブボックス内で窒素雰囲気下において混合し、光重合性組成物を作製した。
ラジカル重合化合物:例示化合物M-18 1.15g
非共鳴2光子吸収化合物:DEAW 0.02g
重合開始剤:Cl-HABI 0.03g
バインダー:セルロースアセテートブチレート(CAB) 1.25g
連鎖移動剤:A-1 0.045g
溶媒:ジクロロメタン 7.8g
【0150】
【化13】

【0151】
[実施例2、3]
ラジカル重合性化合物M-18に代えて表1に示す例示化合物を使用した点以外、実施例1と同様の方法で光重合性組成物を作製した。
【0152】
[実施例4]
バインダーとしてCABに代えてポリビニルアセテート(PVAc)を使用した点以外、実施例1と同様の方法で光重合性組成物を作製した。
【0153】
[比較例1、2]
ラジカル重合性化合物M-18に代えて下記比較化合物R-1、R-2(特開2004−346238号公報に記載の化合物)を使用した点以外、実施例1と同様の方法で光重合性組成物を作製した。
【0154】
【化14】

【0155】
【表1】

【0156】
屈折率の測定
表1に示すラジカル重合性化合物およびバインダーを塩化メチレンで10-3 mol/Lに調整した溶液をガラス基板にスピンコートし、塗布サンプルを得た。それらをエリプソメトリー法(ウーラム・ジャパン社製)により測定し、屈折率nDを求めた。結果を下記表2に示す。
【0157】
【表2】

【0158】
例示化合物MD−1および化合物DEAWの吸収特性の確認
上記例示化合物MD−1および化合物DEAWの溶液(溶媒:塩化メチレン、溶液濃度:1x10-5mol/L)の吸収スペクトルを、UV-3600(島津製作所(株)社製)にて測定し、吸収スペクトルから吸収特性を求めた。例示化合物MD−1の吸収特性は、λmax=341.0nm、λmaxにおけるモル吸光係数ε=40738mol・l・cm-1であった。化合物DEAWの吸収特性は、λmax=494nm、λmaxにおけるモル吸光係数ε=73400mol・l・cm-1、波長800nmにおけるモル吸光係数ε=0mol・l・cm-1であり、波長800nmには線形吸収が存在しなかった。更に、化合物DEAWの吸収スペクトルでは、800nmより短波長側に線形吸収帯が存在していることが確認された。
【0159】
[実施例5〜8、比較例3、4]
光記録媒体(2光子吸収媒体)の作製
表3に示す光重合性組成物をプレパラートガラス板上にスピンコート塗布し、溶媒を乾燥させ記録層を形成した。記録層の膜厚は5〜10μmの範囲であった。また、オーバーコート(酸素遮断性フィルム)を有するサンプルは、形成した記録層の上部に更にPETフィルムを圧着することで作製した。
【0160】
記録感度の評価
実施例5〜8、比較例3、4の各光記録媒体に、以下の方法で記録再生を行い、記録感度を評価した。
700nmから1000nmの波長範囲で測定可能なTi:Sapphireパルスレーザー(パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、各光記録媒体に該レーザーの800nmのパルス光をNA0.6のレンズで集光して照射することで記録を行った。
記録の再生に関しては、660nmの半導体レーザーを照射して得られる反射光シグナルを読み出した。反射光シグナルが非常に高い場合を◎、高い場合を○、中程度の場合を△、シグナルが見えない場合を×と判定した。結果を表3に示す。
【0161】
【表3】

【0162】
評価結果
表3に示すように、実施例1〜4の光重合性組成物を用いた実施例5〜8の光記録媒体は、比較例1、2の光重合性組成物を用いた比較例3、4の光記録媒体に比べて、いずれも優れた記録感度を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の光重合性組成物は、より高密度の記録を行うことができるので、高密度記録が可能な3次元記録媒体の作製に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物、非共鳴2光子吸収化合物、およびバインダーを含有することを特徴とする光重合性組成物。
【化1】

[一般式(I)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は隣り合う炭素原子、硫黄原子および該硫黄原子と結合する炭素原子とともに環構造を形成する原子団を表す。]
【請求項2】
光記録用重合性組成物である請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物は、下記一般式(II)で表される化合物である請求項1または2に記載の光重合性組成物。
【化2】

[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義であり、R12は水素原子またはアルキル基を表し、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、m1は0または1を表す。]
【請求項4】
一般式(II)中、R1およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す請求項3に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
一般式(II)中、R1およびR12はいずれも水素原子を表し、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基を表し、m1は1を表す請求項3に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
一般式(I)で表されるラジカル重合性化合物は、下記一般式(III)で表される化合物である請求項1または2に記載の光重合性組成物。
【化3】

[一般式(II)中、R1は一般式(I)における定義と同義であり、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アミノ基、アシル基またはハロゲン基を表し、m2は0または1を表す。]
【請求項7】
一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基またはアシル基を表す請求項6に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
一般式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基を表し、m2は0を表す請求項6に記載の光重合性組成物。
【請求項9】
ラジカル重合開始剤を更に含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項10】
前記バインダーは、前記ラジカル重合性化合物とは異なる屈折率を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項11】
前記バインダーは、前記ラジカル重合性化合物よりも低屈折率を有する請求項10に記載の光重合性組成物。
【請求項12】
前記バインダーは、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリウレタン、およびフッ素原子含有高分子からなる群から選ばれる少なくとも一つのポリマーである請求項1〜11のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項13】
前記非共鳴2光子吸収化合物は、有機色素である請求項1〜12のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項14】
前記有機色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素およびポリアリール色素からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項13に記載の光重合性組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の光重合性組成物を含む記録層を有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項16】
請求項15に記載の光記録媒体へ光照射することにより情報を記録する情報記録方法であって、
前記照射する光として、前記非共鳴2光子吸収化合物の線形吸収の存在しない波長であって、かつ該化合物の線形吸収帯よりも長波長域の波長のレーザー光を使用することを特徴とする情報記録方法。
【請求項17】
前記光照射により、前記記録層中に屈折率変調を起こすことによって情報を記録する請求項16に記載の情報記録方法。
【請求項18】
前記屈折率変調は、3次元的屈折率変調である請求項17に記載の情報記録方法。

【公開番号】特開2010−195917(P2010−195917A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41726(P2009−41726)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】