説明

光量モニタセンサおよびこれを備えた画像処理システム

【課題】照明装置からの照明光が間欠光を含むものであってもその光量を容易に自動的に測定することができる光量モニタセンサおよびこれを備えた画像処理システムを提供する。
【解決手段】積分回路5によって受光信号を積分しているので、波高値・周期・パルス幅などの波形が異なるパルス光や定常光(DC光)も測定可能となり、有効データ出力手段10によって、サンプリングが有効と判断された受光信号からの有効な受光量データのみを出力するので、これらが相俟って比較的低い周波数でのサンプリングが可能となり、照明光が間欠光を含むものであっても、当該照明装置Lの光量を容易に自動的に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置の照明光の光量を自動的に測定する光量モニタセンサおよびこれを備えた画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明装置の照明光の光量(輝度)管理として、例えば、図1に示すような画像処理システムSに使用される照明装置Lからの照明光の光量を、一定期間ごとに照度計や輝度計などで測定(モニタ)して、経年劣化などによる光量の低下を検出することが知られている。
【0003】
また、画像処理システムSの照明装置LにLED(Light Emitting Diode)を用いて、LED照明を点灯して撮像した画像情報から照明光の輝度を演算し、照明光の光量の低下を検出する手法も知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−265287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像処理システムSなどのLEDやハロゲンランプを用いた照明装置Lでは、連続的に照明する連続光(常点灯)、PWM制御点灯、ストロボ発光制御点灯およびこれらの複合型点灯などの各種点灯方法により照明する場合がある。
【0006】
この場合、ストロボ発光制御点灯では間欠的な照明光(間欠光)になるので、連続的に照明する連続光と異なり、当該間欠光の輝度を正確に積算することが容易でないことから、間欠光にも対応して照明装置の光量を正確に測定することが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、照明装置からの照明光が間欠光を含むものであってもその光量を容易に自動的に測定することができる光量モニタセンサおよびこれを備えた画像処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一構成にかかる光量モニタセンサは、照明装置からの間欠光を含む照明光の受光量に基づき受光信号を出力する受光部と、受光信号を積分する積分回路と、積分された受光信号を所定周波数でサンプリングするA/D変換部と、各部を制御して前記照明光の光量を測定させる制御部とを備え、前記制御部は、前記サンプリングされる受光信号の電圧を所定の設定電圧と比較する比較手段と、前記受光信号の電圧が前記設定電圧よりも高い場合にその受光信号のサンプリングを有効と判断して、当該有効な受光量データを出力する有効データ出力手段とを備えている。
【0009】
この構成によれば、積分回路で受光信号を積分しているので、波高値・周期・パルス幅などの波形が異なるパルス光や定常光(DC光)も測定可能となり、有効データ出力手段によって、サンプリングが有効と判断された受光信号からの有効な受光量データのみを出力するので、これらが相俟って比較的低い周波数でのサンプリングが可能となり、照明光が間欠光を含むものであっても、容易に当該照明装置の光量を自動的に測定することができる。また、比較的低いサンプリング周波数を用いることができるので、A/D変換器の低コスト化、小型化が可能となる。
【0010】
本発明の他の構成にかかる画像処理システムは、物体を撮像するカメラと、物体への照明光が間欠光を含む照明装置と、この照明装置の照明光の光量を測定する前記光量モニタセンサとを備えて、物体の画像を処理するものであって、前記光量モニタセンサの制御部は、さらに、少なくとも、前記間欠光のタイミングと自律的に同期をとるオンモードと、自律的に同期をとるモードが作動しないオフモードとに切り替えるモード切替手段と、前記オンモード中に、前記間欠光について有効と判断された受光信号のサンプリングの間隔が所定時間よりも短いとき、同期状態で連続した受光信号とみなして処理し、前記サンプリングの間隔が所定時間以上のとき、同期はずれ状態で当該受光信号を無効とみなして処理する間欠光処理手段とを備えている。
【0011】
この構成によれば、間欠光について有効と判断された受光信号のサンプリングの間隔に基づき同期状態を判断して受光信号を処理するので、照明光が間欠光を含むものであっても、当該照明光の光量を迅速かつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる光量モニタセンサを備えた画像処理システムを示す平面図である。
【図2】図1の光量モニタセンサを示すブロック図である。
【図3】受光信号のサンプリング状態を示すタイムチャート図である。
【図4】(A)、(B)は受光信号のサンプリング状態を示すタイムチャート図である。
【図5】図2の光量モニタセンサの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る光量モニタセンサを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる光量モニタセンサ1を備えた画像処理システムSを示す。この画像処理システムSは、図示しない物体を撮像するカメラと、物体の画像を処理する画像処理部とを備え、物体への照明光が間欠光を含む照明装置Lと、照明装置Lの照明光の光量を自動的に測定(モニタ)する光量モニタセンサ1とを備えている。この画像処理システムSは、画像処理装置の照明装置Lについて、その照明光の光量をモニタするために、光量モニタセンサ1をいわゆる外付けにしたものである。
【0014】
図2は、光量モニタセンサ1のブロック図を示す。図1の照明装置Lは、例えばLEDを所定のPWM制御周波数が一定でパルス幅を可変させるPWM制御により照明するものである。また、連続的に点灯する連続光(常点灯)またはストロボ発光のように間欠的に点灯する間欠光で照明を行うことができる。LEDに代えて蛍光灯やハロゲンランプ等を用いてもよい。
【0015】
図2の光量モニタセンサ1は、照明装置Lからの照明光を受光する光ファイバ2および照明光の受光量に基づき受光信号を出力する受光素子3を有する受光部4と、受光信号を積分し増幅する積分・増幅回路5と、積分・増幅された受光信号を所定周波数でサンプリングするA/D変換部6と、センサ全体および各部を制御して、前記照明光の光量を自動的に測定(モニタ)させる制御部(制御・処理部)7とを備えている。この例では、A/D変換部6におけるサンプリングの所定周波数が前記PWM制御のPWM制御周波数よりも低くなっている。
【0016】
前記制御部7は、モード切替手段8と、比較手段9、有効データ出力手段(トリガ回路)10および間欠光処理手段11を備えている。前記モード切替手段8は、例えば照明装置Lからのストロボ発光のような間欠光のタイミングと自律的に同期をとるオンモードと、自律的に同期をとるモードが作動しないオフモードとに切り替える。
【0017】
前記比較手段9は、A/D変換部6でサンプリングされる受光信号の電圧を所定の設定電圧(トリガレベル)と比較する。前記有効データ出力手段(トリガ回路)10は、前記受光信号の電圧が前記設定電圧(トリガレベル)よりも高い場合にその受光信号のサンプリングを有効と判断して、当該有効な受光量データを出力する。前記間欠光処理手段11は、前記オンモード中に、前記間欠光について有効と判断された受光信号のサンプリングの間隔が所定時間よりも短いとき、同期状態で連続した受光信号とみなして処理し、前記サンプリングの間隔が所定時間以上のとき、同期はずれ状態で当該受光信号を無効とみなして処理する。
【0018】
また、光量モニタセンサ1は、設定電圧(トリガレベル)などの設定値を可変可能に記憶する記憶装置12と、前記トリガレベルを任意に可変した設定値などを入力するスイッチ等入力回路13とを備えており、その他に表示部14および出力回路15を備えている。複数台の光量モニタセンサ1を同時に使用する必要がある場合には、連結回路16が設けられる。
【0019】
照明装置LがPWM制御による照明を行う場合に、光量モニタセンサ1のサンプリング動作を、図3、4の例を用いて説明する。図3は、LEDを一般的にPWM制御して照明させた場合を示す。a)は、連続光(常点灯)の照明であり、受光信号を例えばPWM制御周波数60kHz、Duty50%でPWM制御する状態を示す。b)は積分・増幅回路5を通過した後の受光信号の波形を示す。この波形はトリガレベルより常に大きくなる。c)は、b)の受光信号がPWM制御周波数60kHzよりも低い周波数20kHzでA/D変換器6によりサンプリングされた状態を示す。常点灯のように、同期が不要で同期モードが作動しないオフモードのときは、比較手段9のトリガレベルと関係なく、n−1、n、n+1回目の受光信号のサンプリングはいずれも有効である。この結果、この有効なサンプリングと判断された受光信号における有効な受光量データが出力される。
【0020】
なお、サンプリングは、例えば、一度のサンプリング時に3μs間隔で連続3回の多重サンプリングを行いその平均値を使用する。多重サンプリングを行うことで平均化されて、PWM制御周波数が低い場合のリプルの影響を低減することができる。
【0021】
図4は、LEDをストロボ発光(間欠光)のPWM制御をして照明させた場合を示す。図3と同様に、PWM制御周波数60kHz、Duty50%で、A/D変換器6のサンプリング周波数はこれよりも低い20kHzである。
【0022】
図4(A)では、受光部4で検知したストロボ発光のタイミングと自律的に同期するオンモードの場合であって、a)に示すように間欠光の照明であり、b)に示す、積分・増幅回路5を通過した後の受光信号波形のように、間欠光処理手段11により、トリガレベルを超えて有効と判断された受光信号のサンプリング間隔が例えば5sec未満の場合には、同期状態で連続した受光信号とみなして処理される。c)のように、n−1、n回目のサンプリングは有効であり、有効データ出力手段(トリガ回路)10により、この有効なサンプリングと判断された受光信号における有効な受光量データが出力される。その一方、この間のタイミングでサンプリングされた受光信号はトリガレベル以下なので、このサンプリングは無効として処理される。
【0023】
また、前記オンモードのとき、ストロボ発光制御されて間欠的な照明であっても、サンプリング周波数が20kHzの場合、周期(1/f)が50μsであるから、発光時間が理論上、100μs程度あればサンプリングすることが可能となる。
【0024】
また、トリガレベルを超えて有効と判断された受光信号をサンプリングして、有効な受光量データのみを出力することで、たとえA/D変換器6のサンプリングの周期にずれが生じたり、受光信号が各種あってそのサンプリングタイミングが各別だったりなどしても、受光信号の平均値が適正化され、正確な受光量データを得ることができる。
【0025】
図4(B)のように、ストロボ発光のPWM制御をして照明させた場合であって、例えばストロボ発光の間隔があいて同期が取れない場合に、b)のように、間欠光処理手段11により、有効と判断された受光信号のサンプリング間隔が例えば5sec以上となったとき、同期はずれ状態で当該受光信号を無効とみなして処理され、サンプリングが一旦リセットされる。
【0026】
こうして、間欠光処理手段11により、間欠光について有効と判断された受光信号のサンプリングの間隔に基づき同期状態を判断して受光信号を処理するので、照明光が間欠的であっても、当該照明光の光量を迅速かつ正確に測定することができる。
【0027】
なお、外乱光の誤検知を防止するために、光量モニタセンサ1で自動的に測定(モニタ)された照明装置Lの光量の計測値を多数回計測した値の平均値としてもよい。
【0028】
図5は、光量モニタセンサ1のサンプリング動作を説明するフローチャートである。サンプリング処理が開始されると(S1)、まず、受光信号を積分・増幅回路5に通した後に、A/D変換部6で例えばサンプリング周波数20kHzによりサンプリングしてA/D変換を開始する(S2)。この例では、PWM制御周波数60kHzよりも低い周波数20kHzでサンプリングする。このとき、受光信号がトリガレベルよりも高く、その受光信号のサンプリングが有効であることを示すトリガ入力がされたか否かが確認される(S3)、トリガ入力された場合には、トリガフラグがセットされて同期状態で(S4)、A/D変換の終了を待つ(S6)。トリガ入力がされない場合には、トリガフラグがクリアされて非同期状態で(S5)、A/D変換の終了を待つ(S6)。
【0029】
次に、A/D変換終了後、トリガ入力がされているか否かが確認されて(S7)、トリガ入力がされてまだ同期状態のとき、制御・処理部7はトリガ入力されて有効なサンプリングの受光信号と判断されて出力された有効な受光量データの受光量を積算する(S8)。そして、積算回数を1回プラスして(S9)、サンプリングを終了する(S10)。こうして、所定のトリガレベルを超えた受光信号のサンプリングを有効として出力された有効な受光量データのみで受光量が積算される。トリガ入力がされず非同期(同期はずれ)状態のとき、サンプリングの間隔が正常な範囲内か否かが確認されて(S11)、例えばサンプリング間隔が5秒未満の正常な範囲内であれば連続した受光信号とみなして(図4(A))、サンプリングを終了する(S10)。サンプリング間隔が5秒以上で正常な範囲でなければ、受光信号を無効とみなしてサンプリングを一旦リセットするように(図4(B))、パラメータをクリア処理して(S12)、サンプリングを終了する(S10)。
【0030】
これにより、本発明は、積分・増幅回路5で受光信号を積分しているので、波高値・周期・パルス幅などの波形が異なるパルス光や定常光(DC光)も測定可能となる。また、受光信号を常時サンプリングするとともに、有効データ出力手段10によって、サンプリングが有効と判断された受光信号からの有効な受光量データのみを出力するので、これらが相俟ってPWM制御周波数よりも低い周波数でのサンプリングが可能となり、照明装置Lからの照明光が間欠光を含むものであっても、照明装置Lの光量を容易に自動的に測定(モニタ)することができる。また、比較的低いサンプリング周波数を用いることができるので、A/D変換器6の低コスト化、小型化が可能となる。
【0031】
図6は本発明の第2実施形態に係る光量モニタセンサを示すブロック図である。第2実施形態は、受光部4が受光レンズ22と受光素子3からなる点で第1実施形態と異なるが、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0032】
第2実施形態も、第1実施形態と同様に、照明装置Lの照明光が間欠光を含むものであっても、当該照明光の光量を容易に自動的に測定できる。
【0033】
なお、各実施形態では、光量モニタセンサ1を画像処理システムSに使用しているが、これに限定されることなく、他の照明装置の照明光の光量を測定してもよく、この場合、モード切替手段8および間欠光処理手段11を省略してもよい。
【0034】
また、各実施形態では、モード切替手段8がオンモードとオフモードに切り替えて、受光部4のストロボ発光の検知に基づいてオンモードで自律的に同期を取っているが、モード切替手段8はさらに外部からの信号で強制的に同期をとるモードに切り替えるようにしてもよく、このモード切替によって、例えば図1の画像処理システムSが有する物体検知に基づく外部からの信号などにより強制的に同期を取るようにしてもよい。
【0035】
なお、各実施形態では、有効データ出力手段10として、ハードウエア上でトリガ回路を設けて、受光信号のサンプリングの有効を判断しているが、これに代えて、ソフトウエア上で判断するようにしてもよい。
【0036】
なお、各実施形態では、受光信号をPWM制御周波数よりも低い周波数でサンプリングをしているが、PWM制御周波数よりも高い周波数でサンプリングするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:光量モニタセンサ
4:受光部
5:積分・増幅回路
6:A/D変換部
7:制御部(制御・処理部)
8:モード切替手段
9:比較手段
10:有効データ出力手段(トリガ回路)
11:間欠光処理手段
12:記憶装置
13:スイッチ等入力回路
L:照明装置
S:画像処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置からの間欠光を含む照明光の受光量に基づき受光信号を出力する受光部と、受光信号を積分する積分回路と、積分された受光信号を所定周波数でサンプリングするA/D変換部と、各部を制御して前記照明光の光量を測定させる制御部とを備えた光量モニタセンサであって、
前記制御部は、
前記サンプリングされる受光信号の電圧を所定の設定電圧と比較する比較手段と、
前記受光信号の電圧が前記設定電圧よりも高い場合にその受光信号のサンプリングを有効と判断して、当該有効な受光量データを出力する有効データ出力手段とを備えている、
光量モニタセンサ。
【請求項2】
物体を撮像するカメラと、物体への照明光が間欠光を含む照明装置と、この照明装置の照明光の光量を測定する請求項1または2に記載の光量モニタセンサとを備えて、物体の画像を処理する画像処理システムであって、
前記光量モニタセンサの制御部は、さらに、
少なくとも、前記間欠光のタイミングと自律的に同期をとるオンモードと、自律的に同期をとるモードが作動しないオフモードとに切り替えるモード切替手段、および、
前記オンモード中に、前記間欠光について有効と判断された受光信号のサンプリングの間隔が所定時間よりも短いとき、同期状態で連続した受光信号とみなして処理し、前記サンプリングの間隔が所定時間以上のとき、同期はずれ状態で当該受光信号を無効とみなして処理する間欠光処理手段を備えている、光量モニタセンサを備えた画像処理システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−210565(P2009−210565A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12516(P2009−12516)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(503010955)オプテックスエフエー株式会社 (17)
【Fターム(参考)】