説明

光量補正装置、光ピックアップおよび情報記録再生装置

【課題】複数種類の光記録媒体を正確かつ安定に記録および/または再生できる小型、軽量、かつ省電力な情報記録再生装置を提供する
【解決手段】光ビームの光量を光ディスク3の種類に応じて切り替える光量補正用光学素子21を備えた光ビーム透過調整手段20において、光量補正用光学素子21を駆動する駆動源が、光ピックアップ1の駆動源と共用されている。そのため、光量補正用光学素子21の駆動源を光ピックアップ1内に設ける必要がなくなる。したがって、光ピックアップ1内に光量補正用光学素子21の駆動源の給電用配線ラインを増設する必要がなく、光ピックアップ1を小型、軽量化することができる。また、配線ラインを増設する必要がないことから、配線ラインからの不要なノイズの発生を抑制し、本発明の情報記録再生装置は良好な記録再生を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体に対して光を利用して情報を記録および/または再生する光ピックアップの小型化、軽量化、省電力化に主眼をおいた技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに代表される光記録媒体としては、ピット等があらかじめ形成されており、再生専用として用いられるもの、溝構造に沿った相変化を利用して、記録および再生が可能なものなどが提案されている。
【0003】
このうち、情報の記録および再生が可能な光記録媒体を用いる情報記録再生装置では、光ピックアップの光源として、通常、再生専用の装置の半導体レーザよりも最大出射光量(光出力最大定格)が大きい半導体レーザが用いられる。
【0004】
これは、以下のような理由による。
半導体レーザは、一般的に、出力が小さい場合には、安定な発振が得られにくく、レーザノイズが大きくなる。したがって、情報再生時のCNR(Carrier to Noise Ratio)を確保するためには、レーザの光出力を通常、2mW〜5mW程度の値に設定しなければならない。
(2)記録可能な光記録媒体においては、記録面上に光束を集光させることによる記録層の加熱によって、記録が行われる。そのため、「再生光パワーにおいて、記録信号が劣化しない」という条件と「記録光パワーにおいて、安定な記録が行われる」という条件の双方を満たす必要がある。すなわち、再生光パワーと記録光パワーとの間に大きな出力の差を持たせなければならない。この出力差を出力比で表すと、通常、記録光の最大パワーが、再生光パワーの5倍〜20倍程度である。また、光記録媒体の記録層が多層である場合、再生時の光パワーおよび記録時の光パワーともに、より大きな出力が必要となる。
【0005】
これら2つの理由によって、記録および再生に対応する光ヘッドに用いられる光源や、複数種類の光記録媒体へ記録および/または再生を行う光ピックアップに用いられる光源の光出力最大定格は、通常、20mW〜50mW程度である。さらに、標準速の2倍程度の高速で情報を記録する光記録媒体においては、100mW程度もの出力が必要となる。また、2層の記録層を備える光記録媒体においては、130mW程度と、さらに大きな出力を必要とする。
【0006】
しかし、光出力最大定格が大きい光源は、その実現が非常に困難であるばかりでなく、光源の消費電力が大きくなるなどの問題がある。これを考慮して、逆に光出力最大定格を小さくすると、再生時のレーザノイズが大きくなってしまい、良好な再生特性が得られなくなる。
【0007】
また、光源の光出力最大定格を適切に定めなければならない問題に加えて、光記録媒体の種類に応じた最適な記録および/または再生の光パワーを定めなければならない問題もある。
【0008】
したがって、複数種類(少なくとも2種類)の光記録媒体に対して、種類の制約を受けることなく、自由に情報を記録および/または再生できる情報記録再生装置は、同じ光源から出射された光ビームの光量を変化させる構成を備えている。すなわち、そのような情報記録再生装置は、光結合効率可変素子、あるいは光学フィルタのような光量を補正する光量補正素子を用いて、光記録媒体の種類に応じて、光記録媒体に集光される光量を変化させている。
【0009】
特許文献1には、光ビームの光量を変化させるための手段を備えた情報記録再生装置が開示されている。光ビームの光量を変化させるための手段について、図7および図8にしたがって、以下に説明する。
【0010】
図7および図8は、光ビーム110の光量を変化させるための手段として機能する従来の光ビーム透過調整手段100の構成を示す。なお、図7は、光ビーム透過調整手段100の再生時の状態を示し、図8は、光ビーム透過調整手段100の記録時の状態を示す。
【0011】
光ビーム透過調整手段100は直方体透過素子101と、ホルダ102aおよび102bと、シャフト103aおよび103bと、ベース104と、永久磁石105と、コイル106と、ストッパ107aおよび107bとによって構成されている。
【0012】
直方体透過素子101は光ビーム110の透過量を調整するための光量補正素子であり、4側面のうち1つの平面にのみ、光ビームの光量を減衰させる光学フィルタ101aを塗布してある。ホルダ102aおよび102bは直方体透過素子101を保持するものである。シャフト103aおよび103bはベース104に支持されており、直方体透過素子101、ホルダ102aおよび102bを回転させるためのものである。永久磁石105はホルダ102aの側面に取り付けられており、シャフト103aと平行な方向に磁化されている。コイル106は永久磁石105に対向する位置に配置されており、ベース104に固定されている。
【0013】
さらに、ストッパ107aおよび107bはホルダ102bの側面の2ヶ所に設けられている。光学フィルタ101aが塗布された平面が光ビームと垂直な位置にある時は、ストッパ107aがベース104と接触している。また、光学フィルタ101aが塗布された平面が光ビームと平行な位置にある時は、ストッパ107bがベース104と接触している。
【0014】
図7は、光源の光路に配置された直方体透過素子101に備えられたストッパ107aがベース104と接触した状態である。この時、半導体レーザから出射した光ビーム110の光量は、光学フィルタ101aによって、光記録媒体に照射される光ビームの再生時の光量となるように減衰された後、光学フィルタ101aと対向する面より出射される。
【0015】
図8は、コイル106への通電により、永久磁石105との間に発生する電磁力によって、直方体透過素子101が、シャフト103aおよび103bを中心軸として回転し、ストッパ107aおよび光学フィルタ101aが90度上方へ回転すると同時にストッパ107bがベース104に接触する位置まで回転した状態である。したがって、半導体レーザから出射された光ビーム110は光学フィルタ101aを通過することなく、直方体透過素子101を通過する。これによって、光ビームがほぼ減衰することなく、記録時の光量として光記録媒体に照射される。
【0016】
すなわち、従来の情報記録再生装置における、光ビーム透過調整手段100によれば、直方体透過素子101の回転方向をシャフト103aおよび103b周りの回転駆動によって切り替えることにより、光学フィルタ101aの位置が切り替わる。それによって、光ビーム110が減衰されている場合と、ほぼ減衰されていない場合とに切り替えることができる。
【0017】
したがって、直方体透過素子101の回転容積のみの移動空間において、記録時と再生時とにおいて、光記録媒体に集光される光量を切り替えることができる。
【特許文献1】特開2005−174455号公報(2005年6月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、光量補正素子を用いて光量を切り替えるためには、光ピックアップ内に駆動機構およびその駆動源として、アクチュエータやモータなどを備える必要がある。また、光量補正素子の駆動源の電源を供給しなければならないため、電源供給用FPC(フレキシブルプリント配線盤)のラインを増設する必要がある。FPCのラインが増えることによって、FPCは必要以上に弾力性を持つため、FPCを小さくまとめにくくなる。そのため、光ピックアップの小型化および軽量化が困難である。
【0019】
さらに、光量補正素子の駆動源は、光ピックアップの駆動源とは電気的に独立しているため、光量補正素子を駆動させる分、その消費電力が大きくなる。
【0020】
また、FPCの配線ラインが新たに増えることによって、駆動用の信号ラインから情報記録再生用の信号ラインに、ノイズの影響を及ぼすことがある。これにより、良好な記録再生が妨げられる。
【0021】
なお、光量補正素子は移動終了後に安定して保持する必要がある。しかし、切り替え時にはこの保持力を上回るトルクを発生させなければならない。このような条件を満たす機構を構成することもまた困難である。
【0022】
本発明は、上記の課題を解決するために、光量補正素子の駆動源であるモータやアクチュエータを光ピックアップ内から取り除き、FPCを小さくまとめることによって、光量補正素子を駆動可能な光ピックアップの小型化、軽量化および省電力化を実現することを目的としている。また、本発明の構成により、複数種類の光ディスクの記録再生を実現する小型、軽量な情報記録再生装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係る光量補正装置は、光ビームを移動させながら、光記録媒体に対して、情報の記録および/または再生を行う光ピックアップに備えられ、上記光ビームの光量を光記録媒体の種類に応じて切り替える光量補正素子を備えた光量補正装置において、上記光ビームの光量を切り替えるために上記光量補正素子を駆動する駆動源が、上記光ピックアップの駆動源と共用されていることを特徴としている。
【0024】
上記構成によると、光量補正素子を駆動する駆動源が、上記光ピックアップの駆動源と共用されている。なお、光ピックアップの駆動源は、光記録媒体に対して光ピックアップを移動させ、それによって光記録媒体に対して光ビームを移動させる駆動力を発生する。そのため、光量補正素子を駆動するためのモータのような駆動源を、光ピックアップ内に設ける必要がなくなる。なぜなら、光ピックアップの駆動源は、光ピックアップの外部に備えられているからである。
【0025】
また、光量補正素子の駆動源を光ピックアップ内に備えていないことから、光ピックアップ内に電源供給用のFPCの配線ラインを増設する必要がなく、FPCの幅を小さく形成することができる。そのため、FPCの弾力性が必要以上に大きくなることがなく、FPCを小さくまとめることが可能である。これによって、光ピックアップの形状の自由度を向上させることができる。
【0026】
これらの結果として、光ピックアップの小型、軽量化が可能となる効果を奏する。
【0027】
さらに、光量補正素子を駆動するための給電用FPCの配線ラインを光ピックアップ内に備える必要がないため、電源供給ラインからの不要なノイズの発生による情報記録再生信号への影響を回避することができる。
【0028】
したがって、本発明に係る光量補正装置は、良好な記録再生を行うことができる情報記録再生装置を提供できるという効果を奏する。
【0029】
本発明に係る光量補正装置は、さらに、記録および/または再生時において、上記光量補正素子と、上記光量補正素子を保持するホルダとが、上記光ピックアップと、同一方向へ一体をなして移動するように構成されていることを特徴としている。
【0030】
上記の構成によれば、記録および/または再生時において、光量補正素子およびホルダは、光ピックアップと同一方向へ一体をなして移動するから、記録および/または再生時において、光量補正素子を光ピックアップから独立して駆動する必要がない。すなわち、光量補正素子およびホルダを、光ピックアップの移動に追従させるように、光量補正素子を別途駆動しなくても、光量補正素子と光ピックアップとの位置関係を保持することができ、光記録媒体の種類に応じた光量の状態を保持することができる。
【0031】
このように、記録および/または再生時に光量補正素子を駆動するための電源が不要である。したがって、このような光量補正装置を備える光ピックアップを搭載した情報記録再生装置において、省電力化が可能であるという効果を奏する。
【0032】
本発明に係る光量補正装置は、さらに、上記光記録媒体の記録領域外において、上記光ピックアップの移動を上記光量補正装置の上記光ビームの光量を切り替える動作と連動させる動作変換機構を備えることを特徴としている。
【0033】
光ビームの光量補正のための光量補正素子の切り替え時において、光量補正素子の切り替え動作を、光記録媒体の情報記録領域外における光ピックアップの移動に連動させている。これによって、情報記録再生装置から光量補正素子の切り替え指示がない限り、情報記録領域内の移動である通常の情報記録再生時には、光量補正素子が容易に切り替わることはない。
【0034】
したがって、本発明に係る情報記録再生装置において、正確な情報の記録再生を行うことが可能である効果を奏する。
【0035】
また、光量補正素子の光量切り替え動作は光ピックアップの移動を利用するため、動作変換機構の簡素化を図ることができる。また、光量切り替え時に、光量補正素子に電源を供給して光量補正素子を直接駆動する必要が無い。したがって、光量補正素子を駆動するための配線などの電源供給手段を、光ピックアップに設けることが不要になるので、電源供給用のFPCをさらにコンパクトにまとめることができる。
【0036】
これにより、光ピックアップのさらなる小型、軽量化が可能になるとの効果を奏する。
【0037】
本発明に係る光量補正装置において、さらに、上記動作変換機構は、上記ホルダの端部と、上記光ピックアップを搭載した情報記録再生装置側に固定配置されたホルダ係合部とが、上記光ビームの光量切り替え時に接触することによって、上記ホルダと上記光ピックアップとの移動方向を相対的に反対方向へと変換するガイド機構を備えていることを特徴としている。
【0038】
上記の構成によれば、光ビームの光量補正のための光量補正素子の切り替え時に、上記光記録媒体の記録領域外において、ホルダが光ピックアップと一体をなして移動する動作をホルダ係合部によって停止させている。これによって、ガイド機構が、光ピックアップの移動方向に対して相対的に反対方向へ、ホルダを移動させている。その結果、光ピックアップの移動動作を光量補正素子の光量切り替え動作として変換することができる。
【0039】
これによって、光量補正素子による光量切り替えと、ホルダの移動とを制御するガイド機構を含む動作変換機構を、光ピックアップの移動動作を利用する単純な機構として構成することができる。したがって、光ピックアップのさらなる小型、軽量化を実現することができる効果を奏する。
【0040】
本発明に係る光量補正装置は、さらに、上記動作変換機構は、上記ホルダに係合したレバーであって、上記光ピックアップ内に設けられた支軸回りに回転可能なレバーと、上記レバーにおけるホルダと反対側の端部と、上記光ピックアップを搭載した情報記録再生装置側に固定配置されたホルダ係合部とが、上記光ビームの光量切り替え時に接触することによって、上記ホルダと上記光ピックアップとを同一方向に対して、各々独立して移動させるガイド機構とを備えていることを特徴としている。
【0041】
上記の構成によれば、光ビームの光量補正のための光量補正素子の切り替え時に、上記光記録媒体の記録領域外において、上記光ピックアップの移動を、レバーおよびガイド機構が、ホルダと光ピックアップとを同一方向に対して、各々独立して移動させる。
【0042】
このホルダの移動は、レバーがホルダに係合し、かつ、上記光ピックアップ内に設けられた支軸回りに回転可能に構成され、さらに、レバーにおけるホルダと反対側の端部が、ホルダ係合部と接触するように構成されていることによって実現される。
【0043】
上記レバーを介して、上記ホルダと上記光ピックアップとを同一方向に各々独立して移動させることによって、光ピックアップの移動量をレバーの回転動作によってホルダの移動量に変換することができる効果を奏する。
【0044】
本発明に係る光量補正装置は、さらに、上記レバーの上記支軸を含む直線部分において、ホルダ側の端部から上記支軸までの第1の直線距離に対して、上記直線部分の長さから上記第1の直線距離を除いた第2の直線距離の比率が、1より小さいことを特徴としている。
【0045】
上記の構成によれば、第1の直線距離に対して、第2の直線距離の比率が1より小さいということは、レバーの支軸を含む直線部分において、レバーのホルダ側端部から支軸までの第1の直線距離を、残りの第2の直線距離よりも長くするということである。これによって、光ピックアップの移動量をレバーの回転動作を介してホルダの移動量に変換するときに、光ピックアップの移動量<ホルダの移動量となるように構成することができる。
【0046】
これによって、上記レバーを備えない場合よりも、光ピックアップが光記録媒体の記録領域外を移動する距離を短くすることができる。
【0047】
したがって、情報記録再生装置を一層小型化することができる効果を奏する。
【0048】
なお、光ディスクの内周方向において、スピンドルモータと光ピックアップとの間の間隔は、レバーを備えていない場合よりも広くすることができるため、より高速回転に対応することができる直径の大きな、すなわちトルクの大きなスピンドルモータを搭載することができる効果を併せて奏する。
【0049】
本発明に係る光量補正装置は、さらに、上記ホルダは磁性材を備え、上記ホルダの移動による光量切り替え後に、上記磁性材は、上記光ピックアップ内に設けられた磁石に吸着することを特徴としている。
【0050】
上記構成によると、光量補正素子の切り替えが完了した後、磁性材料および磁石の磁気的吸引力によって、ホルダを安定して保持することができる。
【0051】
したがって、外部からの振動あるいは、光ピックアップの移動時に発生する加速度に対して、ホルダの位置が変位することなく、安定した保持が可能である効果を奏する。
【0052】
なお、光ビームを移動させながら、光記録媒体に対して、情報の記録および/または再生を行う光ピックアップであって、本発明の上記光量補正装置を備えた光ピックアップもまた、本発明に含まれる。
【0053】
さらに、上記光ピックアップと、上記光ピックアップを光記録媒体に対して移動させるように該光ピックアップを駆動する駆動源とを備え、上記光量補正素子を駆動する駆動源が、上記光ピックアップの駆動源と共用されている情報記録再生装置もまた、本発明に含まれる。
【0054】
これにより、既に説明したとおり、光ピックアップおよび情報記録再生装置の小型、軽量化と、情報記録再生装置における良好な記録再生および省電力化を実現することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明に係る情報記録再生装置は、光ビームの光量を切り替えるために光量補正素子を駆動する駆動源が、光ピックアップの駆動源と共用されていることを特徴としている。
【0056】
それゆえ、光ピックアップ内から光量補正素子の駆動源および給電用の電源ラインを取り除くことができる。これによって、光ピックアップの小型化、軽量化を図ることができる効果を奏する。また、良好な再生を妨げる不要なノイズを防止することができる。したがって、良好な再生特性を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
〔実施形態1〕
本発明に係る一実施形態について、図1(a)(b)から図3(a)(b)を参照して以下に説明する。
【0058】
(情報記録再生装置の構造)
まず、情報記録再生装置の構造について、図1(a)を参照して、以下に説明する。
図1(a)は、光ピックアップ1によって光ディスク3(光記録媒体)に対し、情報の記録および/または再生を行う情報記録再生装置全体の構成を示す概略図である。なお、説明の便宜上、光ピックアップ1が、光ディスク3の半径方向に移動可能な範囲において、両端の位置に移動した2つの状態(光ディスク3の内周位置および外周位置)を示している。
【0059】
なお、本実施の形態に係る情報記録再生装置が情報の記録および/または再生の対象とする光ディスクは、光を利用して情報を記録および/または再生できる媒体であれば限定されるものではなく、光磁気ディスク等も含まれる。このような光ディスクとしては、円板状の光ディスク、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、またはBD(Blu−ray Disc)等が挙げられる。
【0060】
この図に示すように、情報記録再生装置は光ピックアップ1、光ピックアップ1を光ディスク3の半径方向に移動させるガイド軸2およびその駆動源(図示しない)、スピンドルモータ4によって構成されている。また、後述する光ビーム透過調整手段20(光量補正装置)が、光ピックアップ1にて生成される光ビームの光量を切り替える動作をすることができるように、光ディスク3の内周位置にホルダ係合部5aが設けられているとともに、外周位置にホルダ係合部5bが設けられている。
【0061】
なお、情報記録再生装置を機能させるために必要な構成部材であっても、本発明の特徴点とは直接関係ないものについては省略してある。
【0062】
(光ピックアップ1の構造)
次に光ピックアップ1の構成について、図1(b)を参照して、以下に説明する。図1(b)は光ピックアップの構成を示す概略図である。光ピックアップ1は光ディスク3にレーザ光(光ビーム)を照射することにより、光ディスク3が有する記録面に対して情報の記録および/または再生を行うものである。
【0063】
この図に示すように、光ピックアップ1は、半導体レーザ6(光源)、偏光ビームスプリッタ7(光軸分岐手段)、コリメートレンズ8、ミラー9、APC(オートパワーコントロール)用検出素子10、検出光学系11(検出手段)、光ビーム透過調整手段20(光量補正装置)を備えている。また、図示しない1/4波長板(λ/4板;偏光回転手段)、対物レンズ(集光手段)を備えている。
【0064】
半導体レーザ6は、P偏光(第1直線偏光)の光ビームを放射するものである。光ビーム透過調整手段20、光ビームの光量を光記録媒体の種類に応じて切り替える役割を担っている。詳しくは後述する。
コリメートレンズ8は光源から放射された光ビームを平行光にするものである。
ミラー9は、コリメートレンズ8を透過した光ビームを紙面垂直手前方向に45度折り曲げて反射するものである。これにより、光ディスク3の記録面に平行に放射されたレーザ光は、光ディスク3の記録面に向けて立ち上げられる。
図示しない1/4波長板は、ミラー9によって反射された光ビーム(P偏光)を円偏光(第3偏光)に変換するとともに、光ディスク3で反射された円偏光の光ビームをS偏光(第2直線偏光)に変換するものである。図示しない対物レンズは、半導体レーザ6から出射されたレーザ光を最終的に光ディスク3に集光するものである。
偏光ビームスプリッタ7は、光ディスク3から反射された光ビームを、半導体レーザ6と光ディスク3とを結ぶ光軸から分岐するものである。
APC用検出素子10は、光ディスク3に向かう光ビームの光量をモニタするものである。
検出光学系11は、光ディスク3において反射された光ビームを受光し、電気信号を生成するものである。具体的には、検出光学系11は、自動焦点やトラック追従といった、制御に用いる光点制御信号の再生および光ディスク3に記録された情報信号の再生を行う。
【0065】
(光ビーム透過調整手段20の構造)
光ビーム透過調整手段20について、図1(b)を参照して以下に説明する。光ビーム透過調整手段20は、光量補正用光学素子21(光量補正素子、透過率可変手段)、ホルダ22および磁性材23を備えている。なお、光ビーム透過調整手段20は、後述するように、光ピックアップ1に設けられた内周側磁石24a、外周側磁石24bおよびガイドピン25と協働する構成になっている。
【0066】
上記光量補正用光学素子21は、透明基板としてのガラス基板部21aの一部に偏光性回折格子部(偏光性透過率可変素子)21bを形成した構成を有している。偏光性回折格子部21bは、光ディスク3の記録面上に到達する光ビームの実質的透過率を回折によって変化させるものである。具体的には、偏光性回折格子部21bは±1次回折光を生じさせることによって、0次回折光として記録面上に到達する光量を減少させている。
【0067】
また、偏光性回折格子部21bは、S偏光(第2直線偏光、すなわち反射光路の直線偏光)の光ビームの透過率よりもP偏光(第1直線偏光、すなわち出射光路の直線偏光)の光ビーム透過率が低い光透過性の光学素子である。具体的には、偏光性回折格子部21bは、S偏光の光ビームに対しては、非回折光:回折光=100:0の光量比において光ビームを透過し、P偏光の光ビームに対しては、非回折光:回折光=50:5の光量比において光ビームを透過する。
【0068】
すなわち、P偏光の光ビームを100%から50%に変化させることが可能である。つまり、偏光性回折格子部21bは最大光出力と最小光出力との比率を2:1とすることができる。
【0069】
また、光量補正用光学素子21は、光ピックアップ1と駆動源を共用しており、半導体レーザ6と光ディスク3とを結ぶ光軸を遮る方向(図1(a)に示すB、D方向)に移動可能である。偏光性回折格子部21bが光軸上に配置された場合において、P偏光の光ビームを回折させることにより、その光量を低減させることができる。また、偏光性回折格子21bを光軸からはずすことによって、光ビームに回折を生じさせずに全てを透過させ、光ビームの光量を低減しないようにすることができる。このように、偏光性回折格子21bと光軸との位置関係によって、光量を2段階以上に切り替えることができる。
【0070】
上記ホルダ22は、光量補正用光学素子21を接着剤等によって取り付け保持している。ホルダ22は、光ディスク3半径方向に沿った光ピックアップ1の幅よりも大きく形成されており、ホルダ22の一端は、光ピックアップ1の外形から突出している。また、光ピックアップ1のベース30に直立して設けられたガイドピン25に係合するガイド溝22aを2組備えている。このガイドピン25およびガイド溝22aによるガイド機構によって、ホルダ22は、光ピックアップ1に対して、光ディスク3の半径方向に往復移動することが可能である。
【0071】
なお、ガイドピン25に係合して、光ピックアップ1に対するホルダ22の相対移動を案内するガイド溝22aが、特許請求の範囲に記載したガイド機構に相当し、このガイド機構を備えたホルダ22が、特許請求の範囲に記載した動作変換機構に相当している。すなわち、動作変換機構としてのホルダ22は、光ディスク3の記録領域外において、光ピックアップ1の移動を光量補正用光学素子21の光量切り替え動作と連動させる機能を有している。
【0072】
ホルダ22の両端部近傍には、ホルダ22から光軸に平行な方向に沿って同じ向きに突出した内周側凸部22bおよび外周側凸部22bが形成されている。内周側凸部22bは、光ディスク3の内周側に位置し、内周側凸部22bにおける内周側の側面には、磁性材23aが接着剤等によって取り付けられている。一方、外周側凸部22bは、光ディスク3の外周側に位置し、外周側凸部22bにおける外周側の側面には、磁性材23bが接着剤等によって取り付けられている。
【0073】
また、光ピックアップ1のベース30の幅方向における両端部近傍において、内周側磁石24aが、磁性材23aと対向する位置に固定配置され、外周側磁石24bが、磁性材23bと対向する位置に固定配置されている。
【0074】
なお、図2(a)に示すように、光ピックアップ1が光ディスク3の情報記録領域における最内周位置に位置する時は、ホルダ係合部5aとホルダ22の内周側端部22cとが接触しないように備えられている。また、図3(a)に示すように、光ピックアップ1が光ディスク3の情報記録領域における最外周位置に位置する時は、外周位置のホルダ係合部5bがホルダ22の外周側端部22dと接触しないように備えられている。
【0075】
(内周位置における切り替え動作)
光ディスク3の内周位置における光量補正用光学素子21の切り替え動作について、図2(a)(b)を参照して、以下に説明する。図2(a)(b)は、光ピックアップ1が光ディスク3の内周位置に移動した状態を表している。図2(a)は、偏光性回折格子部21bが光路中にない状態(透過後の光量が多い)を表し、図2(b)は、偏光性回折格子部21bが光路中にある状態(透過後の光量が少ない)を表している。
【0076】
図2(a)に示す状態では、ホルダ22が光ピックアップ1に対して、光ディスク3の内周側方向に移動している。このとき、内周側凸部22bの磁性材23aが内周側磁石24aに吸着されており、外周側凸部22bの磁性材23bは、外周側磁石24bから離れている。偏光性回折格子部21bは、ガラス基板部21aの内周側に形成されているので、ホルダ22が光ピックアップ1に対して、内周側方向に移動している状態では、偏光性回折格子部21aが光軸に対して内周側に位置することになるため、光路中にない状態となる。
【0077】
また、図2(a)は、光ピックアップ1が光ディスク3の情報記録領域の最内周位置にある状態に対応している。光量の切り替え動作を行わない場合、つまり、情報の記録および/または再生を行う場合には、光ピックアップ1はこの位置までしか内周方向へは移動しない。
【0078】
情報記録再生装置から光量を切り替える指示が出ると、光ピックアップ1は、図2(a)に示す位置から、さらに内周方向(C方向)へと移動する。
【0079】
移動開始直後に、ホルダ22の光ディスク3の内周側端部22cと、光ディスク3の内周方向側に備えられたホルダ係合部5aとが接触する。続いて、光ピックアップ1が、さらにC方向へ移動すると、光ピックアップ1と一体化したホルダ22の移動は、ホルダ係合部5aによって阻止される結果、内周側磁石24aと磁性材23aとの吸引力による連結が解除される。これによって、ホルダ22は、接触しているホルダ係合部5aに押されて、光ピックアップ1のベース30に対して、相対的に外周方向(D方向)へと移動する。この外周方向へのホルダ22の相対移動は、ガイドピン25およびガイド溝22aによるガイド機構によって案内される。
【0080】
この結果、偏光性回折格子部21bが光軸の位置に移動するので、光量を切り替えることができる。すなわち、光量補正用光学素子21と光軸との位置関係が、ガラス基板部21aと光軸とが交わる位置関係から偏光性回折格子部21bと光軸とが交わる位置関係へと切り替えられる。なお、光ピックアップ1は、図2(b)に示すように、移動可能範囲の最内周位置まで移動して停止する。
【0081】
光ピックアップ1が、図2(b)によって示した、切り替え動作が終了する最内周位置において停止すると、外周側磁石24bと磁性材23bとが吸引力によって連結する。これによって、ホルダ22は、光ピックアップ1に対して安定して保持される。こうして、光量補正用光学素子21の切り替え動作が完了する。
【0082】
(外周位置における切り替え動作)
光ディスク3の外周位置における光量補正用光学素子21の切り替え動作について、図3(a)(b)を参照して、以下に説明する。図3(a)(b)は、光ピックアップ1が光ディスク3の外周位置に移動した状態を表している。図3(a)は、偏光性回折格子部21bが光路中にある状態(透過後の光量が少ない)を表し、図3(b)は、偏光性回折格子部21bが光路中にない状態(透過後の光量が多い)を表している。
【0083】
図3(a)に示す状態では、ホルダ22が光ピックアップ1に対して、光ディスク3の外周側方向に移動している。このとき、外周側凸部22bの磁性材23bが外周側磁石24bに吸着されており、内周側凸部22bの磁性材23aは、内周側磁石24aから離れている。ガラス基板部21aは、偏光性回折格子部21bの外周側に形成されているので、ホルダ22が光ピックアップ1に対して、外周側方向に移動している状態では、ガラス基板部21aが光軸に対して外周側に位置することになるため、ガラス基板部21aが光路中にない状態、言い換えると、偏光性回折格子部21bが光路中にある状態となる。
【0084】
また、図3(a)は、光ピックアップ1が光ディスク3の情報記録領域の最外周位置にある状態に対応している。光量の切り替え動作を行わない場合、つまり、情報の記録および/または再生を行う場合には、光ピックアップ1はこの位置までしか外周方向へは移動しない。
【0085】
情報記録再生装置から光量を切り替える指示が出ると、光ピックアップ1は、図3(a)に示す位置から、さらに外周方向(A方向)へと移動する。
【0086】
移動開始直後に、ホルダ22の光ディスク3の外周側端部22dと、光ディスク3の外周方向側に備えられたホルダ係合部5bとが接触する。続いて、光ピックアップ1が、さらにA方向へ移動すると、光ピックアップ1と一体化したホルダ22の移動は、ホルダ係合部5bによって阻止される結果、外周側磁石24bと磁性材23bとの吸引力による連結が解除される。これによって、ホルダ22は、接触しているホルダ係合部5bに押されて、光ピックアップ1のベース30に対して、相対的に内周方向(B方向)へと移動する。この内周方向へのホルダ22の相対移動は、ガイドピン25およびガイド溝22aによるガイド機構によって案内される。
【0087】
この結果、ガラス基板部21aが光軸の位置に移動するので、光量を切り替えることができる。すなわち、光量補正用光学素子21と光軸との位置関係が、偏光性回折格子部21bと光軸とが交わる位置関係からガラス基板部21aと光軸とが交わる位置関係へと切り替えられる。なお、光ピックアップ1は、図3(b)に示すように、移動可能範囲の最外周位置まで移動して停止する。
【0088】
光ピックアップ1が、図3(b)によって示した、切り替え動作が終了する最外周位置において停止すると、内周側磁石24aと磁性材23aとが吸引力によって連結する。これによって、ホルダ22は、光ピックアップ1に対して安定して保持される。こうして、光量補正用光学素子21の切り替え動作が完了する。
【0089】
以上のように、ホルダ22は光ピックアップ1に対して、光ディスク3の半径方向に往復移動することが可能である。しかし、ホルダ22を駆動させるための駆動源は光ピックアップ1内に搭載されていない。したがって、光ピックアップ1を小型、軽量に形成することが可能である。
【0090】
また、光量切り替え動作時において、ホルダ係合部5と接触したホルダ22は、ガイド機構によって、光ピックアップ1の移動方向に対して、相対的に反対方向に案内される。すなわち、ホルダ22は、光ピックアップ1の光ディスク3の半径方向への移動動作の変換利用により駆動され、光量補正用光学素子21の切り替え動作を行っている。したがって、ホルダ22の駆動機構およびガイド機構を小型かつ単純に形成することが可能である。
【0091】
さらに、ホルダ22とホルダ係合部5が接触し、光量補正用光学素子21が切り替えられるのは、光ピックアップ1が光ディスク3の情報記録領域外に移動した時のみである。すなわち、情報記録再生装置から光量補正用光学素子21の切り替え指示がない限り、通常の情報記録再生時には、光量補正用光学素子21が切り替わることない。したがって、正確な情報の記録再生を行うことができる。
【0092】
〔実施形態2〕
本発明に係る一実施形態について、図4から図6(a)(b)を参照して以下に説明する。
【0093】
なお、実施形態1と同様の部材に関しては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
したがって、本実施形態の光ピックアップ1における、ホルダ32およびレバー26の構成について、図4を参照して、以下に説明する。
【0094】
(ホルダ32の構成)
実施形態2に示す光ピックアップ1内に構成される光学系は、実施形態1と同様である。光ピックアップ1には、光量補正用光学素子21を保持するホルダ32が備えられている。ホルダ32は、実施形態1において示した形状とは異なり、光ディスク3半径方向に沿った光ピックアップ1の幅よりも小さく形成されている。そのため、ホルダ32の一端は、光ピックアップ1の外形から突出していない。この点を除けば、ガイド溝32a、内周側凸部32bおよび外周側凸部32bは、ガイド溝32a、内周側凸部22bおよび外周側凸部22bにそれぞれ対応しており、変わるところはない。
【0095】
(レバー26の構成)
本実施形態においては、光ピックアップ1の幅方向両端近傍部に、光ピックアップ1の外形から突出するようにレバー26が備えられている。レバー26は、おおむねL字状の形状をもつ本体部分と、本体部分の中程に設けられた回転支軸26aと、リングピン部26bとを備えている。
リンクピン部26bは、ホルダ22の両端近傍に形成されている2つのレバーリンク穴とレバー26のホルダ32側端部とを係合している。回転支軸26aは光ピックアップ1に直立して設けられた回動支軸に係合している。これによって、レバー26が回転支軸26aまわりに回転する動作に連動して、ホルダ32が光ディスク3の半径方向に対して、光ピックアップ1の移動から独立して往復移動することが可能である。
また、レバー26の光ディスク3の内周側端部26c(図5(a)参照)、外周側端部26d(図6(a)参照)は、光ピックアップ1の外形から突出することによって、情報記録再生装置本体側に固定配置された内周側ホルダ係合部5a(図5(a)参照)、外周側ホルダ係合部5b(図6(a)参照)とそれぞれ接触する。これによって、光ピックアップ1の光ディスク3の半径方向への移動動作に連動して、ホルダ32を移動させることが可能である。
また、レバー26は、リンクピン部26bから回転支軸26aまでの距離をR(第1の直線距離)、回転支軸26aからレバー屈曲部26eまでの距離をR(第2の直線距離)とした時、Rに対するRの比率が1より小さくなるように構成されている。これによって、ベース30の移動量をレバー26の回転動作によってホルダ32の移動量に変換する際に、ベース30の移動量よりもホルダ32の移動量を大きくすることが可能である。
【0096】
なお、本実施形態では、レバー26と、レバー26に係合されるとともに、ガイド溝32aが設けられたホルダ32とが、特許請求の範囲に記載した動作変換機構に相当する。
【0097】
ところで、光ピックアップ1が光ディスク3の情報記録領域における最内周位置に位置する時は、内周側ホルダ係合部5aがレバー26の内周側端部26cと接触しないように備えられている。また、光ピックアップ1が光ディスク3の情報記録領域における最外周位置に位置する時は、外周側ホルダ係合部5bがレバー26の外周側端部26dと接触しないように備えられている。
【0098】
(内周位置における切り替え動作)
光ディスク3の内周位置における光量補正用光学素子21の切り替え動作について、図5(a)(b)を参照して、以下に説明する。図5(a)(b)は、光ピックアップ1が光ディスク3の内周位置に移動した状態を表している。図5(a)は、偏光性回折格子部21bが光路中にある状態(透過後の光量が少ない)を表し、図2(b)は、偏光性回折格子部21bが光路中にない状態(透過後の光量が多い)を表している。
【0099】
図5(a)に示す状態では、ホルダ32が光ピックアップ1に対して、光ディスク3の外周側方向に移動している。このとき、外周側凸部32bの磁性材23bが外周側磁石24bに吸着されており、内周側凸部32bの磁性材23aは、内周側磁石24aから離れている。偏光性回折格子部21bは、ガラス基板部21aの内周側に形成されているので、ホルダ32が光ピックアップ1に対して、外周側方向に移動している状態では、ガラス基板部21aが光軸に対して外周側に位置することになるため、光路中にある状態となる。
【0100】
また、図5(a)は、光ピックアップ1が光ディスク3の情報記録領域の最内周位置にある状態に対応している。光量の切り替え動作を行わない場合、つまり、情報の記録および/または再生を行う場合には、光ピックアップ1はこの位置までしか内周方向へは移動しない。
【0101】
情報記録再生装置から切り替えの指示が出ると、光ピックアップ1は、内周方向(C方向)へと移動する。
【0102】
移動開始直後に、レバー26の光ディスク3の内周側端部26cと、光ディスク3の内周方向側に備えられたホルダ係合部5aとが接触する。続いて、光ピックアップ1が、さらにC方向へ移動すると、レバー26は回転支軸26aまわりにE方向へと回転を始め、リングピン26bと、これに係合するレバーリンク穴が接触することにより、ホルダ32をF方向へと移動させようとする。その結果、外周側磁石24bと磁性材23bととの吸引力による連結が解除される。これによって、ホルダ22は、リングピン26bの内周方向への移動に押されて、内周方向(F方向)へと移動する。この内周方向へのホルダ22の移動は、ガイドピン25およびガイド溝32aによるガイド機構によって案内される。
【0103】
この結果、ガラス基板部21aが光軸の位置に移動するので、光量を切り替えることができる。すなわち、光量補正用光学素子21と光軸との位置関係が、偏光性回折格子部21bと光軸とが交わる位置関係からガラス基板部21aと光軸とが交わる位置関係へと切り替えられる。なお、光ピックアップ1は、図5(b)に示すように、移動可能範囲の最内周位置まで移動して停止する。
【0104】
光ピックアップ1が、図5(b)によって示した、切り替え動作が終了する最内周位置において停止すると、内周側磁石24aと磁性材23aとが吸引力によって連結する。これによって、ホルダ32は、光ピックアップ1に対して安定して保持される。こうして、光量補正用光学素子21の切り替え動作が完了する。
【0105】
(外周位置における切り替え動作)
光ディスク3の外周位置における光量補正用光学素子21の切り替え動作について、図6(a)(b)を参照して、以下に説明する。図6(a)(b)は、光ピックアップ1が光ディスク3の外周位置に移動した状態を表している。図6(a)は、偏光性回折格子部21bが光路中にない状態(透過後の光量が多い)を表し、図6(b)は、偏光性回折格子部21bが光路中にある状態(透過後の光量が少ない)を表している。
【0106】
図6(a)は、ホルダ32が光ピックアップ1に対して、光ディスク3の内周側方向に移動している。したがって、偏光性回折格子部21aが光路中にない状態である。
【0107】
図6(a)に示す状態では、ホルダ32が光ピックアップ1に対して、光ディスク3の内周側方向に移動している。このとき、内周側凸部32bの磁性材23aが内周側磁石24aに吸着されており、外周側凸部32bの磁性材23bは、外周側磁石24bから離れている。偏光性回折格子部21bは、ガラス基板部21aの内周側に形成されているので、ホルダ22が光ピックアップ1に対して、内周側方向に移動している状態では、偏光性回折格子部21bが光軸に対して内周側に位置することになるため、光路中にない状態となる。
【0108】
情報記録再生装置から切り替えの指示が出ると、光ピックアップ1は、外周方向(A方向)へと移動する。
【0109】
移動開始直後に、レバー26の光ディスク3の外周側端部26dと、光ディスク3の外周方向側に備えられたホルダ係合部5bとが接触する。続いて、光ピックアップ1が、さらにA方向へ移動すると、レバー26は回転支軸26aまわりにG方向へと回転を始める。これによって、リングピン26bと、これに係合するレバーリンク穴が接触することにより、ホルダ32をH方向へと移動させようとする。その結果、内周側磁石24aと磁性材23aととの吸引力による連結が解除される。これによって、ホルダ32は、リングピン26bの外周方向への移動に押されて、外周方向(H方向)へと移動する。この外周方向へのホルダ32の移動は、ガイドピン25およびガイド溝32aによるガイド機構によって案内される。
【0110】
この結果、偏光性回折格子部21bが光軸の位置に移動するので、光量を切り替えることができる。すなわち、光量補正用光学素子21と光軸との位置関係が、ガラス基板部21aと光軸とが交わる位置関係から偏光性回折格子部21bと光軸とが交わる位置関係へと切り替えられる。なお、光ピックアップ1は、図6(b)に示すように、移動可能範囲の最外周位置まで移動して停止する。
【0111】
光ピックアップ1が、図6(b)によって示した、切り替え動作が終了する最外周位置において停止すると、外周側磁石24bと磁性材23bとが吸引力によって連結する。これによって、ホルダ32は、光ピックアップ1に対して安定して保持される。こうして、光量補正用光学素子21の切り替え動作が完了する。
【0112】
レバー26端部とホルダ係合部5が接触し、光量補正用光学素子21が切り替えられるのは、光ピックアップ1が光ディスク3の情報記録領域外に移動した時のみである。すなわち、情報記録再生装置から光量補正用光学素子21の切り替え指示がない限り、通常の情報記録再生時には、光量補正用光学素子21が切り替わることない。したがって、正確な情報の記録再生を行うことができる。
【0113】
(実施形態1と実施形態2との比較)
実施形態1の構成と実施形態2の構成において、光量補正用光学素子21を同じ距離移動させるために必要な光ピックアップ1の移動距離について、図2(a)(b)および図5(a)(b)を参照して以下に説明する。
【0114】
図2(a)(b)は、実施形態1の構成において、光ピックアップ1が光ディスク3の内周位置に移動した状態を表す図である。図5(a)(b)は、実施形態2の構成において、光ピックアップ1が光ディスク3の内周位置に移動した状態を表す図である。
【0115】
図2(a)に示したIと図5(a)に示したKは、ともにスピンドルモータ4の中心位置から、光ディスク3の情報記録領域の最内周位置までの距離とした場合、光ディスク3が同一規格品である限り、I=Kとなる。また、図2(b)に示したJと図5(b)に示したLとは、スピンドルモータ4の中心位置から、ベース30の移動可能範囲の最内周位置までの距離となる。
【0116】
すなわち、スピンドルモータ4の中心位置から、補正用光学素子21の切り替え動作時にベース30が停止する位置までの距離である。
【0117】
補正用光学素子21を切り替えるために必要なホルダ22およびホルダ32の移動距離が同じであれば、レバー26を備えた図5(a)(b)の構成におけるベース30の移動距離(K−L)は、図2(a)(b)の構成におけるベース30の移動距離(I−J)に比べて短くてすむ。なぜならば、前述したように、レバー26を備えた図5(a)(b)の構成では、レバー26の回転動作によって、ベース30の移動距離よりもホルダ32の移動距離を大きくすることができるからである。
【0118】
以上のことより、図2(a)(b)、すなわち実施形態1の構成におけるベース30の移動量と、図5(a)(b)、すなわち実施形態2の構成におけるベース30の移動量との間には、(I−J)>(K−L)という式が成り立つ。ここで、光ディスク3が同一規格品である限り、I=Kとなることから、LとJとの関係は、L>Jとなる。
【0119】
すなわち、図2(a)(b)と図5(a)(b)とのスピンドルモータ4が同じ直径とした場合、図5(b)の方が図2(b)よりもベース30とスピンドルモータ4との間隔が大きくなる。
【0120】
これによって、実施形態1の構成よりも光ディスク3を高速回転するための直径の大きな、すなわちトルクの大きなスピンドルモータ4aを搭載することができる。
【0121】
また、図示しない光ディスク3の外周側においても、光量補正用光学素子21の切り替え動作に必要なベース30の移動量は、内周方向と同様に実施形態1の構成よりも小さいため、ベース30の移動範囲を小さくすることができる。
【0122】
これによって、実施形態2の構成では実施形態1の構成に比べて、情報記録再生装置を小型化することができる。
【0123】
したがって、実施形態2の構成を有することにより、高速回転の対応が可能な高トルク使用のスピンドルモータを搭載するとともに情報記録再生装置の小型化を可能にすることができる。
【0124】
なお上記の実施形態では、レバー26の形状をL字状としているが、Rに対するRの比率が1より小さいことを満たせば、L字状に限定されるものではない。
【0125】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲において種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の光量補正装置は、光ディスクに対して、情報の記録、再生を行う光ピックアップおよびその光ピックアップを搭載した情報記録再生装置に利用することができる。特に、光ビームの光量を補正する補正用光学素子を切り替えることによって、複数種類の光ディスクの正確かつ安定した記録再生ができる、小型、軽量かつ省電力を実現しようとする情報記録再生装置に、本発明は好適である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、(a)は、情報記録再生装置の構成を表す概略平面図であり、(b)は、光ピックアップの構成を表す概略平面図である。
【図2】上記実施形態における、光ピックアップが光ディスクの内周位置に移動した状態を表す図であり、(a)は、偏光性回折格子部が光路中にない状態を示す図であり、(b)は偏光性回折格子部が光路中にある状態を示す図である。
【図3】上記実施形態における、光ピックアップが光ディスクの外周位置に移動した状態を表す図であり、(a)は、偏光性回折格子部が光路中にある状態を示す図であり、(b)は偏光性回折格子部が光路中にない状態を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示すものであり、光ピックアップの構成を表す概略平面図である。
【図5】上記実施形態における、光ピックアップが光ディスクの内周位置に移動した状態を表す図であり、(a)は、偏光性回折格子部が光路中にある状態を示す図であり、(b)は偏光性回折格子部が光路中にない状態を示す図である。
【図6】上記実施形態における、光ピックアップが光ディスクの外周位置に移動した状態を表す図であり、(a)は、偏光性回折格子部が光路中にない状態を示す図であり、(b)は偏光性回折格子部が光路中にある状態を示す図である。
【図7】従来の情報記録再生装置の光ビーム透過調整手段の光ビームが光学フィルタを透過する状態を示す斜視図である。
【図8】従来の情報記録再生装置の光ビーム透過調整手段の光ビームが光学フィルタを透過しない状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0128】
1 光ピックアップ
3 光ディスク(光記録媒体)
4 スピンドルモータ
5 ホルダ係合部
20 光ビーム透過調整手段(光量補正装置)
21 光量補正用光学素子(光量補正素子)
21a ガラス基板部
21b 偏光性回折格子部
22 ホルダ(動作変換機構)
22a ガイド溝(ガイド機構)
23 磁性材
24a 内周側磁石
24b 外周側磁石
25 ガイドピン
26 レバー(動作変換機構)
30 ベース
32 ホルダ(動作変換機構)
32a ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを移動させながら、光記録媒体に対して、情報の記録および/または再生を行う光ピックアップに備えられ、上記光ビームの光量を光記録媒体の種類に応じて切り替える光量補正素子を備えた光量補正装置において、
上記光ビームの光量を切り替えるために、上記光量補正素子を駆動する駆動源が、上記光ピックアップの駆動源と共用されていること
を特徴とする光量補正装置。
【請求項2】
記録および/または再生時において、上記光量補正素子と、上記光量補正素子を保持するホルダとが、上記光ピックアップと、同一方向へ一体をなして移動するように構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の光量補正装置。
【請求項3】
上記光記録媒体の記録領域外において、上記光ピックアップの移動を上記光量補正装置の上記光ビームの光量を切り替える動作と連動させる動作変換機構を備えること
を特徴とする請求項2に記載の光量補正装置。
【請求項4】
上記動作変換機構は、
上記ホルダの端部と、上記光ピックアップを搭載した情報記録再生装置側に固定配置されたホルダ係合部とが、上記光ビームの光量切り替え時に接触することによって、上記ホルダと上記光ピックアップとの移動方向を相対的に反対方向へと変換するガイド機構を備えていること
を特徴とする請求項3に記載の光量補正装置。
【請求項5】
上記動作変換機構は、
上記ホルダに係合したレバーであって、上記光ピックアップ内に設けられた支軸回りに回転可能なレバーと、
上記レバーにおけるホルダと反対側の端部と、上記光ピックアップを搭載した情報記録再生装置側に固定配置されたホルダ係合部とが、上記光ビームの光量切り替え時に接触することによって、上記ホルダと上記光ピックアップとを同一方向に対して、各々独立して移動させるガイド機構とを備えていること
を特徴とする請求項3に記載の光量補正装置。
【請求項6】
上記レバーの上記支軸を含む直線部分において、ホルダ側の端部から上記支軸までの第1の直線距離に対して、上記直線部分の長さから上記第1の直線距離を除いた第2の直線距離の比率が、1より小さいことを特徴とする請求項5に記載の光量補正装置。
【請求項7】
上記ホルダは磁性材を備え、上記ホルダの移動による光量切り替え後に、上記磁性材は、上記光ピックアップ内に設けられた磁石に吸着することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の光量補正装置。
【請求項8】
光ビームを移動させながら、光記録媒体に対して、情報の記録および/または再生を行う光ピックアップであって、請求項1から7のいずれか1項に記載の光量補正装置を備えたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項9】
請求項8に記載の光ピックアップと、光ピックアップを光記録媒体に対して移動させるように該光ピックアップを駆動する駆動源とを備え、
上記光量補正素子を駆動する駆動源が、上記光ピックアップの駆動源と共用されていることを特徴とする情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−328861(P2007−328861A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158997(P2006−158997)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】