説明

光量調整装置、レンズ鏡筒、及び撮像装置

【課題】複数の減光フィルタによって小絞りによる回折減少を防止するとともに、減光フィルタを複数用いても小型化を図れるようにする。
【解決手段】開口部31aを全開させる全開位置と開口部31aの開口量を絞る絞り位置との間を往復移動可能な上絞り羽根41及び下絞り羽根44と、上絞り羽根41及び下絞り羽根44によって開口部31aの表面側に形成される絞り開口の開口量を増減させる絞り駆動モータ51と、絞り開口から離れた退避位置と絞り開口を全て覆う遮蔽位置との間を往復移動して絞り開口を通過する光量を減少させることが可能な上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68と、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68が退避位置にある状態、下NDフィルタ68だけが遮蔽位置にある状態、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68が遮蔽位置にある状態を切り替えるND駆動モータ71とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の独立した絞り羽根と、複数の独立した減光フィルタとを有する光量調整装置、レンズ鏡筒、及び撮像装置に係るものである。そして、詳しくは、複数の減光フィルタによって小絞りによる回折現象を防止するとともに、減光フィルタを複数用いても小型化を図れるようにした技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置は、従来から、鏡筒本体に光軸を一致させた状態で配置された複数のレンズによって被写体像を結像させている。そして、この被写体像は、CCD(Charge Coupled Device Image Sensor)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )イメージセンサ等の撮像素子によって受像され、光電変換されて電気信号として出力される。そのため、被写体像に対応したデジタル画像データが生成されることとなる。
【0003】
ここで、明るい被写体を撮影する場合には、撮像素子への入射光量を少なくするため、複数の絞り羽根を有する光量調整装置によって光量を絞っている。この場合、例えば、各絞り羽根によって形成される絞り開口の開口量をピンホール状態まで絞ってしまうと、回折現象が発生し、いわゆる小絞り状態になってしまう。そのため、良好な画像を得ることができないという問題があった。
【0004】
そこで、駆動手段によって複数の光量調節部材(絞り羽根)を駆動し、絞り開口の開口径を可変とする光量調節機構と、駆動手段により、光軸に略垂直な面内で有効光線内に出し入れ可能なNDフィルタ(減光フィルタ)とを有する光量調節装置が知られている。そして、NDフィルタは、複数の異なる透過率の領域を有し、有効光線外から有効光線内へ入る際には、透過率の高い領域が最初に有効光線内に入るようになっている。そのため、透過率の高い領域で減光不足の場合には、透過率の低い領域を有効光線内に入れることにより、露出制御のダイナミックレンジを広くできる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−214514号公報
【0005】
また、露出開口(絞り開口)を有する地板と、この地板にスライド自在に支持されたスライド部材と、このスライド部材に貼り付けられ、露出開口に進退して光量を減光する光量減光フィルタとを備えるようにした光量調整装置が知られている。具体的には、光量減光フィルタは、スライド部材に重ねられた大小異なる複数枚の減光フィルタからなり、この複数枚の減光フィルタの内で最も大なるフィルタが外側に位置するようにスライド部材に貼り付けられている。そのため、光量減光フィルタを露出開口にスライドさせることにより、開口量をピンホール状態まで絞ることなく、撮像素子への入射光量を少なくできる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開2002−357857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1の技術は、複数の異なる透過率の領域を有する1つのNDフィルタ(減光フィルタ)を用いている。そのため、透過率が1種類だけの場合に比べてNDフィルタが大きくなり、その結果、光量調整装置が大型化するという問題がある。
【0007】
一方、上記した特許文献2の技術は、大小異なる複数枚の減光フィルタを有している。しかし、各減光フィルタが1つのスライド部材に貼り付けられているので、各減光フィルタは、露出開口(絞り開口)に対して、同方向に同時に進退して光量を減光する。そのため、最も大なるフィルタが移動できるだけのスペースが必要となり、光量調整装置が大型化してしまう。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、複数の減光フィルタによって小絞りによる回折現象を防止するとともに、減光フィルタを複数用いても小型化を図れるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の解決手段によって、上述の課題を解決する。
本発明の請求項1に記載の発明は、光を入射させるための開口部が形成され、前記開口部からの入射光の光軸に対して垂直な方向に配置される地板と、前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記開口部を全開させる全開位置と前記開口部の開口量を絞る絞り位置との間を往復移動することが可能な複数の独立した絞り羽根と、各前記絞り羽根を移動させ、各前記絞り羽根によって前記開口部の表面側に形成される絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記絞り開口から離れた退避位置と前記絞り開口を全て覆う遮蔽位置との間を往復移動して前記絞り開口を通過する光量を増減させることが可能な複数の独立した減光フィルタと、各前記減光フィルタを移動させ、全ての前記減光フィルタが退避位置にある状態、一部の前記減光フィルタだけが遮蔽位置にある状態、及び全ての前記減光フィルタが遮蔽位置にある状態を切り替える減光フィルタ駆動手段とを有する光量調整装置である。
【0010】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、撮像用のレンズと、前記レンズを収容する鏡筒本体と、前記レンズからの光を入射させるための開口部が形成され、前記開口部からの入射光の光軸に対して垂直な方向に配置される地板と、前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記開口部を全開させる全開位置と前記開口部の開口量を絞る絞り位置との間を往復移動することが可能な複数の独立した絞り羽根と、各前記絞り羽根を移動させ、各前記絞り羽根によって前記開口部の表面側に形成される絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記絞り開口から離れた退避位置と前記絞り開口を全て覆う遮蔽位置との間を往復移動して前記絞り開口を通過する光量を増減させることが可能な複数の独立した減光フィルタと、各前記減光フィルタを移動させ、全ての前記減光フィルタが退避位置にある状態、一部の前記減光フィルタだけが遮蔽位置にある状態、及び全ての前記減光フィルタが遮蔽位置にある状態を切り替える減光フィルタ駆動手段とを有するレンズ鏡筒である。
【0011】
さらにまた、本発明の請求項8に記載の発明は、撮像用のレンズと、前記レンズを収容する鏡筒本体と、前記レンズからの光を入射させるための開口部が形成され、前記開口部からの入射光の光軸に対して垂直な方向に配置される地板と、前記地板よりも入射方向後方の光軸上に配置された撮像素子と、前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記開口部を全開させる全開位置と前記開口部の開口量を絞る絞り位置との間を往復移動することが可能な複数の独立した絞り羽根と、各前記絞り羽根を移動させ、各前記絞り羽根によって前記開口部の表面側に形成される絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記絞り開口から離れた退避位置と前記絞り開口を全て覆う遮蔽位置との間を往復移動して前記絞り開口を通過する光量を増減させることが可能な複数の独立した減光フィルタと、各前記減光フィルタを移動させ、全ての前記減光フィルタが退避位置にある状態、一部の前記減光フィルタだけが遮蔽位置にある状態、及び全ての前記減光フィルタが遮蔽位置にある状態を切り替える減光フィルタ駆動手段とを有する撮像装置である。
【0012】
(作用)
上記の請求項1、請求項7、及び請求項8に記載の発明は、開口部を全開させる全開位置と開口部の開口量を絞る絞り位置との間を往復移動することが可能な複数の独立した絞り羽根を有している。そして、各絞り羽根は、絞り羽根駆動手段により、開口部の表面側に形成される絞り開口の開口量を増減させるように移動する。そのため、明るい被写体を撮影する場合には、絞り開口の開口量を減らして光量を絞り、撮像素子への入射光量を少なくできる。
【0013】
また、上記の請求項1、請求項7、及び請求項8に記載の発明は、絞り開口から離れた退避位置と絞り開口を全て覆う遮蔽位置との間を往復移動して絞り開口を通過する光量を増減させることが可能な複数の独立した減光フィルタを有している。そして、この減光フィルタは、減光フィルタ駆動手段によって遮蔽位置にある状態に移動できる。そのため、絞り開口の開口量をピンホール状態まで絞ることなく、減光フィルタを遮蔽位置に移動させることによって光量を調整できるようになる。
【0014】
さらにまた、減光フィルタは、独立して複数設けられている。そして、減光フィルタ駆動手段は、全ての減光フィルタが退避位置にある状態、一部の減光フィルタだけが遮蔽位置にある状態、及び全ての減光フィルタが遮蔽位置にある状態を切り替える。そのため、複数の異なる透過率の領域を有する1つの減光フィルタを用いる場合(特許文献1の技術)に比べ、減光フィルタを小型化できるようになる。また、複数の減光フィルタを同方向に同時に進退させる場合(特許文献2の技術)に比べ、減光フィルタの移動スペースを小さくできるようになる。
【発明の効果】
【0015】
上記の発明によれば、絞り開口の開口量をピンホール状態まで絞ることなく、減光フィルタを遮蔽位置に移動させることによって光量を調整できるので、小絞りによる回折現象を防止できる。また、独立して複数設けられた各減光フィルタにより、1つの減光フィルタを用いる場合よりも小型化できる。さらにまた、複数の減光フィルタを同方向に同時に進退させる場合よりも減光フィルタの移動スペースを小さくできる。したがって、光量調整装置の小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
ここで、本発明における撮像装置は、以下の実施の形態では、デジタルスチルカメラ10であるとする。また、本発明のレンズ鏡筒は、以下の実施の形態では、デジタルスチルカメラ10に組み込まれたレンズ鏡筒20であるとする。そして、本発明の光量調整装置30(又は80,90)は、レンズ鏡筒20の一部となっている。なお、説明は、以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(光量調整装置30:減光フィルタの上を小、下を大にした例)
2.第2の実施の形態(光量調整装置80:上下の減光フィルタの動きを変えた例)
3.第3の実施の形態(光量調整装置90:減光フィルタの上を大、下を小にした例)
【0017】
[撮像装置の外観例]

図1は、本発明の撮像装置の一実施形態としての、デジタルスチルカメラ10を示す斜視図である。なお、デジタルスチルカメラ10には、本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、レンズ鏡筒20が組み込まれている。また、レンズ鏡筒20には、本発明の光量調整装置の一実施形態としての、光量調整装置30(又は80,90)が組み込まれている。
図1に示すように、デジタルスチルカメラ10は、外装を構成する直方体状のケース11を備えている。そして、ケース11内の右側部には、図1(a)中、二点鎖線で示すレンズ鏡筒20が組み込まれており、レンズ鏡筒20に設けられているレンズ21は、ケース11の前面側の上部に位置している。なお、図1に示すデジタルスチルカメラ10において、左右とは、図1(a)に示す前面側から見た左右を言うものとする。
【0018】
また、レンズ21の左隣には、撮影補助光を出射するフラッシュ12、AF(Auto Focus)補助光発光部13が設けられており、ケース11の上面の左側部には、シャッターボタン14が設けられている。さらに、ケース11の前面側には、カバー11aが上下にスライド可能に設けられている。そして、カバー11aは、ケース11の前面側下方に位置してレンズ21、フラッシュ12、及びAF補助光発光部13を露出させる撮影位置と、前面側上方に位置してこれらを覆う保護位置との間をスライドする。そのため、カバー11aを撮影位置(図1(a)に示す位置)にしてシャッターボタン14を押せば、撮影できる。
【0019】
さらにまた、ケース11の後面には、メニューボタン15、ディスプレイ16、十字キー17、ズームレバー18、及び露出補正ボタン19が設けられている。メニューボタン15は、ディスプレイ16に各種の設定メニュー(静止画撮影モード、動画撮影モード、再生モード等)を表示させるものであり、表示されたメニューは、十字キー17で選択して決定ボタン17aで設定する。ディスプレイ16は、例えば、液晶表示器であり、設定メニューの他、撮影する画像を表示したり、撮影された画像を再生等するものである。ズームレバー18は、レンズ鏡筒20のズーミングを行うためのものであり、露出補正ボタン19は、ワンタッチで逆光補正等の露出補正を行うためのものである。
【0020】
[レンズ鏡筒の断面例]

図2は、本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、レンズ鏡筒20の光軸方向の断面図である。
図2に示すように、レンズ鏡筒20は、鏡筒本体20aに光軸を一致させた状態で配置された前玉レンズ群21a、ズームレンズ群21b、中間レンズ21c、及びフォーカスレンズ群21dを備える4群インナーフォーカス式のズームレンズとなっている。そのため、ステッピングモータやリニアモータ等によってズームレンズ群21bを光軸方向に変位させることにより、ズーミング(変倍操作)を行うことができる。また、フォーカスレンズ群21dを光軸方向に変位させることにより、フォーカシング(焦点調節操作)を行うことができる。なお、このレンズ鏡筒20は、デジタルスチルカメラ10(図1参照)の他、デジタルビデオカメラ等にも使用できるものである。
【0021】
ここで、鏡筒本体20aは、強度及び量産性があり、かつ遮光性を有する黒色の樹脂材料(例えば、ガラス繊維を含有するポリカーボネート樹脂等)からなる。そして、前玉レンズ群21a及び中間レンズ21cは、鏡筒本体20aに固定されている。一方、ズームレンズ群21bは、ズームレンズ保持枠22によってガイド軸24aとガイド軸24bとの間に保持されており、光軸方向にスライド可能となっている。さらに、フォーカスレンズ群21dは、フォーカスレンズ保持枠23によってガイド軸24aとガイド軸24bとの間に保持されており、光軸方向にスライド可能となっている。なお、ガイド軸24a及びガイド軸24bは、鏡筒本体20aの内部で光軸と平行に固定されている。
【0022】
また、レンズ鏡筒20には、光量調整装置30が設けられている。この光量調整装置30は、中間レンズ21cとフォーカスレンズ群21dとの間に配置されている。そして、絞り開閉装置40、絞り駆動装置50(本発明における絞り羽根駆動手段に相当するもの)、ND(Neutral Density )フィルタ開閉装置60、及びNDフィルタ駆動装置70(本発明における減光フィルタ駆動手段に相当するもの)を備えている。そのため、絞り駆動装置50によって絞り開閉装置40を開閉することにより、絞り開口の開口量を増減させることができる。さらに、NDフィルタ駆動装置70によってNDフィルタ開閉装置60を開閉することにより、絞り開口を通過する光量を増減させることができる。なお、NDフィルタは、本発明における減光フィルタに相当し、透過する光量を減少させることができるものである。
【0023】
[撮像装置の構成例]

図3は、本発明の撮像装置の一実施形態としての、デジタルスチルカメラ10の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、デジタルスチルカメラ10には、レンズ鏡筒20が組み込まれている。また、レンズ鏡筒20には、光量調整装置30が組み込まれている。さらにまた、デジタルスチルカメラ10は、撮像素子25、A/D(Analog/Digital )変換部26、カメラDSP(Digital Signal Processor)27、CPU(Central Processing Unit )28、メモリ29、及びディスプレイ16を備えている。
【0024】
ここで、レンズ鏡筒20には、前玉レンズ群21a、ズームレンズ群21b、中間レンズ21c、及びフォーカスレンズ群21dが光軸に沿って配列されている。そして、中間レンズ21cとフォーカスレンズ群21dとの間には、光量調整装置30の一部を構成する絞り開閉装置40が配置されている。この絞り開閉装置40は、絞り駆動装置50によって駆動され、絞り開口の開口量を増減させることができる。例えば、明るい被写体を撮影する場合には、撮像素子25への入射光量を少なくするため、絞り開口の開口量を減少させて光量を絞る。
【0025】
また、中間レンズ21cとフォーカスレンズ群21dとの間には、光量調整装置30の一部を構成するNDフィルタ開閉装置60も配置されている。本実施形態では、NDフィルタ開閉装置60は、絞り開閉装置40の前面側である入射光側に配置されており、NDフィルタ駆動装置70によって駆動される。そのため、絞り開口の前面側をNDフィルタで閉じることにより、絞り開口を通過する入射光量を減らして小絞りによる回折現象を防止することが可能となる。
【0026】
このような光量調整装置30が組み込まれたレンズ鏡筒20において、NDフィルタ開閉装置60及び絞り開閉装置40によって光量調整された入射光(被写体像)は、撮像素子25に結像し、撮像される。この撮像素子25は、CCD(Charge Coupled Device )イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )イメージセンサ等である。そして、入射光が撮像素子25によって光電変換され、その出力であるアナログ信号は、A/D変換部26によってデジタル信号に変換される。また、このデジタル信号は、カメラDSP27により、ガンマ補正、色分離、色差マトリクス等の処理が施され、同期信号を加えて標準テレビジョン信号が生成される。さらにまた、カメラDSP27により、露出制御用の輝度データがCPU28に送信され、カメラDSP27によって処理された画像は、メモリ29に記憶されたり、ディスプレイ16に表示される。
【0027】
CPU28は、カメラDSP27から送信された輝度データに基づいて露出制御用の計算を行う。そして、その計算結果が露出適正でなかった場合には、適正になるように、絞り駆動装置50及びNDフィルタ駆動装置70を制御する。例えば、絞り開閉装置40及びNDフィルタ開閉装置60が開放している状態から入射光量を減らす方向に露出制御する場合には、絞り駆動装置50を制御して絞り開閉装置40を駆動し、絞り開口の開口量を減少させる。次に、NDフィルタ駆動装置70を制御してNDフィルタ開閉装置60を駆動し、絞り開口を通過する入射光量を減らす。
【0028】
この点に関してさらに詳述すると、絞り駆動装置50によって絞り開閉装置40を駆動した際に、絞り開口の開口量をピンホール状態まで絞ってしまうと、回折現象が発生し、いわゆる小絞り状態になってしまう。そこで、小絞り状態になった場合には、CPU28からの指令によってNDフィルタ駆動装置70を制御し、NDフィルタ開閉装置60を駆動する。そして、絞り開口の前面側をNDフィルタで閉じることによって絞り開口を通過する入射光量を減らし、撮像素子25に入射する光量を少なくする。その後、CPU28は、少なくなった入射光量に基づいて絞り駆動装置50を制御し、絞り開閉装置40を駆動して絞り開口の開口量を増やす。その結果、小絞り状態が解除され、いわゆる小絞りぼけを回避できるようになる。
【0029】
一方、絞り開口をNDフィルタで閉じた明るい被写体の撮影から日陰等の被写体の撮影に変更した場合には、撮像素子25への入射光量が低下することになる。そこで、CPU28からの指令によってNDフィルタ駆動装置70を制御し、NDフィルタ開閉装置60を駆動して絞り開口の前面側からNDフィルタを退避させる。同時に、CPU28は、絞り駆動装置50を制御し、絞り開閉装置40を駆動して絞り開口の開口量を入射光量に応じたものとする。
【0030】
<1.第1の実施の形態>
[光量調整装置の構成例]

図4は、本発明の光量調整装置の一実施形態(第1の実施の形態)としての、光量調整装置30の構成を示す分解斜視図である。
図4に示すように、光量調整装置30は、地板31、仕切り板34、及び押さえ板36を有している。
【0031】
また、光量調整装置30は、絞り開閉装置40(図3参照)を構成する上絞り羽根41(本発明における第1絞り羽根に相当するもの)と、下絞り羽根44(本発明における第2絞り羽根に相当するもの)とを有している。さらにまた、絞り駆動装置50(図3参照)を構成する絞り駆動モータ51(本発明における絞り羽根駆動手段に相当するもの)及び絞り駆動アーム52を有している。なお、絞り駆動モータ51は、本実施形態では、ステッピングモータであるが、リニアモータ等を使用することもできる。
【0032】
さらに、光量調整装置30は、NDフィルタ開閉装置60(図3参照)を構成する上ND羽根61(本発明における減光フィルタ羽根に相当するもの)と、下ND羽根64(本発明における減光フィルタ羽根に相当するもの)とを有している。そして、上ND羽根61は、一定の透過率を有する上NDフィルタ67(本発明における第1減光フィルタに相当するもの)を保持しており、下ND羽根64は、一定の透過率を有する下NDフィルタ68(本発明における第2減光フィルタに相当するもの)を保持している。また、NDフィルタ駆動装置70(図3参照)を構成するND駆動モータ71(本発明における減光フィルタ駆動手段に相当するもの)及びND駆動アーム72を有している。なお、ND駆動モータ71は、本実施形態では、ステッピングモータであるが、リニアモータ等を使用することもできる。
【0033】
ここで、地板31には、光を入射させるための円形の開口部31aが形成されており、開口部31aからの入射光の光軸に対して垂直な方向に配置されるようになっている。また、地板31には、ガイドピン32が一体成型されるとともに凸状のレール33が設けられている。そして、上ND羽根61には、ガイドピン32を挿入するガイド穴62が形成されており、下ND羽根64には、ガイドピン32を挿入するガイド穴65が形成されている。そのため、上ND羽根61及び下ND羽根64は、ガイド穴62及びガイド穴65にガイドピン32を挿入することにより、地板31の表面に沿ってそれぞれ独立に取り付けられることとなる。しかも、ガイド穴62及びガイド穴65が長穴に形成されているので、上ND羽根61及び下ND羽根64は、レール33上で摩擦力が低減されながら入射光の光軸に対して垂直な方向に往復移動できる。
【0034】
また、仕切り板34は、上ND羽根61及び下ND羽根64と、上絞り羽根41及び下絞り羽根44との接触を避けるためのものであり、例えば、ステンレス板等で形成され、表裏両面にレール35を有している。そして、上絞り羽根41は、ガイドピン32が挿入されるガイド穴42を有しており、下絞り羽根44は、ガイドピン32が挿入されるガイド穴45を有している。そのため、上絞り羽根41及び下絞り羽根44は、ガイド穴42及びガイド穴45にガイドピン32を挿入することにより、仕切り板34を介して地板31の表面に沿ってそれぞれ独立に取り付けられることとなる。しかも、ガイド穴42及びガイド穴45が長穴に形成されているので、上絞り羽根41及び下絞り羽根44は、レール35上で摩擦力が低減されながら入射光の光軸に対して垂直な方向に往復移動できる。
【0035】
さらにまた、上絞り羽根41及び下絞り羽根44の表面は、押さえ板36(例えば、ステンレス板等で形成され、レールを有するもの)によって塞がれる。そして、地板31側にND駆動モータ71が配置され、ND駆動モータ71にND駆動アーム72が取り付けられている。このND駆動アーム72の両端部には、上ND駆動ピン73及び下ND駆動ピン74が一体成型され、上ND羽根61及び下ND羽根64に形成されたカム穴63及びカム穴66とそれぞれ個別にはまり合う。一方、押さえ板36側に絞り駆動モータ51が配置され、絞り駆動モータ51に絞り駆動アーム52が取り付けられている。この絞り駆動アーム52の両端部には、上絞り駆動ピン53及び下絞り駆動ピン54が一体成型され、上絞り羽根41及び下絞り羽根44に形成されたカム穴43及びカム穴46とそれぞれ個別にはまり合う。なお、押さえ板36及び仕切り板34は、地板31に対し、スナップフィット等の手段で固定される。また、絞り駆動モータ51は、押さえ板36にビス締結や接着等によって固定され、ND駆動モータ71は、地板31にビス締結や接着等によって固定される。
【0036】
このような上絞り羽根41及び下絞り羽根44のカム穴43及びカム穴46は、絞り駆動アーム52の正逆回転を上絞り羽根41及び下絞り羽根44の往復移動に変換する。そのため、絞り駆動モータ51によって絞り駆動アーム52を正逆回転させれば、絞り駆動モータ51の駆動力がカム穴43及びカム穴46によって伝達される。その結果、上絞り羽根41及び下絞り羽根44は、ガイドピン32に案内され、開口部31aを全開させる全開位置と開口部31aの開口量を絞る絞り位置との間を往復移動する。また、上絞り羽根41と下絞り羽根44とが互いに逆向きに直進移動するようになるので、絞り駆動モータ51により、上絞り羽根41及び下絞り羽根44によって開口部31aの表面側に形成される絞り開口の開口量を増減させることができる。
【0037】
同様に、上ND羽根61及び下ND羽根64のカム穴63及びカム穴66は、ND駆動アーム72の正逆回転を上ND羽根61及び下ND羽根64の往復移動に変換する。そのため、ND駆動モータ71によってND駆動アーム72を正逆回転させれば、ND駆動モータ71の駆動力がカム穴63及びカム穴66によって伝達される。その結果、上ND羽根61及び下ND羽根64は、ガイドピン32に案内され、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68は、絞り開口から離れた退避位置と絞り開口を全て覆う遮蔽位置との間を往復移動する。
【0038】
ここで、例えば、上絞り羽根41の外形は、上絞り羽根41のカム穴43にはまり合った上絞り駆動ピン53の反対側にある下絞り駆動ピン54が動く軌跡を避けるように形成されている。また、下絞り羽根44、上ND羽根61、及び下ND羽根64の外形も同様に形成されている。そのため、上絞り羽根41、下絞り羽根44、上ND羽根61、及び下ND羽根64は、相互に干渉することなく往復移動できる。しかも、上絞り羽根41、下絞り羽根44、上ND羽根61、及び下ND羽根64を地板31の表面に落とし込んで組立てできるようになり、厚さも薄くできるので、光量調整装置30が低コスト化及び小型化される。
【0039】
また、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の退避位置と、上絞り羽根41及び下絞り羽根44の全開位置とは、地板31の表面上で上下に重なるようになっている。具体的には、上NDフィルタ67は、上絞り羽根41に重なるように配置され、下NDフィルタ68は、下絞り羽根44に重なるように配置されている。そのため、上絞り羽根41及び下絞り羽根44と、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68との配置スペースを共用できるようになり、光量調整装置30が小型化される。
【0040】
さらにまた、ND駆動モータ71は、上NDフィルタ67を上絞り羽根41と同じ方向に直進移動させ、下NDフィルタ68を下絞り羽根44と同じ方向に直進移動させる。そして、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68が退避位置にある状態、下NDフィルタ68だけが遮蔽位置にある状態、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68が遮蔽位置にある状態を切り替える。したがって、ND駆動モータ71により、絞り開口を通過する光量を増減できる。なお、本実施形態では、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の透過率を同一で一定のものとしているが、両者で異なる透過率としたり、一方又は両方の透過率が部分的に変わっていてもよい。
【0041】
[光量調整装置の動作例]

図5は、第1の実施の形態の光量調整装置30における絞り動作の第1段階(図5(a))及び第2段階(図5(b))を示す正面図である。
また、図6は、第1の実施の形態の光量調整装置30における絞り動作の第3段階(図6(c))及び第4段階(図6(d))を示す正面図である。
さらにまた、図7は、第1の実施の形態の光量調整装置30における絞り動作の第5段階(図7(e))を示す正面図である。
【0042】
図5(a)に示す絞り動作の第1段階では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44が全開位置となっている。そのため、上絞り羽根41及び下絞り羽根44によって開口部31a(図4参照)の表面側に形成される絞り開口37は、最大の開口量となり、開口部31aが全開する。また、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の両方が退避位置にあるので、絞り開口37を通過する光量が減少することはない。
【0043】
次に、図5(b)に示す絞り動作の第2段階では、絞り駆動モータ51(図4参照)によって上絞り羽根41及び下絞り羽根44を絞り位置に移動させ、絞り開口37の開口量を減少させる。なお、この絞り位置は、小絞り状態にならない(回折劣化が生じない)範囲で設定されている。
【0044】
続いて、図6(c)に示す絞り動作の第3段階では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44を絞り位置に維持したまま、下NDフィルタ68だけを遮蔽位置にする。具体的には、ND駆動モータ71を少しだけ時計回りに回転させ、ND駆動アーム72により、上ND羽根61を下降させるとともに下ND羽根64を上昇させる。そのため、上NDフィルタ67が下降し、下NDフィルタ68が上昇するが、第1の実施の形態の光量調整装置30では、上NDフィルタ67の上下幅が小さく、下NDフィルタ68の上下幅が大きくなっている。したがって、上NDフィルタ67の下端は、依然として絞り開口37から離れた退避位置となり、下NDフィルタ68だけが絞り開口37を全て覆う遮蔽位置となる。その結果、小絞りによる回折劣化の発生を抑えることができる。また、上NDフィルタ67又は下NDフィルタ68の半掛かりによる回折現象や端面の反射による画質劣化を避けることができる。なお、ND駆動モータ71の回転状態により、上NDフィルタ67又は下NDフィルタ68を半掛かりの状態とすることも可能である。
【0045】
ここで、動画撮影時は、図6(c)に示す第3段階の絞り動作を可能な限り早く行うことが望ましい。また、下NDフィルタ68を遮蔽位置にする際に、上絞り羽根41及び下絞り羽根44を多少動かしてもよい。なお、この際は、増幅器の利得(ゲイン)や電子シャッタのシャッタ速度を変化させることにより、下NDフィルタ68の出し入れ(と、上絞り羽根41及び下絞り羽根44の動き)による露出変化を相殺し、連続的な露出制御を行う。
【0046】
図6(d)に示す絞り動作の第4段階では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44を絞り位置に維持したまま、上NDフィルタ67も遮蔽位置にする。具体的には、ND駆動モータ71を大きく時計回りに回転させ、ND駆動アーム72により、さらに上ND羽根61を下降させるとともに下ND羽根64を上昇させる。そのため、下NDフィルタ68だけでなく、上NDフィルタ67も絞り開口37を全て覆う遮蔽位置となる。したがって、絞り開口37を通過する光量をさらに減少させることができる。なお、下NDフィルタ68は、上下幅が大きいので、図6(c)に示す遮蔽位置からさらに上昇しても、依然として絞り開口37を全て覆う遮蔽位置となる。また、上NDフィルタ67を遮蔽位置にする際に、上絞り羽根41及び下絞り羽根44を多少動かしてもよく、この際も、露出変化を相殺して連続的な露出制御を行う。
【0047】
最後に、図7(e)に示す絞り動作の第5段階では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44をさらに絞り込む。それにより、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の両方が遮蔽位置に移動した後も、撮像素子25(図3参照)への入射光量を減少させることができる。また、第1の実施の形態では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44を全閉状態まで絞り込むことにより、上絞り羽根41及び下絞り羽根44によるシャッタ機能の兼用を可能としている。
【0048】
このように、上絞り羽根41、下絞り羽根44、上ND羽根61、及び下ND羽根64は、図4に示すカム穴43、カム穴46、カム穴63、及びカム穴66と、上絞り駆動ピン53、下絞り駆動ピン54、上ND駆動ピン73、及び下ND駆動ピン74との関係によって図5、図6、及び図7に示す絞り動作を行う。そして、カム穴43、カム穴46、カム穴63、及びカム穴66の形成位置や角度の設定により、図5(a)に示す第1段階から図7(e)に示す第5段階までの絞り駆動アーム52(図4参照)及びND駆動アーム72(図4参照)の回転角度を75°としている。なお、各段階におけるカム穴43、カム穴46、カム穴63、及びカム穴66の圧力角を下げるには、各段階に割り当てる絞り駆動アーム52及びND駆動アーム72の回転角度を大きくすればよい。また、近年では、撮像素子25(図3参照)の読出し速度が速くなってきている(特に、CMOSイメージセンサ)ので、メカ的なシャッタ機能を兼用する必然性がなくなってきている。そこで、図6(d)に示す第4段階から図7(e)に示す第5段階までの絞り駆動アーム52の回転角度を小さくしたり、第5段階自体を省略してもよい。
【0049】
このような第1の実施の形態の光量調整装置30は、小絞りによる回折現象、上NDフィルタ67又は下NDフィルタ68の半掛かりによる回折現象や端面反射を回避できる。また、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の2枚により、従来よりも回折劣化の少ない絞り形状をより長く保持したまま、露出制御が可能となる。さらにまた、同一の明るさの被写体であっても、被写界深度優先で、絞り形状をより小さくした状態で上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の出し入れを行うことができる。さらに、下NDフィルタ68が遮蔽位置にした後、絞りをより絞ってから上NDフィルタ67も遮蔽位置にする等、露出と被写界深度の選択を増やすことができるので、滑らかで多彩な露出制御が可能となる。
【0050】
<2.第2の実施の形態>
[光量調整装置の動作例]

図8は、第2の実施の形態の光量調整装置80における絞り動作の第1段階(図8(a))及び第2段階(図8(b))を示す正面図である。
また、図9は、第2の実施の形態の光量調整装置80における絞り動作の第3段階(図9(c))及び第4段階(図9(d))を示す正面図である。
さらにまた、図10は、第2の実施の形態の光量調整装置80における絞り動作の第5段階(図10(e))及び第6段階(図10(f))を示す正面図である。
さらに、図11は、第2の実施の形態の光量調整装置80における絞り動作の第7段階(図11(g))を示す正面図である。
【0051】
図8、図9、図10、及び図11に示す第2の実施の形態の光量調整装置80は、第1の実施の形態の光量調整装置30(図5、図6、及び図7参照)に対し、異なる形状(特に、カム穴)の上ND羽根81及び下ND羽根82を使用している。また、上ND羽根81及び下ND羽根82に合わせた形状のND駆動アーム83を使用している。そのため、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の動きが変わる。具体的には、 図8(a)に示す絞り動作の第1段階では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44が全開位置となっている。そのため、上絞り羽根41及び下絞り羽根44によって開口部31a(図4参照)の表面側に形成される絞り開口37は、最大の開口量となり、開口部31aが全開する。また、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の両方が退避位置にあるので、絞り開口37を通過する光量が減少することはない。
【0052】
次に、図8(b)に示す絞り動作の第2段階では、絞り駆動モータ51(図4参照)によって上絞り羽根41及び下絞り羽根44を絞り位置に移動させ、絞り開口37の開口量を減少させる。なお、この絞り位置は、小絞り状態にならない(回折劣化が生じない)範囲で設定されている。
【0053】
続いて、図9(c)に示す絞り動作の第3段階及び図9(d)に示す絞り動作の第4段階では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44を絞り位置に維持したまま、下NDフィルタ68だけを遮蔽位置にする。具体的には、図9(c)に示す第3段階において、ND駆動モータ71を少しだけ時計回りに回転させ、ND駆動アーム83により、下ND羽根82を上昇させる。この際、第2の実施の形態の光量調整装置80では、上ND羽根81(上NDフィルタ67)が下降せず、退避位置から動かない。これは、ND駆動アーム83が時計回りに回転しても、上ND羽根81のカム穴に沿って動くようにカム穴が同心円状に形成されているからである。
【0054】
その後、図9(d)に示す第4段階までND駆動モータ71(ND駆動アーム83)を時計回りに回転させると、下ND羽根82がさらに上昇するとともに上ND羽根67が少しだけ下降する。そのため、上NDフィルタ67の下端は、依然として絞り開口37から離れた退避位置となり、下NDフィルタ68だけが絞り開口37を全て覆う遮蔽位置となる。したがって、ND駆動モータ71は、下NDフィルタ68を遮蔽位置に移動させるまで、上NDフィルタ67を退避位置に保持することとなる。そして、小絞りによる回折劣化の発生を抑える。また、上NDフィルタ67又は下NDフィルタ68の半掛かりによる回折現象や端面の反射による画質劣化が避けられる。
【0055】
図10(e)に示す絞り動作の第5段階及び図10(f)に示す絞り動作の第6段階では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44を絞り位置に維持したまま、上NDフィルタ67も遮蔽位置にする。具体的には、図10(e)に示す第5段階において、ND駆動モータ71をさらに時計回りに回転させ、ND駆動アーム83により、上ND羽根81をさらに下降させるとともに下ND羽根82を上昇させる。
【0056】
その後、図10(f)に示す第6段階までND駆動モータ71(ND駆動アーム83)を時計回りに回転させると、上ND羽根81がさらに下降する。そのため、下NDフィルタ68だけでなく、上NDフィルタ67も絞り開口37を全て覆う遮蔽位置となる。したがって、絞り開口37を通過する光量をさらに減少させることができる。この際、第2の実施の形態の光量調整装置80では、図10(e)に示す第5段階の遮蔽位置から下ND羽根82(下NDフィルタ68)が動かない。これは、ND駆動アーム83が時計回りに回転しても、下ND羽根82のカム穴に沿って動くようにカム穴が同心円状に形成されているからである。
【0057】
最後に、図11(g)に示す絞り動作の第7段階では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44をさらに絞り込む。それにより、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の両方が遮蔽位置に移動した後も、撮像素子25(図3参照)への入射光量を減少させることができる。なお、第2の実施の形態では、上絞り羽根41及び下絞り羽根44を全閉状態まで絞り込むことにより、上絞り羽根41及び下絞り羽根44によるシャッタ機能の兼用を可能としている。
【0058】
<3.第3の実施の形態>
[光量調整装置の構成例]

図12は、本発明の光量調整装置の実施形態(第1の実施の形態、第3の実施の形態)としての、光量調整装置30(図12(a))及び光量調整装置90(図12(b))の構成を示す正面図である。
図12(a)に示すように、第1の実施の形態の光量調整装置30は、上NDフィルタ67の上下幅が小さく、下NDフィルタ68の上下幅が大きくなっている。一方、図12(b)に示すように、第3の実施の形態の光量調整装置90は、上NDフィルタ93の上下幅が大きく、下NDフィルタ94の上下幅が小さくなっている。また、第3の実施の形態の光量調整装置90では、上NDフィルタ93及び下NDフィルタ94に合わせた形状の上ND羽根91及び下ND羽根92を使用している。さらにまた、上ND羽根91及び下ND羽根92に合わせた形状のND駆動アーム95を使用している。
【0059】
ここで、第1の実施の形態の光量調整装置30(図12(a))では、光軸から光量調整装置30の上端までの距離をL1、光軸から光量調整装置30の下端までの距離をL2としたとき、L1>L2となる。そのため、光軸よりND駆動モータ71側の長さを短くできる。一方、第3の実施の形態の光量調整装置90(図12(b))では、光軸から光量調整装置90の上端までの距離をL’1、光軸から光量調整装置90の下端までの距離をL’2としたとき、L’1<L’2となる。そのため、光軸よりND駆動モータ71と反対側の長さを短くできる。したがって、レンズ鏡筒20(図2参照)の外形等に合わせて、光量調整装置30(図12(a))又は光量調整装置90(図12(b))を任意に選択すればよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、実施形態では、撮像装置として、デジタルスチルカメラ10を例に挙げている。しかし、これに限らず、デジタルビデオカメラ等の撮像装置にも広く適用可能である。また、実施形態では、上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68を上ND羽根61及び下ND羽根64等で保持しているが、上NDフィルタ及び下NDフィルタ自体を羽根形状としてもよい。さらにまた、実施形態では、1つのND駆動モータ71によって上NDフィルタ67及び下NDフィルタ68の2枚を往復移動させている。しかし、ND駆動モータやNDフィルタ駆動ピンを増やすことにより、3枚以上のNDフィルタを使用してそれぞれが往復移動するようにしてもよい。さらに、減光フィルタは、NDフィルタに限らず、透過率を変えることができる液晶フィルタ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の撮像装置の一実施形態としての、デジタルスチルカメラを示す斜視図である。
【図2】本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、レンズ鏡筒の光軸方向の断面図である。
【図3】本発明の撮像装置の一実施形態としての、デジタルスチルカメラの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の光量調整装置の一実施形態(第1の実施の形態)としての、光量調整装置の構成を示す分解斜視図である。
【図5】第1の実施の形態の光量調整装置における絞り動作の第1段階及び第2段階を示す正面図である。
【図6】第1の実施の形態の光量調整装置における絞り動作の第3段階及び第4段階を示す正面図である。
【図7】第1の実施の形態の光量調整装置における絞り動作の第5段階を示す正面図である。
【図8】第2の実施の形態の光量調整装置における絞り動作の第1段階及び第2段階を示す正面図である。
【図9】第2の実施の形態の光量調整装置における絞り動作の第3段階及び第4段階を示す正面図である。
【図10】第2の実施の形態の光量調整装置における絞り動作の第5段階及び第6段階を示す正面図である。
【図11】第2の実施の形態の光量調整装置における絞り動作の第7段階を示す正面図である。
【図12】本発明の光量調整装置の実施形態(第1の実施の形態、第3の実施の形態)としての、光量調整装置の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 デジタルスチルカメラ(撮像装置)
20 レンズ鏡筒
20a 鏡筒本体
21 レンズ
25 撮像素子
30 光量調整装置
31 地板
31a 開口部
34 仕切り板
37 絞り開口
40 絞り開閉装置(光量調整装置の一部)
41 上絞り羽根(第1絞り羽根)
44 下絞り羽根(第2絞り羽根)
50 絞り駆動装置(絞り羽根駆動手段)
51 絞り駆動モータ(絞り羽根駆動手段)
60 NDフィルタ開閉装置(光量調整装置の一部)
61 上ND羽根(減光フィルタ羽根)
63 カム穴
64 下ND羽根(減光フィルタ羽根)
66 カム穴
67 上NDフィルタ(第1減光フィルタ)
68 下NDフィルタ(第2減光フィルタ)
70 NDフィルタ駆動装置(減光フィルタ駆動手段)
71 ND駆動モータ(減光フィルタ駆動手段)
72 ND駆動アーム(減光フィルタ駆動アーム)
73 上ND駆動ピン(減光フィルタ駆動ピン)
74 下ND駆動ピン(減光フィルタ駆動ピン)
81 上ND羽根(減光フィルタ羽根)
82 下ND羽根(減光フィルタ羽根)
83 ND駆動アーム(減光フィルタ駆動アーム)
91 上ND羽根(減光フィルタ羽根)
92 下ND羽根(減光フィルタ羽根)
93 上NDフィルタ(第1減光フィルタ)
94 下NDフィルタ(第2減光フィルタ)
95 ND駆動アーム(減光フィルタ駆動アーム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を入射させるための開口部が形成され、前記開口部からの入射光の光軸に対して垂直な方向に配置される地板と、
前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記開口部を全開させる全開位置と前記開口部の開口量を絞る絞り位置との間を往復移動することが可能な複数の独立した絞り羽根と、
各前記絞り羽根を移動させ、各前記絞り羽根によって前記開口部の表面側に形成される絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、
前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記絞り開口から離れた退避位置と前記絞り開口を全て覆う遮蔽位置との間を往復移動して前記絞り開口を通過する光量を増減させることが可能な複数の独立した減光フィルタと、
各前記減光フィルタを移動させ、全ての前記減光フィルタが退避位置にある状態、一部の前記減光フィルタだけが遮蔽位置にある状態、及び全ての前記減光フィルタが遮蔽位置にある状態を切り替える減光フィルタ駆動手段と
を有する光量調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光量調整装置において、
各前記減光フィルタの退避位置と各前記絞り羽根の全開位置とは、前記地板の表面上で上下に重なる
光量調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光量調整装置において、
前記減光フィルタ駆動手段は、1つの前記減光フィルタを遮蔽位置に移動させるまで、他の前記減光フィルタを退避位置に保持する
光量調整装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光量調整装置において、
前記絞り羽根は、第1絞り羽根と第2絞り羽根とによって構成され、
前記絞り羽根駆動手段は、前記第1絞り羽根及び前記第2絞り羽根を互いに逆向きに直進移動させ、
前記減光フィルタは、前記第1絞り羽根に重なるように配置された第1減光フィルタと前記第2絞り羽根に重なるように配置された第2減光フィルタとによって構成され、
前記減光フィルタ駆動手段は、前記第1減光フィルタを前記第1絞り羽根と同じ方向に直進移動させ、前記第2減光フィルタを前記第2絞り羽根と同じ方向に直進移動させる
光量調整装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光量調整装置において、
前記減光フィルタ駆動手段によって正逆回転する減光フィルタ駆動アームと、
各前記減光フィルタを個別に保持する複数の独立した減光フィルタ羽根と
を備え、
前記減光フィルタ駆動アームには、各前記減光フィルタ羽根と同数の減光フィルタ駆動ピンが形成され、
各前記減光フィルタ羽根には、各前記減光フィルタ駆動ピンとそれぞれ個別にはまり合うとともに、前記減光フィルタ駆動アームの正逆回転を各前記減光フィルタ羽根の往復移動に変換するためのカム穴が形成されている
光量調整装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光量調整装置において、
各前記絞り羽根と各前記減光フィルタとの間に、両者の接触を避ける仕切り板を有する
光量調整装置。
【請求項7】
撮像用のレンズと、
前記レンズを収容する鏡筒本体と、
前記レンズからの光を入射させるための開口部が形成され、前記開口部からの入射光の光軸に対して垂直な方向に配置される地板と、
前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記開口部を全開させる全開位置と前記開口部の開口量を絞る絞り位置との間を往復移動することが可能な複数の独立した絞り羽根と、
各前記絞り羽根を移動させ、各前記絞り羽根によって前記開口部の表面側に形成される絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、
前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記絞り開口から離れた退避位置と前記絞り開口を全て覆う遮蔽位置との間を往復移動して前記絞り開口を通過する光量を増減させることが可能な複数の独立した減光フィルタと、
各前記減光フィルタを移動させ、全ての前記減光フィルタが退避位置にある状態、一部の前記減光フィルタだけが遮蔽位置にある状態、及び全ての前記減光フィルタが遮蔽位置にある状態を切り替える減光フィルタ駆動手段と
を有するレンズ鏡筒。
【請求項8】
撮像用のレンズと、
前記レンズを収容する鏡筒本体と、
前記レンズからの光を入射させるための開口部が形成され、前記開口部からの入射光の光軸に対して垂直な方向に配置される地板と、
前記地板よりも入射方向後方の光軸上に配置された撮像素子と、
前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記開口部を全開させる全開位置と前記開口部の開口量を絞る絞り位置との間を往復移動することが可能な複数の独立した絞り羽根と、
各前記絞り羽根を移動させ、各前記絞り羽根によって前記開口部の表面側に形成される絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、
前記地板の表面に沿って取り付けられ、前記絞り開口から離れた退避位置と前記絞り開口を全て覆う遮蔽位置との間を往復移動して前記絞り開口を通過する光量を増減させることが可能な複数の独立した減光フィルタと、
各前記減光フィルタを移動させ、全ての前記減光フィルタが退避位置にある状態、一部の前記減光フィルタだけが遮蔽位置にある状態、及び全ての前記減光フィルタが遮蔽位置にある状態を切り替える減光フィルタ駆動手段と
を有する撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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