説明

光量調節装置、レンズ装置および撮像装置

【課題】羽根部材の枚数を増やすことなく、開放した開口状態から任意の開口状態までの範囲で、その開口形状を真円形に近い形状にする。
【解決手段】複数の羽根部材を有し、前記複数の羽根部材を回動させて光束を通過させる開口の大きさを変化させる光量調節装置において、複数の羽根部材の、前記開口の形成に関与する円弧状の内縁部は、羽根部材の回動軸に近い根元内縁部1a、前記回転軸から遠い先端内縁部1b、両者の中間にある中間内縁部1c、先端内縁部から絞り開口の形成に関与しない内縁部へ接続される先端境界内縁部1e、および、根元内縁部から絞り開口の形成に関与しない内縁部へ接続される根元境界内縁部1dにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り装置等の光量調節装置、この種の光量調節装置を具備するレンズ装置および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
隣接するもの同士が互いに光軸に沿った方向で重なる状態で光軸の周りに並置して絞り開口を形成する複数の絞り羽根のそれぞれを、それら並置方向の一端側を支点として光軸に対する遠近方向に揺動自在に設けられた絞り装置が知られている。この種の絞り装置の第1従来例を簡単に説明する。各絞り羽根の絞り開口形成用内縁のうち、光軸から最も離間した開放絞り姿勢において絞り開口を形成する内縁部分のそれぞれを、開放絞り姿勢において光軸を中心とする設定半径の円周に沿う円弧に形成している。
【0003】
詳しくは、図12に示すように、絞り羽根11の絞り開口形成に寄与する内縁部のうち、開放絞り状態において絞り開口を形成する根元内縁部11aを、開放絞り状態における開口を真円とする半径R0の円周と同じ半径R0の円弧にしている。そして、中間絞り状態において絞り開口を形成する絞り羽根11の先端内縁部11bを、回転軸側の根元内縁部11aの接線に沿った直線としたものであった。
【0004】
また、特許文献1に開示された第2従来例の絞り装置を、図13を用いて説明する。絞り羽根12は開放絞り円形開口を形成する円弧形状の根元内縁部12aと、開放絞り開口から絞った円形開口を形成する円弧形状の先端内縁部12bを有する。さらには、根元内縁部12aと先端内縁部12bとを滑らかにつなぐ中間内縁部12cを有する。中間内縁部12cは絞り開口形成用内縁の外側に中心が位置する円弧形状に形成されている。中間内縁部12cで形成される開放絞り円形開口と先端内縁部12bで形成される円形開口との間で絞り動作を行った場合に形成される中間絞り開口は、根元内縁部12aの一部と先端内縁部12bの一部と中間内縁部分12cとで略円形に形成される。
【0005】
また、特許文献2に開示された第3従来例の絞り装置を、図14を用いて説明する。絞り羽根13の絞り開口の形成に関与する内縁部は該絞り羽根13の回動の回転軸に近い根元内縁部13a、遠い先端内縁部13b及び両者の中間にある中間内縁部13cの3部分から構成される。根元内縁部13aは、開放状態よりわずかに絞り込んだ一の絞り状態における当該絞り開口の半径を有する円弧、先端内縁部13bは絞り込み状態より絞り込んだ状態の一の絞り状態において絞り開口が疑似真円形の一部となるように設定された複数の線により形成される。中間内縁部13cは根元内縁部13aと先端内縁部13bとを結ぶ平滑な線によって形成されている。絞り開口が、開放状態において絞り羽根環の内縁部のみにより開放状態よりわずかに絞られた状態において主として根元内縁部13aにより、及び絞り込み状態より絞られた状態において主として先端内縁部13bにより、形成されている。
【0006】
また、特許文献3に開示された第4従来例には、協働して絞り開口を形成する複数の絞り羽根を有する撮影レンズ用絞り装置が開示されている。絞り羽根の絞り開口の形成に関与する内縁部が、絞り羽根の回動軸に近い根元内縁部、遠い先端内縁部、及び両者の中間にある中間内縁部の3部分より構成されている。根元内縁部及び先端内縁部は、撮影レンズの光軸を中心とし、開放絞りの半径又はそれに近似した所定の半径をもつ円弧から構成される。中間内縁部は根元内縁部の端点を通る半径がそれぞれ異なる複数の円に沿う複数の円弧から構成される。この各円弧の半径は、開放絞り径から最小絞り径までの間の半径であり、先端内縁部側から根元内縁部側に向かって順次小さくなるように設定される。それとともに、各円弧の根元内縁部の端点から各円弧の先端内縁部寄りの円弧との交点までのいずれの内角も先端内縁部側から根元内縁部側に向かって順次小さくなるように設定される。各円弧のいずれの中心も、絞り羽根の回動軸を中心として光軸を通る円周上またはその近傍に位置する。絞り開口は、開放状態及び開放状態より僅かに絞られた状態では、主として絞り羽根の先端内縁部により形成される。そして、開放状態より僅かに絞られた状態よりも更に絞られた状態では、絞り開口は中間内縁部により形成される。
【特許文献1】特開昭63−8638号公報
【特許文献2】特開平5−11306号公報
【特許文献3】特開2002−99022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12に示す第1従来例では、開放絞り状態においては、各絞り羽根11の根元内縁部11aが絞り開口と同一円周上に位置することから絞り開口が真円になる。しかし、絞り込むに従い、真円は崩れてくる。開放絞り状態から絞り値で1段絞り込むまでの間は、絞り開口形状は円弧状の根元内縁部11aと該根元内縁部11aの接線である先端内縁部11bとを1辺とするややふくらみのある多角形に近い形状となる。更に絞り込むと、絞り開口形状は円弧状の根元内縁部11aを1辺とする多角形となる。
【0008】
図13に示す第2従来例では、開放絞り状態においては、各絞り羽根12の根元内縁部12aが絞り開口と同一円周上に位置することから絞り開口が真円形になるが、絞り込むに従い、真円形は崩れてくる。1段以上絞り込んだ時には、第1従来例と比較して、絞り開口形状が真円形により近くなっている。しかし、1段以上絞り込んだときも開口部を円形に近づけるために次第に小さくなった開口の半径に合わせて先端内縁部12bが凹形状になっている。また、先端内縁部12bと根元内縁部12aを接続する中間内縁部12cが開口内縁部の外側へ中心を持つ円弧で形成されている。そのため、僅かに絞られた開放に近いところから1段絞り込むまでの間では、第1従来例より第2従来例の絞り羽根の方が内縁側へ凸形状となってゴツゴツした形状の多角形となっていた。
【0009】
ポートレート撮影のようなボケ味を生かした撮影をするとき、撮影者のイメージ通りのボケを得る為に、開放に近い絞り状態で撮影することが多い。
【0010】
したがって、第1従来例では、僅かに絞った状態で既に絞り開口ははっきりした多角形状となり、バックのボケに絞り開口の多角形形状がくっきりと写り、バックのボケ全体が多角形像の影響で角張った感じのものとなっていた。
【0011】
同じく第2従来例でも、僅かに絞った状態で絞り開口がゴツゴツした多角形状となり、バックのボケに絞り開口の多角形形状がくっきりと写り、バックのボケ全体が多角形像の影響で角張った感じのものとなる。さらに、内縁側へ凸形状(中間内縁部12c)がある為にその部分の反射光が強調されてしまい、撮影者のイメージ通りの美しいボケ味を得ることができないという問題もある。夕景、夜景撮影を目的として設計された大口径レンズによる夜景撮影においても、露出の関係上開放絞りに近い状態で撮影することが多い。その結果、僅かに絞った状態で絞り開口はくっきりした多角形となり、ライト等の点光源が多角形形状に写り、全体が多角形像の影響で角張った感じのものとなっていた。このように内縁側へ凸形状がある為にその部分の反射光が強調されてしまい、やはり撮影者のイメージ通りの写真を得ることができないものであった。
【0012】
また、第2従来例では、絞り開口を真円形に近づけるために絞り羽根の枚数を増すことは各絞り羽根を重ね合わせる機構上、作動時における絞り羽根同士の摺接に起因した絞り羽根の損傷や摩耗が発生し易いという問題が生じ、困難である。カメラレンズに使用される絞りの一形式においては、絞り羽根が絞り開口部の光軸を中心として複数個配置され、絞り羽根を枢動回転させることにより光量を変更するようになっている。絞り羽根の内縁部が協動して形成した形状は一般には真円に近いことが望ましい。特にポートレート撮影においては主被写体周辺のボケ味の良さが重要であり、絞りの開口部が真円又は真円に近くないとボケ味の良い写真が得られない。さらに、開放FナンバーがF1.4のような明るいレンズでは開放付近より中間段を常用することが多く、その為に2段目、3段目といった絞り位置での円形度が求められていた。
【0013】
第3従来例では、開放から1段付近までの近似真円形状までが限度である。また、絞り羽根の枚数を減らすことで円形の度合いが極端に減少する。
【0014】
また、上記第1〜第3従来例では、開放から小絞りに至るいずれかの時点で光軸を中心とする円に一致する円弧を用いているので、ある特定段数に真円度が集中して、幅広く真円度を平均化できない。また、第1従来例では、開放付近が最大で、第2及び第3従来例では、1段目付近が最大で、小絞りに向かって順次、急激に円形度が低下する。
【0015】
また、第2従来例では、開放から1段目の間の円形度はさほど低下はしないものの、光軸側に凸となる円弧を用いているので、うねりのあるゴツゴツした形状となって好ましくない。
【0016】
また、第3従来例では、開放から1段目付近に向かって口径形状を構成する羽根の主要部位が先端へ移動するところまでしか対応できていない。さらに、羽根枚数を減らすと1段目から2段目、3段目へ向かっては主要構成部位が中間部へ移り、さらに小絞りへ向かっては開口形状の主要構成部位が中間部から根元部へ移ってくる。よって、第3従来例でも、1段目から2段目、3段目に向かっての真円度を維持することが困難である。
【0017】
また、第4従来例では、開放径以下の半径を用い、中間内縁部の構成円弧が根元内縁部側から先端内縁部に向かって順次大きくなる円弧群によって構成されている。しかし、この円弧群の境界部は光軸に向かって凸となるため、凸状の内縁部によって集中(強調)された反射光が問題となる。また、形状的にも、極端に言えば(複数の円弧の構成数を減らしていくと)花びら状になって好ましくない。
【0018】
(発明の目的)
本発明の目的は、羽根部材の枚数を増やすことなく、開放した開口状態から任意の開口状態までの範囲で、その開口形状を真円形に近い形状にすることのできる光量調節装置、レンズ装置および撮像装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の羽根部材を有し、前記複数の羽根部材を回動させて光束を通過させる開口の大きさを変化させる光量調節装置において、前記複数の羽根部材の、前記開口の形成に関与する円弧状の内縁部は、前記羽根部材の回動軸に近い根元内縁部、前記回転軸から遠い先端内縁部、両者の中間にある中間内縁部、前記先端内縁部から絞り開口の形成に関与しない内縁部へ接続される先端境界内縁部、および、前記根元内縁部から絞り開口の形成に関与しない内縁部へ接続される根元境界内縁部により形成された光量調節装置とするものである。
【0020】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、本発明の上記光量調節装置を具備するレンズ装置とするものである。
【0021】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、本発明の上記光量調節装置を具備する撮像装置とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、羽根部材の枚数を増やすことなく、開放した開口状態から任意の開口状態までの範囲で、その開口形状を真円形に近い形状にすることができる光量調節装置、レンズ装置または撮像装置を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1ないし5に示す通りである。
【実施例1】
【0024】
図1〜図4を用いて、本発明の実施例1に係わるカメラ用レンズ鏡筒及びに該レンズ鏡筒に具備される絞り装置について説明する。図1は本発明の実施例1に係わるレンズ鏡筒の光軸方向の断面図である。図2は図1のレンズ鏡筒に具備される絞り装置の一部の絞り羽根の平面図、図3は同じく絞り装置において複数の絞り羽根のうちの1枚または2枚を抜粋して示す作動図である。図4は同じく絞り装置において全絞り羽根を9枚とした場合の各開口形状を示す作動図である。
【0025】
先ず、本実施例1に係わるレンズ鏡筒及び絞り装置の概略構成について、図1により説明する。レンズ鏡筒は、レンズ群E1,E2を保持するレンズ保持筒112と、該レンズ保持筒112を内包し、かつ該レンズ保持筒112にヘリコイドネジによって係合している距離調節操作環111を有する。さらに、距離調節操作環111を内包し、該距離調節操作環111にヘリコイドネジによって係合し、不図示のカメラ本体へ装着するバヨネットマウント部を有する固定鏡筒110を有する。
【0026】
レンズ保持筒112は固定鏡筒110に対し、直進キ−113によって直進は可能だが、回転は不可となっている。距離調節操作環111を外部より回動することにより、または不図示のモーター等の駆動源により回動することにより、レンズ群E1,E2は固定鏡筒110に対し、光軸O−O方向に直進移動させられ、距離調節が可能になっている。固定鏡筒110のカメラ本体側の外周部には、絞り操作環4が所定角度だけ回転自在に設けられている。
【0027】
次に、絞り装置の構成について説明する。薄板である絞り羽根1は、該絞り羽根1を回転させるためのカム溝を有する羽根駆動環3と、絞り羽根1の回転中心のピン8を保持する絞り固定環2に挟まれて設けられている。そして、羽根駆動環3と絞り固定環2とが絞り羽根環を形成している。絞り操作環4を絞り設定のために回転させると、駆動力伝達部4aを介してレバー5に一体的に設けられたピン7に伝達される。レバー5はピン6を中心として回転する。レバー5の係合部5aと羽根駆動環3の係合部3aとが係合しているので、レバー5の回転により羽根駆動環3が光軸O−O回りに回転し、それにより絞り羽根1が作動し、所定絞り径まで絞り込まれることになる。
【0028】
一方、レバー5の係合部5bは、カメラ本体の絞り制御レバー(不図示)と係合していて、例えばカメラ本体側の制御によって電子的に決定された量だけ、カメラ本体の絞り制御レバーから力を受けて動かされる。それにより、ピン6を中心として駆動し、前述のように所定絞り径に設定される場合もある。本実施例1の絞り装置の機構に関する構成は、公知の技術であり、その詳述は省略する。
【0029】
次に、上記絞り装置に用いられている絞り羽根1の形状について、図2により説明する。図2は上記したように絞り装置に具備される絞り羽根1の1枚を示した平面図である。
【0030】
図2において、Oは光軸であり、絞り羽根1は光軸Oの周囲に構成枚数分だけ等分配置され、光軸Oからの配置位置が同等であり、全部同一形状である。O’は絞り羽根1の回転中心である。8及び9は絞り羽根1に一体的に設けられたピンである。ピン8及びピン9はそれぞれ絞り固定環2、羽根駆動環3に嵌合している。そして、ピン9が不図示のカム溝に沿って移動するに伴い、絞り羽根1はピン8を中心として駆動可能な構成になっている。R0は開放口径半径、R1は開放口径よりわずかに絞り込んだ真円形半径である。R2は開放口径よりおよそ3/8段絞り込んだFナンバー真円形半径、R4は半径R2よりおよそ1段絞り込んだFナンバー真円形半径である。R5は半径R2よりおよそ2段絞り込んだFナンバー真円形半径、R3は半径R2とR4の中間の半径である。また、R10は半径R0より大きな半径である。上記“開放口径よりわずかに絞り込んだ半径”とは、レンズ鏡筒側で設定、制御される最大分割段数(本実施例では1/8段)分、絞り込んだFナンバー真円形半径と開放口径半径との中間の半径である。
【0031】
絞り羽根1の絞り開口を形成する内縁部分は、大きく5つの部分に分けられる。
【0032】
根元内縁部1aは、開放口径よりわずかに絞り込んだ真円形半径R1(R1<R0)の円弧である。詳しくは、半径R1の真円形の中心が軸O’を中心に光軸Oから図1のθ1だけ移動した位相における該半径R1の真円形の一部に一致する円弧である。
【0033】
先端内縁部1bは、開放口径の半径R1より小さな半径R3(R3<R1)の円弧と、半径R3より小さな半径R4の円弧を持つ。詳しくは、半径R3の真円形の中心が軸O’を中心に図2のθ3だけ移動した位相における該半径R3の真円形の一部に一致する円弧を持つ。また、半径R4の真円形の中心が軸O’を中心に図2のθ4だけ移動した位相における該半径R4の真円径の一部に一致する円弧を持つ。さらに、半径R3及び半径R4の円弧が接線により接続されて成る。
【0034】
中間内縁部1cは、半径R4以下の半径R5(R5≦R4)の円弧であり、該半径R5の真円形の中心Oが軸O’を中心に図2のθ5だけ移動した位相における該半径R5の真円形の一部に一致する円弧を持つ。さらに、半径R5の円弧と半径R1の円弧とを結ぶ接線及び半径R5の円弧と前記R4の円弧とを結ぶ接線とで成る。
【0035】
根元境界内縁部1dは、半径R1の円弧と開放口径半径R0の円弧との接線と、該接線から図2に示す開放口径半径R0より大きな半径R10の円弧へ接続される滑らかな接線(直線または円弧等)とで成る。
【0036】
半径R10の円弧の中心と開放口径の円の中心は一致していて、半径R10の円弧は絞り羽根1の根元側円弧部1fに接続されている。先端境界内縁部1eは半径R3の円弧と半径R10の円弧との接線が絞り羽根1の先端部で円弧1gに接続されて成る。半径R1,R3,R4,R5,R10の各円弧は、絞り開口形成用内縁の内側に中心が位置する円弧形状に形成されている。
【0037】
絞り羽根1の根元境界内縁部1dの根元側には、絞り開口には寄与しない根元側円弧部1fが形成されている。根元境界内縁部1dと根元側円弧部1fの接続部は、光軸Oと軸O’を結んだ線より羽根先端側に形成されている。また、絞り羽根1の先端境界内縁部1eの先端側には、絞り開口には寄与しない円弧部1gが形成されている。
【0038】
図3にて、9枚の絞り羽根1を使用してなる絞り装置について、絞り羽根1枚または2枚を抜粋して説明する。
【0039】
図3(a)の第1状態は、開放口径よりわずかに絞り込んだFナンバーの真円形面積と同等となるように、絞り羽根1を作動させた場合の絞り羽根1を2枚抜粋して示している。図3(b)の第2状態は、開放状態における絞り開口のFナンバーと第1状態のFナンバーとの差分段数分を絞り込んだ状態であり、本実施例1では、開放Fナンバーよりほぼ3/8段絞った状態である。図3(d)の第4状態は、第2状態から1段絞った状態である。図3(c)の第3状態は、第2状態と第4状態のFナンバー段数差分のほぼ1/3段を第2状態より絞り込んだ状態である。図3(e)の第5状態は、第2状態から2段絞った状態である。
【0040】
上記第1状態から第5状態まで順次切り換えられることで、絞りは徐々に絞り込まれることになる。つまり、先ず、開放状態のFナンバーから任意に絞った第1状態から開放状態のFナンバーと第1状態のFナンバーとの差分段数分を絞り込んだ第2状態となる。次に、第2状態から任意に絞り込んだ第3状態となり、さらに第3状態から、第1状態のFナンバーと第3状態のFナンバーとの差分段数分を絞り込んだ第4状態となる。次いで、第4状態から第2状態のFナンバーと第4状態のFナンバーの差分段数分を絞り込んだ第5状態となる。実施例1では、仮に、第2状態を開放から3/8段、第4状態を開放から1+3/8段、第5状態を開放から2+3/8段それぞれ絞った設定にしたものである。図2に示した半径R1,R2,R3,R4,R5の各円弧は、それぞれ第1状態、第2状態、第3状態、第4状態、第5状態のFナンバー真円形半径と同値に設定している。
【0041】
絞り開口形状は、開放状態において、図2に示す絞り羽根1の位置より上方に、後述の図4に示す絞り固定環3に形成された半径R0の真円径形状の内縁部のみにより開口を形成している。開放状態の開口である半径R0の真円径形状の内縁部は羽根駆動環2に設けても良い。
【0042】
開放絞り状態から徐々に絞り込んでいくと、図3(a)の第1状態になる。この際、絞り羽根1の中間内縁部1c、根元内縁部1a、根元境界内縁部1d、先端内縁部1b、先端境界内縁部1eと、別の絞り羽根1’の根元内縁部1a、根元境界内縁部1dが絞り開口に関与してくる。この状態では、中間内縁部1cの円弧部よりも別の絞り羽根1’の根元内縁部1a、根元境界内縁部1dが内側にある。したがって、絞り開口は、絞り羽根1の中間内縁部1c、根元内縁部1a、根元境界内縁部1d、先端内縁部1b、先端境界内縁部1eの5つの内縁部によって主に構成される。よって、極めて円形に近い開口形状が形成されることになる。
【0043】
図3(a)の第1状態から絞り込んだ第2状態(図3(b)参照)では、絞り羽根1の中間内縁部1cと先端内縁部1b、先端境界内縁部1eが絞り開口に関与して円形に近い開口形状が形成されている。第2状態から絞り込んだ第3状態(図3(c)参照)では、絞り羽根1の中間内縁部1cと先端内縁部1b、先端境界内縁部1eが絞り開口に関与して円形に近い開口形状が形成されている。第3状態から絞り込んだ第4状態(図3(d)参照)では、絞り羽根1の中間内縁部1cと先端内縁部1b、先端境界内縁部1eが絞り開口に関与しているが、先端境界内縁部1eの関与範囲が第3状態より減少している。第4状態から絞り込んだ第5状態(図3(e)参照)では、絞り羽根1の中間内縁部1c、先端内縁部1b、根元内縁部1aが絞り開口に関与しており、絞り開口に関与する範囲が次第に第4状態より根元側へ移動している。第5状態から絞り込んだ小絞り状態では、絞り羽根1の中間内縁部1c、根元内縁部1aが絞り開口に関与していて、さらに絞り込むに従って開口に関与する中間内縁部の範囲が次第に減少する。
【0044】
上述したように、第1状態、第2状態、第3状態、第4状態、第5状態、小絞り状態においては、絞り開口形成における1枚の絞り羽根1が受け持つ内縁部は、開放状態から第2状態の間においては、主として、先端境界内縁部1e、先端内縁部1b、中間内縁部1c、根元内縁部1a、根元境界内縁部1dにより絞り開口形状を形成している。第2状態から第3状態及び第4状態においては、主として、先端境界内縁部1e、先端内縁部1b、中間内縁部1cにより絞り開口形状を形成している。第4状態から第5状態においては、主として、先端内縁部1b、中間内縁部1c、根元内縁部1aにより絞り開口形状を形成している。第5状態から小絞り状態において、主として、中間内縁部1c、根元内縁部1aにより絞り開口形状を形成している。
【0045】
以上のように、絞り開口の形成に関与する内縁部は、開放付近から小絞りに向かって順次前記5つの部分全体から範囲を狭めながら先端内縁部側より根元内縁部側へ変化するように構成されている。
【0046】
従来の開放付近で主に開口形成に関与する形成縁であった根元内縁部、根元境界内縁部の寄与率を減らし、絞り羽根の先端部を従来よりも延長して、先端内縁部1b、先端境界内縁部1eを開放付近で開口形成に関与できる位置に形成することによって、本実施例の構成をとることができる。
【0047】
絞り開口形状は開放から小絞りに至るまで中間内縁部1cを含む形成縁で形成され、R5<R4<R3<R2<R1の関係の通り、中間内縁部1cから先端境界内縁部1eへ向かう弧状線分群は、中間内縁部1cの円弧半径の曲率以上の線分群で構成される。同じく、中間内縁部1cから根元境界内縁部1dへ向かう弧状線分群も、中間内縁部1cの円弧半径の曲率以上の線分群で構成される。
【0048】
図4は、図1に示した絞り羽根1を光軸Oの回りに9枚配置して作動状態を示したものである。図4(a)は開放絞り状態を、図4(b)は3/8段絞り込んだ第2状態を、図4(c)は1+3/8段絞り込んだ第4状態を、図4(d)は2+3/8段絞り込んだ第5状態を、それぞれ示す。開放絞り状態では、絞り開口は絞り環を形成する絞り固定環2または絞り羽根操作環3の何れか小さい方の内側開口部によって決定され、その半径R0の真円形になる。この時、各々の絞り羽根1は円弧部1fが開放開口より外側に位置するようになっている。
【実施例2】
【0049】
図5は、本発明の実施例2に係わる絞り装置に具備される複数の絞り羽根のうちの1枚を示した平面図である。絞り羽根の内縁部以外は、図2と同一であるのでその詳細は省略する。
【0050】
本実施例2の絞り羽根21の内縁部は、根元境界内縁部21d、根元内縁部21a、中間内縁部21c、先端内縁部21b、先端境界内縁部21e及び円弧部21fを有する。この絞り羽根21の絞り開口を形成する部分は、実施例1の中間内縁部1cにおける半径R5の円弧中心が角度αずれていることのみ絞り羽根1と異なる。この角度αは半径R5の円弧を開口の外側へ突き出す方向である。
【実施例3】
【0051】
図6は、本発明の実施例3に係わる絞り装置に具備される複数の絞り羽根のうちの1枚を示した平面図である。絞り羽根の内縁部以外は、図2と同一であるのでその詳細は省略する。
【0052】
本実施例3の絞り羽根31の内縁部は、根元境界内縁部31d、根元内縁部31a、中間内縁部31c、先端内縁部31b、先端境界内縁部31e及び円弧部31fを有する。この絞り羽根31の絞り開口を形成する部分は、実施例1の中間内縁部における半径R5の円弧中心が角度βずれていることのみ絞り羽根1と異なる。この角度βはR5の円弧を開口の内側へ寄せる方向である。
【実施例4】
【0053】
図7は、本発明の実施例4に係わる絞り装置に具備される複数の絞り羽根のうちの1枚を示した平面図である。絞り羽根の内縁部以外は、図2と同一であるのでその詳細は省略する。
【0054】
本実施例4の絞り羽根41の内縁部は、根元境界内縁部41d、根元内縁部41a、中間内縁部41c、先端内縁部41b、先端境界内縁部41e及び円弧部41fを有する。この絞り羽根41の絞り開口を形成する部分は、実施例1の中間内縁部における半径R5の円弧中心が角度γずれている。さらに、先端内縁部41bを構成する半径R3の円弧を半径R10へ、半径R4の円弧を半径R6へ変更している。さらに、根元内縁部41aの半径R1の円弧の中心を軸Oまわりの反時計方向に角度δずらした点を半径R6の円弧中心とし、R6=R1としている。以上の各点が実施例1の絞り羽根1と異なる。
【0055】
上記の角度γは任意だが、本実施例4では、θ5の1%の値、角度δは羽根構成枚数をNとして、(360°/N)*(1/2)とし、9枚では20°としている。さらに、先端境界内縁部41eは開放状態における絞り開口の真円径半径以上である。そして、中心が開放状態における絞り開口の真円形の中心と一致する半径R10と先端内縁部41bの半径R10の円弧とをつなぐ接線(事実上は点であるので、任意の角度で引き出した接線)で構成している。
【実施例5】
【0056】
図8は、本発明の実施例5に係わる絞り装置に具備される複数の絞り羽根のうちの1枚を示した平面図である。絞り羽根の内縁部以外は、図2と同一であるのでその詳細は省略する。
【0057】
本実施例5の絞り羽根51の内縁部は、根元境界内縁部51d、根元内縁部51a、中間内縁部51c、先端内縁部51b、先端境界内縁部51e及び円弧部51fを有する。この絞り羽根51の絞り開口を形成する部分は、実施例1の中間内縁部1cにおける半径R5の円弧中心が角度κずれている。さらに、先端内縁部51bを構成する半径R3の円弧と半径R4の円弧を半径R6へ統合し、先端内縁部51bの半径R6の円弧中心を根元内縁部51aのR1の円弧中心と一致させ、R6=R1に設定している。さらに、先端境界内縁部51eは開放状態における絞り開口の真円径半径以上である。さらに、中心が開放状態における絞り開口の真円径の中心と一致する半径R12の円弧と先端内縁部51bの半径R6の円弧とをつなぐ接線で構成している。以上の各点が実施例1の絞り羽根1と異なる。
【0058】
開口形状の円形度を判断する尺度として
円形度k=100×(開口形状内接円の直径/開口形状外接円の直径)
の計算式を用いた場合、円形度k=100のとき、真円となる。この円形度が100に近い程、真円に近いということである。
【0059】
図9(1a)に実施例1の絞り羽根1を9枚とした場合の、図9(1b)に同じく絞り羽根1を7枚とした場合の、それぞれ第2状態、第4状態、第5状態の開口形状を示している。なお、図中の数字は上記の式により計算した円形度kを示している。また、図9(2a)に実施例2の絞り羽根21を9枚とした場合の、図9(2b)に同じく絞り羽根21を7枚とした場合の、それぞれ第2状態、第4状態、第5状態の開口形状を示している。また、図9(3a)に実施例3の絞り羽根31を9枚とした場合の、図9(3b)に同じく絞り羽根31を7枚とした場合の、それぞれ第2状態、第4状態、第5状態の開口形状を示している。また、図9(4a)に実施例4の絞り羽根41を9枚とした場合の、図9(4b)に絞り羽根41を7枚とした場合の、それぞれ第2状態、第4状態、第5状態の開口形状を示している。また、図9(5a)に実施例5の絞り羽根51を9枚とした場合の、図9(5b)に絞り羽根51を7枚とした場合の、それぞれ第2状態、第4状態、第5状態の開口形状を示している。図9の関係をまとめると、図10(a)のようになる。
【0060】
また、図11は、第1従来例ないし第3従来例において、絞り羽根を9枚、7枚とした場合の、第2状態、第4状態、第5状態の開口形状をそれぞれ示す図である。そして、図11(1a)が第1従来例の絞り羽根を9枚とした場合の第2状態、第4状態、第5状態の開口形状である。また、図11(2a)が第2従来例の絞り羽根を9枚とした場合の、図11(2b)が同じく絞り羽根を7枚とした場合の、それぞれ第2状態、第4状態、第5状態の開口形状である。また、図11(3a)が第3従来例の絞り羽根を9枚とした場合の、図11(3b)が同じく絞り羽根を7枚とした場合の、それぞれ第2状態、第4状態、第5状態の開口形状である。図11の関係をまとめると、図10(b)のようになる。
【0061】
図10(a)に示すように、実施例1では、9枚の絞り羽根1を用いて円形度kの最大値が1段目付近になるように設定している。実施例2では、9枚の絞り羽根21を用いて円形度kの最大値が2段目付近になるように設定している。実施例3では、9枚の絞り羽根31を用いて円形度kの最大値が開放から1段目付近になるように設定している。実施例4では、9枚の絞り羽根41を用いて円形度kを開放から2段目付近においておよそ均等となるように設定している。また、実施例5では、7枚の絞り羽根を用いて円形度kを開放から2段目付近においておよそ均等となるように設定している。
【0062】
ここで、上記実施例1ないし実施例5における絞り羽根と、従来の絞り羽根との差異について、上記第1〜第3従来技術との比較により詳述する。
【0063】
第1ないし第3従来例に共通することは、およそ開放から1段目付近まで真円形に近似することができる。つまり、開放径近傍から小絞りに至るいずれかの口径真円形の位相で近似された真円形の半径で開口形成縁を形成(第1、第2従来例)する。あるいは、開放径近傍から小絞りに至るいずれかの口径真円形の位相で近似された真円径の半径に沿うように直線群で近似する(第3従来例)。
【0064】
しかしながら、2段目、3段目付近までの各従来例による設定を行うと、開放付近で主に根元内縁部を使用し、2段目付近のFナンバー口径半径を用いて先端内縁部を構成すると、開放付近での円形度が急激に悪化する。
【0065】
これに対し、本発明の各実施例、例えば実施例1を例にすると、2段目付近のFナンバー口径半径を中間内縁部1cに設定し、中間内縁部1cから先端内縁部1bと根元内縁部1aへ向かう内縁部を形成する円弧群を中間内縁部1cより離れるに従って、該中間内縁部1cの半径より大きくなるように設定している。
【0066】
詳しくは、先端内縁部1bより先端側に先端境界内縁部1eを設けて延長し、根元内縁部1aより根元側に根元境界内縁部1dを延長している。そして、先端境界内縁部1e及び根元境界内縁部1dを、先端内縁部1b及び根元内縁部1aを構成する最大の半径を有する円弧から該円弧以上の半径としている。さらに、内縁部より光軸O側へ中心を有する円弧へ接続される接線(接線は接続される円弧の曲率以上の円弧であって、その曲率中心は内縁部より光軸側に位置する円弧であり、曲率半径無限大は直線となる)で構成している。
【0067】
従来例では、目標のFナンバー開口真円形半径に対し、開放から目標のFナンバー開口径に至る過程で開口形成の主力内縁部が根元内縁部から先端内縁部へ変遷する。これにより、先端内縁部の構成円弧に2段目、3段目の開口真円形の小さな半径を設定することとなっていた。よって、開放付近の大きな半径の円弧群で構成される開口形状に該小さな半径の円弧が開口縁の形成に関与し、開放付近の形状がゴツゴツしたり、楔状の形状が形成されたりして好ましくないものであった。
【0068】
これに対し、本発明の各実施例では、上記のように開放付近の形状を好ましいものにするため(真円に近づけるため)に、開口形成縁を先端側と根元側に延長している。そして、開放付近で小さな半径の円弧部が開口形状形成に関わる位置において、隣り合う別の絞り羽根の先端側または根元側に延長された大きな曲率の形成縁が小さな半径の円弧部を覆って補間し、楔状の形状が発生しないように構成している。
【0069】
また、従来例では殆どが9枚以上の多枚の絞り羽根を使用する場合に有効であるが、絞り羽根の構成枚数を減らし、2段目、3段目付近の中間絞りまで円形に近似しようとすると、開放付近の形状がくずれてしまい、弊害が生じていた。
【0070】
本発明の各実施例では、上記の内縁部を有する絞り羽根とすることにより、絞り羽根の構成枚数を減らしても、開放付近における形状を改善した構成とすることが可能となった。
【0071】
さらに詳しく、本発明の各実施例における効果について説明する。図15において明らかなように、本実施例では、絞り羽根の先端側の長さを従来に比べて長くしている。従来例では、開放から1段目付近までの開放側の円形度を改善することを目的とし、絞り羽根の枚数を9枚使用しているので、1枚あたりの長さを長くとる必要がない。または、多い羽根枚数を前提にしていることから、先端側を長くすることは羽根の慣性を大きくし、不利になっていた。例えば従来例の絞り羽根を7枚とすると、2段目付近から小絞り方向において円形度は極端に悪化する。これは多い枚数で構成されているからで、枚数を減らして円形度を維持する手段が不足している為である。一般的に絞り羽根の枚数を減らしていくと円形度のピークが開放側へ寄っていく。但し、開放付近の円形度が絞り羽根を9枚使用の時と7枚使用の時と同等であって、1段目、2段目の円形度が急激に悪化する為である。図15に示す従来例の絞り羽根11,12,13の長さは、絞り羽根を7枚使用時に開放付近の円形度を改善する為に、先端部を延長して開放付近で口径形状形成に寄与させるという内容を付加した形状であるが、それでも実施例1における絞り羽根1よりも短い。
【0072】
本発明の例えば実施例5では、絞り羽根を9枚使用の円形度を開放から2段目付近まで均等化する絞り羽根を使用することによって、羽根枚数を減らす(羽根7枚とする)ことができるようにしている。開放から1段の間で絞り込んだ時に、9枚の絞り羽根を使用すれば、従来例でも、所望の円形度を得られる。しかし、図10(a)と図10(b)を用いて比べればわかるように、従来例では、円形度が急激に悪化し、本実施例の絞り羽根を用いれば、枚数を7枚にしても2段目付近の円形度の悪化が緩和される。例えば、第2従来例と第3従来例を用いた絞り羽根9枚の例では、確かに1段目付近は最高値をマークしている。しかし、7枚を用いたものでは1.9ポイント悪化する。それに対し、本発明の実施例2を用いれば、絞り羽根9枚を、絞り羽根7枚へ変更した場合でも、1段目付近で0.7ポイントの悪化で済む。
【0073】
最後に、上記の各実施例における効果について、以下にまとめて列挙する。
【0074】
絞り羽根の絞り開口の形成に関与する内縁部は、開放状態における絞り開口の半径より小さな半径と開放状態における絞り開口の半径より大きな半径とを有する複数の円弧群を持ち、これらをつなぐ線分(最大は直線)で形成される。詳しくは、前記内縁部は、絞り羽根の回動の回転軸に近い根元内縁部、回転軸から遠い先端内縁部、両者の中間にある中間内縁部、絞り開口の形成に関与する内縁部から絞り開口の形成に関与しない内縁部への先端境界内縁部と根元境界内縁部の大略5部分から構成される。そして、絞り開口形状は開放から小絞りに至るまで中間内縁部を含む形成縁で形成され、中間内縁部から先端境界内縁部へ向かう弧状線分群は中間内縁部円弧半径の曲率以上の線分群で構成される。また、中間内縁部から根元境界内縁部へ向かう弧状線分群は中間内縁部円弧半径の曲率以上の線分群で構成される。そして、絞り開口の形成に関与する内縁部は、開放付近から小絞りに向かって順次前記5つの内縁部全体から範囲を狭めながら先端内縁部側から根元内縁部側へ変化するように構成して、絞り羽根の口径形成縁を形成している。
【0075】
要するに、開放側での口径形成縁は羽根先端側と羽根根元側の形成縁を含んで形成し、小絞りに絞り込むに従って先端側と根元側の中間部で口径が形成されるように羽根の口径形成縁を形成している。
【0076】
上記のように、開放絞り状態の絞り開口を真円形に、又絞り羽根における根元内縁部を、開放絞り状態の絞り開口の半径よりも僅かに絞り込んだ状態の半径に設定している。これにより、絞り込み状態においては、絞り開口が真円に近似する形に構成可能である。
【0077】
また、開口の形成に関与する内縁部を開放側では全域を使用し、絞り込んでいくにつれて開口の形成に関与する内縁部が根元内縁部側へ変化するようにしている。これにより、開放付近での回転ガタによる開口形成に関与する内縁部の羽根位置のずれ量より、小絞り側へ移動するほど羽根の回転軸からの距離が減少し、小絞り側での回転ガタによる開口形成に関与する内縁部の羽根位置のズレ量を小さくできる。これは、従来技術による小絞りでの開口形成縁は羽根先端側を使用する方法と羽根回転軸からの距離は同等である。しかし、従来技術のように小絞りでの開口形成縁を羽根の先端側を使用する場合には、羽根の剛性が低く、羽根同士の競り合いによる撓み、あおり等によって開口形成縁の光軸方向の移動が大きくなる。これに対し、本実施例では、小絞りでの開口形成縁が根元側にあるので羽根の剛性が高く、羽根同士の競り合いによる撓み、あおり等を小さくできる。よって、光軸方向の移動量が減少し、競り合いの影響度が安定し、小絞りでの多角形の辺の長さが正多角形に近似されるので、口径形状(口径面積)が安定し口径精度が安定する。
【0078】
また、内縁部を、複数の線と円弧により構成することにより、開放絞り状態より絞り込んだ範囲の絞り状態においては、絞り開口が真円に近似する多角形に構成可能である。また、絞り羽根の根元内縁部の半径を、開放絞り状態の絞り開口半径よりも小さく形成し、かつ根元内縁部から根元側になめらかに続く円弧部が、開放開口に接するように構成されている。これにより、絞り羽根の軽量化が図れ、これによって絞り羽根の慣性モーメントも小さくできるので、絞り込みタイムを速く出来るという効果もある。さらに、現状の絞り羽根装置においても、絞り羽根の形状を変更するだけで簡単に本実施例の絞り装置に変更する事ができ、絞り羽根自体も、プレス等により精度の良いものが簡単に出来るので、製造コストも大変安く、円形絞りを得ることができる。
【0079】
つまり、絞り羽根枚数を少なくしても、中間絞り付近までの各絞り段階において円、又は極めて円に近い開口が得られ、小絞りにおける口径精度も安定したカメラレンズの絞り装置を提供可能となる。
【0080】
また、先端境界内縁部と根元境界内縁部は、絞り開口の形成に関与する内縁部の端部の円弧と、開放状態における絞り開口の半径以上の半径を有する円弧に接する接線で構成される。根元内縁部は、開放状態における絞り開口の半径より僅かに絞った第1状態の真円形半径を有する円弧で構成される。先端内縁部は、開放状態における絞り開口のFナンバーと第1状態のFナンバーとの差分段数分を絞り込んだ第2状態から、任意に絞り込んだ第3状態のFナンバーの開口真円形半径を有する円弧と、開放状態における絞り絞り開口のFナンバーと第3状態のFナンバーとの差分段数分を絞り込んだ第4状態のFナンバーの開口真円形半径を有する円弧と、これらをつなぐ接線とで構成される。中間内縁部は、開放状態における絞り開口のFナンバーと第4状態のFナンバーとの差分段数分を絞り込んだ第5状態のFナンバー開口真円径半径を有する円弧と、前記根元内縁部の円弧と前記先端内縁部複数円弧のうち最小半径の円弧とをつなぐ接線で構成される。そして、絞り開口形状は、開放状態においては、絞り羽根環の内縁部のみにより構成される。また、開放状態から第2状態の間においては、主として、先端境界内縁部、先端内縁部、中間内縁部、根元内縁部、根元境界内縁部により構成される。また、第2状態から第3、第4状態においては、主として、先端境界内縁部、先端内縁部、中間内縁部により構成される。また、第4状態から第5状態においては、主として、先端内縁部、中間内縁部、根元内縁部により構成される。第5状態から小絞り状態においては、主として、中間内縁部、根元内縁部により構成される。
【0081】
これにより、開放から2段目付近まで各絞り段階において円、又は極めて円に近い開口が得られる。また、開放から2段目付近までの間で、特に真円度を高めたいFナンバーがあれば、中間内縁部円弧の位相を、他の内縁部(先端側内縁部・根元側内縁部)の円弧に対して変化させて設定することで容易に求めるFナンバー位置での口径形状の円形度を高めることができる。
【0082】
また、先端境界内縁部と根元境界内縁部は絞り開口の形成に関与する内縁部の端部の円弧と、開放状態における絞り開口の半径以上の半径を有する円弧に接する接線で構成される。根元内縁部は、開放状態における絞り開口の半径より僅かに絞った第1状態の真円形半径を有する円弧で構成される。先端内縁部は、前記第1状態のFナンバーの開口真円形半径を有する円弧で構成される。先端境界内縁部は、開放状態における絞り開口の真円形半径以上であり、中心が開放状態における絞り開口の真円形の中心と一致する円弧と先端内縁部の円弧とをつなぐ接線とで構成される。中間内縁部は、開放状態における絞り開口のFナンバーと第1状態のFナンバーとの差分段数分を絞り込んだ第2状態、該第2状態から任意に絞り込んだ第3状態、開放状態における絞り開口のFナンバーと前記第3状態のFナンバーとの差分段数分を絞り込んだ第4状態、開放状態における絞り開口のFナンバーと第4状態のFナンバーとの差分段数分を絞り込んだ第5状態のFナンバー開口真円径半径を有する円弧と、根元内縁部の円弧と先端内縁部複数円弧のうち最小半径の円弧とをつなぐ接線で構成される。そして、絞り開口形状は、開放状態においては、絞り羽根環の内縁部のみにより構成される。また、開放状態から第2の状態の間においては、主として、先端境界内縁部、先端内縁部、中間内縁部、根元内縁部、根元境界内縁部により構成される。また、第2の状態から第3、第4の状態においては、主として、先端境界内縁部、先端内縁部、中間内縁部により構成される。また、第4の状態から第5の状態においては、主として、先端内縁部、中間内縁部により構成される。また、第5の状態から小絞り方向においては、主として、中間内縁部により構成される。
【0083】
これにより、羽根枚数を少なくしても中間絞り付近までの各絞り段階において円、又は極めて円に近い開口が得られ、小絞りにおける口径精度も安定したカメラレンズの絞り装置を提供できる。また、開放から中間絞りまでの間で、特に真円度を高めたいFナンバーがあれば、中間内縁部円弧の位相を、他の内縁部(先端側内縁部・根元側内縁部)の円弧に対して変化させて設定することで容易に求めるFナンバー位置での口径形状の円形度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例1に係わるレンズ鏡筒の光軸方向の断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係わる絞り装置に具備される絞り羽根を示す平面図である。
【図3】本発明の実施例1において絞り羽根による1枚ないし2枚が受け持つ開口形成縁の変遷を示す作動図である。
【図4】本発明の実施例1において全絞り羽根を9枚とした場合の各開口形状を示す作動状態図である。
【図5】本発明の実施例2に係わる絞り装置に具備される絞り羽根を示す平面図である。
【図6】本発明の実施例3に係わる絞り装置に具備される絞り羽根を示す平面図である。
【図7】本発明の実施例4に係わる絞り装置に具備される絞り羽根を示す平面図である。
【図8】本発明の実施例5に係わる絞り装置に具備される絞り羽根を示す平面図である。
【図9】本発明の実施例1ないし実施例5の絞り装置において絞り羽根の枚数を異ならせた場合の各絞り開口形状を示す図である。
【図10】本発明の実施例1ないし実施例5および第1従来技術ないし第3従来技術における絞り装置の絞り開口形状を数値により比較した図である。
【図11】第1従来例ないし第3従来例の絞り装置における絞り開口形状を示す図である。
【図12】第1従来技術の絞り羽根を示す平面図である。
【図13】第2従来技術の絞り羽根を示す平面図である。
【図14】第3従来技術の絞り羽根を示す平面図である。
【図15】本発明の各実施例の絞り羽根と各従来技術の絞り羽根を重ねて比較した平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1,21,31,41,51 絞り羽根
1a,21a,31a,41a,51a 根元内縁部
1b,21b,31b,41b,51b 先端内縁部
1c,21c,31c,41c,51c 中間内縁部
1d,21d,31d,41d,51d 根元境界内縁部
1e,21e,31e,41e,51e 先端境界内縁部
1f,21f,31f,41f,51f 根元円弧部
1g,21g,31g,41g,51g 先端円弧部
2 絞り固定環
3 羽根駆動環
4 絞り操作環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羽根部材を有し、前記複数の羽根部材を回動させて光束を通過させる開口の大きさを変化させる光量調節装置において、
前記複数の羽根部材の、前記開口の形成に関与する円弧状の内縁部は、前記羽根部材の回動軸に近い根元内縁部、前記回転軸から遠い先端内縁部、両者の中間にある中間内縁部、前記先端内縁部から絞り開口の形成に関与しない内縁部へ接続される先端境界内縁部、および、前記根元内縁部から絞り開口の形成に関与しない内縁部へ接続される根元境界内縁部により形成されたことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記開口の形状は開放から小絞りに至るまで前記中間内縁部を含む形成縁で形成され、前記中間内縁部から前記先端境界内縁部へ向かう弧状線分群は、前記中間内縁部円弧半径の曲率以上の線分群で構成され、前記中間内縁部から根元境界内縁部へ向かう弧状線分群は、前記中間内縁部円弧半径の曲率以上の線分群で構成され、
開放付近から小絞りに向かって前記開口が変化する際、前記開口の形成に関与する内縁部は、順次前記5つの内縁部全体から範囲を狭めながら前記先端内縁部側より前記根元内縁部側へ変化することを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記中間内縁部を除く他の各内縁部は、前記先端内縁部から前記先端境界内縁部へ、前記根元内縁部から前記根元境界内縁部へ、それぞれ前記中間内縁部から離れるに従って前記中間内縁部の円弧半径より大きくなる円弧半径を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の光量調節装置を具備することを特徴とするレンズ装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の光量調節装置を具備することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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