説明

光量調節装置および光学機器

【課題】光量調節装置において、装置を径方向に大型化せずに、遮光羽根の枚数を増やす。
【解決手段】光量調節装置19は、固定開口31aを有するベース部材32と、該ベース部材に対して固定開口の回りで回転する駆動部材32と、固定開口の周方向に複数配置されて固定開口に対向する光量調節開口を形成し、回転する駆動部材によりベース部材に対して回動されて光量調節開口の大きさを変化させる遮光羽根33,34とを有する。複数の遮光羽根は、駆動部材の同一方向への回転によって、第1の方向に回動する複数の第1の遮光羽根33と、第1の方向とは反対の第2の方向に回動する複数の第2の遮光羽根34とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラや交換レンズ等の光学機器に搭載される光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光量調節装置(絞り)には、ベース部材に形成された固定開口の周囲に多数枚の遮光羽根(絞り羽根)を配置し、固定開口回りで回転する駆動リングによって該絞り羽根をそれぞれ回動させることで絞り開口の大きさを変化させる、いわゆる虹彩絞りがある。従来の虹彩絞りでは、5枚、6枚または8枚の絞り羽根が用いられる場合が多い。特許文献1には、このような虹彩絞りが開示されている。
【0003】
駆動リングと各絞り羽根には、駆動リングの回転によって該絞り羽根をベース部材に対して回動させるためのカムピンおよびカム溝が形成されている。そして、これら絞り羽根は、駆動リングの同一方向への回転に対して、互いに同じ方向に回動して絞り開口の大きさを変化させる。
【0004】
このような多数枚の絞り羽根により形成される絞り開口(特に、小絞り開口)は、それよりも少ない枚数の絞り羽根により形成される絞り開口に比べて円形に近い開口形状を有する。このため、点光源からの光を含む画像上に形成されるぼけやゴーストの形状も円形に近くなり、画質の向上に有利である。さらなる画質の向上のために小絞り開口を
より円形に近づけるためには、絞り羽根の枚数を増加させればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−318403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、虹彩絞りにおいて単純に絞り羽根の枚数を増やすと、ベース部材や駆動リングの径を大きくして、増加した枚数の絞り羽根の保持や駆動のためのスペースを確保する必要がある。このような装置の大型化を回避するために各絞り羽根の幅を狭くする方法はあるが、これでは小絞り状態等において遮光すべき部分に隙間ができる等の不具合が生じる。このように、装置の径方向での大型化を避けつつ、絞り羽根の枚数を増加させることは困難である。
【0007】
そこで本発明は、装置を径方向に大型化しなくても、遮光羽根の枚数を増やすことができるようにした光量調節装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての光量調節装置(虹彩型光量調節装置)は、固定開口を有するベース部材と、該ベース部材に対して固定開口の回りで回転する駆動部材と、固定開口の周方向に複数配置されて固定開口に対向する光量調節開口を形成し、回転する駆動部材によりベース部材に対して回動されて光量調節開口の大きさを変化させる遮光羽根とを有する。そして、複数の遮光羽根は、駆動部材の同一方向への回転によって、第1の方向に回動する複数の第1の遮光羽根と、第1の方向とは反対の第2の方向に回動する複数の第2の遮光羽根とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動部材の同一方向への回転によって互いに反対方向に回動する遮光羽根をそれぞれ複数ずつ含むことで、全ての遮光羽根が同じ方向に回動する場合に比べて、装置を径方向に大型化しなくても遮光羽根の枚数を増やすことができる。そして、これにより、容易に小絞り開口の開口形状をより円形に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例である虹彩絞りの構成を示す正面図。
【図2】実施例の虹彩絞りを搭載した撮像装置のレンズ鏡筒部の分解斜視図。
【図3】実施例の虹彩絞りの構成を示す分解斜視図。
【図4】実施例の虹彩絞りにおける第1の絞り羽根群の動きを説明する正面図。
【図5】実施例の虹彩絞りにおける第2の絞り羽根群の動きを説明する正面図。
【図6】実施例の虹彩絞りにおける一対の第1および第2の絞り羽根の動きを説明する正面図。
【図7】実施例の虹彩絞りにおける小絞り開口の開口形状を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
まず図2には、本発明の実施例1である虹彩型光量調節装置しての虹彩絞りを搭載したビデオカメラ等の撮像装置(光学機器)のレンズ鏡筒部の構成を示している。被写体側(以下、前側という)から順に、L1は固定の第1レンズ群であり、L2は光軸方向に移動して変倍を行う第2レンズ群である。L3は光軸に直交する平面内で移動して像振れ補正を行う第3レンズ群である。L4は光軸方向に移動して焦点調節を行う第4レンズ群である。これら第1〜第4レンズ群L1〜L4と、本実施例の虹彩絞り19とにより撮影光学系が構成される。
【0013】
11は第1レンズ群L1を保持する前玉鏡筒ユニットである。12は第2レンズ群L2を保持するズーム移動枠であり、13は第3レンズ群L3を光軸に直交する平面内で移動させるシフトユニットである。14は第4レンズ群L4を保持するフォーカス移動枠である。15はCCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子である撮像素子(図示せず)を保持する後部鏡筒である。
【0014】
前玉ユニット11と後部鏡筒15は、2本のガイドバー16,17の両端を保持している。また、シフトユニット13の固定部と後部鏡筒15によりガイドバー18の両端が保持されている。
【0015】
ズーム移動枠12はガイドバー16,17により光軸方向に移動可能に支持され、フォーカス移動枠14はガイドバー16,18により光軸方向に移動可能に支持される。
【0016】
シフトユニット13の固定部は、後部鏡筒15に位置決めされて3本のビスにより締め付け固定されている。
【0017】
虹彩絞り(以下、単に絞りという)19は、光量調節開口としての絞り開口の大きさ(絞り開口径)を変化させて絞り開口を通過する光量を調節する。本実施例では、絞り19を、第3レンズ群L3の直前に配置し、シフトユニット13の固定部に固定している。
【0018】
後部鏡筒15は、前玉鏡筒ユニット11に対して位置決めされるとともに、3本のビスにより後方から締め付け固定されている。
【0019】
20はリードスクリューであり、フォーカス移動枠14に取り付けられたラック14aに噛み合っている。リードスクリュー20は、その後端部にロータマグネット20aが一体回転可能に固定されている。
【0020】
21はロータマグネット20aを回転させるためのステッピングモータユニットであり、内部のコイルへの通電によりロータマグネット20aを回転させ、ラック14aを介してフォーカス移動枠14を光軸方向に移動させる。また、ねじりコイルバネ14bのばね力によって、フォーカス移動枠14、ガイドバー16,18、ラック14aおよびリードスクリュー20間のガタが除去されている。
【0021】
22はリードスクリューであり、ズーム移動枠12に取り付けられたラック12aに噛み合っている。リードスクリュー22は、その後端部にロータマグネット22aが一体回転可能に固定されている。
【0022】
23はロータマグネット22aを回転させるためのステッピングモータユニットであり、内部のコイルへの通電によりロータマグネット22aを回転させ、ラック12aを介してズーム移動枠12を光軸方向に移動させる。また、ねじりコイルバネ12bのばね力によって、ズーム移動枠12、ガイドバー16,17、ラック12aおよびリードスクリュー22間のガタが除去されている。
【0023】
ステッピングモータユニット21,23は後部鏡筒15に、それぞれ2本のビスで固定されている。
【0024】
24はフォーカスリセットスイッチであり、フォトインタラプタにより構成される。フォーカスリセットスイッチ24は、その発光部と受光部との間に、光軸方向に移動するフォーカス移動枠14に形成された遮光部14cが挿入されることで、フォーカス移動枠14がフォーカス基準位置に位置したことを検出する。フォーカスリセットスイッチ24は、基板を介してビスにより後部鏡筒15に固定される。
【0025】
25はズームリセットスイッチであり、フォトインタラプタにより構成される。ズームリセットスイッチ25は、その発光部と受光部との間に、光軸方向に移動するズーム移動枠12に形成された遮光部12cが挿入されることで、ズーム移動枠12がズーム基準位置に位置したことを検出する。ズームリセットスイッチ25は、基板を介してビスにより前玉鏡筒ユニット11に固定される。
【0026】
図3には、絞り19を分解して示している。31はベース部材であり、その中央には円形の固定開口31aが形成されている。固定開口31aの中心は、撮影光学系の光軸上に位置する。また、ベース部材31における固定開口31aの周囲の部分には、その周方向の複数(6)箇所に、支持軸部31bが形成されている。以下の説明において、ベース部材31(固定開口31a)の周方向を絞り19における周方向といい、ベース部材31(固定開口31a)の径方向を絞り19における径方向という。
【0027】
32は羽根駆動リング(駆動部材)であり、ベース部材31に対して固定開口31aの回りで回転可能となるように保持されている。羽根駆動リング32の周方向複数(6)箇所には、駆動ピン部32bが形成されている。また、羽根駆動リング32の外周部の周方向一部の範囲には、ギア部32aが形成されている。
【0028】
33は固定開口31aの周方向に複数配置された第1の絞り羽根(第1の遮光羽根)33aを含む第1の絞り羽根群である。本実施例では、第1の絞り羽根群33は、6枚の第1の絞り羽根33aを含む。
【0029】
各第1の絞り羽根33aは、ベース部材31の支持軸部31bが挿入される支持穴33bを有する基端部と、固定開口31aに対向する絞り開口を形成するための先端部とを有する。また、各第1の絞り羽根33aの基端部と先端部との間の部分には、羽根駆動リング32の駆動ピン部32bが挿入されてこれと係合するカム溝部(カム部)33cが形成されている。
【0030】
図4には、光軸方向におけるベース部材31とは反対側(すなわち前側から)見たときの第1の絞り羽根群33の配置を示している。各第1の絞り羽根33aは、図4(a)に示す絞り開口を全開する位置では、前側から見たときの周方向のうち時計回り方向に、その先端部が他の第1の絞り羽根33aの基端部の上に重なるように配置されている。図4(a)に示す絞り開口(径)を開放絞り開口(径)といい、同図に示す各第1の絞り羽根33aの位置または状態を開放位置または開放状態という。
【0031】
各第1の絞り羽根33aは、図4(a)に示す開放位置から羽根駆動リング32が時計回り方向(第1の方向)CWに回転して駆動ピン部32bがカム溝部33c内を移動することで、支持穴33bに挿入された支持軸部31bを中心として時計回り方向に回動する。これにより、図4(b)に示すように、第1の絞り羽根群33により形成される絞り開口径が小さくなる。図4(b)に示す絞り開口(径)を小絞り開口(径)といい、同図に示す各第1の絞り羽根33aの位置または状態を小絞り位置または小絞り状態という。
【0032】
また、各第1の絞り羽根33aは、羽根駆動リング32が反時計回り方向に回転して駆動ピン部32bがカム溝部33c内を移動することで、支持軸部31bを中心として反時計回り方向に回動する。これにより、第1の絞り羽根群33により形成される絞り開口径が大きくなる(図4(a))。
【0033】
34は固定開口31aの周方向に複数配置された第2の絞り羽根(第2の遮光羽根)34aを含む第2の絞り羽根群である。本実施例では、第2の絞り羽根群34も、6枚の第2の絞り羽根34aを含む。
【0034】
各第2の絞り羽根34aは、ベース部材31の支持軸部31bが挿入される支持穴34bを有する基端部と、固定開口31aに対向する絞り開口を形成するための先端部とを有する。また、各第2の絞り羽根34aの基端部と先端部との間の部分には、羽根駆動リング32の駆動ピン部32bが挿入されてこれと係合するカム溝部(カム部)34cが形成されている。
【0035】
図5には、前側から見たときの第2の絞り羽根群34の配置を示している。各第2の絞り羽根34aは、図5(a)に示す絞り開口を全開する位置では、前側から見たときの周方向のうち反時計回り方向(第1の絞り羽根群33とは逆方向)において、その先端部が他の第2の絞り羽根34aの基端部の上に重なるように配置されている。図5(a)に示す絞り開口(径)を開放絞り開口(径)といい、同図に示す各第2の絞り羽根34aの位置または状態を開放位置または開放状態という。
【0036】
各第2の絞り羽根34aは、図5(a)に示す開放位置から羽根駆動リング32が時計回り方向CWに回転して駆動ピン部32bがカム溝部34c内を移動することで、支持穴34bに挿入された支持軸部31bを中心に反時計回り方向(第2の方向)に回動する。これにより、図5(b)に示すように、第2の絞り羽根群34により形成される絞り開口径が小さくなる。図5(b)に示す絞り開口(径)を小絞り開口(径)といい、同図に示す各第2の絞り羽根34aの位置または状態を小絞り位置または小絞り状態という。
【0037】
また、各第2の絞り羽根34aは、羽根駆動リング32が反時計回り方向に回転して駆動ピン部32bがカム溝部34c内を移動することで、支持軸部31bを中心として時計回り方向に回動する。これにより、第2の絞り羽根群34により形成される絞り開口径が大きくなる(図5(a))。
【0038】
このように、羽根駆動リング32の時計回りおよび反時計回り方向における同一方向への回転によって、第1の絞り羽根群33と第2の絞り羽根群34は、時計回りおよび反時計回り方向における互いに反対方向に回動して絞り開口径の大きさを変化させる。
【0039】
なお、第1および第2の絞り羽根群33,34のそれぞれの重なりの方向(時計回り方向および反時計回り方向)や回動方向は上記と逆であってもよい。
【0040】
35は絞りステッピングモータであり、不図示のビスによりベース部材31に固定されている。絞りステッピングモータ35の出力軸には、ピニオンギア35aが固定されている。ピニオンギア35aは、羽根駆動リング32のギア部32aに噛み合っている。このため、絞りステッピングモータ35の回転が羽根駆動リング32に伝達されてこれを回転させる。
【0041】
絞りステッピングモータ35の回転は、不図示のCPU等のコントローラにより制御される。具体的には、コントローラは、撮像素子からの出力信号を用いて生成された映像信号の輝度の変化に応じて絞りステッピングモータ35の回転を制御し、絞り開口径を変化させる。
【0042】
36はベース部材31とともに、第1および第2の絞り羽根群33,34を収容する空間を仕切るためのカバー部材であり、光軸を中心とする固定開口36aを有する。カバー部材36は、不図示のビスによりベース部材31に固定される。
【0043】
図1には、第1の絞り羽根群33および第2の絞り羽根群34が光軸方向に組み合わされた(重ね合わされた)状態を示している。図1(a)は開放状態を、図1(b)は小絞り状態をそれぞれ示している。また、図6には、光軸方向に組み合わされた1枚の第1の絞り羽根33aとこれに周方向において隣り合う1枚の第2の絞り羽根34aを示している。図6(a)は開放状態を、図6(b)は小絞り状態をそれぞれ示している。
【0044】
図6からよく分かるように、第1の絞り羽根33aとこれに反時計回り方向において隣り合う第2の絞り羽根34aは、それらの支持穴部33b,34aに、ベース部材31に形成された同一(共通)の支持軸部31bが挿入されている。また、図6に示した第2の絞り羽根34aとこれに反時計回り方向にて隣り合う不図示の第1の絞り羽根33aは、それらのカム溝部34c,33c(2点鎖線で示す)に、羽根駆動リング32に形成された同一(共通)の駆動ピン部32bが挿入されている。
【0045】
このように第1および第2の絞り羽根33a,34aに対して共通の支持軸部31bを用いることで、共通の支持軸部を用いない場合に比べて、駆動ピン部32bが係合する第1および第2の絞り羽根33a,34aのカム溝部33c,34cの設計が容易になる。また、第1および第2の絞り羽根33a,34aのカム溝部33c,34cに共通の駆動ピン部32bを係合させることで、一方の絞り羽根に他方の絞り羽根のカム溝部に係合する駆動ピン部に対する逃げ形状(長穴等)を形成する必要をなくすることができる。このため、各絞り羽根の大型化や形状の複雑化を回避することができ、限られた径方向のスペース内に多数の(12枚もの)絞り羽根を配置することができる。
【0046】
なお、本実施例では、支持軸部31bおよび駆動ピン部32bがそれぞれ、一定の径を有する単純な円筒形状に形成されている。しかし、支持軸部31bおよび駆動ピン部32bのそれぞれを、第1の絞り羽根33aに挿入される部分の径と第2の絞り羽根34aに挿入される部分の径とを互いに異ならせた段付き円筒形状に形成してもよい。あるいは、支持軸部31bおよび駆動ピン部32bのそれぞれにおいて、第1の絞り羽根33aに挿入される部分と第2の絞り羽根34aに挿入される部分とを互いに偏心させてもよい。これらの場合も、支持軸部31bおよび駆動ピン部32bがそれぞれ一体のものとして形成されていることに違いはないので、第1および第2の絞り羽根33a,34aに対して共通(同一)であると言える。
【0047】
図6に示すように、前述した通り、第1および第2の絞り羽根33a,34aは、時計回り方向CWおよび反時計回り方向CCWにおいて、羽根駆動リング32の同一方向の回転に対して、支持軸部31b回りで互いに反対方向に回動する。
【0048】
本実施例では、第1および第2の絞り羽根33a,34aは、開放位置と絞り開口を全閉する全閉位置との間で互いに同じ角速度で回動する。つまり、羽根駆動リング32の回転速度および第1および第2の絞り羽根33a,34aの回動の角速度は被写体輝度の変化速度に応じて変化するが、いずれの場合でも第1および第2の絞り羽根33a,34aの相互間では回動の角速度は同じである。
【0049】
そして、図4(b)と図5(b)に示す第1および第2の絞り羽根群33,34がそれぞれ単独で形成する小絞り開口形状は六角形に近いが、図1(b)に示すように第1および第2の絞り羽根群33,34を組み合せることで円形に近い小絞り開口形状が得られる。図7には、その円形に近い12角形の開口形状(12角形の各辺が外側に向かって凸の円弧として形成された開口形状)を有する小絞り開口を拡大して示している。
【0050】
このように、本実施例は、羽根駆動リング32の同一方向への回転によって互いに反対方向に回動する絞り羽根33a,33bをそれぞれ複数ずつ含む。これにより、全ての絞り羽根が同じ方向に回動する場合に比べて、絞り19を径方向に大型化しなくても絞り羽根33a,33bの枚数を増やすことができる。そして、これにより、容易に小絞り開口の開口形状をより円形に近づけることができ、良好な画質の撮影画像の取得に有効である。
【0051】
また、本実施例では、ベース部材31の固定開口31aと、第1および第2の絞り羽根33a,34aの回動中心となる支持軸部31bと、第1および第2の絞り羽根33a,34aを駆動する駆動ピン部32bとが、径方向において狭い範囲内に配置されている。これは、絞り19の径方向の大きさをできるだけ小さくするためである。このため、第1および第2の絞り羽根33a,34aのそれぞれの幅を大きくすることができない。このため、図4(b)と図5(b)に示す小絞り状態において、第1および第2の絞り羽根群33,34により形成される絞り開口以外の部分(カム溝部33c,34c)が固定開口31aに対向する位置まで入り込み、その隙間から光が漏れるおそれがある。光の漏れがあると、良好な光量調節ができない。
【0052】
しかし本実施例では、第1および第2の絞り羽根33a,34aを羽根駆動リング32の同一方向回転に対して互いに反対方向に回動させることで、小絞り状態において第1および第2の絞り羽根群33,34の一方にできる隙間を他方によって覆うことができる。つまり、本実施例によれば、絞り19の径方向の小型化のために第1および第2の絞り羽根33a,34aの幅が狭くても、小絞り状態にて絞り開口以外の隙間の発生を防ぐことができ、良好な光量調節を行うことができる。
【0053】
また、本実施例では、図7に示したように、円形に近い多角形状の小絞り開口を形成する全12枚の第1および第2の絞り羽根群33,34が、それぞれ(多角形の辺の数/2)に相当する6枚の絞り羽根により構成されている。これにより、全ての絞り羽根が同じ方向に回動する(同じ方向に重ねられている)場合に比べて、小絞り状態において各絞り羽根のうち小絞り開口を形成する部分の重なり合いによる絞り羽根の光軸方向への変形(盛り上がり)を抑えることができる。この結果、絞り19の光軸方向の厚みを小さくすることが可能である。
【0054】
なお、本実施例では、開放位置と全閉位置との間で常に第1および第2の絞り羽根群33,34がともに回動する。しかし、小絞り位置(絞り開口を閉じきる前の位置)と全閉位置との間で、第1および第2の絞り羽根群33,34のうち一方のみを回動させ、他方を停止させておくようにしてもよい。これにより、上述した絞り羽根のうち小絞り開口を形成する部分の重なり合いによる変形が生じにくくなり、絞り19の光軸方向の厚みを小さくすることが可能である。
【0055】
上記実施例では、第1および第2の絞り羽根群の枚数がそれぞれ6枚である場合について説明したが、それぞれの絞り羽根群の枚数が、4枚や5枚等、他の枚数であってもよい。 また、上記実施例では、第1および第2の絞り羽根群の枚数が互いに同じである(第1および第2の絞り羽根が対をなす)場合について説明したが、これらの枚数は互いに異なっていてもよい。例えば、第1の絞り羽根群の枚数が8枚で、第2の絞り羽根群の枚数が4枚であってもよい。
【0056】
上記実施例では、周方向において隣り合って配置された第1および第2の絞り羽根が地板に設けられた同一の支持軸部の回りで回動する場合について説明した。また、周方向にて隣り合って配置された第1および第2の絞り羽根が、駆動リングに設けられた同一の駆動ピン部に係合するカム溝部を有する場合について説明した。また、上記実施例では、第1および第2の絞り羽根が、開放位置と全閉位置との間で互いに同じ角速度で回動する場合について説明した。しかしながら、これらの特徴は、必ずしも有するべき特徴ではなく、必要に応じて選択的に付与されればよい。
【0057】
さらに、上記実施例では、絞り19を搭載した撮影光学系一体型の撮像装置について説明したが、他の実施例として、絞り19を交換レンズに搭載してもよい。
【0058】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
良好な画質の撮影画像の取得に有効な光量調節装置を提供できる。
【符号の説明】
【0060】
31 ベース部材
31a 固定開口
32 羽根駆動リング
33 第1の絞り羽根群
34 第2の絞り羽根群



【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定開口を有するベース部材と、
該ベース部材に対して前記固定開口の回りで回転する駆動部材と、
前記固定開口の周方向に複数配置されて前記固定開口に対向する光量調節開口を形成し、回転する前記駆動部材により前記ベース部材に対して回動されて前記光量調節開口の大きさを変化させる遮光羽根とを有する虹彩型光量調節装置であって、
前記複数の遮光羽根は、前記駆動部材の同一方向への回転によって、第1の方向に回動する複数の第1の遮光羽根と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に回動する複数の第2の遮光羽根とを含むことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記複数の第1および第2の遮光羽根のうち前記周方向において互いに隣り合って配置された第1および第2の遮光羽根は、前記ベース部材に設けられた同一の支持軸部の回りで回動することを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記複数の第1および第2の遮光羽根のうち前記周方向において互いに隣り合って配置された第1および第2の遮光羽根は、前記駆動部材に設けられた同一の駆動ピン部に係合するカム部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記第1の遮光羽根と前記第2の遮光羽根は、前記光量調節開口を開放する位置と該光量調節開口を全閉する位置との間で互いに同じ角速度で回動することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記光量調節開口を閉じきる前の位置と該光量調節開口を全閉する位置との間では、前記第1および第2の遮光羽根のうち一方のみが回動することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光量調節装置を含む光学系を有することを特徴とする光学機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate