説明

光量調節装置

【課題】駆動装置を構成するコイル枠と羽根部材と係合する突起とを一体成型で形成し、部品点数と組立工数を少なくする。
【解決手段】光量調節装置を、光量を調節する光量調節羽根と、この光量調節羽根を作動する磁石ロータとこのロータを支持するコイル枠とを備えた駆動手段と、上記磁石ロータに設けられ上記光量調節羽根と係合する駆動アームとで構成するに際に、まず上記コイル枠を2体に分割可能な2つのコイル枠で構成する。このコイル枠の一方に、上記コイルを巻回する凹溝と、上記光量調節羽根と係合して羽根の開閉を案内する突起とを例えば合成樹脂などのモールド成形で一体に成型する。他方のコイル枠は、上記コイルを巻回する凹溝が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動により光量を調節する光量調節部材と、この光量調節部材を入力信号に応じて駆動する駆動手段とから成る光量調節装置に関し、例えばカメラの絞り装置として用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
図8に従来の光量調節装置の構成例を示す。この従来例によれば、光量調節部材としての一対の絞り羽根3、4を支持部である地板1上に摺動自在に支持して絞りカバー2によって覆うとともに、前記絞り羽根3、4は駆動手段のロータ5の出力軸であるシャフト6と結合している駆動アーム7と係合している。駆動手段はコイルの巻回された一対のコイル枠8a、8bとの間に前記ロータ5を揺動自在に内包し、外部にヨーク9を嵌合させ、底部をキャップ10によって覆ったものである。従来では、図示のように光量調節部材を支持する支持部は駆動手段と別体に構成されていた。
【特許文献1】特開平07−281252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、従来のものは光量調節部材の支持部が駆動手段と別体に構成されているため、部品数が多く、組み立て工数も多く、コスト高になるとともに、組み立て精度の点及び小型化の点において問題を有していた。そこで本発明は、部品点数を極力少なくし、より小型で、組み立ても容易である光量調節装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を達成するため以下の構成を採用する。まず請求項1の発明は、光量を調節する光量調節羽根と、この光量調節羽根を移動自在に支持する羽根支持部材と、回転軸を有する磁石で形成されたロータと、このロータに設けられ上記光量調節羽根を移動する駆動アームと、上記ロータの外側に磁界を形成するコイルと、このコイルを巻回するコイル枠とを備える。そして上記羽根支持部材は上記光量調節羽根と係合して摺動自在に案内するガイド突起を備え、上記コイル枠は上記ロータを支持するために2体に分割した2つのコイル枠で構成し、このコイル枠の一方と上記羽根支持部材のガイド突起を例えば合成樹脂のモールド成型で一体成型する。そして上記駆動アームを上記コイル枠の外側に突出させて上記光量調節羽根と嵌合する。
【0005】
次に請求項2の発明は、光量を調節する光量調節羽根と、この光量調節羽根を移動自在に支持する羽根支持部材と、回転軸を有する磁石で形成されたロータと、このロータに設けられ上記光量調節羽根を移動する駆動アームと、上記ロータの外側に磁界を形成するコイルと、このコイルを外周に巻回するコイル枠とを備える。そして上記羽根支持部材は上記光量調節羽根と係合して摺動自在に案内するガイド突起を備え、上記コイル枠は上記ロータの軸方向上下に分割された2つのコイル枠で構成し、このコイル枠の一方と上記羽根支持部材を例えば合成樹脂のモールド成形で一体成型する。また、上記ロータは上記2つのコイル枠を合体して内蔵し、上記コイルは上記合体したコイル枠の外周に巻回され、上記駆動アームは上記コイル枠の外側に突出して上記光量調節羽根と嵌合する。
【発明の効果】
【0006】
本願の光量調節装置によれば、駆動手段のコイル枠に、光量調節部材と嵌合する支持部材のガイド突起を樹脂のモールド成形などで一体成型したので、駆動手段と羽根を摺動自在に支持するガイド突起とが近接し、装置のコンパクト化、組み立て精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。
図1は本発明を適用した光量調節装置、例えばカメラの絞り装置20の第1実施例の平面図を示している。そして、図2は図1における断面図を、図3は同じく図1の底面図を示している。カメラの絞り装置(以下、絞り装置と称する。)20は、各図のように駆動手段である駆動モータ30と、この駆動モータ30の出力軸31に固結された駆動アーム32に係合した図5(A)、図5(B)のような光量調節部材としての一対の絞り羽根40、41とからなっている。
【0008】
ところで、上記絞り羽根40、41は極めて薄い特殊な金属材料などで形成されているもので、これを支持手段なしで保持することはできない。本発明では、この支持手段を駆動モータ30の一部と一体化したところに大きな特徴を有するものであって、本第1実施例では、駆動モータ30のコイル枠50を、図6の斜視図に示すように出力軸31と直交する面で2分した第1コイル枠51と、第2コイル枠60とから成っているものである。
【0009】
図4は上記第1コイル枠51の縦断面図を示すものである。第1コイル枠51は、枠体部52と、絞り羽根40、41を支持する支持部53とから成っている。枠体部52には、図6に示すように、図示しないコイルを巻回するための巻回溝521が設けられている。一方、支持部53には、絞り羽根40、41の各案内溝40a、40b、41a、41bなどに嵌合して案内するガイド突起531、532、533、534が突設されている。
【0010】
このうち、ガイド突起532と534は、それぞれ案内溝40b、41bと嵌合して、サイド方向の摺動案内と同時に枠体部52の対面方向も案内している。第2コイル枠60は図2、図6などに見るように、ほぼ円筒形をなしており、後述の永久磁石に成るロータ33を回転自在に収容する空洞部601と、上記第1のコイル枠51のコイルの巻回溝521に対応する巻回溝602、後述のロータ33の軸31の支承孔603等が設けられている。なお、第2のコイル枠60は第1のコイル枠51にビス61によって結合されている。図示のように第2のコイル枠60は、従来のもののキャップの役割も担っている。
【0011】
出力軸としてのロータ軸31はロータ33の中心を貫通して一体化されており、軸の両端は第1のコイル枠51の支承孔522と、第2のコイル枠60の支承孔603とによって、回転自在に支承されている。さらに上記ロータ軸31には図1、2などのように絞り羽根40、41と係合して駆動力を伝える駆動アーム32が固設されている。駆動アーム32には絞り羽根40、41の各係合溝40d、41dに係合する一対の係合部32a、32bが立設されている。なお、この係合部32a、32bがそれぞれ絞り羽根40、41の係合溝40d、41dに通された後、各羽根40、41の面直角方向のばたつきを押えるための抑え部材34a、34bが取り付けられるようになっている。
【0012】
そして、絞り羽根40、41はこれら抑え部材34a、34bと、第1のコイル枠51のガイド突起のうちのガイド突起532、534によって2カ所ずつ面直角方向に支持されているから、従来のような大型の絞りカバーのような部材を必要とせず、部材コスト並びにスペース節約に大きく寄与している。駆動モータ30の最外部を構成しているのは、薄い鋼板を巻いて形成した円筒形のヨーク35で、第2のコイル枠60の外周に嵌着されている。なお、このヨーク35には一部切欠部35aが形成されており、これはコイルに非通電のとき、ロータ33の、従ってまた駆動アーム32の中立位置、つまりそのホームポジッションを定める為に成されているものである。
【0013】
次に作用を説明する。先ずロータ軸31と駆動アーム32とを組み合わせ、しかる後駆動アーム32をロータ33に嵌入して固定する。この際、ロータ33のNS磁極の方向と、駆動アーム32との向きとは所定の関係位置に決めておく。これは後にヨーク35の切欠部35aの位置とも関連して、非通電時における駆動アーム32の位置を決めるためである。しかる後、ロータ軸31の駆動アーム32側端部を第1のコイル枠51の支承孔522に、他の端部を第2のコイル枠60の支承孔603に挿入し、両コイル枠50、60を複数のビス61によって結合する。
【0014】
次いで両コイル枠51、60のコイル巻回溝521、602に所定のコイルを巻回する。通常は、若干の間隔を隔てて駆動コイルと制動コイルとの組に分けて巻回するが、図示は省略してある。次ぎに、ヨーク35を、その切欠部35aの向きに注意して第2のコイル枠60の外周に沿って嵌着する。次ぎに、絞り羽根40の案内溝40aを支持部53のガイド突起531に、また案内溝40bを同じく突起532に嵌合させ、溝40cは突起534に係合させる。一方、係合溝40dを駆動アーム32の係合部32aに係合させる。そして、抑え部材34aを結合する。絞り羽根41を同ようにして第1のコイル枠51の支持部53と、駆動アーム32の係合部32bとに係合させる。なお、第2のコイル枠60の空洞部601には、上記以外に、ロータ33の回転位置の検出センサとして、ホール素子などが組み込まれており、また巻回されたコイルの端末を支持する端子ピンなどを備えたものもあるが、詳細についてはこれを省略した。
【0015】
このようにして組み立てられた絞り装置20は、レンズを介してカメラの感光手段例えばCCDの前方に組み込まれ、被写体の輝度情報に対応した電流が駆動コイルに入力され、駆動コイルの形成する磁界によってロータ33は回動し、揺動アーム32が揺動して絞り羽根40、41を適度の開度位置に駆動する。しかして、絞り羽根40、41は従来のような大きな地板や絞りカバーなどを必要とせず、極めてコンパクトに構成されているから、部材点数が少なく、小型にできるため、カメラ本体への装着にもスペースをとらず、コスト削減、カメラのコンパクト化に寄与するところ大である。
【0016】
次に、図7に基づき、本発明の他の実施例を説明する。なお、完成した絞り装置としては図1に示した前記第1実施例のものと同じであるので絞り装置20としての説明は省略する。また、駆動アーム32を含む駆動手段も第1実施例のものと同じである。本実施例においては図7に示すように、コイル枠70は、駆動手段30の軸線に沿って、左右に二分割したものによって構成されている。しかして、左右のコイル枠は、位置決めのため、図示はしていないが、合い面において、一方の側に複数の係合突起、他方の側に係合凹部を設けた点以外は、左右対象形をなしているので、以下の説明ではその一方の、図7において右側のコイル枠70として説明するに止める。
【0017】
さて、コイル枠70は、枠体部71と絞り羽根40、41を支持する支持部72とが一体成型に成されている。枠体部71にはロータ33を収容するための空洞部711と、コイルを巻回するための巻回溝712とが形成されており、またロータ軸32を支持する支承孔713a、713bが設けられている。一方、支持部72には、絞り羽根40、41を支持する平坦面に2個のガイド突起721、722が設けられている。このうち、駆動モータ30から遠い側のガイド突起721は、絞り羽根40、あるいは41の支持面方向のばたつきを抑えるように、先端部を広げ、しかも絞り羽根に対向する部分を平坦にしてある。コイル枠の他の方も左右対象である以外は同じに形成されているので、詳細説明は省略する。
【0018】
本実施例は上記のように構成されているので、駆動アーム32を取り付けた駆動モータ30を空洞部711内に収め、左右のコイル枠70を合体させると、以下は上記第1実施例と同様に取り扱えるので説明を略す。この第2実施例においても、第1実施例同様部材点数の少数化及び小型化による全体としてのコスト低減効果は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わるカメラの絞り装置の平面図である。
【図2】図1における断面図である。
【図3】カメラの絞り装置の底面図である。(絞り羽根省略)
【図4】第1実施例におけるコイル枠の第1コイル枠の縦断面図である。
【図5】光量調整部材の平面図であり、同図(A)は一方の絞り羽根の平面図であり、同図(B)は他方の絞り羽根の平面図である。
【図6】第1実施例のコイル枠の斜視図である。
【図7】第2実施例のコイル枠の分解斜視図である。
【図8】従来の絞り装置の分解説明図である。
【符号の説明】
【0020】
20 カメラの絞り装置(光量調節装置)
30 駆動モータ(駆動手段)
31 ロータ軸(出力軸)
32 駆動アーム(出力アーム)
33 ロータ
40 絞り羽根(光量調節部材)
41 絞り羽根(光量調節部材)
50 コイル枠(第1実施例)
51 第1コイル枠
52 枠体部(コイル枠部分)(第1実施例)
53 支持部(第1実施例)
60 第2コイル枠
70 コイル枠(第2実施例)
71 枠体部(コイル枠部分)(第2実施例)
72 支持部(第2実施例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光量を調節する光量調節羽根と、
この光量調節羽根を移動自在に支持する羽根支持部材と、
回転軸を有する磁石で形成されたロータと、
このロータに設けられ上記光量調節羽根を移動する駆動アームと、
上記ロータの外側に磁界を形成するコイルと、
このコイルを巻回するコイル枠とを備えた光量調節装置において、
上記羽根支持部材は上記光量調節羽根と係合して摺動自在に案内するガイド突起を備え、
上記コイル枠は上記ロータを支持するために2体に分割した2つのコイル枠で構成され、
このコイル枠の一方と上記羽根支持部材のガイド突起とを一体成型により形成すると共に、
上記駆動アームを上記コイル枠の外側に突出させて上記光量調節羽根と嵌合したことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
光量を調節する光量調節羽根と、
この光量調節羽根を移動自在に支持する羽根支持部材と、
回転軸を有する磁石で形成されたロータと、
このロータに設けられ上記光量調節羽根を移動する駆動アームと、
上記ロータの外側に磁界を形成するコイルと、
このコイルを外周に巻回するコイル枠とを備えた光量調節装置において、
上記羽根支持部材は上記光量調節羽根と係合して摺動自在に案内するガイド突起を有し、
上記コイル枠は上記ロータの軸方向上下に分割された2つのコイル枠で構成し、
このコイル枠の一方と上記羽根支持部材は一体成型により形成され、
上記ロータは上記2つのコイル枠を合体して内蔵され、
上記コイルは上記合体したコイル枠の外周に巻回され、
上記駆動アームは上記コイル枠の外側に突出して上記光量調節羽根と嵌合されていることを特徴とする光量調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−79127(P2006−79127A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347916(P2005−347916)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【分割の表示】特願2003−428239(P2003−428239)の分割
【原出願日】平成9年3月31日(1997.3.31)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】