説明

光量調節装置

【課題】連続駆動が可能なガルバノメータを駆動源とし、駆動リングの小さな作動角により、小絞り時の制御敏感度を低減させる。
【解決手段】(a)において、駆動用ガルバノメータの回転駆動を伝達する駆動レバー37に設けられたピン37aが最大略60度回転し、ピン37aが嵌合している駆動リング32の長孔32bを介して駆動リング32は光軸を中心に矢印A方向に回転する。羽根駆動ピン38は駆動リング32が有するカム孔32aとベース部材31が有するカム孔31cにより形成された合成カムによって、光軸に近付く方向に案内される。駆動リング32の回動作動角に対する羽根駆動ピン38の円周方向の動き量は小さくなり、駆動リング32の回動により、(b)に示すように、絞り羽根33が閉じるように動き、絞り羽根33が小絞りになるほど、制御敏感度を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ交換が可能な、或いはレンズを一体に有するデジタルスチルカメラやビデオカメラ等に用いる光量調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオ・デジタルカメラレンズに用いられるギロチン絞り装置が知られている。ギロチン絞り装置は光軸上に開口部を設けた地板とカバーの間に2枚の羽根が移動自在に挟まれている。2枚の羽根は光軸に直交する面内において相対的に同方向、逆方向に移動し、開口部形状を自在に可変し、光量を調節することが可能である(特許文献1)。
【0003】
この絞り装置では、絞り羽根の構成枚数が2枚であるため、小絞り側の絞り開口形状が略菱形となる。それにより、点光源から出るぼけ形状・面反射ゴーストの形状が菱形に見えるため、品位に欠け、高級・高精度な撮像装置には適さない。このため、一般向けの廉価な撮像装置に搭載されるのが通常である。
【0004】
また、虹彩絞り装置はギロチン絞り装置と同様に、光軸上に開口部を設けた地板とカバーの間に3枚以上の複数枚の羽根が移動自在に挟まれている。3枚以上の複数枚の絞り羽根は、時計回り或いは反時計回りに重ねられて配置されている。更に、固定部に設けられた回転軸に絞り羽根の孔が回転可能に嵌合し、駆動ピンが絞り羽根の長孔部に嵌合し、他の絞り羽根も同一構造により支持されている。駆動ピンが一体で光軸を中心に回転することにより、複数枚の絞り羽根を連動して移動させ、開口形状を変化させて開口を通過する光量を調節することが可能である。
【0005】
虹彩絞り装置では、複数枚の絞り羽根により開口形状が決定されるため、小絞り時の開口形状が略円形であるため、点光源から生ずるぼけ形状・面反射ゴーストの形状が略円形であるため、高級・高精度な撮像装置に一般的に搭載されている。
【0006】
なお、静止画撮影を行うためのスチルカメラにおいては、虹彩絞り装置の駆動源にステッピングモータを搭載したステップ絞り装置を採用している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−5926号公報
【特許文献2】特開昭62−240942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ステッピングモータは騒音も大きく、不連続駆動のステップ駆動といったオープンループの制御しかできず、またステップ数を細かくすることにも限度があり、ガルバノメータの制御分解能程に、分解能を上げることができない。そのため、デジタルスチルカメラのような静止画撮影には問題ないが、特に高精度レンズによる動画撮影には不向きである。
【0009】
このため、動画撮影を行う撮像装置では、絞り装置の駆動源に連続的な制御が可能であり、センサによる位置フィードバック制御が可能なガルバノメータを採用することが好ましい。
【0010】
しかしガルバノ絞り装置は、ガルバノメータの構成上、回転角度が最大略60度と回転角度の制約があり、虹彩絞り装置はメータ軸の中心で駆動する駆動レバーから、更に光軸を中心として回動する駆動リングにリンクする。そのため、駆動リングの作動角は更に小さくなり、絞り羽根駆動ピンの回転角度も規制され、絞り羽根の移動量を小絞り側で低下させるカム形状を造ることができない。そのため、小絞り側での絞り羽根のF値の変化が開口時と比較すると、極めて大きくなってしまい、制御敏感度が高くなる。
【0011】
本発明の目的は、連続駆動が可能なガルバノメータを駆動源とし、駆動リングの従来と同様に小さな作動角により、高い小絞り時の制御敏感度を低減させる光量調節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る光量調節装置は、少なくとも3枚の絞り羽根を移動させることにより絞り開口形状の調節を行う光量調節装置において、駆動用ガルバノメータと、該駆動用ガルバノメータにより回転可能とした駆動レバーと、該駆動レバーと連結し光軸を中心として移動する駆動リングと、該駆動リングと係合し前記絞り羽根をそれぞれ移動させる羽根駆動ピンと、前記駆動リングの回動により前記羽根駆動ピンは光軸中心に近付きながら移動する移動手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光量調節装置によれば、駆動リングの作動角に対する羽根駆動ピンの円周方向の移動量が小さくなり、駆動リングの作動角に対する羽根の移動量が小さくなる。そのため、小絞り側のF値に対する制御範囲が広がり、小絞り側の制御敏感度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】光量調節装置を組み込んだレンズ鏡筒の分解斜視図である。
【図2】光量調節装置の分解斜視図である。
【図3】絞り羽根の構成図である。
【図4】駆動用ガルバノメータの回転を羽根駆動ピンに伝達する手段の構成図である。
【図5】羽根駆動ピンを保持する手段の断面図である。
【図6】従来例の構成(a)と実施例(b)についての駆動リングの作動角を、同じ角度で動かしたときの絞り羽根の移動量の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は実施例の光量調節装置を組み込んだレンズ鏡筒の分解斜視図である。前方から、固定の第1レンズ群L1、光軸方向に移動することにより変倍動作を行う第2レンズ群L2、光軸と垂直な平面内で移動して振れ補正動作を行う第3レンズ群L3、光軸方向に移動することにより合焦動作を行う第4レンズ群L4が配列されている。第1レンズ群L1は前玉鏡筒ユニット11に保持され、第2レンズ群L2は移動枠12に保持されている。また、第3レンズ群L3は光軸と垂直な平面内で移動可能とするシフトユニット13に保持され、第4レンズ群L4は移動枠14に保持され、CCD等の撮像素子は後部鏡筒15に取り付けられている。
【0017】
前玉鏡筒ユニット11と後部鏡筒15の間には2本のガイドバー16、17が配置され、シフトユニット13と後部鏡筒15の間にガイドバー18が配置されている。移動枠12はガイドバー16、17により光軸方向に移動可能に支持され、移動枠14はガイドバー16、18により光軸方向に移動可能に支持されている。
【0018】
シフトユニット13は後部鏡筒15に位置決めの上、ビスにより前方からビス締め固定されている。第3レンズ群L3の直前に配置され、シフトユニット13に固定された光量調節装置19は、光学系の開口径を変化させ、複数枚の絞り羽根を移動させて開口径を変化させる所謂虹彩絞り装置である。
【0019】
後部鏡筒15は前玉鏡筒ユニット11に位置決めの上、後方からビス締め固定されている。リードスクリュ20は第4レンズ群L4を光軸方向に移動させて合焦動作を行うための駆動手段であり、前後に軸受け形状を持ち、後部に多極に着磁されたロータマグネット20aが固定されている。後部鏡筒15に固定されたステータユニット21はロータマグネット20aを回転させ、リードスクリュ20は移動枠14に取り付けられたラック14aと噛合し、ロータマグネット20aの回転により、移動枠14を移動させる。
【0020】
リードスクリュ22は第2レンズ群L2を保持する移動枠12を光軸方向に移動させて変倍動作を行うための駆動手段であり、前後に軸受け形状を持ち、後部に多極に着磁されたロータマグネット22aが固定されている。後部鏡筒15に固定されたステータユニット23はロータマグネット22aを回転させ、リードスクリュ22はシフトユニット13とステータユニット23に設けられた軸受け部により支持されている。リードスクリュ22は移動枠12に取り付けられたラック12aと噛合し、ロータマグネット22aの回転により、移動枠12を移動させる。また、捩りコイルばね12bにより移動枠12、ガイドバー16、17、ラック12a、リードスクリュ22のそれぞれのがたが片寄せられている。
【0021】
フォトインタラプタ24は基板を介して後部鏡筒15に固定されている。フォトインタラプタ24はフォーカスリセットスイッチであり、移動枠14に形成された遮光部14cの光軸方向への移動による遮光、透光の切換わりを電気的に検出し、第4レンズ群L4の基準位置を検出する。フォトインタラプタ25はズームリセットスイッチであり、基板を介して前玉鏡筒ユニット11に固定されている。フォトインタラプタ25は移動枠12に形成された遮光部12cの光軸方向への移動による遮光、透光の切換わりを電気的に検出し、第2レンズ群L2の基準位置を検出する。
【0022】
図2は光量調節装置19の分解斜視図である。光量調節装置のベース部材31は、光軸を中心とした固定開口部31aを有しており、駆動リング32は絞り羽根33を駆動し、6枚の絞り羽根33は可変絞り開口径を形成する。絞り羽根33の前方に配置された押さえ部材34は光軸を中心とした固定開口部34aを有し、ビスによりベース部材31に位置決めした上で固定されており、絞り羽根33とベース部材31との間に形成される空間を規制している。ベース部材31に駆動用ガルバノメータ35が固定され、駆動用ガルバノメータ35の出力軸35aに、捻りコイルばね36により付勢された駆動レバー37が圧入又は接着等で固定されている。
【0023】
少なくとも3枚、実施例では6枚の絞り羽根33は、ベース部材31に嵌め込まれ、駆動リング32のカム孔32aを挿通した6本の羽根駆動ピン38によりそれぞれ移動される。押さえ部材39は羽根駆動ピン38をベース部材31との間に形成される空間に規制し、ビス又は接着により固定される。
【0024】
図3は絞り羽根の正面図である。各絞り羽根33A〜33Fは順番に時計周りに重ねて配置され、中心部に絞り開口形状が形成され、各絞り羽根33A〜33Fはベース部材31に設けられた回転ピン31bに回転中心孔33aが回転可能に嵌合されている。また、ベース部材31の6個のカム孔31cと駆動リング32の6個のカム孔32aとそれぞれ係合している羽根駆動ピン38が、絞り羽根33A〜33Fの長孔部33bに移動可能に嵌合している。これにより、駆動用ガルバノメータ35の回転を駆動レバー37を介して駆動リング32に伝達することで、駆動リング32が光軸を中心として回動し、絞り羽根33Aから33Fは開口径を可変可能となる。
【0025】
図4(a)は駆動用ガルバノメータ35の回転を羽根駆動ピン38に伝達する機構を示している。駆動用ガルバノメータ35の回転駆動を伝達する駆動レバー37に設けられたピン37aが最大略60度回転し、ピン37aが駆動リング32の柄部の長孔32bに嵌合して連結した駆動リング32を、光軸を中心にして矢印A方向に回転する。このとき、羽根駆動ピン38は駆動リング32が有するカム孔32aとベース部材31が有するカム孔31cにより形成された合成カムによって、光軸に近付く方向に案内される。これにより、駆動リング32の回動作動角に対する羽根駆動ピン38の円周方向の動き量は小さくなる。従って、駆動リング32が矢印A方向に回動することにより、図4(b)に示すように、絞り羽根33は全閉方向に動き、小絞り側での移動量を低減させることが可能となる。
【0026】
図5は羽根駆動ピン38を保持する手段の断面図を示している。羽根駆動ピン38は6枚の絞り羽根33を移動させるベース部材31に形成されているカム孔31cと、駆動リング32に形成されているカム孔32aとに係合される。羽根駆動ピン38はベース部材31との間に形成される空間に押さえ部材39により規制されている。
【0027】
図6は従来例の構成(a)と実施例の構成(b)について、駆動リング32の作動角を同角度で動かした場合の絞り羽根33の挙動を示している。また、図6(a)、(b)駆動リング32を同一角度で回転させたときの、それぞれの絞り羽根33の移動量をa1〜a4、b1〜b4で示している。(a)の従来構成では、羽根駆動ピン38は駆動リング32と一体であり、光軸中心Oから羽根駆動ピン38までの半径で円周方向に作動する。そのため、駆動リング32の回転中心と同一の軸によって駆動するため、駆動リング32の作動角と羽根駆動ピン38の相対的な移動量は普遍となる。絞り羽根33が小絞りになるほど、制御敏感度が高くなるため、羽根駆動ピン38の移動量に対するF値の変化も大きくなる。
【0028】
(b)の実施例では、羽根駆動ピン38が駆動リング32とベース部材31による合成カムにより、絞り羽根33が小絞りになるほど、羽根駆動ピン38の位置を光軸中心Oに近付けることができる。羽根駆動ピン38が光軸中心Oとの間隔が小さくなることにより、光軸中心Oからの半径が近くなり、駆動リング32の作動角に対する円周方向の移動量が小さくなる。このため、従来構成よりも駆動リング32の作動角を大きく制御できるため、制御敏感度を低減することが可能となる。
【0029】
従って、図6(a)、(b)の駆動リング32を同一角度で回転させたときのそれぞれの絞り羽根33の移動量は、開放付近であるa1、b1を比較するとa1<b1となり、小絞り付近であるa4、b4を比較するとa4>b4となる。
【0030】
つまり、(a)の従来例では羽根の回転量が光量敏感度の低い開放付近では、敏感度に対する絞り羽根33の移動量が小さく、光量敏感度の高くなる小絞り付近では、敏感度に対する絞り羽根33の移動量が大きいことを示している。
【0031】
また(b)の実施例では、光量敏感度の低い開放付近では、敏感度に対する絞り羽根33の移動量が大きく、光量敏感度の高くなる小絞り付近では、敏感度に対する絞り羽根33の移動量が小さくなることを示している。
【符号の説明】
【0032】
12、14 移動枠
13 シフトユニット
19 光量調節装置
31 ベース部材
32 駆動リング
33 絞り羽根
35 駆動用ガルバノメータ
36 捻りコイルばね
37 駆動レバー
38 羽根駆動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3枚の絞り羽根を移動させることにより絞り開口形状の調節を行う光量調節装置において、駆動用ガルバノメータと、該駆動用ガルバノメータにより回転可能とした駆動レバーと、該駆動レバーと連結し光軸を中心として移動する駆動リングと、該駆動リングと係合し前記絞り羽根をそれぞれ移動させる羽根駆動ピンと、前記駆動リングの回動により前記羽根駆動ピンは光軸中心に近付きながら移動する移動手段とを有することを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記駆動リングが回動し、前記駆動リングに係合している前記羽根駆動ピンが光軸中心に近付くことにより、複数枚の前記絞り羽根は開口から全閉方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記羽根駆動ピンが光軸中心に近付くにつれ、前記絞り羽根の回転中心孔から前記羽根駆動ピンまでの間隔が大きくなることを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調節装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate