説明

光電変換デバイス

【課題】高感度でかつ光信号への高い応答性を、有機光電変換材料を用いて実現できる光電変換デバイスを得ることを目的とする。
【解決手段】支持基板上に、第1の電極層と有機光電変換材料を含む光電変換層と第2の電極層とをこの順に配置し、入射する光エネルギーあるいは光信号を電気エネルギーあるいは電気信号に変換する光電変換デバイスであって、前記第1及び第2の電極層の少なくとも一方の電極層の面積は、前記光電変換層における前記第1及び第2の電極層の配置領域と重なる光電変換領域の面積よりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換部に有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスに関し、特に、光エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する太陽電池や、光通信における可視光を含む光信号の受信装置に用いるのに好適な光電変換デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を媒体として無線通信を行う場合の方法としては赤外光や電波を用いて行うことが一般的であった。それは、伝達効率が高いこと、電波では障害物を回り込んで遠くまで信号を伝達できることなどの利点があるためである。一方、可視光を用いた場合は光が目に見えるため信号の発信源を容易に知ることができること、受信者側にて信号を目で見て選択できること、特にセキュリティ上の観点から、送信者及び受信者を特定できることが利点として挙げられる。さらに、電波法による制限がなく、広域通信が可能である。
【0003】
また、照明用として注目を浴びている半導体発光素子であるLED光源を用いた信号伝達、つまりLED光源の高速点滅によるデータ伝達が可能になりつつあり、高速通信の可能性も大きいと考えられている。このような可視光を用いた通信では、例えば非特許文献1に記載されているように、発信側では、可視光光源として主にLED、蛍光灯などが用いられ、また受信側では、光電変換部としてフォトダイオードやCCD、CMOSセンサーなどの光電変換デバイスが用いられている。
【0004】
ところで、例えば、非特許文献2では、上記光電変換部に有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスを適用した提案がなされている。有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスは、従来の無機のフォトダイオード、CCD、CMOSなどのような半導体プロセスを必要とせずに、従来の無機のフォトダイオード、CCD、CMOSなどの光電変換デバイスと同様の機能を発現できる。
【0005】
そして、有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスは、塗布工程などの簡便なプロセスにより光電変換層の製造が可能となるので、大面積の光電変換デバイスの製造が容易になり、高感度及び高変換効率の光電変換デバイスが期待できる。そのため、有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスは、非常に注目を集めているデバイスであり、特に太陽電池の分野において様々な研究が行われている。
【0006】
有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスは、一般に、一対の電極層に挟まれた有機光電変換層に外部からの光信号あるいは光エネルギーを取り込んで電子と正孔とを発生させ、電気信号あるいは電気エネルギーとして電極層へ取り出す構造になっている。これらの電極層として、一般的に、光を取り込む側の電極層には透明電極が用いられ、もう一方の電極層にはアルミニウムや銀などの金属薄膜が用いられる。
【非特許文献1】可視光通信の世界 LEDで拓く「あかりコミュニケーション」中川正雄監修 可視光通信コンソーシアム編 工業調査会 ISBM4−7693−1251−2
【非特許文献2】G.Yu、Y.Cao、J.Wang、J.McElvain and A.J.Heeger、Synth.Met.102、904(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスは、コスト面、製造面でメリットがあり、感度を大きくするために光電変換領域を大面積にすることは容易である。しかし、有機光電変換材料を含む光電変換層が2層の電極層で挟まれた構造になっているので、光通信における受信デバイスとして用いる場合、デバイスの静電容量が大きくなってしまい光信号の応答性能が悪くなり、高速通信ができなくなるという問題がある。つまり、有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスでは、光電変換デバイスの感度つまり面積と、応答性能とがトレードオフの関係にあるので、双方を同時に高めることは困難である。
【0008】
また、入力される光信号あるいは光エネルギーは、電極層で一部が吸収されて減少するので、十分な光信号あるいは光エネルギーが有機光電変換材料を含む光電変換層まで到達することができず、高感度あるいは高変換効率の光電変換デバイスを得ることができなかった。
【0009】
さらに、有機光電変換材料を含む光電変換層への電気抵抗値が大きくなれば同様に光信号の応答性能が悪くなるので、高速通信ができなくなる。そのため、電極層の低抵抗化も必要である。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高感度でかつ光信号への高い応答性を、有機光電変換材料を用いて実現できる光電変換デバイスを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の光電変換デバイスは、基板上に、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層の間に配置される光電変換層を配置し、入射光を電気信号に変換する光電変換デバイスであって、前記第1の電極層と前記光電変換層の接触面が有する第1の面積は、前記第2の電極層と前記光電変換層の接触面が有する第2の面積よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の電極層と光電変換層の接触面が有する第1の面積が第2の電極層と光電変換層の接触面が有する第2の面積よりも小さいので、第1の電極層と第2の電極層の間に形成される静電容量を低減することができる。また、光を第1の電極層側から光電変換層へ入射する場合に、当該第1の電極層の無い領域を透過する光の減衰量は、当該第1の電極層を透過する光の減衰量よりも少ないので、光電変換層へ入射する光量を増加させることができる。したがって、有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスの、光電変換の感度と応答性能とを高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、基板上に、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層の間に配置される光電変換層を配置し、入射光を電気信号に変換する光電変換デバイスであって、前記第1の電極層と前記光電変換層の接触面が有する第1の面積は、前記第2の電極層と前記光電変換層の接触面が有する第2の面積よりも小さいことを特徴とする光電変換デバイスである。
【0014】
この構成によれば、第1の電極層と光電変換層の接触面が有する第1の面積が第2の電極層と光電変換層の接触面が有する第2の面積よりも小さいので、第1の電極層と第2の電極層の間に形成される静電容量を低減することができる。また、光を第1の電極層側から光電変換層へ入射する場合に、当該第1の電極層の無い領域を透過する光の減衰量は、当該第1の電極層を透過する光の減衰量よりも少ないので、光電変換層へ入射する光量を増加させることができる。したがって、有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスの、光電変換の感度と応答性能とを高めることができるという効果を奏する。
【0015】
第2の発明は、前記基板は、光を透過する機能を有することを特徴とする光電変換デバイスである。
【0016】
この構成によれば、基板が光を透過するので、光電変換層に到達する光量をより増加させることができる。したがって、有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスの、光電変換の感度と応答性能とをより高めることができるという効果を奏する。
【0017】
第3の発明は、前記第1の電極層は、光を透過する機能を有することを特徴とする光電変換デバイスである。
【0018】
この構成によれば、第1の電極層が光を透過するので、光電変換層に到達する光量をより増加させることができる。したがって、有機光電変換材料を用いた光電変換デバイスの、光電変換の感度と応答性能とをより高めることができるという効果を奏する。
【0019】
第4の発明は、前記第1の電極層が、前記第2の電極層と前記光電変換層の接触面内に分散して複数個設けられ、全てが電気的に接続されていることを特徴とする光電変換デバイスである。
【0020】
この構成によれば、前記第2の電極層と前記光電変換層の接触面内に複数の光電変換素子を形成できるので、光電変換の効率を高めることができる。また、第1の電極が形成されていない部分が生じるので、静電容量を低減させることも可能である。なお、第1の電極の数は、光電変換デバイスが用いられる用途に応じて変更しても良い。
【0021】
第5の発明は、前記第1の電極層と前記光電変換層との間に、正孔あるいは電子が移動する機能を有する電荷移動層が配置されていることを特徴とする光電変換デバイスである。
【0022】
この構成によれば、光電変換層で発生した正孔あるいは電子を、第1の電極層に効率良く導くことができるので、高感度及び高変換効率の光電変換デバイスを得ることができるという効果を奏する。
【0023】
第6の発明は、前記基板と前記第1の電極層との間の少なくとも一部に、電荷を移動する機能を有する電荷導電層が設けられていることを特徴とする光電変換デバイスである。
【0024】
この構成によれば、光電変換層で発生した正孔あるいは電子を、第1の電極層に効率良く導くことができるので、高感度及び高変換効率の光電変換デバイスを得ることができるという効果を奏する。
【0025】
第7の発明は、前記第1の電極層と前記光電変換層との間の少なくとも一部に、電荷を移動する機能を有する電荷導電層が設けられていることを特徴とする光電変換デバイスである。
【0026】
この構成によれば、光電変換デバイスの電気抵抗を低くすることができ、光信号への応答性能を良くすることができる。
【0027】
第8の発明は、前記第1の電極層と前記電荷移動層との間の少なくとも一部に、電荷を移動する機能を有する電荷導電層が設けられていることを特徴とする光電変換デバイスである。
【0028】
この構成によれば、光電変換デバイスの電気抵抗を低くすることができ、光信号への応答性能を良くすることができる。
【0029】
第9の発明は、λi=光入射側の電極層の単位面積あたりの光透過率、λm=電荷導電層の単位面積あたりの光透過率、S=光電変換する領域の面積、α=光電変換する領域の面積に対して面積が小さい電極層の面積の割合(α<1)、β=光電変換する領域の面積に対して面積が小さい電極層と電荷導電層が積層された面積の割合(β≦α<1)としたとき、S×λi≦S×(α−β)×λi+S×β(λm×λi)+(1−α)Sを満たすことを特徴とする光電変換デバイスである。
【0030】
この構成によれば、光電変換層に到達する光エネルギーあるいは光信号が大きくなるので、より高感度及び高変換効率の光電変換デバイスを得ることができるという効果を奏する。
【0031】
本発明は、端的には、光電変換部に有機光電変換材料を用いて、光エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する太陽電池に用いるのに適し、また、光通信における可視光を含む光信号の受信装置に用いるのに適した光電変換特性を有する光電変換デバイスを実現することを企図している。
【0032】
ここでは、図1〜図4を参照して、利用分野の一例として光通信における可視光を含む光信号の受信装置の構成例等と応答性について説明する。なお、図1は、本発明に係る光電変換デバイスの利用分野の一例(可視光通信)を示す図である。図2は、本発明に係る光電変換デバイスの利用装置の一例を示す図である。図3は、図2に示す利用装置の構成例を示すブロック図である。図4は、光通信で使用する場合の光電変換デバイスにおける静電容量あるいは電気抵抗と応答性能との関係を示す特性図である。
【0033】
図1において、光源(例えば室内の蛍光灯やLEDなど照明)1から射出される可視光2は、制御装置3により変調されている。この変調された可視光2が室内にある携帯型の端末装置4に照射される。端末装置4は、入射した可視光2を音声など電気信号に変換する機能を有している。
【0034】
端末装置4は、図2に示すように、可視光2を受光(受信)するための受光部5と、音声や画像、文字などのデータを出力させる出力部6とを備えている。受光部5に、本発明に係る光電変換デバイスが適用される。
【0035】
この端末装置4では、図3に示すように、受光部5が到達した可視光2に含まれる信号を受信し、I−V変換部7、バンドパスフィルタ8、増幅器9、復調回路10を通じて出力部6へと送られ、出力信号11として取り出される。
【0036】
次に、図4において、横軸は時間T(s)、縦軸V0は光電変換デバイスの変換信号の出力振幅である。図4では、応答性能が早い出力波形12aと応答性能が遅い出力波形12bとが示されている。
【0037】
応答性能が早い出力波形12aの時定数はτ1であり、応答性能が遅い出力波形12bの時定数はτ2である。出力波形の約63%で定義される時定数(τ)は、光電変換デバイスの静電容量(C)と電気抵抗(R)との間に、τ=C×Rの関係がある。この関係から、静電容量(C)あるいは電気抵抗(R)が大きいと、時定数(τ)が大きくなり、応答性能が遅くなる。つまり、可視光通信の通信速度が遅くなることが解る。
【0038】
そこで、本滅明は、以下に示すように、光電変換デバイスの静電容量と電気抵抗の一方または双方を低くする構成を実現している。また、併せて、高感度の変換特性を有する構成を実現している。以下に図面を参照して、本発明に係る光電変換デバイスの好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0039】
(実施の形態1)
図5は、本発明の実施の形態1による光電変換デバイスの構成を示す図であり、図5(a)は平面概略図、図5(b)は図5(a)に示すA−A’断面概略図、図5(c)は図5(a)に示すB−B’断面概略図である。なお、図5では、本発明の理解を容易にするため、主な構成要素のみを図示してある。
【0040】
図5に示すように、本実施の形態1による光電変換デバイスは、支持基板15上に、電極層16a、有機光電変換材料を含む光電変換層(以降、単に「光電変換層」という)17、電極層16bがこの順に積層されている。
【0041】
入射光14は、例えば可視光である。それ故、光電変換層17は、今の例では、可視光の範囲の波長を主に光電変換する機能を有する。
【0042】
入射光14は、図5では、支持基板15の側から入射しているが、逆に、電極層16b側から入射しても良い。支持基板15の側から入射している図5に示す場合は、支持基板15及び電極層16aに光を透過する機能を持たせている。電極層16b側から入射する場合は、同様に、電極層16bに光を透過する機能を持たせれば良い。
【0043】
電極層16a,16bは、一方が陰極となり、他方が陽極となる。電極層16bは、配置領域の全面が電極として機能するが、電極層16aは、配置領域内に格子状に配置される□で示す正方形をした各小面積領域のみが電極として機能する。つまり、格子状に配置される正方形をした各小面積が電極層16aである。小面積の全電極層16aは、全て電気的に接続されている。
【0044】
図5(a)に示すように、小面積の電極層16aの配置領域は、電極層16bの形成面積と等しく、電極層16bと同様に長四角の形状をしていて、互いに十字状に交差して配置されている。光電変換領域13は、光電変換層17において、小面積の電極層16aの配置領域と電極層16bとが交差している全領域である。
【0045】
このように、小面積の多数の電極層16aが、光電変換領域13に対して適宜な間隔で分散して配置される形態になっている。この電極層配置形態においては、小面積の各電極層16aの相互間は静電容量に寄与しないスペース(非電極)となり、このスペース部分の面積に相当する静電容量が低減される。
【0046】
これによって、光電変換領域13の全面積に相当する静電容量よりも小さい静電容量が得られる。図5では、電極層16bは、全面が電極となる構成であるが、電極層16aと同様の構成とすれば、一層、小さい静電容量が得られる。したがって、光信号に対する応答性能の優れた光電変換デバイスを得ることができる。
【0047】
そして、図5に示すように、支持基板15側から光を取り入れる構成とする場合、支持基板15側に配置される小面積の電極層16aを作り付ける素材には、光を透過する素材が用いられる。そのため、支持基板15側からの入射光14は、小面積の電極層16aの配置領域では、小面積の多数の電極層16aと、上記スペース部分とを透過する。このとき、透過光の減衰量は、電極層16aの方が上記スペース部分よりも大きい。
【0048】
そうすると、小面積の多数の電極層16aで生ずる透過光の減衰量を上記スペース部分での減衰の少ない透過光が補う形で、入射光14が光電変換層17に到達するので、むしろ入射光14の透過率を高めることができる。これによって、光電変換層17での電荷の発生効率を上げることができ、光電変換の感度が優れた光電変換デバイスを得ることができる。
【0049】
換言すれば、電極層16b側から光を取り入れる構成では、電極層16bの全面で透過光の減衰が起こり、入射光14の透過率が一段と下がるので、光電変換の感度の点では、図5に示すように支持基板15側から光を取り入れる構成とする方が好ましいと言える。勿論、電極層16bも電極層16aと同様の構成にする場合は、入射光14はいずれの方から取り込んでも、入射光14の透過率を高めることができることは言うまでもない。
【0050】
また、小面積の多数の電極層16aの配置領域は、図5に示す例では、光電変換領域13を上下方向にはみ出して延在している。このはみ出し領域内に光電変換層17が存在する。そうすると、はみ出し領域への入射光14によって、光電変換層17では光電変換作用により正孔あるいは電子が発生するが、その発生した正孔あるいは電子は、はみ出し領域内の電極層16aに到達する。つまり、光電変換領域13の外で発生した正孔あるいは電子を逃がすことなく捕捉できるので、効率良く光電変換させることができる。したがって、より高感度及び高変換効率の光電変換デバイスを得ることができる。
【0051】
なお、光電変換領域13に設けられる電極層aの数は、光電変換デバイスの用途に応じて変更することが望ましい。
【0052】
図6は、図5に示す光電変換デバイスにおける光電変換動作を説明する図である。図6では、図5に示す光電変換領域13の一部を拡大して示してある。図6に示すように、外部からの入射光14が支持基板15及び小面積の各電極層16aを透過して光電変換層17に到達し、プラス電荷18とマイナス電荷19とを発生させると、それぞれの電荷が2つの電極である電極層16a及び電極層16bへと移動することにより光電変換が行われる。
【0053】
図6では、電極層16aが陰極であり、電極層16bが陽極であるとしているので、プラス電荷18が電極層16aへ、マイナス電荷19が電極層16bへと流れた場合を示している。図6に示す光電変換では、光電変換層17としてプラス電荷18の移動度の大きいものが望まれる。
【0054】
また、小面積の各電極層16aあるいは電極層16bのパターンのデザインによって、光電変換領域13の面積に対して電極層16aの面積が90%〜1%レベル、好ましくは50%〜10%レベルに減ずることで静電容量も同等の量に減ずることができる。静電容量は、より少なくすることが好ましいが、極端に電極層16aあるいは電極層16bの面積を減ずると、光電変換層17で発生した電荷の光電変換層13内での移動距離が長くなってしまう。そうすると、移動する間にプラス電荷18とマイナス電荷19とが再結合してしまうため、ある程度の面積の電極層16aあるいは電極層16bとする必要がある。特に、小面積の各電極層16a相互間のスペース幅は、光電変換層17におけるプラス電荷18あるいはマイナス電荷19の移動度にも依存するが10mm以下が望ましい。
【0055】
次に、図7は、従来の光電変換デバイスの構成例を示し、図7(a)は平面概略図であり、図7(b)は図7(a)に示すA−A’断面概略図、図7(c)は図7(a)に示すB−B’断面概略図である。なお、図7では、説明の便宜から、図5に示した要素と同一名称要素には、図5で用いた符号と同じ符号を付してある。
【0056】
図7に示すように、従来の光電変換デバイスは、光電変換領域13に対して、電極層16aは、電極層16bと同様に全面が電極となる形で配置される。そのため、光電変換領域13の全面積に渡り、電極層16aと電極層16bとで挟まれたコンデンサーが構成されるので、従来の光電変換デバイスは、光電変換領域13の全面積に相当する静電容量を有してしまう。
【0057】
これに対して、図5に示す本実施の形態1による光電変換デバイスでは、電極層16aを正方形の小さい面積のもので構成し、その小さい面積の多数の電極層16aが格子状に分散して配置されるので、小面積の各電極層16aの相互間は静電容量を構成しないスペースとなり、このスペース部分の面積に相当する静電容量が低減される。よって、本実施の形態1による光電変換デバイスは、より応答性能の優れた光電変換デバイスとなっている。
【0058】
次に、図8は、図5に示す光電変換デバイスに対する比較例を示し、図8(a)は平面概略図であり、図8(b)は図8(a)に示すA−A’断面概略図、図8(c)は図8(a)に示すB−B’断面概略図である。なお、図8では、図7と同様に説明の便宜から、図5に示した要素と同一名称要素には、図5で用いた符号と同じ符号を付してある。
【0059】
静電容量を低減する方策として、例えば図8に示すように、電極層16aを、短冊状に配置する構成が考えられる。しかし、この構成では、光電変換領域13の外側に配置される短冊状の電極層16aが、光電変換層17で光電変換作用により発生した正孔あるいは電子を引き込むので、発生した正孔あるいは電子が光電変換領域13の外に逃げてしまい効率良く光電変換させることができない。
【0060】
この点、本実施の形態1による光電変換デバイスでは、多数の電極層16aは、短冊状に形成した電極よりも小面積となるので、光電変換層で発生した正孔あるいは電子が電極に引き込まれることが抑制されるので、正孔あるいは電子が光電変換領域13の外に漏れることを抑制することが可能になる。よって、光電変換領域13の外側に配置される電極層16aが捕捉した正孔あるいは電子も変換対象とすることができ、効率良く光電変換させることができる。
【0061】
以上のように、本実施の形態1によれば、有機光電変換材料を含む光電変換層を挟んで対向配置される一対の電極層の少なくとも一方の電極層の面積を光電変換領域の面積に対して小さくしたので、一対の電極層の間に形成される静電容量は光電変換領域の全面積に電極層がある場合と比較して小さくなり、光信号への応答性能を良くすることができる。
【0062】
また、小面積の電極層は光を透過する機能を有する構成とすることができる。この場合は、小面積の電極層の配置領域では、その小面積の電極層での透過光の減衰量が、小面積の電極層が設けられていないスペース部分での透過光が補うので、入射光の透過率を高めることができ、電荷の発生効率を上げ、高感度及び高変換効率の光電変換デバイスを得ることができる。
【0063】
また、支持基板側から光を取り入れる構成が可能となるので、ガラス板や透明樹脂板などの光を透過する機能を有する支持基板上に光電変換デバイスを構成することができ、より簡単な構造の光電変換デバイスを構成することができる。
【0064】
加えて、光電変換デバイスを支持基板上に形成する構成とすることができるので、光電変換デバイスは、支持基板上に順次電極層、有機光電変換材料を含む光電変換層などを成膜することで作製可能となり、より簡便に光電変換デバイス作製が可能となる。
【0065】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2による光電変換デバイスの構成を示す図であり、図9(a)は平面概略図、図9(b)は図9(a)に示すA−A’断面概略図、図9(c)は図9(a)に示すB−B’断面概略図である。なお、図9では、図5(実施の形態1)で示した構成と同一ないしは同等である構成要素に同一の符号を付してある。ここでは、本実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0066】
図9に示すように、本実施の形態2による光電変換デバイスは、図5(実施の形態1)で示した構成において、小面積の多数の電極層16aの配置領域と光電変換層17との間に、光電変換層17よりも広い面積の電荷移動層20が設けられている。
【0067】
電荷移動層20は、正孔あるいは電子が移動する領域である。この電荷移動層20は、電極層16aが陽極であれば正孔の移動度が低い材料で成膜され、電極層16aが陰極であれば電子の移動度が低い材料で成膜されている。これによって、光電変換層17で発生した正孔あるいは電子を、電極層16aに効率良く導く役割を果たすので、高感度及び高変換効率の光電変換デバイスを得ることができる。
【0068】
図10は、図9に示す光電変換デバイスにおける光電変換動作を説明する図である。図10では、図9に示す光電変換領域13の一部を拡大して示してある。図10に示すように、外部からの入射光14が支持基板15及び小さい面積の各電極層16aを透過して光電変換層17に到達し、プラス電荷18とマイナス電荷19とを発生させると、それぞれの電荷が2つの電極である電極層16a及び電極層16bへと移動することにより光電変換が行われる。
【0069】
図10では、電極層16aが陰極であり、電極層16bが陽極であるとしているので、プラス電荷18が電極層16aへ、マイナス電荷19が電極層16bへと流れた場合を示している。この場合は、電荷移動層20は、電子の移動度が低い材料で成膜されているので、プラス電荷18を電極層16aに速やかに移動させることができ、高感度及び高変換効率を実現できる。
【0070】
次に、製造方法の一例を示す。
【0071】
支持基板15として用いる無アルカリガラス基板上に、スパッタリング法により、膜厚160nmのITO膜を形成し、その後、ITO膜上にレジスト材をスピンコート法により塗布して厚さ10μmのレジスト膜を形成し、マスク露光、現像してレジスト膜を所定の形状にパターン形成した。
【0072】
次に、このガラス基板を60℃で50%の塩酸中に浸漬して、レジスト膜が形成されていない部分のITO膜をエッチングした後、レジスト膜も除去し、格子状の小面積ITOつまり電極層16aをパターニングした。
【0073】
続いて電荷移動層20を、基板面にPEDOTを0.45μmのフィルターを通して滴下し、スピンコート法によって均一に塗布し、それを200℃のクリーンオーブン中で30分間加熱することで、形成した。
【0074】
次に、約100nmの光電変換層17を、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)と[5,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル([5,6]−PCBM)との重量比1:4のクロロベンゼン溶液をスピンコート法によって塗布し、100℃のクリーンオーブン中で30分間加熱処理することで、形成した。
【0075】
続いて電極層16bを、0.27mPa(=2×10-6Torr)以下の真空度まで減圧した抵抗加熱蒸着装置内で、LiFを2nm及びAlを約100nmの膜厚で成膜して形成した。
【0076】
最後に、光電変換領域13を含む光電変換層17の外部酸素や水分による劣化を防止するための封止手段として、デバイス上にカバーガラス板を光硬化性エポキシ樹脂で接着することで封止部を形成した。
【0077】
以上のように、実施の形態2によれば、正孔あるいは電子が移動する機能を有する電荷移動層を小面積の電極層の配置領域と光電変換層との間に介在させ、該電荷移動層での正孔あるいは電子の移動度を小面積の電極層の極性に応じて定めるので、光電変換層に発生した電子あるいは正孔を小面積の電極層に導く際に、速やかに移動させることができ、より高感度及び高変換効率の光電変換デバイスを得ることができる。
【0078】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3による光電変換デバイスの構成を示す図であり、図11(a)は平面概略図、図11(b)は図11(a)に示すA−A’断面概略図、図11(c)は図11(a)に示すB−B’断面概略図である。なお、図11では、図5(実施の形態1)で示した構成と同一ないしは同等である構成要素に同一の符号を付してある。ここでは、本実施の形態3に関わる部分を中心に説明する。
【0079】
図11(b)(c)に示すように、本実施の形態3による光電変換デバイスは、図5(実施の形態1)で示した構成において、支持基板15と電極層16aとの間に、電荷導電層21が設けられている。
【0080】
この電荷導電層21は、電気抵抗の低い材料で構成されている。これによって、低い電気抵抗が確保でき、光信号への応答性能を良くすることができる。なお、図11では、電荷導電層21は、電極層16aの配置領域と同等の面積領域に設けられているが、電極層16aの配置領域の一部分のみに設けられていても良い。
【0081】
次に、製造方法の一例を示す。
【0082】
支持基板15として用いる無アルカリガラス基板上に、0.27mPa(=2×10-6Torr)以下の真空度まで減圧した抵抗加熱蒸着装置内で、マスクを介してAlを約100nmの膜厚で成膜して電荷導電層21をパターン形成した。
【0083】
次に、スパッタリング法により、膜厚160nmのITO膜を形成し、その後、ITO膜上にレジスト材をスピンコート法により塗布して厚さ10μmのレジスト膜を形成し、マスク露光、現像してレジスト膜を所定の形状にパターン形成した。次に、このガラス基板を60℃で50%の塩酸中に浸漬して、レジスト膜が形成されていない部分のITO膜をエッチングした後、レジスト膜も除去し、格子状のITOつまり電極層16aをパターニングした。
【0084】
次に、約100nmの光電変換層17を、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)と[5,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル([5,6]−PCBM)との重量比1:4のクロロベンゼン溶液をスピンコート法によって塗布し、100℃のクリーンオーブン中で30分間加熱処理することで、形成した。
【0085】
続いて電極層16bを、0.27mPa(=2×10-6Torr)以下の真空度まで減圧した抵抗加熱蒸着装置内で、LiFを2nm及びAlを約100nmの膜厚で成膜して形成した。
【0086】
最後に、光電変換領域13を含む光電変換層17の外部酸素や水分による劣化を防止するための封止手段として、デバイス上にカバーガラス板を光硬化性エポキシ樹脂で接着することで封止部を形成した。
【0087】
以上のように、本実施の形態3によれば、支持基板と小面積の電極層との間に、低抵抗の電荷導電層を設けてあるので、低い電気抵抗値を確保でき、光信号への応答性能に優れた光電変換デバイスが得られる。なお、本実施の形態3では、実施の形態1への適用例を示すが、実施の形態2にも同様に適用することができる。
【0088】
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4による光電変換デバイスの構成を示す図であり、図12(a)は平面概略図、図12(b)は図12(a)に示すA−A’断面概略図、図12(c)は図12(a)に示すB−B’断面概略図である。なお、図12では、図5(実施の形態1)で示した構成と同一ないしは同等である構成要素に同一の符号を付してある。ここでは、本実施の形態4に関わる部分を中心に説明する。
【0089】
図12(b)(c)に示すように、本実施の形態4による光電変換デバイスは、図5(実施の形態1)で示した構成において、小面積の多数の電極層16aの配置領域と光電変換層17との間に、電荷導電層21が設けられている。
【0090】
この電荷導電層21は、電気抵抗の低い材料で構成されている。これによって、低い電気抵抗が確保でき、光信号への応答性能を良くすることができる。なお、図12では、電荷導電層21は、小面積の多数の電極層16aの配置領域と同等の領域に設けられているが、電極層16aの配置領域の一部分のみに設けられていても良い。
【0091】
以上のように、本実施の形態4によれば、小面積の多数の電極層の配置領域と光電変換層との間に、低抵抗の電荷導電層を設けてあるので、低い電気抵抗値を確保でき、光信号への応答性能に優れた光電変換デバイスが得られる。なお、本実施の形態4では、実施の形態1への適用例を示すが、実施の形態2にも同様に適用することができる。
【0092】
(実施の形態5)
図13は、本発明の実施の形態5による光電変換デバイスの構成を示す図であり、図13(a)は平面概略図、図13(b)は図13(a)に示すA−A’断面概略図、図13(c)は図13(a)に示すB−B’断面概略図である。なお、図13では、図9(実施の形態2)で示した構成と同一ないしは同等である構成要素に同一の符号を付してある。ここでは、本実施の形態5に関わる部分を中心に説明する。
【0093】
図13(b)(c)に示すように、本実施の形態5による光電変換デバイスは、図9(実施の形態2)で示した構成において、小面積の多数の電極層16aの配置領域と電荷移動層20との間に、電荷導電層21が設けられている。
【0094】
この電荷導電層21は、電気抵抗の低い材料で構成されている。これによって、低い電気抵抗が確保でき、光信号への応答性能を良くすることができる。なお、図13では、電荷導電層21は、電極層16aの配置領域と同等の領域に設けられているが、電極層16aの配置領域の一部分のみに設けられていても良い。
【0095】
以上のように、本実施の形態5によれば、小面積の多数の電極層の配置領域と電荷移動層との間に、低抵抗の電荷導電層を設けてあるので、低い電気抵抗値を確保でき、光信号への応答性能に優れた光電変換デバイスが得られる。
【0096】
(実施の形態6)
図14は、本発明の実施の形態6による光電変換デバイスの構成を示す図であり、図14(a)は平面概略図、図14(b)は図14(a)に示すA−A’断面概略図、図14(c)は図14(a)に示すB−B’断面概略図である。なお、図14では、図5(実施の形態1)で示した構成と同一ないしは同等である構成要素に同一の符号を付してある。ここでは、本実施の形態6に関わる部分を中心に説明する。
【0097】
図14に示すように、本実施の形態6による光電変換デバイスは、図5(実施の形態1)で示した構成において、電極層16bに代えて電極層16b’が設けられている。
【0098】
電極層16b’は、小面積の電極層16aが格子状に配置される領域と交差する全範囲において、各電極層16a相互間のスペース部分に対応する領域が非電極となる形態で、その小面積非電極部分が格子状に形成されている。
【0099】
以上のように、本実施の形態6によれば、光電変換領域を挟む2つの電極層の静電容量に寄与する面積を小さくすることができるので、一層静電容量を低減させることができ、応答性能の優れた光電変換デバイスを得ることができる。
【0100】
(実施の形態7)
図15は、本発明の実施の形態7による光電変換デバイスの構成を示す図であり、図15(a)は平面概略図、図15(b)は図15(a)に示すA−A’断面概略図、図15(c)は図15(a)に示すB−B’断面概略図である。なお、図15では、図5(実施の形態1)で示した構成と同一ないしは同等である構成要素に同一の符号を付してある。ここでは、本実施の形態7に関わる部分を中心に説明する。
【0101】
図15に示すように、本実施の形態7による光電変換デバイスは、入射光14が実施の形態1とは異なり、電極層16b側から導入される。つまり、電極層16bは、光を透過する機能を有する素材で構成されている。
【0102】
本実施の形態7による光電変換デバイスによっても、実施の形態1と同様の作用・効果が得られる。なお、本実施の形態7では、実施の形態1への適用例を示すが、実施の形態2〜6にも同様に適用することができる。
【0103】
ここで、実施の形態4(図12)、実施の形態5(図13)では、光電変換層17に到達する光エネルギーあるいは光信号を確保するために、光電変換領域13への平均の光透過率が光電変換領域の面積と同等の面積の電極層を仮定したときの平均の光透過率よりも大きくなるように、光入射側の電極層(16aまたは16b)の単位面積あたりの光透過率、電荷導電層21の単位面積あたりの光透過率、光電変換領域13の面積、電極層16aの配置領域に対する電荷導電層21の面積の割合を、以下に示す条件で選定している。
【0104】
即ち、λiを光入射側の電極層(16aまたは16b)の単位面積あたりの光透過率とし、λmを電荷導電層21の単位面積あたりの光透過率とし、Sを光電変換領域13の面積とし、αを光電変換領域の面積に対する小面積電極層16aの面積の割合(α<1)とし、βを電極層16aの配置領域に対する電荷導電層21の面積の割合(β≦α<1)としたとき、
S×λi≦S×(α−β)×λi+S×β(λm×λi)+(1−α)S
なる条件を満たすように定めてある。
【0105】
このような構成の光電変換デバイスでは、従来の光電変換領域の全面積に渡って電極層が構成された場合と比較して、光電変換層に到達する光エネルギーあるいは光信号が大きくなり、より高感度及び高変換効率の光電変換デバイスを得ることができる。
【0106】
次に、以上の各実施の形態で示した各構成要素について具体的に説明する。
【0107】
光電変換領域13は、外部からの光信号あるいは光エネルギーを電気信号あるいは電気エネルギーに変換する機能を有する領域である。
【0108】
入射光14の波長範囲としては、可視領域の波長を含む380nm程度から780nm程度、紫外領域の波長である200nm程度から380nm程度、赤外領域の波長である780nm程度から2500nm程度である。
【0109】
支持基板15としては、機械的、熱的強度を有し、光電変換デバイスを保持できる強度があれば良い。なお、支持基板15は、光の入射面として用いる場合は、入射光14を取り入れる機能、つまり、透明または半透明など光を有効に透過する機能を必要とする。また、支持基板15は、絶縁性を有するものであることが好ましいが、特に限定されるものではなく、光電変換の動作を妨げない範囲で、あるいは用途によって導電性を有していても良い。
【0110】
支持基板15の材料としては、光を透過する機能が必要な場合は、透明または半透明の無機酸化ガラス(ソーダ石英ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英ガラス等)や無機ガラス(無機フッ化物ガラス等)、あるいは透明または半透明の高分子材料(ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂等)、あるいは透明または半透明のAs23、As4010、S40Ge10などのカルコゲノイドガラス、ZnO、Nb25、Ta25、SiO、Si34、HfO2、TiO2などの金属酸化物及び窒化物などの材料、あるいは顔料等を含んだ材料や、表面に絶縁処理を施した金属材料から適宜選択して用いることができ、複数の基板材料を積層した積層基板を用いることもできる。
【0111】
支持基板15の材料としては、さらに、用途によっては特定波長のみを透過する材料、光−光変換機能を有し特定の波長の光に変換する材料などであっても良い。光を透過する機能が不要な場合は特に材料を指定しない。
【0112】
電極層16a,16bに用いる材料は、光を透過する機能が必要な場合は発生した電荷を外部に効率良く取り出すものであれば良い。そのような材料としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物、あるいは、SnO:Sb(アンチモン)、ZnO:Al(アルミニウム)、IZO(In23:ZnO)といった混合物からなる透明導電膜、あるいは透明度を損なわない程度の厚さのAl(アルミニウム)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Ag(銀)といった金属薄膜、これらの金属の混合薄膜、積層薄膜といった金属薄膜、あるいはポリピロール等の導電性高分子等を用いることができる。
【0113】
また、電極層16a,16bの材料としては、比較的高抵抗の塗布型ITO、さらにはポリチオフェン(poly(ethylenedioxy)tiophene、以下、PEDOTと略する)、ポリフェニレンビニレン(以下、PPVと略する)、ポリフルオレン等の導電性高分子化合物を用いることもできる。
【0114】
電極層16a,16bの厚さは、十分な透明性を持たせるために500nm以下の厚さにすることが望ましい。そして、光を透過する機能が不要な場合は上記の材料をより厚く成膜することでも対応可能である。
【0115】
また、電極層16a,16bの材料としては、複数の前述電極材料を積層したものでも良い。例えば、発生した電荷を外部に効率良く取り出すことができる、Al(アルミニウム)、In(インジウム)、Mg(マグネシウム)、Ti(チタン)、Ag(銀)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)等の金属、あるいはこれらの金属の酸化物やフッ化物及びその合金、積層体等を用いることができる。
【0116】
電極層16a,16bの作製方法としては、真空蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタ法または電界重合法等の各種の重合法を適用できる。溶媒に可溶な材料を用いる場合は、溶媒に材料を溶かした溶液をスピンコート法等のウェットプロセスを用いることも可能であり、使用する材料、構成等に合ったものを任意に選択することが可能である。
【0117】
また、電極層16a,16bは、十分な導電性を持たせるため、または基板表面の凹凸による不均一な透過や反射を防ぐために、1nm以上の厚さにすることが好ましい。そして、電極層16aの無い部分を作製するパターニング方法としては、マスクを用いた真空蒸着法や、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタ法、フォトリソグラフィ、インクジェット法、スプレー法、印刷法、などを用いることができる。
【0118】
このとき、電極層16a,16bの無い部分のスペース幅は、10mm以下、好適には1mm以下が望ましい。この電極層16a,16bの無い部分のスペース幅は、小さいほど、有機光電変換材料を含む光電変換層17で光電変換作用により発生した正孔あるいは電子を電極層16a,16bにできるだけ短い距離で移動させることができ、より高感度及び高変換効率の光電変換デバイスが得られることが解っている。
【0119】
次に、有機光電変換材料を含む光電変換層17は、電子供与性有機材料及び電子受容性有機材料を含むものが代表的なものである。
【0120】
まず、電子供与性有機材料の例としては、フェニレンビニレン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体、特に骨格にキノリン基またはピリジン基を有するフルオレン系コポリマー(P0F66、P1F66、PFPV)、フルオレン含有アリールアミンポリマーカルバゾール及びその誘導体、インドール及びその誘導体、ピレン及びその誘導体、ピロール及びその誘導体、ピコリン及びその誘導体、チオフェン及びその誘導体、アセチレン及びその誘導体、ジアセチレン及びその誘導体、等の重合体やその誘導体が用いられる。
【0121】
また、電子供与性有機材料としては、デンドリマーとして総称される一群の高分子材料が用いられる。但し、高分子材料に限定されるものではない。即ち、高分子材料以外の電子供与性有機材料としては、例えば、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物や、1,1−ビス{4−(ジ−P−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(P−トリル)−P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリルアミノ)ナフタレン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−2−2’−ジメチルトリフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、N、N’−ジフェニル−N、N’−ジ−m−トリル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾ−ル等の芳香族第三級アミンや、4−ジ−P−トリルアミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン等のスチルベン化合物や、トリアゾール及びその誘導体、オキサジザゾール及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、ポリアリールアルカン及びその誘導体、ピラゾリン及びその誘導体、ピラゾロン及びその誘導体、フェニレンジアミン及びその誘導体、アニールアミン及びその誘導体、アミノ置換カルコン及びその誘導体、オキサゾール及びその誘導体、スチリルアントラセン及びその誘導体、フルオレノン及びその誘導体、ヒドラゾン及びその誘導体体、シラザン及びその誘導体、ポリシラン系アニリン系共重合体、高分子オリゴマー、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポリ3−メチルチオフェン等の低分子材料も用いることができる。なお、有機材料であれば、化学的に修飾して有機材料への光の吸収波長特性を調整することも可能である。
【0122】
そして、電子受容性有機材料の例としては、前述した電子供与性有機材料と同様の低分子及び高分子材料の他、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ジフェニルキノン及びその誘導体、フラーレン及びその誘導体、特にPCBM([6,6]−phenyl C61 butyric acid methyl ester)、カーボンナノチューブ及びその誘導体、等を繰り返し単位として有する重合体及び他のモノマーとの共重合体、またデンドリマーとして総称される一群の高分子材料が用いられる。なお、有機材料であれば、化学的に修飾して有機材料への光の吸収波長特性を調整することも可能である。
【0123】
有機光電変換材料を含む光電変換層17の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種真空プロセスや、スピンコート法、ウェットプロセスなど、どのようなものであっても良く、使用する材料、構成等に合ったものを任意に選択することが可能である。また、インクジェット法なども用いることができる。また、外部からの水分や酸素などによる劣化が懸念される材料を用いる場合は、ガラスカバーやフィルムカバー、樹脂カバーなどの封止手段を用いてデバイス全体あるいは一部を外部と遮断する構成が好適である。
【0124】
電荷移動層20に用いる材料しては、正孔あるいは電子の移動度が高く成膜性の良いものが好ましい。
【0125】
電荷移動層20に用いる正孔移動度の高い材料としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1、1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイドなどのポリフィリン化合物や、1,1−ビス{4−(ジ−P−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(P−トリル)−P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリルアミノ)ナフタレン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−2−2’−ジメチルトリフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、N、N’−ジフェニル−N、N’−ジ−m−トリル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾ−ルなどの芳香族第三級アミンや、4−ジ−P−トリルアミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルベンなどのスチルベン化合物や、トリアゾール誘導体や、オキサジザゾール誘導体や、イミダゾール誘導体や、ポリアリールアルカン誘導体や、ピラゾリン誘導体や、ピラゾロン誘導体や、フェニレンジアミン誘導体や、アニールアミン誘導体や、アミノ置換カルコン誘導体や、オキサゾール誘導体や、スチリルアントラセン誘導体や、フルオレノン誘導体や、ヒドラゾン誘導体や、シラザン誘導体や、ポリシラン系アニリン系共重合体や、高分子オリゴマーや、スチリルアミン化合物や、芳香族ジメチリディン系化合物や、ポリ−3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、テトラジヘクシルフルオレニルビフェニル(TFB)あるいはポリ3−メチルチオフェン(PMeT)といったポリチオフェン誘導体などの有機材料が用いられる。また、ポリカーボネートなどの高分子中に低分子の正孔輸送層用の有機材料を分散させた、高分子分散系の正孔輸送層も用いられる。またMoO3、V25、WO3、TiO2、SiO、MgOなどの無機酸化物を用いることもある。
【0126】
また、電荷移動層20に用いる電子移動度の高い材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)などのオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、シロール誘導体からなるポリマー材料など、あるいは、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−(パラ−フェニルフェノレート)Al(BAlq)、バソフプロイン(BCP)などが用いられる。
【0127】
電荷移動層20の作製方法としては、真空蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタ法または電界重合法などの各種の重合法により形成する。溶媒に可溶な材料を用いる場合は、溶媒に材料を溶かした溶液をスピンコート法等のウェットプロセス等を用いることも可能であり、使用する材料、構成等に合ったものを任意に選択することが可能である。また、インクジェット法、スプレー法、印刷法、なども用いることができる。
【0128】
電荷導電層21の材料としては、低抵抗の材料であれば良く、特に規定されるものではないが、好適に光を透過する機能が必要な場合は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物、あるいは、SnO:Sb(アンチモン)、ZnO:Al(アルミニウム)、IZO(In23:ZnO)といった混合物からなる透明導電膜や、あるいは透明度を損なわない程度の厚さのAl(アルミニウム)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Ag(銀)、Au(金)、といった金属薄膜や、これらの金属の混合薄膜、積層薄膜といった金属薄膜を用いることができる。また、光を透過する機能が不要な場合は上記の材料をより厚く成膜することでも対応可能である。
【0129】
電荷導電層21の作製方法としては、真空蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタ法等により形成する。電荷導電層21のパターニング方法としては、マスクを用いた真空蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタ法やフォトリソグラフィなどの方法を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明に係る光電変換デバイスは、高感度で、かつ光信号への高い応答性を、有機光電変換材料を用いて実現できる光電変換デバイスとして有用であり、特に、太陽電池や、可視光を含む光通信における受信装置に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る光電変換デバイスの利用分野の一例(可視光通信)を示す図
【図2】本発明に係る光電変換デバイスの利用装置の一例を示す図
【図3】図2に示す利用装置の構成例を示すブロック図
【図4】光通信で使用する場合の光電変換デバイスにおける静電容量あるいは電気抵抗と応答性能との関係を示す特性図
【図5】本発明の実施の形態1による光電変換デバイスの構成を示す平面概略図及び断面概略図
【図6】図5に示す光電変換デバイスにおける光電変換動作を説明する図
【図7】従来の光電変換デバイスの構成例を示す平面概略図及び断面概略図
【図8】図5に示す光電変換デバイスに対する比較例を示す平面概略図及び断面概略図
【図9】本発明の実施の形態2による光電変換デバイスの構成を示す平面概略図及び断面概略図
【図10】図9に示す光電変換デバイスにおける光電変換動作を説明する図
【図11】本発明の実施の形態3による光電変換デバイスの構成を示す平面概略図及び断面概略図
【図12】本発明の実施の形態4による光電変換デバイスの構成を示す平面概略図及び断面概略図
【図13】本発明の実施の形態5による光電変換デバイスの構成を示す平面概略図及び断面概略図
【図14】本発明の実施の形態6による光電変換デバイスの構成を示す平面概略図及び断面概略図
【図15】本発明の実施の形態7による光電変換デバイスの構成を示す平面概略図及び断面概略図
【符号の説明】
【0132】
1 光源
2 可視光
3 制御装置
4 端末装置
5 受光部
6 出力部
7 I−V変換部
8 バンドパスフィルタ
9 増幅器
10 復調回路
11 出力信号
12a 応答性能が早い出力波形
12b 応答性能が遅い出力波形
13 光電変換領域
14 入射光
15 支持基板
16a,16b,16b’ 電極層
17 有機光電変換材料を含む光電変換層
18 プラス電荷
19 マイナス電荷
20 電荷移動層
21 電荷導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層の間に配置される光電変換層を配置し、入射光を電気信号に変換する光電変換デバイスであって、
前記第1の電極層と前記光電変換層の接触面が有する第1の面積は、前記第2の電極層と前記光電変換層の接触面が有する第2の面積よりも小さいことを特徴とする光電変換デバイス。
【請求項2】
前記基板は、光を透過する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換デバイス。
【請求項3】
前記第1の電極層は、光を透過する機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換デバイス。
【請求項4】
前記第1の電極層は、前記第2の電極層と前記光電変換層の接触面内に分散して複数個設けられ、全てが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光電変換デバイス。
【請求項5】
前記第1の電極層と前記光電変換層との間に、正孔あるいは電子が移動する機能を有する電荷移動層が配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光電変換デバイス。
【請求項6】
前記基板と前記第1の電極層との間の少なくとも一部に、電荷を移動する機能を有する電荷導電層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光電変換デバイス。
【請求項7】
前記第1の電極層と前記光電変換層との間の少なくとも一部に、電荷を移動する機能を有する電荷導電層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光電変換デバイス。
【請求項8】
前記第1の電極層と前記電荷移動層との間の少なくとも一部に、電荷を移動する機能を有する電荷導電層が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の光電変換デバイス。
【請求項9】
λi=光入射側の電極層の単位面積あたりの光透過率
λm=電荷導電層の単位面積あたりの光透過率
S=光電変換する領域の面積
α=光電変換する領域の面積に対して面積が小さい電極層の面積の割合(α<1)
β=光電変換する領域の面積に対して面積が小さい電極層と電荷導電層が積層された面積の割合(β≦α<1)
としたとき、
S×λi≦S×(α−β)×λi+S×β(λm×λi)+(1−α)S
を満たすことを特徴とする請求項8または9に記載の光電変換デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate