説明

光電変換素子モジュールおよび建築物

【課題】色素増感型太陽電池の封止構造の損傷が抑制された光電変換素子モジュールおよび建築物を提供する。
【解決手段】光電変換素子モジュールは、第1の基材と、第2の基材と、光入射面および封止部を有し、第1の基材と第2の基材との間に配置される少なくとも1個の光電変換素子と、光入射面および光入射面とは反対側の主面のうちの一方の面と、第1の基材の一主面および第2の基材の一主面のうち、一方の面と対向する一主面とを固定する固定層と、封止部を覆う被覆部とを備える。被覆部のヤング率は、0MPa以上20MPa以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光電変換素子モジュールおよび建築物に関する。詳しくは、1以上の光電変換素子が収容体に収容された光電変換素子モジュールおよび建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として、結晶系の太陽電池、アモルファス型太陽電池、化合物半導体型太陽電池、薄膜多結晶型太陽電池、有機太陽電池などが、従来から知られている。そして、近年、上記太陽電池に替わる製造コストが低い太陽電池として、可視光を吸収する色素を半導体粒子に担持させた光電変換活物質層を有する色素増感型太陽電池が注目されている。
【0003】
太陽電池は、電池素子を多連接続して発電面積を拡大した電池素子モジュールとして用いられることがある。このような電池素子モジュールとしては、例えば、表面に封止材シートが設けられた2枚の板ガラスを、封止材シートが設けられた面を対向させて配置し、2枚の封止材シートの間に電池素子を介在させて電池素子をラミネートしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。また、板ガラスにかえて、2枚の板ガラスのうちの一方または両方を樹脂基板や樹脂フィルムとしたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−294869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ラミネート構造を有する電池素子モジュールでは、電池素子モジュールに加わった外力が封止材を介して電池素子に伝わるため、電池素子自体にも応力が加わってしまう。色素増感型太陽電池は、結晶系の太陽電池などとは異なり、電解液が封止された構造体であることが一般的である。そのため、電池素子モジュールに外力などが加わると、電池素子モジュール内部の色素増感型太陽電池の封止構造が損傷を受けてしまう。
【0006】
したがって、本技術の目的は、色素増感型太陽電池の封止構造の損傷が抑制された光電変換素子モジュールおよび建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本技術は、
第1の基材と、
第2の基材と、
光入射面および封止部を有し、第1の基材と第2の基材との間に配置される少なくとも1個の光電変換素子と、
光入射面および光入射面とは反対側の主面のうちの一方の面と、第1の基材の一主面および第2の基材の一主面のうち、一方の面と対向する一主面とを固定する固定層と、
封止部を覆う被覆部と
を備え、
被覆部のヤング率は、0MPa以上20MPa以下である光電変換素子モジュールである。
【0008】
本技術において、光電変換素子モジュールは、建築物に適用して好適なものである。また、光電変換素子モジュールは、例えば採光部を有する建築物に適用して好適なものである。光電変換素子モジュールは、例えば、窓材(例えば窓ガラス)、カーテンウォールなどの建築部材に適用しても好適なものである。窓材としては、複層ガラス、合わせガラス、Low−Eガラス、Low−E複層ガラスなどのエコガラスが好ましい。このようなエコガラスに光電変換素子モジュールを適用する場合、第1の基材が第1のガラス板であり、第2の基材が第2のガラス板であることが好ましい。光電変換素子モジュールが、第1の基材および第2の基材の周縁部間に封止材を備えていてもよい。
【0009】
本技術において、光電変換素子は、光が入射する入射面と、入射面とは反対側の主面と、それらの面の周縁部間に設けられた側面とを有し、封止部は、入射面の周縁部、入射面とは反対側の主面の周縁部、または側面に設けられていることが好ましい。
【0010】
本技術において、光電変換素子の封止構造を構成する透明基材および対向基材のうち、一方のみが、収容体の内側面に固定されることが好ましい。光電変換素子モジュールに加わった外力が、固定層を媒介として、光電変換素子の透明基材および対向基材の両方に直接的に伝わることがなく、光電変換素子の封止構造の劈開を抑制することができるからである。
【0011】
本技術では、光電変換素子の封止部を被覆部により覆っているので、封止部を補強することができる。また、封止部から光電変換素子内部への水分の浸入を抑制することができる。また、被覆部が軟質の材料から構成されるため、被覆部が緩衝材として機能し、光電変換素子モジュールに外力が加わった場合や、吸湿や熱膨張による応力が発生した場合であっても、光電変換素子の封止構造の劈開を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本技術によれば、色素増感型太陽電池の封止構造の損傷が抑制された光電変換素子モジュールおよび建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの一構成例を示す平面図である。図1Bは、図1AのI−I線に沿った断面図である。図1Cは、図1Bの光電変換素子を拡大して示す断面図である。
【図2】図2Aは、光電変換素子の一構成例を示す断面図である。図2Bは、光電変換素子の封止部と被覆部の表面との位置関係の一例を示す断面図である。
【図3】図3A〜図3Cは、光電変換素子の封止部と被覆部の表面との位置関係の構成例を示す断面図である。
【図4】図4A〜図4Dは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの製造工程の一例を示す工程図である。
【図5】図5Aは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第1の変形例を示す断面図である。図5Bは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第2の変形例を示す断面図である。
【図6】図6Aは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第3の変形例を示す平面図である。図6Bは、図6AのVI−VI線に沿った断面図である。図6Cは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第4の変形例を示す断面図である。
【図7】図7Aは、本技術の第2の実施形態に係る光電変換素子モジュールの一構成例を示す平面図である。図7Bは、図7AのVII−VII線に沿った断面図である。図7Cは、本技術の第2の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第1の変形例を示す断面図である。
【図8】図8Aは、本技術の第2の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第2の変形例を示す平面図である。図8Bは、図8AのVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図9Aは、本技術の第3の実施形態に係る光電変換素子モジュールの一構成例を示す断面図である。図9Bは、本技術の第3の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第1の変形例を示す断面図である。
【図10】図10A〜図10Cは、本技術に係る建築物の例を示す図である。
【図11】図11Aは、光電変換素子の対向基材のみが、固定層により収容体の内側面に固定された構成例を示す断面図である。図11Bは、光電変換素子の透明基材のみが、固定層により収容体の内側面に固定された構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本技術の実施形態について以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(光電変換素子の裏面側を固定層により固定した例)
2.第2の実施形態(光電変換素子の入射面側を固定層により固定した例)
3.第3の実施形態(光電変換素子を被覆部により支持した例)
4.第4の実施形態(光電変換素子モジュールを備える建築物の例)
【0015】
<1.第1の実施形態>
[光電変換素子モジュールの構成]
図1Aは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの一構成例を示す平面図である。図1Bは、図1AのI−I線に沿った断面図である。図1Cは、図1Bの光電変換素子を拡大して示す断面図である。図1Aおよび図1Bに示すように、第1の実施形態に係る光電変換素子モジュール1は、光入射面および封止部を有する、少なくとも1個の光電変換素子101と、光電変換素子101を収容するための収容空間ISを構成する第1の基材13および第2の基材15と、光電変換素子101の封止部を覆う被覆部5と、収容体3内における光電変換素子101の位置を固定する固定層7とを備える。少なくとも1個の光電変換素子101は、それぞれが電気的に接続されている。本技術においては、被覆部5のヤング率が、0MPa以上20MPa以下とされる。この光電変換素子モジュール1は、いわゆる色素増感型光電変換素子モジュールであり、太陽光などの入射光Lを光電変換し、外部に電力として供給する。光電変換素子モジュール1は、太陽光などの入射光Lが入射する入射面A1と、それとは反対側の裏面A2とを有している。
【0016】
図1Bおよび図1Cに示すように、光電変換素子101は、太陽光などの入射光Lが入射する入射面a1と、この入射面とは反対側の裏面a2と、入射面a1と裏面a2との周縁部間に設けられた側面a3とを有する。複数の光電変換素子101は、複数の配線(接続部材)109により電気的に直列および/または並列に接続されて、各光電変換素子101により発電された電力は複数の配線109を介して光電変換素子モジュール1の外部に供給される。なお、図1Aおよび図1Bでは、後述する収容体3に4個の光電変換素子101を収容する例が示されているが、光電変換素子101の個数はこの例に限定されるものではない。
【0017】
収容体3は、光電変換素子101を収容するための収容空間ISを有する。収納空間ISは、光電変換素子101の入射面a1に対向する第1の内側面S1と、光電変換素子101の裏面a2に対向する第2の内側面S2とにより形成される。例えば、収容体3の第2の内側面S2と光電変換素子101の裏面a2との間には、固定層7が介在され、光電変換素子101が、固定層7により収容体3の第2の内側面S2に固定される。なお、図1Bでは、光電変換素子101の裏面a2の全面に固定層5が設けられる例が示されているが、光電変換素子101の裏面a2の少なくとも一部に固定層7が設けられるようにしてもよい。
【0018】
光電変換素子101の封止部101eは、被覆部5により覆われる。すなわち、図1Bに示す構成例では、収容空間ISに、複数の光電変換素子101、固定層7および被覆部5が配置されている。被覆部5は、例えば、光電変換素子101の裏面a2側から、少なくとも光電変換素子101の入射面a1までの高さをもって形成され、光電変換素子101の封止部101eを覆っている。なお、図1Bでは、被覆部5と収納空間ISの第1の内側面S1との間に、所定幅の中空層10が形成される構成例が示されているが、この例に限定されるものではない。もちろん、被覆部5が、光電変換素子101の裏面a2側から、収納空間ISの第1の内側面S1までの空間を満たすように形成されてもよいし、光電変換素子101の入射面a1側が、収容体3の第1の内側面S1に向けて開放されていてもよい。
【0019】
(光電変換素子)
図2Aは、光電変換素子の一構成例を示す断面図である。光電変換素子101は、いわゆる色素増感型光電変換素子であり、図2Aに示すように、透明基材23と、透明電極24と、対向基材25と、対向電極26と、封止材27と、多孔質半導体層28と、電解質層29とを備える。ここで、透明電極24と、多孔質半導体層28と、電解質層29と、対向電極26とが、発電要素部を形成する。この発電要素部は、透明基材23と対向基材25との間に設けられている。もちろん、透明電極24や多孔質半導体層28、対向電極26などがパターニングされるなどして、光電変換素子101の単体が複数の発電要素部を有し、該複数の発電要素部が電気的に接続されていてもよい。本技術における「光電変換素子」には、複数の発電要素部を有し、該複数の発電要素部が電気的に接続されたものを含むものとする。また、「モジュール」とは、光電変換素子の複数個が電気的に接続されたものをいうものとする。なお、図2Aでは、いわゆる対向型と呼ばれるセル構造を例示しているが、本技術における光電変換素子としては、対向型に限定されるものではなく、モノリシック型やZ型のセル構造なども適用が可能である。
【0020】
対向基材25は、透明基材23に対向して設けられている。透明基材23は、対向基材25と対向する一主面を有し、この一主面に透明電極24が形成され、透明電極24の表面には多孔質半導体層28が形成されている。対向基材25は、透明基材23と対向する一主面を有し、この一主面に対向電極26が形成されている。対向配置された多孔質半導体層28と対向電極26との間に電解質層29が介在されている。
【0021】
透明基材23と対向基材25との対向面の周縁部に封止材27が設けられている。多孔質半導体層28と対向電極26との間隔は、好ましくは0〜100μm、より好ましくは1〜40μmである。電解質層29は、透明電極24および多孔質半導体層28が形成された透明基材23と、対向電極26が形成された対向基材25と、封止材27とによって囲まれた空間に封入されている。
【0022】
「透明基材」
透明基材23としては、透明性を有するものであれば特に限定されず、種々の基材を用いることができ、例えば、透明性を有する無機基材またはプラスチック基材を用いることができる。これらの基材の中でも、加工性、軽量性などを考慮すると、透明プラスチック基板を用いるのが好ましい。基材の形状としては、例えば、透明性を有するフィルム、シート、基板などを用いることができる。この基材の材料としては、光電変換素子101の外部から浸入する水分やガスなどの遮断性、耐溶剤性、耐候性などに優れるものが好ましい。無機基材の材料としては、例えば、石英、サファイア、ガラスなどが挙げられる。プラスチック基材の材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。公知の高分子材料としては、具体的には例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)などがあげられる。これらの無機基材の材料およびプラスチック基材の材料の中でも特に可視光領域の透過率が高い基材を用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0023】
「透明電極」
透明電極24は、太陽光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ないことが好ましい。透明電極24の材料としては、透明導電性材料を用いることができる。透明導電性材料としては、例えば、導電性の良好な金属酸化物、炭素を用いることが好ましい。金属酸化物としては、例えば、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープSnO2(FTO)、アンチモンドープSnO2(ATO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)、アルミニウム−亜鉛複合酸化物(AZO)、およびガリウム−亜鉛複合酸化物(GZO)からなる群より選択される1種以上を用いることができる。透明電極24と多孔質半導体層28との間に、結着の促進、電子伝達の改善、または逆電子過程の防止などを目的とした層をさらに設けるようにしてもよい。
【0024】
「対向基材」
対向基材25としては、透明性を有するものに特に限定されるものではなく、不透明性のものを用いることができ、例えば、不透明性または透明性を有する無機基材またはプラスチック基材などの種々の基材を用いることができる。無機基材またはプラスチック基材の材料としては、例えば、上述の透明基材23の材料として例示したものを同様に用いることができるが、それ以外にも金属基材などの不透明な基材を用いることも可能である。
【0025】
「対向電極」
対向電極26は、光電変換素子101の正極として機能するものである。対向電極26に用いる導電性の材料としては、例えば、金属、金属酸化物、または炭素などが挙げられるが、これに限定されるものではない。金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウムなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。金属酸化物としては、例えば、ITO(インジウム−スズ酸化物)、酸化スズ(フッ素などがドープされた物を含む)、酸化亜鉛などを用いることができるが、これに限定されるものではない。対向電極26の膜厚は、特に制限はないが、5nm以上100μm以下であることが好ましい。
【0026】
「封止材」
封止材27の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、ガラスフリットなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
「多孔質半導体層」
多孔質半導体層28は、金属酸化物半導体微粒子28aを含む多孔質層であることが好ましい。金属酸化物半導体微粒子28aの表面には、増感色素28bが担持されていることが好ましい。金属酸化物半導体微粒子28aは、チタン、亜鉛、スズおよびニオブの少なくとも1種を含む金属酸化物を含むことが好ましい。具体的には、金属酸化物半導体微粒子28aの材料としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、および酸化バナジウムなどなる群より選ばれる1種以上を用いることができるが、これらの限定されるものではない。多孔質半導体層表面が増感色素28bによって増感されるためには、多孔質半導体層28の伝導帯が増感色素28bの光励起順位から電子を受け取りやすい位置に存在することが好ましい。この観点からすると、上述した金属酸化物半導体微粒子28aの材料の中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、および酸化ニオブからなる群より選ばれる1種以上が特に好ましい。さらに、価格や環境衛生性などの観点から、酸化チタンが最も好ましい。金属酸化物半導体微粒子28aは、アナターゼ型またはブリュッカイト型の結晶構造を有する酸化チタンを含むことが特に好ましい。金属酸化物半導体微粒子28aの平均一次粒子径は、5nm以上500nm以下であることが好ましい。5nm未満であると、結晶性が劣化し、アナターゼ構造を維持できなくアモルファス構造となる傾向がある。一方、500nmを超えると、比表面積が低下し、多孔質半導体層28に吸着させる発電に寄与する増感色素28bの総量が減少する傾向がある。
【0028】
「増感色素」
光電変換用の増感色素28bとしては、増感作用を示すものであれば特に限定はないが、通常、可視光領域付近の光を吸収できる物質、例えば、ビピリジン錯体、テルピリジン錯体、メロシアニン色素、ポルフィリン、およびフタロシアニンなどが用いられる。
【0029】
単独で用いる増感色素28bとしては、例えば、ビピリジン錯体の1種であるシス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)二テトラブチルアンモニウム錯体(通称N719)が、増感色素28bとしての性能に優れており、一般的に用いられている。その他、ビピリジン錯体の1種であるシス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)(通称:N3)や、テルピリジン錯体の1種であるトリス(イソチオシアナト)(2,2’:6’,2”−テルピリジル−4,4’,4”−トリカルボン酸)ルテニウム(II)三テトラブチルアンモニウム錯体(通称ブラックダイ)が一般的に用いられる。
【0030】
特にN3やブラックダイを用いる場合には、共吸着剤もよく用いられる。共吸着剤は多孔質半導体層28上で色素分子が会合するのを防止するために添加される分子であり、代表的な共吸着剤としては、例えば、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸塩、および1−デクリルホスホン酸などが挙げられる。これらの分子の構造的特徴としては、多孔質半導体層28を構成する酸化チタンに吸着されやすい官能基として、カルボキシル基やホスホノ基などをもつこと、および、色素分子間に介在して色素分子間の干渉を防止するために、σ結合で形成されていることなどが挙げられる。
【0031】
その他の増感色素28bとしては、例えば、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、オキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素など、およびその誘導体が挙げられるが光を吸収し多孔質半導体層28の伝導帯に励起電子を注入できる増感色素28bであればこれらに限定されない。これらの増感色素28bはその構造中に連結基を1個以上有する場合は、多孔質半導体層表面に連結することができ、光励起された増感色素28bの励起電子を多孔質半導体層28の伝導帯に迅速に伝えることができるので望ましい。
【0032】
多孔質半導体層28の膜厚は、0.5μm以上200μm以下であることが好ましい。膜厚が0.5μm未満であると、有効な変換効率が得られなくなる傾向がある。一方、膜厚が200μmを超えると、成膜時に割れや剥がれが生じるなど作製が困難になる傾向がある。また、多孔質半導体層28の電解質層側の表面と、多孔質半導体層28の透明電極側の表面との距離が増えるために、発生電荷が透明電極24に有効に伝えられなくなるので、良好な変換効率が得られにくくなる傾向がある。
【0033】
「電解質層」
電解質層29は、電解質、媒体、および添加物から構成されることが好ましい。電解質は、I2とヨウ化物(例としてLiI、NaI、KI、CsI、MgI2、CaI2、CuI、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど)の混合物、Br2と臭化物(例としてLiBrなど)の混合物、この中でもI2とヨウ化物の組み合わせとしてLiI、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなどを混合した電解質が好ましいがこの組み合わせに限定されるものではない。
【0034】
媒体に対する電解質の濃度は、0.05〜10Mが好ましく、0.05〜5Mがより好ましく、0.2〜3Mがさらに好ましい。I2やBr2の濃度は0.0005〜1Mが好ましく、0.001〜0.5Mがより好ましく、0.001〜0.3Mがさらに好ましい。また、光電変換素子101の開放電圧を向上させる目的で、4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類などの各種添加剤を加えることもできる。
【0035】
電解質層29に用いられる媒体は、良好なイオン電導性を発現できる化合物であることが好ましい。溶液状の媒体としては、例えば、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物、ジメチルスルホキシド、スルホランなど非プロトン極性物質などを用いることができる。
【0036】
また、固体状(ゲル状を含む)の媒体を用いる目的で、ポリマーを含ませることもできる。この場合、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーを前記溶液状媒体中に添加することで、エチレン性不飽和基を有した多官能性モノマーを前記溶液状媒体中で重合させて媒体を固体状にする。
【0037】
電解質層29としてはこの他、CuI、CuSCN媒体を必要としない電解質および、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)9,9’−スピロビフルオレンのような正孔輸送材料を用いることができる。
【0038】
(収容体)
収容体3は、例えば、第1の基材13と、第2の基材15とを備える。収容体3が、必要に応じて、封止材17を備えていてもよく、遮蔽材19をさらに備えていてもよい。収容体3が密閉構造を有していると、外部からの水分の浸入などが抑制され、好ましい。なお、収容体3が、封止材17および遮蔽材19を備えない場合には、収容体3を安価なものとすることができる。
【0039】
第1の基材13は、第2の基材15と対向する第1の内側面S1を有し、第2の基材15は、第1の基材13と対向する第2の内側面S2を有している。第1の基材13および第2の基材15が、第1の内側面S1および第2の内側面S2が離間するようにして対向配置されることにより、光電変換素子101を収容するための収容空間ISが形成されている。第1の内側面S1および第2の内側面S2の周縁部間に封止材17が設けられる場合には、第1の基材13と第2の基材15と封止材17とにより、光電変換素子101を収容するための収容空間ISが形成されることになる。
【0040】
「第1の基材」
第1の基材13としては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく、種々の材料を用いることができ、例えば、透明性を有する無機基材またはプラスチック基材を用いることができる。これらの材料の中でも、加工性、軽量性などを考慮すると、透明性を有するプラスチック材料を用いるのが好ましい。第1の基材13の形状としては、例えば、透明性を有するフィルム、シート、基板などを用いることができる。第1の基材13の材料としては、光電変換素子モジュール1の外部から浸入する水分やガスなどの遮断性、耐溶剤性、耐候性などに優れるものが好ましい。無機材料としては、例えば、石英、サファイア、ガラスなどが挙げられる。プラスチック材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。公知の高分子材料としては、具体的には例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)などがあげられる。これらの無機材料およびプラスチック材料の中でも、特に可視光領域の透過率が高い材料を用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。光電変換素子モジュールを窓材などの建築部材として用いる場合には、第1の基材13はガラス板であることが好ましい。
【0041】
「第2の基材」
第2の基材15としては、透明性を有するものに特に限定されるものではなく、不透明性のものを用いることができ、例えば、不透明性または透明性を有する無機基材またはプラスチック基材などの種々の基材を用いることができる。無機基材またはプラスチック基材の材料としては、例えば、上述の第1の基材13の材料として例示したものを同様に用いることができるが、それ以外にも金属基材などの不透明な基材を用いることも可能である。光電変換素子モジュールを窓材などの建築部材として用いる場合には、第2の基材15はガラス板であることが好ましい。
【0042】
「封止材」
封止材17は、例えば、接着剤、粘着剤を主成分としている。接着剤としては、例えば、熱可塑性接着剤、熱硬化型接着剤、常温硬化型接着剤、およびエネルギー線硬化型接着剤などからなる群より選ばれる1種以上を主成分として含み、必要に応じて添加剤をさらに含むようにしてもよい。接着剤としては、接着強度の観点からすると、ポリサルファイドを用いることが好ましい。粘着剤は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、およびシリコン系粘着剤などからなる群より選ばれる1種以上を主成分として含み、必要に応じて架橋剤などの添加剤をさらに含むようにしてもよい。
【0043】
「遮蔽材」
遮蔽材19は、例えば、第1の基材13の第1の内側面S1と第2の基材15の第2の内側面S2との周縁部間に設けられる。遮蔽材19は、例えば、封止材17の内側(収容空間ISの側)に、封止材17に隣接または離間して設けられる。遮蔽材19の材料としては、収容空間ISに収容された材料の漏洩、および/または外部環境から収容空間ISへの水蒸気など水分の浸入を防止または抑制可能な材料を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリイソブチレンなどの水蒸気透過率が低い遮蔽材料、乾燥材料内包の金属スペーサなどを単独または組み合わせて用いることができる。
【0044】
(被覆部)
被覆部5は、例えば、樹脂材料、合成ゴムまたは天然ゴムを主成分として含み、必要に応じて、可塑剤、老化防止剤、軟化剤、充填剤、架橋剤などの添加剤をさらに含む。被覆部5が、光電変換素子101の入射面a1側と、収容体3の第1の内側面S1との間に介在される場合には、被覆部5が、透明性を有することが好ましい。被覆部5が、必要に応じて、微粒子をさらに含むようにしてもよい。微粒子としては、例えば、有機微粒子および無機微粒子のいずれを用いることも可能である。
【0045】
樹脂材料としては、例えば、シリコン(オルガノポリシロキサン)系樹脂、変性シリコン(シリル基を末端に持つポリエーテル)系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、変性ポリサルファイド系樹脂、テレケリックポリアクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂、アクリロニトリル、炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン、ロジントリグリセリド、水素化ロジンなどのロジン系樹脂、ポリビニルエーテルなどを挙げることができる。合成ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂などの合成ゴムなどを挙げることができる。
【0046】
被覆部5の材料の種類はこれらに限定されるものではなく、被覆部5の材料として、非硬化型の油性コーキングを使用してもよい。可能な場合には、上述した材料を2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、例えば、第2の基材15が可撓性を有しているなど、光電変換素子モジュール1が可撓性を有している場合には、第2の基材15に対して被覆部5がある程度追従するように、被覆部5を構成する材料として低モジュラスの材料が選択されることが好ましい。または、被覆部5が、ゲル状であってもよい。
【0047】
なお、被覆部5を構成する材料としてポリウレタン系材料が選択される場合には、被覆部5を紫外線から保護するために、入射光Lが入射する側の被覆部5の表面上に、紫外線反射層や紫外線吸収層などが設けられることが好ましい。このとき、光電変換素子101の変換効率の低下を防止するために、光電変換素子101の入射面a1側が被覆部5により覆われず、光電変換素子101の入射面a1側が、収容体3の第1の内側面S1に向けて開放されていることが好ましい。
【0048】
被覆部5のヤング率(引張弾性率または縦弾性率とも呼ばれる。)が、0MPa以上20MPa以下であることが好ましく、被覆部5のヤング率が、0MPa以上10MPa以下であることがより好ましい。被覆部5のヤング率を20MPa以下とすることで、光電変換素子モジュール1に外力が加わった場合にも、光電変換素子101に伝達する応力が被覆部5により緩和され、光電変換素子101の封止構造の損傷が抑制されるからである。また、被覆部5のヤング率を10MPa以下とすることで、応力の伝達がより緩和されるからである。
【0049】
ここで、被覆部5のヤング率は25℃の環境下において、JIS K 7161に準じて測定したものである。フィルム状の試料が得られる場合、具体的には、引張試験機(株式会社島津製作所製:製品名AG-X)を用い、JIS K7127に則って、ヤング率を測定することができる。
【0050】
フィルム状の試料を得られない場合には、JIS K 6253に準じて、試料の国際ゴム硬さ(International Rubber Hardness Degree(IRHD))を測定し、国際ゴム硬さとヤング率とを換算するグラフを利用して、国際ゴム硬さの測定結果からヤング率を求めることが可能である。または、微小硬度計、例えば、表面皮膜物性試験機(株式会社フィッシャー インストルメンツ社製:フィッシャースコープ HM−500)を用いてヤング率を測定することも可能である。また、試料が小型の場合には、AFMによる測定も可能である(共立出版株式会社発行、高分子ナノ材料P.81-P.111参照)。
【0051】
試料がゲル状であるなど、ヤング率が1MPa未満であることが見込まれる場合には、JIS K 2220に準じて、試料の針入度を測定し、針入度とヤング率との間の相関を利用して、針入度の測定結果からヤング率を求めることが可能である。なお、本技術においてヤング率というときには、測定対象が液体である場合や、開放された空間についての仮想的なヤング率をも含むものとし、開放された空間のヤング率は、0MPaであるものとする。
【0052】
光電変換素子101内部に対する水分の浸入は、封止部101eにおいて起こりやすいが、本技術では、光電変換素子101の封止部101eが被覆部5により覆われるので、封止部101eからの光電変換素子101内部への水分の浸入が抑制される。光電変換素子101内部に対する水分の浸入をより抑制する観点から、光電変換素子101の全体に対する封止部101eの占める割合がなるべく小さくされることが好ましい。例えば、封止部101eが光電変換素子101の側面に形成される場合には、光電変換素子101の厚さ方向に対して、被覆部5の厚さが小さいことが好ましく、例えば、被覆部5の厚さが、1mm以下とされることが好ましい。具体的には、例えば、被覆部5の厚さが、0.4mm〜0.6mm程度とされることが好ましい。もちろん、被覆部5の厚さが、1mmを超えていてもよい。被覆部5が厚く形成されることによる、応力の緩衝効果が期待できるためである。
【0053】
(固定層)
固定層7は、硬化した接着剤を主成分としている。接着剤としては、例えば、熱可塑性接着剤、熱硬化型接着剤、常温硬化型接着剤、およびエネルギー線硬化型接着剤からなる群より選ばれる1種以上を主成分として含んでいる。接着剤としては、熱による光電変換素子101の性能低下を抑制する観点からすると、常温硬化型接着剤およびエネルギー線硬化型接着剤の少なくとも一方を主成分として含んでいることが好ましい。固定層7が、必要に応じて、硬化剤、触媒、促進剤、溶剤、希釈剤、可塑剤、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤、接着促進剤などをさらに含むようにしてもよい。固定層7が、必要に応じて、微粒子をさらに含むようにしてもよい。微粒子としては、例えば、有機微粒子および無機微粒子のいずれを用いることも可能である。
【0054】
熱可塑性接着剤としては、例えば、酢酸ビニル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリビニルアセタール系接着剤、塩化ビニル系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエチレン系接着剤、セルロース系接着剤を単独または2種以上混合して用いることができ、具体的には、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)を用いることが好ましい。熱可塑性接着剤としては、ホットメルト接着剤を用いるようにしてもよい。
【0055】
熱硬化型接着剤としては、例えば、ユリア系接着剤、レゾルシノール系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリアロマティック系接着剤を単独または2種以上混合して用いることができる。
【0056】
常温硬化型接着剤としては、例えば、嫌気性接着剤、2液混合エポキシ接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、変性アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコン系接着剤を単独または2種以上混合して用いることができる。または、例えば、主成分が二酸化ケイ素のシリカ溶液で空気にさらしておくと常温で硬化し非晶質のガラスである固体へと変化する液体ガラスなどを用いることもできる。
【0057】
エネルギー線硬化型接着剤は、エネルギー線を照射することによって硬化させることができる樹脂組成物である。ここで、エネルギー線とは、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、高周波などのラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応の引き金と成りうるエネルギー線をいう。また、エネルギー線硬化性樹脂組成物は、有機無機ハイブリッド材料であってもよい。また、2種以上のエネルギー線硬化性樹脂組成物を混合して用いるようにしてもよい。エネルギー線硬化型接着剤としては、紫外線により硬化する紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。
【0058】
(中空層)
中空層10は、必要に応じて設けられ、乾燥空気、不活性ガス、または真空の雰囲気にあることが好ましい。光電変換素子101の特性劣化を抑制することができるからである。不活性ガスとしては、例えば、Ar(アルゴン)ガス、Kr(クリプトン)ガスが挙げられる。
【0059】
(光電変換素子と被覆部との位置関係)
図2Bは、光電変換素子の封止部と被覆部の表面との位置関係の一例を示す断面図である。光電変換素子101は、その周縁部のうち側面a3側に封止部101eを有している。具体的には、透明基材23と対向基材25とにより、透明基材23および対向基材25の周縁部間に、間隙部101bが形成され、この間隙部101bに封止材27が充填されることにより、光電変換素子101の封止部101eが形成されている。図2Bに示すように、第1の実施形態では、例えば、光電変換素子101の裏面a2と収容体3の第2の内側面S2との間には固定層7が介在され、光電変換素子101が、固定層7により収容体3の第2の内側面S2に固定される。
【0060】
また、図2Bに示すように、第1の実施形態では、光電変換素子101の側面a3の周縁部に設けられた封止部101eが、被覆部5により覆われている。被覆部5が、封止部101eの少なくとも一部を覆っていることが好ましく、封止部101eの全体を覆っていることがより好ましい。例えば、第2の基材15の側から透明基材23の側に向けて被覆部5が形成される場合、被覆部5が封止部101eの全体を覆うには、被覆部5の高さが少なくとも封止部101eの高さを超えていればよく、被覆部5が、透明基材23の側面にかかっていてもよい。光電変換素子101の入射面a1は、被覆部5により覆われていてもよいし、光電変換素子101の入射面a1が被覆部5により覆われず、中空層10に露出していてもよい。
【0061】
図3A〜図3Cは、光電変換素子の封止部と被覆部の表面との位置関係の構成例を示す断面図である。図3Aは、固定層7の表面のうち、光電変換素子101が固定される部分を除く領域の一部に被覆部5が形成されている構成例を示している。被覆部5は、光電変換素子101の側面a3の周縁部に設けられた封止部101eを覆っていればよく、例えば、図3Aに示すように、固定層7の表面のうち、光電変換素子101が固定される部分を除く領域のすべてに被覆部5が形成されている必要はない。
【0062】
図3Bは、収容体3の第2の内側面S2のうち、光電変換素子101の裏面a2と収容体3の第2の内側面S2とが対向する領域にのみ固定層7が介在されている構成例を示している。このとき、被覆部5は、収容体3の第2の内側面S2から、光電変換素子101の透明基材23の位置までの高さをもって形成されることになる。
【0063】
図3Cは、図3Bと同様に、収容体3の第2の内側面S2のうち、光電変換素子101の裏面a2と収容体3の第2の内側面S2とが対向する領域にのみ固定層7が介在されている構成例を示している。このとき、図3Aに示す構成例と同様に、収容体3の第2の内側面S2のうち、固定層7が形成される部分を除く領域のすべてに被覆部5が形成されている必要はない。
【0064】
[光電変換素子モジュールの製造方法]
図4A〜図4Dは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの製造工程の一例を示す工程図である。
【0065】
まず、図4Aに示すように、例えば、第2の内側面S2の周縁部に遮蔽材19を形成し、この遮蔽材19により囲まれた空間に、液状または溶融状態にある、固定層7形成用の接着剤層7aを形成する。この接着剤層7aは、上述の接着剤を主成分としている。
【0066】
次に、図4Bに示すように、光電変換素子101の裏面a2を接着剤層7aに貼りつける。次に、例えば、液状または溶融状態にある接着剤層7aを冷却硬化、熱硬化、常温硬化、またはエネルギー線硬化させ、第2の内側面S2に固定層7を形成する。これにより、第2の内側面S2に光電変換素子101が固定される。
【0067】
接着剤として、熱可塑性接着剤または熱硬化型接着剤を用いる場合には、光電変換素子101にかかる加圧および加熱の影響を最小限に留めることが好ましい。より具体的には例えば、接着剤として、熱可塑性接着剤を用いる場合には、熱可塑性接着剤が軟化液化した後、光電変換素子101を熱可塑性接着剤上に載置し、接着することが好ましい。継続的な加熱ストレスを低減させることが可能となるからである。光電変換素子101への加熱の影響を低減する観点からすると、光電変換素子101の接着面(裏面a2)とは反対側となる入射面a1を冷却することが好ましい。また、必要に応じて、光電変換素子101の接着面(裏面a2)とは反対側となる入射面a1を軽加圧するようにしてもよい。これにより、光電変換素子101をより強固に接着することができる。
【0068】
常温硬化型接着剤を用いる場合には、硬化時に発生する温度上昇が80℃以下の接着剤を使用することで、光電変換素子101に対する熱ストレスを軽微にすることができる。紫外線硬化型接着剤を用いる場合は、光電変換素子101の発電に寄与しない裏面a2での紫外線照射による接着を施すことで、光電変換素子101の性能劣化を引き起こすことなしに、光電変換素子101の接着が可能となる。
【0069】
次に、図4Cに示すように、遮蔽材19により囲まれた空間に、液状または溶融状態にある被覆部形成用組成物を配置する。この際、光電変換素子101の側面a3に設けられた封止部101eが被覆部形成用組成物により覆われるようにする。この被覆部形成用組成物は、上述の樹脂材料、合成ゴムまたは天然ゴムを主成分としている。被覆部形成用組成物に対して、必要に応じて、真空脱泡などの脱泡処理を施した後、乾燥処理や硬化処理を行うことにより、被覆部5を形成することができる。
【0070】
次に、図4Dに示すように、第1の内側面S1と第2の内側面S2とが対向するようにして、光電変換素子101が固定された第2の基材15と、第1の基材13とを対向配置するとともに、それらの周縁部に設けられた封止材17を介して貼り合わせる。必要に応じて、被覆部5、遮蔽材19および第1の内側面S1により形成される空間に、例えば、Arガス、Krガスなどの不活性ガスを充填する。以上の工程により、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュール1を得ることができる。
【0071】
[第1の変形例]
図5Aは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第1の変形例を示す断面図である。具体的には、光電変換素子102の対向基材25の周縁部には、透明基材23の方向に向けて突出する側壁部22が設けられている。そして、この側壁部22の先端部の内側に対向基材25が配置され、側壁部22の先端部と透明基材23の端部との間に間隙部102bが形成されている。この間隙部102bには、封止材27が充填されて、封止部102eが形成されている。側壁部22の材料としては、対向基材25と同様の材料を用いることができる。側壁部22と対向基材25とは、別成形または一体成形され、生産性の観点からすると、一体成形されていることが好ましい。
【0072】
光電変換素子102は、その周縁部のうち入射面a1側に封止部102eを有している。光電変換素子102はその裏面a2から入射面a1の周縁部まで被覆部5に埋設され、入射面a1の周縁部に設けられた封止部102eは、被覆部5により覆われている。これに対して、光電変換素子102の入射面a1のうち、周縁部以外の部分、すなわち光電変換に寄与する部分は、被覆部5により覆われず、中空層10に露出している。
【0073】
[第2の変形例]
図5Bは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第2の変形例を示す断面図である。光電変換素子103は、その周縁部のうち側面a3に封止部103eを有している。具体的には、透明基材23の周縁部には、対向基材25の方向に向けて突出する側壁部23aが設けられている。対向基材25の周縁部には、透明基材23の方向に向けて突出する側壁部25aが設けられている。そして、これらの側壁部23aおよび側壁部25aの先端部間に、間隙部103bが形成されている。この間隙部103bには、封止材27が充填されて、封止部103eが形成されている。
【0074】
光電変換素子103はその裏面a2から側面a3の封止部103eまで被覆部5に埋設され、側面a3に設けられた封止部103eは被覆部5により覆われている。これに対して、光電変換素子103の入射面a1は、被覆部5により覆われず、中空層10に露出している。
【0075】
[第3の変形例]
図6Aは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第3の変形例を示す平面図である。図6Bは、図6AのVI−VI線に沿った断面図である。図6Aおよび図6Bに示すように、固定層7を、リブ状としてもよい。図6Aおよび図6Bでは、光電変換素子101の裏面a2の周縁部全体に1つの固定層を連続的に設けた例を示しているが、固定層7の構成はこの例に限定されるものではない。例えば、光電変換素子101の裏面a2の周縁部に、柱状とされた複数の固定層7を断続的に設けるようにしてもよい。なお、図6Aおよび図6Bでは、光電変換素子モジュール11の固定層7を網掛けで示した。
【0076】
このとき、固定層7を構成する材料として、弾性樹脂を用いることが好ましい。固定層7が圧縮応力を発現可能であると、使用環境温度が変化した場合にも、光電変換素子101の裏面a2を固定層7の圧縮応力により支持可能であるため、光電変換素子モジュールの信頼性をより向上させることができる。
【0077】
[第4の変形例]
図6Cは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第4の変形例を示す断面図である。第4の変形例に係る光電変換素子モジュール21では、光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1とが密着している。このとき、光電変換素子101の透明基材23と、収容体3の第1の基材13とが、同一またはほぼ同一の屈折率を有することが好ましい。光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1との界面における、入射光Lの反射を抑制することができるからである。
【0078】
第4の変形例では、光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1とが密着されている。そのため、光電変換素子101の入射面a1側の界面の数を減らすことができ、光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1との間に被覆部5や中空層10が介在する場合と比較して、入射光Lの利用効率を向上させることができる。
【0079】
(効果)
色素増感太陽電池のような封止構造を持った光電変換素子を収容体の内部に固定する場合、収容体に外力が加わると、接着剤などの固定部材を介して、光電変換素子に力が加わり、光電変換素子の封止構造が損傷してしまう問題があった。また、吸湿による樹脂材料の膨潤や、異種材料接合による熱膨張率差により、光電変換素子に力が加わり、光電変換素子の封止構造が損傷してしまう問題があった。
【0080】
本技術では、それ自体が封止構造を有する1以上の光電変換素子101の、収容体3の収容空間ISへの装着において、光電変換素子101の透明基材23および対向基材25のうち、一方のみが、収容体3の内側面に固定される。そのため、光電変換素子101の透明基材23および対向基材25の双方を固定部材により収容体3の内側面に固定した場合と異なり、光電変換素子モジュール1に加わった外力が、固定部材を媒介として、透明基材23および対向基材25の両方に直接的に伝わることがない。
【0081】
したがって、本技術によれば、光電変換素子モジュール1に加わった外力が透明基材23および対向基材25の両方に伝わることによる、光電変換素子101の封止構造の損傷を防止することができる。すなわち、光電変換素子モジュール1に外力が加わった場合にも、光電変換素子101の封止構造の劈開を抑制することができる。そのため、本技術によれば、例えば、光電変換素子モジュール1の製造時において光電変換素子モジュール1に外力が加わった場合にも光電変換素子101の封止構造の損傷を防止することができる。これにより、封止構造を有する光電変換素子101を複数用いた光電変換素子モジュール1を得ることができる。
【0082】
また、本技術では、被覆部5が光電変換素子101の封止部101eを覆っているので、封止部101eを補強することができる。また、封止部101eから光電変換素子101内部へ水分が浸入することを抑制することができる。したがって、光電変換素子モジュール1の耐候性が向上する。これにより、例えば、ビル建築や一般住宅などの室外使用時の耐候信頼性を満足する光電変換素子モジュール1を実現できる。
【0083】
さらに、本技術では、被覆部5のヤング率が0MPa以上20MPa以下とされる。そのため、吸湿による樹脂材料の膨潤や、異種材料接合による熱膨張率差により応力が発生しても、被覆部5が緩衝材として機能し、光電変換素子101の封止構造の劈開を抑制することができる。
【0084】
上述したように、本技術では、光電変換素子101を収容体3の収容空間ISに固定または封止する場合に、光電変換素子101の入射面a1と、入射面a1とは反対側の裏面a2との拘束構造に有意差をつけることを特徴とする。言い換えれば、本技術では、光電変換素子101を収容空間ISに固定する機能と、光電変換素子101の封止部101eを補強する機能とを、固定層7および被覆部5にそれぞれ分離して担わせている。光電変換素子101の入射面a1および入射面a1とは反対側の裏面a2の双方が、同一の固定部材により収容体3の内側面に強固に固定されていないので、光電変換素子101の封止構造の劈開が抑制される。
【0085】
なお、上述したように、光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1との間に、中空層10を設けることもでき、光電変換素子モジュールに断熱や遮音などの副次的な機能を付与することもできる。収容体3の第2の基材15および第1の基材13をガラス板とした場合には、光電変換素子モジュールを複層ガラスなどのエコガラスとして用いることができる。
【0086】
また、固定層7を形成するための接着剤として、常温硬化型接着剤、およびエネルギー線硬化型接着剤の少なくとも一方を用いた場合には、接着剤の硬化工程において、熱的な負荷を光電変換素子101に与えずに、光電変換素子モジュールを作製することができる。具体的には、光電変換素子101を構成する増感色素28b、電解質層29および封止材27などの、有機物からなる部材に対してそれらの耐熱温度を越える温度を加えることなく、光電変換素子モジュールを作製することができる。したがって、熱による各部材の性能低下、および破壊を防ぐことができる。
【0087】
<2.第2の実施形態>
[光電変換素子モジュールの構成]
図7Aは、本技術の第2の実施形態に係る光電変換素子モジュールの一構成例を示す平面図である。図7Bは、図7AのVII−VII線に沿った断面図である。第2の実施形態において、光電変換素子101の封止部が、被覆部5により覆われ、被覆部5のヤング率が、0MPa以上20MPa以下とされる点は、第1の実施形態と共通している。第2の実施形態では、1以上の光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1との間に固定層7が介在され、光電変換素子101が、固定層7により収容体3の第1の内側面S1に固定される点で、第1の実施形態と異なっている。このとき、固定層7が透明性を有していることが好ましい。
【0088】
このように、本技術においては、固定層7により収容体3の内部に光電変換素子101を固定する場合に、入射面a1と第1の内側面S1との間、または裏面a2と第2の内側面S2との間のいずれに固定層7を形成してもよい。本技術は、光電変換素子101の入射面a1および裏面a2のうち、一方のみを固定層7により固定することを特徴とする。すなわち、本技術は、光電変換素子101の入射面a1および裏面a2をともに一の固定層7により固定しないことが特徴である。
【0089】
[第1の変形例]
図7Cは、本技術の第2の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第1の変形例を示す断面図である。光電変換素子104は、その周縁部のうち裏面a2側に封止部104eを有している。具体的には、透明基材23の周縁部には、対向基材25の方向に向けて突出する側壁部23bが設けられている。そして、この側壁部23bの先端部の内側に対向基材25が配置され、側壁部23bの先端部と対向基材25の端部との間に間隙部104bが形成されている。この間隙部104bには、封止材27が充填されて、封止部104eが形成されている。側壁部23bの材料としては、透明基材23と同様の材料を用いることができる。側壁部23bと透明基材23とは、別成形または一体成形され、生産性の観点からすると、一体成形されていることが好ましい。
【0090】
光電変換素子104の裏面a2は被覆部5に埋設され、したがって、裏面a2の周縁部に設けられた封止部104eは被覆部5により覆われている。図7Cに示す構成例では、光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1との間に被覆部5が介在しないので、被覆部5の材料として不透明なものを用いることもできる。したがって、被覆部5を形成するための材料の選択範囲を広げることができる。
【0091】
[第2の変形例]
図8Aは、本技術の第2の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第2の変形例を示す平面図である。図8Bは、図8AのVIII−VIII線に沿った断面図である。図8Aおよび図8Bに示すように、固定層7を、リブ状としてもよい。図8Aおよび図8Bでは、光電変換素子101の入射面a1の周縁部全体に1つの固定層を連続的に設けた例を示しているが、固定層7の構成はこの例に限定されるものではない。例えば、光電変換素子101の入射面a1の周縁部に、柱状とされた複数の固定層7を断続的に設けるようにしてもよい。なお、図8Aおよび図8Bでは、光電変換素子モジュール41の固定層7を網掛けで示した。
【0092】
光電変換素子モジュール41では、光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1とが、例えば、エネルギー線硬化型接着剤により貼りあわせられる。エネルギー線硬化型接着剤としては、紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。
【0093】
なお、光電変換素子101の入射面a1のうち、発電に寄与する領域に到達する光量の低下を抑制するために、例えばリブ状または柱状とされた固定層7は、光電変換素子101の周縁部に設けられることが好ましい。このとき、例えば、光電変換素子モジュール41の入射面A1上に遮光マスクを配置することにより、光電変換素子101の入射面a1の周縁部に紫外線などのエネルギー線を照射し、エネルギー線硬化型接着剤を硬化させることができる。遮光マスクを用いたエネルギー線照射にかえて、紫外線などのエネルギー線をライン照射するようにしてもよい。
【0094】
例えばリブ状または柱状とされた固定層7が、光電変換素子101の周縁部に設けられる場合には、固定層7の材料として不透明なものを用いることもできる。したがって、固定層7を形成するための接着剤の選択範囲を広げることができる。また、エネルギー線硬化型接着剤にかえて、2液硬化型接着剤を用いるようにしてもよい。さらには、アクリル系樹脂などを主成分とする粘着層を有する両面テープを用いるようにしてもよい。この場合、より簡便に、光電変換素子101を収容体3に対して固定することができる。
【0095】
図8Bでは、光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1との間に被覆部5が介在する構成例を示しているが、光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1との間が、中空層10とされていてもよい。光電変換素子101の入射面a1のうち、発電に寄与する領域を露出させることができるからである。
【0096】
第2の実施形態では、光電変換素子101の封止部が、被覆部5により覆われ、被覆部5のヤング率が、0MPa以上20MPa以下とされるので、第1の実施形態と同様に、光電変換素子101の封止構造の劈開を抑制することができる。
【0097】
<3.第3の実施形態>
[光電変換素子モジュールの構成]
図9Aは、本技術の第3の実施形態に係る光電変換素子モジュールの一構成例を示す断面図である。第3の実施形態において、光電変換素子101の封止部が、被覆部5により覆われ、被覆部5のヤング率が、0MPa以上20MPa以下とされる点は、第1の実施形態と共通している。第3の実施形態では、被覆部5が、第1の実施形態における固定層7の役割を兼ね、1以上の光電変換素子101が、被覆部5により収容体3の内部において支持される点で、第1の実施形態と異なっている。
【0098】
図9Aに示す光電変換素子モジュール51は、収容空間ISの内部に固定層を備えず、1以上の光電変換素子101が、被覆部5により収容体3の内部において支持されている。被覆部5が液体状でない場合などは、図9Aに示すように、光電変換素子101を被覆部5に埋設することにより、光電変換素子101を収容体3の内部において支持することができる。このとき、被覆部5が軟質であるため、被覆部5により、光電変換素子モジュールに加わった外力を緩和することが可能である。したがって、光電変換素子101の封止構造の損傷が抑制される。
【0099】
[第1の変形例]
図9Bは、本技術の第3の実施形態に係る光電変換素子モジュールの第1の変形例を示す断面図である。図9Bに示すように、収容空間ISの内部を被覆部5により充填するようにしてもよい。このとき、光電変換素子101は、被覆部5に埋設されることとなる。第1の変形例に係る光電変換素子モジュール61を、例えば、水平に静置する場合などには、液体状の被覆部5を使用することも可能である。
【0100】
第3の実施形態では、光電変換素子101の封止部が、被覆部5により覆われ、被覆部5のヤング率が、0MPa以上20MPa以下とされるので、第1の実施形態と同様に、光電変換素子101の封止構造の劈開を抑制することができる。
【0101】
<4.第4の実施形態>
図10A〜図10Cは、本技術に係る建築物の例を示す図である。建築物としては、例えば、ビルディング、マンションなどの大型建築物を挙げることができるが、これに限られず、外壁面を有する建築された構造物であれば、基本的にはどのような建築物であってもよい。建築物としては、具体的には、例えば、戸建住宅、アパート、駅舎、校舎、庁舎、競技場、球場、病院、教会、工場、倉庫、小屋、車庫、橋、商店などが挙げられる。
【0102】
図10Aは、光電変換素子モジュール1が設置されたビルディングの一例を示す図である。図10Aに示すように、ビルディング91の屋上には、例えば、第1の実施形態に係る光電変換素子モジュール1が、水平に、または、例えば南東〜南西向き(ビルディング91が北半球に建築される場合)に傾けられて設置されている。光電変換素子モジュール1をこのような向きに設置することで、より効果的に太陽光Rを受光することができるからである。
【0103】
図10Aに示すように、光電変換素子モジュール1が、窓部などの採光部に設けられてもよい。窓部、採光部などに光電変換素子モジュール1が設けられる場合には、光電変換素子および/または光電変換素子モジュールが、2枚の透明な基材の間に配置されることが好ましい。透明な基材としては、例えば、ガラス板を挙げることができる。このとき、光電変換素子モジュール1の内部で光電変換素子が移動することを防止するため、必要に応じて、光電変換素子が、2枚の基材のうちの一方に固定されることが好ましい。
【0104】
光電変換素子モジュール1は、例えば、建築物内の電力系統との電気的接続を有する。光電変換素子モジュール1により得られた電力は、例えば、照明や空調など、建築物内で使用される電力として供給されたり、売電のために外部に送出されたりする。必要に応じて、蓄電装置に蓄電されてもよい。建築物が、例えば、橋などの構造物である場合、光電変換素子モジュール1により得られた電力を外部へ取り出すための出力用のソケットなどを備えることが好ましい。光電変換素子モジュール1により得られた電力を、モバイル機器への充電や、災害時などの緊急用電源として利用することができるからである。
【0105】
図10Bは、光電変換素子モジュール1が設置された住宅の一例を示す図である。図10Bに示すように、住宅93の屋根には、例えば、第1の実施形態に係る光電変換素子モジュール1が、水平に、または、傾けられて設置される。
【0106】
図10Cは、駐輪場に設置された、光電変換素子モジュール1を備える雨除けの一例を示す図である。図10Cに示すように、駐輪場に設置された雨除け95には、例えば、第1の実施形態に係る光電変換素子モジュール1が配設される。雨除け95が、電動自転車などの充電スタンドの機能を備えていてもよい。
【0107】
建築物としては、そのほかにも、例えば、道路や線路などとともに設置される防音壁や、アーケードの屋根などを挙げることができる。建築物としては、少なくとも一つの採光部を有する建築された構造物であることが特に好ましい。人工木陰と呼ばれる、日除けのための構造物に本技術を適用することもできる。
【0108】
以上、本技術の実施形態について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0109】
例えば、光電変換素子101の入射面a1と、収容体3の第1の内側面S1との間に、支持体として複数の光拡散性を有する微粒子(ビーズ)を配置してもよい。これにより、光電変換素子モジュールの入射面に対して斜め方向から入射する太陽光などの入射光Lを、微粒子により拡散させ、光電変換素子の方向に向けさせることができる。したがって、光の利用効率を向上することができる。
【0110】
また、例えば、収容体が、波長選択吸収機能、波長選択反射機能、防汚機能、反射防止機能、拡散機能、およびハードコート機能などからなる群より選ばれる1種以上の機能を備えるようにしてもよい。具体的には、例えば、収容体の表面に上記機能を付与する構成としては、収容体の表面に機能層を形成する構成や、収容体の表面に機能性構造体(微細構造体)を形成する構成が挙げられる。収容体の内部に上記機能を付与する構成としては、収容体の内部に機能性材料および機能性構造体(微細構造体)の少なくとも一方を含ませる構成が挙げられる。
【0111】
例えば、収容体の第1の内側面S1、第2の内側面S2、入射面A1および裏面A2のうちの少なくとも1つの表面に機能層を設けてもよい。機能層としては、例えば、波長選択吸収層、波長選択反射層、防汚層、反射防止層、拡散層、およびハードコート層などからなる群より選ばれる1種以上の層を用いることができる。波長選択吸収層としては、紫外線吸収層(UVカット層)、熱線吸収層(日射遮蔽機能層)が好ましい。波長選択反射層としては、紫外線反射層(UVカット層)、熱線反射層(日射遮蔽機能層)が好ましい。防汚層としては、撥水機能、撥油機能、自己洗浄(self-cleaning)機能を単独または2以上併せ持つものが好ましく、例えば、光触媒層、フッ素樹脂層が挙げられる。機能層として熱線吸収層または熱線反射層を用いることにより、光電変換素子モジュールをエコガラスなどの窓材として適用することもできる。
【0112】
また、例えば、収容体の表面に、機能性構造体を設けてもよい。機能性構造体としては、入射光Lを拡散するための微細構造体(拡散要素)、入射光Lの反射率の低減および/または透過率の向上をするための微細構造体(サブ波長構造体)が挙げられる。
【0113】
また、例えば、収容体の内部に機能性材料または機能性構造体を設けるようにしてもよい。例えば、機能性材料として、微粒子を収容体内部に添加してもよい。
【0114】
機能性材料または機能性構造体は、例えば、収容体の第1の基材および第2の基材の少なくとも一方の内部に設けることができる。機能性材料としては、例えば、光を拡散するための光拡散性微粒子、収容体の表面に防汚性を付与するためのフッ素樹脂材料、光触媒などが挙げられる。機能性構造体としては、例えば、光を拡散するためのボイド(空洞部)などが挙げられる。
【0115】
また、上述の実施形態では、光電変換素子として色素増感型光電変換素子を用いる場合を例として説明したが、光電変換素子はこの例に限定されるものではなく、例えば、アモルファス型光電変換素子、化合物半導体型光電変換素子、薄膜多結晶型光電変換素子を用いるようにしてもよい。
【0116】
また、上述の実施形態では、透明基材と対向基材との周縁部間に設けられた間隙部を封止材により封止する構成を例として説明したが、封止材にかえて、間隙部に被覆部を充填し、被覆部により間隙部を封止するようにしてもよい。
【0117】
また、上述の実施形態において、収容体の入射面A1側および裏面A2側の少なくとも一方に、1または複数の基材をさらに備えるようにしてもよい。この際、基材と収容体の入射面A1および裏面A2との間を離間させて中空層を形成するようにしてもよい。基材としては、例えば、第1の実施形態における基材と同様のものを用いることができる。
【0118】
なお、光電変換素子モジュールに加わった外力が光電変換素子の透明基材および対向基材の両方に直接的に伝わることを防止する観点からは、光電変換素子の透明基材および対向基材のうち、一方のみが、収容体の内側面に固定されていればよい。
【0119】
図11Aは、光電変換素子の対向基材のみが、固定層により収容体の内側面に固定された構成例を示す断面図である。図11Bは、光電変換素子の透明基材のみが、固定層により収容体の内側面に固定された構成例を示す断面図である。図11Aに示す光電変換素子モジュール71では、光電変換素子101の裏面a2と収容体3の第2の内側面S2との間に固定層7が介在され、複数の光電変換素子101が、固定層7により収容体3の第2の内側面S2に固定されている。図11Bに示す光電変換素子モジュール81では、光電変換素子101の入射面a1と収容体3の第1の内側面S1との間に固定層7が介在され、複数の光電変換素子101が、固定層7により収容体3の第1の内側面S1に固定されている。
【0120】
図11Aおよび図11Bに示すように、光電変換素子101の封止部を開放とし、光電変換素子モジュールに加わった外力が光電変換素子の透明基材および対向基材の両方に直接的に伝わることを防止するようにしてもよい。
【0121】
また、例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0122】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0123】
なお、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
(1)
第1の基材と、
第2の基材と、
光入射面および封止部を有し、上記第1の基材と上記第2の基材との間に配置される少なくとも1個の光電変換素子と、
上記光入射面および上記光入射面とは反対側の主面のうちの一方の面と、上記第1の基材の一主面および上記第2の基材の一主面のうち、上記一方の面と対向する一主面とを固定する固定層と、
上記封止部を覆う被覆部と
を備え、
上記被覆部のヤング率は、0MPa以上20MPa以下である光電変換素子モジュール。
(2)
上記被覆部は、シリコン系樹脂、変性シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、変性ポリサルファイド系樹脂、テレケリックポリアクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリロニトリル、炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン系樹脂、ポリビニルエーテル、合成ゴムおよび天然ゴムからなる群より選ばれる1種以上を含む(1)記載の光電変換素子モジュール。
(3)
上記光入射面と、上記第1の基材および上記第2の基材のうちの一方との間に中空層をさらに備える(1)または(2)記載の光電変換素子モジュール。
(4)
上記光入射面と、上記第1の基材および上記第2の基材のうちの一方とが密着されている(1)または(2)記載の光電変換素子モジュール。
(5)
上記光入射面とは反対側の主面と、上記第1の基材および上記第2の基材のうちの一方との間に中空層をさらに備える(1)または(2)記載の光電変換素子モジュール。
(6)
上記固定層は、上記光入射面または上記光入射面とは反対側の主面の少なくとも一部に形成される(1)ないし(5)のいずれか記載の光電変換素子モジュール。
(7)
上記固定層は、リブ状または柱状に形成される(6)記載の光電変換素子モジュール。
(8)
上記被覆部は、上記固定層の表面から、上記光入射面までの高さをもって形成される(1)ないし(7)のいずれか記載の光電変換素子モジュール。
(9)
上記被覆部は、上記第1の基材の一主面および上記第2の基材の一主面のうち、上記一方の面と対向する一主面から、上記光入射面までの高さをもって形成される(1)ないし(7)のいずれか記載の光電変換素子モジュール。
(10)
上記少なくとも1個の光電変換素子は、
透明基材と、
対向基材と、
発電要素部と
を備え、
上記封止部は、上記透明基材と上記対向基材との周縁部間に設けられている(1)ないし(9)のいずれか記載の光電変換素子モジュール。
(11)
上記少なくとも1個の光電変換素子は、上記光入射面および上記光入射面とは反対側の主面の周縁部間に設けられた側面を有し、
上記封止部は、上記光入射面の周縁部、上記光入射面とは反対側の主面の周縁部または上記側面に設けられている(1)ないし(10)のいずれか記載の光電変換素子モジュール。
(12)
上記第1の基材および上記第2の基材の周縁部間に設けられた封止材をさらに備える(1)ないし(11)のいずれか記載の光電変換素子モジュール。
(13)
上記第1の基材は、第1のガラス板であり、
上記第2の基材は、第2のガラス板である(1)ないし(12)のいずれか記載の光電変換素子モジュール。
(14)
上記第1の基材および上記第2の基材の周縁部間に設けられた遮蔽材をさらに備える(12)または(13)記載の光電変換素子モジュール。
(15)
上記固定層は、熱可塑性接着剤、熱硬化型接着剤、常温硬化型接着剤、およびエネルギー線硬化型接着剤からなる群より選ばれる1種以上を含んでいる(1)ないし(14)のいずれか記載の光電変換素子モジュール。
(16)
上記エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線硬化型接着剤である(15)記載の光電変換素子モジュール。
(17)
(1)ないし(16)のいずれか記載の光電変換素子モジュールを備える建築物。
【実施例】
【0124】
サンプル1〜サンプル7の光電変換素子モジュールを作製して加速劣化試験を行い、光電変換素子モジュールにおける、光電変換素子の封止構造の損傷の有無について評価を行った。以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0125】
<サンプル1>
まず、透明電極および多孔質半導体層が形成された透明基材と、対向電極が形成された対向基材と、封止材とによって囲まれた空間に電解質層が封入された光電変換素子を準備した。なお、透明基板および対向基板としては、ガラス板を使用し、封止材としては、紫外線硬化型接着剤を使用した。
【0126】
次に、一主面の周縁部に遮蔽材が形成された、ガラス基板からなる基材を準備した。次に、遮蔽材により囲まれた空間に、液状または溶融状態にあるエチレンビニルアセテートを流し込み、エチレンビニルアセテートを主成分とする接着剤層を形成した。次に、1個の光電変換素子を接着剤層に貼りつけ、接着剤層に硬化処理を施し、エチレンビニルアセテートからなる固定層を形成するとともに、基材の一主面(第2の内側面)に光電変換素子を固定した。
【0127】
次に、光電変換素子の側面の封止部が覆われるまで、遮蔽材により囲まれた空間に、液状または溶融状態にあるエチレンビニルアセテートをさらに流し込んだ。次に、液状または溶融状態にあるエチレンビニルアセテートに硬化処理を施し、エチレンビニルアセテートからなる被覆部を形成した。
【0128】
次に、光電変換素子が固定された基材と、他のガラス基板とを、これらの周縁部に設けられた封止材を介して貼り合わせた。以上の工程により、サンプル1の光電変換素子モジュールを得た。
【0129】
<サンプル2>
固定層を形成せず、エチレンビニルアセテートからなる被覆部により、基材の一主面に光電変換素子を固定したこと以外はサンプル1の場合と同様にして、サンプル2の光電変換素子モジュールを得た。すなわち、サンプル2では、遮蔽材により囲まれた空間に、1個の光電変換素子を配置した上で、光電変換素子の側面の封止部が覆われるまで、液状または溶融状態にあるエチレンビニルアセテートを流し込み、硬化処理を施すことにより、被覆部を形成した。
【0130】
<サンプル3>
エチレンビニルアセテートにかえて、固定層および被覆部の形成にエポキシ樹脂を使用したこと以外はサンプル1の場合と同様にして、サンプル3の光電変換素子モジュールを得た。
【0131】
<サンプル4>
エチレンビニルアセテートにかえて、被覆部の形成にエポキシ樹脂を使用したこと以外はサンプル2の場合と同様にして、サンプル4の光電変換素子モジュールを得た。
【0132】
<サンプル5>
エチレンビニルアセテートにかえて、被覆部の形成にアクリル樹脂を使用したこと以外はサンプル2の場合と同様にして、サンプル5の光電変換素子モジュールを得た。
【0133】
<サンプル6>
エチレンビニルアセテートにかえて、固定層の形成にアクリル樹脂を使用し、被覆部の形成にシリコンゲルを使用したこと以外はサンプル1の場合と同様にして、サンプル6の光電変換素子モジュールを得た。
【0134】
<サンプル7>
被覆部を形成せず、アクリル樹脂からなる固定層により、基材の一主面に光電変換素子を固定したこと以外はサンプル1の場合と同様にして、サンプル7の光電変換素子モジュールを得た。すなわち、サンプル7では、遮蔽材により囲まれた空間に、液状または溶融状態にあるアクリル樹脂を流し込み、アクリル樹脂を主成分とする接着剤層を形成した。次に、1個の光電変換素子を接着剤層に貼りつけ、接着剤層に硬化処理を施し、アクリル樹脂からなる固定層を形成するとともに、基材の一主面(第2の内側面)に光電変換素子を固定した。
【0135】
次に、サンプル1およびサンプル2の光電変換素子モジュールを30分程度、140℃の温度条件下にさらした。また、サンプル3〜サンプル7の光電変換素子モジュールを100時間程度、温度85℃、湿度85%の環境下にさらした。
【0136】
下記の表1に、サンプル1〜サンプル7に関する、光電変換素子の封止構造の損傷の有無についての評価結果を示す。なお、表1中の評価結果欄における「○」印および「×」印は、以下の評価内容を示す。
○:光電変換素子から電解質の漏出が観察されなかった。
×:光電変換素子から電解質の漏出が観察された。
【0137】
【表1】

【0138】
表1より以下のことがわかった。
【0139】
サンプル1〜サンプル5の評価結果から、光電変換素子の封止部を強固に補強してしまうと、光電変換素子モジュールが高温高湿下におかれた場合に、光電変換素子の封止構造が損傷することがわかった。これは、光電変換素子の封止部を強固に補強すると、樹脂材料の吸湿や熱膨張による応力を被覆部が吸収しきれず、光電変換素子の封止部に力が集中してしまうためと推測される。一方、サンプル6の評価結果から、被覆部の材料として、低ヤング率のシリコンゲルを使用した場合には、光電変換素子の封止構造の損傷は確認されなかった。すなわち、被覆部の材料として、低ヤング率の材料を使用することにより、光電変換素子の封止部への力の集中を回避できることがわかった。これは、樹脂材料の吸湿や熱膨張による応力を被覆部が緩衝したためと推測される。なお、サンプル7の評価結果から、光電変換素子の封止部を開放しておくことによっても、光電変換素子の封止部への力の集中を回避できることもわかった。
【0140】
以上説明したように、本技術によれば、色素増感型太陽電池の封止構造の損傷が抑制された光電変換素子モジュールおよび建築物を提供することができる。
【符号の説明】
【0141】
1、11、21、31、41、51、61 光電変換素子モジュール
3 収容体
5 被覆部
7 固定層
10 中空層
13 第1の基材
15 第2の基材
17 封止材
19 遮蔽材
23 透明基材
25 対向基材
27 封止材
91 ビルディング
93 住宅
95 雨除け
101 光電変換素子
101e 封止部
109 配線
IS 収容空間
A1、a1 入射面
A2、a2 裏面
S1 第1の内側面
S2 第2の内側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材と、
第2の基材と、
光入射面および封止部を有し、上記第1の基材と上記第2の基材との間に配置される少なくとも1個の光電変換素子と、
上記光入射面および上記光入射面とは反対側の主面のうちの一方の面と、上記第1の基材の一主面および上記第2の基材の一主面のうち、上記一方の面と対向する一主面とを固定する固定層と、
上記封止部を覆う被覆部と
を備え、
上記被覆部のヤング率は、0MPa以上20MPa以下である光電変換素子モジュール。
【請求項2】
上記固定層は、上記光入射面または上記光入射面とは反対側の主面の少なくとも一部に形成される請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項3】
上記固定層は、リブ状または柱状に形成される請求項2記載の光電変換素子モジュール。
【請求項4】
上記被覆部は、上記固定層の表面から、上記光入射面までの高さをもって形成される請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項5】
上記被覆部は、上記第1の基材の一主面および上記第2の基材の一主面のうち、上記一方の面と対向する一主面から、上記光入射面までの高さをもって形成される請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項6】
上記被覆部は、シリコン系樹脂、変性シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、変性ポリサルファイド系樹脂、テレケリックポリアクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリロニトリル、炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン系樹脂、ポリビニルエーテル、合成ゴムおよび天然ゴムからなる群より選ばれる1種以上を含む請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項7】
上記光入射面と、上記第1の基材および上記第2の基材のうちの一方との間に中空層をさらに備える請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項8】
上記光入射面と、上記第1の基材および上記第2の基材のうちの一方とが密着されている請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項9】
上記光入射面とは反対側の主面と、上記第1の基材および上記第2の基材のうちの一方との間に中空層をさらに備える請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項10】
上記少なくとも1個の光電変換素子は、
透明基材と、
対向基材と、
発電要素部と
を備え、
上記封止部は、上記透明基材と上記対向基材との周縁部間に設けられている請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項11】
上記少なくとも1個の光電変換素子は、上記光入射面および上記光入射面とは反対側の主面の周縁部間に設けられた側面を有し、
上記封止部は、上記光入射面の周縁部、上記光入射面とは反対側の主面の周縁部または上記側面に設けられている請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項12】
上記第1の基材および上記第2の基材の周縁部間に設けられた封止材をさらに備える請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項13】
上記第1の基材は、第1のガラス板であり、
上記第2の基材は、第2のガラス板である請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項14】
上記第1の基材および上記第2の基材の周縁部間に設けられた遮蔽材をさらに備える請求項12記載の光電変換素子モジュール。
【請求項15】
上記固定層は、熱可塑性接着剤、熱硬化型接着剤、常温硬化型接着剤、およびエネルギー線硬化型接着剤からなる群より選ばれる1種以上を含んでいる請求項1記載の光電変換素子モジュール。
【請求項16】
上記エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線硬化型接着剤である請求項15記載の光電変換素子モジュール。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか記載の光電変換素子モジュールを備える建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−26030(P2013−26030A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159793(P2011−159793)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】