説明

光電変換素子及びこれを用いた光電気化学電池

【課題】 高い光電変換効率と耐久性を有する光電変換素子及びこれを用いた電気化学電池を提供する。
【解決手段】 第1電極層、第1光電変換層、導電層、第2光電変換層、第2電極層を順次に積層した構造を有し、該第1及び第2光電変換層はそれぞれ異なる色素と、半導体とを含有し、該光電変換層に含まれる色素の少なくとも一つが下記一般式(I)で表される色素であることを特徴とする光電変換素子及びこれを用いた電気化学電池。
M(LLm1(LLm2(X)m3・CI 一般式(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及びこれを用いた光電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。中でも、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵なクリーンエネルギーを利用したものとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。この中でも、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められてきた。各国の政策的な配慮もあって普及が進んでいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループット及び分子修飾には自ずと限界がある。
【0003】
そこで色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。とくに、スイスのローザンヌ工科大学のGraetzel等がポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した色素増感型太陽電池を開発し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現した。これにより、色素増感型太陽電池が一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
【0004】
特に我が国はエネルギー資源に乏しく、かつ二酸化炭素の排出規制の観点からも、太陽電池の研究開発については各方面で積極的に取り組まれてきた。現在の主流はシリコン(Si)系のものであるが、上述したスループット等の観点からこれに代替する技術に大きな注目が集まっている。特に、有機系の太陽電池は軽量かつ低コストを実現し、かつ環境適合性に優れることが期待される。
しかしながら、有機系の太陽電池では、用いられる色素の光吸収範囲が限定され、可視から近赤外領域の太陽光を有効に吸収することができないため、シリコン系太陽電池のように高変換効率が得られにくい。例えば、有機系の太陽電池において、変換効率を向上させるために2層の光電変換層を設けることが提案されている(特許公報1参照)。しかし耐久性の点に関しては具体的な開示がなく不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−100483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、金属錯体系色素を増感色素として用い、高い光電変換効率を実現し、その上でさらに耐久性をも高めることができる光電変換素子及び光電気化学電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
【0008】
<1>第1電極層、第1光電変換層、導電層、第2光電変換層、第2電極層を順次に積層した構造を有し、該第1及び第2光電変換層はそれぞれ異なる色素と、半導体とを含有し、該光電変換層に含まれる色素の少なくとも一つが下記一般式(I)で表される色素であることを特徴とする光電変換素子。

M(LLm1(LLm2(X)m3・CI 一般式(I)

[一般式(I)において、Mは金属原子を表し、LLは下記一般式(II)で表される2座又は3座の配位子であり、LLは下記一般式(III)で表される2座又は3座の配位子である。
Xはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する1座又は2座の配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミドまたはチオ尿素からなる1座または2座の配位子を表す。
m1は1〜3の整数を表し、m1が2以上のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。m2は0〜3の整数を表し、m2が2のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。
m3は0〜2の整数を表し、m3が2のとき、Xは同じでも異なっていてもよく、X同士が連結していてもよい。
CIは一般式(I)において、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化1】

[一般式(II)において、RおよびRはそれぞれ独立に、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表し、RおよびRはそれぞれ独立にアリール基、ヘテロ環基、又はこれらの基を含む置換基を表す。
およびLはそれぞれ独立に、エテニレン基、エチニレン基及び/又はアリーレン基からなる共役鎖を表す。
a1およびa2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、a1が2以上のときRは同じでも異なっていてもよく、a2が2以上のときRは同じでも異なっていてもよい。b1及びb2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、b1が2以上のときRは同じでも異なっていてもよく、Rは互いに連結して環を形成してもよく、b2が2以上のときRは同じでも異なっていてもよく、Rは互いに連結して環を形成してもよい。b1及びb2が共に1以上のときRとRが連結して環を形成してもよい。
nは0または1を表す。]
【化2】

[一般式(III)において、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。cは0又は1を表す。]
<2>前記一般式(I)において、MがRu、Fe、OsまたはCuであることを特徴とする<1>記載の光電変換素子。
<3>前記一般式(I)において、MがRuであることを特徴とする<1>又は<2>記載の光電変換素子。
<4>前記色素は、各光電変換層毎に最大吸収波長が異なるものであることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の光電変換素子。
<5>前記半導体が多孔質半導体であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の光電変換素子。
<6>前記第1光電変換層及び第2光電変換層中の半導体材料は、一方にp型半導体を用い、他方にn型半導体を用いることを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載の光電変換素子。
<7>前記導電層は、イオン導電体であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の光電変換素子。
<8>前記イオン導電体に、酸化還元種を含有することを特徴とする<7>に記載の光電変換素子。
<9>最大吸収波長の短い色素を含有する光電変換層側の電極層を透明電極として、受光面とすることを特徴とする<1>〜<8>のいずれかに記載の光電変換素子。
<10><1>〜<9>のいずれかに記載の光電変換素子を用いることを特徴とする光電気化学電池。
<11>前記第1又は第2電極層を形成した基板上に、前記半導体の層を形成し、次いで、該半導体に色素を吸着することにより前記第1又は第2光電変換層をそれぞれ別々に形成し、該第1光電変換層上に該第2光電変換層を位置させて、両者の間に前記導電層を形成することを特徴とする<1>〜<9>のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
<12>前記導電層は、液体電解質であることを特徴とする<11>記載の光電変換素子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光電変換素子及びこれを用いた光電気化学電池は、金属錯体化合物からなる色素を用い、高い光電変換効率を実現し、その上でさらに耐久性をも高めるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明により形成された光電変換素子を模式的に示す図である。
【図2】図1における第1光電変換層及び第2光電変換層を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光電変換素子は、第1電極、第1光電変換層、導電層、第2光電変換層、第2電極を順次に積層してなるものである。光電変換層は色素と半導体とを含んでなり、第1光電変換層と第2光電変換層とは、それぞれ異なる色素を含有する。該光電変換層に含まれる色素のうち、少なくとも一つは下記一般式(I)で表される色素である。互いに構造が異なるのであれば、第1光電変換層及び第2光電変換層がともに下記一般式(I)で表される色素を含有してもよい。光電変換層の少なくとも一方に下記一般式(I)で表される色素を含むことで、高い光電変換効率と耐久性とを兼ね備えた素子が得られる。
一般式(I)で表される金属錯体系色素は、これを光電変換素子に組み込んで用いたときに、増感色素として機能し、その配位子LLとLLとが特有の相互作用を示し、光電変換効率と耐久性との両立を実現する。その詳細な原理は未解明の点を含むが、以下のように推定される。まず上記配位子LLはエチニレン基等の不飽和結合をもちジピリジンリガンドと共に長く延びた共役系を形成している。これにより吸収領域が長波長側へ拡大し、高い長波長吸収効率(分子吸光係数ε)を示すものと考えられる。一方、配位子LLは半導体微粒子との強固な配向吸着状態を実現している。さらに、この吸着基側の配位子LLは、他方の配位子LLとの組合せによって初めて奏する効果的な電子注入効率の向上を実現しているものと考えられる。逆に配位子LLは配位子LLの吸着状態を保護し、つまりこれが剥離する原因となる水や色素を分解する求核種などの攻撃を受けにくくする効果があり、単なる吸着力の向上だけでは実現困難な程度にまで耐久性が高まることにつながったと推定される。すなわち、両配位子が相互補完的に機能して本発明の効果が達成されたものと考えられる。
このように一般式(I)で表される色素は、吸収領域が広く、高い長波長吸収効率を備え、且つ耐久性に優れるため、高エネルギーの可視域入射光の多くを吸収しうる。光電変換層の少なくとも一方に一般式(I)で表される色素を用いることで、該色素と併用される色素や部材への負担が軽減し、それらの耐久性が向上する。結果として、光電変換素子の耐久性が向上すると考えられる。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0012】
[色素]
本発明の光電変換素子は2つの光電変換層に異なる色素を含有し、当該色素のうち少なくとも1つは下記一般式(I)で表される色素である。以下、一般式(I)で表される色素について説明する。

M(LLm1(LLm2(X)m3・CI ・・・一般式(I)
【0013】
(A)金属原子M
Mは金属原子を表す。Mは好ましくは4配位または6配位が可能な金属であり、より好ましくはRu、Fe、Os、Cu、W、Cr、Mo、Ni、Pd、Pt、Co、Ir、Rh、Re、MnまたはZnであり、特に好ましくはRu、Fe、OsまたはCuであり、最も好ましくはRuである。
【0014】
(B)配位子LL
配位子LLは、下記一般式(II)で表される2座または3座の配位子であり、好ましくは2座配位子である。配位子LLの数を表すm1は1〜3の整数であり、1または2であるのが好ましく、1であるのがより好ましい。m1が2以上のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(II)中、RおよびRはそれぞれ独立にカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えば―CONHOH、―CONCHOH等)、ホスホリル基(例えば―OP(O)(OH)等)およびホスホニル基(例えば―P(O)(OH)等)のいずれかを表し、好ましくはカルボキシル基、ホスホリル基またはホスホニル基であり、より好ましくはカルボキシル基またはホスホニル基であり、最も好ましくはカルボキシル基である。RおよびRはピリジン環上のどの炭素原子に置換してもよい。
【0017】
一般式(II)中、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくはアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基である。以下、これらを置換基Wともいう。置換基Wは、さらに置換基W等により置換されていてもよい。
【0018】
配位子LLがアルキル基、アルケニル基等を含むとき、それらは直鎖状でも分岐状でもよく置換されていても無置換でもよい。また配位子LLがアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく置換されていても無置換でもよい。
【0019】
一般式(II)中、R及びRはそれぞれ独立にアリール基、ヘテロ環基、又はアリール基及び/又はヘテロ環基を含む置換基を表し、これらの基は置換されていてもよい。アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。ヘテロ環基としては、炭素原子数1〜30のヘテロ環基が好ましく、ヘテロ原子として硫黄原子又は窒素原子を含むものがより好ましく、例えば、チエニル基、ベンゾジチエニル基、チエノチエニル基、ジエチノチエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、インドリル基が挙げられる。より好ましくは、フェニル基、チエニル基、ベンゾジチエニル基、チエノチエニル基、ジエチノチエニル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基(特に好ましくは2−チエニル基)である。
及びRにおいて、アリール基又はヘテロ環基は置換基を有していてもよく、これらの置換基とともに縮合環を形成してもよい。置換基としては前述の置換基Wやカルボキシル基が挙げられる。
特に、R及びRにおいて、アリール基又はヘテロ環基は1〜3個の電子供与基を有することが好ましい。該電子供与基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基(以上好ましい例はRおよびRの場合と同様)またはヒドロキシル基であるのが好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基またはヒドロキシル基であるのがより好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基であるのがさらに好ましい。これらの基のなかで、特に脂肪族基は炭素原子数5以上であることが好ましい。炭素原子数5以上の脂肪族基を有することで疎水化され、水の接近を防ぐことができるため、色素の耐久性が向上する。また、電子供与基は4位に置換するのが好ましい。該電子供与基は、さらに置換基W等で置換されていてもよい。
とRは同じであっても異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。
【0020】
一般式(II)中、LおよびLはそれぞれ独立にエテニレン基、エチニレン基及び/又はアリーレン基からなる共役鎖を表す。エテニレン基及びアリーレン基は置換されていてもよい。エテニレン基及びアリーレン基が置換基を有する場合、該置換基はアルキル基であるのが好ましく、メチル基であるのがより好ましい。
エテニレン基又はエチニレン基からなる共役鎖としては、炭素原子数2〜6個の共役鎖であるのが好ましく、エテニレン、ブタジエニレン、エチニレン、ブタジイニレン、メチルエテニレン、ジメチルエテニレンであるのがより好ましく、エテニレン、エチニレン、又はブタジエニレンがさらに好ましく、エテニレン、エチニレンが特に好ましい。。アリーレン基からなる共役鎖としては、炭素原子数6〜24個のアリーレンが好ましく、フェニレン、ナフチレンがより好ましく、フェニレンがより好ましい。LおよびLはそれぞれ独立に、エテニレン、エチニレン又はフェニレンであることが好ましい。LとLは同じであっても異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。なお、共役鎖が炭素―炭素二重結合を含む場合、各二重結合はトランス体であってもシス体であってもよく、それらの混合物であってもよい。
及びLはそれぞれが結合しているピリジン環と共役している。LとLがこのような共役鎖であることにより、長波長化による光吸収領域の拡大効果を得ることができる。
【0021】
一般式(II)中、nは0または1であり、a1およびa2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。a1が2以上のときRは同じでも異なっていてもよく、a2が2以上のときRは同じでも異なっていてもよい。a1は0または1であるのが好ましく、a2は0〜2の整数であるのが好ましい。特に、nが0のときa2は1または2であるのが好ましく、nが1のときa2は0または1であるのが好ましい。a1とa2の和は0〜2の整数であるのが好ましい。
【0022】
一般式(II)中、b1およびb2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、0〜2の整数であるのが好ましい。b1が2以上のとき、Rは同じでも異なっていてもよく互いに連結して環を形成してもよい。b2が2以上のとき、Rは同じでも異なっていてもよく互いに連結して環を形成してもよい。またb1およびb2が共に1以上のとき、RとRが連結して環を形成してもよい。形成する環の好ましい例としてはベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。
【0023】
一般式(II)中、a1とa2の和が1以上のとき、すなわち配位子LLがカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基およびホスホニル基のいずれかを少なくとも1個有するときは、一般式(I)中のm1は2または3であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。
【0024】
配位子LLは、下記一般式(IV−1)〜(IV−4)で表されるものであることが好ましく、下記一般式(IV−3)及び(IV−4)で表されるものであることがより好ましく、下記一般式(IV−4)で表されるものであることがさらに好ましい。下記一般式(IV−1)〜(IV−4)中、R〜R、L及びL、a1、a2、b1、b2およびnは前記一般式(II)中のものと同義である。
【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
一般式(IV−1)〜(IV−4)中、L及びLはそれぞれ独立に前記一般式(II)中のものと同義である。特に、一般式(IV−4)においてL及びLは、それぞれ独立にエチニレン又はフェニレンであることが好ましい。
【0028】
一般式(IV−2)中、Rはカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基およびホスホニル基のいずれかを表し、好ましくはカルボキシル基またはホスホリル基であり、より好ましくはカルボキシル基である。
【0029】
一般式(IV−2)中、Rは置換基を表し、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはアシルアミノ基(以上好ましい例は上記RおよびRの場合と同様)であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはアシルアミノ基である。
【0030】
一般式(IV−2)中、a3は0〜3の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。nが0のときa3は1または2であるのが好ましく、nが1のときa3は0または1であるのが好ましい。a3が2以上のときRは同じでも異なっていてもよい。
【0031】
一般式(IV−2)中、b3は0〜5の整数を表し、好ましくは0〜3の整数を表す。nが0のときb3は1〜3の整数であるのが好ましい。b3が2以上のときRは同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。一般式(IV−2)中のb1およびb3が共に1以上のときRとRが連結して環を形成してもよい。形成される環としてはベンゼン環、シクロペンタン環およびシクロヘキサン環が好ましい。
【0032】
一般式(IV−1)〜(IV−2)中、R11〜R14はそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基またはアリール基(以上好ましい例は上記RおよびRの場合と同様)を表し、好ましくはアルキル基またはアリール基を表し、より好ましくはアルキル基を表す。また、色素の耐久性向上の点から、アルキル基及びアルケニル基は炭素原子数5以上であることが好ましい。R11〜R14がアルキル基である場合はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルコキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基またはカルボンアミド基が好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。R11とR12ならびにR13とR14はそれぞれ互いに連結して環を形成してもよく、形成する環としてはピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等が好ましい。
【0033】
一般式(IV−1)〜(IV−3)中、R15およびR16はそれぞれ独立に置換基を表し置換基としては前述の置換基Wが挙げられる。置換基として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基(以上好ましい例は上記RおよびRの場合と同様)またはヒドロキシル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基またはアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基又はアルコキシ基である。また、色素の耐久性向上の点から、上記脂肪族基は炭素原子数5以上であることが好ましい。これらの基は、置換基Wでさらに置換されていてもよい。
【0034】
一般式(IV−1)〜(IV−3)中、d1およびd2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。d1が1以上のときR15はR11および/またはR12と連結して環を形成してもよく、形成される環はピペリジン環またはピロリジン環であるのが好ましい。d1が2以上のときR15は同じでも異なっていてもよく互いに連結して環を形成してもよい。d2が1以上のときR16はR13および/またはR14と連結して環を形成してもよく、形成される環はピペリジン環またはピロリジン環であるのが好ましい。d2が2以上のときR16は同じでも異なっていてもよく互いに連結して環を形成してもよい。
【0035】
一般式(IV−4)中、R17およびR18はそれぞれ独立に置換基を表し、置換基としては前述の置換基W、カルボキシル基等が挙げられる。置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、カルボキシル基(以上好ましい例は上記RおよびRの場合と同様)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はアシルアミノ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルキニル基、又はアルコキシ基である。また、色素の耐久性向上の点から、上記脂肪族基は炭素原子数5以上であることが好ましい。これらの基は、置換基W等でさらに置換されていてもよい。
また、R17およびR18はチエニル基と結合して環を形成していることも好ましい。R17、R18により形成される環の好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ジオキサン環等が挙げられる。
【0036】
一般式(IV−4)中、R19およびR20はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、置換基としては前述の置換基W、カルボキシル基等が挙げられる。R19およびR20として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、カルボキシル基(以上好ましい例は上記RおよびRの場合と同様)であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、又はアシルアミノ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルキニル基、又はアルコキシ基である。また、色素の耐久性向上の点から、上記脂肪族基は、炭素原子数5以上であることが好ましい。これらの基は、置換基W等でさらに置換されていてもよい。
【0037】
一般式(IV−4)中、d3およびd4はそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。d3が2のときR17は同じでも異なっていてもよく互いに連結して環を形成してもよい。形成する環の好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ジオキサン環等が挙げられる。d4が2のときR18は同じでも異なっていてもよく互いに連結して環を形成してもよい。形成する環の好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ジオキサン環等が挙げられる。
【0038】
一般式(IV−4)中、n1およびn2はそれぞれ独立に1〜2の整数を表す。
【0039】
配位子LLの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
【化19】

【0054】
【化20】

【0055】
【化21】

【0056】
【化22】

【0057】
【化23】

【0058】
【化24】

【0059】
【化25】

【0060】
【化26】

【0061】
【化27】

【0062】
【化28】

【0063】
【化29】

【0064】
上記配位子B−1〜B−15において、Ra及びRbはそれぞれ下記表1〜3に示す基を表す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
(C)配位子LL
一般式(I)中、LLは下記一般式(III)で表される2座または3座の配位子を表す。配位子LLの数を表すm2は0〜2の整数であり、0または1であるのが好ましい。m2が2のときLLは同じでも異なっていてもよい。
【0069】
【化30】

【0070】
一般式(III)中、Za、ZbおよびZcはそれぞれ独立に5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。形成される5または6員環は置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。Za、ZbおよびZcは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子および/またはハロゲン原子で構成されることが好ましく、芳香族環を形成するのが好ましい。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環またはトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環またはピラジン環を形成するのが好ましい。これらの基は置換されているものも含む。なかでも、イミダゾール環及びピリジン環がより好ましく、ピリジン環がさらに好ましい。
また、形成される5員環又は6員環はZa、ZbおよびZc上に少なくとも1つの酸性基を有することが好ましい。当該酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えば―CONHOH、―CONCHOH等)、ホスホリル基(例えば―OP(O)(OH)等)およびホスホニル基(例えば―P(O)(OH)等)が挙げられ、好ましくはカルボキシル基、ホスホリル基又はホスホニル基であり、より好ましくはカルボキシル基又はホスホニル基であり、最も好ましくはカルボキシル基である。
【0071】
一般式(III)中、cは0または1を表す。cは0であるのが好ましく、すなわちLLは2座配位子であるのが好ましい。
【0072】
配位子LLは、下記一般式(V−1)〜(V−8)のいずれかで表されるものが好ましく、一般式(V−1)、(V−2)、(V−4)または(V−6)で表されるものがより好ましく、一般式(V−1)または(V−2)で表されるものが特に好ましく、一般式(V−1)で表されるものが最も好ましい。
【0073】
【化31】

【0074】
なお、一般式(V−1)〜(V−8)中のR21〜R36は図示の都合上1つのピリジン環に置換したように描写しているが、その環上にあっても、あるいは図示されたものとは異なる環上に置換してもよい。
【0075】
一般式(V−1)〜(V−8)中、R21〜R28はそれぞれ独立にカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えば―CONHOH、―CONCHOH等)、ホスホリル基(例えば―OP(O)(OH)等)およびホスホニル基(例えば―P(O)(OH)等)のいずれかを表し、好ましくはカルボキシル基、ホスホリル基又はホスホニル基であり、より好ましくはカルボキシル基又はホスホニル基であり、最も好ましくはカルボキシル基である。
【0076】
一般式(V−1)〜(V−8)中、R29〜R36はそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子(以上好ましい例は上記RおよびRの場合と同様)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基またはアシルアミノ基である。
【0077】
一般式(V−1)〜(V−8)中、R37〜R41はそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基またはアリール基(以上好ましい例は上記RおよびRの場合と同様)を表す。なお、配位子LLがアルキル基、アルケニル基等を含むとき、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また、LLがアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。R37〜R41はそれぞれ独立にアルキル基であるのが好ましく、カルボキシル基を有するアルキル基であるのがより好ましい。
【0078】
一般式(V−1)〜(V−8)中、R21〜R36は環上のどの位置に結合していてもよい。またe1〜e6はそれぞれ独立に0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数を表し、e7およびe8はそれぞれ独立に0〜4の整数、好ましくは0〜3の整数を表す。e9〜e12およびe15はそれぞれ独立に0〜6の整数を表し、e13、e14およびe16はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。e9〜e16はそれぞれ独立に0〜3の整数であるのが好ましい。
【0079】
e1〜e8が2以上のときR21〜R28はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、e9〜e16が2以上のときR29〜R36はそれぞれ同じでも異なっていてもよく互いに連結して環を形成していてもよい。
【0080】
配位子LLの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
【化32】

【0082】
【化33】

【0083】
【化34】

【0084】
【化35】

【0085】
【化36】

【0086】
【化37】

【0087】
【化38】

【0088】
【化39】

【0089】
【化40】

【0090】
【化41】

【0091】
【化42】

【0092】
【化43】

【0093】
【化44】

【0094】
【化45】

【0095】
【化46】

【0096】
(D)配位子X
一般式(I)中、Xは1座または2座の配位子を表す。配位子Xの数を表すm3は0〜2の整数を表し、好ましくは1または2である。Xが1座配位子のときはm3は2であるのが好ましく、Xが2座配位子のときはm3は1であるのが好ましい。m3が2のとき、Xは同じでも異なっていてもよくX同士が連結していてもよい。
【0097】
配位子Xは、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、サリチル酸基、グリシルオキシ基、N,N−ジメチルグリシルオキシ基、オキザリレン基(―OC(O)C(O)O―)等)、アシルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばアセチルチオ基、ベンゾイルチオ基等)、チオアシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばチオアセチルオキシ基(CHC(S)O―)等)、チオアシルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばチオアセチルチオ基(CHC(S)S―)、チオベンゾイルチオ基(PhC(S)S―)等)、アシルアミノオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばN−メチルベンゾイルアミノオキシ基(PhC(O)N(CH)O―)、アセチルアミノオキシ基(CHC(O)NHO―)等)、チオカルバメート基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばN,N−ジエチルチオカルバメート基等)、ジチオカルバメート基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばN−フェニルジチオカルバメート基、N,N−ジメチルジチオカルバメート基、N,N−ジエチルジチオカルバメート基、N,N−ジベンジルジチオカルバメート基等)、チオカルボネート基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばエチルチオカルボネート基等)、ジチオカルボネート基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばエチルジチオカルボネート基(COC(S)S―)等)、トリチオカルボネート基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばエチルトリチオカルボネート基(CSC(S)S−)等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばアセチル基、ベンゾイル基等)、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばメタンチオ基、エチレンジチオ基等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、例えばベンゼンチオ基、1,2−フェニレンジチオ基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばメトキシ基等)およびアリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、例えばフェノキシ基、キノリン−8−ヒドロキシル基等)からなる群から選ばれた基で配位する1座または2座の配位子、あるいはハロゲン原子(好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、カルボニル(…CO)、ジアルキルケトン(好ましくは炭素原子数3〜20、例えばアセトン((CHCO…)等)、1,3−ジケトン(好ましくは炭素原子数3〜20、例えば、アセチルアセトン(CHC(O…)CH=C(O―)CH)、トリフルオロアセチルアセトン(CFC(O…)CH=C(O―)CH)、ジピバロイルメタン(tCC(O…)CH=C(O―)tC)、ジベンゾイルメタン(PhC(O…)CH=C(O―)Ph)、3−クロロアセチルアセトン(CHC(O…)CCl=C(O―)CH)等)、カルボンアミド(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばCHN=C(CH)O―、―OC(=NH)―C(=NH)O―等)、チオカルボンアミド(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばCHN=C(CH)S―等)、またはチオ尿素(好ましくは炭素原子数1〜20、例えばNH(…)=C(S―)NH、CHN(…)=C(S―)NHCH、(CHN―C(S…)N(CH等)からなる配位子を表す。なお、「…」は配位結合を示す。
【0098】
配位子Xは、好ましくはアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子であり、より好ましくはアシルオキシ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基またはアリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子であり、特に好ましくはジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基およびイソシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子または1,3−ジケトンからなる配位子であり、最も好ましくは、ジチオカルバメート基、チオシアネート基およびイソチオシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトンからなる配位子である。なお配位子Xがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基等を含む場合、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基、シクロアルキル基等を含む場合、それらは置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。
【0099】
Xが2座配位子のとき、Xはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミド、またはチオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。Xが1座配位子のとき、Xはチオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、チオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。
【0100】
以下に配位子Xの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す構造式は幾つも取りうる共鳴構造のうちの1つの極限構造にすぎず、共有結合(―で示す)と配位結合(…で示す)の区別も形式的なもので、絶対的な区別を表すものではない。
【0101】
【化47】

【0102】
【化48】

【0103】
【化49】

【0104】
【化50】

【0105】
【化51】

【0106】
【化52】

【0107】
一般式(I)中のMがCu、Pd、Pt等、4配位を好む金属の場合はm2は0でありm1が1または2であるのが好ましく、m1が1のときはm3は1または2であるのが好ましく、m1が2のときはm3は0であるのが好ましい。6配位を好む金属の場合は、m1は1または2であることが好ましく、m1が1のときはm2は好ましくは1または2、より好ましくは1であり、m2が1のときはm3は1または2であるのが好ましく、m2が2のときはm3は0であるのが好ましい。m1が2のときはm2は好ましくは0または1、より好ましくは0であり、m2が0のときはm3は0〜2の整数であるのが好ましく、m2が1のときはm3は0であるのが好ましい。m1が3のときはm2およびm3ともに0であるのが好ましい。これらの中で、m1が1であり、m2が1であり、m3が1または2であり、かつLLが前記一般式(V−1)で表される2座または3座の配位子であるのが特に好ましい。
【0108】
(E)対イオンCI
一般式(I)中、CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。色素が陽イオンまたは陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を有するかどうかは、色素中の金属、配位子および置換基に依存する。置換基が解離性基を有する場合、解離して負電荷を持ってもよく、この場合にも分子全体の電荷はCIにより中和される。
【0109】
典型的な正の対イオンは無機または有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、アルカリ金属イオンおよびプロトンである。一方、負の対イオンは無機陰イオンおよび有機陰イオンのいずれでもよく、例えばハロゲン陰イオン(例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマーあるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよいし、金属錯イオン(例えばビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III)等)も使用可能である。
【0110】
(F)結合基
前記一般式(I)で表される色素は、半導体微粒子の表面に対する適当な結合基(interlocking group)を少なくとも1つ有することが好ましい。この結合基を色素中に1〜6個有するのがより好ましく、1〜4個有するのが特に好ましい。また、前記一般式(I)の配位子LL、LLの少なくとも1方が結合基を有することが好ましく、LLが結合基を有することがより好ましい。
好ましい結合基はカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基(例えば―CONHOH等)、ホスホリル基(例えば―OP(O)(OH)等)、ホスホニル基(例えば―P(O)(OH)等)等の酸性基(解離性のプロトンを有する置換基)である。当該酸性基には、その塩が包含される。塩としては特に制限はなく、有機塩、無機塩のいずれでもく、例えば、アルカリ金属イオン(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属イオン(マグネシウム、カルシウム等)、アンモニウム、アルキルアンモニウム(例えばジエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等)、ピリジニウム、アルキルピリジニウム(例えばメチルピリジニウム)、グアニジニウム、テトラアルキルホスホニウム等の塩が挙げられる。酸性基としては、カルボキシル基、ホスホリル基、又はホスホニル酸基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。一般式(I)が複数の酸性基を有する場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、前記一般式(I)で表される色素は、前記酸性基とは別の結合基を有していてもよい。このような結合基としては特に制限はないが、アミノ基、メルカプト基、アルキルシリル基等が挙げられる。
【0111】
(G)金属錯体色素の具体例
本発明において、前記一般式(I)で表される色素の好ましい態様として、配位子LL及びLLとして下記の構造を有し、かつ金属元素がRuであるルテニウム錯体色素が挙げられる。
(1)配位子LL
前記一般式(IV−3)又は(IV−4)で表される配位子が好ましく、一般式(IV−4)で表される配位子がより好ましい。
一般式(IV−4)で表される配位子として、前記で例示した配位子B−1−1〜B−15−28が好ましい。これは、構造内にチオフェン骨格を有することで、一電子酸化状態の安定化によって色素の耐久性が向上するためである。なかでも、配位子B−2−1〜B−3−28、B−5−1〜B−6−28、B−8−1〜B−9−28、B−11−1〜B−12−28、及びB−14−1〜B−15−28がさらに好ましい。該チオフェン骨格が直線性の高いエチニレン又はフェニレンと連結することで、密な吸着状態を形成して水や求核種の影響を受けにくくなる。そのため、色素の吸着状態がより安定化すると考えられる。
(2)配位子LL
酸性基を有する配位子が好ましく、前記で例示した配位子L−5、19、22,25,27、29、36、39、43及び74がより好ましい。酸性基は半導体に対する結合基(吸着基)として機能する。酸性基のなかでも、電子注入効率・吸着安定性の観点からカルボキシル基が結合基として最も好ましい。さらに、ピリジン環状のN原子に対しp位に結合基を有することで電子注入がスムーズに行われ、変換効率が向上すると考えられる。また、吸着時に立体的な阻害を受けにくくなる。
【0112】
以下、本発明で用いる金属錯体色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例における金属錯体色素がプロトン解離性基を有する配位子を含む場合、該配位子は必要に応じて解離しプロトンを放出してもよい。
【0113】
【化53】

【0114】
【化54】

【0115】
【化55】

【0116】
【化56】

【0117】
【化57】

【0118】
【化58】

【0119】
【化59】

【0120】
【化60】

【0121】
【化61】

【0122】
【化62】

【0123】
【化63】

【0124】
【化64】

【0125】
【化65】

【0126】
【化66】

【0127】
【化67】

【0128】
【化68】

【0129】
【化69】

【0130】
【化70】

【0131】
【化71】

【0132】
【化72】

【0133】
【化73】

【0134】
【化74】

上記例示化合物D−146〜D−149において、Ra及びRbは前記表1〜3に示すものと同義である。
【0135】
【化75】

上記例示化合物D−151において、Bは下記表4に示す基を表す。
【0136】
【表4】

【0137】
上記具体例において、Phはフェニル基、Meはメチル基、NBuはテトラブチルアンモニウムイオン、nは直鎖を表す。
上記例示化合物のうち、好ましくはD−142〜D−154であり、より好ましくはD−147、D−148、D−150〜D154である。
【0138】
前記一般式(I)で表される色素は、定法を適宜適用することにより合成することができる。さらに、その合成方法については、J. Am. Chem. Soc., 121,4047 (1999)、Can. J. Chem., 75, 318 (1997)、Inorg. Chem., 27, 4007 (1988) 等の文献および文献中に引用された方法を参照することができ、その記載を本願明細書に引用する。
【0139】
光電変換層中の前記一般式(I)で表される色素の含有量は特に限定されないが、半導体微粒子1gに対して、0.001〜1ミリモルであることが好ましく、0.1〜0.5ミリモルであることがより好ましい。このような色素量とすることで、半導体における増感効果が十分得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0140】
なお、本発明において、光電変換層は前記一般式(I)で表される色素を2種以上用いてもよい。また本発明において色素とは当該色素化合物そのもののほか、酸性基や塩基性基を有する場合にはその塩やイオン化したもの等を含む意味である。
【0141】
本発明において用いる色素は、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つものが好ましい。前記一般式(I)で表される色素の吸収最大波長は特に限定されないが、溶液における最大吸収波長が、好ましくは350〜1200nmの範囲であり、より好ましくは450〜900nmの範囲であり、特に好ましくは500〜700nmの範囲である。
【0142】
本発明の光電変換素子は、第1光電変換層と第2光電変換層が互いに異なる色素を用いる。第1光電変換層と第2光電変換層に用いる異なる色素のうち、少なくとも1つは前記一般式(I)で表される色素であるが、それ以外の色素は、前記一般式(I)で表される色素であってもよく、他の色素であってもよい。特に、前記一般式(I)で表される色素は、第一光電変換層に用いることが好ましい。耐久性に優れる一般式(I)で表される色素が先に光を吸収する素子構成とすることで、併用する色素及び部材への負担がより軽減される。
第1光電変換層の用いる色素と第2光電変換層に用いる色素は、最大吸収波長が異なるものであることが好ましい。異なる光吸収波長を有する色素を用いることにより、幅広い波長領域の光を有効に利用でき、優れた光電変換効率の光電変換素子を得ることができる。
本発明において、一方の光電変換層に用いる色素の最大吸収波長が450〜900nmの範囲であり、他方の光電変換層に用いる色素の最大吸収波長が600〜1100nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、一方の光電変換層に用いる色素の最大吸収波長が500〜700nmの範囲であり、他方の光電変換層に用いる色素の最大吸収波長が700〜1100nmの範囲である。また、2つの光電変換層に用いる色素の最大吸収波長の差は、50〜500nmの範囲であることが好ましく、100〜400nmの範囲であることがより好ましい。なお、最大吸収波長が短い色素を含む光電変換層側の電極を、受光面の透明電極として用いることが好ましい。
【0143】
光電変換層に含まれる前記一般式(I)で表される色素以外の他の色素としては、例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素が挙げられる。中でも、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素のような金属錯体色素は、高い量子収率を有し、光に対する耐久性がよいため好ましい。フタロシアニン色素としては、例えば特開2009−218093号公報の段落0029〜0031に記載のものが挙げられ、シアニン色素及びスクアリリウム色素としては、例えば特開2000−277786号公報の段落0082〜0102に記載のものが挙げられ、これらの色素を本願明細書に引用する。
上述の幅広い波長領域の光を有効利用する点からは、前記一般式(I)で表される色素と吸収最大波長が異なる色素が好ましく、例えば、最大吸収波長が650〜1200nmの範囲であるフタロシアニン色素、最大吸収波長が600〜1000nmの範囲であるスクアリリウム色素、最大吸収波長が650〜1000nmの範囲であるシアニン色素等が好ましい。
【0144】
他の色素として金属錯体色素を用いる場合、Cu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、Ta、Ir、Pd、Os、Ga、Tb、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、Te、Rhなどの金属が用いられる。中でも、Cu、Ti、Zn、Al、Fe、V、Si等の金属錯体色素は高い量子効率を有するため、好ましい。
【0145】
上記色素は、半導体と強固に吸着できるよう、色素分子中に結合基(interlocking group)を有することが好ましい。色素は、結合基を介して半導体に固定される。結合基は、励起状態の色素と半導体の伝導帯との間の電子の移動を容易にする電気的結合を提供する。このような結合基としては、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などが挙げられ、好ましい。
【0146】
後述の実施例で示すように、本発明では、前記一般式(I)で表される色素と上述の他の色素とを併用することにより、耐久性に優れた光電変換素子を得ることができる。これは、広い吸収領域と高い長波長吸収効率とを備え、且つ耐久性に優れる前記一般式(I)で表される色素が、高エネルギーの可視域入射光の多くを吸収するため、もう一方の色素への負荷が低減され、結果として素子の耐久性が向上するためと考えられる。
【0147】
[半導体]
次に、本発明において2つの光電変換層に用いられる半導体としては、一般に光電変換材料用に使用されるものであれば特に限定されるものでもなく、たとえば、無機系半導体及び有機系半導体を用いることができる。第1光電変換層と第2光電変換層に用いられる半導体はそれぞれp型とn型から構成させることが好ましい。
【0148】
ここで用いられるn型半導体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウムなどの公知の半導体の一種または二種以上を用いることができる。また、p型半導体としては、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムなどの公知の半導体の一種または二種以上を用いることができる。これらは、市販されている単体または化合物の半導体を用いることができる。
【0149】
光電変換素子の変換効率を向上させるためには、半導体の表面に光増感色素を吸着させることが好ましい。そのため、半導体として多孔質半導体微粒子を用いることが好ましい。多孔質半導体微粒子を用いることで、比表面積が大きくなり、より多くの色素を半導体に強固に吸着させることができる。
半導体粒子の平均粒径は、1nm〜2000nmであることが好ましい。
【0150】
半導体膜は公知の種々の方法によってを基板上に形成できる。具体的には、基板上に半導体粒子を含有する懸濁液を塗布し、乾燥かつ/または焼成する方法、必要な原料ガスを用いたCVDまたはMOCVD等により基板上に半導体膜を形成する方法、固体原料を用いるPVD法、蒸着法またはスパッタリング法、ゾルゲル法などである。
【0151】
半導体粒子を懸濁する溶媒としては特に限定はなく、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル等のクライム系溶媒、イソプロピルアルコール等のアルコール類、イソプロピルアルコール/トルエン等の混合溶媒、水等を含む混合溶媒等が挙げられる。
【0152】
半導体粒子の懸濁液は、基板に塗布され、乾燥および焼成に必要な温度、時間、雰囲気等は、使用される基板、溶剤および半導体粒子の種類に応じて、適宜調整することができる。たとえば、乾燥および焼成は、大気圧または不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の範囲で、10秒〜12時間程度行うことができる。乾燥および焼成は、単一の温度で1回行ってもよいし、温度を変換させて2回以上行ってもよい。
【0153】
半導体膜を形成するためCVD等に使用される原料ガスは、半導体を構成する元素を含有する単一のガス、または2種類以上のガスの混合物とすることができる。半導体膜を形成するためPVD等に使用される原料固体は、半導体を構成する元素を含有する単一の固体、複数の固体の組み合わせ、または化合物の固体である。
【0154】
形成される半導体膜の厚みは、特に限定されるものではないが、半導体微粒子層全体の厚さは0.1〜100μmであることが好ましい。半導体微粒子層の厚さは、1〜30μmであることがより好ましく、2〜25μmがさらに好ましい。半導体微粒子の支持体1m当りの担持量は、0.5g〜400gが好ましく、5〜100gがより好ましい。
【0155】
半導体表面に色素を吸着させる前に、半導体表面を活性化するための処理を必要に応じて行ってもよい。例えば、色素を半導体に吸着させる工程において、色素を含有した液体に半導体を浸漬して、該半導体表面に該色素を吸着させることができる。半導体表面に色素を吸着させるには、溶液と前記一般式(I)で表される色素とを含む色素吸着用色素溶液の中に、よく乾燥した半導体微粒子を長時間浸漬するのが好ましい。
色素吸着用色素溶液に使用される溶液は、前記一般式(I)で表される色素が溶解できる溶液なら特に制限なく使用することができる。例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、t-ブタノール、アセトニトリル、アセトン、n-ブタノールなどを使用することができる。その中でも、エタノール、トルエンを好ましく使用することができる。
【0156】
溶液と前記一般式(I)で表される色素とを含む色素吸着用色素溶液は必要に応じて50℃ないし100℃に加熱してもよい。色素の吸着は半導体微粒子の塗布前に行っても塗布後に行ってもよい。また、半導体微粒子と色素を同時に塗布して吸着させてもよい。未吸着の色素は洗浄によって除去する。塗布膜の焼成を行う場合は色素の吸着は焼成後に行うことが好ましい。焼成後、塗布膜表面に水が吸着する前にすばやく色素を吸着させるのが特に好ましい。吸着する色素は1種類でもよいし、数種混合して用いてもよい。混合する場合、前記一般式(I)で表される色素を2種以上混合してもよいし、本発明の効果を損なわない範囲内で、前記一般式(I)で表される色素と他の色素とを混合してもよい。光電変換の波長域をできるだけ広くするように、混合する色素が選ばれる。色素を混合する場合は、すべての色素が溶解するようにして、色素吸着用色素溶液を調製する。
【0157】
色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、本発明の色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。
また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。
このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0158】
光増感色素を含有した液体に半導体を浸漬する工程において、温度、圧力、浸漬時間は必要に応じて変えることができる。浸漬は、1回または複数回行ってもよい。また、浸漬の工程の後、適宜乾燥を行ってもよい。上述した方法により半導体に吸着された色素は、光エネルギーにより電子を半導体に送る光増感剤として機能する。なお、このとき色素は、吸着平衡状態になって、一部電解質中に解離したもの等があってもよい。
【0159】
本発明においては、照射する光が対極の光電変換層に到着するため、少なくとも受光側の光電変換層が対極の光電変換層の光感度波長領域に60%以上の光透過率を有することが好ましい。80%以上の透過率を有することがより好ましい。
【0160】
[導電層]
本発明の光電変換素子において、半導体層に挟持される導電層としては導電性材料から構成される。電子、ホール、イオンを輸送できるものが用いることができる。例えば、ポリビニルカルバゾール等のホール輸送材料、テトラニトロフロオルレノン等の電子輸送材料、ポリピロール等の導電性ポリマー、液体電解質、高分子固体電解質等のイオン導電体を用いることができる。
【0161】
本発明において、液体電解質に、I/I3−系や、Br/Br3−系、Fe+2/Fe+3系、キノン/ハイドロキノン系等の酸化還元種を含有させてもよい。このような酸化還元種は、従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I/I3−酸化還元種は、ヨウ素のリチウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。
【0162】
電解質組成物中の溶媒含有量は組成物全体の50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのが特に好ましい。
溶媒としては低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めることができるか、あるいはその両方であるために優れたイオン伝導性を発現できるものが好ましい。このような溶媒としてカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン等)、エーテル化合物(ジオキサン、ジエチルエーテル等)、鎖状エーテル類(エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ビスシアノエチルエーテル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルフォラン等)、水、特開2002−110262記載の含水電解液、特開2000−36332号公報、特開2000−243134号公報、及び再公表WO/00−54361号公報記載の電解質溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は二種以上を混合して用いてもよい。
【0163】
また、電解質溶媒として、室温において液体状態であり、及び/又は室温よりも低い融点を有する電気化学的に不活性な塩を用いても良い。例えば、1−エチルー3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート等にイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩などの含窒素ヘテロ環四級塩化合物、又はテトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0164】
次に、固体電解質としては、酸化還元種を溶解あるいは酸化還元種を構成する少なくとも1つの物質と結合することができる固体状の物質であり、たとえば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンスルフィドなどの高分子化合物またはそれらの架橋体、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキサイドなどの高分子官能基に、ポリエーテルセグメントまたはオリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として付加したものまたはそれらの共重合体などが挙げられ、その中でも特にオリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として有するものやポリエーテルセグメントを側鎖として有するものが好ましい。
【0165】
前記の固体中に酸化還元種を含有させるには、たとえば、高分子化合物となるモノマーと酸化還元種との共存下で重合する方法、高分子化合物などの固体を必要に応じて溶媒に溶解し、次いで、前記の酸化還元種を加えてもよい。酸化還元種の含有量は、必要とするイオン伝導性能に応じて、適宜選定することができる。
【0166】
電解質組成物には、金属ヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI等)、金属臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr 2等)、4級アンモニウム臭素塩(テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等)、金属錯体(フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等)、イオウ化合物(ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等)、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等を添加してよい。これらは混合して用いてもよい。
また、本発明ではJ. Am. Ceram. Soc., 80, (12), 3157−3171 (1997)に記載のt−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を添加してもよい。塩基性化合物を添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2Mである。
また、本発明において電解質として、正孔導体物質を含む電荷輸送層を用いても良い。正孔導体物質としては、9,9’−スピロビフルオレン誘導体等を用いることができる。
【0167】
[電極]
本発明において第1電極と第2電極は、金属板基板、またはガラス板および透明プラスチックシートなどの基板上に、金、銀、アルミニウム、インジウム、酸化インジウムスズ(ITO膜)、酸化スズの何れかを蒸着することによって形成される。この場合、少なくとも1つの電極が透明であることが好ましい。
【0168】
本発明による光電変換素子は、光電気化学電池、光スイッチング装置、センサー等のデバイスに適用される。本発明によれば、例えば図1に示すような光電気化学電池が提供される。
本発明の光電変換素子の好ましい実施態様を、図面を参照して説明する。図1に示すように、光電気化学電池における色素に太陽光を照射すると、色素4(色素A)及び6(色素B)は光を吸収して励起する。この励起によって発生する電子とホールはそれぞれ半導体層3(第1半導体)及び7(第2半導体)に移動し、次いで、透明導電性電極を通って対電極に移動する。一方、光電気化学電池内部にいて、色素に残る電子は電解質中の酸化還元種を通して、対極の色素に戻る。このようなプロセスによって電流が流れ、光エネルギーは連続的に電気エネルギーに変換される。このようにして光電気化学電池として作動させることができる。
図2に示すように、本実施形態の光電変換素子は、透明性導電膜上に前述の増感色素が吸着された多孔質半導体層を有する光電変換層を有する。このとき色素は吸着平衡状態になっており、一部導電層に存在していてもよい。本実施形態の光電変換素子の光電変換層には、前記一般式(I)で表される増感色素が吸着した半導体微粒子を含み、感度が高く、光電気化学電池として使用する場合に、高い変換効率を得ることができ、さらに高い耐久性を有する。
【実施例】
【0169】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0170】
合成例
(例示化合物D−145の調製)
下記スキームの方法に従って例示色素D−145を調製した。
(i)化合物d−145−2の調製
d−145−1 25g、Pd(dba)33.8g、トリフェニルホスフィン8.6g、ヨウ化銅2.5g、1−へプチン25.2gをトリエチルアミン70ml、テトラヒドロフラン50mlに室温で攪拌し、80℃で4.5時間攪拌した。濃縮後カラムクロマトグラフィーで精製することで化合物d−145−2 26.4gを得た。
(ii)d−145−4の調製
d−145−3 6.7gを窒素雰囲気下、−15℃でTHF(テラヒドロフラン)200mlに溶解し、別途調整したLDA(リチウムジイソプロピルアミド)をd−145−3の2.5等量を滴下し、75分攪拌した。その後d−145−2 15gをTHF30mlに溶解した溶液を滴下し0℃で1時間攪拌し、室温で終夜攪拌した。濃縮後、水150mlを加え、塩化メチレン150mlで分液・抽出し、塩水で有機層を洗浄し、有機層を濃縮した。得られた結晶はメタノールで再結晶後、d−145−4 18.9gを得た。
(iii)化合物d−145−5の調製
d−145−4 13.2g、PPTS(ピリジニウムパラトルエンスルホン酸)1.7gを、トルエン1000mlに加え、窒素雰囲気下で5時間加熱還流を行った。濃縮後、飽和重曹水及び塩化メチレンで分液を行い、有機層を濃縮した。得られた結晶はメタノール及び塩化メチレンで再結晶後、d−145−5 11.7gを得た。
(iv)例示色素D−145の調製
化合物d−145−5 4.0g、d−145−6 2.2g、をDMF60mlに加え70℃で4時間攪拌した。その後d−145−7 2.1gを加え160℃で3.5時間加熱攪拌した。その後チオシアン酸アンモニウム 19.0gを加え130℃で5時間攪拌した。濃縮後、水1.3ml加えろかし、ジエチルエーテルで洗った。粗精製物をTBAOH(水酸化テトラブチルアンモニウム)と共にメタノール溶液に溶解し、SephadexLH−20カラムで精製した。主層の分画を回収し濃縮後硝酸0.2Mを添加して、沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、水酸化テトラブチルアンモニウム塩 600mgを得た。精製物をメタノール溶液に溶解し、硝酸1Mを添加して沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−145を570mg得た。
得られた化合物D−145の構造はNMR測定により確認した。

1H−NMR(DMSO−d6、400MHz):δ(ppm)in aromatic regions:9.37(1H,d),9.11(1H,d),9.04(1H,s)、8.89(2H),8.74(1H,s),8.26(1H,d),8.10−7.98(2H),7.85−7.73(2H),7.60(1H,d),7.45−7.33(2H),7.33−7.12(5H,m),6.92(1H,d)
【0171】
得られた例示色素D−145について、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は533nmであった。
【0172】
【化76】

【0173】
【化77】

【0174】
実施例
1.第1光電変換層の作製
市販の酸化チタン粒子(テイカ株式会社製、平均粒径30nm)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlを硬質ガラスビーズを使用しペイントシェイカーにより6時間分散させ酸化チタン懸濁液を作成した。次いで、この酸化チタン懸濁液をドクターブレードを用いて、予め酸化スズ導電層が付着されたガラス板に塗布し、100℃で30分予備乾燥した後、電気炉で500℃で40分間焼成し、酸化チタン膜を得た。
【0175】
これとは別に、下記式S−1で表される色素、S−2で表される色素、例示色素D−7,D−46,D−142,D−151−2,D−154を適した溶媒に溶解させたもの、下記式S−3で表される色素〔cis−dithiocyanine−N−bis(2,2’−bipyridyl−4,4’−dicarboxylic acid) ruthenium〕をエタノールに溶解したものをそれぞれ用意した。
【0176】
【化78】

【0177】
【化79】

【0178】
【化80】

【0179】
各溶液中の色素濃度は3×10−4モルであった。次に、この溶液中に膜状の酸化チタンを形成した前記のガラス板を入れ、60℃で720分間色素吸着を行ってから乾燥し、第1光電変換層(試料A)を得た。
【0180】
2.第2光電変換層の作製
市販の酸化ニッケル粒子(キシダ化学、平均粒径100nm)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlをガラスビーズを使用しペイントシェイカーで8時間分散させ酸化ニッケル懸濁液とした。次いで、この酸化チタン懸濁液をドクターブレードを用いて、酸化スズ導電層が付着されたガラス板に塗布し、100℃で30分予備乾燥した後、300℃で30分間焼成し、酸化ニッケル膜を得た。
【0181】
これとは別に、前記色素S−1及びS−2、例示色素D−142〜D−145、並びに下記式で表される色素S−4を各々適した溶媒に溶解した。
【0182】
【化81】

【0183】
各溶液中の色素濃度は1×10−4モルであった。次に、この溶液中に膜状の酸化チタンを形成した前記のガラス板を入れ、70℃で60分間色素吸着を行ってから乾燥し、第2光電変換層(試料B)を得た。
【0184】
3.光電変換素子の作製
前記の試料A上に試料Bを位置させる。これら2つの電極の間に液体電解質を入れ、この側面を樹脂で封止した後、リード線を取付けて、光電変換素子(素子構成C)を作成した。なお、液体電解質は、アセトニトリル/炭酸エチレンの混合溶媒(体積比が1:4)に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドとヨウ素とを、それぞれの濃度が0.46モル/l、0.06モル/lとなるように溶解したものを用いた。
【0185】
また、前記の試料Aを一方の電極として備え、対電極として白金を担持した透明導電性ガラス板を用いた。2つの電極の間に液体電解質を入れ、この側面を樹脂で封止した後、リード線を取付けて、光電変換素子(素子構成D)を作成した。
【0186】
4.評価
(色素の極大吸収波長)
上記で用いた色素の極大吸収波長を表5に示す。極大吸収波長の測定は、分光光度計(U−4100(商品名)、日立ハイテク社製)によって行い、溶液はTHF:エタノール=1:1を用い、濃度が2μMになるように調整した。
(光電変換効率)
得られた光電変換素子(試料C及びD)に、ソーラーシミュレーターで1000W/mの強度の光を照射し、光電変換効率を測定した。変換効率は、11%以上のものを◎、11%以上10%未満のものを○、9.5%以上10.0%未満のものを△、9.5%未満のものを×として表6に示した。
(耐久性)
光電変換素子(試料C、及びD)を、暗所での80℃、85%RHで200時間経時後、上記と同じ手法で光電変換効率を測定し、その低下率を求めた。結果を表6に示す。
【0187】
【表5】

【0188】
【表6】

【0189】
表6から明らかなように、前記一般式(I)で表される色素を用いた光電変換素子(試料1〜12)では、光電変換効率、耐久性ともに優れることがわかった。試料11及び12は特に耐久性に優れるものであった。これに対し、前記一般式(I)で表される色素を含まない比較試料13及び15は、いずれも高湿度条件下での耐久性が劣る結果となった。特に比較試料15は、光電変換効率においても劣るものであった。また、光電変換層が第1光電変換層のみである比較試料14、16及び17は、いずれも光電変換効率において劣り、耐久性も十分とはいえないものであった。
【符号の説明】
【0190】
1 支持体
2 透明性導電膜
3 第1半導体
4 色素A
5 導電性材料
6 色素B
7 第2半導体
8 透明性導電膜
9 支持体
10 導電膜
11 多孔質半導体
12 色素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、第1光電変換層、導電層、第2光電変換層、第2電極層を順次に積層した構造を有し、該第1及び第2光電変換層はそれぞれ異なる色素と、半導体とを含有し、該光電変換層に含まれる色素の少なくとも一つが下記一般式(I)で表される色素であることを特徴とする光電変換素子。

M(LLm1(LLm2(X)m3・CI 一般式(I)

[一般式(I)において、Mは金属原子を表し、LLは下記一般式(II)で表される2座又は3座の配位子であり、LLは下記一般式(III)で表される2座又は3座の配位子である。
Xはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する1座又は2座の配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミドまたはチオ尿素からなる1座または2座の配位子を表す。
m1は1〜3の整数を表し、m1が2以上のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。m2は0〜3の整数を表し、m2が2のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。
m3は0〜2の整数を表し、m3が2のとき、Xは同じでも異なっていてもよく、X同士が連結していてもよい。
CIは一般式(I)において、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化1】

[一般式(II)において、RおよびRはそれぞれ独立に、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表し、RおよびRはそれぞれ独立にアリール基、ヘテロ環基、又はこれらの基を含む置換基を表す。
およびLはそれぞれ独立に、エテニレン基、エチニレン基及び/又はアリーレン基からなる共役鎖を表す。
a1およびa2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、a1が2以上のときRは同じでも異なっていてもよく、a2が2以上のときRは同じでも異なっていてもよい。b1及びb2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、b1が2以上のときRは同じでも異なっていてもよく、Rは互いに連結して環を形成してもよく、b2が2以上のときRは同じでも異なっていてもよく、Rは互いに連結して環を形成してもよい。b1及びb2が共に1以上のときRとRが連結して環を形成してもよい。
nは0または1を表す。]
【化2】

[一般式(III)において、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。cは0又は1を表す。]
【請求項2】
前記一般式(I)において、MがRu、Fe、OsまたはCuであることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記一般式(I)において、MがRuであることを特徴とする請求項1又は2記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記色素は、各光電変換層毎に最大吸収波長が異なるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記半導体が多孔質半導体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記第1光電変換層及び第2光電変換層中の半導体材料は、一方にp型半導体を用い、他方にn型半導体を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記導電層は、イオン導電体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記イオン導電体に、酸化還元種を含有することを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
最大吸収波長の短い色素を含有する光電変換層側の電極層を透明電極として、受光面とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いることを特徴とする光電気化学電池。
【請求項11】
前記第1又は第2電極層を形成した基板上に、前記半導体の層を形成し、次いで、該半導体に色素を吸着することにより前記第1又は第2光電変換層をそれぞれ別々に形成し、該第1光電変換層上に該第2光電変換層を位置させて、両者の間に前記導電層を形成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項12】
前記導電層は、液体電解質であることを特徴とする請求項11記載の光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−53985(P2012−53985A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185520(P2010−185520)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】